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  • 特許-車両の制動制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1764 20060101AFI20240312BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60T8/1764
B60T8/1755 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020030395
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133771
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 佑介
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-069870(JP,A)
【文献】特開2019-098794(JP,A)
【文献】特開2019-098795(JP,A)
【文献】特開2011-073575(JP,A)
【文献】特開平4-257755(JP,A)
【文献】特開2001-071879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/1764
B60T 8/1755
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪の制動力を調整するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラと、を備える車両の制動制御装置であって、
前記車輪の回転速度を車輪速度として検出する車輪速度センサと、
前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサと、
前記車両の操舵操作部材の操舵量を検出する操舵量センサと、
を備え、
前記コントローラは、
前記車輪速度に基づいて、前記車両の左右で路面摩擦係数が異なるμスプリット路でアンチロックブレーキ制御を実行する場合に、前記μスプリット路の摩擦係数が高い側に対応する車輪の制動力の増加を抑制することによって、前記車両の偏向を抑制するスプリット制御を実行し、
前記ヨーレイトに基づいて、前記制動力の左右差を発生させることによって、前記車両の偏向を抑制する制動力差制御を実行し、
前記操舵量、及び、前記ヨーレイトに基づいて、旋回量偏差を演算し、
前記旋回量偏差の方向と前記アンチロックブレーキ制御による前記制動力の左右差の方向とが一致する場合には、前記スプリット制御の実行を許可し、前記旋回量偏差の方向と前記アンチロックブレーキ制御による前記制動力の左右差の方向とが異なる場合には、前記スプリット制御の実行を禁止する、車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「スプリットμ路(「μスプリット路」ともいう)における制動時に、運転者の運転スキルに応じて、車両の挙動安定性と制動力を確保すること」を目的に、「車両の左右前後輪に設けられたホイルシリンダ液圧を個別に制御し、アンチロックブレーキ制御を実施し、アンチロックブレーキ制御中に、左右輪の路面摩擦係数であるμの間に差があると判定されると、低μ路面と判定された低μ側前後輪の液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を低μ側液圧とし、所定の車両状態が検出されると、後輪の液圧を左右独立制御する」ことが記載されている。
【0003】
特許文献2には、「左前輪及び右後輪のホイールシリンダが属する系統と右前輪及び左後輪のホイールシリンダが属する系統との2系統(X字型系統)の車両において、自動ブレーキ制御時には、両系統のブレーキ液圧回路の液圧が等しくなるように各調圧弁が同じ開度で制御されるが、調圧弁の精度ばらつきにより、両系統のブレーキ液圧回路の液圧に差が生じ、車両にヨー方向の挙動が発生することがある。該状況を抑制するため、自動ブレーキ制御を行うブレーキ装置1であって、左右前輪FL、FRの各ホイールシリンダ61、62に液圧を伝達する第1及び第2のブレーキ液圧回路11、12と、各ホイールシリンダ61、62に供給される液圧を個別に調節可能なブレーキアクチュエータ2と、ブレーキアクチュエータ2を制御するブレーキ制御部3と、車両のヨー方向の挙動を検出する挙動検出センサ4を備え、ブレーキアクチュエータ2は、自動ブレーキ制御時に各ブレーキ液圧回路11、12の液圧を加圧するポンプP1、P2と、各ブレーキ液圧回路11、12の液圧を個別に調節する調圧弁21、22を有し、ブレーキ制御部3は、自動ブレーキ制御時に、ヨー方向の挙動に基づいて、制動力が低い方のホイールシリンダ61、62に供給される液圧を増圧するように調圧弁21、22を制御する」ことが記載されている。
【0004】
ところで、車両偏向が生じる状況として、以下の2つが考えられる。第1の状況は、路面の摩擦係数が左右方向で異なる路面(μスプリット路)において、アンチロックブレーキ制御(ABS制御)が実行される場合である。この場合には、摩擦係数が高い側に位置する車輪の制動力は増加されるものの、摩擦係数が低い側に位置する車輪の制動力はABS制御によって制限される。結果、制動力の左右差が生じ、車両偏向が発生する。車両偏向が抑制されるためには、制動力の左右差が抑制されることが必要となる(例えば、上記の特許文献1の制動制御装置)。
【0005】
第2の状況は、車両に積載される荷物が左右方向(車幅方向)において偏っている場合、或いは、路面が左右方向に傾いている場合(所謂、カント路、バンク路)である。この場合、車両偏向が抑制されるためには、制動力の左右差が増加されることが必要となる(例えば、上記の特許文献2の制動制御装置)。車両の制動制御装置においては、上記の2つの状況に適切に対応することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-179702号
【文献】特開2017-149378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、車両の制動制御装置において、制動力の左右差が適切に調整され得るものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の制動制御装置は、車両の車輪(WH)の制動力(Fx)を調整するアクチュエータ(HU)と、前記アクチュエータ(HU)を制御するコントローラ(ECU)と、を備える。加えて、車両の制動制御装置は、前記車輪(WH)の回転速度を車輪速度(Vw)として検出する車輪速度センサ(VW)と、前記車両のヨーレイト(Yr)を検出するヨーレイトセンサ(YR)と、前記車両の操舵操作部材(SW)の操舵量(Sa)を検出する操舵量センサ(SA)と、を備える。そして、前記コントローラ(ECU)は、前記車輪速度(Vw)に基づいて、前記車両の左右で路面摩擦係数が異なるμスプリット路でアンチロックブレーキ制御を実行する場合に、前記μスプリット路の摩擦係数が高い側に対応する車輪の制動力(Fx)の増加を抑制することによって、前記車両の偏向を抑制するスプリット制御を実行し、前記ヨーレイト(Yr)に基づいて、前記制動力(Fx)の左右差(hF)を発生させることによって、前記車両の偏向を抑制する制動力差制御を実行する。

【0009】
本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記操舵量(Sa)、及び、前記ヨーレイト(Yr)に基づいて、旋回量偏差(hY)を演算する。前記コントローラ(ECU)は、前記旋回量偏差(hY)の方向(Ha)と前記スプリット制御による前記制動力(Fx)の左右差(hF)の方向(Hb)とが一致する場合には、前記スプリット制御の実行を許可し、前記旋回量偏差(hY)の方向(Ha)と前記スプリット制御による前記制動力(Fx)の左右差(hF)の方向(Hb)とが異なる場合には、前記スプリット制御の実行を禁止する。

【0010】
上記構成によれば、制動力差制御が実行される場合には、スプリット制御の実行が禁止されているため、2つの制御の干渉が防止され得る。結果、制動制御装置において、車両偏向が、適切、且つ、効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両の制動制御装置SCの実施形態を説明するための全体構成図である。
図2】制動力差制御を含む自動制動制御の演算処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<構成部材等の記号、及び、記号末尾の添字>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」~「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つのホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」~「l」は、省略され得る。添字「i」~「l」が省略された場合には、記号は、4つの各車輪に係るものの総称を表す。例えば、「CW」は、各車輪WHに設けられたホイールシリンダを表す。
【0013】
各種記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、車両の前後方向において、それが何れに関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「f」は前輪、「r」は後輪を示す。例えば、車輪において、前輪WHf、及び、後輪WHrと表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は、その総称を表す。「CWf(=CWi、CWj)」は前輪ホイールシリンダを表し、「CWr(=CWk、CWl)」は後輪ホイールシリンダを表す。
【0014】
接続路HSにおいて、マスタリザーバRVに近い側が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側が「下部」と称呼される。また、制動液BFが循環する還流KNにおいて、流体ポンプHPの吐出部Btに近い側が「上流側(上流部)」と称呼され、吐出部Btから遠い側が「下流側(下流部)」と称呼される。
【0015】
<本発明に係る車両の制動制御装置の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る車両の制動制御装置SCの実施形態について説明する。車両には、2系統の流体路(即ち、2つの制動系統)が採用される。2つの制動系統のうちの前輪制動系統BKf(前輪マスタシリンダ室Rmfに係る系統)は、右前輪、左前輪ホイールシリンダCWi、CWj(=CWf)に接続される。また、2つの制動系統のうちの後輪制動系統BKr(後輪マスタシリンダ室Rmrに係る系統)は、右後輪、左後輪ホイールシリンダCWk、CWl(=CWr)に接続される。車両の2つの制動系統として、所謂、前後型(「II型」ともいう)のものが採用されている。ここで、「流体路」は、作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットHUの流路、ホース等が該当する。
【0016】
制動制御装置SCを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、マスタリザーバRV、マスタシリンダCM、及び、ブレーキブースタVBが備えられる。
【0017】
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、ホイールシリンダCWの液圧(「制動液圧」ともいう)Pwが調整され、車輪WHの制動トルクTqが調整され、車輪WHに制動力Fxが発生される。
【0018】
車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられ、その内部の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルクTqが発生される。この制動トルクTqによって、車輪WHに制動力Fxが生じる。
【0019】
マスタリザーバ(大気圧リザーバであり、単に、「リザーバ」ともいう)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。マスタシリンダCM内にて、制動液BFの量が不足している場合には、マスタリザーバRVからマスタシリンダ室(「液圧室」ともいう)Rmに制動液BFが補給される。
【0020】
マスタシリンダCMの内部には、プライマリピストンPG、及び、セカンダリピストンPHによって、2つの液圧室Rmf、Rmrが形成されている。つまり、マスタシリンダCMとして、タンデム型のものが採用されている。マスタシリンダCM内のピストンPGは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド、ブレーキブースタVB等を介して、機械的に接続されている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMの前輪、後輪液圧室Rmf、Rmr(=Rm)とマスタリザーバRVとは連通状態にある。
【0021】
ブレーキブースタ(単に、「ブースタ」ともいう)VBによって、運転者による制動操作部材BPの操作力Fpが軽減される。ブースタVBとして、負圧式のものが採用される。負圧は、エンジン、又は、電動負圧ポンプにて形成される。ブースタVBとして、電気モータを駆動源とするものが採用されてもよい(例えば、電動ブースタ、アキュムレータ式ハイドロリックブースタ)。
【0022】
更に、車両には、車輪速度センサVW、操舵操作量センサSA、ヨーレイトセンサYR、前後加速度センサ(「減速度センサ」ともいう)GX、横加速度センサGY、制動操作量センサBA、及び、距離センサOBが備えられる。車両の各車輪WHには、その回転速度である車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向(即ち、過大な減速スリップ)を抑制するアンチロックブレーキ制御等の各輪独立制御に利用される。
【0023】
操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)SWには、その操舵量(例えば、操舵角)Saを検出するように操舵操作量センサ(例えば、操舵角センサ)SAが備えられる。車両の車体には、ヨーレイト(ヨー角速度)Yrを検出するよう、ヨーレイトセンサYRが備えられる。また、車両の前後方向(進行方向)の加速度(前後加速度であり、「検出減速度」ともいう)Gx、及び、横方向(進行方向に直角な方向)の加速度(横加速度であり、「検出横加速度」ともいう)Gyを検出するよう、前後加速度センサGX、及び、横加速度センサGYが設けられる。これらセンサの検出信号は、過大なオーバステア挙動、アンダステア挙動を抑制する車両安定化制御(所謂、ESC)等の車両運動制御に用いられる。
【0024】
運転者による制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作量Baを検出するよう、制動操作量センサBAが設けられる。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pmを検出するマスタシリンダ液圧センサPM、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサFPのうちの少なくとも1つが採用される。つまり、操作量センサBAによって、制動操作量Baとして、マスタシリンダ液圧Pm、操作変位Sp、及び、操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。
【0025】
各センサ(VW等)によって検出された車輪速度Vw、操舵量(操舵角)Sa、ヨーレイトYr、前後加速度(検出減速度)Gx、横加速度(検出横加速度)Gy、及び、制動操作量Baは、制動コントローラECUに入力される。制動コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
【0026】
≪運転支援システム≫
車両には、自動制動制御によって、障害物との衝突を回避、又は、衝突時の被害を軽減するよう、運転支援システムが備えられる。運転支援システムは、距離センサOB、及び、運転支援コントローラECJを含んで構成される。距離センサOBによって、自車両の前方に存在する物体(他車両、固定物、人、自転車、等)と、自車両との間の距離(相対距離)Obが検出される。例えば、距離センサOBとして、画像センサ(カメラ)、レーダセンサ等が採用される。相対距離Obは、運転支援コントローラECJに入力される。
【0027】
運転支援コントローラECJでは、相対距離Obに基づいて、要求減速度Gsが演算される。要求減速度Gsは、自動制動制御を実行するための車両減速度の目標値である。要求減速度Gsは、通信バスBSを介して、制動コントローラECUに送信される。
【0028】
例えば、要求減速度Gsは、衝突余裕時間Tc、及び、車頭時間Twに基づいて演算される。衝突余裕時間Tcは、自車両と物体とが衝突に至るまでの時間であり、車両前方の物体と自車両との相対的な距離Obが、障害物と自車両との速度差(「相対速度」と称呼し、相対距離Obの時間微分値)によって除算されることによって決定される。車頭時間Twは、前方の物体の現在位置に自車両が到達するまでの時間であり、相対距離Obが、車体速度Vxにて除算されて演算される。要求減速度Gsは、衝突余裕時間Tcが大きいほど、小さくなるように演算される。また、要求減速度Gsは、車頭時間Twが大きいほど、要求減速度Gsが小さくなるように演算される。
【0029】
≪制動コントローラECU≫
制動制御装置SCは、制動コントローラECU、及び、流体ユニットHU(「アクチュエータ」ともいう)にて構成される。制動コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECUは、車載の通信バスBSを介して、信号(検出値、演算値等)を共有するよう、他のコントローラ(ECJ等)とネットワーク接続されている。例えば、制動コントローラECUは、運転支援コントローラECJと、通信バスBSを通して接続される。制動コントローラECUから、運転支援コントローラECJには、車体速度Vxが送信される。一方、運転支援コントローラECJから、制動コントローラECUには、障害物との衝突を回避するよう(又は、衝突時の被害を軽減するよう)、自動制動制御を実行するための要求減速度Gs(目標値)が送信される。
【0030】
制動コントローラECU(電子制御ユニット)によって、流体ユニットHU(アクチュエータ)の電気モータMT、及び、3種類の異なる電磁弁UA、VI、VOが制御される。具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、各種電磁弁UA、VI、VOを制御するための駆動信号Ua、Vi、Voが演算される。同様に、電気モータMTを制御するための駆動信号Mtが演算される。
【0031】
コントローラECUには、電磁弁UA、VI、VO、及び、電気モータMTを駆動するよう、駆動回路DRが備えられる。駆動回路DRには、電気モータMTを駆動するよう、スイッチング素子(MOS-FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mtに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMTの出力が制御される。また、駆動回路DRでは、電磁弁UA、VI、VOを駆動するよう、駆動信号Ua、Vi、Voに基づいて、スイッチング素子によって、それらの通電状態(即ち、励磁状態)が制御される。なお、駆動回路DRには、電気モータMT、及び、電磁弁UA、VI、VOの実際の通電量を検出する通電量センサが設けられる。例えば、通電量センサとして、電流センサが設けられ、電気モータMT、及び、電磁弁UA、VI、VOへの供給電流が検出される。
【0032】
制動コントローラECUには、制動操作量Ba(Pm、Sp等)、車輪速度Vw、ヨーレイトYr、操舵量Sa、前後加速度(検出減速度)Gx、横加速度(検出横加速度)Gyが入力される。また、制動コントローラECUには、運転支援コントローラECJから、要求減速度Gsが、通信バスBSを介して入力される。制動コントローラECUによって、要求減速度Gsに基づいて、障害物との衝突を回避、又は、衝突の際の被害を低減するよう、制動力差制御(後述)を含む自動制動制御が実行される。
【0033】
≪流体ユニットHU≫
流体ユニットHUは、各車輪WHの制動力Fxを個別に制御するアクチュエータである。流体ユニットHUは、電気モータMT、流体ポンプHP、調圧リザーバRC、調圧弁UA、マスタシリンダ液圧センサPM、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
【0034】
前輪、後輪液圧室Rmf、Rmrと、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrとは、前輪、後輪接続路(流体路の1つ)HSf、HSr(=HS)にて接続される。接続路HSには、流体ユニットHUが接続される。接続路HSは、流体ユニットHU内の部位Bbf、Bbrにて分岐され、前輪、後輪ホイールシリンダCWf(=CWi、CWj)、CWr(=CWk、CWl)に接続される。前輪、後輪調圧弁UAf、UAr(調圧弁UAと液圧室Rmとの間の接続路HSの部位)上部Bmf、Bmrと、前輪、後輪調圧弁UAf、UAr(調圧弁UAとインレット弁VIとの間の接続路HSの部位)下部Bbf、Bbrとは、前輪、後輪還流路HKf、HKr(=HK)によって接続される。前輪、後輪還流路HKf、HKrには、前輪、後輪流体ポンプHPf、HPr、及び、前輪、後輪調圧リザーバRCf、RCrが設けられる。
【0035】
2つの流体ポンプ(前輪、後輪流体ポンプ)HPf、HPr(=HP)は、1つの電気モータMTによって駆動される。電気モータMTは、制動コントローラECUからの駆動信号Mtに基づいて制御される。流体ポンプHPによって、前輪、後輪調圧弁UAf、UAr(=UA)の上流側に位置する吸込部Bsf、Bsrにて、前輪、後輪調圧リザーバRCf、RCr(=RC)から制動液BFが汲み上げられる。汲み上げられた制動液BFは、前輪、後輪調圧弁UAf、UArの下流側に位置する、前輪、後輪吐出部Btf、Btrに吐出される。
【0036】
前輪、後輪調圧弁UAf、UAr(=UA)が、前輪、後輪接続路HSf、HSrに設けられる。調圧弁UAとして、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)が採用される。調圧弁UAは、制動コントローラECUからの駆動信号Uaに基づいて制御される。ここで、前輪、後輪調圧弁UAf、UArとして、常開型の電磁弁が採用される。
【0037】
コントローラECUにて、自動制動制御等の演算結果(例えば、ホイールシリンダCWの要求液圧)に基づいて、調圧弁UAの目標通電量(例えば、目標電流)が決定される。目標通電量に基づいて駆動信号Uaが決定され、この駆動信号Uaに応じて、調圧弁UAへの通電量(電流値)が調整され、調圧弁UAの開弁量が調整される。
【0038】
流体ポンプHPが駆動されると、還流路HK、及び、接続路HSで、「RC→HP→UA→RC」の制動液BFの還流(破線矢印で示す循環する制動液BFの流れ)KNが形成される。調圧弁UAへの通電が行われず、常開型調圧弁UAが全開状態である場合には、調圧弁UAの上流部Bmの液圧(即ち、マスタシリンダ液圧Pm)と、調圧弁UAの下流部Bbの液圧Pp(「調整液圧」という)とは、略一致する。
【0039】
常開型調圧弁UAへの通電量が増加され、調圧弁UAの開弁量が減少される。調圧弁UAによって、制動液BFの還流KNが絞られ、調圧弁UAの上流部Bmと下流部Bbとの間に圧力差(差圧)が発生される。即ち、調圧弁UAのオリフィス効果によって、下流側液圧(調整液圧)Ppは、上流側液圧(マスタシリンダ液圧)Pmから増加されて調整される。制動操作部材BPが操作されていない場合には、「Pm=0」であるが、調整液圧Ppによって、制動液圧(ホイールシリンダ液圧)Pwが、「0」から増加され、自動制動制御が行われる。
【0040】
調圧弁UAの上部の接続路HSには、前輪、後輪マスタシリンダ液圧Pmf、Pmrを検出するよう、前輪、後輪マスタシリンダ液圧センサPMf、PMrが設けられる。なお、基本的には、「Pmf=Pmr」であるため、前輪、後輪マスタシリンダ液圧センサPMf、PMrのうちの一方は、省略可能である。
【0041】
前輪、後輪接続路HSf、HSrは、前輪、後輪調圧弁UAf、UArの下部Bbf、Bbrにて分岐(分流)され、各ホイールシリンダCWi~CWlに接続される。分岐部Bbf、Bbrの下部において、各車輪WH(=WHi~WHl)に係る構成は同じである。
【0042】
分岐部Bbf、Bbrの下部の接続路HS(=HSi~HSl)には、インレット弁VI(=VIi~VIl)が設けられる。インレット弁VIとして、常開型のオン・オフ電磁弁が採用される。接続路HSは、インレット弁VIの下部(即ち、インレット弁VIとホイールシリンダCWとの間)にて、前輪、後輪減圧路HGf、HGr(=HG)に接続される。また、減圧路HGは、調圧リザーバRC(=RCf、RCr)に接続される。減圧路HGには、アウトレット弁VO(=VOi~VOl)が設けられる。アウトレット弁VOとして、常閉型のオン・オフ電磁弁が採用される。
【0043】
例えば、アンチロックブレーキ制御では、ホイールシリンダCW内の液圧(制動液圧)Pwを減少するために、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置される。制動液BFのインレット弁VIからの流入が阻止され、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、調圧リザーバRCに流出し、制動液圧Pwは減少される。また、制動液圧Pwを増加するため、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置される。制動液BFの調圧リザーバRCへの流出が阻止され、調整液圧Ppが、ホイールシリンダCWに導入され、制動液圧Pwが増加される。更に、ホイールシリンダCW内の液圧(制動液圧)Pwを保持するためには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが、共に閉弁される。つまり、電磁弁VI、VOを制御することによって、制動液圧Pw(即ち、制動トルクTqであり、結果、制動力Fx)が、各車輪WHのホイールシリンダCWで独立に調整可能である。
【0044】
<制動力差制御を含む自動制動制御の演算処理>
図2のフロー図を参照して、制動力差制御について、自動制動制御を例に説明する。該処理は、制動コントローラECUにて行われる。「自動制動制御」は、車両の前方の物体(障害物)と、車両との相対距離Obに応じた要求減速度Gsに基づいて、車両と障害物との衝突を回避等するよう、ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pw(=Pwi~Pwl)をマスタシリンダCMの液圧(マスタシリンダ液圧)Pm(=Pmf、Pmr)から増加するものである。「制動力差制御」は、制動中(自動制動制御の実行中、又は、運転者の制動操作に応じた制動中)に発生した車両偏向を、各車輪WH(=WHi~WHl)の制動力Fx(=Fxi~Fxl)を独立して調節することによって抑制するものである。
【0045】
ステップS110にて、各種信号が読み込まれる。具体的には、車輪速度Vw(車輪速度センサVWの検出値)、要求減速度Gs、検出減速度Gx(減速度センサGXの検出値)、ヨーレイトYr(ヨーレイトセンサYRの検出値)、検出横加速度Gy(横加速度センサGYの検出値であり、単に、「横加速度」ともいう)、及び、操舵量Sa(操舵量センサSAの検出値)が取得(検出、又は、受信)される。
【0046】
ステップS120にて、車体速度Vx、及び、実際に発生している車両の減速度(実減速度であり、単に、「減速度」ともいう)Gaが演算される。車体速度Vxは、車輪速度Vwに基づいて演算される。例えば、車両の加速時を含む非制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も遅い車輪速度に基づいて、車体速度Vxが演算される。また、制動時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も速い車輪速度に基づいて、車体速度Vxが演算される。更に、車体速度Vxの演算において、その時間変化量において制限が設けられてもよい。即ち、車体速度Vxの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vxの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。
【0047】
実際の減速度(実減速度)Gaは、実際に発生している車両の前後方向(進行方向)において、車両を減速する方向の加速度である。実減速度Gaは、検出減速度Gx、及び、車体速度Vxの時間微分値(「演算減速度Ge」という)のうちの少なくとも1つに基づいて演算される。なお、要求減速度Gs、実減速度Ga、検出減速度Gx、及び、演算減速度Geは、車両を減速する側の値が「正符号(+)」で表される。
【0048】
更に、ステップS120にて、アンチロックブレーキ制御(「ABS制御」ともいう)のための、減速スリップSw、及び、車輪加速度dVが演算される。減速スリップSwは、車輪速度Vwに基づいて演算される。具体的には、車体速度Vxと車輪速度Vwと偏差(スリップ速度)として演算される(即ち、「Sw=Vx-Vw」)。また、減速スリップSwは、車体速度Vxにて無次元化されてもよい。即ち、減速スリップSwは「スリップ率」であり、「Sw=(Vx-Vw)/Vx」にて演算される。車輪加速度dVは、車輪速度Vwに基づいて演算される。具体的には、車輪加速度dVは、車輪速度Vwが時間微分されて演算される。
【0049】
ステップS130にて、「自動制動制御が必要か、否か」が判定される。例えば、自動制動制御の要否は、要求減速度Gsと実際の減速度Gaとの比較に基づいて判定される。要求減速度Gsが実減速度Ga以下である場合には、自動制動制御は不要であり、処理は、ステップS110に戻される。要求減速度Gsが実減速度Gaよりも大きい場合には、自動制動制御が必要であることが判定され、処理は、ステップS140に進められる。
【0050】
ステップS140にて、規範旋回量Ys、及び、実旋回量Yaが演算され、それらに基づいて旋回量偏差hYが演算される。例えば、操舵量(例えば、操舵角)Saに基づいて規範旋回量Ysが演算されるとともに、ヨーレイトYrに基づいて実旋回量Yaが演算される。そして、規範旋回量Ys、及び、実旋回量Yaに基づいて、旋回量偏差hYが演算される。旋回量偏差hYは、操舵量Saによって指示された車両の進行方向(即ち、規範旋回量Ys)からの、実際の車両進行方向(即ち、実旋回量Ya)の相違を表す状態量である。従って、旋回量偏差hYによって車両の偏向状態が表現される。
【0051】
以下、旋回量偏差hYの物理量として、ヨーレイトYrが採用される場合について説明する。この場合、規範旋回量Ysは、操舵量(操舵角)Sa、及び、車体速度Vxに基づいて、車両において、ステアリングギア比を「N」、ホイールベースを「L」、スタビリティファクタを「Kh」としたときに、以下の式(1)にて計算される。
Ys=(Vx×Sa)/{N×L×(1+Kh・Vx)} …式(1)
また、実旋回量Yaは、ヨーレイトセンサYRにて検出されたヨーレイトYr(検出ヨーレイト)が、そのまま、用いられる。ここで、規範旋回量Ysは、車輪WHのグリップ状態が適切である場合に対応する。
【0052】
旋回量偏差hYは、車両の旋回方向(偏向方向)が考慮されて、以下の式(2)にて演算される。
hY=Ya-Ys …式(2)
ここで、車両の偏向方向は、旋回量偏差hYの符号に基づいて表現される。例えば、旋回量偏差hYの方向Ha(「第1方向」ともいう)が、操舵量Saによって指示される方向に対して、左旋回方向であれば、第1方向Haは正符号(+)として表現される。一方、旋回量偏差hYの方向Haが、操舵量Saによって指示される方向に対して、右旋回方向であれば、第1方向Haは負符号(-)として表される。また、旋回量偏差hYが「0」であれば、第1方向Haは「0(ゼロ)」として表される。ここで、「Ha=0」は、車両の進行方向が、操舵量Saによって指示される方向に対して旋回(偏向)していない状態であって、操舵量Saに対応した方向に一致している状態である。
【0053】
例えば、車両が直進走行している状態(即ち、「Sa=Ys=0」)で左旋回方向に偏向する場合には、旋回量偏差hYの方向Ha(第1方向)は正符号の値(>0)として演算される。逆に、右旋回方向に偏向する場合には、旋回量偏差hYの方向Haは負符号の値(<0)として演算される。また、旋回量偏差hYの方向hYがゼロ(0)であれば、車両は直進走行している。
【0054】
車輪WHがグリップしている状態では、操舵量SaとヨーレイトYrとは、所定の関係にある。このため、旋回量偏差hYは、物理量として、操舵量(操舵角)Saの次元で演算されてもよい。この場合の旋回量偏差hYが、「操舵量偏差」と称呼される。物理量として操舵量Saの次元が採用される場合には、規範旋回量Ysとして、操舵量Saが、そのまま、決定される。また、実旋回量Yaは、以下の式(3)にて演算される。
Ya={N×L×(1+Kh・Vx)×Yr}/Vx …式(3)
同様に、式(2)に従って、旋回量偏差hYが演算される。何れにしても、旋回量偏差hYは、操舵量Saに応じた規範旋回量Ysと、ヨーレイトYrに応じた実旋回量Yaとの差として演算される。
【0055】
ステップS150にて、要求減速度Gsに基づいて、前輪、後輪要求液圧Psf、Psr(=Ps)が決定される。要求液圧Psは、要求減速度Gsの増加に従って増加するように、予め設定された演算マップに応じて演算される。ここで、要求液圧Psは、実際の前輪、後輪制動液圧Pwf、Pwrに係る目標値の基準となる状態量である。例えば、前輪、後輪要求液圧Psf、Psrは同じになるよう演算され、4つのホイールシリンダCWi~CWlの実際の液圧(制動液圧)Pwが同一になるように指示される。
【0056】
ステップS160にて、「制動力差制御の実行が必要か、否か」が判定される。旋回量偏差hYの絶対値(「大きさ」ともいう)と所定量hxとの比較に基づいて判定される。ここで、所定量hxは、制動力差制御の実行を開始するしきい値(開始しきい値であり、単に、「しきい値」ともいう)であり、予め設定された所定値(定数)である。旋回量偏差hYの大きさが、所定量hx未満である場合には、制動力差制御の実行は不要であり、処理は、ステップS190に進められる。一方、旋回量偏差hYの大きさが、所定量hx以上である場合には、制動力差制御が必要であることが判定され、処理は、ステップS170に進められる。
【0057】
ステップS170にて、「アンチロックブレーキ制御(ABS制御)が実行されているか、否か」が判定される。ABS制御は、「車輪加速度dV、及び、減速スリップSw」との相互関係に基づいて実行される。具体的には、ABS制御では、車輪加速度dV、及び、減速スリップSwにおいて、夫々の制御しきい値(実行条件)が設定されている。そして、車輪加速度dV、及び、減速スリップSwが、これらの制御しきい値を超過すると、ABS制御が実行される。ステップS170が否定される場合(即ち、ABS制御が非実行)には、処理はステップS190に進められる。一方、ステップS170が肯定される場合(即ち、ABS制御が実行中)には、処理はステップS180に進められる。
【0058】
ステップS180にて、各車輪WH(特に、前輪WHf)の制動力Fxが演算され、制動力Fxの左右差hFが演算される。そして、旋回量偏差hYの方向Ha(第1方向)と制動力左右差hFの方向Hb(「第2方向」ともいう)とに基づいて、「車両偏向の原因が、路面摩擦係数(「路面μ」ともいう)であるか、否か」が判定される。
【0059】
ステップS180では、各車輪WHの制動力Fxが、公知の方法を用いて演算される。例えば、マスタシリンダ液圧Pmに基づくとともに、電磁弁UA、VI、VOの駆動状態に応じて、各ホイールシリンダCWの制動液圧Pwが演算される。そして、制動液圧Pw、及び、制動装置の諸元(マスタシリンダCMの受圧面積、ホイールシリンダCWの受圧面積、摩擦材の摩擦係数、回転部材KTの有効制動半径、等)制動力Fxが演算され得る。
【0060】
制動力左右差hFは、右側車輪WHmの制動力Fxm、及び、左側車輪WHhの制動力Fxhに基づいて、以下の式(4)にて演算される。
hF=Fxh-Fxm …式(4)
【0061】
「制動力Fxの左右差hFの方向Hb(第2方向)」について説明する。第2方向Hbは、制動力左右差hFによって引き起こされる車両の偏向方向である。車両の左右で路面摩擦係数(路面μ)が異なるμスプリット路を走行する場合にアンチロックブレーキ制御が実行されると、路面μが低い側(「低μ側」という)の車輪の制動力Fxは増加されない。一方、路面μが高い側(「高μ側」という)の車輪の制動力Fxは増加可能である。しかしながら、高μ側の制動力Fxが増加されると、制動力Fxの左右差hFが生じて、車両(車体)に高μ側に偏向させるようなヨーモーメントが作用する。該ヨーモーメントによって、車両が過大に偏向する場合がある。このため、制動力Fxの左右差hFに起因する過大な車両偏向が回避されるよう、μスプリット路の摩擦係数が高い側に対応(位置)する車輪(特に、前輪)の制動力Fxの増加が抑制され、ヨーモーメントの発生が低減される。制動制御装置SCでは、該制御の実行が可能であり、ABS制御における「スプリット制御」と称呼される。第2方向Hbは、スプリット制御において、制動力左右差hFに起因するヨーモーメントの作用方向と換言することができる。
【0062】
上述した様に、第1方向Haは、操舵量Saの方向を基準とした際に、車両が実際に偏向している方向であって、旋回量偏差hYの符号によって表されている。同様に、第2方向Hb(制動力左右差hFによって引き起こされる車両の偏向方向)は、制動力左右差hFの符号によって表される。つまり、第1、第2方向Ha、Hbの符号は、プラス(+)、ゼロ(0)、及び、マイナス(-)のうちの何れか1つによって表現される。
【0063】
例えば、車幅方向において、右側車輪が位置する路面μが高く、左側車輪が位置する路面μが低い場合、右側車輪(特に、右側前輪)WHmの制動力Fxmが、左側車輪(特に、左側前輪)WHhの制動力Fxhよりも大きくなる(即ち、「Fxm>Fxh」)。この場合、制動力左右差hFは、左側車輪制動力Fxh(低μ側制動力)が右側車輪制動力Fxm(高μ側制動力)から差し引かれて演算されるため、左右差hFに対応する第2方向Hbの符号は負符号(-)に決定される(即ち、「hF=Fxh-Fxm<0」)。一方、車幅方向において、左側車輪が位置する路面μが高く、右側車輪が位置する路面μが低い場合、左側車輪(特に、左側前輪)WHhの制動力Fxhが、右側車輪(特に、右側前輪)WHmの制動力Fxmよりも大きくなる(即ち、「Fxm<Fxh」)。制動力左右差hFは、左側車輪制動力Fxh(高μ側制動力)が右側車輪制動力Fxm(低μ側制動力)から差し引かれて演算されるため、第2方向Hbの符号は正符号(+)に決定される(即ち、「hF=Fxh-Fxm>0」)。
【0064】
旋回量偏差hYが発生する状況としては、以下に示す2つがある。
[A]車幅方向(車両の進行方向に対して左右方向)における路面の摩擦係数の差に起因して(即ち、μスプリット路でのABS制御に起因して)、偏向が生じている状況であって、「車両偏向の原因が路面μである」ことに相当する。
[B]「摩擦材の摩擦係数のバラツキに起因して偏向が生じている状況」、「積載物の車幅方向の偏り(「片荷」ともいう)に起因して偏向が生じている状況」、及び、「路面の車幅方向の傾斜に起因して偏向が生じている状況(「片流れ」ともいう)」のうちの少なくとも1つの状況であって、「車両偏向の原因が路面μではない」ことに相当する。
【0065】
ステップS180では、旋回量偏差hYの方向Ha(第1方向)、及び、制動力左右差hFの方向Hb(第2方向)との比較に基づいて、「車両偏向の原因が、路面μであるか、否か(即ち、状況[A]、及び、状況[B]の何れに該当するか)」が識別される。旋回量偏差hYの方向Haと、制動力左右差hFの方向Hbとが一致している場合には、「車両偏向の原因が路面μであること(状況[A])」が判定される。例えば、第1方向Haの符号と、第2方向Hbの符号とが一致している場合には、状況[A]が識別される。一方、旋回量偏差hYの方向Haと、制動力左右差hFの方向Hbとが不一致である(異なる)場合には、「車両偏向の原因が路面μではないこと(状況[B])」が判定される。例えば、第1方向Haの符号と、第2方向Hbの符号とが異なる場合には、状況[B]が識別される。
【0066】
上記の状況[A]では、制動力左右差hFに起因して旋回量偏差hYが発生しているため、制動力左右差hFが抑制(制限、又は、減少)される必要がある。従って、ステップS180が肯定される場合には、処理はステップS190に進められる。そして、ステップS190にて、スプリット制御が許可される。
【0067】
ステップS200にて、通常の制動力制御(「通常制御」ともいう)が実行される。通常制御(通常制動力制御)では、意図的には、制動力左右差hFが設けられず、要求液圧Psに基づいて、制動液圧Pwが調整される。以下、その詳細について述べる。
【0068】
要求液圧Psが、最終的な制動液圧Pwの目標値である目標液圧Ptとして決定される(即ち、「Pt=Ps」)。そして、電気モータMTが駆動され、調圧弁UA、及び、流体ポンプHPを含む制動液BFの還流(「HP→UA→RC→HP」で循環する制動液BFの流れ)KNが発生される。目標液圧Ptf、Ptr(=Ptf、Ptr)に基づいて、調圧弁UA(=UAf、UAr)が制御される。具体的には、目標液圧Ptに基づいて、調圧弁UAへの目標通電量Itが決定され、調圧弁UAへの実際の通電量Iaが制御される。例えば、駆動回路DRに実際の通電量Iaを検出する通電量センサ(例えば、電流センサ)が設けられ、実際の通電量(実電流)Iaが目標通電量(目標電流)Itに一致するよう、サーボ制御(電流フィードバック制御)が行われる。更に、調圧弁UAの制御において、実際の減速度Gaが、要求減速度Gsに一致するよう、サーボ制御(減速度フィードバック制御)が行われてもよい。
【0069】
更に、スプリット制御が許可されているため、ABS制御が実行されている場合には、ステップS200では、高μ側に位置する前輪制動力の増加勾配(時間Tに対する増加量)が抑制(制限)される。つまり、スプリット制御が実行される。これにより、路面μの左右差に起因する制動力左右差hFが抑制され、車両偏向が低減される。
【0070】
一方、上記の状況[B]では、車両偏向を抑制するため、意図的(積極的)に、制動力Fxの左右差hFが増加される必要がある。従って、ステップS180が否定される場合には、処理はステップS210に進められる。そして、ステップS210にて、スプリット制御が禁止される。
【0071】
ステップS220にて、制動力の左右差を発生させる制動力制御(制動力差制御)が実行される。制動力差制御では、旋回量偏差hYに基づいて、意図的に制動力左右差hFが発生される。以下、制動力差制御について詳述する。
【0072】
旋回量偏差hYに基づいて、旋回方向において、外側、内側車輪の要求液圧Psが修正されて、最終的な目標液圧Ptが演算される。具体的には、旋回量偏差hYが所定量hx(即ち、制動力差制御の実行しきい値)以上の場合に、旋回量偏差hYに基づいて、液圧修正量Pz、Pgが演算される。ここで、液圧修正量Pz、Pgは、予め設定された演算マップに従って、旋回量偏差hYの大きさ(絶対値)が増加するに従って、増加するように演算される。
【0073】
液圧修正量Pzは、旋回方向(偏向方向)に対して外側に位置する車輪(特に、前輪)の目標液圧Ptを、要求液圧Psから増加して調整するための状態量(「増加修正量」という)である。具体的には、旋回(偏向)外側車輪において、要求液圧Ps(前輪要求液圧Psf)に、増加修正量Pzが加算されて、目標液圧Pt(例えば、前輪目標液圧Ptf)が演算される(即ち、「Pt=Ps+Pz」)。また、液圧修正量Pgは、旋回方向(偏向方向)に対して内側に位置する車輪(特に、前輪)の目標液圧Ptを、要求液圧Ps(前輪要求液圧Psf)から減少して調整するための状態量(「減少修正量」という)である。具体的には、旋回(偏向)内側車輪において、要求液圧Ps(前輪要求液圧Psf)から、減少修正量Pgが減算されて、目標液圧Pt(例えば、前輪目標液圧Ptf)が演算される(即ち、「Pt=Ps-Pg」)。
【0074】
ステップS220では、電気モータMTが駆動され、調圧弁UA、及び、流体ポンプHPを含む制動液BFの還流(「HP→UA→RC→HP」で循環する制動液BFの流れ)KNが発生される。目標液圧Pt(=Ptf、Ptr)に基づいて、調圧弁UA(=UAf、UAr)が制御される。具体的には、目標液圧Ptに基づいて、調圧弁UAへの目標通電量Itが決定され、調圧弁UAへの実際の通電量Iaが制御される。例えば、駆動回路DRに実際の通電量Iaを検出する通電量センサ(例えば、電流センサ)が設けられ、実際の通電量(実電流)Iaが目標通電量(目標電流)Itに一致するよう、サーボ制御(電流フィードバック制御)が行われる。更に、調圧弁UAの制御において、実際の減速度Gaが、要求減速度Gsに一致するよう、サーボ制御(減速度フィードバック制御)が行われてもよい。
【0075】
更に、ステップS220では、制動力左右差hFを発生させるように、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが制御される。旋回外側車輪に対応するホイールシリンダCWでは、インレット弁VIは開弁され、調圧弁UAにて調整された液圧が供給される。一方、旋回内側車輪に対応するホイールシリンダCWでは、インレット弁VIは閉弁され、調圧弁UAにて調整された液圧の供給が阻止される。また、旋回内側車輪に対応する制動液圧Pwの減少が必要な場合には、アウトレット弁VOが開弁される。
【0076】
ステップS210にて、スプリット制御は禁止されているため、ステップS220において、ABS制御が必要な場合には、左右車輪において、独立した(即ち、高μ側の増圧勾配が制限されない)ABS制御が実行される。なお、ステップS210のスプリット制御の禁止においては、スプリット制御が実行されなければよいので、「μスプリット路であること」の判定が禁止されてもよい。
【0077】
制動制御装置SCでは、制動力差制御とスプリット制御との2つの制御が実行可能であるが、上記の状況[B](片荷、道路の横断勾配等に起因する車両偏向の発生)においては、車両偏向の抑制には、積極的に、制動力左右差hFが増加される必要がある。このため、制動力左右差hFの増加を制限し、抑制するスプリット制御が禁止される。これにより、制動力差制御とスプリット制御との干渉が回避され、適切、且つ、効果的に車両偏向が低減され得る。
【0078】
<作用・効果>
本発明に係る制動制御装置SCの構成、及び、作用・効果についてまとめる。
制動制御装置SCには、車輪WHの制動力Fxを調整するアクチュエータHUと、アクチュエータHUを制御するコントローラECUと、が備えられる。更に、制動制御装置SCには、車輪WHの回転速度を車輪速度Vwとして検出する車輪速度センサVWと、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサYRと、車両の操舵操作部材SWの操舵量Saを検出する操舵量センサSAと、が備えられる。そして、コントローラECUでは、以下の2つの制御が実行可能である。一方は、車輪速度Vwに基づいて、車両の左右で路面摩擦係数が異なるμスプリット路を走行する場合に、μスプリット路の摩擦係数が高い側に対応する車輪の制動力Fxの増加を抑制することによって、車両の偏向を抑制するスプリット制御である。他方は、ヨーレイトYrに基づいて、制動力Fxの左右差hFを発生させることによって、車両の偏向を抑制する制動力差制御である。コントローラECUでは、これら2つの制御の干渉が回避されるよう、操舵量Sa、ヨーレイトYr、及び、左右差hFに基づいて、スプリット制御の実行が禁止されて、制動力差制御が実行される。
【0079】
具体的には、コントローラECUでは、操舵量Sa、及び、ヨーレイトYrに基づいて、旋回量偏差hYが演算され、旋回量偏差hY、及び、制動力左右差hFに基づいて、スプリット制御の実行が禁止される。例えば、コントローラECUでは、旋回量偏差hYの方向Ha(第1方向)と左右差hFの方向Hb(第2方向)とが一致する(同一である)場合にはスプリット制御の実行が許可される。一方、旋回量偏差hYの方向Haと左右差hFの方向Hbとが不一致である(異なる)場合にはスプリット制御の実行が禁止される。
【0080】
旋回量偏差(ヨーレイト偏差、操舵量偏差)hYの方向Haは、規範旋回量Ysが基準とされた場合における、実際に車両が偏向している方向である。例えば、第1方向Haは、旋回量偏差hYの正負(ゼロを含む)の符号によって表示され得る。制動力左右差hFの方向Hbは、制動力左右差hFによって引き起こされる車両偏向の方向である。例えば、第2方向Hbは、制動力左右差hFの正負(ゼロを含む)の符号によって表示され得る。
【0081】
《片荷等によって車両偏向が引き起こされる場合》
例えば、均一摩擦係数の路面において、直進走行をしている状態(即ち、「Sa=0」)で自動制動制御が実行され、片荷によって車両が左旋回方向に偏向する状況を想定する。ステップS160の判定が初めて肯定された場合、左旋回方向を正符号とすると、実際の旋回量Yaは正符号であり、「Sa=0、Ys=0」である。このため、式(2)に従って、旋回量偏差hYは正の値となり、第1方向Haの符号は正(+)である。一方、ホイールシリンダCWには同一液圧が供給されるため、制動力左右差hFによっては、車両偏向が発生されない。即ち、「hF=0」であり、「Hb=0」である。旋回量偏差hYの方向Haと制動力左右差hFの方向Hbとが異なるため、ステップS180の処理が否定され、ステップS210にてスプリット制御が禁止される。
【0082】
車両偏向の程度が増大されると、それを抑制するよう、制動力差制御によって、車両(車体)に右旋回方向のヨーモーメントが作用するよう、制動力左右差hFが調整される。例えば、右側車輪(特に、右側前輪)の制動力が増加され、左側車輪(特に、左側前輪)の制動力が減少される。運転者が操舵操作部材SWを一定に保持していれば、旋回量偏差hYの方向Haは正符号である。そして、制動力差制御が実行されているため、制動力左右差hFの方向Hb(即ち、ヨーモーメントの作用する方向)は、右旋回方向であり、第2方向Hbは負符号である。旋回量偏差hYの方向Haと制動力左右差hFの方向Hbとが不一致であるため、スプリット制御の禁止が継続され、制動力差制御の実行が続けられる。
【0083】
更に、車両偏向の程度が増大されると、増加されている右側車輪の制動力が路面μに対応した値に近付きABS制御が実行される。しかし、スプリット制御が禁止されているため、制動力左右差hFが減少されない。このため、片荷等によって引き起こされる車両偏向が適切、且つ、効果的に抑制され得る。
【0084】
《μスプリット路等において路面摩擦係数によって車両偏向が引き起こされる場合》
次に、直進走行をしている状態(即ち、「Sa=0」)で、車幅方向において、右側の摩擦係数が高く、左側の摩擦係数が低いμスプリット路で、自動制動制御が実行され、且つ、アンチロックブレーキ制御が実行される状況を想定する。この場合、車両には、制動力左右差hFによって右旋回方向へのヨーモーメントが作用し、車両は右方向に偏向する。旋回量偏差hYは負の値となり、第1方向Haの符号は負(-)である。また、制動力左右差hFも負の値となり、第2方向Hbの符号は負(-)である。旋回量偏差hYの方向Haと制動力左右差hFの方向Hbとが一致する(同じである)ため、ステップS180の処理が肯定され、ステップS190にてスプリット制御が許可される。そして、制動力差制御は実行されず、スプリット制御が実行されて、制動力左右差hFの増大が抑制される。
【0085】
以上で説明した様に、旋回量偏差hYの方向Haと左右差hFの方向Hbとの比較によって、スプリット制御の適否(許可/禁止)が判定される。これにより、制動力差制御とスプリット制御との制御干渉が回避される。そして、制動制御装置SCにおいて、積極的に制動力左右差hFが増大されるべき状況では、制動力差制御が、適切、且つ、効果的に実行される。
【0086】
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(制動力左右差の適切な調整)を奏する。
【0087】
上記の実施形態では、自動制動制御を例に、制動力差制御、及び、スプリット制御について説明した。本発明に係る制動制御装置SCでは、制動力差制御、及び、スプリット制御は、自動制動制御中のみならず、運転者による制動操作部材BPの操作時(「マニュアル制動時」ともいう)にも実行され得る。マニュアル制動時においては、ステップS160での判定が否定される場合には、ホイールシリンダCWの液圧Pw(結果、制動力Fx)は、マスタシリンダ液圧Pm(即ち、制動操作部材BPの操作)によって調整される。一方、ステップS160での判定が肯定される場合には、流体ユニットHU(電気モータMT、調圧弁UA、インレット弁VI、アウトレット弁VO)が駆動されることによって、マニュアル制動時の制動液圧から、車幅方向において、一方側の制動液圧が増加され、他方側の制動液圧が減少される。即ち、スプリット制御が禁止された状態で制動力差制御が実行されることによって、車両の偏向が抑制される。
【0088】
上記の実施形態では、2系統の制動系統として、前後型のものが採用された。これに代えて、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用され得る。この場合、2つの液圧室Rmのうちの一方は、右前輪ホイールシリンダCWi、及び、左後輪ホイールシリンダCWlに接続され、2つの液圧室Rmのうちの他方は、左前輪ホイールシリンダCWj、及び、右後輪ホイールシリンダCWkに接続される。この場合でも、各車輪WHの制動力Fxは、調圧弁UA、及び、インレット弁VI、アウトレット弁VOによって、各輪独立で調節される。
【0089】
上記実施形態では、制動力差制御において、車幅方向において、一方側の制動力が増加され、他方側の制動力が減少された。これに代えて、一方側の制動力のみが増加され、他方側の制動力が維持されてもよい。また、一方側の制動力が維持され、他方側の制動力が減少されてもよい。何れにしても、制動力差制御では、車両偏向を抑制するヨーモーメントが積極的に発生されるよう、制動力左右差hFが調整される。
【0090】
上記実施形態では、車輪WHに制動トルクTq(結果、制動力Fx)を調節するアクチュエータとして、制動液BFを介した液圧式のものが例示された。これに代えて、電気モータによって駆動される、電動式のものが採用され得る。電動式のアクチュエータでは、電気モータの回転動力が、直線動力に変換され、これによって、摩擦部材が回転部材KTに押し付けられる。従って、制動液圧Pwに依らず、電気モータによって、直接、制動トルクTqが付与され、制動力Fxが発生される。さらに、前輪WHf用として、制動液BFを介した液圧式のアクチュエータが採用され、後輪WHr用として、電動式のアクチュエータが採用された、複合型であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
SC…制動制御装置、BP…制動操作部材、SW…操舵操作部材、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、HU…流体ユニット(アクチュエータ)、UA…調圧弁、ECU…コントローラ、GX…減速度センサ、GY…横加速度センサ、YR…ヨーレイトセンサ、SA…操舵量センサ(操舵角センサ)、Gs…要求減速度、Ga…実減速度、Vx…車体速度、Gy…横加速度、Yr…ヨーレイト、Sa…操舵量(操舵角)、Ys…規範旋回量、Ya…実旋回量、hY…旋回量偏差、Fx…制動力、hF…制動力左右差、Ha…旋回量偏差の方向(第1方向)、Hb…制動力左右差の方向(第2方向)。


図1
図2