(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】切削装置および切削方法
(51)【国際特許分類】
B21C 1/00 20060101AFI20240312BHJP
B23D 79/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B21C1/00 P
B23D79/12 A
(21)【出願番号】P 2020023792
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 太志
(72)【発明者】
【氏名】山内 祐人
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-223511(JP,A)
【文献】実開昭59-157739(JP,U)
【文献】特開2001-146947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0016244(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101912999(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00 - 19/00
B23D 79/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がりを有する金属材料よりなる棒材に対して、切削工具で表層部を除去する皮削を行う皮削部と、
前記棒材を、前記皮削部を通過させて、軸線方向に沿って移動させる動力部と、を有し、前記皮削部によって皮削を行った棒材に対して、曲げを加えることなく、棒状製品とする切削装置において、
前記棒材は、コイル状に巻かれ、曲がりを有する状態で給材部に配置され、前記給材部から繰り出されて、曲がりが残存した状態で前記皮削部に導入され、
前記皮削部は、前記棒材が曲がりを有する状態のまま、前記切削工具を前記棒材の軸線の周りに回転させることなく、前記棒材の周方向に沿って長さを有する領域に対する皮削を
、該領域の全体に対して同時に行い、
前記動力部は、前記棒材を軸線方向に沿って連続的に移動させることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
前記動力部は、前記棒材に面接触して前記棒材を移動させることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
前記動力部は、1対のローラチェーンによって、前記棒材を対向する方向から挟み込み、前記ローラチェーンの運動によって、前記棒材を軸線方向に沿って送るチェーン搬送装置であることを特徴とする請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
前記動力部は、前記皮削部よりも下流に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の切削装置。
【請求項5】
前記皮削部および前記動力部よりも下流に、前記棒材の曲がりを矯正する矯正部をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の切削装置。
【請求項6】
前記切削装置はさらに、前記給材部においてコイル状に巻かれていた前記棒材の曲がりを部分的に解消して、前記皮削部に導入する予備矯正部を有し、
前記予備矯正部による曲がりの低減の程度は、前記矯正部による曲がりの低減の程度よりも低いことを特徴とする請求項5に記載の切削装置。
【請求項7】
前記皮削部は、前記棒材を内部に通過させる皮削用ダイスの内周面に、前記棒材の周方向に沿って、切削工具を有し、
前記棒材は、外周に沿って取り囲む前記皮削用ダイスおよび前記切削工具の形状によって位置決めされ、それ以上に強固な固定を受けないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の切削装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の切削装置により、金属材料よりなる棒材に対し、曲がりを有する状態のまま前記皮削部に導入して、皮削を行うことを特徴とする切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置および切削方法に関し、さらに詳しくは、金属材料よりなる棒材の表層部を切削によって除去する切削装置および切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
棒鋼等、金属材料よりなる棒材に対して、表層部から、傷や酸化物等のスケールを除去することが求められる。そこで、棒材の表層部の組織を除去するのに、ピーリング処理が従来一般に行われている。
【0003】
棒材に対してピーリング処理を行うに際し、バイトの刃先を棒材の表面に接触させ、バイトを棒材の軸線の周りに回転させながら、表層部の組織が除去される。この種のピーリング処理に用いられるバイトが、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイトを棒材の軸線の周りに回転させて、ピーリング処理を行う場合、回転しているバイトを棒材の外周面に接触させた状態を維持する必要がある。また、棒材を軸線に交差する方向に強固に位置決めする必要がある。この際に、棒材が曲がりを有していると、棒材の外周面に安定に接触した状態でバイトを回転させることや、棒材を位置決めすることが難しくなる。そこで、長尺状の棒材がコイル状に巻き取られている場合には、一旦棒材の曲がりを除去してから、まっすぐに伸ばした棒材に対して、ピーリング処理が行われる。
【0006】
このように、コイル状に巻かれた長尺状の棒材に対して、曲がりを除去してからピーリング処理を行う場合には、曲がりの除去に要する工程のために、棒材の生産性が低くなってしまう。曲がりを有したままの棒材に対して表層部の除去を行うことができれば、コイルから繰り出した長尺状の棒材に対して、そのまま連続的に表層部の除去を進めることが可能となり、生産性の向上が期待できる。また、上記のように、曲がりを除去した棒材の外周にバイトを回転させてピーリング処理を行う場合には、棒材を強固に固定する必要があり、固定具との接触により、棒材の表面に傷が発生してしまうため、その傷を除去できる深さまで、ピーリング処理によって、表面の組織を除去する必要がある。しかし、曲がりを有したままの棒材に対して、強固な固定を行わずに、表層部の組織を除去することができれば、除去する金属材料の量を低減することができる。
【0007】
また、コイル状に巻き取った長尺状の棒材に対して、表層部の除去を行った後、再度、コイル状に巻き取って、伸線等、次の工程を実施するための装置に搬送するとすれば、巻き取り時や搬送時に、棒材の表面に、新たな傷が形成される可能性がある。すると、表層部の除去によって得た、傷の少ない表面が、最終的に製造される棒状製品の品質として反映されにくくなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、金属材料よりなる棒材に対して、曲がりを有したままの状態で、かつ、棒材の固定や巻き取りに伴う傷の形成を回避しながら、表層部の除去を行うことができる切削装置および切削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明にかかる切削装置は、曲がりを有する金属材料よりなる棒材に対して、切削工具で表層部を除去する皮削を行う皮削部と、前記棒材を、前記皮削部を通過させて、軸線方向に沿って移動させる動力部と、を有し、前記皮削部によって皮削を行った棒材に対して、曲げを加えることなく、棒状製品とする切削装置において、前記皮削部は、前記棒材が曲がりを有する状態のまま、前記切削工具を前記棒材の軸線の周りに回転させることなく、前記棒材の周方向に沿って長さを有する領域に対する皮削を同時に行い、前記動力部は、前記棒材を軸線方向に沿って連続的に移動させる、というものである。
【0010】
ここで、前記動力部は、前記棒材に面接触して前記棒材を移動させるものであるとよい。この場合、前記動力部は、1対のローラチェーンによって、前記棒材を対向する方向から挟み込み、前記ローラチェーンの運動によって、前記棒材を軸線方向に沿って送るチェーン搬送装置であるとよい。また、前記動力部は、前記皮削部よりも下流に設けられるとよい。
【0011】
前記切削装置は、前記皮削部および前記動力部よりも下流に、前記棒材の曲がりを矯正する矯正部をさらに有するとよい。
【0012】
本発明にかかる切削方法は、上記のような切削装置により、金属材料よりなる棒材に対し、曲がりを有する状態のまま前記皮削部に導入して、皮削を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
上記発明にかかる切削装置は、表層部を除去する皮削部として、棒材の軸線の周りに切削工具を回転させることなく、棒材の周方向に沿って長さを有する領域に対する皮削を同時に行うものを用いるため、棒材の軸線の周りに回転するバイトで皮削を行う場合とは異なり、棒材をまっすぐに伸ばしておくことや、強固に固定することは、必要でない。よって、コイルから繰り出した棒材等、曲がりを有する棒材に対して、曲がりを有する状態のままでも、表層部の除去を行うことができる。棒材を強固に固定する必要がないことで、固定に起因する傷の発生も回避することができる。
【0014】
このように、切削工具を棒材の軸線の周りに回転させずに皮削を行う際に、動力部による棒材の移動に停滞が発生するとすれば、移動が停滞した際に切削工具が接触している部位で、棒材の表面組織が過剰に除去されることになり、傷の発生要因となる。しかし、動力部が、棒材を停滞させずに連続的に移動させるものであることにより、そのような停滞による傷の発生を回避することができる。よって、皮削部による皮削を経て、傷の少ない表面を有する棒状製品を製造することができる。さらに、皮削部によって皮削を行った棒材に対して、コイル形状への巻き取り等、曲げを加えることなく、棒状製品とするため、巻き取り工程や、巻き取った棒材の搬送工程において、新たな傷が形成されることも、回避できる。
【0015】
ここで、動力部が、棒材に面接触して棒材を移動させるものである場合には、棒材表面に、動力部の構成部材との接触によって、傷が形成されるのを、抑制することができる。その結果、上記のように棒材の移動の停滞による傷の発生を回避することの効果と合わせて、棒状製品の表面における傷を効果的に低減することができる。
【0016】
この場合、動力部が、1対のローラチェーンによって、棒材を対向する方向から挟み込み、ローラチェーンの運動によって、棒材を軸線方向に沿って送るチェーン搬送装置である構成によれば、簡素な構成により、棒材に面接触して、棒材を連続的に移動させる動力部とすることができる。
【0017】
また、動力部が、皮削部よりも下流に設けられる場合には、動力部が皮削部よりも上流に設けられる場合とは異なり、皮削部に導入される棒材に座屈が発生しにくくなる。
【0018】
切削装置が、皮削部および動力部よりも下流に、棒材の曲がりを矯正する矯正部をさらに有する場合には、棒材が曲がりを有する状態のまま、皮削部による皮削を行っても、切削装置によって最終的に製造される棒状製品は、曲がりのない状態とすることができる。
【0019】
上記発明にかかる切削方法においては、上記のような皮削部および動力部を有する切削装置によって皮削を行うため、皮削部に導入される棒材が曲がりを有していても、皮削に起因する傷の発生を避けながら、効率的に皮削を進め、棒状製品の製造を行うことができる。棒材の固定や巻き取りに伴う傷の形成も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかる切削装置の概略を示す図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態にかかる切削装置の概略を示す図である。
【
図3】従来のコンバインドマシンの概略を示す図である。
【
図4】動力部による棒材の移動速度の時間変化を示す図であり、(a)はチェーン搬送装置の場合、(b)はキャレッジ式搬送装置の場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態にかかる切削装置および切削方法について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態にかかる切削装置は、金属材料よりなる棒材の表層部を除去する皮削を行う装置であり、本発明の実施形態にかかる切削方法は、そのような切削装置を用いて、棒材の皮削を行うものである。
【0022】
本発明の実施形態にかかる切削装置および切削方法において加工の対象とするのは、金属材料よりなる長尺状の棒材である。対象となる金属材料は特に限定されるものではないが、ステンレス鋼等よりなる棒鋼を例示することができる。一般に、棒鋼の外径は、5mm以上とされており、本発明の実施形態にかかる切削装置および切削方法においても、概ね外径5mm以上の棒材が、加工の対象として想定される。
【0023】
1.第一の実施形態
まず、本発明の第一の実施形態にかかる切削装置1、およびそれを用いた切削方法について説明する。
【0024】
[切削装置の概要]
図1に、本発明の第一の実施形態にかかる切削装置1の概略を示す。切削装置1は、棒材Bを、軸線方向に沿った移動方向Dに、上流から下流へと移動させながら、棒材Bに対して、切削加工を施す。切削装置1は、棒材Bに対して切削加工を施す装置として、皮削部30を有している。皮削部30においては、棒材Bの表層部を切削によって除去する皮削を行い、表層部に形成された傷や、酸化物等のスケールを除去する。さらに、切削装置1は、皮削部30の下流に、棒材Bを移動方向Dに移動させる動力部として、チェーン搬送装置40を有している。
【0025】
切削装置1は、上記の皮削部30およびチェーン搬送装置40に加え、棒材Bの加工および移動を補助する各種要素を備えることが好ましい。
図1に示した形態の切削装置1に備えられている要素は、上流側から順に、給材部10、予備矯正部20、皮削部30、チェーン搬送装置40、切断部50、ポリッシング矯正部60、ロール矯正部70、集材部80となっている。
【0026】
切削装置1において、棒材Bは、チェーン搬送装置40によって、軸線方向に沿った移動方向Dに、上流から下流へと移動される。コイル状に巻かれ、曲がりを有する状態で給材部10に配置された棒材Bが、チェーン搬送装置40の動力により、切削装置1の各部を通過して、加工を受ける。
【0027】
チェーン搬送装置40は、チェーントラックとも称されるものであり、1対のローラチェーン41,41が、上下に相互に対向して配置されている。ローラチェーン41,41は、それぞれ、1対のスプロケット42,42によって回転駆動される。チェーン搬送装置40が切削装置1に組み込まれた状態において、1対のローラチェーン41,41は、棒材Bを挟んで対向し、それぞれ重力方向上方および下方から、棒材Bに面接触する。このように1対のローラチェーン41,41で棒材Bを挟み込んだ状態で、スプロケット42,42により、ローラチェーン41,41を回転させる。ローラチェーン41,41の回転方向は、棒材Bに接触した面が、移動方向Dの上流側から下流側に向かって運動するように設定する。このローラチェーン41,41の運動により、棒材Bは、移動方向Dに沿って移動され、皮削部30を含め、切削装置1の各要素を通過する。ローラチェーン41,41が連続的に回転運動するものであることから、チェーン搬送装置40は、棒材Bを、間断なく連続的に、つまり途中で停滞させることなく、移動方向Dに沿って、下流へと移動させることができる。チェーン搬送装置40による棒材Bの搬送速度は、皮削部30による皮削を良好な条件で行えるように設定すればよい。例えば、80~120m/min.との速度を、好適な搬送速度として挙げることができる。
【0028】
給材部10においては、チェーン搬送装置40による送り動作によって、棒材Bが受動的に繰り出される。給材部10の下流に設けられた予備矯正部20においては、給材部10においてコイル状に巻かれていた棒材Bの曲がりを、皮削部30における皮削が可能な程度に、部分的に解消する。予備矯正部20においては、対向して設けられた複数の予備矯正ロール21の間に棒材Bを通すことで、棒材Bの曲がりを低減する。予備矯正部20による曲がりの低減の程度は、後述するロール矯正部70による曲がりの低減の程度よりも低く、皮削部30に導入される段階で、棒材Bには曲がりが残存している。なお、皮削部30において、大きく曲がった棒材Bに対しても皮削が可能である場合には、予備矯正部20を省略してもよい。
【0029】
予備矯正部20における曲がりの部分的な矯正を受けた棒材Bは、チェーン搬送装置40によって、皮削部30に導入される。皮削部30は、切削工具31により、棒材Bの表層部の組織を切削することで、表層部に形成された傷やスケールを除く皮削を行う。切削工具31は、棒材Bの軸線の周りに回転することなく、移動方向Dに移動する棒材Bに対して、皮削を行う。また、切削工具31は、棒材Bの周方向に沿って長さを有する領域に対して、好ましくは棒材Bの全周に対して、同時に皮削を行うものとして構成されている。そのような切削工具31の好適な例として、フライスカッター等のカッターを挙げることができる。皮削部30に、棒材Bを内部に通過させる皮削用ダイス32を設けておき、棒材Bを収容する皮削用ダイス32の内周面に、棒材Bの周方向に沿って、好ましくは棒材Bの全周を囲んで、フライスカッター等よりなる切削工具31を設けておけばよい。
【0030】
皮削部30によって皮削を受けた棒材Bは、引き続き、チェーン搬送装置40から移動方向Dに沿って印加される動力により、皮削部30よりも下流に設けられた各要素を通過し、加工を受ける。具体的には、皮削部30によって皮削を受けた棒材Bは、チェーン搬送装置40によって搬送された状態で、切断刃を有する切断部50により、軸線方向に沿って、所定の長さに切断される。
【0031】
切断された棒材Bは、ポリッシング矯正部60と、続くロール矯正部70よりなる矯正部によって、曲がりを矯正され、直棒状とされる。ポリッシング矯正部60においては、ポリッシングディスク61によって表面研磨を行いながら、中間ノズル62によって形状矯正を行う。ロール矯正部70は、相互に対向する上ロール71と下ロール72の組を、移動方向Dに沿って2組有しており、各上ロール71と下ロール72の間に棒材Bを通すことで、棒材Bの曲がりを強力に矯正する。
【0032】
このようにして、棒材Bに対する皮削、切断、矯正を経て製造された棒状製品B1は、集材部80において集積され、複数本がまとめられて、結束部材bによって結束される。集積された棒状製品B1は、適宜、出荷や次工程での加工に供される。ロール矯正部70と集材部80の間には、適宜、棒材Bの傷の有無や、寸法、曲がり等を検査するために、渦流探傷装置等よりなる検査部(図略)を設けてもよい。
【0033】
本実施形態にかかる切削装置1においては、皮削部30での皮削を経た後、棒材Bに対して、さらに曲がりを加えることはない。この点において、本切削装置1は、棒材よりも細径の金属材料である線材の皮削を行う線材切削装置と、区別される。線材切削装置においては、コイル状に巻き取られた線材を線状に伸ばして皮削等の加工を行った後、再度線材をコイル状に巻き取る。これに対し、棒材Bを加工対象とした本実施形態にかかる切削装置1においては、皮削部30での皮削を経た後の棒材Bおよび棒状製品B1に対して、コイル形状への再度の巻き取り等、曲げを加え、軸線方向に沿った曲がりを増大させることはない。むしろ、ポリッシング矯正部60およびロール矯正部70によって曲げを低減している。
【0034】
[従来装置をもとにした切削装置の構築]
上記で説明した本発明の第一の実施形態にかかる切削装置1は、棒材の伸線を、切断、曲がりの矯正等、他の加工と一括して行うことができる従来一般のコンバインドマシン(CM;複合加工機)をもとに、簡便に構築することができる。
【0035】
図3に、従来一般のコンバインドマシン100の構成の一例を示す。
図1の本発明の第一の実施形態にかかる切削装置1と共通する構成要素については、同じ符号で指示している。コンバインドマシン100は、棒材Bの移動方向Dに沿って上流側から、給材部10、予備矯正部20、ショットブラスト部95、伸線部90、キャレッジ式搬送装置140、切断部50、ポリッシング矯正部60、ロール矯正部70、集材部80を有している。
【0036】
コンバインドマシン100においては、棒材Bを移動方向Dに沿って移動させる動力部として、キャレッジ式搬送装置140が設けられている。キャレッジ式搬送装置140は、1対のキャレッジ141a,141bを有している。各キャレッジ141a,141bは、爪状の部材を用いて外周面の複数の方向から棒材Bを把持するジョー(不図示)を有している。キャレッジ141a,141bは、棒材Bの移動方向Dに沿って、所定の可動範囲の中で、往復運動可能となっている(運動m1)。キャレッジ141a,141bの一方で棒材Bを把持して、そのキャレッジを移動方向Dに沿って下流側に運動させることで、棒材Bを移動方向Dに沿って下流側に移動させることができる。1対のキャレッジ141a,141bは、移動方向Dに沿って並んで配置されている。一方のキャレッジ141aが棒材Bを把持して可動範囲の最下流まで運動すると、棒材Bの把持を解除して可動範囲の最上流に運動し、再度棒材Bを把持する。そのキャレッジ141aが棒材Bを把持せずに上流側に運動している間、他方のキャレッジ141bが棒材Bを把持して、下流側に運動する。このようにして、1対のキャレッジ141a,141bは、交互に棒材Bを把持して下流側に移動させる。
【0037】
ショットブラスト部95は、研磨剤を用いたショットブラストにより、棒材Bの表面の酸化物等を除去する。伸線部90は、伸線ダイスを用いて、棒材Bを縮径し、伸線する。
【0038】
このようなコンバインドマシン100において、伸線部90を皮削部30に置換するとともに、キャレッジ式搬送装置140をチェーン搬送装置40に置換することで、上記で説明した本発明の第一の実施形態にかかる切削装置1を構築することができる。
【0039】
切削装置1を構築する際に、下記で説明する第二の実施形態にかかる切削装置2のように、伸線部90を残すことも考えられるが、本実施形態にかかる切削装置1においては、伸線部90は残さない。棒材Bに対して伸線を行うことで、棒材Bの表面の酸化物等の不純物や傷等の損傷の密度を低くし、製造される棒状製品B1における不純物や損傷の影響を軽減することができる。一方で、棒材Bに対して伸線を行うと、縮径に伴って加工硬化等の特性変化が起こるおそれがある。ステンレス棒鋼に関する規格を定めているJIS G 4303でも、表面の黒皮の除去のために、酸洗や切削を行うことは認められているが、伸線を行うことは認められていない。本実施形態にかかる切削装置1においては、伸線に伴う加工硬化を避けることを優先して、伸線部90を設けない。本実施形態にかかる切削装置1においては、皮削部30によって十分に表面の不純物や損傷を除去することができるうえ、後に詳しく説明するように、チェーン搬送装置40によって棒材Bを搬送する際に、棒材Bに新たな傷を形成する可能性が低いため、表面の不純物や損傷の低密度化の観点からは、伸線部90を省略しても、問題ない。皮削部30において棒材Bの表層部の組織を切削して除去するので、伸線部90の上流側に設けられていたショットブラスト部95も省略することができる。
【0040】
[皮削部による皮削と動力部による棒材の移動の形態]
上記のように、本実施形態にかかる切削装置1の皮削部30においては、切削工具31が、皮削部30を通過する棒材Bの軸線の周りに回転することなく、棒材Bの周方向に沿って、全周等、長さを有する領域に対して、皮削を同時に行う。このような皮削部30を用いることで、給材部10でコイルから繰り出した棒材Bが曲がりを有する状態のままでも、皮削を行うことができる。
【0041】
特許文献1に開示される切削工具のように、棒材Bの周方向の1か所を切削する形態の切削工具を棒材Bの軸線の周りに回転させて、切削を行う場合には、棒材Bの周方向に沿って高い均一性をもって切削を行うためには、切削工具が回転する間、同じ条件(角度や深さ等)で切削工具が棒材Bの外周面に接触した状態を保つことが、重要となる。棒材Bが曲がりを有していると、切削工具が棒材Bの表面に接触する条件が、周方向に沿った位置によって変化する可能性がある。さらには、切削工具が棒材Bの表面から離れてしまう可能性もある。そのため、棒材Bの曲がりを矯正して直棒状とした状態で、皮削を行う必要がある。
【0042】
これに対し、本実施形態の皮削部30のように、切削工具31を回転させない場合には、棒材Bの直線性の高さは、切削の均一性において、それほど重要とならない。よって、本実施形態にかかる切削装置1においては、曲がりが残ったままの棒材Bに対して皮削を行うことができ、給材部10においてコイルから繰り出したままの棒材Bを、そのままの状態で、あるいは予備矯正部20で簡易的に曲がりを矯正した程度の状態で、皮削部30に導入することができる。その結果、切削装置1の簡素化および棒状製品B1の生産性の向上につなげることができる。また、棒材Bの周方向に沿って、均一性の高い切削を行えることにより、棒状製品B1の断面形状の精度を高めることができる。特に、棒材Bの皮削を全周にわたって同時に行う形態においては、断面形状の真円度を高めることができる。
【0043】
また、切削工具を棒材Bの軸線の周りに回転させて皮削を行う場合には、切削工具が回転する間、切削工具が同じ条件で棒材Bの外周面に接触した状態を保つために、棒材Bを軸線に交差する方向に強固に固定し、位置決めすることも重要である。このため、回転式のバイトを切削工具として用いる場合には、棒材Bの曲がりを矯正して強固な固定に適した状態とするとともに、固定具を棒材Bの表面に食い込ませる等して、棒材Bを強固に把持することが多い。この際、固定具の接触により、棒材Bの表面に傷が発生する。すると、その傷を除去するために、切削工具による皮削の深さを大きくする必要が生じ、材料歩留りが低くなる。典型的には、その種の固定具の接触によって形成される傷の深さは、0.7mm程度であり、0.7mm以上の深さで皮削を行う必要が生じる。これに対し、本実施形態における皮削部30のように、切削工具31を回転させずに皮削を行う場合には、棒材Bを外周に沿って取り囲む皮削用ダイス32および切削工具31の形状によって棒材Bを位置決めする程度で、棒材Bの周方向に沿って均一性の高い皮削を行うことができ、強固な位置決めによって生じる傷を除去するために深い切削を行うような必要性は生じない。そのため、皮削の深さを浅くすることができる。切削工具31として棒材Bの全周を同時に皮削するフライスカッターを用いる場合に、典型的には、皮削の深さを、0.2~0.3mm程度に抑えることができる。
【0044】
本実施形態にかかる切削装置1においては、皮削部30が、切削工具31の周方向に沿って長さを有する領域に対して、皮削を同時に行えるものであることにより、もし、移動方向Dに沿った棒材Bの移動が、一次的に停止、または低速化する停滞期間が存在するとすれば、その停滞期間に切削工具31が接触している棒材Bの部位が、長時間の切削を受けることになる。すると、その部位が、軸線方向の他の部位よりも、余分に表層部の組織の除去を受け、深く切削されることになる。結果として、その部位に、鋼材Bの周に沿った溝のような傷が形成されることになる。このような傷は、ストップ傷と称される。
【0045】
従来一般のコンバインドマシン100で用いられているキャレッジ式搬送装置140は、上記で説明したように、1対のキャレッジ141a,141bを有し、一方のキャレッジ141aが可動範囲の下流端まで棒材Bを搬送した後、棒材Bの把持を解放し、他方のキャレッジ141bが可動範囲の上流端で棒材Bを把持し、搬送を開始する。この際、一方のキャレッジ141aが棒材Bの把持を解放するとともに、他方のキャレッジ141bが棒材Bを把持する動作に、所定の時間を要する。この時間の間は、棒材Bを移動方向Dに移動させることができない。時間の経過に対して、棒材Bの移動速度を記録すると、
図4(b)に示すように、キャレッジ141a,141bの往復運動に対応した時間間隔で、移動速度に落ち込みが生じる。よって、キャレッジ式搬送装置140では、棒材Bの移動を、等速で間断なく連続的に行うことができず、棒材Bの移動が停止する、あるいは棒材Bの移動速度が遅くなる停滞期間が、不可避的に生じる。もし、本実施形態にかかる切削装置1において、棒材Bを移動方向Dに移動させる動力部として、キャレッジ式搬送装置140のように、停滞期間を有する搬送装置を用いるとすれば、その停滞期間において、棒材Bにストップ傷が形成されることになる。
【0046】
しかし、本実施形態において、棒材Bを移動方向Dに移動させる動力部として用いているチェーン搬送装置40においては、ローラチェーン41,41が間断なく連続的に回転することで、棒材Bを搬送する。よって、時間の経過に対して、棒材Bの移動速度を記録すると、
図4(a)に示すように、棒材Bの移動速度が、時間によらず略一定となる。よって、棒材Bの移動を、略等速で、間断なく連続的に行うことができる。棒材Bの移動が停止する、あるいは棒材Bの移動速度が遅くなる停滞期間は生じない。よって、皮削部30において、棒材Bにストップ傷は形成されない。
【0047】
動力部の具体的な構成としては、軸線方向に沿った移動方向Dに、棒材Bを連続的に移動させることができるものであれば、上記のようなチェーン搬送装置40に限られない。キャレッジ式搬送装置140のキャレッジ141a,141bように、移動方向Dに沿って往復して並進運動する部材を用いる形態の動力部の場合には、棒材Bの把持と解放等、往復運動の可動範囲の両端で行われる動作に起因して、棒材Bの搬送に停滞期間が生じやすい。これに対し、チェーン搬送装置40のローラチェーン41,41のように、単一方向に回転する環状の部材を用いる形態の動力部の場合には、回転運動の連続性により、棒材Bの搬送に停滞期間が生じにくく、棒材Bの連続移動を実現しやすい。棒材Bを連続的に移動させることができるチェーン搬送装置40以外の動力部として、棒材Bに重力方向下方で接触して棒材Bを送るコンベア装置等を例示することができる。なお、チェーン搬送装置40の運動を詳細に解析すると、スプロケット42,42の刃の間隔に対応して、運動速度が周期的に変動するが、そのような短い周期における運動速度の変動が存在しても、皮削部30におけるストップ傷の形成につながらず、棒材Bが連続的に移動しているとみなすことができる。
【0048】
動力部は、上記のチェーン搬送装置40のように、棒材Bに面接触して、棒材Bを移動させるものであることが好ましい。つまり、棒材Bの軸線方向に沿って、棒材Bの径よりも長い所定の長さ領域にわたって、棒材Bの表面に接触した状態で、棒材Bを移動させるものであることが好ましい。棒材Bに面接触することで、動力部の構成部材から棒材Bに印加される荷重を分散させ、外周面の単位面積当たりに印加される荷重を小さく抑えた状態で、棒材Bの移動を行うことができる。その結果、動力部を構成する部材との接触によって棒材Bの表面に傷等の損傷が形成されるのを、抑制することができる。動力部を構成する部材との接触によって傷が発生するとすれば、皮削部30において皮削を行って得た、棒材Bの表面の平滑性が、損なわれることになる。
【0049】
本実施形態にかかる切削装置1においては、動力部としてのチェーン搬送装置40を、皮削部30よりも下流に設けて、下流側から引くようにして、皮削部30に棒材Bを通過させている。動力部を皮削部30よりも上流に設けて、上流側から押し出すようにして、皮削部30に棒材Bを通過させることも可能ではある。しかし、皮削部30が、棒材Bの周方向に沿って、全周等、長さを有する領域に同時に接触して皮削を行うものであることから、上流側から押し出すように棒材Bを導入するとすれば、棒材Bと切削工具31の接触部において、棒材Bに座屈が発生する可能性がある。動力部を皮削部30の下流側に設けて、棒材Bを引くようにして皮削部30に導入することで、このような座屈の発生を防止することができる。
【0050】
また、本実施形態1において、皮削部30の切削工具31として、フライスカッター等のカッターを用いる場合に、チェーン搬送装置40による搬送速度を、80~100m/min.のように高速にしておく方が、棒材Bの表面の切削を、好条件で行うことができる。高速で棒材Bを移動させながら切削を行うことで、切削工具31への金属材料の溶着を抑制するとともに、棒材Bの表面肌劣化を抑制することができる。また、切削抵抗を低減することができる。なお、棒材の軸線の周りにバイトの刃先を回転させながら、ピーリングを行う形態においては、棒材の送り速度は、典型的には、10m/min.以下とされる。
【0051】
さらに、本実施形態にかかる切削装置1においては、チェーン搬送装置40のすぐ下流に切断部50を設け、皮削部30によって切削を受けた棒材Bを、チェーン搬送装置40で搬送した状態で、切断部50によって切断し、棒状製品B1に必要な長さに加工している。長尺状の棒材Bを、コイル状に巻き取って、他の加工装置に搬送し、他の加工を適宜経たうえで、切断を行うものではない。よって、コイル形状へ巻き取りや、コイル形状での搬送等の工程で、皮削後の棒材Bの表面に、傷が形成される可能性を、排除することができる。そのため、皮削部30での皮削によって得られた傷の少ない表面を、最終的な棒状製品B1の品質として、反映させやすい。
【0052】
[切削方法]
次に、上記切削装置1を用いた切削方法について、簡単に説明する。
【0053】
本実施形態にかかる切削方法においては、上記で説明した切削装置1を用いて、棒材Bの皮削を行う。コイル状に巻き取った棒材Bを給材部10に設置し、チェーン搬送装置40によって、移動方向Dに棒材Bを移動させながら、皮削部30をはじめ、各構成要素による加工を、棒材Bに順に施す。
【0054】
給材部10から繰り出された棒材Bに対して、予備矯正部20を経て、曲がりが残った状態のまま、皮削部30に導入し、皮削を行う。そして、切断部50による切断、ポリッシング矯正部60およびロール矯正部70による曲がりの矯正を行って、棒状製品B1を製造し、集積部80において、棒状製品B1を集積する。
【0055】
皮削部30による皮削を経た後、切削装置1において、棒材Bおよび棒状製品B1に曲げを加える操作は行わない。さらに、切削装置1以外の装置においても、皮削部30による皮削を経た後の棒材Bおよび棒状製品B1に対して、曲げを加えないことが好ましい。
【0056】
また、切削装置1は伸線部を有しておらず、切削装置1において、棒材Bおよび棒状製品B1に対して伸線を行うことはない。さらに、切削装置1以外の装置においても、皮削部30による皮削を経た後の棒材Bおよび棒状製品B1に対して、伸線を行わないことが好ましい。例えば、切削装置1によって皮削を行った後、上記で説明した伸線部90を有するコンバインドマシン100等、伸線を目的とした他の装置での加工を行わない方がよい。本切削装置1の皮削部30によって、棒材Bの表層部の不純物や傷を十分に除去できることから、不純物や傷の影響の軽減を目的として伸線を行う必要がなく、伸線を省略することで、切削装置1での加工を含む棒状製品B1の製造工程全体を簡略化することができるとともに、伸線に伴う硬化等の特性変化を回避することができるからである。
【0057】
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態にかかる切削装置2、およびそれを用いた切削方法について説明する。以下では、上記第一の実施形態にかかる切削装置1およびそれを用いた切削方法と相違する点を中心に、説明を行う。第一の実施形態にかかる切削装置1と共通する構成については、図中に対応する符号で表示し、説明を省略する。
【0058】
図2に、本発明の第二の実施形態にかかる切削装置2の概略を示す。
図2では、切削装置2を上下2段で表示しているが、実際の切削装置2においては、上段に記載した部位の下流に、下段に記載した部位が、連続して設けられている。
【0059】
上記第一の実施形態にかかる切削装置1においては、伸線部が設けられていなかったのに対し、第二の実施形態にかかる切削装置2は、伸線部90を有している。切削装置2は、棒材Bの移動方向Dに沿って上流側から、給材部10、予備矯正部20、皮削部30、第一のチェーン搬送装置40A、ショットブラスト部95、伸線部90、第二のチェーン搬送装置40B、切断部50、ポリッシング矯正部60、ロール矯正部70、集材部80を有している。さらに、第二のチェーン搬送部40Bと切断部50の間に、スピナー矯正部を設けてもよく、ロール矯正部70と集材部80の間に、渦流探傷装置等よりなる検査部を設けてもよい(いずれも図略)。
【0060】
伸線部90は、伸線ダイスを用いて、棒材Bを縮径し、伸線する装置である。棒材Bに対して伸線を行うことで、棒材Bの表面の酸化物等の不純物や傷等の損傷の密度を低くし、製造される棒状製品B1における不純物や損傷の影響を軽減することができる。例えば、減面率8~14%で伸線を行う形態を例示することができる。
【0061】
本実施形態にかかる切削装置2は、2台のチェーン搬送装置40A,40Bを備えており、それぞれ、第一の実施形態にかかるチェーン搬送装置40と同様の構成を有している。上流側に設けられた第一のチェーン搬送装置40Aは、皮削部30に棒材Bを通過させるものであり、下流側に設けられた第二のチェーン搬送装置40Bは、伸線部90に棒材Bを通過させるものである。2台のチェーン搬送装置40A,40Bは同調して運転され、同じ速度で、棒材Bを搬送する。
【0062】
本実施形態にかかる切削装置2は、皮削部30を備えた切削装置と、コンバインドマシンを直結させたものであるとみなすことができる。そして、本実施形態にかかる切削装置2は、
図3に示すような従来一般のコンバインドマシン100の上流に、皮削部30および第一のチェーン搬送装置40Aを増設するとともに、伸線部90の下流のキャレッジ式搬送装置140を、第二のチェーン搬送装置40Bに置換することで、簡便に構築することができる。
【0063】
第一の実施形態について説明したように、伸線部90を用いて、棒材Bに対して伸線を施すことで、棒材Bの表面の酸化物等の不純物や傷等の損傷の密度を低くし、製造される棒状製品B1における不純物や損傷の影響を軽減することができる。よって、伸線部90を皮削部30と併用することで、表層部における不純物や損傷が特に少なくなった棒状製品B1を、製造することができる。伸線により、棒材Bの変性が起こりやすくはなるが、JIS G 4303の規格を満たす必要がない場合等、変性の回避よりも不純物や損傷の低減を優先したい場合には、第二の実施形態にかかる切削装置2のように、皮削部30に加えて伸線部90を設ければよい。
【0064】
第二の実施形態にかかる切削装置2においては、皮削部30に棒材Bを通過させるための動力部のみならず、伸線部90に棒材Bを通過させるための動力部として、従来一般のコンバインドマシン100に用いられているキャレッジ式搬送装置140ではなく、チェーン搬送装置40A,40Bを用いている。それにより、第一の実施形態にかかる切削装置1の場合と同様に、動力部による搬送に起因するストップ傷が棒材Bに形成されるのを、防止することができる。また、2つの動力部を両方ともチェーン搬送装置とすることで、それぞれ別の種類の搬送装置を用いる場合よりも、相互に同調して、同じ速度で棒材Bを搬送させやすい。カッターよりなる切削工具31を備えた皮削部30による皮削も、伸線ダイスを備えた伸線部90による伸線も、同程度の高速で棒材Bを移動させながら、良好に実施することができる。例えば、2台のチェーン搬送装置40A,40Bによる棒材Bの搬送速度を、80~100m/min.とすればよい。
【0065】
なお、皮削部30を備えた切削装置を、コンバインドマシン100とは別に設置し、切削装置による皮削を終えた棒材Bを、コンバインドマシン100に移動させ、伸線部90による伸線等の加工を行う形態としても、皮削と伸線の両方を棒材Bに施すことができる。しかし、その場合には、切削装置において皮削を終えた棒材Bを、例えばコイル形状に巻き取って、コンバインドマシン100まで運搬する必要がある。すると、コイル形状への巻き取りの工程や、コイル形状での運搬の工程において、棒材Bの表面に傷が形成されてしまう。これに対し、上記のように、皮削部30とコンバインドマシン100を直結させた構成に相当する、本発明の第二の実施形態にかかる切削装置2を用いて、皮削と伸線の間にコイル形状への巻き取りや運搬を行うことなく、皮削部30による皮削と伸線部90による伸線を連続して行うことで、巻き取りや運搬に伴う傷の形成を回避することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1,2 切削装置
10 給材部
20 予備矯正部
30 皮削部
31 切削工具
32 皮削用ダイス
40,40A,40B チェーン搬送装置(動力部)
50 切断部
60 ポリッシング矯正部
70 ロール矯正部
80 集材部
90 伸線部
95 ショットブラスト部
B 棒材
B1 棒状製品
D 移動方向