(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240312BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20240312BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20240312BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20240312BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20240312BHJP
B65D 23/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B65D1/02 221
B29C49/42 ZAB
B29C49/22
B29C49/48
B29C33/42
B65D23/00 G
(21)【出願番号】P 2020023187
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田所 洋一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 創哉
(72)【発明者】
【氏名】清都 弘光
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131300(JP,A)
【文献】特開2019-72864(JP,A)
【文献】特開2012-236629(JP,A)
【文献】特開2007-204133(JP,A)
【文献】特開2007-45425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 23/00
B29C 49/42
B29C 49/22
B29C 49/48
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器であって、
前記容器本体には、周囲より低く落ち込んだ窪み部が設けられており、
前記被覆層には、前記窪み部の底面から隆起した前記窪み部の縁部上に位置する部位に、前記被覆層の厚みが周囲に比して厚肉となった厚肉部が形成されているとともに、前記厚肉部に連接し、かつ、前記窪み部の底面側上に位置する部位に、前記被覆層の厚みが周囲に比して薄肉となった薄肉部が形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記被覆層には、前記厚肉部を起点とする引き裂きガイド部が形成されている請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記容器本体には、容器内方に窪んで帯状に延在する帯状凹部が設けられているとともに、前記帯状凹部の一端側に前記窪み部が連接して設けられ、
前記被覆層には、前記帯状凹部の
幅方向の両端縁に形成された段差部に沿って、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部が、前記引き裂きガイド部として形成されているとともに、前記窪み部の底面から隆起して前記帯状凹部の底面に連なる前記窪み部の縁部上に位置する部位に、前記厚肉部が形成されている請求項2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器の製造方法であって、
有底筒状のプリフォーム本体と、前記プリフォーム本体の外周面側に積層された被覆材層とを有するプリフォームを加熱して、前記プリフォーム本体を延伸可能に軟化させつつ、前記被覆材層を熔融状態又は半熔融状態としてから、
キャビティ面に、前記容器本体に周囲より低く落ち込んだ窪み部を賦形する突出部が、周縁にエッジ部が形成されるように切り立って設けられたブロー成形型内で前記プリフォームをブロー成形し、
延伸された前記プリフォーム本体と前記突出部とに挟まれた前記被覆材層を、前記突出部の前記エッジ部が形成された周縁側にはみ出すように流動させることにより、
前記突出部の前記エッジ部が形成された周縁側では、前記被覆材層を厚肉に成形しつつ、前記プリフォーム本体と前記突出部の上面とに挟まれた前記被覆材層を薄肉に成形することを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記ブロー成形型のキャビティ面に、一端側に前記突出部が連接されて、前記容器本体に容器内方に窪んで帯状に延在する帯状凹部を賦形する突条部を、両端縁に沿ってエッジ部が形成されるように切り立って設けておき、
前記突条部の両端縁に沿って形成された前記エッジ部に、前記被覆材層を圧接させて、当該エッジ部に沿って線状に薄肉となるように前記被覆材層を成形する請求項4に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の外周面側に被覆層が積層された合成樹脂製容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて有底筒状のプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
この種の合成樹脂製容器は、近年、益々身近な存在となってきており、それに伴って様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、容器本体を従来と同様にリサイクルできるようにしながら、内容物の光による変質を抑制するために、容器本体の口部以外の全域に、着色されたプラスチック製部材を剥離除去可能に密着して設けた複合容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、容器本体からプラスチック製部材を剥離して除去するには、刃物等を用いてプラスチック製部材を切除したり、プラスチック製部材に設けた切断線に沿って剥離したりすることができると記載されているが、容器本体の口部以外の全域に密着したプラスチック製部材を剥離するのは、実際には容易ではない。
【0006】
本発明は、上記したような事情に鑑みてなされたものであり、所定の容器形状に成形された容器本体と、かかる容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器であって、廃棄時に、容器本体と被覆層とを容易に分別することができる合成樹脂製容器、及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る合成樹脂製容器は、所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器であって、前記容器本体には、周囲より低く落ち込んだ窪み部が設けられており、前記被覆層には、前記窪み部の底面から隆起した前記窪み部の縁部上に位置する部位に、前記被覆層の厚みが周囲に比して厚肉となった厚肉部が形成されているとともに、前記厚肉部に連接し、かつ、前記窪み部の底面側上に位置する部位に、前記被覆層の厚みが周囲に比して薄肉となった薄肉部が形成されている構成としてある。
【0008】
また、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法は、所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器の製造方法であって、有底筒状のプリフォーム本体と、前記プリフォーム本体の外周面側に積層された被覆材層とを有するプリフォームを加熱して、前記プリフォーム本体を延伸可能に軟化させつつ、前記被覆材層を熔融状態又は半熔融状態としてから、キャビティ面に、前記容器本体に周囲より低く落ち込んだ窪み部を賦形する突出部が、周縁にエッジ部が形成されるように切り立って設けられたブロー成形型内で前記プリフォームをブロー成形し、延伸された前記プリフォーム本体と前記突出部とに挟まれた前記被覆材層を、前記突出部の前記エッジ部が形成された周縁側にはみ出すように流動させることにより、前記突出部の前記エッジ部が形成された周縁側では、前記被覆材層を厚肉に成形しつつ、前記プリフォーム本体と前記突出部の上面とに挟まれた前記被覆材層を薄肉に成形する方法としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窪み部の底面側上に形成された薄肉部を破断して、窪み部の縁部上に形成された厚肉部を薄肉部側から切り離することによって、被覆層を引き裂く起点を形成することができ、これによって、容器本体と被覆層とを容易に分別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の製造方法に用いるブロー成形型の一例の概略を示す説明図である。
【
図6】
図5に示すブロー成形型の要部斜視図である。
【
図8】
図5に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突条部によって帯状凹部が賦形される過程を示す説明図である。
【
図9】
図5に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突条部によって帯状凹部が賦形される過程を示す説明図である。
【
図11】
図5に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突出部によって窪み部が賦形される過程を示す説明図である。
【
図12】
図5に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突出部によって窪み部が賦形される過程を示す説明図である。
【
図13】
図5に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突出部によって窪み部が賦形される過程を示す説明図である。
【
図14】ブロー成形型のキャビティ面に形成される突出部の変形例を示す要部斜視図である。
【
図16】ブロー成形型のキャビティ面に形成される突出部の他の変形例を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[合成樹脂製容器]
まず、本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器について説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図であり、
図2は、
図1のA-A端面図、
図3は、
図1のB-B端面図である。
【0013】
これらの図に示す容器1は、口部2、胴部3、及び底部4を含む所定の容器形状に成形された容器本体1aと、容器本体1aの外周面側に積層された被覆層5とを有している。図示する例において、容器1(容器本体1a)は、概ね円筒状に成形され、高さ方向上側の部位を口部2に向かって縮径させた胴部3と、いわゆるペタロイド形状に成形された底部4を含む容器形状としているが、容器1の形状は、これに限定されない。
【0014】
ここで、
図1には、口部2から胴部3の上端側の一部を切り欠いて、その断面を示しているが、断面にあらわれる容器本体1a、被覆層5の肉厚を誇張して描写している。他の図面においても、断面にあらわれる容器本体1a、被覆層5などの肉厚を適宜誇張して描写している。
また、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(
図1に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0015】
口部2は、内容物の注ぎ口となる円筒状の部位である。かかる口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのねじ山21が設けられている。
また、口部2の下端側には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング22が設けられている。
【0016】
被覆層5は、図示するように、底部4の底面から胴部3の周面の全面を覆うとともに、その末端側が、口部2の下端側に設けられたネックリング22の下面を覆いつつ、ネックリング22の周端縁に達するように、容器本体1aの外周面側に積層されているのが好ましい。このような態様は、内容物の光による変質を抑制するために、被覆層5を着色して遮光性を付与することが要求される場合に、特に好適である。
【0017】
また、容器1は、円筒状の胴部30の一端側に口部20が形成され、他端側に半球状の底部40が形成された、一端が開口する有底筒状のプリフォーム本体10aと、プリフォーム本体10aの外周面側に積層された被覆材層50とを有するプリフォーム10をブロー成形することによって製造することができる。
【0018】
図4に、プリフォーム10の一例を示す。前述したような態様で被覆層5が積層された容器1を製造するには、プリフォーム本体10aの外周面側に、底部40から口部20の直下に至る全面を覆うとともに、その末端側が、口部20の下端側に設けられたネックリング22の下面を覆いつつ、ネックリング22の周端縁に達するように、被覆材層50が積層されたプリフォーム10を用いればよい。
【0019】
プリフォーム10は、加熱により軟化させてブロー成形が可能な状態とされてから、ブロー成形型にセットされ、ネックリング22の直下から底部40に至るまでの部位が、必要に応じて延伸ロッドにより軸方向(縦方向)に延伸されつつ、高圧流体ブローにより軸方向及び周方向(横方向)に延伸される。そして、延伸された部位にブロー成形型のキャビティ形状が転写されることによって、所定の容器形状を備える容器1に成形される。このとき、延伸されたプリフォーム本体10aによって容器本体1aが成形されるとともに、プリフォーム本体10aに積層された被覆材層50が、プリフォーム本体10aと一体に成形されて、容器本体1aに積層された被覆層5となる。
【0020】
このようにして、プリフォーム10をブロー成形するに際し、ネックリング22を含むプリフォーム10の口部20は、ブロー成形によって延伸されずに、そのまま容器1の口部2となる。したがって、
図4に示すプリフォーム10を用いれば、ネックリング22の下面を覆う被覆材層50の末端側もそのまま容器1の被覆層5の末端側となるため、前述したような態様で被覆層5が積層された容器1を製造することができる。
【0021】
本実施形態において、容器本体1aの胴部3には、所定の幅で容器内方に窪んで帯状に延在する帯状凹部6が設けられており、帯状凹部6の幅方向の両端縁には、帯状凹部6の底面6aから隆起して、胴部3の周面に連なる段差部6bが形成されている(
図2参照)。
【0022】
帯状凹部6は、
図1に示すように、高さ方向に沿って胴部3の上端側(口部2側)から下端側(底部4側)に至るように設けることができ、帯状凹部6の一端側には、周囲より低く落ち込んだ窪み部7が連接して設けられている。窪み部7は、その底面7aが、隣接する胴部3の周面及び帯状凹部6の底面6aよりも容器内方に陥入するように設けられており、窪み部7の底面7aから隆起して、隣接する胴部3の周面及び帯状凹部6の底面6aのそれぞれに連なる縁部7bによって縁取られている(
図3参照)。
なお、窪み部7の底面7aは、軸方向に沿って平行又は傾斜した面とすることができ、平面であっても曲面であってもよい。
【0023】
一方、このような容器本体1aの外周面側に積層された被覆層5には、窪み部7の底面7aから隆起して、帯状凹部6の底面6aに連なる縁部7b上に位置する部位に、被覆層5の厚みが周囲に比して厚肉となった厚肉部5aが形成されている。これとともに、厚肉部5aに連接し、かつ、窪み部7の底面7a側に位置する部位には、被覆層5の厚みが周囲に比して薄肉となった薄肉部5bが形成されている(
図3参照)。
【0024】
このようにすることで、内容物を消費し終えた容器1を廃棄する際には、窪み部7の縁部7b上に形成された厚肉部5aに、窪み部7の底面7a側から手指の爪を引っ掛けるなどして、薄肉部5bを破断して、厚肉部5aを薄肉部5b側から切り離し、切り離された厚肉部5aを手指で摘まみ上げて、そこから被覆層5を引き裂いていくことによって、容器本体1aと被覆層5とを容易に分別することが可能となる。
【0025】
このように、本実施形態にあっては、窪み部7の底面7a側上に形成された薄肉部5bを破断して、窪み部7の縁部7b上に形成された厚肉部5aを薄肉部5b側から切り離することによって、被覆層5を引き裂く起点が形成されるようにしているが、容器本体1aと被覆層5とをより容易に分別できるようにするために、被覆層5には、厚肉部5aを起点とする引き裂きガイド部を形成するのが好ましい。
【0026】
このような引き裂きガイド部として、被覆層5には、帯状凹部6の両端側に形成された段差部6bに沿って、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部5cを形成することができる(
図2参照)。これにより、薄肉部5b側から切り離された厚肉部5aを摘まみ上げながら、引き裂きガイド部として形成された線状薄肉部5cに沿って、被覆層5を引き裂いていくことができるようになる。
【0027】
[合成樹脂製容器の製造方法]
次に、本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の製造方法について説明する。
図5は、本実施形態に用いるブロー成形型の一例について、その概略を示す説明図である。
【0028】
ブロー成形型100は、
図1に示す容器1を成形対象とし、容器1の胴部3を成形する胴型103と、容器1の底部4を成形する底型104を備えている。胴型103は、開閉可能に構成された一対の分割型からなり、
図5には、胴型103のパーティング面を含む面でブロー成形型100を切り取った断面を簡略化して示している。
【0029】
本実施形態において、胴型103のキャビティ面には、容器1の容器本体1aに帯状凹部6を賦形する突条部106が、その幅方向の両端縁に沿ってエッジ部106aが形成されるように切り立って設けられている(
図6、
図7参照)。突条部106は、所定の幅で突出して、胴型103の上端側から下端側に至るように延在し、胴型103の下端側には、容器1の容器本体1aに窪み部7を賦形する突出部107が、突条部106の一端側に連接して設けられている。突出部107は、周囲よりも高く突出し、すなわち、隣接するキャビティ面及び突条部106の上面よりも高く突出して、周縁にエッジ部107aが形成されるように切り立って設けられている(
図6、
図10参照)。
【0030】
ここで、
図6は、胴型103のキャビティ面のうち突条部106の一部と突出部107を含む要部を斜視して示しており、
図7は、
図6のC-C端面図、
図10は、
図6のD-D端面図である。
【0031】
このようなブロー成形型100を用いて容器1を製造するには、まず、前述したように、プリフォーム10を加熱して、ブロー成形が可能な状態にしてからブロー成形型100にセットする。その際、プリフォーム本体10aが、プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料の融点以下、ガラス転移点以上の温度に加熱されるようにして、プリフォーム本体10aを延伸可能に軟化させておく。一方、被覆材層50にあっては、被覆材層50を形成する樹脂材料の融点付近の温度(例えば、[融点-30]~[融点+30]℃)に加熱されるようにして、被覆材層50を流動性が高い熔融状態又は半熔融状態としておく。
なお、
図5には、ブロー成形型100にセットされたプリフォーム10を一点鎖線で示している。
【0032】
プリフォーム10を加熱するに際し、プリフォーム本体10aと被覆材層50のそれぞれが、上記のように加熱されるようにするには、例えば、赤外線ヒータなどによりプリフォーム10を外側から加熱するとともに、高周波誘導加熱により発熱させた棒状の高周波誘導発熱体をプリフォーム10内に挿通するなどして、プリフォーム10を内側からも加熱することにより、内外からの加熱温度を適宜調整するなどすればよい。
【0033】
ブロー成形型100内でプリフォーム10のブロー成形が開始されると、延伸された部位がキャビティ面に接触して、プリフォーム本体10a(容器本体1aの胴部3)には、突条部106によって帯状凹部6が賦形されるとともに、突出部107によって窪み部7が賦形される。
【0034】
このとき、プリフォーム本体10aに賦形される帯状凹部6は、両端縁に沿ってエッジ部106aが形成されるように切り立って設けられた突条部106の形状通りには賦形されない。プリフォーム本体10aは、
図8~
図9に示すように、被覆材層50を介して突条部106の上面に接した部位の両端側が、突条部106の両端縁側の段差に対して湾曲するように延伸される。これによって、帯状凹部6は、その両端縁に、帯状凹部6の底面6aから隆起して、胴部3の周面に連なる段差部6bが形成されるように賦形される(
図2参照)。
【0035】
これに対して、被覆材層50は、流動性が高い熔融状態又は半熔融状態にある。そのため、プリフォーム本体10aが、突条部106の両端縁側の段差に対して湾曲するように延伸されていくにつれて、突条部106の両端縁に沿って形成されたエッジ部106aに被覆材層50が押し当てられていくと、被覆材層50のエッジ部106aに圧接された部位が、押し退けられるようにして、プリフォーム本体10aの湾曲するように延伸された部位と、突条部106の両端縁側の段差との間を埋めるように流動する。これにより、被覆材層50は、概ね突条部106の形状通りに賦形され、突条部106のエッジ部106aに沿って線状に薄肉となるように成形される(
図9参照)。
【0036】
その結果、ブロー成形後の容器1において、被覆層5には、帯状凹部6の両端縁に形成された段差部6bに沿って、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部5cが形成される(
図2参照)。
【0037】
このようにして、被覆層5に線状薄肉部5cが形成されるようにするにあたり、線状薄肉部5cが、より細幅で、かつ、より明瞭に形成されているほど、線状薄肉部5cに沿って被覆層5を引き裂き易くなる。このような観点から、突条部106の形状、寸法などを適宜設計するのが好ましい。
【0038】
例えば、突条部106の段差h
1、すなわち、図示する例では、突条部106の上面と隣接するキャビティ面との高低差h
1や、突条部106の両端縁に沿って形成されるエッジ部106aの角度θ
1、すなわち、突条部106の上面と、当該上面とともにエッジ部106aを形成する突条部106の側面とのなす角度θ
1などが、上記観点から適宜設計される。
なお、上記のようにして被覆層5に線状薄肉部5cを形成することができれば、突条部106の両端縁に沿って形成されるエッジ部106aには、
図7に示すようにRをつけてもよい。
【0039】
また、プリフォーム本体10aに賦形される窪み部7も同様に、周縁にエッジ部107aが形成されるように切り立って設けられた突出部107の形状通りには賦形されない。
図11~
図13に示すように、延伸されたプリフォーム本体10aが、被覆材層50を介して突出部107の上面に接すると、エッジ部107aが形成された周縁側の部位は、当該周縁側の段差に対して湾曲するように延伸される。これによって、窪み部7は、その底面7aから隆起して、隣接する胴部3の周面及び帯状凹部6の底面6aのそれぞれに連なる縁部7bによって縁取られるように賦形される(
図3参照)。
【0040】
その際、突出部107のエッジ部107aが形成された周縁側に一定以上の段差があると、プリフォーム本体10aが、かかる段差に対して湾曲するように延伸するにつれて、プリフォーム本体10aと突出部107の上面とに挟まれた被覆材層50が押圧されて、突出部107の上面から周縁側にはみ出すように流動していくようになる(
図12参照)。これにより、当該段差との間に肉溜まりが形成されるようにして、突出部107のエッジ部107aが形成された周縁側では、被覆材層50が厚肉に成形されるのに対して、プリフォーム本体10aと突出部107の上面とに挟まれた被覆材層50は薄肉に成形される(
図13参照)。
【0041】
その結果、ブロー成形後の容器1において、被覆層5には、窪み部7の底面7aから隆起した当該窪み部7の縁部7b上に位置する部位に、被覆層5の厚みが周囲に比して厚肉となった厚肉部5aが形成されるとともに、この厚肉部5aに連接し、かつ、当該窪み部7の底面7a側上に位置する部位に、被覆層5の厚みが周囲に比して薄肉となった薄肉部5bが形成される(
図3参照)。
【0042】
このようにして、被覆層5に、厚肉部5aと薄肉部5bとを連接させて形成するにあたり、前述したようにして、薄肉部5bを破断して、厚肉部5aを薄肉部5b側から切り離すことが、より良好になされるようにするという観点から、突出部107の形状、寸法などを適宜設計するのが好ましい。
【0043】
例えば、突出部107のエッジ部107aが形成された周縁側の段差h
2、すなわち、図示する例では、突出部107の上面と突条部106の上面との高低差h
2や、突出部107の周縁に形成されるエッジ部107aの角度θ
2、すなわち、突出部107の上面と、当該上面とともにエッジ部107aを形成する突出部107の側面とのなす角度θ
2などが、上記観点から適宜設計される。
なお、上記のようにして、被覆層5に、厚肉部5aと薄肉部5bとを連接させて形成することができれば、突出部107の周縁に形成されるエッジ部107aには、
図10に示すようにRをつけてもよい。
【0044】
また、本実施形態において、突出部107は、突条部106に連接する側において、突出部107の上面とともにエッジ部107aを形成する側面が、突条部106の両端縁に向かって凹状に湾曲するように設けられている。
このような形状となるように突出部107を設けると、プリフォーム本体10aと突出部107の上面との間で押圧されて、突出部107の上面から周縁側にはみ出す被覆材層50が、当該側面の中央側に集まるようなり、これによって、被覆層5に形成される厚肉部5aをより厚肉にして、薄肉部5b側からより容易に切り離すことができるようになるため好ましい。
【0045】
本実施形態において、容器本体1a(プリフォーム本体10a)を形成する樹脂材料としては、リサイクル性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル(ガラス転移点:50~90℃、融点:200~275℃)を好ましく用いることができる。
【0046】
被覆層5(被覆材層50)を形成する樹脂材料としては、容器本体1aと被覆層5とを容易に分別できるようにする観点から、容器本体1aを形成する樹脂材料と非相溶性の熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
例えば、容器本体1aを形成する樹脂材料として、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを用いる場合、被覆層5を形成する樹脂材料には、ポリプロピレン(融点:160~170℃)、ポリエチレン(融点:95~140℃)等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂は、一般に、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルよりも融点が低いため、ブロー成形に際して、プリフォーム10を加熱して、プリフォーム本体10aを延伸可能に軟化させつつ、被覆材層50を熔融状態又は半熔融状態とする際の加熱温度の調整が容易となるため好ましいが、これに限定されない。
例えば、容器1にガスバリア性が要求される場合には、被覆層5を形成する樹脂材料に、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0047】
また、容器1に遮光性が要求される場合には、被覆層5を形成する樹脂材料に、顔料や着色剤などを添加して、所望の色相に着色することができる。装飾効果を高めるために、複数の顔料や着色剤を混ぜてマーブル模様となるように添加することもできる。被覆層5を形成する樹脂材料には、容器本体1aに求められるリサイクル性によって制限されることなく、各種の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0048】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0049】
例えば、容器1の容器本体1aに窪み部7を賦形する突出部107の形状は、前述した実施形態で示した例には限定されない。
図14及び
図15に示すように、突出部107をM字状に設けて、突条部106に連接する側とは反対の側も、周縁にエッジ部107bが形成されるように、切り立った形状としてもよい。このようにすることで、容器本体1aに賦形された窪み部7の帯状凹部6と反対側の縁部上にも、被覆層5を引き裂く起点となる厚肉部を形成することができる。
なお、
図14は、
図6に示す例と同様にして、突出部107の上記変形例を斜視して示すキャビティ面の要部斜視図であり、
図15は、
図14のE-E端面図である。
【0050】
また、突出部107は、突出部107の上面とともにエッジ部107aを形成する側面が、前述した実施形態のように、突条部106の両端縁に向かって凹状に湾曲するように設けられていなくてもよい。例えば、
図16及び
図17に示すように、当該側面が、突条部106の一端側から他端側に向かって傾斜するように設けられていてもよく、特に図示しないが、突条部106の長手方向に対して直交する平面状に設けられていてもよい。
なお、
図16は、
図6に示す例と同様にして、突出部107の上記変形例を斜視して示すキャビティ面の要部斜視図であり、
図17は、
図16のF-F端面図である。
【0051】
また、前述した実施形態では、帯状凹部6が、高さ方向に沿って、所定の幅で胴部3の上端側から下端側に至るように設けられているが、これに限定されない。帯状凹部6は、その両端縁に沿って被覆層5に形成される線状薄肉部5cが、引き裂きガイド部として機能するように設けられていればよい。帯状凹部6を賦形する突条部106の形状、寸法などを適宜設計変更することによって、例えば、胴部3の周面に沿って螺旋状に設けられていてもよく、窪み部7から離れるにつれて幅が広がるように設けられていてもよい。
【0052】
また、容器本体1aに設けられる帯状凹部6を省略し、これとともに帯状凹部6の両端縁に沿って被覆層5に形成される線状薄肉部5cを省略してもよい。この場合、被覆層5には、厚肉部5aを起点とする引き裂きガイド部として、CO2レーザーなどを用いて、所定の方向に沿ったミシン目などの断続的な破断部を必要に応じて形成してもよい。
【0053】
要するに、本発明は、容器本体1aに窪み部7を設け、窪み部7の縁部7b上の被覆層5に厚肉部5aを形成するとともに、窪み部7の底面7a側の被覆層5に、厚肉部5aに連接する薄肉部5bを形成し、薄肉部5bを破断して、厚肉部5aを薄肉部5b側から切り離することによって、被覆層5を引き裂く起点を形成することができれば、これを実現するために必要な構成以外は、特に限定されることなく変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 容器
1a 容器本体
5 被覆層
5a 厚肉部
5b 薄肉部
5c 線状薄肉部(引き裂きガイド部)
6 帯状凹部
6a 帯状凹部の底面
6b 段差部
7 窪み部
7a 窪み部の底面
7b 縁部
10 プリフォーム
10a プリフォーム本体
50 被覆材層
100 ブロー成形型
106 突条部
106a エッジ部
107 突出部
107a エッジ部