(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】画像処理装置、放射線画像システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240312BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240312BHJP
G06T 5/70 20240101ALI20240312BHJP
【FI】
G06T1/00 290A
A61B6/00 530A
A61B6/00 550M
A61B6/00 550Z
G06T5/70
(21)【出願番号】P 2020026839
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金森 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】野地 翔
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136899(JP,A)
【文献】特開2009-021814(JP,A)
【文献】特開2010-022420(JP,A)
【文献】特開2020-014562(JP,A)
【文献】特開2016-105254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
A61B 6/00
G06T 5/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像からスジを除去する処理手段を備える画像処理装置であって、
前記処理手段は、前記画像の前記スジと垂直方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記画像から除去する画像処理装置。
【請求項2】
画像からスジを除去する処理手段を備える画像処理装置であって、
前記画像は動画像であり、
前記処理手段は、前記動画像の時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記動画像から除去する画像処理装置。
【請求項3】
画像又は前記画像の解析画像からスジを除去する処理手段を備える画像処理装置であって、
前記画像は、被写体に放射線撮影を行う放射線撮影装置により取得された画像であり、
前記処理手段は、前記画像の空間方向又は時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関解析及び/又は共分散解析を行うことによって、前記スジの信号成分に関する情報を算出し、算出した前記スジの信号成分に関する情報に基づいて、前記画像又は前記解析画像から前記スジを除去する画像処理装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記スジの信号成分が所定の閾値以上である場合に、警告を行う請求項
3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像は、被写体の胸部を連続的に複数回放射線撮影することにより得られた動態画像であり、
前記動態画像の画素ごと又は小領域ごとの画像信号値の時間変化を示す出力信号波形を時間方向にずらしながら心拍信号波形との相関係数を求めることにより血流解析画像を生成する解析手段を備え、
前記処理手段は、下記の(1)~(5)の処理を実行することにより前記血流解析画像から前記スジを除去する請求項
3又は4に記載の画像処理装置。
(1)前記動態画像の肺野領域外の時間方向の画像プロファイルを取得
(2)前記心拍信号波形を基準信号波形として、前記心拍信号波形と前記画像プロファイルの共分散を算出することにより、前記心拍信号波形とスジの共分散を算出
(3)前記画像プロファイルに含まれるスジの信号成分と前記心拍信号波形の信号成分の回帰直線の係数を最小二乗法を用いて算出することにより、前記スジの信号波形を求め、前記スジの信号波形の分散を算出
(4)前記動態画像の肺野領域内の画像信号の時間変化を示す波形と前記スジの信号波形の共分散を算出
(5)前記(2)~(4)の算出結果を用いて、前記血流解析画像の前記画素ごと又は前記小領域ごとの相関係数を補正することにより、前記血流解析画像から前記心拍信号波形の周波数のスジを除去
【請求項6】
前記処理手段は、前記画像プロファイルを前記放射線撮影に用いられた放射線検出器の画素領域の周囲に設けられた前記画素領域の画素相当の容量を持つノイズ検出用コンデンサーから取得する請求項
3~5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像は、放射線撮影により取得された画像であり、
前記処理手段は、前記画像プロファイルを前記放射線撮影に用いられた放射線検出器において放射線の照射が遮断された領域に対応する画像領域から取得する請求項
3~5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理手段は、さらに、フィルタリング処理による前記スジの除去を組み合わせる請求項
3~7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
被写体に放射線撮影を行う放射線撮影装置と、
を備え、
前記処理手段は、前記放射線撮影装置により取得された画像又は前記画像の解析画像に前記スジの除去を行う放射線画像システム。
【請求項10】
前記処理手段は、前記放射線撮影装置における撮影モードに応じて前記スジの除去を行うか否かを切り替える請求項9に記載の放射線画像システム。
【請求項11】
前記放射線撮影装置により取得された画像を表示する表示手段を備え、
前記処理手段は、前記放射線撮影装置により取得された前記画像の表示モードに応じてスジの除去を行うか否かを切り替える請求項9に記載の放射線画像システム。
【請求項12】
画像からスジを除去する画像処理装置のコンピューターを、
前記画像の前記スジと垂直方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記画像から除去する処理手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
画像からスジを除去する画像処理装置のコンピューターを、
前記画像が動画像である場合、前記動画像の時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記動画像から除去する処理手段として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
画像又は前記画像の解析画像からスジを除去する画像処理装置のコンピューターを、
前記画像が、被写体に放射線撮影を行う放射線撮影装置により取得された画像である場合、前記画像の空間方向又は時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関解析及び/又は共分散解析を行うことによって、前記スジの信号成分に関する情報を算出し、算出した前記スジの信号成分に関する情報に基づいて、前記画像又は前記解析画像から前記スジを除去する処理手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、放射線画像システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像上のスジを除去するための各種技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、元画像に対してスジムラと直交する方向にメディアン処理を施し、この画像を元画像から減算し、減算して得られた画像から、濃度が閾値を超える領域の濃度を低減し、この濃度低減処理を行った画像に、スジムラ方向にローパスフィルターによる周波数処理を行い、周波数処理を施した画像を元画像から減算することにより、スジを補正することが記載されている。
【0003】
また、従来、一般的なスジ補正の手法として、フィルタリング処理を用いたスジ補正が行われている。フィルタリング処理を用いたスジ補正では、ローパスフィルターを用いて高周波のスジを補正することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、除去したいスジが被写体の周波数に近い低周波の場合、メディアン処理した画像を元画像から減算することによってスジ情報が消えてしまうため、スジが除去できない。
また、フィルタリング処理を用いた手法では、低周波のスジの補正は困難である。例えば、フィルタリング処理で低周波のスジを除去した場合、被写体情報も消えてしまう。
【0006】
本発明の課題は、画像情報として有用な成分を損なうことなく、画像上の周期的なスジを除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
画像からスジを除去する処理手段を備える画像処理装置であって、
前記処理手段は、前記画像の前記スジと垂直方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記画像から除去する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
画像からスジを除去する処理手段を備える画像処理装置であって、
前記画像は動画像であり、
前記処理手段は、前記動画像の時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記動画像から除去する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
画像又は前記画像の解析画像からスジを除去する処理手段を備える画像処理装置であって、
前記画像は、被写体に放射線撮影を行う放射線撮影装置により取得された画像であり、
前記処理手段は、前記画像の空間方向又は時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関解析及び/又は共分散解析を行うことによって、前記スジの信号成分に関する情報を算出し、算出した前記スジの信号成分に関する情報に基づいて、前記画像又は前記解析画像から前記スジを除去する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記処理手段は、前記スジの信号成分が所定の閾値以上である場合に、警告を行う。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、
前記画像は、被写体の胸部を連続的に複数回放射線撮影することにより得られた動態画像であり、
前記動態画像の画素ごと又は小領域ごとの画像信号値の時間変化を示す出力信号波形を時間方向にずらしながら心拍信号波形との相関係数を求めることにより血流解析画像を生成する解析手段を備え、
前記処理手段は、下記の(1)~(5)の処理を実行することにより前記血流解析画像から前記スジを除去する。
(1)前記動態画像の肺野領域外の時間方向の画像プロファイルを取得
(2)前記心拍信号波形を基準信号波形として、前記心拍信号波形と前記画像プロファイルの共分散を算出することにより、前記心拍信号波形とスジの共分散を算出
(3)前記画像プロファイルに含まれるスジの信号成分と前記心拍信号波形の信号成分の回帰直線の係数を最小二乗法を用いて算出することにより、前記スジの信号波形を求め、前記スジの信号波形の分散を算出
(4)前記動態画像の肺野領域内の画像信号の時間変化を示す波形と前記スジの信号波形の共分散を算出
(5)前記(2)~(4)の算出結果を用いて、前記血流解析画像の前記画素ごと又は前記小領域ごとの相関係数を補正することにより、前記血流解析画像から前記心拍信号波形の周波数のスジを除去
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記画像は、放射線撮影により取得された画像であり、
前記処理手段は、前記画像プロファイルを前記放射線撮影に用いられた放射線検出器の画素領域の周囲に設けられた前記画素領域の画素相当の容量を持つノイズ検出用コンデンサーから取得する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項3~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記画像は、放射線撮影により取得された画像であり、
前記処理手段は、前記画像プロファイルを前記放射線撮影に用いられた放射線検出器において放射線の照射が遮断された領域に対応する画像領域から取得する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3~7のいずれか一項に記載の発明において、
前記処理手段は、さらに、フィルタリング処理による前記スジの除去を組み合わせる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、
請求項1~8のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
被写体に放射線撮影を行う放射線撮影装置と、
を備え、
前記処理手段は、前記放射線撮影装置により取得された画像又は前記画像の解析画像に前記スジの除去を行う。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、
前記処理手段は、前記放射線撮影装置における撮影モードに応じて前記スジの除去を行うか否かを切り替える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、
前記放射線撮影装置により取得された画像を表示する表示手段を備え、
前記処理手段は、前記放射線撮影装置により取得された前記画像の表示モードに応じてスジの除去を行うか否かを切り替える。
【0018】
請求項12に記載の発明のプログラムは、
画像からスジを除去する画像処理装置のコンピューターを、
前記画像の前記スジと垂直方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記画像から除去する処理手段として機能させる。
請求項13に記載の発明のプログラムは、
画像からスジを除去する画像処理装置のコンピューターを、
前記画像が動画像である場合、前記動画像の時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関係数を算出し、算出した前記相関係数から前記スジの信号成分を逆算して前記動画像から除去する処理手段として機能させる。
請求項14に記載の発明のプログラムは、
画像又は前記画像の解析画像からスジを除去する画像処理装置のコンピューターを、
前記画像が、被写体に放射線撮影を行う放射線撮影装置により取得された画像である場合、前記画像の空間方向又は時間方向の画像プロファイルと、前記スジの基準信号波形とを取得し、前記画像プロファイルと前記基準信号波形の相関解析及び/又は共分散解析を行うことによって、前記スジの信号成分に関する情報を算出し、算出した前記スジの信号成分に関する情報に基づいて、前記画像又は前記解析画像から前記スジを除去する処理手段として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像情報として有用な成分を損なうことなく、画像上の周期的なスジを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】放射線画像システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1の撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される画像表示処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される血流解析処理を示すフローチャートである。
【
図5】血流による肺血管の広がりを模式的に示す図である。
【
図6】
図1の診断用コンソールの制御部により実行されるスジ補正処理Aを示すフローチャートである。
【
図7】スジ補正処理AにおけるROIの設定を説明するための図である。
【
図8】スジ補正処理Aの実施前と実施後の血流解析画像を示す図である。
【
図9】スジ補正処理Aの実施前と実施後の血流解析画像を示す図である。
【
図10】
図1の診断用コンソールの制御部により実行されるスジ補正処理Bを示すフローチャートである。
【
図11】スジ補正処理BにおけるROIの設定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0022】
〔放射線画像システム100の構成〕
まず、本実施形態の構成を説明する。
図1に、本実施形態における放射線画像システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、放射線画像システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。放射線画像システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0023】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、被写体Mに放射線を照射して被写体Mの動態撮影(動画撮影)又は静止画撮影を行う装置である。
動態撮影とは、被写体に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、被写体の動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像(動画像)を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。なお、本実施形態では、パルス照射により胸部の動態撮影を行う場合を例にとり説明する。
静止画撮影とは、従来のフィルム方式やCR方式と同様に撮影部位の濃度分解能に基づく診断に使用されるもので、被写体Mに対し、X線等の放射線を1回照射して一枚の静止画像を取得することをいう。
【0024】
放射線源11は、被写体M(被検者)を挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、付加フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0025】
放射線検出部13は、FPD(Flat Panel Detector)等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0026】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(静止画像又はフレーム画像)を取得する。そして、読取制御装置14は、取得した画像データを撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0027】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0028】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された静止画像や動態画像を撮影技師等の撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、
図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0029】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0030】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、
図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、検査対象部位(ここでは、胸部とする)に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0031】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、放射線照射を指示するための曝射ボタンを備える。さらに、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0032】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0033】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0034】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から画像データを取得し、取得した画像データに画像処理を施して表示する画像処理装置である。
診断用コンソール3は、
図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0035】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する画像表示処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3の各部の動作を集中制御する。制御部31は、処理手段、解析手段として機能する。
【0036】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で画像表示処理を実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムによる処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0037】
また、記憶部32には、過去に撮影された画像(静止画像や動態画像)が識別ID、患者情報(被検者情報。例えば、患者ID、患者(被検者)の氏名、身長、体重、年齢、性別等)、検査情報(例えば、検査ID、検査日、検査対象部位(ここでは、胸部)、呼吸状態等)等に対応付けて記憶されている。
【0038】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、ユーザーによるキーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0039】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種表示を行う。
【0040】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0041】
〔放射線画像システム100の動作〕
次に、本実施形態における上記放射線画像システム100の動作について説明する。
【0042】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図2に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0043】
まず、撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被検者(被写体M)の患者情報、検査情報、撮影モード(静止画撮影モード、動態撮影モード)の入力が行われる(ステップS1)。
【0044】
次いで、入力された撮影モードが判断される(ステップS2)。
【0045】
撮影モードが動態撮影モードであると判断された場合(ステップS2;動態撮影)、動態撮影用の放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、動態撮影用の画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS3)。
【0046】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS4)。ここで、撮影実施者は、被写体Mを放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。また、被検者に対し、呼吸状態(例えば、息止め又は安静呼吸)を指示する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作(曝射ボタンを押下)して放射線照射指示を入力する。
【0047】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS4;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS5)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。
【0048】
予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、若しくは、技師が放射線の曝射ボタンを開放すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。そして、ステップS9の処理に移行する。撮影されるフレーム数は、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数である。
【0049】
一方、撮影モードが静止画撮影モードであると判断された場合(ステップS2;静止画撮影)、静止画撮影用の放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、静止画撮影用の画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS6)。
【0050】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS7)。ここで、撮影実施者は、被写体Mを放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。また、被検者に対し、呼吸状態(例えば、息止め)を指示する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0051】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS7;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、静止画撮影が行われ(ステップS8)、処理はステップS9に移行する。
【0052】
撮影により取得された画像データ(静止画像、フレーム画像)は順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号(フレーム番号)や撮影モードと対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS9)、表示部24に表示される(ステップS10)。撮影実施者は、表示された画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0053】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS11;YES)、取得された画像データのそれぞれに、画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査情報、放射線照射条件、画像読取条件、撮影モード、撮影順を示す番号(フレーム番号)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS12)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS11;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS13)、本処理は終了する。この場合、再撮影が必要となる。
【0054】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3においては、通信部35を介して撮影用コンソール2から画像データが受信されると、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により
図3に示す画像表示処理が実行される。
【0055】
画像表示処理では、まず、撮影装置1における撮影モードが判断される(ステップS21)。
例えば、受信された画像データに付帯されている情報に基づいて、当該画像データの撮影時の撮影モードが判断される。
【0056】
撮影モードが静止画撮影モードであると判断された場合(ステップS21;静止画撮影)、受信された画像データに基づいて、静止画像が表示部34に表示され(ステップS22)、画像表示処理は終了する。
【0057】
撮影モードが動態撮影モードであると判断された場合(ステップS21;動態撮影)、表示モードが判断される(ステップS23)。
例えば、血流再生モードと動画再生モードのいずれの表示モードとするかを問い合わせる画面が表示部34に表示され、操作部33による入力に応じて表示モードが判断される。
【0058】
表示モードが血流表示モードであると判断された場合(ステップS23;血流表示)、まず、血流解析処理が実行される(ステップS24)。
【0059】
以下、
図4を参照して血流解析処理の流れについて説明する。血流解析処理は、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0060】
ここで、肺血管には、心臓の拍動(心拍)によって血液が流れ、血液が流れることによって肺血管は拡張する。このような心臓の拍動に呼応した肺血管の拡がりは、心臓近傍の動脈から末梢へ伝播する。肺血管が拡張すると、
図5に示すように、肺血管が拡がった領域の放射線透過量が、肺野(肺胞)領域を透過する放射線透過量よりも比較的大きく減少するので、この領域に対応する放射線検出部13の出力信号値が低下する。すなわち、胸部の動態画像において、肺野領域の血流のある箇所では、心臓の拍動と同様の周期で信号値が変化する。ただし、信号値の変化の位相は、血液が流れてくるタイミングによって異なる。そこで、本実施形態の血流解析では、動態画像を構成する一連のフレーム画像間の放射線検出部13の画素単位、または、複数画素からなる小領域単位(画素ブロック単位)を互いに対応付け、各小領域(画素)の信号値の時間変化を示す波形(出力信号波形という)を1フレーム間隔ずつずらしながら(時間方向にシフトさせながら)、画素単位又は小領域単位毎に、心臓の拍動を示す波形(心拍信号波形という)と出力信号波形との相互相関係数rを求め、各画素又は各小領域への血流の伝播の様子を表す血流解析画像として取得する。
【0061】
血流解析処理においては、まず、動態画像の各フレーム画像から肺野領域が抽出される(ステップS101)。
肺野領域の抽出方法は何れの方法であってもよい。例えば、一連のフレーム画像中の任意のフレーム画像(ここでは、撮影順が一番(最初)のフレーム画像とする。)の各画素の信号値(濃度値)のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小領域でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
【0062】
次いで、各フレーム画像の肺野領域が複数の画素ブロックからなる小領域(例えば、0.2~5mm)に分割され、各フレーム画像の小領域が互いに対応付けられる(ステップS102)。各小領域の画素の位置は、制御部31のRAMに記憶される。また、各小領域を構成する各画素の信号値は、それらの代表値(平均値、中央値、最頻値等)に置き換えられる。
【0063】
ここで、息止めや安静呼吸時に撮影された画像においては、呼吸による肺の位置ずれは小さく、後述する解析結果が狂ってしまうほどの位置ずれはおきない。そこで、ステップS102における具体的な処理としては、まず、一連のフレーム画像の中から一のフレーム画像を基準画像として設定する。次いで、基準画像の抽出された肺野領域を複数の小領域に分割する。次いで、他のフレーム画像の肺野領域を基準画像の各小領域と同じ画素位置の小領域(放射線検出部13の同じ検出素子から出力される信号値を示す領域)に分割する。次いで、各フレーム画像間の同じ画素位置の各小領域を互いに対応付ける。この処理では、フレーム画像の小領域への分割及び対応付けを高速に行うことが可能となる。
基準画像としては、息止めで撮影された画像においてはいずれのフレーム画像としてもよいが、安静呼吸時に撮影された画像においては安静呼気位のフレーム画像とすることが好ましい。安静呼気位では、安静呼吸時において横隔膜の位置が最も高くなる、即ち、肺野領域の面積が最も小さくなるので、基準画像の小領域を他のフレーム画像に対応付けたときに、小領域が他のフレーム画像の肺野外の領域に対応付けられることがないからである。
安静呼気位の画像は、例えば、一連のフレーム画像の中から横隔膜の位置が最も高い位置にある画像を抽出することで取得することができる。または、肺野領域の面積が最も小さいフレーム画像を安静呼気位の画像としてもよい。
【0064】
なお、ステップS102の処理を行わずに、以下、各小領域単位でなく、各画素単位で処理を行っていくこととしてもよい。
【0065】
次いで、心拍信号波形が取得される(ステップS103)。
心拍信号波形としては、以下の何れかを用いることができる。
(1)心臓領域(又は大動脈領域)にROI(関心領域)を定め、そのROIにおける信号値の時間変化を示す波形
(2)(1)の波形を反転させた信号波形
(3)心電検知センサより得られた心電信号波形
(4)心壁の動き(位置の変化)を示す信号波形
即ち、放射線画像システム100においては、上記(1)~(4)の何れかにより心拍信号波形を取得する手段を備える。
【0066】
上記(1)の信号波形は、操作部33により指定されたROI領域に対し、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸をROIにおける信号値(代表値)とした座標空間上に各フレーム画像のROI領域の信号値(代表値)をプロットすることにより作成することができる。
(2)は、(1)の信号波形を反転させたものである。この波形は、各小領域(又は各画素)の信号波形に近い形状としておくことにより、後段の処理工程で相互相関係数rを求めやすくしたものである。
【0067】
(3)は、動態撮影によりフレーム画像が取得されている間に心電検知センサにより同時に取得された波形である。
(4)の信号波形は、各フレーム画像においてテンプレートマッチング等により心臓領域を認識し、心壁位置の基準位置(例えば、心臓領域においてx座標(水平方向座標)が最も大きい(外側の)エッジ点)を特定し、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸を心壁位置の基準位置(x座標)とした座標空間上に各フレーム画像の心壁位置の基準位置をプロットすることにより作成することができる。
【0068】
次いで、小領域毎に、その小領域の信号値の時間変化を示す波形(出力信号波形)が生成される(ステップS104)。小領域毎の出力信号波形は、横軸を動態画像の撮影開始からの経過時間(フレーム番号)、縦軸を信号値(放射線検出部13の出力信号値の代表値。例えば、平均値、中央値、最頻値等)とした座標空間上に各フレーム画像のその小領域の代表値をプロットすることにより作成することができる。
【0069】
次いで、心拍信号波形及び各小領域の出力信号波形に時間方向のフィルタリング処理が施される(ステップS105)。
このフィルタリング処理は、呼吸等による低周波数な信号変化を除去し、血流による信号値の時間変化を出力信号波形として抽出するための処理である。例えば、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.7Hzでハイパスフィルタリングを行う。若しくは、さらに高周波数のノイズ成分を除去するために2.5Hzの高域カットオフ周波数で高周波数も遮断するバンドパスフィルターによってフィルタリングを行っても良い。
【0070】
なお、ステップS105におけるフィルタリング処理は、精度良く血流信号を抽出するために行うものであり、要求される精度や処理速度によっては省略しても構わない。
【0071】
次いで、各小領域毎に、心拍信号波形を基準信号波形として、出力信号波形を1フレーム間隔ずつずらしながら(時間方向にシフトさせながら)心拍信号波形との相互相関係数rを算出することにより、血流解析画像が生成され(ステップS106)、
図3のステップS25に移行する。
例えば、最初に、撮影開始からのフレーム番号が互いに一致した同一時間軸の心拍信号波形と出力信号波形の2つの信号波形の相互相関係数rを算出し(時間シフトなしの相互相関係数rを算出し)、フレーム画像を生成する。次いで、心拍信号波形に対して、出力信号波形を1フレーム分左へシフト、すなわち、1フレーム間隔進めて、2つの信号波形の相互相関係数rを算出し、フレーム画像を生成する。以下、出力信号波形の左シフトを繰り返し、各小領域に対してそれぞれ出力信号波形を、シフトなしから1心拍周期以上左シフトした相互相関係数rを算出し、複数のフレーム画像からなる血流解析画像を生成する。シフト方向は、右としてもよい。相互相関係数rは、以下の(式1)により求めることができる。
【数1】
上記血流解析画像において、各小領域で算出した相互相関係数rが所定以上で最も高いタイミングを抽出することで、各小領域の血流のタイミングを抽出することができる。
【0072】
図3のステップS25においては、血流解析画像にスジ補正処理Aが行われる(ステップS25)。
【0073】
ここで、放射線検出部13内部の電子部品からのノイズ、放射線検出部13の周辺機器からノイズ、放射線検出部13外部からの電磁波ノイズなどの影響で、動態画像や静止画像の放射線検出部13の信号線と垂直な方向(ライン方向。
図7のx方向)にライン状のアーチファクト(スジ)が発生する場合がある。このスジは、動態画像や静止画像では微弱であるが、上述の血流解析画像は、心拍信号波形と出力信号波形との相互相関係数rを求めたものであるから、動態画像に心拍信号波形と同様の周波数のスジが含まれている場合、そのスジを含めた相互相関係数rが算出されてしまう。
すなわち、血流解析画像において(式1)により算出される相互相関係数rは、出力信号波形に含まれる成分に分解して表すと、信号値にスジが含まれていない場合は(式2)で表され、信号値にスジが含まれている場合は、(式3)で表される。
ここで、h:心拍信号波形、l:スジ成分の信号波形(スジ信号波形)、m:心拍周期以外の体動成分の信号波形(体動信号波形)、b:血流成分の信号波形(血流信号波形)を表す。
【数2】
【数3】
そのため、例えば、血流解析画像の各フレーム画像において、相互相関係数rが所定以上の画素又は小領域に色を付して画像化した場合、視認可能なスジとして現れてしまう。
【0074】
画像のスジ補正の手法としては、従来からフィルタリング処理が用いられている。しかし、血流解析画像に現れるスジは、心拍信号波形の周波数と一致しており、フィルタリング処理でスジを除去しようとすると、心拍信号波形と周波数が一致する血流信号に関する情報も消えてしまう。
そこで、ステップS25においては、
図6に示すスジ補正処理Aが行われる。スジ補正処理Aは、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0075】
スジ補正処理Aにおいては、まず、動態画像の各フレーム画像において、血流がない肺野外領域にROIが設定され、ROI内のラインごとに、信号値が平均化(横平均)され、平均化された信号値の時間方向のプロファイル(画像プロファイル)が生成される(ステップS201)。
具体的には、動態画像の各フレーム画像において、
図7に示すように、血流がない肺野外領域にライン方向(x方向)と垂直方向に延在するROIが設定され、ROI内のラインごとに、信号値が平均化され、平均化された信号値の時間方向のプロファイルが生成される。
ここで、動態画像に発生するスジは、各フレーム画像内においてライン方向に延びるスジであり、同じライン上のスジの強度は同じであると推定できる。
【0076】
次いで、心拍信号波形hとステップS201で生成された画像プロファイルの共分散がラインごとに算出されることにより、心拍信号波形hとスジ信号波形lの共分散Cov(h,l)がラインごとに算出される(ステップS202)。
肺野外領域には血流成分の信号(血流の信号成分)がなく、スジ成分の信号(スジの信号成分)と体動成分の信号(体動の信号成分)のみが含まれていると想定される。よって、心拍信号波形hとステップS201で算出した画像プロファイルの共分散は、Cov(h,l)+Cov(h,m)で表すことができる。また、心拍信号波形hと体動信号波形mはほとんど相関がないと推定されるため、Cov(h,m)≒0である。よって、心拍信号波形hとステップS201で生成された画像プロファイルの共分散を心拍信号波形hとスジ信号波形lの共分散Cov(h,l)として算出することができる。
【0077】
次いで、ラインごとに、最小二乗法を用いて、Cov(h,l)と心拍信号波形hの分散σh2よりスジ信号波形lが特定され、スジ信号波形の分散σl2が算出される(ステップS203)。
ステップS203においては、例えば、まず、心拍信号波形hに対してステップS201で生成された画像プロファイルを時間方向にシフトさせ(1フレーム分ずつシフトさせ)、相互相関係数rが最大となるシフト量が決定される。心拍信号波形hに対し、スジ信号波形lを上記の決定したシフト量だけシフトさせると、心拍信号波形hとスジ信号波形lの位相を合わせることができる。この位相を合わせた(相関している)心拍信号波形hとスジ信号波形lの値は、心拍が大きければスジも大きく、心拍が小さければスジも小さい、ということができる。そこで、この2つの波形上の心拍成分の信号の値とスジ成分の信号の値の回帰直線をl=ah+bとするとき、最小二乗法を用いると、a、bは、
a=Cov(h,l)/σh2
b=(lの平均値)-a×(hの平均値)
で算出することができる。
ここで、Cov(h,l)はステップS202で求めており、σh2は心拍信号波形hの分散であるから、aは計算により求めることができる。bは0として計算上差し支えない。
よって、スジ信号波形lの振幅を求めることができ、求めたスジ信号波形lの振幅と位相から、スジ信号波形lを特定して、スジの分散σl2を求めることができる。
【0078】
次いで、ラインごとに、ステップS203で特定されたスジ信号波形lと、血流のある肺野内領域の信号値の時間変化を示す波形の共分散Cov(l,l)+Cov(l,b)が算出される(ステップS204)。
肺野内領域の画像信号には、血流、スジ、体動の信号が存在するため、スジ信号波形lと肺野内領域の画像信号の時間変化を示す波形との共分散は、Cov(l,l)+Cov(l,b)+Cov(l,m)となる。Cov(l,l)=σl2である。
ここで、スジ信号波形lと体動信号波形mはほとんど相関がないため、Cov(l,m)≒0とみなすことができる。すなわち、ステップS203で特定されたスジ信号波形lと肺野内領域の画像信号の時間変化を示す波形との共分散を算出することにより、Cov(l,l)+Cov(l,b)を算出することができる。
【0079】
そして、ステップS202~S204で求めた値を用いて、血流解析画像の各画素又は各小領域の相互相関係数rが補正され(ステップS205)、処理は
図3のステップS26に移行する。
スジなしの場合の相互相関係数rを表す式(式2)とスジありの場合の相互相関係数rを表す式(式3)を比較すると、(式3)には、余分な成分として、分母にσl
2、2Cov(l,b)、分子にCov(h,l)が含まれている。ここで、Cov(h,l)はステップS202で算出され、σl
2はステップS203で算出されている。また、Cov(l,l)+Cov(l,b)がステップS204で算出されており、Cov(l,l)=σl
2であるため、2Cov(l,b)を求めることができる。よって、(式3)の余分な成分を特定することができるため、この成分を血流解析画像の各画素又は各小領域の相互相関係数rから除去することで、血流解析画像のスジを除去することができる。
【0080】
図8(a)に、スジ補正前の血流解析画像の一つのフレーム画像を示す。
図8(b)に、
図8(a)に示すフレーム画像に上述のスジ補正処理Aを行った結果を示す。
図9(a)に、スジ補正前の血流解析画像の、
図8(a)に示すフレーム画像と異なる位相のフレーム画像を示す。
図9(b)に、
図9(a)に示すフレーム画像に上述のスジ補正処理Aを行った結果を示す。
ここで、
図8(a)、(b)、
図9(a)、(b)は、ファントムを動態撮影した動態画像の領域a1に心拍相当の周波数の信号を付加し、領域a2に血流相当の周波数の信号を付加した動態画像について、心拍相当信号波形を基準として画像の出力信号波形の位相をずらしながら画素ごとに心拍相当信号波形と出力信号波形の相互相関係数rを算出してフレーム画像を生成し、相互相関係数rの値が所定以上の場合に色付けしたフレーム画像のスジ補正処理Aの前後を示している。
図8(a)、
図9(a)では、横方向にライン状のスジが見られるが、上記のスジ補正処理Aを行うと、
図8(b)、
図9(b)に示すように、スジが除去されていることがわかる。一方で、領域bの血流相当信号は除去されていないことがわかる。
【0081】
図3のステップS26においては、スジ補正処理Aが施された血流解析画像の各フレーム画像の各画素又は各小領域に、相互相関係数rに応じた色が付与されて表示部34に表示され(ステップS26)、画像表示処理は終了する。
【0082】
このように、スジ補正処理Aでは、血流解析画像において、画像情報として有用な成分を損なうことなく、画像上のスジを除去することができる。すなわち、血流を表す信号成分を損なうことなく、血流と同じ周波数のスジを除去することができる。また、放射線の時間方向の低周波線量変動も併せて補正することができる。
【0083】
一方、
図3のステップS23において、表示モードが動画再生モードであると判断された場合(ステップS23;動画再生)、スジ補正処理Bが実行される(ステップS27)。
ステップS27においては、
図10に示すスジ補正処理Bが実行される。スジ補正処理Bは、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
なお、以下の説明では、動態画像から空間方向又は時間方向にスジを除去する場合について説明する。いずれの方向にスジを除去するかは、予め設定されていてもよいし、ユーザーが操作部33により設定することとしてもよい。また、動態画像の画素ごとにスジを除去することとして説明するが、第1の実施形態で説明したように、複数画素からなる小領域ごとにスジを除去することとしてもよい。
【0084】
スジ補正処理Bにおいては、まず、動態画像の各フレーム画像において、素抜け領域にROIが設定され、ROI内のラインごとに信号値が平均化(横平均)され、平均化された信号値の縦方向(
図11のy方向)又は時間方向のプロファイル(画像プロファイル)が生成される(ステップS301)。
素抜け領域とは、放射線が被写体を介さず、直接放射線検出部13に到達した領域である。すなわち、素抜け領域の信号値は、スジがない場合は、被写体を透過せずに直接到達した放射線量に対応する信号成分(素抜け成分と呼ぶ)の値となり、スジがある場合には、スジの信号成分と、素抜け信号成分の合計となる。
ステップS301においては、具体的には、動態画像の各フレーム画像において、
図11に示すように、素抜け領域にスジ方向と垂直方向(縦方向)にROIが設定されてROI内のラインごとに信号値が平均化され、空間方向にスジを除去する場合には、平均化された信号値の縦方向のプロファイル(
図11の画像左側に示す)が各フレーム画像ごとに生成され、時間方向にスジを除去する場合には、ラインごとに、平均化された信号値の時間方向のプロファイルが生成される。
【0085】
ここで、動態画像に発生するスジは、上述のように、各フレーム画像内においてライン方向(横方向)に延びるスジであり、同じライン上のスジの信号成分は同じであると考えることができる。また、スジは、縦方向(時間方向)に周期的に表れると推定できるため、
図11に示すように、素抜け領域が存在しないラインが存在しても、素抜け領域のラインの信号値からその部分の信号値を推定して縦方向、時間方向の画像プロファイルを生成することができる。
【0086】
次いで、スジの基準信号波形s(sin波等)が生成される(ステップS302)。
ここで、動態画像に発生するスジの波形はおおよそメーカー側で予めわかっており、基準信号波形sの波形(周波数、位相、振幅)は記憶部32に記憶されている。なお、高周波のスジについては、従来からのフィルタリング処理で除去できるため、本処理とフィルタリング処理を組み合わせ、フィルタリング処理で除去できない範囲の周波数のスジを基準信号波形sとして、スジ補正処理Bで除去することが好ましい。
【0087】
次いで、基準信号波形sの周波数と位相を変化させながら、ステップS301で生成した画像プロファイルと基準信号波形sとの相互相関係数rが算出され、最大の相互相関係数rと、そのときの周波数と位相が取得され、基準信号波形sが特定される(ステップS303)。
相互相関係数rは、上述の(式1)により算出することができる(小領域=画素とする)。算出された相互相関係数rは、出力信号波形に含まれる成分に分解して表すと、出力信号波形にスジが含まれている場合、(式4)で表される。
【数4】
ここで、l:スジ成分の信号波形(スジ信号波形)、i:素抜け成分の信号波形(素抜け信号波形)を表す。
【0088】
次いで、最大の相互相関係数rに基づいて、基準信号波形sとスジ信号波形lの共分散Cov(s,l)が算出される(ステップS304)。
(式4)から、
r×√σs2×√(σl2+σi2)=Cov(s,l)+Cov(s,i)
ここで、基準信号波形sと素抜け信号波形iはほとんど相関がないため、Cov(s,i)≒0である。また、√σs2は基準信号波形Sの標準偏差なので算出可能である。また、√(σl2+σi2)は、上述の画像プロファイルの信号値の分散を算出して求めることができる。
【0089】
次いで、最小二乗法を用いて、各フレーム画像のラインごと又は各ラインの時間ごとのスジの信号成分を算出する(ステップS305)。
ここで、素抜け領域において、スジ信号波形lの周波数と位相は画像プロファイルの周波数と位相とほぼ一致していると考えられる。すなわち、ステップS303において、基準信号波形sと画像プロファイルの相互相関係数rが最大となったとき(すなわち、位相がほぼ一致したとき)、基準信号波形sとスジ信号波形lの周波数と位相はほぼ一致していると考えられる。そのため、同一位相(ライン又は時間)の基準信号波形sとスジ信号波形lの値の関係は、基準信号波形sの値が大きければスジの値も大きく、基準信号波形sの値が小さければスジ信号波形lの値も小さい、ということができる。そこで、このときの基準信号波形sの値(s)とスジ信号波形lの値(l)の回帰直線をl=as+bとするとき、最小二乗法を用いると、a、bは、
a=Cov(s,l)/σs2
b=(lの平均値)-a×(sの平均値)
で算出することができる。
ここで、Cov(s,l)はステップS304で求めており、σs2は基準信号波形sの分散であるから、aは計算により求めることができる。bは0として計算上差し支えない。
これにより、各フレームのラインごと又は各ラインの時間ごとのスジの信号成分の値(l)を算出することができる。
【0090】
次いで、各フレーム画像の各画素の信号値から、算出されたスジの信号成分が減算されることによりスジが除去され(ステップS306)、処理は
図3のステップS28に移行する。
ステップS306においては、各フレーム画像の各画素の信号値から、その画素が位置するラインについて算出されたスジの信号成分の値が減算される。
【0091】
図3のステップS28においては、スジが除去された動態画像が表示部34に表示され、画像表示処理は終了する。
【0092】
このように、スジ補正処理Bでは、動態画像において、画像情報として有用な成分を損なうことなく、画像上のスジを除去することができる。すなわち、被写体の信号成分を損なうことなく、被写体と同じ周波数のスジを除去することができる。また、放射線の時間方向の低周波線量変動も併せて補正することができる。
【0093】
上述の画像表示処理では、撮影モードが静止画撮影モードの場合は、スジ補正処理を行わずに静止画表示を行うこととして説明した。これにより、例えば、静止画像にはスジが出にくく、動画像(動態画像)に対してスジが出やすいシステムでは、静止画像については迅速に表示できるため好ましい。しかし、静止画像でもスジが出やすい場合は、静止画像に対してもスジ補正を行うこととしてもよい。この場合、スジ補正処理Bで説明したように、基準信号波形sと素抜け領域の縦方向の画像プロファイルとの相互相関係数rを算出し、算出した相互相関係数rから、画像プロファイル内のスジの信号成分を算出(逆算)して各画素の信号値からスジの信号成分を減算すればよい。
【0094】
また、上述の画像表示処理においては、表示モードが動画再生モードの場合にスジ補正処理Bを行うこととして説明したが、動態画像においてはスジがほとんど視認できない場合、表示モードが動画再生モードの場合にはスジ補正を行わず、血流表示モードの場合にのみスジ補正処理を行うこととしてもよい。
【0095】
以上説明したように、診断用コンソール3の制御部31によれば、画像の空間方向又は時間方向の画像プロファイルと、スジの基準信号波形sとを取得し、画像プロファイルと基準信号波形sの相関解析及び/又は共分散解析を行うことによって、スジの信号成分に関する情報を算出し、算出したスジの信号成分に関する情報に基づいて、前記画像又はその画像の解析画像からスジを除去する。
例えば、制御部31は、動態画像の各フレーム画像又は静止画像におけるスジと垂直方向の画像プロファイルと、スジの基準信号波形sとを取得し、取得した画像プロファイルと基準信号波形sの相互相関係数rを算出し、算出した相互相関係数rからスジの信号成分を逆算して動態画像の各フレーム画像又は静止画像から除去する。
また、例えば、制御部31は、動態画像の時間方向の画像プロファイルと、スジの基準信号波形sとを取得し、取得した画像プロファイルと基準信号波形sの相互相関係数rを算出し、算出した相互相関係数rからスジの信号成分を逆算して動画像から除去する。
したがって、動態画像や静止画像において、画像情報として有用な成分を損なうことなく、画像上のスジを除去することができる。また、放射線の時間方向の低周波線量変動も併せて補正することができる。
【0096】
また、制御部31は、胸部の動態画像の画素ごと又は小領域ごとの画像信号値の時間変化を示す出力信号波形を心拍信号波形hに対して時間方向にずらしながら心拍信号波形hとの相関係数を求めることにより血流解析画像を生成し、下記の(1)~(5)の処理を実行することにより血流解析画像からスジを除去する。
(1)動態画像の肺野領域外の時間方向の画像プロファイルを取得
(2)心拍信号波形hを基準信号波形sとして、心拍信号波形hと画像プロファイルの共分散を算出することにより、心拍信号波形hとスジの共分散を算出
(3)画像プロファイルに含まれるスジの信号成分と心拍信号波形hの信号成分の回帰直線の係数を最小二乗法を用いて算出することにより、スジの信号波形を求め、スジの信号波形の分散を算出
(4)動態画像の肺野領域内の画像信号の時間変化を示す波形とスジの信号波形との共分散を算出
(5)前記(2)~(4)の算出結果を用いて、血流解析画像の画素ごと又は小領域ごとの相互相関係数rを補正することにより、血流解析画像から心拍信号波形の周波数のスジを除去
したがって、血流解析画像において、画像情報として有用な成分を損なうことなく、画像上のスジを除去することができる。また、心拍と同じ周波数の放射線の時間方向の低周波線量変動も併せて補正することができる。
【0097】
また、例えば、制御部31は、撮影装置1における撮影モードに応じてスジ補正処理を行うか否かを切り替えることで、不要なスジ補正を省略することが可能となる。
また、例えば、制御部31は、撮影装置1により取得された画像の表示モードに応じてスジ補正を行うか否かを切り替えることで、不要なスジ補正を省略することが可能となる。
【0098】
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る画像処理装置の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、動態画像の各フレーム画像からスジを除去する手法としては、上述のスジ補正処理Bの他、スジ補正処理AのステップS201~S203を実行することによりラインごとの画像プロファイルに含まれるスジ信号波形lを特定して各フレーム画像のラインごとにスジの信号成分を算出し、動態画像の各フレーム画像の各画素から、その画素のラインのスジの信号成分を減算することによりスジを除去することとしてもよい。
また、スジが除去された血流解析画像を取得するための手法としては、血流解析画像にスジ補正処理Aを実施する他、動態画像の各フレーム画像からスジを除去した後、スジが除去された動態画像に対して上述の血流解析処理を行うこととしてもよい。
【0099】
また、上述のスジ補正処理Aやスジ補正処理Bにおいて用いられる画像プロファイルは、放射線撮影に用いられた放射線検出器(すなわち、放射線検出部13)の画素領域の周囲に設けられた当該画素領域の画素相当の容量を持つノイズ検出用コンデンサーから取得することとしてもよい。あるいは、上述のスジ補正処理Aやスジ補正処理Bにおいて用いられる画像プロファイルは、放射線撮影に用いられた放射線検出器において、放射線の照射が遮断された領域(遮光画素)に対応する画像領域から取得することとしてもよい。その際、特開2010-22420号公報の手法を用いてスジ(ラインノイズ)情報を取得しても良い。本発明の手法によれば、ノイズ検出用コンデンサー、若しくは遮光画素から得たスジ情報に係数を乗算するなどして直接的に画像から差分する従来手法と異なり、電気ノイズを増加させることなくスジを除去することが可能となる。
【0100】
また、スジは放射線量に拘わらずほぼ一定のため、低線量の方がスジを検出しやすい。そこで、画像(静止画像、各フレーム画像)の面内の濃度情報(信号値)が予め定められた閾値より小さい低線量領域を抽出し、そこから効率よくスジ成分を抽出して除去することとしてもよい。
【0101】
また、スジの周期(周波数)が空間方向、時間方向で一様ではない場合があるため、画像プロファイルを空間方向(又は時間方向)に区切って、部分ごとに上述のスジ補正処理AやBを行うこととしてもよい。
【0102】
また、スジ補正処理Bにおいては、基準信号波形sの周波数と位相を変化させながら画像プロファイルとの相互相関係数rを算出するが、このときの変化させる周波数や位相の幅を狭くするほど両者が一致する精度は高くなる一方、処理速度が遅くなる。また、変化させる周波数や位相の幅を広くするほど両者が一致する精度は低くなる一方、処理速度を向上させることができる。そこで、スジ補正の精度を操作部33によりユーザーが指定可能とし、指定された精度に応じた幅で周波数や位相を変化させることが好ましい。
また、補正するスジの周波数帯域を操作部33によりユーザーが指定可能な構成としてもよい。これにより、スジの周波数帯域がわかっていれば、基準信号波形sの周波数と位相を変化させながら画像プロファイルとの相互相関係数rを算出する際の周波数帯域を絞り込むことができるため、処理速度や処理精度を向上させることができる。
【0103】
また、静止画や動態画像にゲイン補正を行う場合には、ゲイン補正前に上述のスジ補正処理を行うことが好ましい。ゲイン補正を行うと、スジの強度が実際のスジと異なり、補正の精度が落ちるためである。
【0104】
また、上述のスジ補正処理A、Bを行う場合には、放射線撮影時に、17インチ×17インチの放射線検出部13を用いるか、又は、14インチ×17インチの放射線検出部13を横(17インチの辺が横方向(x方向)となるようにして)にして撮影を行うことが好ましい。このようにすれば、素抜け領域や肺野外領域を確保することが可能となる。
【0105】
また、上記スジ補正処理BのステップS305において算出されるスジの信号成分の値に所定の閾値以上のものがあるか否かを判断し、判断結果をスジ発生のチェックツールとして用いてもよい。例えば、S305で算出したスジの信号成分の値に所定の閾値以上のものがあるか否かを判断し、所定の閾値以上のものがあった場合、制御部31は、スジが発生していることを示す警告を行うこととしてもよい。また、所定の閾値以上のスジの信号成分の値が存在したフレーム画像やラインを併せて通知すると、スジの発生個所をユーザーが認識できるため、好ましい。警告や通知は、表示部34等の表示により行ってもよいし、音声を出力してもよい。
【0106】
また、制御部31は、上記スジ補正処理Aやスジ補正処理B等のスジ補正処理を実施するか否かを動態画像が撮影された撮影室によって切り替えることとしてもよい。例えば、近くに高周波治療器がある撮影室や、撮影装置1の放射線ジェネレーターの傍にしか放射線検出部13を置いておけない撮影室等、電磁波ノイズの大きいと想定される撮影室で実施された動態画像(又は、その血流解析画像)については、スジ補正処理を実施し、それ以外の電磁波ノイズの小さい撮影室で撮影された動態画像(又はその血流解析画像)については、スジ補正処理を省略してもよい。これにより、スジがスジ補正の実施を必要な場合に制限することができる。
【0107】
また、上記実施形態では、スジ補正処理A及びスジ補正処理Bを診断用コンソール3において実施する場合を例にとり説明したが、これらのスジ補正処理を実施する場所は、特に限定されない。例えば、撮影用コンソール2の制御部により行うこととしてもよいし、放射線検出部13内の制御部において行うこととしてもよいし、画像解析装置で行うこととしてもよい。
【0108】
また、制御部31は、スジを抽出するための画像領域(画像プロファイルを生成するための素抜け領域や肺野外領域)の有無によって、上記スジ補正処理Aやスジ補正処理B等を実施するか否かを切り替える(スジを抽出するための画像領域がない場合は、スジ補正処理を行わない)こととしてもよい。また、例えば、撮影部位や放射線照射条件等の撮影条件によって、上記スジ補正処理Aやスジ補正処理B等を実施するか否かを切り替えることとしてもよい。これにより、精度よくスジ補正が行えない場合にスジ補正を省略し、後工程を早めることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、本発明を放射線撮影された画像に適用した場合を例にとり説明したが、CCD/CMOSカメラで撮影された画像や、液晶モニターに表示された画像のスジ補正に適用してもよい。また、上記実施形態では、本発明を胸部を撮影した画像のスジ補正に適用した場合を例にとり説明したが、これに限定されず、他の部位を撮影した画像のスジ補正に本発明を適用してもよい。
【0110】
その他、放射線画像システム100及び当該システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0111】
100 放射線画像システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス