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特許7452143マルチレンズアレイ、光源装置およびプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】マルチレンズアレイ、光源装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240312BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240312BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240312BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240312BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240312BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240312BHJP
【FI】
G03B21/14 A
H04N5/74 A
F21S2/00 330
F21V5/04 200
F21V5/04 400
F21S2/00 373
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020048804
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148960
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】磯村 智樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 健二
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貴則
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-041402(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221466(WO,A1)
【文献】特開2008-039852(JP,A)
【文献】特開平07-281006(JP,A)
【文献】特開2014-048479(JP,A)
【文献】特開2012-141407(JP,A)
【文献】特開2005-049593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0351480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
H04N 5/74
F21S 2/00
F21V 5/04
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材部と、
複数の第1レンズ面を含み、前記基材部に設けられ、表面に凹凸が形成される第1マルチレンズ面と、
前記基材部に設けられ、前記凹凸を埋めるように形成される透光層と、
前記透光層上に設けられる反射防止層と、を有し、
前記基材部は、前記第1マルチレンズ面とは異なる第2面を有し、
前記透光層は、第1透光層と、第2透光層と、を含み、
前記第1透光層は、前記第1マルチレンズ面に設けられ、
前記第2透光層は、前記第2面に設けられ、
前記第1透光層の厚さと、前記第2透光層の厚さとは異なり、
前記反射防止層の熱伝導率は、前記透光層の熱伝導率よりも大きい
ことを特徴とするマルチレンズアレイ。
【請求項2】
前記透光層の厚さは、前記基材部の厚さより小さく、前記反射防止層の厚さより大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチレンズアレイ。
【請求項3】
前記第2面は、平面である
ことを特徴とする請求項に記載のマルチレンズアレイ。
【請求項4】
前記第2面は、複数の第2レンズ面を含む第2マルチレンズ面である
ことを特徴とする請求項に記載のマルチレンズアレイ。
【請求項5】
光源と、
前記光源から射出された光が入射するインテグレーター光学系と、を備え、
前記インテグレーター光学系は、第1マルチレンズアレイと、第2マルチレンズアレイと、を含み、
前記第1マルチレンズアレイおよび前記第2マルチレンズアレイの少なくとも一方は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のマルチレンズアレイで構成される
ことを特徴とする光源装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源から射出された光が入射するインテグレーター光学系と、を備え、
前記インテグレーター光学系は、請求項に記載のマルチレンズアレイで構成される
ことを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項または請求項に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項8】
基材部と、
複数の第1レンズ面を含み、前記基材部に設けられ、表面に凹凸が形成される第1マルチレンズ面と、
前記基材部に設けられ、前記凹凸を埋めるように形成される透光層と、
前記透光層上に設けられる反射防止層と、を有し、
前記基材部は、前記第1マルチレンズ面とは異なる第2面を有し、
前記透光層は、第1透光層と、第2透光層と、を含み、
前記第1透光層は、前記第1マルチレンズ面に設けられ、
前記第2透光層は、前記第2面に設けられ、
前記第2面は、複数の第2レンズ面を含む第2マルチレンズ面であり、
前記反射防止層の熱伝導率は、前記透光層の熱伝導率よりも大きい
ことを特徴とするマルチレンズアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレンズアレイ、光源装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいて、被照明領域である液晶パネルを均一に照明する光学系としてマルチレンズアレイを用いることが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
プロジェクターにおいて、高輝度および高コントラスト化を実現するためには、より高精度のマルチレンズアレイが必要となる。マルチレンズアレイが金型によって成形される場合には、金型表面上の微小な凹凸が当該マルチレンズアレイのレンズ面に転写されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-120349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチレンズアレイはプロジェクター内で光源の近くに配置されるため、発熱し易いため、マルチレンズアレイの放熱性を高めることが重要となる。一般的に透過率を向上させるため、レンズ表面に反射防止層が設けられることがあるが、反射防止層として用いられるTa、Nb等の熱伝導率はレンズ構成材料であるSiOの熱伝導率よりも大きい。そのため、マルチレンズアレイの発熱時、マルチレンズアレイの熱が反射防止層側に放熱され難くなるので、マルチレンズアレイのレンズ表面に転写された凹凸によって、当該レンズ表面にクラックが生じたり、反射防止層が剥離するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、基材部と、複数の第1レンズ面を含み、前記基材部に設けられる第1マルチレンズ面と、前記基材部に設けられる透光層と、前記透光層上に設けられる反射防止層と、を有し、前記反射防止層の熱伝導率は、前記透光層の熱伝導率よりも大きいことを特徴とするマルチレンズアレイが提供される。
【0007】
本発明の第2態様によれば、光源と、前記光源から射出された光が入射するインテグレーター光学系と、を備え、前記インテグレーター光学系は、第1マルチレンズアレイと、第2マルチレンズアレイと、を含み、前記第1マルチレンズアレイおよび前記第2マルチレンズアレイの少なくとも一方は、第1態様のマルチレンズアレイで構成されることを特徴とする光源装置が提供される。
【0008】
本発明の第3態様によれば、光源と、前記光源から射出された光が入射するインテグレーター光学系と、を備え、前記インテグレーター光学系は、第1態様のマルチレンズアレイで構成されることを特徴とする光源装置が提供される。
【0009】
本発明の第4態様によれば、本発明の第2態様又は第3態様の光源装置と、前記光源装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のプロジェクターの構成を示す図である。
図2】インテグレーター光学系の要部構成を示す断面図である。
図3】第1マルチレンズアレイの要部構成を示す拡大図である。
図4】比較例に係る第1マルチレンズアレイを示す要部拡大図である。
図5】第2実施形態のインテグレーター光学系の断面図である。
図6】第3実施形態のインテグレーター光学系の断面図である。
図7】第1変形例のインテグレーター光学系の断面図である。
図8】第2変形例のインテグレーター光学系の断面図である。
図9】第3変形例のインテグレーター光学系の断面図である。
図10】第4実施形態のインテグレーター光学系の断面図である。
図11】第5実施形態のインテグレーター光学系の断面図である。
図12】第6実施形態のインテグレーター光学系の断面図である。
図13】マルチレンズアレイの側面を透光層が覆う構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調装置として液晶パネルを用いたプロジェクターの一例である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本実施形態のプロジェクターの構成を示す図である。
図1に示す本実施形態のプロジェクター1は、スクリーン(被投写面)SCR上にカラー画像を表示する投写型画像表示装置である。プロジェクター1は、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの各色光に対応した3つの光変調装置を用いている。
【0013】
プロジェクター1は、光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、合成光学系5と、投写光学装置6と、を備えている。
【0014】
光源装置2は、白色の照明光WLを色分離光学系3に向けて射出する。色分離光学系3は、白色の照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aと、第2リレーレンズ9bと、を備えている。
【0015】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2からの照明光WLを赤色光LRと、その他の光(緑色光LGおよび青色光LB)とに分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過するとともに、その他の光(緑色光LGおよび青色光LB)を反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、その他の光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。第2ダイクロイックミラー7bは、分離された緑色光LGを反射し、青色光LBを透過する。
【0016】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。一方、第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに向けて反射する。また、緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bによって光変調装置4Gに向けて反射される。
【0017】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bの光射出側に配置されている。第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRや緑色光LGの光路長よりも長いことに起因した青色光LBの照明分布の違いを修正する。
【0018】
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0019】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。また、液晶パネルの入射側および射出側には、偏光板(図示せず)がそれぞれ配置され、特定の方向の直線偏光のみを通過させる構成となっている。
【0020】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R、フィールドレンズ10G、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10R、フィールドレンズ10G、およびフィールドレンズ10Bは、それぞれの光変調装置4R、光変調装置4G、光変調装置4Bに入射する赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの主光線を平行化する。
【0021】
合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出された画像光が入射することにより、赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投写光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0022】
投写光学装置6は、複数の投写レンズから構成されている。投写光学装置6は、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投写する。これにより、スクリーンSCR上に画像が表示される。
【0023】
本実施形態の光源装置2は、光源20と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳光学系33と、を備えている。本実施形態において、光源20は、従来公知の構成である、例えば、ランプ、LEDおよび半導体レーザーなどが用いられ、白色の照明光WLを射出する。また、光源20として、LEDや半導体レーザーから射出した励起光を波長変換して蛍光を生成する光源を採用してもよい。
【0024】
インテグレーター光学系31は、第1マルチレンズアレイ21と、第2マルチレンズアレイ22と、を備えている。インテグレーター光学系31を透過した照明光WLは、偏光変換素子32に入射する。偏光変換素子32は、偏光分離膜と位相差板とをアレイ状に並べて構成されている。偏光変換素子32は、照明光WLの偏光方向を所定の方向に揃える。具体的には、偏光変換素子32は、照明光WLの偏光方向を光変調装置4R,4G,4Bの入射側偏光板の透過軸の方向に揃える。
【0025】
これにより、偏光変換素子32を透過した照明光WLを分離して得られる赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの偏光方向は、各光変調装置4R,4G,4Bの入射側偏光板の透過軸方向に一致する。よって、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBは、入射側偏光板でそれぞれ遮光されることなく、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域にそれぞれ入射する。
【0026】
ところで、光源20の近くに配置されるインテグレーター光学系31は発熱し易い。本実施形態のプロジェクター1は、例えば、空冷、水冷、ペルチェ素子等を用いた冷却システム(図示略)によってインテグレーター光学系31等の発熱部材を冷却している。そのため、本実施形態のインテグレーター光学系31は、後述の構成を採用することで放熱性を向上させることで、冷却システムにおける冷却効率を高めている。
【0027】
図2はインテグレーター光学系31の要部構成を示す断面図である。
図2に示すように、第1マルチレンズアレイ21は、複数のレンズ面(第1レンズ面)41からなるマルチレンズ面(第1マルチレンズ面)41aを含む基材部42を有する。具体的に、第1マルチレンズアレイ21は、複数の第1小レンズ21aを有する。第1小レンズ21aの各表面はマルチレンズ面41aの各レンズ面41で構成される。
【0028】
なお、第1小レンズ21aの表面と、光変調装置4R,4G,4Bの各々の画像形成領域とは互いに共役となっている。また、第1小レンズ21a各々の形状は、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、第1マルチレンズアレイ21から射出された部分光束の各々は、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域にそれぞれ効率良く入射する。
【0029】
第1マルチレンズアレイ21は、基材部42に設けられる透光層43と、透光層43上に設けられる反射防止層44と、を有する。透光層43の厚さは100~1500nm、例えば400~600nmに設定される。反射防止層44の厚さは100~5000nm、例えば398nmに設定される。基材部42の厚さは、1500nm以上、例えば1.5mm以上に設定される。すなわち、本実施形態において、透光層43の厚さは、基材部42の厚さより小さく、反射防止層44の厚さより大きい。
【0030】
基材部42は、マルチレンズ面41aと異なる裏面(第2面)41bを有する。本実施形態において、裏面41bは平面である。
【0031】
透光層43は基材部42のマルチレンズ面41aに設けられる。透光層43は、マルチレンズ面41aを覆う被膜層であり、例えば、SiO、SiON等の透光性材料で構成される。本実施形態の透光層43は、例えば、SiOで構成される。
【0032】
本実施形態において、反射防止層44は、第1マルチレンズアレイ21の表面反射を低減する膜であり、例えば、例えば、SiO、MgF、Nb、Ti、Ta、Al、ZrOのコーティング膜で構成される。本実施形態の反射防止層44は、例えば、Taで構成される。反射防止層44は透光層43および基材部42の裏面41bを覆っている。
【0033】
本実施形態において、SiOからなる透光層43の熱伝導率は1.5W/m・kであり、Taからなる反射防止層44の熱伝導率は3~5W/m・kである。すなわち、本実施形態において、反射防止層44の熱伝導率は透光層43の熱伝導率よりも大きい。
【0034】
なお、成膜時に選択するコーティング手法によって、透光層43の屈折率は任意にコントロール可能となる。このように透光層43の屈折率をコントロールすることで反射防止層44の設計自由度を向上させることができる。
【0035】
本実施形態の第1マルチレンズアレイ21を構成するマルチレンズ面41aおよびレンズ面41は金型形状を転写する成形方式によって製造される。上述の成形方式により製造された基材部42のマルチレンズ面41aおよびレンズ面41には金型表面上の微小な凹凸も転写された状態となる。
【0036】
図3は第1マルチレンズアレイ21の要部構成を示す拡大図である。
図3に示すように、マルチレンズ面41aには金型表面形状に起因した凹凸45が形成されている。透光層43は、マルチレンズ面41aに形成された凹凸45に入り込むように形成されている。すなわち、透光層43は、マルチレンズ面41a上の凹凸45を平坦化している。なお、透光層43は、例えば、DIPあるいはスプレー、スピンコート等のように多種多様な処理方法で形成される。
【0037】
本実施形態において、透光層43は、各レンズ面41の境界に位置する稜線部分付近に生じた微小クラックを埋めることができるため、熱膨張に伴う応力集中を緩和し、第1マルチレンズアレイ21の機械的強度を高めることができる。その結果、設計的には第1マルチレンズアレイ21の厚みを薄くして、材料費削減による低コスト化や製品の軽量化が図られる。
【0038】
本実施形態において、透光層43の表面粗さはマルチレンズ面41aの表面粗さよりも小さい。具体的に透光層43の表面粗さは20nm以下である。この構成によれば、反射防止層44を形成する下地の表面粗さが小さいため、反射防止層44の生成が容易となる。よって、反射防止層44を均一性の高い膜で形成できるので、反射防止層44は所望の反射防止性能を得ることができる。
【0039】
また、例えば、液相法によって透光層43を形成した場合、透光層43は下地となるマルチレンズ面41aに形成された凹凸45や、エッチングや研磨などで除去できないポーラス状の空隙、あるいは加工変質層といった例えば0.01μm~10μm程度のマイクロクラック等の欠陥が存在していた場合でも、毛細管現象により短時間で簡単に隙間なく埋めることができる。そのため、透光層43は基材部42の機械的強度を向上させる機能を有する。
【0040】
本実施形態の第1マルチレンズアレイ21によれば、光源装置2から照射される照明光WLによって基材部42で発生した熱が透光層43を介して熱伝導率の高い反射防止層44側に効率良く伝達されるようになる。これにより、第1マルチレンズアレイ21は放熱性に優れたものとなる。よって、第1マルチレンズアレイ21の冷却効果がより高まるので、プロジェクター1における冷却性能が向上する。
【0041】
ここで、比較例として、透光層43を設けることなく、マルチレンズ面41aに反射防止層44を直接形成した場合について説明する。
【0042】
図4は比較例に係る第1マルチレンズアレイの要部構成を示す拡大図である。
図4に示す比較例の第1マルチレンズアレイ21Aは、マルチレンズ面41aに形成された凹凸45の影響により、反射防止層44との接触面積が小さい。そのため、基材部42から反射防止層44への熱の伝わりが悪くなる。また、反射防止層44とマルチレンズ面41aとの間に形成された隙間、すなわち、凹凸45に熱が蓄積される。
【0043】
比較例の第1マルチレンズアレイ21Aにおいて、凹凸45は空気が含まれた状態あるいは真空状態であるため、熱伝導性が悪い。このため、第1マルチレンズアレイ21Aの使用時に高熱となった際、例えば、基材部42および反射防止層44の熱膨張量が異なることで、基材部42にクラックが生じたり、反射防止層44が剥離するおそれがある。その結果、プロジェクターの表示品位の低下、あるいは反射防止層44の剥離部分によって生じるフレネル反射に起因して、プロジェクターの光利用効率が低下し、表示画像が暗くなるおそれがある。
【0044】
一方、本実施形態の第1マルチレンズアレイ21によれば、上述のように基材部42から反射防止層44へと熱が伝わりやすいので、クラック等の欠陥が生じることを抑制できる。また、本実施形態の第1マルチレンズアレイ21によれば、透光層43を設けることにより、熱伝導性が改善さるため、上述の表示品位の低下や、表示画像の明るさ低下を抑制できる。
【0045】
また、比較例の第1マルチレンズアレイ21Aの構成では、凹凸45に起因して入射光の拡散や吸収が生じ、その結果としてスクリーンへの到達光が減少して光利用効率が低下するおそれがある。さらに拡散した光が光路中の光学部材を照射することによる温度上昇や、マルチレンズアレイ自体の光吸収による温度上昇が生じ、プロジェクターの冷却システムとして能力の高いものが必要となる。
【0046】
これに対して本実施形態の第1マルチレンズアレイ21によれば、透光層43によって凹凸45を埋めることで、入射光の拡散や吸収による光利用効率の低下を抑制できる。また、光学部品やマルチレンズアレイ自体の温度上昇も抑制できるため、プロジェクターの冷却システムを簡素化できるので、コスト低減を図るとともに装置を小型化できる。
【0047】
また、比較例の第1マルチレンズアレイ21Aの構成において、例えば、凹凸45の深さが入射する光の波長付近の場合、空気や真空との界面で全反射が生じ、光の位相にずれが生じる。その結果、後段に設置される偏光変換素子32の偏光変換効率が設計的に劣る波長域において、光利用効率が低下するおそれもある。
これに対して本実施形態の第1マルチレンズアレイ21によれば、透光層43で凹凸45を埋めるため、光の位相ずれが生じないため、上述のような光利用効率の低下を抑制できる。
【0048】
また、比較例の第1マルチレンズアレイ21Aの構成において、例えば、凹凸45が直径2~50nmのメソ孔程度である場合、水分を吸着した状態で反射防止層44が設けられ、凹凸45内に水分が封止されることがある。また、例えば、反射防止層44にアモルファス状のTiOを用いた場合において、マルチレンズアレイの温度が高温になると、正方晶状の構造へと状態遷移を引き起こす。これらの構造は、例えば高圧水銀ランプ光源からの紫外光の照射により、強い触媒作用が生じ、凹凸45内に含まれた水分を分解、活性酸素を発生させる。この活性酸素が反射防止層44に含まれるTiと結合した酸素を離脱させ、反射防止層44の透過率を低下させ、プロジェクターの光利用効率の低下や表示画像の明るさ低下といった問題が生じる。
これに対して本実施形態の第1マルチレンズアレイ21によれば、透光層43を設けることにより、凹凸45に含まれるメソ孔を塞いで水分の吸着を防止するとともに、熱伝導性を改善してマルチレンズアレイの温度上昇を抑制できるため、上述のようなプロジェクターの光利用効率の低下を抑制できる。
【0049】
また、マルチレンズ面41aに表面処理を施すことで表面形状を改善して、反射防止層44とマルチレンズ面41aとの接触面積を増やすことも考えられる。しかしながら、例えば、20nm以下の表面粗さを得るためには、研磨あるいはブラスト等の除去加工が必要となり、その加工時間が長く、生産性低下を招いてしまう。また、マルチレンズ面41aの表面形状を加工する際、加工量や加工する箇所によっては面形状精度の低下を招くおそれもある。
【0050】
これに対し、本実施形態の第1マルチレンズアレイ21において、透光層43は、例えば、DIPあるいはスプレー、スピンコート等のように、多種多様な処理方法で形成できるため、生産性が非常に高く、塗布量を一定にし易く、かつ膜厚1μm以下にコントロールすることでマルチレンズ面41aの面形状への影響を抑制できる。よって、本実施形態の第1マルチレンズアレイ21では、マルチレンズ面41aを表面加工することによる面形状の変化が生じない。
【0051】
一方、第2マルチレンズアレイ22は、複数のレンズ面(第1レンズ面)51からなるマルチレンズ面(第1マルチレンズ面)51aを含む基材部52を有する。具体的に、第2マルチレンズアレイ22は、複数の第2小レンズ22aを有する。第2小レンズ22aの各表面はマルチレンズ面51aの各レンズ面51で構成される。
【0052】
複数の第2小レンズ22aは、第1マルチレンズアレイ21の複数の第1小レンズ21aに対応している。第2マルチレンズアレイ22は、重畳光学系33とともに、第1マルチレンズアレイ21の各第1小レンズ21aの像を各光変調装置4R,4G,4Bの各々の画像形成領域の近傍に結像させる。
【0053】
第2マルチレンズアレイ22は、基材部52に設けられる透光層53と、透光層53上に設けられる反射防止層54と、を有する。本実施形態において、第2マルチレンズアレイ22は、第1マルチレンズアレイ21と同様の構成を有する。すなわち、透光層53、反射防止層54および基材部52の厚さおよび材料等は、第1マルチレンズアレイ21の透光層43、反射防止層44および基材部42の厚さおよび材料等と同様に設定される。本実施形態において、透光層53の厚さは、基材部52の厚さより小さく、反射防止層54の厚さより大きい。
【0054】
基材部52は、マルチレンズ面51aと異なる裏面(第2面)51bを有する。本実施形態において、裏面51bは平面である。
【0055】
本実施形態において、第2マルチレンズアレイ22は、裏面51bが第1マルチレンズアレイ21の裏面41bに対向するように、第1マルチレンズアレイ21に対して配置される。
【0056】
透光層53は基材部52のマルチレンズ面51aに設けられる。反射防止層44は透光層53および基材部52の裏面51bを覆っている。反射防止層54の熱伝導率は透光層53の熱伝導率よりも大きい。
【0057】
本実施形態の第2マルチレンズアレイ22によれば、第1マルチレンズアレイ21と同様、基材部52で発生した熱が透光層53を介して反射防止層44に効率良く伝達されるので、放熱性に優れたものとなる。
【0058】
また、本実施形態の光源装置2によれば、第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22の両方に透光層43、53を設けるため、インテグレーター光学系31の冷却性能を大幅に向上させることができる。これにより、インテグレーター光学系31の発熱が抑えられるため、インテグレーター光学系31の後段に配置される偏光変換素子32や重畳光学系33等の他の光学部品の熱劣化が抑制される。
【0059】
(第1実施形態の効果)
本実施形態の第1マルチレンズアレイ21は、複数のレンズ面41からなるマルチレンズ面41aを含む基材部42を有するマルチレンズアレイであって、基材部42に設けられる透光層43と、透光層43上に設けられる反射防止層44と、を有し、反射防止層44の熱伝導率は、透光層43の熱伝導率よりも大きい。
また、本実施形態の第2マルチレンズアレイ22は、複数のレンズ面51からなるマルチレンズ面51aを含む基材部52を有するマルチレンズアレイであって、基材部52に設けられる透光層53と、透光層53上に設けられる反射防止層54と、を有し、反射防止層54の熱伝導率は、透光層53の熱伝導率よりも大きい。
【0060】
本実施形態の第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22によれば、基材部42、43で発生した熱が透光層43、53を介して熱伝導率の高い反射防止層44、55側にそれぞれ効率良く伝達される。これにより、第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22として放熱性に優れたマルチレンズアレイが提供される。
【0061】
本実施形態において、透光層43および透光層53の厚さは、基材部42および基材部52の厚さより小さく、反射防止層44および反射防止層54の厚さより大きい。
【0062】
この構成によれば、透光層43、53が基材部42、53の表面に形成された凹凸45を埋めるため、基材部42、53の表面粗さが20nm以下に抑えられる。これにより、反射防止層44、54と透光層43、53との接触面積が増えるため、第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22の冷却効果を高めることができる。また、基材部42および基材部52の厚さより透光層43および透光層53の厚さが薄いため、透光層43および透光層53の材料コストが抑制され、より安価に冷却効果を高めることができる。
【0063】
実施形態の光源装置2は、光源20と、光源20から射出された光が入射するインテグレーター光学系31と、を備え、インテグレーター光学系31は、第1マルチレンズアレイ21と、第2マルチレンズアレイ22と、を含む。
【0064】
本実施形態の光源装置2によれば、放熱性に優れた第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22を含むインテグレーター光学系31を備えるので、信頼性の高い光源装置を提供できる。
【0065】
実施形態のプロジェクター1は、上記光源装置2と、光源装置2らの光を画像情報に応じて変調する光変調装置4R,4G,4Bと、光変調装置4R,4G,4Bにより変調された光を投写する投写光学装置6と、を備える。
【0066】
本実施形態のプロジェクター1によれば、放熱性に優れたインテグレーター光学系31を含む光源装置2を備えるので、冷却性能を向上させたプロジェクターを提供できる。
【0067】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態の光源装置について説明する。本実施形態の光源装置と第1実施形態の光源装置2との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第1実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0068】
図5は本実施形態のインテグレーター光学系131の要部構成を示す断面図である。図5に示すように、本実施形態のインテグレーター光学系131は、第1マルチレンズアレイ21と、第2マルチレンズアレイ122と、を備えている。
【0069】
第2マルチレンズアレイ122は、複数のレンズ面51からなるマルチレンズ面51aを含む基材部52と、反射防止層54と、を有する。反射防止層54は、基材部52のマルチレンズ面51aおよび裏面51bを覆っている。すなわち、本実施形態の第2マルチレンズアレイ122は、透光層を有さず、基材部52の表面に反射防止層54のみを設けている。
【0070】
本実施形態のインテグレーター光学系131は、第1マルチレンズアレイ21の基材部42のみに透光層43を設けている。
【0071】
(第2実施形態の効果)
本実施形態のインテグレーター光学系131によれば、第1マルチレンズアレイ21のみに透光層43を備えるため、第1実施形態のインテグレーター光学系31に比べて、透光層の構成材料が半分となる。また、本実施形態のインテグレーター光学系131は、コスト低減をより優先する場合や、第1実施形態に比べてインテグレーター光学系に要求される放熱性能が比較的低い場合に有効な構成となる。
【0072】
一般的にインテグレーター光学系においては、一対の光マルチレンズアレイのうち光入射側に位置するマルチレンズアレイにピントを合わせるように光学設計される。そのため、仮に光入射側に位置するマルチレンズアレイの表面粗さが大きいインテグレーター光学系をプロジェクター用の光源装置として用いると、スクリーン上に投影される映像に色むらや影等が映り込んで画質が低下するおそれがある。
【0073】
これに対し、本実施形態のインテグレーター光学系131によれば、光入射側に位置する第1マルチレンズアレイ21に透光層43を設けるため、上述したような色むらや影等の映り込みによる画質の低下が抑制される。
【0074】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態の光源装置について説明する。本実施形態の光源装置と第1実施形態の光源装置2との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第1実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0075】
図6は本実施形態のインテグレーター光学系231の要部構成を示す断面図である。図6に示すように、本実施形態のインテグレーター光学系231は、第1マルチレンズアレイ121と、第2マルチレンズアレイ22と、を備えている。
【0076】
第1マルチレンズアレイ121は、複数のレンズ面41からなるマルチレンズ面41aを含む基材部42を有する。本実施形態の第1マルチレンズアレイ121において、反射防止層44は、基材部42のマルチレンズ面41aおよび裏面41bを覆っている。すなわち、本実施形態の第1マルチレンズアレイ121は、透光層を有さず、基材部42の表面に反射防止層44のみを設けている。
【0077】
本実施形態の第1マルチレンズアレイ121はケミカル強化処理によってガラスの機械的強度を向上させている。ケミカル強化処理は基材部42を構成するガラス材に含まれるNa成分とアルカリ溶剤に含まれるK成分をイオン置換することで行われる。
【0078】
本実施形態のインテグレーター光学系231は、第2マルチレンズアレイ22の基材部52のみに透光層43を設けている。
【0079】
(第3実施形態の効果)
本実施形態のインテグレーター光学系231によれば、第2マルチレンズアレイ22のみに透光層53を備えるため、第1実施形態のインテグレーター光学系31に比べて、透光層の構成材料が半分となる。また、本実施形態のインテグレーター光学系231は、コスト低減をより優先する場合や、インテグレーター光学系131に要求される放熱性能が比較的低い場合に有効な構成となる。
【0080】
本実施形態のインテグレーター光学系231では、光入射側に位置することで、より高温に晒される第1マルチレンズアレイ121にケミカル強化処理を施すことで、第1マルチレンズアレイ121の耐熱性を向上させることができる。一方、透光層はNaを含有しない材料で構成される場合もあり、透光層を有するマルチレンズアレイにケミカル強化処理を行うことはできない。本実施形態の構成によれば、高温に晒される光入射側に位置する第1マルチレンズアレイ121はケミカル強化処理で耐熱性を向上させ、後段に配置される第2マルチレンズアレイ22については透光層53によって放熱性および機械的強度の向上を実現している。したがって、本実施形態によれば、ケミカル強化処理と透光層とを併用するため、インテグレーター光学系における設計自由度の観点で有効な構成が提供される。
【0081】
(第1変形例)
続いて、光源装置の第1変形例について説明する。本変形例は第1実施形態の光源装置2に関する変形例である。本変形例と第1実施形態との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第1実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0082】
図7は本変形例のインテグレーター光学系331の要部構成を示す断面図である。図7に示すように、本変形例のインテグレーター光学系331において、透光層43は第1マルチレンズアレイ21の両面を覆うように設けられている。同様に、透光層53は第2マルチレンズアレイ22の両面を覆うように設けられている。
【0083】
具体的に透光層43は、第1透光層43aと、第2透光層43bとを含む。第1透光層43aは、基材部42のマルチレンズ面41aに設けられる。第2透光層43bは、基材部42の裏面41bに設けられる。基材部42の裏面41bは第2透光層43bで覆われることで平坦化されるため、ラップレス加工などの処理が不要となり、コスト低減が図られる。
【0084】
具体的に透光層53は、第1透光層53aと、第2透光層53bとを含む。第1透光層53aは、基材部52のマルチレンズ面51aに設けられる。第2透光層53bは、基材部52の裏面51bに設けられる。基材部52の裏面51bは第2透光層53bで覆われることで平坦化されるため、ラップレス加工などの処理が不要となり、コスト低減が図られる。
【0085】
第1マルチレンズアレイ21において、反射防止層44は第1透光層43aおよび第2透光層43b上に設けられている。反射防止層44は基材部42のマルチレンズ面41aおよび裏面41bを覆うように設けられている。
【0086】
第2マルチレンズアレイ22において、反射防止層54は第1透光層53aおよび第2透光層53b上に設けられている。反射防止層54は基材部52のマルチレンズ面51aおよび裏面51bを覆うように設けられている。
【0087】
本変形例において、第1透光層43aの厚さと、第2透光層43bの厚さとは異ならせてもよい。このように基材部42の両面を覆う第1透光層43aおよび第2透光層43bの厚さを異ならせることで、基材部42からの放熱方向をコントロールすることが可能となる。同様に、基材部52の両面を覆う第1透光層53aおよび第2透光層53bの厚さを異ならせることで、基材部52からの放熱方向をコントロールすることが可能となる。
【0088】
第1透光層43aおよび第2透光層43bの一方の厚さを大きくした場合、基材部42に蓄積された熱は厚さの大きい透光層側に放熱しやすくなる。同様に、第1透光層53aおよび第2透光層53bの一方の厚さを大きくした場合、基材部52に蓄積された熱は厚さの大きい透光層側に放熱しやすくなる。
【0089】
すなわち、プロジェクターにおいて、例えば、冷却システムから供給する冷却風によって第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22を空冷する場合に、冷却風が供給される側の透光層の厚さを大きくすれば冷却システムの冷却効果がより高めることになる。よって、プロジェクターの冷却システムの設計自由度を増すことができる。
【0090】
(第2変形例)
続いて、光源装置の第2変形例について説明する。本変形例は第2実施形態の光源装置2に関する変形例である。本変形例と第2実施形態との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第2実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0091】
図8は本変形例のインテグレーター光学系431の要部構成を示す断面図である。図8に示すように、本変形例のインテグレーター光学系431は、第1マルチレンズアレイ21と、第2マルチレンズアレイ122と、を備えている。本変形例のインテグレーター光学系431において、透光層43は第1マルチレンズアレイ21の両面を覆うように設けられている。
【0092】
本変形例のインテグレーター光学系431によれば、第1マルチレンズアレイ21の両面のみを透光層43で覆うため、第1変形例の構成に比べて、透光層の構成材料が半分となる。よって、本変形例は、コスト低減をより優先する場合や、第1変形例に比べてインテグレーター光学系に要求される放熱性能が比較的低い場合に有効な構成となる。
【0093】
(第3変形例)
続いて、光源装置の第2変形例について説明する。本変形例は第3実施形態の光源装置2に関する変形例である。本変形例と第3実施形態との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第3実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0094】
図9は本変形例のインテグレーター光学系531の要部構成を示す断面図である。図9に示すように、本変形例のインテグレーター光学系531は、第1マルチレンズアレイ121と、第2マルチレンズアレイ22と、を備えている。本変形例のインテグレーター光学系531において、透光層53は第2マルチレンズアレイ22の両面を覆うように設けられている。
【0095】
本変形例のインテグレーター光学系531によれば、第2マルチレンズアレイ22の両面のみを透光層53で覆うため、第1変形例の構成に比べて、透光層の構成材料が半分となる。よって、本変形例は、コスト低減をより優先する場合や、第1変形例に比べてインテグレーター光学系に要求される放熱性能が比較的低い場合に有効な構成となる。
【0096】
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態の光源装置について説明する。本実施形態の光源装置と第1実施形態の光源装置2との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第1実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0097】
図10は本実施形態のインテグレーター光学系631の要部構成を示す断面図である。図10に示すように、本実施形態のインテグレーター光学系631は、1枚のマルチレンズアレイ60で構成されている。
【0098】
本実施形態のマルチレンズアレイ60は、複数の第1レンズ面61からなる第1マルチレンズ面61aを含む基材部62を有する。具体的に、マルチレンズアレイ60は、一方面側に設けられた複数の第1小レンズ62aを有する。第1小レンズ62aの各表面は第1マルチレンズ面61aの各第1レンズ面61で構成される。
【0099】
基材部62は、第1マルチレンズ面61aと異なる第2マルチレンズ面(第2面)63aを有する。本実施形態において、第2マルチレンズ面63aは、基材部62の第1マルチレンズ面61aと反対に設けられている。第2マルチレンズ面63aは複数の第2レンズ面63からなる。具体的に、マルチレンズアレイ60は、複数の第1小レンズ62aと反対側に設けられた複数の第2小レンズ62bを有する。第2小レンズ62bの各表面は第2マルチレンズ面63aの各第2レンズ面63で構成される。
【0100】
すなわち、本実施形態のマルチレンズアレイ60は、基材部62の両面に設けられた第1マルチレンズ面61aおよび第2マルチレンズ面63aを有している。
【0101】
マルチレンズアレイ60は、基材部62に設けられる透光層43と、透光層43上に設けられる反射防止層44と、を有する。本実施形態において、透光層43は基材部62の第1マルチレンズ面61aおよび第2マルチレンズ面63aに設けられる。反射防止層44は透光層43を介して第1マルチレンズ面61aおよび第2マルチレンズ面63aを覆っている。
【0102】
本実施形態のマルチレンズアレイ60を構成する基材部62についても他の実施形態と同様、金型形状を転写する成形方式によって製造される。そのため、第1マルチレンズ面61aおよび第2マルチレンズ面63aには金型表面上の微小な凹凸も転写された状態となる。
【0103】
(第4実施形態の効果)
本実施形態のマルチレンズアレイ60は、第1マルチレンズ面61aおよび第2マルチレンズ面63aが設けられた基材部62と、基材部62に設けられる透光層43と、透光層43上に設けられる反射防止層44と、を有し、反射防止層44の熱伝導率は、透光層43の熱伝導率よりも大きい。
【0104】
本実施形態のマルチレンズアレイ60によれば、基材部62で発生した熱が透光層43を介して熱伝導率の高い反射防止層44側に効率良く伝達される。これにより、両面に複数のレンズが設けられ、放熱性に優れたマルチレンズアレイ60が提供される。
【0105】
また、本実施形態のインテグレーター光学系631によれば、1枚のマルチレンズアレイ60で構成されるので、部品数が減ることで軽量および小型化が図られる。また、本実施形態のインテグレーター光学系631を備える光源装置およびプロジェクターにおいても軽量および小型化が図られる。
【0106】
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態の光源装置について説明する。本実施形態の光源装置と第1実施形態の光源装置2との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第1実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0107】
図11は本実施形態のインテグレーター光学系731の要部構成を示す断面図である。図11に示すように、本実施形態のインテグレーター光学系731は、1枚のマルチレンズアレイ160で構成されている。
【0108】
本実施形態のマルチレンズアレイ160は、基材部62と、透光層43と、反射防止層44とを有する。本実施形態のインテグレーター光学系731は、基材部62のうちの第1マルチレンズ面61aのみに透光層43が設けられている。
【0109】
(第5実施形態の効果)
本実施形態のインテグレーター光学系731によれば、第1マルチレンズ面61aのみに透光層43を備えるため、第4実施形態のインテグレーター光学系631に比べて、透光層の構成材料が半分となる。また、本実施形態のインテグレーター光学系731は、コスト低減をより優先する場合や、第4実施形態に比べてインテグレーター光学系に要求される放熱性能が比較的低い場合に有効な構成となる。
【0110】
(第6実施形態)
続いて、第6実施形態の光源装置について説明する。本実施形態の光源装置と第1実施形態の光源装置2との違いはインテグレーター光学系の構成である。以下では、インテグレーター光学系を主に説明する。なお、第1実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0111】
図12は本実施形態のインテグレーター光学系831の要部構成を示す断面図である。図12に示すように、本実施形態のインテグレーター光学系831は、1枚のマルチレンズアレイ161で構成されている。
【0112】
本実施形態のマルチレンズアレイ161は、基材部62と、透光層43と、反射防止層44とを有する。本実施形態のインテグレーター光学系831は、基材部62のうちの第2マルチレンズ面63aのみに透光層43が設けられている。
【0113】
(第6実施形態の効果)
本実施形態のインテグレーター光学系831によれば、第2マルチレンズ面63aのみに透光層43を備えるため、第4実施形態のインテグレーター光学系631に比べて、透光層の構成材料が半分となる。また、本実施形態のインテグレーター光学系831は、コスト低減をより優先する場合や、第4実施形態に比べてインテグレーター光学系に要求される放熱性能が比較的低い場合に有効な構成となる。
【0114】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態および変形例において、透光層がマルチレンズアレイの側面まで覆うように設けられていてもよい。図13はマルチレンズアレイの側面を透光層が覆う構成例を示した図である。図13は第1変形例のインテグレーター光学系においてマルチレンズアレイの側面まで透光層が覆う構成を示す図である。
図13に示されるインテグレーター光学系331において、透光層43は第1マルチレンズアレイ21の両面および側面23を覆うように設けられ、透光層53は第2マルチレンズアレイ22の両面および側面24を覆うように設けられている。なお、透光層43上に設けられた反射防止層44は第1マルチレンズアレイ21の両面および側面23を覆うように設けられ、透光層53上に設けられた反射防止層54は第2マルチレンズアレイ22の両面および側面24を覆うように設けられる。
【0115】
このように透光層43,53がマルチレンズアレイ21,22の側面23,24まで覆うように設けることで、マルチレンズアレイ21,22のエッジ部が透光層43,53で覆われる。そのため、エッジ部の鋭利部分が滑らかとなるので、面取り工程が不要となる。その結果、工程削減による低コスト化、組立作業等での作業安全性の向上などの効果を得ることができる。
【0116】
また、第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22が近接して配置される構造を採用した場合、第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22間の隙間が小さくなる。この構成において、例えば、第1マルチレンズアレイ21および第2マルチレンズアレイ22を空冷する場合、レンズアレイ21,22の外側に冷却風を供給すれば、冷却風がマルチレンズアレイ21,22の側面23,24を覆う透光層43,53に当たることで冷却効果を高めることが可能となる。
【0117】
その他、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶ライトバルブを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0118】
上記実施形態では、本発明による光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0119】
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイは、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイは、基材部と、複数の第1レンズ面を含み、基材部に設けられる第1マルチレンズ面と、基材部に設けられる透光層と、透光層上に設けられる反射防止層と、を有し、反射防止層の熱伝導率は、透光層の熱伝導率よりも大きい。
【0120】
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイにおいて、透光層の厚さは、基材部の厚さより小さく、反射防止層の厚さより大きくてもよい。
【0121】
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイにおいて、基材部は、第1マルチレンズ面とは異なる第2面を有し、透光層は、第1透光層と、第2透光層と、を含み、第1透光層は、第1マルチレンズ面に設けられ、第2透光層は、第2面に設けてもよい。
【0122】
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイにおいて、第1透光層の厚さと、第2透光層の厚さとは異なってもよい。
【0123】
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイにおいて、第2面は、平面であってもよい。
【0124】
本発明の一つの態様のマルチレンズアレイにおいて、第2面は、複数の第2レンズ面からなる第2マルチレンズ面であってもよい。
【0125】
本発明の一つの態様の光源装置は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の光源装置は、光源と、光源から射出された光が入射するインテグレーター光学系と、を備え、インテグレーター光学系は、第1マルチレンズアレイと、第2マルチレンズアレイと、を含み、第1マルチレンズアレイおよび第2マルチレンズアレイの少なくとも一方は、本発明の一つの態様のマルチレンズアレイで構成されてもよい。
【0126】
本発明の一つの態様の光源装置は、光源と、光源から射出された光が入射するインテグレーター光学系と、を備え、インテグレーター光学系は、本発明の一つの態様のマルチレンズアレイで構成されてもよい。
【0127】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、光源装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える。
【符号の説明】
【0128】
1…プロジェクター、2…光源装置、4B,4G,4R…光変調装置、6…投写光学装置、20…光源、60,160,161…マルチレンズアレイ、21,121…第1マルチレンズアレイ、22,122…第2マルチレンズアレイ、31,131,231,331,431,531,631,731,831…インテグレーター光学系、41,51…レンズ面(第1レンズ面)、41a,51a…マルチレンズ面(第1マルチレンズ面)、42,52,62…基材部、43,53…透光層、43a,53a…第1透光層、43b,53b…第2透光層、44,54…反射防止層、61…第1レンズ面、61a…第1マルチレンズ面、63…第2レンズ面、63a…第2マルチレンズ面。
図1
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