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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240312BHJP
   C09K 11/60 20060101ALI20240312BHJP
   C09K 11/76 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/60
C09K11/76
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020030357
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021136293
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】梅津 陽介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-188044(JP,A)
【文献】特開2016-170968(JP,A)
【文献】特表2012-523115(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008325(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159175(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/063309(WO,A1)
【文献】特開2010-097829(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
C09K 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、SrSi:Eu2+及びKSiF:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr Si :Eu2+及びK SiF :Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記出射光は第3の発光ピークをさらに有し、前記第3の発光ピークのピーク波長が前記第1の範囲にあることを特徴とする請求項に記載の発光装置。
【請求項4】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr Si :Eu2+及びK SiF :Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものであることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr Si :Eu2+及びK SiF :Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものであることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度よりも低いものであることを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1の蛍光体が可視光発光蛍光体であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の蛍光体が近赤外発光蛍光体であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2の蛍光体がCr又はCuを含むものであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子と蛍光体とを備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、優れた発光特性を有すると共に、非常に低いエネルギーで発光が可能なものであることから、環境面においても注目されている材料である。また、近年の省電力に対する社会ニーズの増大に伴い、蛍光体の優れた省エネルギー性を活かして、既存のランプに対する代替ニーズも高い。さらに、発光波長に応じて、様々な分野への応用が期待されている。
【0003】
例えば、近赤外光は生体への光透過性が高いため、光干渉断層画像装置(OCT)などにも適用され、また、非破壊計測などへの応用が期待されている。例えば、特許文献1には、生体イメージング等ではブロードな発光の必要性が報告されている。特許文献2,3には、幅広い帯域の可視光によって励起されてブロードな蛍光スペクトルを発光すると共に、近赤外光を発光することができる蛍光体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/011984号
【文献】国際公開第2016/140029号
【文献】国際公開第2017/159175号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Optics Express Vol.18, Issue 19, pp.20215-20221(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の近赤外蛍光体の多くは、励起スペクトルのピークが青色領域にない。そのため、青色発光素子(青色LED)との組み合わせた場合に、発光効率が悪いという問題がある。例えば、特許文献3には、蛍光体を組み込んだ発光素子に言及されているが、発光素子と蛍光体との組合せの詳細については説明されていない。特許文献3の図1には、近赤外発光蛍光体の発光スペクトルと励起スペクトルが示されており(図14参照)、特に、励起スペクトルをみると、青色励起ではほとんど光らず、赤色で励起するのが良いことが示されている。このことから、赤色発光素子(赤色LED)との組合せは、その励起スペクトルから考えても一般的である。しかしながら、赤色LEDと近赤外蛍光体とを組み合わせると、近赤外領域における発光強度が弱いという問題がある。また、赤色LEDの温度特性の悪さが素子全体にも影響し、近赤外領域における発光の温度特性が悪いという問題がある。現状では、近赤外蛍光体を使った発光装置は発光強度が弱いため、需要が少ない。
【0007】
このように、LEDの発光ピークの範囲と、蛍光体の励起スペクトルのピークの範囲との組合せが制限されるため、青色LEDからの発光により励起され難い蛍光体の場合には、発光強度や温度特性に優れた高品質で低コストのものが比較的容易に入手が可能な青色LEDに組み合わせることができないという問題がある。例えば、上記のような近赤外領域に発光ピークを有する発光装置などにおいて、高い発光特性を有する発光装置が得られないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高品質で低コストである青色LEDからの光による励起がされ難い蛍光体を使用した場合でも、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含む発光装置を提供する。
【0010】
このような発光装置によれば、高品質で低コストの青色LEDを使用しながら、励起スペクトルのピークに制限されることなく様々な蛍光体が適用可能な発光装置であり、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置となる。
【0011】
このとき、前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度よりも低いもの、より好ましくは、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものである発光装置とすることができる。
【0012】
これにより、青色LEDの発光ピークが位置する領域において励起スペクトルが低い蛍光体を組み合わせた場合であっても、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置となる。
【0013】
このとき、前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにある発光装置とすることができる。また、前記出射光は第3の発光ピークをさらに有し、前記第3の発光ピークのピーク波長が前記第1の範囲にある発光装置とすることができる。
【0014】
これにより、発光強度がより強く、温度特性にもより優れた発光装置となる。
【0015】
このとき、前記第1の範囲が500~700nmである発光装置とすることができる。
【0016】
これにより、発光強度がより強く、温度特性にもより優れた発光装置となる。
【0017】
このとき、前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下である発光装置とすることができる。
【0018】
これにより、発光強度が強く、温度特性にも優れた近~遠赤外領域に発光ピークを有する発光装置となる。
【0019】
このとき、前記第1の蛍光体が可視光発光蛍光体である発光装置とすることができる。
【0020】
これにより、第2の蛍光体として、可視光発光蛍光体からの発光により励起可能なものを適用できるため、発光強度がより強く、温度特性にもより優れた発光装置となる。
【0021】
このとき、前記第2の蛍光体が近赤外発光蛍光体である発光装置とすることができる。
【0022】
これにより、発光強度が強く、温度特性にも優れた近赤外領域に発光ピークを有する発光装置となる。
【0023】
このとき、前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものとすることができる。
【0024】
これにより、発光強度がより強く、温度特性にも優れた発光装置となる。
【0025】
このとき、前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものとすることができる。
【0026】
このように、本発明に係る発光装置は、特に近赤外領域において優れた発光量及び優れ温度特性を有するものとなる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の発光装置によれば、高品質で低コストの青色LEDを使用しながら、励起スペクトルのピーク位置に制限されることなく様々な蛍光体が適用可能なものであり、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る発光装置の一例を示す。
図2】比較例1-6の光出力評価結果を示す。
図3】比較例1-4で作製した発光装置の発光スペクトルを示す。
図4】実施例1-5の光出力評価結果を示す。
図5】実施例1-3で作製した発光装置の発光スペクトルを示す。
図6】実施例4,5で作製した発光装置の発光スペクトルを示す。
図7】実施例6-12の光出力評価結果を示す。
図8】実施例6-9で作製した発光装置の発光スペクトルを示す。
図9】実施例10-12で作製した発光装置の発光スペクトルを示す。
図10】実施例9,13-15の光出力評価結果を示す。
図11】実施例9,13-15で作製した発光装置の発光スペクトルを示す。
図12】実施例9と比較例3の発光スペクトルを示す。
図13】実施例9と比較例3の発光強度の温度特性を示す。
図14】特許文献3の図1の引用であり、近赤外発光蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
上述のように、高品質で低コストである青色LEDからの光による励起がされ難い蛍光体を使用した場合であっても、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含む発光装置により、青色LEDからの光による励起がされ難い蛍光体であっても、発光強度が強く温度特性にも優れた高品質で低コストの青色LEDを組み合わせることができ、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置を提供できること、励起スペクトルのピークに制限されることなく様々な蛍光体が適用可能な発光装置を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
以下、図面を参照して説明する。なお、本明細書において数値範囲を「380~480nm」のように表記したときは、「380nm以上、480nm以下」を意味する。
【0033】
(発光装置)
図1に、本発明に係る発光装置100の一例を示す。本発明に係る発光装置100は、基板40上に配置された発光素子10と、発光素子10からの光の一部を吸収して発光素子10の発光波長とは異なる波長の光Lに変換する蛍光体1とを含むものである。蛍光体1としては、第1の蛍光体1a、第2の蛍光体1bを含んでおり、これらの蛍光体1a,1bは、発光素子10を被覆する樹脂やガラスなどからなる封止体としても機能する蛍光体層20の中に分散させられ、パッケージ30に収納されている。蛍光体層20の中には樹脂のほか、例えば、フィラー2や、蛍光体1等の分散性を高めるための添加物などを、適宜添加することができる。また、パッケージ30と基板40とは一体成型されていても良い。
【0034】
(発光素子)
発光素子10としては、発光ピーク波長が380~480nmの範囲にあるものを使用する。このような発光素子は、青色発光するものであり、高品質で低コストのものが比較的容易に入手が可能なものである。
【0035】
(第1及び第2の蛍光体)
第1の蛍光体1aとしては、発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子10によって励起され、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が第1の範囲にあるものを使用する。このとき、第1の蛍光体としては、可視光発光蛍光体を採用することもできる。
【0036】
また、第2の蛍光体1bとしては、励起スペクトルのピーク波長が第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が第1の範囲と異なる第2の範囲にあるものを使用する。このとき、第2の蛍光体としては、380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度よりも低いものが好ましく、半分以下のものをより好適に使用することができる。励起スペクトルにおいて380~480nmの範囲にピークを有しないものであっても使用できる。また、第2の蛍光体としては、近赤外発光蛍光体を採用することもできる。
【0037】
このように、本発明に係る発光装置においては、380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が低い、言い換えると、青色LEDからの光では励起され難く、青色LEDと組み合わせたときに発光強度が低い第2の蛍光体1bを使用する場合であっても、上記の第1の蛍光体1aを併せて用いることで、青色LEDを用いて、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置とすることができる。また、様々な発光ピーク波長を有する第2の蛍光体1bを使用することが可能となり、適用範囲が広いものとなる。
【0038】
また、第1の蛍光体及び第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものとすることも可能である。これにより、発光波長の制御が容易になり、発光特性もより高いものとできる。
【0039】
また、本発明に係る発光装置の出射光は、少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、第1の発光ピークのピーク波長が第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあるものや、第3の発光ピークをさらに有し、第3の発光ピークのピーク波長が第1の範囲にあるものとすることができる。このような発光装置は、発光強度がより強く、温度特性にもより優れたものである。
【0040】
また、本発明に係る発光装置においては、第1の範囲が500~700nmであるものとすれば、第2の蛍光体1bとして可視光により励起されるものを使用できる。第2の範囲が700nm超、2000nm以下のものとすれば、近赤外発光装置とすることができる。特に、従来の近赤外発光装置は、青色LEDとの組合せが困難で、発光強度が弱く温度特性にも劣るものであったが、本発明により、高発光強度、高品質、低コストの近赤外発光装置を得ることができる。
【0041】
さらに、本発明に係る発光装置であれば、発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものを提供することができる。
【実施例
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0043】
(比較例1)
発光ピーク波長615nmのAlGaInP系の赤色チップと、近赤外蛍光体(以下、「NIR蛍光体」ということもある)として、特許文献3に記載されているCaCuSi10(以下、「CCSO」と略す)蛍光体を用いて、近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐために、アエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。なお、シリコーン樹脂に対する蛍光体の量が10%であるため、蛍光体濃度10%とする。蛍光体濃度の計算式は、(蛍光体濃度)=(蛍光体重量)/(蛍光体重量+シリコーン樹脂重量)×100、とする。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
CCSO蛍光体 0.1111g
【0044】
(比較例2-6)
比較例1と同様の材料を用い、NIR蛍光体の量を変更して、比較例2-6の近赤外発光装置を作製した。比較例1-6の条件を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
近赤外発光装置の評価は、Instrument System CAS 140CT ISP250-211の積分球を用いて行った。近赤外発光素子に流す電流は65mAで、380~1042nmの発光スペクトルを測定した。また、近赤外光は視感度を持たないため、光出力はmWで評価した。近赤外の発光量は、781~1042nmの光出力とし、mWで示した。表2、図2に、比較例1-6の光出力評価結果を示す。また、作製した発光装置の発光スペクトルを図3に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2、図2に示されるように、赤色チップとNIR蛍光体とを組み合わせた発光装置では、蛍光体濃度を調整しても発光量は最大で14.9mW程度(蛍光体濃度30~40%)だった。また、図3に示されるように、比較例1-6の発光装置では、600~650nmと850~950nmに発光ピークを有するものが得られた。
【0049】
(実施例1)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップと、発光ピーク波長607nmの赤色蛍光体である(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+(以下、「SCASN」と略す)蛍光体と、前述のCCSO蛍光体を用いて、近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
SCASN蛍光体(607nm) 0.3046g
CCSO蛍光体 0.1305g
【0050】
(実施例2)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップと、発光ピーク波長613nmのSCASN蛍光体と、前述のCCSO蛍光体を用いて、近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
SCASN蛍光体(613nm) 0.3046g
CCSO蛍光体 0.1305g
【0051】
(実施例3)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップと、発光ピーク波長622nmのSCASN蛍光体と、前述のCCSO蛍光体を用いて、近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
SCASN蛍光体(622nm) 0.3046g
CCSO蛍光体 0.1305g
【0052】
(実施例4)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップと、発光ピーク波長632nmのSCASN蛍光体と、前述のCCSO蛍光体を用いて近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
SCASN蛍光体(632nm) 0.3046g
CCSO蛍光体 0.1305g
【0053】
(実施例5)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップと、発光ピーク波長650nmの赤色蛍光体であるCaAlSiN3:Eu2+(以下、CASNと略す)蛍光体と前述のCCSO蛍光体を用いて近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
CASN蛍光体(650nm) 0.3046g
CCSO蛍光体 0.1305g
【0054】
表3、図4に実施例1-5の光出力評価結果を示す。また、作製した発光装置の発光スペクトルを図5,6に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3、図4に示されるように、実施例1-5のいずれの場合も、比較例よりも優れた発光特性を示し、発光量が15.0mW以上のものを得ることができた。また、図5,6に示されるように、実施例1-5の発光装置では、380~480nm、500~700nm、700nm超、特に800~2000nmに発光ピークを有するものが得られた。また、特に、赤色蛍光体の発光ピーク波長は622nmが良いことが分かった。
【0057】
次に、赤色蛍光体の発光ピーク波長を622nmに固定し、赤色蛍光体とNIR蛍光体の比率を変えて検討を行った。
【0058】
(実施例6)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップと、発光ピーク波長622nmのSCASN蛍光体と、前述のCCSO蛍光体を用いて近赤外発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0150g
SCASN蛍光体(622nm) 0.0670g
CCSO蛍光体 0.6030g
【0059】
(実施例7-12)
実施例6において、赤色蛍光体(SCASN蛍光体)とNIR蛍光体(CCSO蛍光体)の比率を変更して近赤外発光装置を作製し、評価を行った。
【0060】
表4、図7に実施例6-12の光出力評価結果を示す。表4中で、赤色蛍光体とNIR蛍光体の数値は、合計を100としたときの比率である。また、作製した発光装置の発光スペクトルを図8,9に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4、図7に示されるように、実施例6-12の発光装置では、いずれの結果も比較例よりも優れた特性を示した。また、図8,9に示されるように、実施例6-12の発光装置でも、380~480nm、500~700nm、700nm超、特に800~2000nmに発光ピークを有するものが得られた。特に、赤色蛍光体とNIR蛍光体の比率は、50:50が良いことが分かった。
【0063】
(実施例9,13-15)
次に、シリコーン樹脂に対する蛍光体の量(蛍光体濃度:%)を変化させて検討を行った。このときの赤色蛍光体とNIR蛍光体の比率は、50:50とした(上記実施例9に相当)。
【0064】
表5、図10に、実施例13-15の評価結果を、上記実施例9の結果も併せて示す。また、作製した発光装置の発光スペクトルを図11に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5、図10に示されるように、実施例13-15の発光装置のいずれの結果も、比較例よりも優れた特性を示した。シリコーン樹脂に対する蛍光体の量(蛍光体濃度)は、50%が最も出力が高いことが分かった。また、図11に示されるように、実施例13-15の発光装置でも、380~480nm、500~700nm、700nm超、特に800~2000nmに発光ピークを有するものが得られた。
【0067】
以上の検討結果に基づいて、赤色LEDとNIR蛍光体を組み合わせた比較例のうち最も出力が高い比較例3と、青色LEDと赤色蛍光体とNIR蛍光体を組み合わせた実施例9の比較を行った。結果を表6、図12に示す。青色LEDと赤色蛍光体とNIR蛍光体の組合せの方が、近赤外領域の発光が強いことが分かる。
【0068】
【表6】
【0069】
また、比較例3と実施例9の温度特性を測定した。25℃のときの発光量を100%とした。結果を図13に示す。図13から分かるとおり、実施例9の温度特性が優れていることが分かる(温度上昇に伴う発光強度の低下が抑えられる)。これは、赤色素子と青色素子の温度特性の違いが大きく影響しているためである。
【0070】
実施例では、近赤外蛍光体としてはCaCuSi10を用いたが、他の領域の蛍光体についても、本発明を適用できる。例えば、励起スペクトルの形状から青色領域で励起強度の低い、他の近赤外発光蛍光体でも、本発明を適用することができる。このような近赤外発光蛍光体としては、非特許文献1の図1.(a)に示されるLaGaGeO14:Cr,Znでも可能である。また、赤色蛍光体としては、SCASNを用いたが、CASNやSrSi:Eu2+、KSiF:Mn4+やその他の材料でも、本発明は適用できる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1…蛍光体、 1a…第1の蛍光体、 1b…第2の蛍光体、 2…フィラー、
10…発光素子、 20…蛍光体層、 30…パッケージ、 40…基板、 L…光、
100…発光装置。
図1
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