(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240312BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/097 365
(21)【出願番号】P 2020047954
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山内 康平
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-191492(JP,A)
【文献】特開昭62-021170(JP,A)
【文献】特開2019-020690(JP,A)
【文献】特開平03-276163(JP,A)
【文献】特開2019-035879(JP,A)
【文献】特開2016-031417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を含むトナーであって、
前記トナー粒子は、結着樹脂と離型剤とを含むトナー母粒子を含有し、
前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とを含み、
前記スチレンアクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される第1繰返し単位と、下記一般式(2)で表される第2繰返し単位とを有し、
前記スチレンアクリル樹脂は、ジビニルベンゼン由来の第3繰返し単位を更に有し、
前記スチレンアクリル樹脂の量は、前記非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下であり、
赤外分光分析で得られる前記スチレンアクリル樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数3040cm
-1以上3074cm
-1以下の領域の最大ピークの吸光度に対する、波数3075cm
-1以上3100cm
-1以下の領域の最大ピークの吸光度の比率は、0.40以上0.70以下であ
り、
前記離型剤の量は、前記結着樹脂100質量部に対して、7質量部以上である、トナー。
【化1】
(前記一般式(1)中、R
11及びR
12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
但し、R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。)
【化2】
(前記一般式(2)中、R
21及びR
22は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
R
3は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基を表し、
R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
但し、R
4及びR
5のうちの少なくとも1つは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記第1繰返し単位は、スチレン由来の繰返し単位であり、
前記第2繰返し単位は、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰返し単位である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記非結晶性ポリエステル樹脂のSP値をSP
Eとし、前記スチレンアクリル樹脂のSP値をSP
Sとしたとき、|SP
E-SP
S|≦1.2(cal/cm
3)
1/2の関係を満たす、請求項1
又は2に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの低温定着性を確保する目的で、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂が広く使用されている。例えば、特許文献1には、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を使用する場合、特許文献1に開示される技術だけでは、耐ホットオフセット性に優れる上、ダッシュマークの発生を抑制できるトナーを得ることは難しい。
【0005】
なお、「ダッシュマーク」は、印刷方向に平行に配列した短い線である。但し、ソリッド画像を印刷する場合、ダッシュマークは、ソリッド画像内において印刷方向に平行に配列した白抜きの短い線として現れることがある。ダッシュマークの発生原因としては、例えば、トナー母粒子が、その表面に存在する離型剤を介して感光体ドラムに付着することが挙げられる。トナー母粒子中における離型剤の分散性が低いほど、ダッシュマークが発生しやすくなる傾向がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含みつつ、耐ホットオフセット性に優れる上、ダッシュマークの発生を抑制できるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るトナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、結着樹脂と離型剤とを含むトナー母粒子を含有する。前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とを含む。前記スチレンアクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される第1繰返し単位と、下記一般式(2)で表される第2繰返し単位とを有する。前記スチレンアクリル樹脂の量は、前記非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下である。赤外分光分析で得られる前記スチレンアクリル樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数3040cm-1以上3074cm-1以下の領域の最大ピークの吸光度に対する、波数3075cm-1以上3100cm-1以下の領域の最大ピークの吸光度の比率は、0.40以上0.70以下である。
【0008】
【0009】
前記一般式(1)中、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R13、R14、R15、R16及びR17は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。但し、R13、R14、R15、R16及びR17のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。
【0010】
【0011】
前記一般式(2)中、R21及びR22は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R3は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基を表す。R4及びR5は、各々独立して、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。但し、R4及びR5のうちの少なくとも1つは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含みつつ、耐ホットオフセット性に優れる上、ダッシュマークの発生を抑制できるトナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。まず、本明細書中で使用される用語について説明する。トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0014】
粒子(より詳しくは、粒子の粉体)の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定した、体積基準のメディアン径である。粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7401F」)及び画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて測定した、100個の一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径(粉体の個数平均一次粒子径)を指す。
【0015】
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電極性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定する。摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0016】
酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)K0070-1992」で規定された中和滴定法に従い測定した値である。
【0017】
SP値(溶解度パラメーター)は、式「SP値=(E/V)1/2」(E:凝集エネルギー[cal/mol]、V:モル体積[cm3/mol])で定義されるパラメーターであり、何ら規定していなければ、Fedorsの計算方法に従って算出した値(単位:(cal/cm3)1/2、温度:25℃)である。なお、Fedorsの計算方法の詳細は、「R.F.Fedors,「Polymer Engineering and Science」,1974年,第14巻,第2号,p147-154」に記載されている。
【0018】
「炭素原子数1以上6以下のアルキル基」は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びn-ヘキシル基が挙げられる。
【0019】
「炭素原子数1以上6以下のアルキレン基」は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、及びn-ヘキシレン基が挙げられる。
【0020】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。「スチレンアクリル樹脂」は、少なくとも一種のスチレン系モノマーと、少なくとも一種のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。
【0021】
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して、2成分現像剤を調製してもよい。
【0022】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、結着樹脂と離型剤とを含むトナー母粒子を含有する。結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とを含む。スチレンアクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される第1繰返し単位と、下記一般式(2)で表される第2繰返し単位とを有する。スチレンアクリル樹脂の量は、非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下である。赤外分光分析で得られるスチレンアクリル樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、波数3040cm-1以上3074cm-1以下の領域の最大ピークの吸光度に対する、波数3075cm-1以上3100cm-1以下の領域の最大ピークの吸光度の比率は、0.40以上0.70以下である。
【0023】
【0024】
一般式(1)中、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R13、R14、R15、R16及びR17は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。但し、R13、R14、R15、R16及びR17のうちの少なくとも1つは、水素原子を表す。
【0025】
【0026】
一般式(2)中、R21及びR22は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R3は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基を表す。R4及びR5は、各々独立して、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。但し、R4及びR5のうちの少なくとも1つは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0027】
以下、第1繰返し単位と第2繰返し単位とを有するスチレンアクリル樹脂を、「特定スチレンアクリル樹脂」と記載することがある。赤外分光分析で得られる特定スチレンアクリル樹脂の赤外吸収スペクトルにおける、波数3040cm-1以上3074cm-1以下の領域の最大ピークを、「第1ピーク」と記載することがある。赤外分光分析で得られる特定スチレンアクリル樹脂の赤外吸収スペクトルにおける、波数3075cm-1以上3100cm-1以下の領域の最大ピークを「第2ピーク」と記載することがある。第1ピークの吸光度に対する第2ピークの吸光度の比率(第2ピークの吸光度/第1ピークの吸光度)を、「特定IR比率」と記載することがある。特定IR比率の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法である。
【0028】
第1ピークは、特定スチレンアクリル樹脂に含まれるベンゼン環を構成する炭素原子と、この炭素原子に結合する水素原子との伸縮振動に由来するピークである。また、第2ピークは、第2繰返し単位中の-NR4R5基に由来するピークである。
【0029】
特定IR比率(第2ピークの吸光度/第1ピークの吸光度)は、特定スチレンアクリル樹脂中の第2繰返し単位の含有割合の指標となる。つまり、特定IR比率が高いほど、特定スチレンアクリル樹脂中の第2繰返し単位の含有割合が高くなる。
【0030】
本実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えることにより、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含みつつ、耐ホットオフセット性に優れる上、ダッシュマークの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。
【0031】
一般に、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーは、低温定着性に優れる。しかし、結着樹脂として一般的に使用されている非結晶性ポリエステル樹脂は、トナーの耐ホットオフセット性を高める成分である離型剤との相溶性が低い。よって、非結晶性ポリエステル樹脂と離型剤とを含むトナーを用いて画像を形成すると、ダッシュマークが発生しやすくなる傾向がある。
【0032】
一方、一般に、スチレンアクリル樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂に比べ、低温定着性を高める機能は劣るが、離型剤との相溶性は高い。トナーの低温定着性を高めつつ、結着樹脂と離型剤との相溶性を高めるために、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とを併用することも考えられるが、一般に、非結晶性ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とは相溶しにくい。
【0033】
本実施形態に係るトナーでは、結着樹脂が、非結晶性ポリエステル樹脂と特定スチレンアクリル樹脂とを含む。特定スチレンアクリル樹脂は、第1繰返し単位と、アルキルアミノ基(より具体的には、-NR4R5基)を含む第2繰返し単位とを有する。特定スチレンアクリル樹脂が有するアルキルアミノ基は、非結晶性ポリエステル樹脂との親和性が高い。また、本実施形態に係るトナーでは、特定IR比率(特定スチレンアクリル樹脂中の第2繰返し単位の含有割合の指標)が0.40以上0.70以下である。更に、本実施形態に係るトナーでは、特定スチレンアクリル樹脂の量が、非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下である。これらのことから、本実施形態に係るトナーでは、非結晶性ポリエステル樹脂と特定スチレンアクリル樹脂とが適度に相溶すると共に、結着樹脂と離型剤とが適度に相溶する。その結果、本実施形態に係るトナーでは、離型剤がトナー母粒子中に適度に分散するようになる。従って、本実施形態に係るトナーは、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含みつつも、耐ホットオフセット性に優れる上、ダッシュマークの発生を抑制できる。
【0034】
本実施形態において、耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、非結晶性ポリエステル樹脂のSP値をSPEとし、特定スチレンアクリル樹脂のSP値をSPSとしたとき、|SPE-SPS|≦1.2(cal/cm3)1/2の関係を満たすことが好ましい。|SPE-SPS|は、SPEとSPSとの差の絶対値である。以下、|SPE-SPS|をΔSP値と記載することがある。なお、ΔSP値の下限は、特に限定されず、0.0(cal/cm3)1/2であってもよい。
【0035】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を更に備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を更に備える場合には、トナー粒子は、結着樹脂及び離型剤を含むトナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
【0036】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、シェル層を備えないトナー粒子であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載することがある)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子が、結着樹脂及び離型剤を含むトナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。シェル層は、樹脂を含む。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散されていてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。
【0037】
本実施形態において、トナー母粒子は、結着樹脂及び離型剤以外に、必要に応じて、離型剤以外の内添剤(例えば、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を更に含有してもよい。
【0038】
本実施形態において、画像形成に適したトナーを得るためには、トナー母粒子の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
【0039】
次に、本実施形態に係るトナー(より具体的には、トナー粒子)に含まれる成分について説明する。
【0040】
[結着樹脂]
トナー母粒子は、例えば全成分の70質量%以上を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナー母粒子全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と特定スチレンアクリル樹脂とを含む。また、結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂及び特定スチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。但し、耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、非結晶性ポリエステル樹脂及び特定スチレンアクリル樹脂の合計含有量が、結着樹脂の全量に対して、70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、85質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
(非結晶性ポリエステル樹脂)
非結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定される吸熱曲線において明確な吸熱ピークが認められないポリエステル樹脂を指す。結着樹脂は、一種の非結晶性ポリエステル樹脂を単独で含んでいてもよく、複数種の非結晶性ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
【0042】
ポリエステル樹脂は、一種以上の多価アルコールと一種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するための多価アルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、脂肪族ジオール、ビスフェノール等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するための多価カルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体(より具体的には、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等)を使用してもよい。
【0043】
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール、α,ω-アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール等)、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0044】
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0045】
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0046】
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、1,10-デカンジカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
【0047】
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0048】
非結晶性ポリエステル樹脂を合成するための好適な多価アルコールとしては、ビスフェノール(より具体的には、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。非結晶性ポリエステル樹脂を合成するための好適な多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸(より具体的には、テレフタル酸等)、及びアジピン酸が挙げられる。
【0049】
(特定スチレンアクリル樹脂)
特定スチレンアクリル樹脂は、一般式(1)で表される第1繰返し単位と、一般式(2)で表される第2繰返し単位とを有する。結着樹脂は、一種の特定スチレンアクリル樹脂を単独で含んでいてもよく、複数種の特定スチレンアクリル樹脂を含んでいてもよい。
【0050】
一般式(1)中のR11及びR12としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。一般式(1)中のR13、R14、R15、R16及びR17としては、各々独立して、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0051】
一般式(2)中のR21及びR22としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましい。一般式(2)中のR3としては、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。一般式(2)中のR4及びR5としては、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0052】
第1繰返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、4-t-ブチルスチレン等)、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、及びハロゲン化スチレン(より具体的には、p-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、p-ブロモスチレン、2,4,5-トリブロモスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン等)が挙げられる。耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、第1繰返し単位を与えるモノマーとしては、スチレンが好ましい。
【0053】
耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、特定スチレンアクリル樹脂の全繰返し単位に対する第1繰返し単位の含有率は、15質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0054】
第2繰返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)プロピル、及び(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)プロピルが挙げられる。耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、第2繰返し単位を与えるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが好ましく、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルがより好ましい。
【0055】
耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、特定スチレンアクリル樹脂の全繰返し単位に対する第2繰返し単位の含有率は、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0056】
耐ホットオフセット性に更に優れる上、ダッシュマークの発生を更に抑制できるトナーを得るためには、第1繰返し単位がスチレン由来の繰返し単位であり、かつ第2繰返し単位がアクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰返し単位であることが好ましい。
【0057】
特定スチレンアクリル樹脂は、第1繰返し単位及び第2繰返し単位以外の繰返し単位(以下、「他の繰返し単位」と記載することがある)を更に有していてもよい。他の繰返し単位としては、例えば、ジビニルベンゼン由来の第3繰返し単位、及び下記一般式(3)で表される第4繰返し単位が挙げられる。
【0058】
【0059】
一般式(3)中、R31及びR32は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R33は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R31及びR32としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましい。R33としては、n-ブチル基が好ましい。
【0060】
第3繰返し単位を与えるジビニルベンゼンは、特定スチレンアクリル樹脂を合成する際に、架橋剤として機能する。よって、特定スチレンアクリル樹脂が第3繰返し単位を有していると、耐熱保存性に優れるトナーが得られる。耐熱保存性により優れるトナーを得るためには、特定スチレンアクリル樹脂の全繰返し単位に対する第3繰返し単位の含有率は、0.05質量%以上0.20質量%以下であることが好ましい。
【0061】
第4繰返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び(メタ)アクリル酸イソブチルが挙げられる。耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、第4繰返し単位を与えるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸n-ブチルがより好ましい。
【0062】
特定IR比率及びΔSP値は、各々、例えば特定スチレンアクリル樹脂の全繰返し単位に対する第2繰返し単位の含有率を変更することにより調整できる。
【0063】
上述したように、第1ピークは、ベンゼン環を構成する炭素原子と、この炭素原子に結合する水素原子との伸縮振動に由来するピークである。上記ベンゼン環としては、例えば、第1繰返し単位中のベンゼン環が挙げられる。以下、第1繰返し単位中のベンゼン環を構成する炭素原子と、この炭素原子に結合する水素原子との伸縮振動を第1伸縮振動と記載することがある。
【0064】
特定スチレンアクリル樹脂が第3繰返し単位を更に有する場合、第1ピークは、例えば、第3繰返し単位中のベンゼン環を構成する炭素原子と、この炭素原子に結合する水素原子との伸縮振動、及び第1伸縮振動のうちの少なくとも一方に由来する。
【0065】
また、上述したように、第2ピークは、第2繰返し単位中の-NR4R5基に由来するピークである。第2繰返し単位中の-NR4R5基に由来するピークとしては、例えば、R4及びR5のうちの少なくとも一方におけるC-H伸縮振動に由来するピークが挙げられる。
【0066】
(他の樹脂)
上述したように、トナー母粒子は、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂及び特定スチレンアクリル樹脂以外の樹脂(以下、「他の樹脂」と記載することがある)を更に含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、他の樹脂として使用できる。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂は可塑剤として機能するため、結晶性ポリエステル樹脂を含むトナー母粒子は、定着時において軟化しやすくなる傾向がある。よって、低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナー母粒子が、他の樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定される吸熱曲線において明確な吸熱ピークが認められるポリエステル樹脂を指す。
【0068】
結晶性ポリエステル樹脂を合成するための好適な多価アルコールとしては、炭素原子数2以上8以下のα,ω-アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等)が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を合成するための好適な多価カルボン酸としては、炭素原子数(2つのカルボキシ基の炭素原子を含む)4以上10以下のα,ω-アルカンジカルボン酸(より具体的には、コハク酸、セバシン酸等)が挙げられる。
【0069】
低温定着性により優れるトナーを得るためには、結晶性ポリエステル樹脂の量は、非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であることが好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0070】
(結着樹脂の好ましい組合せ)
耐ホットオフセット性に更に優れ、ダッシュマークの発生を更に抑制できる上、低温定着性に優れるトナーを得るためには、下記条件1を満たすことが好ましい。また、耐ホットオフセット性に更に優れ、ダッシュマークの発生を更に抑制できる上、低温定着性及び耐熱保存性に優れるトナーを得るためには、下記条件2を満たすことが好ましい。
条件1:特定スチレンアクリル樹脂が、第1繰返し単位としてスチレン由来の繰返し単位、及び第2繰返し単位としてアクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰返し単位を有し、かつ結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を更に含む。
条件2:上記条件1を満たし、かつ特定スチレンアクリル樹脂が第3繰返し単位(ジビニルベンゼン由来の繰返し単位)を更に有する。
【0071】
[離型剤]
トナー母粒子は、離型剤を含有する。耐ホットオフセット性により優れるトナーを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、7質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましい。また、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、9質量部以下であることがより好ましい。
【0072】
離型剤としては、例えば、エステルワックス、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、及びカスターワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(より具体的には、カルナバワックス、ライスワックス等)、及び合成エステルワックスが挙げられる。本実施形態では、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。耐ホットオフセット性により優れる上、ダッシュマークの発生をより抑制できるトナーを得るためには、離型剤としては、合成エステルワックスが好ましい。
【0073】
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
【0074】
[着色剤]
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0075】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0076】
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、例えばイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0077】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
【0078】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0079】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0080】
[電荷制御剤]
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性に優れるトナーを得るために使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。
【0081】
トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性(正帯電性)を強めることができる。また、トナー母粒子に負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のアニオン性(負帯電性)を強めることができる。
【0082】
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上の電荷制御剤を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
負帯電性の電荷制御剤の例としては、キレート化合物である有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体、及びこれらの塩からなる群より選択される一種以上が好ましい。
【0084】
帯電安定性に優れるトナーを得るためには、電荷制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0085】
[磁性粉]
トナー母粒子は、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。本実施形態では、一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
【0086】
[外添剤]
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、トナー母粒子の表面に付着した外添剤(外添剤粒子の粉体)を更に備えてもよい。本実施形態では、一種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
【0087】
流動性に優れるトナーを得るためには、外添剤を構成する外添剤粒子としては、無機酸化物粒子が好ましく、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子からなる群より選択される一種以上がより好ましい。
【0088】
流動性に優れるトナーを得るためには、外添剤を構成する外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、5nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0089】
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物からなる群より選ばれる一種以上が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数の水酸基(-OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、水酸基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
【0090】
トナー母粒子からの外添剤の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0091】
<トナーの製造方法>
次に、上述した実施形態に係るトナーの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るトナーと重複する構成要素については説明を省略する。
【0092】
[トナー母粒子の調製工程]
まず、凝集法又は粉砕法によりトナー母粒子を調製する。
【0093】
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナー母粒子を構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナー母粒子を形成する。
【0094】
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナー母粒子を調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナー母粒子を調製する場合、トナー母粒子の調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナー母粒子の調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナー母粒子の調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
【0095】
混合工程では、結着樹脂と、離型剤と、必要に応じて添加する他の内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒子径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナー母粒子が得られる。
【0096】
[外添工程]
その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、トナー母粒子に外添剤を付着させずに、トナー母粒子をトナー粒子として使用してもよい。こうして、上述した実施形態に係るトナー(トナー粒子の粉体)が得られる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。まず、スチレンアクリル樹脂の特定IR比率の測定方法について説明する。
【0098】
<特定IR比率の測定方法>
測定装置として、FT-IR(フーリエ変換赤外分光分析装置)(パーキンエルマー社製「Frontier」)を用いた。測定モードは、ATR(全反射測定法)モードであった。ATR結晶としては、ダイヤモンド(屈折率2.4)を用いた。
【0099】
ATR結晶を測定装置に装着し、ATR結晶の上に試料(測定対象:後述するスチレンアクリル樹脂SAc-1~SAc-4のいずれか)1mgを載せた。続けて、測定装置の圧力アームを用いて、荷重60N以上80N以下で試料を加圧した。続けて、赤外光入射角45°の条件で、試料のFT-IRスペクトル(横軸:照射した赤外線の波数、縦軸:吸光度)を測定した。得られたFT-IRスペクトルから、第1ピークの吸光度、及び第2ピークの吸光度を得た。第1ピークは3050cm-1付近に現れた。第2ピークは3090cm-1付近に現れた。そして、第2ピークの吸光度を第1ピークの吸光度で除して、特定IR比率(第2ピークの吸光度/第1ピークの吸光度)を得た。
【0100】
<結着樹脂の合成>
次に、結着樹脂として使用した、非結晶性ポリエステル樹脂PE-1、結晶性ポリエステル樹脂PE-2、及びスチレンアクリル樹脂SAc-1~SAc-4の合成方法について、それぞれ説明する。
【0101】
[非結晶性ポリエステル樹脂PE-1の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量2Lの4つ口フラスコをマントルヒーターにセットした。続けて、フラスコ内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)150gと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)50gと、テレフタル酸50gと、アジピン酸30gと、2-エチルヘキサン酸錫(II)54gとを入れた。続けて、フラスコ内を窒素雰囲気にした後、フラスコ内温が235℃になるまで2時間かけてフラスコを加熱した。続けて、窒素雰囲気かつ温度235℃の条件で、反応率が90質量%に達するまで、フラスコ内容物を反応させた。反応率は、式「反応率=100×実際の反応生成水量/理論生成水量」に従って計算した。続けて、減圧雰囲気(圧力8kPa)かつ温度235℃の条件で、反応生成物(樹脂)の酸価が所定の値(15mgKOH/g)になるまでフラスコ内容物を反応させて、SP値11.2(cal/cm3)1/2の非結晶性ポリエステル樹脂PE-1を得た。
【0102】
[結晶性ポリエステル樹脂PE-2の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量2Lの4つ口フラスコをマントルヒーターにセットした。続けて、フラスコ内に、エチレングリコール69gと、セバシン酸214gと、2-エチルヘキサン酸錫(II)54gとを入れた。続けて、フラスコ内を窒素雰囲気にした後、フラスコ内温が235℃になるまで2時間かけてフラスコを加熱した。続けて、窒素雰囲気かつ温度235℃の条件で、前述の式で表される反応率が95質量%に達するまでフラスコ内容物を反応させた後、減圧雰囲気(圧力8kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力40kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂PE-2を得た。
【0103】
[スチレンアクリル樹脂SAc-1の合成]
攪拌機及び温度計を備えた反応容器内に、イオン交換水5058gと、分散剤(三洋化成株式会社製「エレミノール(登録商標)JS-20」)22gと、硫酸ナトリウム14gと、消泡剤(ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールエーテル:日油株式会社製「ディスホーム(登録商標)CE-457」)60gとを投入した。続けて、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル700gと、スチレン2136gと、アクリル酸n-ブチル6740gと、ジビニルベンゼン(純度:56.5質量%)10gと、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド75gと、重合開始剤としてのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス(登録商標)117」)14gとを投入した。
【0104】
続けて、容器内容物を攪拌しながら、容器内容物を、その温度が130℃になるまで昇温させた。容器内容物の昇温は、40℃から130℃になるまで65分間かけて行った。容器内容物の温度が130℃に到達した後、更に2時間、容器内容物を反応(詳しくは、重合反応)させた。その後、容器内容物を冷却して、樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液を目開き2mmの金属メッシュでろ過(固液分離)し、樹脂粒子(粉体)を得た。続けて、目開き45μmのナイロン製のろ過布を用いて、得られた樹脂粒子(粉体)中の微粉を除去した。続いて、微粉が除去された粉体を、洗浄した後、乾燥し、SP値10.0(cal/cm3)1/2のスチレンアクリル樹脂SAc-1を得た。
【0105】
[スチレンアクリル樹脂SAc-2の合成]
アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの使用量(投入量)を1400gに変更したこと以外は、スチレンアクリル樹脂SAc-1の合成と同じ方法で、SP値10.3(cal/cm3)1/2のスチレンアクリル樹脂SAc-2を得た。
【0106】
[スチレンアクリル樹脂SAc-3の合成]
アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの使用量(投入量)を500gに変更したこと以外は、スチレンアクリル樹脂SAc-1の合成と同じ方法で、SP値9.9(cal/cm3)1/2のスチレンアクリル樹脂SAc-3を得た。
【0107】
[スチレンアクリル樹脂SAc-4の合成]
アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの使用量(投入量)を1700gに変更したこと以外は、スチレンアクリル樹脂SAc-1の合成と同じ方法で、SP値10.4(cal/cm3)1/2のスチレンアクリル樹脂SAc-4を得た。
【0108】
<トナーの作製>
[トナーTA-1の作製]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)に、100質量部の非結晶性ポリエステル樹脂PE-1と、20質量部の結晶性ポリエステル樹脂PE-2と、20質量部のスチレンアクリル樹脂SAc-1と、離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-8」、成分:合成エステルワックス)12質量部と、正帯電性の電荷制御剤(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P-51」)1質量部と、着色剤(三菱ケミカル株式会社製「MA100」、成分:カーボンブラック)9質量部とを投入した。次いで、上記FMミキサーを用いて、回転速度1200rpmで、投入したトナー材料を3分間混合した。
【0109】
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、材料供給速度100g/分、軸回転速度150rpm、シリンダー温度100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、設定粒子径2mmの条件で粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.7μmのトナー母粒子が得られた。
【0110】
得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、表面処理剤により正帯電性が付与されたシリカ粒子)1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)を用いて、回転速度3000rpmかつジャケット温度20℃の条件で5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子の粉体)の全量を付着させた。
【0111】
続けて、得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、正帯電性のトナーであるトナーTA-1が得られた。なお、篩別の前後で、トナーを構成する成分の組成比は変化しなかった。
【0112】
[トナーTA-2~TA-4及びTB-1~TB-8の作製]
FMミキサーに投入するスチレンアクリル樹脂の種類、及びFMミキサーに投入するスチレンアクリル樹脂の投入量を、表1に示すとおりとしたこと以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で、正帯電性のトナーTA-2~TA-4及びTB-1~TB-8をそれぞれ作製した。
【0113】
トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-8のそれぞれについて、使用したスチレンアクリル樹脂の種類、投入量及び特定IR比率、並びにΔSP値を、表1に示す。なお、表1において、スチレンアクリル樹脂の投入量は、100質量部の非結晶性ポリエステル樹脂PE-1に対して、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)に投入したスチレンアクリル樹脂の量(単位:質量部)である。表1に記載のスチレンアクリル樹脂の投入量は、いずれも、該当するトナー中における、100質量部の非結晶性ポリエステル樹脂PE-1に対するスチレンアクリル樹脂の量と一致していた。また、表1に示すΔSP値の単位は、「(cal/cm3)1/2」である。
【0114】
【0115】
<評価方法>
以下、トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-8の評価方法について説明する。
【0116】
[2成分現像剤の調製]
京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「FS-C5250DN」用キャリア100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-8のいずれか)8質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用の2成分現像剤を調製した。
【0117】
[耐ホットオフセット性に関する評価]
評価機としては、カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS-C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した評価対象のトナーを含む2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、評価対象のトナーを評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。
【0118】
次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。続けて、画像が形成された評価用紙を評価機の定着装置に通した。この際、定着装置の定着温度を100℃から2℃ずつ上昇させながら各定着温度についてホットオフセットの有無を目視で確認し、ホットオフセットが発生しない最高温度(最高定着温度)を測定した。ホットオフセットの有無は、評価用紙上において、定着ローラーにトナーが付着したことに起因する汚れ(定着ローラーの回転周期毎に現れる汚れ)があったか否かにより判断した。
【0119】
最高定着温度が200℃以上であれば「耐ホットオフセット性に優れている」と評価し、最高定着温度が200℃未満であれば「耐ホットオフセット性に優れていない」と評価した。
【0120】
[ダッシュマークに関する評価]
評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 5550ci」)を使用した。上述のようにして調製した評価対象のトナーを含む2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、評価対象のトナーを評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。
【0121】
次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に1万枚連続で印刷した。
【0122】
そして、1万枚目に印刷したソリッド画像について、ダッシュマークの有無を目視で確認した。ダッシュマークが確認されなかった場合(ソリッド画像内にダッシュマークが無かった場合)、「ダッシュマークの発生を抑制できている」と評価した。一方、ダッシュマークが確認された場合(ソリッド画像内にダッシュマークが有った場合)、「ダッシュマークの発生を抑制できていない」と評価した。
【0123】
<評価結果>
トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-8のそれぞれについて、最高定着温度、及びダッシュマークの有無を、表2に示す。
【0124】
【0125】
トナーTA-1~TA-4のそれぞれに含まれるトナー粒子は、結着樹脂(非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び特定スチレンアクリル樹脂)と離型剤とを含むトナー母粒子を含有していた。
【0126】
表1に示すように、トナーTA-1~TA-4では、非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対する特定スチレンアクリル樹脂の量が、20質量部以上50質量部以下であった。トナーTA-1~TA-4では、特定IR比率が0.40以上0.70以下であった。
【0127】
表2に示すように、トナーTA-1~TA-4では、最高定着温度が200℃以上であった。よって、トナーTA-1~TA-4は、耐ホットオフセット性に優れていた。トナーTA-1~TA-4のそれぞれを用いて印刷したソリッド画像内(詳しくは、1万枚目に印刷したソリッド画像内)には、ダッシュマークが無かった。よって、トナーTA-1~TA-4は、ダッシュマークの発生を抑制できていた。
【0128】
表1に示すように、トナーTB-1及びTB-2では、非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対する特定スチレンアクリル樹脂の量が、20質量部未満であった。トナーTB-3及びTB-4では、非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対する特定スチレンアクリル樹脂の量が、50質量部を超えていた。トナーTB-5及びTB-6では、特定IR比率が0.40未満であった。トナーTB-7及びTB-8では、特定IR比率が0.70を超えていた。
【0129】
表2に示すように、トナーTB-3~TB-6では、最高定着温度が200℃未満であった。よって、トナーTB-3~TB-6は、耐ホットオフセット性に優れていなかった。トナーTB-1~TB-8のそれぞれを用いて印刷したソリッド画像内(詳しくは、1万枚目に印刷したソリッド画像内)には、ダッシュマークが有った。よって、トナーTB-1~TB-8は、ダッシュマークの発生を抑制できていなかった。
【0130】
以上の結果から、本発明によれば、結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を含みつつ、耐ホットオフセット性に優れる上、ダッシュマークの発生を抑制できるトナーを提供できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係るトナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために利用することができる。