(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】X線検査システム、X線検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/044 20180101AFI20240312BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20240312BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N23/044
G01N23/046
G06T1/00 305A
(21)【出願番号】P 2020031208
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】笠原 啓雅
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-226875(JP,A)
【文献】特開2007-017304(JP,A)
【文献】特開2007-121082(JP,A)
【文献】特開2011-080944(JP,A)
【文献】特開2011-191085(JP,A)
【文献】特開2017-026609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-G01N23/2276
G06T 1/00-G06T 1/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に対してX線を照射するX線発生手段と、
前記検査対象物を透過したX線を撮影するX線撮影手段と、
少なくとも前記検査対象物に係る情報を記憶する記憶手段と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成する、三次元データ作成手段と、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状を前記検査対象箇所において定められるユーザー所望の観察対象面における前記検査対象箇所の二次元形状として示すユーザー確認用画像を作成する、ユーザー確認用画像作成手段と、
前記ユーザー確認用画像作成手段が作成した画像を表示する表示手段と、
を有しており、
前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象箇所の所定の水平断層位置を特定する、基準面特定手段と、
前記水平断層位置から、垂直方向に所定距離分の投影処理を行った水平投影画像を取得する、水平投影画像取得手段と、
前記水平投影画像に基づいて前記ユーザー所望の観察対象面の輝度プロファイルを取得する、輝度プロファイル取得手段と、
前記輝度プロファイルを、前記検査対象箇所の形状に係る物理量を相対値として示す相対形状プロファイルに変換する、相対形状プロファイル作成手段と、
を備える、X線検査システム。
【請求項2】
前記輝度プロファイル取得手段は、前記水平投影画像に対して、少なくとも前記記憶手段に記憶された前記検査対象物に係る情報を用いて算出される投影範囲で、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ投影処理を行うことによって、前記輝度プロファイルを取得する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項3】
前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記相対形状プロファイル、及び、前記記憶手段に記憶された前記検査対象物に係る情報を用いて、前記ユーザー確認用画像における縦軸と横軸の縮尺を整合させる処理を行う、縮尺整合手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のX線検査システム。
【請求項4】
前記検査対象物は、部品実装基板であり、
前記検査対象箇所は、部品電極のはんだ付け部位であり、
前記ユーザー所望の観察対象面は、前記部品電極の長手、あるいは短手方向を示す面であり、
前記検査対象箇所の所定の水平断層位置は、はんだと基板の接合面であり、
前記検査対象箇所の形状に係る物理量は、高さを示す寸法である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のX線検査システム。
【請求項5】
前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記相対形状プロファイルの勾配及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、はんだフィレットの開始位置を特定する、フィレット開始位置特定手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項4に記載のX線検査システム。
【請求項6】
前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記相対形状プロファイル及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記部品電極の形状を推定して前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状推定手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のX線検査システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記部品実装基板に対して行われる外観検査の計測情報をさらに記憶し、
前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記計測情報から前記部品電極の形状を取得し、前記相対形状プロファイルに合わせてスケール変換したうえで、前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状合成手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のX線検査システム。
【請求項8】
検査対象物に対してX線を照射するX線発生手段と、
前記検査対象物を透過したX線を撮影するX線撮影手段と、
少なくとも前記検査対象物に係る情報を記憶する記憶手段と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成する、三次元データ作成手段と、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状を前記検査対象箇所において定められるユーザー所望の観察対象面における前記検査対象箇所の二次元形状として示すユーザー確認用画像を作成する、ユーザー確認用画像作成手段と、
前記ユーザー確認用画像作成手段が作成した画像を表示する表示手段と、
を有しており、
前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記検査対象物の三次元データに基づいて、計測対象物の所定部位の水平断層位置を特定する、基準面特定手段と、
前記検査対象物の三次元データに対して、前記所定部位の水平断層位置から垂直方向に所定距離分の投影処理を行った水平投影画像を取得する、水平投影画像取得手段と、
前記水平投影画像に基づいて前記ユーザー所望の観察対象面の輝度プロファイルを取得する、輝度プロファイル取得手段と、
前記検査対象物の三次元データに対して、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ
投影処理を行った垂直投影画像を取得する、垂直投影画像取得手段と、
前記垂直投影画像を用いて、前記輝度プロファイルを前記検査対象箇所の形状に係る物理量を絶対値として示す絶対形状プロファイルに変換する、絶対形状プロファイル作成手段と、を備える、
X線検査システム。
【請求項9】
前記垂直投影画像取得手段は、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ投影処理を行うための投影範囲を、前記水平投影画像及び前記記憶手段に記憶された前記検査対象物に係る情報を用いて決定する、
ことを特徴とする、請求項8に記載のX線検査システム。
【請求項10】
前記検査対象物は、部品実装基板であり、
前記検査対象箇所は、部品電極のはんだ付け部位であり、
前記ユーザー所望の観察対象面は、前記部品電極の長手、あるいは短手方向を示す面であり、
前記検査対象箇所の所定の水平断層位置は、はんだと基板の接合面であり、
前記検査対象箇所の形状に係る物理量は、高さを示す寸法である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のX線検査システム。
【請求項11】
前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記絶対形状プロファイル及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記部品電極の形状を推定して前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状推定手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項12】
前記記憶手段は、前記部品実装基板に対して行われる外観検査の計測情報をさらに記憶し、
前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記計測情報から前記部品電極の形状を取得し、前記絶対形状プロファイルに合わせてスケール変換したうえで、前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状合成手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項10に記載のX線検査システム。
【請求項13】
X線を用いて検査対象物を撮影した複数のX線画像を取得するステップと、
前記検査対象物を撮影した複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成するステップと、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状を前記検査対象箇所において定められるユーザー所望の観察対象面における前記検査対象箇所の二次元形状として示すユーザー確認用
画像を作成するステップと、
前記ユーザー確認用
画像を表示するステップと、
を有しており、
前記ユーザー確認用画像を作成するステップにおいて、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象箇所の所定の水平断層位置を特定すること、
前記水平断層位置から、垂直方向に所定距離分の投影処理を行った水平投影画像を取得することと、
前記水平投影画像に基づいて前記ユーザー所望の観察対象面の輝度プロファイルを取得することと、
前記輝度プロファイルを、前記検査対象箇所の形状に係る物理量を相対値として示す相対形状プロファイルに変換すること、
を実施する、X線検査方法。
【請求項14】
X線を用いて検査対象物を撮影した複数のX線画像を取得するステップと、
前記検査対象物を撮影した複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成するステップと、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状を前記検査対象箇所において定められるユーザー所望の観察対象面における前記検査対象箇所の二次元形状として示すユーザー確認用
画像を作成するステップと、
前記ユーザー確認用
画像を表示するステップと、
を有しており、
前記ユーザー確認用画像を作成するステップにおいて、
前記検査対象物の三次元データに基づいて、計測対象物の所定部位の水平断層位置を特定することと、
前記検査対象物の三次元データに対して、前記所定部位の水平断層位置から垂直方向に所定距離分の投影処理を行った水平投影画像を取得することと、
前記水平投影画像に基づいて前記ユーザー所望の観察対象面の輝度プロファイルを取得することと、
前記検査対象物の三次元データに対して、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ投影処理を行った垂直投影画像を取得することと、
前記垂直投影画像を用いて、前記輝度プロファイルを前記検査対象箇所の形状に係る物理量を絶対値として示す絶対形状プロファイルに変換すること、
を実施する、X線検査方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のX線検査方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査システム、X線を用いた検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体に照明光を照射して撮影された画像を用いて物体の三次元形状を測定する技術が知られており(例えば、特許文献1)、当該測定された形状と予め設定されている判定基準とを照合することなどにより、当該物体における欠陥の有無や種類を検査することが行われている。
【0003】
このように物体の三次元形状による検査を実施する場合には、検査の対象となった箇所が具体的にどのようになっているか、良・不良の判定結果が妥当であるかどうかなどを、ユーザーが確認できるようにすることが望ましい。また、検査の前に、判定基準を設定する作業(以下、ティーチング)を行う際にも、検査対象箇所の実際の状態や計測すべき箇所を確認できることが望ましい。
【0004】
これに対して、特許文献2には、外観検査装置における検査対象箇所の形状を複数の画像で提示することにより、ユーザーが検査対象箇所を容易に確認できるようにする技術が提案されている。具体的には、検査対象である部品実装基板の表示対象範囲を、基板面の上方から俯瞰した状態を示す画像、YZ平面を正面とする画像、およびXZ平面を正面とする画像を、それぞれのスケールや位置を合わせた状態で同一画面上に表示することが開示されている。
【0005】
なお、本明細書においては、垂直方向をZ軸、水平方向のうち奥行きを示す方向をY軸、水平方向のうちY軸と直角に交わる方向をX軸として説明を行う。
【0006】
一方、近年では、各種製品の小型化、精密化が進んでおり、例えば部品実装基板などでも部品実装密度が増大し、撮影装置の視野の影になる部位が増えることにより、外観検査では正確には検査できない部品が増加している。そして、これに対して、X線CT検査により外観では検査できない部分の検査を実施する技術が公知となっている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-71782号公報
【文献】特開2012-149905号公報
【文献】特開2017-223468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献3に記載の技術のように、X線CT検査により三次元形状を取得して検査を行う場合であっても、検査対象箇所の状態をユーザーが確認できるようにすることが望ましい。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、可視光を用いた外観検査に適用されるものであり、X線CT画像を用いた検査では検査対象箇所の状態や計測すべき箇所の確認ができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、複数のX線画像を用いて検査対象の三次元形状を測定して検査を行う場合において、ユーザーが容易に検査対象箇所
の状態を確認できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
【0011】
本発明に係るX線検査システムは、
検査対象物に対してX線を照射するX線発生手段と、
前記検査対象物を透過したX線を撮影するX線撮影手段と、
少なくとも前記検査対象物に係る情報を記憶する記憶手段と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成する、三次元データ作成手段と、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状をユーザー所望の観察対象面の二次元形状として示す、ユーザー確認用画像を作成する、ユーザー確認用画像作成手段と、
前記ユーザー確認用画像作成手段が作成した画像を表示する表示手段と、
を有する。
【0012】
なお、上記のX線検査システムは、各手段が一体となったX線検査装置として構成されていてもよい。また「ユーザー所望の観察対象面」とは、外観から視認可能な面に限定される意味ではなく、三次元データによって定義される形状における任意の位置(及び方向)の断面も含まれる。このような構成によれば、検査対象をX線撮影した複数の画像データから検査対象の三次元形状を計測するとともに、当該検査対象においてユーザーが確認したい箇所を、ユーザーが確認したい方向から示す二次元形状として表示することができる。このため、ユーザーは検査対象の外観情報からは確認できない箇所の状態についても、容易に確認することができる。
【0013】
また、前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象箇所の所定の水平断層位置を特定する、基準面特定手段と、
前記水平断層位置から、垂直方向に所定距離分の投影処理を行った水平投影画像を取得する、水平投影画像取得手段と、
前記水平投影画像に基づいて前記ユーザー所望の観察対象面の輝度プロファイルを取得する、輝度プロファイル取得手段と、
前記輝度プロファイルを、前記検査対象箇所の形状に係る物理量を相対値として示す相対形状プロファイルに変換する、相対形状プロファイル作成手段と、を備えていてもよい。
【0014】
ここで、形状に係る物理量とは、例えば高さ、幅などを示す寸法、傾き、角度などである。このような構成によれば、検査対象物の三次元データに基づいて取得できる水平投影画像から得られる輝度プロファイルを用いて、ユーザーが確認したい箇所をユーザーが確認したい方向から示す二次元形状に係る物理量を相対的に示した画像をユーザーに示すことができる。例えば、寸法を絶対値で示す画像を表示するのではなく、所定の点を基準とする相対的なアウトラインで示す画像を表示することが可能になり、輝度プロファイルを寸法に変換する処理などを行うことなく、ユーザーに二次元形状の画像を示すことが可能になる。
【0015】
また、前記輝度プロファイル取得手段は、前記水平投影画像に対して、少なくとも前記記憶手段に記憶された前記検査対象物に係る情報を用いて算出される投影範囲で、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ投影処理を行うことによって、前記輝度プロファイルを取得する、ものであってもよい。
【0016】
このような構成により、検査対象箇所に関する形状、寸法等のデータを用いて投影処理を行う範囲を決定することができるため、検査対象物において、ユーザーが確認したい箇所を精度よく抽出して投影処理を行うことが可能になる。これにより、精度よくユーザーが確認したい箇所の輝度プロファイルを抽出することができる。
【0017】
また、前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記相対形状プロファイル、及び、前記記憶手段に記憶された前記検査対象物に係る情報を用いて、前記ユーザー確認用画像における縦軸と横軸の縮尺を整合させる処理を行う、縮尺整合手段をさらに備えていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、検査対象箇所の寸法データなどを用いて、検査対象箇所の形状を寸法で示す二次元画像をユーザーに表示することができる。相対形状プロファイルから得られる二次元形状が示すのは、あくまで検査対象箇所における相対的なアウトラインであるため、縦軸と横軸の縮尺を一致させた寸法で検査対象箇所を示すことで、ユーザーの違和感を抑止する見やすい画像を提示することが可能になる。
【0019】
また、前記検査対象物は、部品実装基板であり、
前記検査対象箇所は、部品電極のはんだ付け部位であり、
前記ユーザー所望の観察対象面は、前記部品電極の長手、あるいは短手方向を示す面であり、
前記検査対象箇所の所定の水平断層位置は、はんだと基板の接合面であり、
前記検査対象箇所の形状に係る物理量は、高さを示す寸法であってもよい。
【0020】
このような構成であれば、部品の実装密度が大きい基板において、外観では確認できない箇所のはんだ付け部の濡れ上がり(以下、フィレット)形状を、容易に確認することができる。
【0021】
また、前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記相対形状プロファイルの勾配及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、はんだフィレットの開始位置を特定する、フィレット開始位置特定手段をさらに備えていてもよい。また、このように特定されたはんだフィレットの開始位置に基づいて、部品電極のはんだ付け部における形状の縦軸、横軸の寸法の縮尺を整合させた二次元形状を示す画像を表示するようにするとよい。
【0022】
また、前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記相対形状プロファイル及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記部品電極の形状を推定して前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状推定手段をさらに備えていてもよい。このような構成により、ユーザーは目視できない場所であっても、はんだフィレットの形状を、部品電極との位置関係と併せて確認することが可能になる。
【0023】
また、前記記憶手段は、前記部品実装基板に対して行われる外観検査の計測情報をさらに記憶し、
前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記計測情報から前記部品電極の形状を取得し、前記相対形状プロファイルに合わせてスケール変換したうえで、前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状合成手段をさらに備えていてもよい。
【0024】
部品電極の形状は外観検査用の画像データにより特定可能であるため、これによって得られた部品電極の形状を合成して用いることで、ユーザーは実際の部品電極の形状が反映された画像により、はんだ付け部の部品電極及びはんだフィレットの形状を確認することができる。
【0025】
また、前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記検査対象物の三次元データに基づいて、計測対象物の所定部位の水平断層位置を特定する、基準面特定手段と、
前記検査対象物の三次元データに対して、前記所定部位の水平断層位置から垂直方向に所定距離分の投影処理を行った水平投影画像を取得する、水平投影画像取得手段と、
前記水平投影画像に基づいて前記ユーザー所望の観察対象面の輝度プロファイルを取得する、輝度プロファイル取得手段と、
前記検査対象物の三次元データに対して、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ投影処理を行った垂直投影画像を取得する、垂直投影画像取得手段と、
前記垂直投影画像を用いて、前記輝度プロファイルを前記検査対象箇所の形状に係る物理量を絶対値として示す絶対形状プロファイルに変換する、絶対形状プロファイル作成手段と、を備えるものであってもよい。
【0026】
このような構成であると、ユーザーが確認したい箇所をユーザーが確認したい方向から示す二次元形状に係る寸法を表した画像をユーザーに示すことができる。このため、ユーザーは検査対象箇所の実際の形状に整合した二次元形状を示す画像により、より違和感のない態様で検査対象箇所の形状を確認することができる。
【0027】
また、前記垂直投影画像取得手段は、前記ユーザー所望の観察対象面の奥行方向へ投影処理を行うための投影範囲を、前記水平投影画像及び前記記憶手段に記憶された前記検査対象物に係る情報を用いて決定するようにしてもよい。
【0028】
このような構成により、輝度プロファイルを取得する画像の投影処理の範囲と、垂直投影画像を得るための投影処理の範囲を合致させることでき、絶対形状プロファイルを取得するための元データの基準となる検査対象箇所の位置を整合させ、精度の良い絶対形状プロファイルを取得することが可能になる。
【0029】
また、前記ユーザー確認用画像作成手段は、
前記絶対形状プロファイル及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記部品電極の形状を推定して前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状推定手段をさらに備えていてもよい。このような構成により、ユーザーは目視できない場所であっても、はんだフィレットの形状を、部品電極との位置関係と併せて確認することが可能になる。
【0030】
また、前記記憶手段は、前記部品実装基板に対して行われる外観検査の計測情報をさらに記憶し、
前記ユーザー確認用画像作成手段は、前記計測情報から前記部品電極の形状を取得し、前記絶対形状プロファイルに合わせてスケール変換したうえで、前記ユーザー確認用画像に反映させる、電極形状合成手段をさらに備えていてもよい。
【0031】
このような構成により、部品実装基板の検査において、X線撮影画像から得られるはんだフィレットの実際の形状、及び外観検査時の画像から得られる部品電極の実際の形状、に即した二次元形状を示す画像により、ユーザーは容易にかつ精度よく所望の検査対象箇所の形状の確認を行うことができる。
【0032】
また、本発明に係るX線検査方法は、
X線を用いて検査対象物を撮影した複数のX線画像を取得するステップと、
前記検査対象物を撮影した複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成するステップと、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状をユーザー所望の観察対象面の二次元形状として示すユーザー確認用画像を作成するステップと、
前記ユーザー確認用画像を表示するステップと、
を有する。
【0033】
また、本発明は、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0034】
なお、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数のX線画像を用いて検査対象の三次元形状を測定して検査を行う場合において、ユーザーが容易に検査対象箇所の状態を確認できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は本発明の適用例に係るX線検査装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は本発明の適用例に係るX線検査装置における確認用画像表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は実施形態1に係るX線検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は実施形態1に係る、検査対象箇所と、その三次元データと、水平投影画像と、輝度値プロファイルの関係を示す説明図である。
【
図5】
図5は実施形態1に係るX線検査システムにおける画像処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6は実施形態1に係るX線検査システムにおける確認用画像表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は実施形態2に係るX線検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は実施形態2に係る、検査対象箇所と、その三次元データと、垂直投影画像と、輝度値プロファイルの関係を示す説明図である。
【
図9】
図9は実施形態2に係るX線検査システムにおける画像処理の一例を示す図である。
【
図10】
図10は実施形態2に係るX線検査システムにおける確認用画像表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は実施形態3に係るX線検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<適用例>
(適用例の構成)
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。本発明は、例えば、検査対象物(例えば部品実装基板)をX線撮影し、当該撮影画像に基づいて当該検査対象物を検査するための、X線検査装置として適用することができる。
図1は本適用例に係るX線検査装置9の概略構成を示す模式図である。X線検査装置9は概略、制御端末91と、X線源92、X線カメラ93とを有する撮影部94とを含んで構成される。
【0038】
制御端末91は、例えば汎用のコンピュータなどによって構成されることができ、駆動制御部911、記憶部912、三次元データ作成部913、検査部914、画像作成部9
15、表示部916の各機能部を備えている。
【0039】
X線源92は図示しない搬送ローラによって搬送される検査対象物OにX線を照射し、X線カメラ93は検査対象物Oを透過したX線を撮影する。X線源92はXステージ921およびYステージ922によって移動可能であり、X線カメラ93はXステージ931およびYステージ932によって移動可能である。X線源92およびX線カメラ93はこれらのステージによってそれぞれ円軌道C1,C2を移動し、軌道上の複数の位置で撮影が行われる。
【0040】
駆動制御部911は、X線検査装置9を構成する各部の駆動を制御する。これにより、X線検査装置9は、検査対象物O、X線源92、X線カメラ93の相対位置を変化させて、複数の撮影位置から検査対象物Oを撮影する。
【0041】
記憶部912には、少なくとも検査対象物Oに係る情報(例えば、部品実装基板であれば、部品の種類、形状、寸法など)、閾値などの検査基準に係る情報、が記憶されている。また、検査装置を制御するためのプログラム、後述するユーザー確認用画像作成のためのデータなどが格納されていてもよい。
【0042】
三次元データ作成部913は、上記のようにして撮影された複数のX線画像から、検査対象物O(或いはその一部である検査対象箇所)の三次元データを作成する。当該データの作成(構築)方法については、CT(Computed Tomography)やトモシンセシスなどの公知技術を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。また、検査部914は、三次元データ作成部913と記憶部912に記憶されている検査基準とを比較することによって、検査対象物Oの良不良を判定する検査を実行する。
【0043】
画像作成部915は、三次元データ作成部913が作成した三次元データを用いて、検査対象物Oにおける検査対象箇所の形状を、所定の方向から観察した場合の二次元形状として示すユーザー確認用画像(例えば、検査対象物のXZ平面を正面とする画像)を作成する。また、表示部916は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置を含んで構成され、画像作成部915が作成したユーザー確認用画像を表示する。
【0044】
(処理の流れ)
本適用例におけるX線検査装置9が行う上記の処理の手順を
図2に示す。まず、X線検査装置9は、検査対象物Oを複数の異なる位置からX線撮影し、複数のX線画像データを取得する(S901)。次に、X線検査装置9は、ステップS901で取得した複数の複数のX線画像データから、検査対象物Oの三次元データを作成する(S902)。
【0045】
X線検査装置9は、続けて、ステップS902で作成した三次元データに基づいて、検査対象物Oの検査を行う(S903)。具体的には、例えば、予め記憶部912に保持されている、検査対象物Oの形状に係る検査基準(閾値)と、三次元データとを比較することにより、検査対象物Oの良否を判定する。また、当該判定結果を表示部916において表示するようにしてもよい。
【0046】
X線検査装置9は、さらに、ステップS902で作成した三次元データを用いて、後述するユーザー確認用画像を作成するための前処理を実施する(S904)。具体的には、例えば、三次元データから検査対象箇所に係るユーザー所望の方向(例えば、検査対象物OのXZ平面を正面とする方向)の輝度プロファイルを取得する。
【0047】
そして、X線検査装置9は、ステップS904の処理に基づいて、検査対象物Oにおける検査対象箇所の形状をユーザー所望の方向から観察した場合の二次元形状として示すユ
ーザー確認用画像を作成する(S905)。具体的には、例えば、検査対象箇所の形状に係る寸法を相対的に示す相対形状プロファイルとして示す画像を作成する。
【0048】
そして、X線検査装置9は、ステップS904で作成した画像を、表示部916に表示し(ステップS906)、一連の処理を終了する。なお、表示部916への表示は、所定の検査対象箇所の画像を自動的に表示するのであってもよいし、ユーザーからの指示入力を待ったうえで、指示に従った画像を表示するのであってもよい。また、ステップS903の検査結果と共に、ユーザー確認用画像を表示するようにしてもよい。
【0049】
本適用例に係るこのようなX線検査装置9によれば、検査対象箇所の形態が外観からは確認できないような場合であっても、当該箇所の形状をユーザーが容易に確認することができる。これにより、X線検査装置において、検査結果の当否の判断、検査基準の設定、修正などを容易に行うことが可能になる。
【0050】
<実施形態1>
次に、
図3~
図6に基づいて、本発明を実施するための形態のさらに詳細な例について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0051】
(システム構成)
図3は、本実施形態に係る、X線検査システム1の機能構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係るX線検査システム1は、図示しないが、CT装置と情報処理端末とを含んで構成されており、例えば部品実装基板の検査に用いられる。
【0052】
CT装置は、X線源11、X線カメラ12、及び、検査対象物を保持するステージ13、を備えており、これらの各構成が相対的に移動することによって、検査対象物の異なる位置(及び向き)の断層画像を取得できるようになっている。CT装置については所望の公知技術を採用することができるため、X線源11、X線カメラ12及びステージ13などの詳細な説明は省略する。
【0053】
情報処理端末は、例えばCPUやDSP等のプロセッサ、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等の主記憶部とEPROM、ハードディスクドライブ(HDD)、リムーバブルメディア等の補助記憶部とを含む記憶部24、キーボード、マウス等の入力部25、液晶ディスプレイ等の出力部26、を備える汎用コンピュータとすることができる。なお、情報処理端末は、単一のコンピュータで構成されてもよいし、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0054】
補助記憶部には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、検査対象物に係る各種情報、各種の検査基準等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的を果たす機能部を実現することができる。なお、一部又は全部の機能部はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0055】
次に、情報処理端末が備える各機能部について説明する。情報処理端末は、制御部21と、三次元データ作成部22と、確認用画像作成部23の各機能部を有している。制御部21は、CT装置及び情報処理端末の各所の制御を司り、例えば、X線源11、X線カメラ12、ステージ13の駆動制御、入力部25に係る入力機器の制御、出力部26への出力制御等を行う。
【0056】
三次元データ作成部22は、CT装置から取得した検査対象の複数のX線断層画像に基づいて、検査対象箇所の三次元形状のデータ(以下、単に三次元データともいう。)を作成する。なお、詳述はしないが、作成された三次元データを所定の検査基準と比較することで、検査対象の良否を判定する検査が行われる。
【0057】
(確認用画像作成部について)
確認用画像作成部23は、三次元データ作成部22が作成した三次元データを用いて、検査対象における所望の検査対象箇所の形状を、所定の方向から観察した場合の二次元形状として示す、ユーザー確認用画像を作成する。そして、確認用画像作成部23は当該画像を作成するため、さらに、基準面特定部231、水平投影画像取得部232、輝度プロファイル取得部233、相対形状プロファイル作成部234、フィレット位置決定部235、縮尺整合部236、電極形状推定部237、の各機能部を備えている。
【0058】
基準面特定部231は、上述の三次元データにおいて、Z軸の座標が異なる水平断層画像(XY平面の画像)の画像特徴量に基づいて、基準面(例えば、はんだ接合面)となる水平断層位置を特定する処理を行う。画像特徴量としては、例えば、画像中の輝度のバラツキ(以下、輝度分散という)度合いなどを用いることができる。
【0059】
具体的な処理の方法としては、例えば、三次元データをZ軸方向に探索し、最も輝度分散が高い水平断層画像を特定する。そして、当該水平断層画像のZ軸座標から、所定値分-Z方向へオフセットした位置を、基準面として特定する。なお、オフセットする所定値は、予め部品の種類毎にユーザーが設定し、記憶部24に保存しておいてもよい。
【0060】
水平投影画像取得部232は、基準面特定部231が特定した基準面に基づいて、所定範囲の三次元データに投影処理を行い、検査対象のはんだ付け部におけるはんだ形状が強調されるような水平投影画像を作成する。具体的には、例えば、三次元データにおいて、基準面のZ軸座標から所定値分Z方向へ水平断層画像の平均値投影(各画素に全画像の当該画素の輝度値の平均値を算出して反映させる)を行う。ここで、投影処理を行う範囲は、事前に得られる部品に応じてはんだが高々濡れあがる高さの情報等に基づいて、ユーザーが予め設定し、記憶部24に保存しておいてもよい。
【0061】
輝度プロファイル取得部233は、水平投影画像取得部232が作成した水平投影画像に対して投影処理を行い、ユーザーが確認したい方向(水平画像なので、はんだ付け部の短手方向又は長手方向)の輝度値のプロファイルを取得する(以下、短手方向の輝度値プロファイルを短手方向輝度プロファイル、長手方向の輝度プロファイルを長手方向輝度プロファイルと記載する)。投影範囲は、水平投影画像のユーザーが確認したい方向とは対となる方向の輝度プロファイル、及び、記憶部24に保存されている部品設計情報(例えば、ランド幅、電極幅等)、輝度勾配などに基づいて、決定するとよい。なお、ここでは、輝度プロファイルとは、輝度値を二次元座標上にプロットして得られる輪郭形状のことである。
【0062】
図4は、検査対象箇所、その三次元データ、水平投影画像、短手方向輝度値プロファイル、長手方向輝度値プロファイル、の関係を示す説明図である。以下、本明細書においては、ユーザー所望の方向を長手方向として説明を行う。長手方向の輝度値のプロファイルを確認したい場合、短手方向の輝度プロファイルなどから、投影処理を行う範囲を決定する。
図4を参照すると、短手方向の輝度プロファイルに基づいて、はんだ付け部の電極の幅を特定し、当該幅の分を長手方向に投影処理を行う。なお、ここでの投影処理は、最大値投影(最も高い輝度値の画素を反映させる)によることが望ましい。
【0063】
相対形状プロファイル作成部234は、輝度プロファイル取得部233が取得した輝度プロファイルを、相対的なZ軸方向(即ち、高さ)の形状を表すプロファイル(以下、相対高さプロファイルという)に変換する。具体的には、基準面(即ち、はんだの接合面)を0%、高々はんだが濡れ上がる高さを100%として、輝度プロファイルの変換を行う。例えば、輝度プロファイル値から基準面の輝度値を減じた値を、高々はんだが濡れ上がる位置の輝度から基準面の輝度値を減じた値で除し、その値に100を乗ずることで、相対高さを求めるようにしてもよい。
【0064】
なお、基準面の輝度は、一例として、水平投影画像のはんだ外側領域の輝度の平均としてもよい。当該はんだ外側領域は水平投影画像の二値化処理などで求めるようにしてもよい。また、高々はんだが濡れ上がる位置の輝度は、予めユーザーが設定するか、デフォルト値として255としておいてもよい。
【0065】
フィレット位置決定部235は、相対高さプロファイルの勾配、及び、記憶部24に保存されている部品設計情報(ランド長さ)などから、相対高さプロファイルにおけるはんだのフィレットの位置を決定する。なお、外側から観察した際に電極の表面側に位置するフィレット(いわゆるフロントフィレット)と、電極の裏側に位置し、外観では形状を確認できないフィレット(いわゆるバックフィレット)のいずれについても当該処理を行う。
【0066】
縮尺整合部236は、相対高さプロファイルの縦軸(Z方向、高さ)と横軸(長手方向のフィレット長さ)の縮尺を整合させる処理を行う。相対高さプロファイルは輝度プロファイルに基づいて作成されるものであり、縦軸方向の座標は、例えばランド長など、部品設計情報として寸法が明確に定義されている長手方向の座標とは全く基準が異なる。このため、縦軸方向の縮尺を長手方向の縮尺と整合させる処理を行うことで、ユーザーが視認した際に違和感のない二次元画像を提供することが可能になる。なお、以後は相対高さプロファイルに縮尺整合処理を行ったものを、処理後相対高さプロファイルという。
【0067】
電極形状推定部237は、部品のおおよその電極形状を推定して、処理後相対高さプロファイルに当該推定された電極の形状を重畳表示するための処理を行う。具体的には、例えば、処理後相対高さプロファイルの、フィレット位置間で谷になっている箇所の極小値を、電極の先端位置として仮定する。そして、当該電極先端位置からバックフィレット位置における相対高さプロファイルデータを近似して、記憶部24に保存された部品設計情報(電極厚さ)から、おおよその電極を推定すればよい。
図5に、推定された電極の形状を重畳表示した場合の処理後相対高さプロファイルの表示例を示す。
【0068】
(ユーザー確認用画像表示処理の流れ)
次に、
図6を参照して、本実施形態において、検査対象である基板のX線画像撮影からユーザー確認用画像を表示するまでの処理の流れを説明する。まず、制御部21の制御によりCT装置によって基板のX線断層画像が撮影される(S101)。そして、三次元データ作成部22が複数のX線断層画像から基板の三次元データが作成される(S102)。
【0069】
次に、ユーザーは入力部25を介して、基板における部品のはんだ付け部(以下、ランドという)のうち、ユーザー確認用画像を表示させたいランドを設定する(S103)。なお、設定するランドの数は一つ限らず、複数のランドを設定するのであってもよい。そして、確認用画像作成部23が、設定された全てのランドに対して、以下で説明するループL1の処理を実行する。
【0070】
ループL1では、まず、基準面特定部231が、ステップS102で作成された三次元
データから、はんだ接合面である基準面を特定する(S104)。そして、水平投影画像取得部232が、ステップS104で特定された基準面から、三次元データに投影処理を行い、水平投影画像を取得する(S105)。続いて、輝度プロファイル取得部233が、ステップS105で取得した水平投影画像に対してさらに投影処理を行い、ユーザーが確認したい方向の輝度プロファイルを取得する(S106)。さらに、相対形状プロファイル作成部234が、ステップS106で取得した輝度プロファイルを相対高さプロファイルに変換する処理を行い(S107)、フィレット位置決定部235が相対高さプロファイルにおけるフィレット位置を決定する(S108)。次に、縮尺整合部236が相対高さプロファイルの縦軸と横軸の縮尺を整合させる処理を行い(S109)、処理後相対高さプロファイルを作成する。そして、電極形状推定部237が、対象のランドにおけるおおよその電極形状を推定して、処理後相対高さプロファイルに当該推定された電極の形状を重畳表示するための処理を行い(S110)、一連のループL1処理が終了する。なお、作成されたユーザー確認用画像の情報は、確認用画像作成部23により記憶部24に保存されるようにしておくとよい。また、ステップS104からステップS110の各処理の詳細については、各機能部についての説明の際に説明済みであるため、省略する。
【0071】
全てのランドに対して、上記のループL1の処理が終了すると、制御部21は、ユーザーがランドの指定を行うのを待機する。ユーザーが入力部25を介して、ステップS103で設定したランドの中から、任意のランドを選択すると(S111)、制御部21は出力部26に、当該ランドに対してループL1で作成したユーザー確認用画像を表示させる処理を実行し(S112)、一旦、本ルーティンを終了する。
【0072】
上記したようなX線検査システム1によると、ユーザーは、外観からは観察できないような部品実装基板のはんだ付け部について、所望の位置、及び方向から見た場合のおおよその輪郭形状を、二次元情報として視認することが可能になる。このため、部品実装基板のX線検査において、検査結果の妥当性を容易に判断することが可能になる。また、これに基づいた検査基準のティーチングも容易に行うことが可能になる。
【0073】
<実施形態2>
続けて、本発明に係る他の実施形態であるX線検査システム2について、
図7から
図10に基づいて説明する。本実施形態に係るX線検査システム2は、上述のX線検査システム1と多くの構成を共通にしているため、同様の構成及び機能については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0074】
図7は、本実施形態に係るX線検査システム2の機能構成を示す概略ブロック図である。
図7に示すように、本実施形態に係るX線検査システム2は、確認用画像作成部30の機能部の一部において差がある他は、X線検査システム1と同様の構成を有している。
【0075】
X線検査システム2における確認用画像作成部30は、基準面特定部231、水平投影画像取得部232、輝度プロファイル取得部233、垂直投影画像取得部301、フィレット高さ特定部302、絶対形状プロファイル作成部303、電極形状推定部304、の各機能部を備えている。このうち、基準面特定部231、水平投影画像取得部232、輝度プロファイル取得部233については、X線検査システム1のそれと同様であるため、説明を省略する。
【0076】
垂直投影画像取得部301は、三次元データ作成部22が作成した三次元データに対して、ユーザーが確認したい方向(ここでは、長手方向)の投影処理を実施して、検査対象のはんだ付け部における垂直投影画像を取得する。投影処理を行う範囲(長手方向と対になる方向の距離)と投影方法は、輝度プロファイル取得部233が行う投影処理と同様の範囲、及び方法(即ち、最大値投影)とすることが望ましい。このようにすることで、輝
度プロファイルの基になる範囲と、垂直投影画像の基になる範囲とを整合させることができる。
【0077】
フィレット高さ特定部302は、輝度プロファイル取得部233が取得した輝度プロファイルと、垂直投影画像取得部301が取得した垂直投影画像とに基づいて、フィレットの濡れ上がり高さ(以下、フィレット高さともいう)を特定する。
【0078】
図8は、検査対象箇所、その三次元データ、垂直投影画像、水平投影画像の長手方向輝度値プロファイル、の関係を示す説明図である。
図8を参照して、まず、輝度プロファイルのピーク値Pを基準にして、垂直投影画像と輝度プロファイルとの横軸の位置合わせ処理を行う。次に、輝度プロファイルのピーク値Pに対応する垂直投影画像の横軸座標を定め、当該横軸座標における縦軸ライン上を、基準面から縦軸方向に走査していき、その走査によって得られた輝度値のプロファイルの勾配から、フィレット高さFの特定を行う。具体的には、走査して得られた垂直投影画像の縦軸の輝度プロファイルを一次微分し、当該一次微分の値が最も小さくなった箇所(即ち、輝度プロファイルの傾斜が元も大きい箇所)をフィレット高さFとするとよい。垂直投影画像は、三次元データを投影処理することによって取得されるため、垂直投影画像上の縦軸座標が定まると、実際の高さを特定することが可能になる。
【0079】
絶対形状プロファイル作成部303は、フィレット高さ特定部302が特定したフィレット濡れ上がり高さと、長手方向輝度プロファイルを用いて、輝度値を絶対高さに変換する処理を行う。具体的には、特定されたフィレット高さを長手方向輝度プロファイルのピーク値に、基準面の高さ(常に0)を、フィレット開始位置(即ち基準面との境界)に対応する輝度プロファイル値に対応させて、輝度値を絶対高さに変換する。変換の方法は、例えば、ax+by+c=0(x=輝度、y=高さ)の一次変換を採用することができる。
図9は、長手方向輝度プロファイルと、これを変換した絶対高さプロファイルを示す図である。
【0080】
電極形状推定部304は、部品のおおよその電極形状を推定し、絶対高さプロファイルに当該推定された電極の形状を重畳表示するための処理を行う。処理の具体的な方法は、実施形態1における電極形状推定部237と同様であり、推定に用いるプロファイルが絶対プロファイルであるという点においてのみ異なっているため、詳細な説明は省略する。
【0081】
次に、
図10を参照して、本実施形態において、検査対象である基板のX線画像撮影からユーザー確認用画像を表示するまでの処理について説明するが、実施形態1における処理と同様の処理を行うステップについては説明を省略する。
【0082】
具体的には、ステップS101からS103までは、実施形態1と同様であり、X線画像を取得して、三次元データの作成を行い、ユーザーが任意の確認用画像を取得したいランドを指定する。その後、設定された各ランドに対して、確認用画像作成部30がユーザー確認用画像作成のためのループL2処理を実行する。なお、当該ループL2処理のうち、S104からS106までの処理は、実施形態1の場合と同様である。
【0083】
ステップS106で、輝度プロファイルを取得した後は、垂直投影画像取得部301が、ステップS102で作成された三次元データから垂直投影画像を取得する(S201)。続けて、フィレット高さ特定部302が、輝度プロファイルと垂直投影画像とに基づいて、フィレット高さを特定する(ステップS202)。
【0084】
次に、絶対形状プロファイル作成部303が、ステップS202で特定したフィレット高さと、輝度プロファイルとを用いて、輝度プロファイルを絶対高さプロファイルに変換
する(S203)。その後、電極形状推定部304が、部品の電極形状を推定し、絶対高さプロファイルに推定電極形状を重畳表示するための処理を行い(S204)、一連のループL2の処理が終了する。
【0085】
その後の処理、ステップS111、ステップS112は実施形態1の場合と同様であるため、説明を省略する。このような構成のX線検査システム2によると、ユーザーは実際のはんだ形状に整合した輪郭形状を示す画像で確認を行うことができるため、ユーザーの納得感を高めることができる。これによって、より効率的に、検査結果の妥当性の確認、検査基準のティーチング等を行うことが可能になる。
【0086】
<実施形態3>
続けて、さらに他の実施形態であるX線検査システム3について、
図11に基づいて説明する。本実施形態に係るX線検査システム3は、上述のX線検査システム1と多くの構成を共通にしているため、同様の構成及び機能については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0087】
図11は、本実施形態に係るX線検査システム3の機能構成を示す概略ブロック図である。
図11に示すように、本実施形態に係るX線検査システム3は、検査対象の外観検査を行う外観検査装置50と情報連携する構成となっている。また、確認用画像作成部40の機能部として、電極形状取得部401と、電極形状合成部402を備えている点において、X線検査システム1と異なっている。
【0088】
外観検査装置50は、いわゆるカラーハイライト方式により部品実装基板の外観検査を行う装置である。なお、カラーハイライト方式とは、複数の色(波長)の光を互いに異なる入射角で基板に照射し、はんだ表面にその法線方向に応じた色特徴(カメラから見て正反射方向にある光源の色)が現れるようにした状態で撮像を行うことにより、はんだ表面の三次元形状を二次元の色相情報として捉える方法である。このような方式の検査により、基板のランド部分において、外観から視認可能な電極の形状、及びフィレットの傾きの程度を精度よく検出することが可能になる。
【0089】
本実施形態に係るX線検査システム3では、外観検査装置50と情報通信することにより、外観検査装置50を用いて行わる同一基板に対する外観検査に係る情報(例えば、カラーハイライト画像情報など)を取得可能に構成されている。通信の方法は所望の公知技術を採用すればよく、有線接続されるものであってもよいし、無線接続であってもよい。なお、外観検査装置50から取得した情報の少なくとも一部を、記憶部24に記憶しておくようにしてもよい。このような構成であれば、外観検査装置50との通信が途絶した場合であっても、少なくとも記憶部24に保存された情報はX線検査システム3で用いることが可能になる。
【0090】
電極形状取得部401は、検査対象の基板について既に外観検査装置50で行われた外観検査のカラーハイライト画像に基づいて測定された電極の形状を取得する。カラーハイライト画像に基づく電極形状の測定は外観検査装置50で行われ、記憶部24にランド毎の電極形状が保存されるようにしておくとよい。ただし、記憶部24にはカラーハイライト画像のみが保存され、電極形状取得部401において電極形状の測定を行うのであってもよい。
【0091】
電極形状合成部402は、電極形状取得部401が取得した電極形状(以下、実電極形状という)を、縮尺整合部236によって調整された処理後相対高さプロファイルに対して重畳表示するための処理を行う。具体的には、実電極形状を、処理後相対高さプロファイルに合わせてスケール変換(分解能や座標系の一致処理)し、処理後相対高さプロファ
イルに重畳させる。これにより、出力部26に出力されるユーザー確認用画像では、実際の電極形状が反映されたはんだ付け部の輪郭形状を示すことが可能になる。
【0092】
なお、本実施形態においてユーザー確認用画像を表示させるための処理は、実施形態1のX線検査システム1と、電極形状の取得と重畳処理に関する部分が異なるのみであるため、説明は省略する。
【0093】
以上のような、本実施形態に係るX線検査システム3によれば、ユーザーは実際の電極形状が反映された画像により、はんだ付け部の部品電極及びはんだフィレットの形状を確認することができ、ユーザーの納得感を高めることができる。
【0094】
<その他>
上記各実施形態は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明はその技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記実施形態2のX線検査装置2と実施形態2のX線検査装置とを組み合わせて、絶対高さプロファイルに実電極形状が重畳されたユーザー確認用画像を表示させるようにしてもよい。
【0095】
また、上記各例の記憶部の少なくとも一部を情報処理端末とは別体の記憶装置としてもよいし、これをクラウド接続するのであってもよい。また、逆に、上記各例において、X線検査システムは一体の装置、即ちCT装置とコンソールが一体となったものとして提供
されてもよい。また、上記各例において、ステップS102からステップS112までの間のいずれかのタイミングで、基板の検査が実行されてもよく、ステップS112で表示されるユーザー確認用画像に、当該検査結果を合わせて表示するようにしてもよい。
【0096】
また、実施形態1において、ステップS109の縮尺の整合処理を行う前に、推定電極形状を算出し、その後に電極形状と併せて相対高さプロファイルの縮尺を整合するようにしてもよい。即ち、ステップS109とステップS110の処理が入れ換わってもよい。また、実施形態2において、ステップS201の処理が、ステップS104又はステップS105の前に行われてもよい。
【0097】
<付記>
本発明の一の態様は
検査対象物に対してX線を照射するX線発生手段(11)と、
前記検査対象物を透過したX線を撮影するX線撮影手段(12)と、
少なくとも前記検査対象物に係る情報を記憶する記憶手段(24)と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成する、三次元データ作成手段(22)と、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状をユーザー所望の観察対象面の二次元形状として示すユーザー確認用画像を作成する、ユーザー確認用画像作成手段(23)と、
前記ユーザー確認用画像作成手段が作成した画像を表示する表示手段(26)と、
を有する、X線検査システム(1)である。
【0098】
また、本発明の他の一の態様は、
X線を用いて検査対象物を撮影した複数のX線画像を取得するステップ(S101)と、
前記検査対象物を撮影した複数のX線画像の情報を用いて、前記検査対象物の三次元データを作成するステップ(S102)と、
前記検査対象物の三次元データを用いて、前記検査対象物における検査対象箇所の形状をユーザー所望の観察対象面の二次元形状として示すユーザー確認用画像を作成するステップ(L1)と、
前記ユーザー確認用画像を表示するステップ(S112)と、
を有する、X線検査方法である。
【符号の説明】
【0099】
1、2、3・・・X線検査システム
9・・・X線検査装置
11、92・・・X線源
12、93・・・X線カメラ
921、931・・・Xステージ
922、932・・・Yステージ
C1、C2・・・円軌道
O・・・検査対象物
P・・・ピーク値
F・・・フィレット濡れ上がり高さ