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特許7452144積層体及びそれを用いたパターンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】積層体及びそれを用いたパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20240312BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240312BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20240312BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B32B27/20 A
G03F7/004 505
G03F7/004 512
G03F7/11 503
H01L21/30 574
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020048822
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021146615
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】718000495
【氏名又は名称】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝一
(72)【発明者】
【氏名】笹木 香苗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智己
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-282522(JP,A)
【文献】特開2002-244294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
G03F 7/004 - 7/06
G03F 7/075 - 7/115
G03F 7/16 - 7/24
G03F 9/00 - 9/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明無機基材と、一層以上の有機樹脂層(A)とからなる積層体であって、
前記有機樹脂層(A)の少なくとも一層が、有機顔料(a1)とバインダー樹脂(a2)とを含む着色層(A1)であり、
かつ、前記有機樹脂層(A)の少なくとも一層が、フォトレジスト層(A2)であり、
前記着色層(A1)は、膜厚2.0μmに形成したときの波長240~450nmの範囲において、透過率の最大値が15%以下、かつ波長450~750nmの範囲における光透過率の最大値が50%以上である積層体。
ただし、前記着色層(A1)と前記フォトレジスト層(A2)とは、同じであっても異なっていてもよい。
【請求項2】
フォトレジスト層(A2)が、少なくともバインダー樹脂(a2)と、光重合性単量体(a3)と、光重合開始剤(a4)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
有機顔料(a1)が、赤色顔料、黄色顔料、及び、緑色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド177、254、291、295、及び、296よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、及び、185よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、緑色顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、及び、63よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の積層体を用いたフォトレジストパターンの製造方法であって、
前記積層体を、少なくとも波長240~450nmの範囲のいずれかの波長を有する光線で露光し、フォトレジストパターンの潜像を形成する工程と、
前記潜像が形成された積層体を現像する工程とを含むフォトレジストパターンの製造方法。
【請求項6】
フォトレジストパターンが、穿孔パターンである請求項5記載のフォトレジストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なパターン形状が得られる積層体、及び、それを用いたパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム、銅、鉄、シリコンなどの各種金属、金属酸化物、合金といった高不透明無機基材上にフォトレジストパターンを形成する場合、パターン露光時に、基材表面形状に起因する光の乱反射により、露光パターンどおりのフォトレジストパターンが得られにくいという問題があった。
そのため、基材表面からの反射防止を目的として、フォトレジスト層の下に反射防止膜を形成することにより良好なフォトレジストパターンを得るための技術が開発された。
【0003】
従来用いられている反射防止膜としては、無機膜および有機膜が知られているが、膜形成の簡便さや反射防止効果の高さから、染料などの吸光剤を配合した樹脂溶液が主に使用されている(特許文献1、2)。
しかし、吸光剤として使用している染料は昇華してしまうことがあり、露光装置を汚染させるという問題があった。
また、染料を配合した樹脂溶液を使用した反射防止膜は、フォトレジスト層と僅かながら混じり合う、インターミキシングと呼ばれる現象が起こるため、抜け不良、裾引きといったフォトレジストパターン形状の劣化を招く等の問題があった。
【0004】
このようなインターミキシング現象を生じさせない反射防止膜も種々報告されてはいるが、一般にこれらの反射防止膜は、アルカリ現像液に対する溶解性に劣るか、あるいは不溶性を示すため、上層であるフォトレジスト層をアルカリ水溶液で現像し、フォトレジストパターンを形成した後に、反射防止膜を除去するためには、ドライエッチングなどの操作をする必要があった(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-513772号公報
【文献】特開2000-221698号公報
【文献】特開平10-228113号公報
【文献】特開2001-343752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、昇華性の低い着色層によって不透明無機基材表面からの乱反射を防止できる積層体、及びそれを用いたフォトレジストパターンの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、少なくとも有機顔料とバインダー樹脂を含み、特定の光透過特性を有する着色層を用いることによって上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、不透明無機基材と、一層以上の有機樹脂層(A)とからなる積層体であって、
前記有機樹脂層(A)の少なくとも一層が、有機顔料(a1)とバインダー樹脂(a2)とを含む着色層(A1)であり、
かつ、前記有機樹脂層(A)の少なくとも一層が、フォトレジスト層(A2)であり、
前記着色層(A1)は、膜厚2.0μmに形成したときの波長240~450nmの範囲において、前記光線の光透過率の最大値が15%以下である積層体に関する。
ただし、前記着色層(A1)と前記フォトレジスト層(A2)とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0009】
また本発明は、フォトレジスト層(A2)が、少なくともバインダー樹脂(a2)と、光重合性単量体(a3)と、光重合開始剤(a4)とを含むことを特徴とする上記積層体に関する。
【0010】
また本発明は、有機顔料(a1)が、赤色顔料、黄色顔料、及び、緑色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする上記積層体に関する。
【0011】
また本発明は、赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド177、254、291、295、及び、296よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、及び、185よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、緑色顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、及び、63よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記積層体に関する。
【0012】
また本発明は、上記積層体を用いたフォトレジストパターンの製造方法であって、
前記積層体を、少なくとも波長240~450nmの範囲のいずれかの波長を有する光線で露光し、フォトレジストパターンの潜像を形成する工程と、
前記潜像が形成された積層体を現像する工程とを含むフォトレジストパターンの製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、フォトレジストパターンが、穿孔パターンである上記フォトレジストの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、不透明無機基材上にフォトレジストパターンを形成する際、一般的に露光に使用するg線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの光線の不透明無機基材表面での乱反射を防止し、良好なフォトレジストパターンを形成することができる積層体が提供できるとともに、反射防止機能を有する着色層の構成成分に起因する露光装置の汚染が生じないフォトレジストパターンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願明細書の用語を定義する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表すものとする。
また、本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0016】
本発明の積層体は、不透明無機基材表面に、少なくとも有機顔料(a1)とバインダー樹脂(a2)を含む着色層(A1)を形成することを特徴の一つとするものであって、前記有機顔料(a1)が、露光に使用する光線の波長を相当量吸収できればよく、具体的には、前記着色層(A1)は、膜厚2.0μmに形成したときの波長240~450nmの範囲における前記光線の光透過率の最大値が15%以下であることを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
<着色層(A1)>
本発明の着色層(A1)は、少なくとも有機顔料(a1)とバインダー樹脂(a2)とを含む。一実施形態としては、有機顔料(a1)、バインダー樹脂(a2)、溶剤と必要に応じて、後述する光重合性単量体(a3)、後述する光重合開始剤(a4)、分散剤、添加剤などを、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモナイザー( エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、フーバーマーラー、3本ロールミル、エクストルーダー(二軸押出し機)、ヘンシェルミキサー等を使用して分散処理を行って着色層形成用組成物を作製し、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法などで基材に塗布し、加熱乾燥して溶剤分を除去することで着色層(A1)を形成することができる。
【0018】
特に、前記着色層(A1)を膜厚2.0μmに形成したとき、波長240~450nmの範囲における光透過率の最大値が15%以下であると、不透明無機基材表面からの乱反射を有効に防止できる点から好ましい。
【0019】
また、着色層(A1)に有機顔料(a1)とバインダー樹脂(a2)に加え、光重合性単量体(a3)と、光重合開始剤(a4)とをさらに含む実施形態の場合、前記着色層(A1)を膜厚2.0μmに形成したとき、波長240~450nmの範囲における光透過率の最大値が2%未満の場合には、フォトレジストパターンを形成する際に着色層(A1)の基材界面まで光が到達できないことがあり、基材界面付近で硬化不良が生じることがあるために好ましくない。
この観点からより好ましくは、波長240~450nmの範囲における光透過率の最大値は2~15%であり、更に好ましくは3~12%以下であり、最も好ましくは5~10%である。
【0020】
また前記着色層(A1)を膜厚2.0μmに形成したとき、波長450~750nmの範囲における光透過率の最大値が50%以上であることが好ましい。より好ましい光透過率の最大値は70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。光透過率の最大値が50%以上であると、着色層(A1)の上面から不透明無機基材表面が目視できる点から好ましい。着色層(A1)の上面から不透明無機基材表面が目視できると、後述するフォトレジストパターン形成の際の位置決めを高精度で行うことができる。
【0021】
<有機顔料(a1)>
有機顔料(a1)としては、波長240~450nmの範囲に吸収領域を有する、赤色顔料、黄色顔料、及び、緑色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機顔料が使用できる。波長240~450nmの範囲に吸収領域を有する有機顔料を含有することにより、波長240~450nmの範囲の光線に対する反射防止効果が高く、また昇華性の低い反射防止膜を形成することができる。
これらの各色有機顔料として具体的には、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、又はポリアゾ等のアゾ系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、又はビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料または金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0022】
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、291、295、296等を挙げることができる。
これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254、269、291、295、296を挙げることができ、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、254、291、295、または296である。
【0023】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、111、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、138、139、147、150、151、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、192、193、194、196、198、199、203、213、214、215、231、233等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、185、231、233を挙げることができ、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー138、139、150、または185である。
【0024】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、37、45、48、50、51、54、55、58、59、62、63等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、または63である。
【0025】
着色層(A1)は、着色層形成用組成物よりなり、当該着色層形成用組成物の不揮発分100質量%中、有機顔料(a1)の配合量は10~50質量%であることが好ましい。有機顔料(a1)の配合量が10質量%未満であると、不透明無機基材に対する反射防止効果が不十分となり、50質量%を超えると着色層(A1)表面から、下地である不透明無機基材表面の目視が困難になるため好ましくないことがある。より好ましい配合量は15~45質量%であり、更に好ましくは20~40質量%である。
【0026】
<バインダー樹脂(a2)>
バインダー樹脂(a2)は特に制限されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、及び塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0027】
バインダー樹脂(a2)は、後述する感光性樹脂であってもよい。バインダー樹脂(a2)が、感光性樹脂を含む場合は、さらに、光重合性単量体(a3)、及び/または、光重合開始剤(a4)を含むことが好ましい。
【0028】
着色層形成用組成物の不揮発分100質量%中、バインダー樹脂(a2)の配合量は30~90質量%が好ましく、40~85質量%がより好ましく、50~80質量%が更に好ましい。配合量がこの範囲内であれば、基材への密着性に優れた着色層とすることができる。
【0029】
<溶剤>
溶剤は特に限定されるものではなく、当該分野で通常使用される溶剤を用いることが出来、沸点、SP値、蒸発速度、粘度などの性能を考慮し、塗布条件(速度、乾燥条件など)に合わせて適宜溶剤の種類、配合量を選択し、単独または混合して使用できる。
【0030】
溶剤としては、例えば、エステル溶剤(分子内に-COO-を含み、-O-を含まない溶剤)、エーテル溶剤(分子内に-O-を含み、-COO-を含まない溶剤)、エーテルエステル溶剤(分子内に-COO-と-O-とを含む溶剤)、ケトン溶剤(分子内に-CO-を含み、-COO-を含まない溶剤)、アルコール溶剤(分子内にOHを含み、-O-、-CO-及び-COO-を含まない溶剤)、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも塗布性、乾燥性の面で1atmにおける沸点が120℃以上180℃以下の溶剤が好ましい。例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等がさらに好ましい。
【0032】
また、前記溶剤のほかにも、必要に応じて、例えば分散剤や濡れ浸透剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、防腐剤、防カビ剤、粘度調整剤、pH調整剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0033】
<フォトレジスト層(A2)>
フォトレジスト層(A2)は、フォトレジスト組成物よりなり、当該フォトレジスト組成物としては、ポジ型、ネガ型いずれも使用できるが、例えはネガ型フォトレジスト組成物としては、少なくとも感光性樹脂、光重合性単量体(a3)、光重合開始剤(a4)、溶剤と必要に応じて、添加剤、各種着色剤、有機顔料などを配合して作製される。
【0034】
感光性樹脂は、カルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂を含有することが好ましい。例えば、アクリル樹脂の側鎖にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するものが挙げられる。
【0035】
感光性樹脂のMw(重量平均分子量)は、2,000以上100,000以下が好ましく、10,000以上50,000以下がより好ましく、17,000以上30,000以下がさらに好ましい。適度なMwを有することで基材への密着性、およびアルカリ現像性を高いレベルで両立できる。また、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)の値は10以下が好ましい。
【0036】
感光性樹脂の酸価は、50~200mgKOH/gが好ましく、70~180mgKOH/gがより好ましく、90~170mgKOH/gがさらに好ましい。適度な酸価により、アルカリ現像性、基板への密着性、および現像性がより向上する。
【0037】
感光性樹脂の配合量は、フォトレジスト組成物の不揮発分100質量%中、2~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0038】
<光重合性単量体(a3)>
光重合性単量体(a3)は、少なくとも波長240~450nmの範囲の光線により硬化する樹脂を生成するモノマー、オリゴマーである。
【0039】
光重合性単量体(a3)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0040】
(酸基を有する光重合性単量体)
光重合性単量体(a3)は、酸基を有する光重合性単量体を含有できる。酸基は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
【0041】
酸基を有する光重合性単量体は、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物;多価カルボン酸と、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類とのエステル化物等が挙げられる。具体例は、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレート又はモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸等のジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸等のトリカルボン酸類と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のモノヒドロキシモノアクリレート又はモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物等が挙げられる。
【0042】
(ウレタン結合を有する光重合性単量体)
光重合性単量体(a3)は、エチレン性不飽和結合とウレタン結合を有する単量体を含有できる。前記単量体は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートや、アルコールに多官能イソシアネートを反応させ、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0043】
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0044】
また、多官能イソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
光重合性単量体(a3)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0046】
光重合性単量体(a3)の配合量は、フォトレジスト組成物の不揮発分100質量%中、1~50質量%が好ましく、2~40質量%がより好ましい。適量配合すると硬化性及び現像性がより向上する。
【0047】
<光重合開始剤(a4)>
光重合開始剤(a4)は、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリノ)フェニル]-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン、又は2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、又は2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、又はエタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又はジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0048】
(オキシムエステル系化合物)
オキシムエステル系化合物は、紫外線を吸収することによってオキシムのN-O結合の解裂がおこり、イミニルラジカルとアルキロキシラジカルを生成する。これらのラジカルは更に分解することにより活性の高いラジカルを生成するため、少ない露光量でパターンを形成させることができる。
【0049】
オキシムエステル系化合物は、特開2007-210991号公報、特開2009-179619号公報、特開2010-037223号公報、特開2010-215575号公報、特開2011-020998号公報等に記載のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
【0050】
光重合開始剤(a4)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0051】
光重合開始剤(a4)の配合量は、光重合性単量体(a3)100質量部に対し、2~50質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましい。適量配合すると光硬化性及び現像性がより向上する。
【0052】
また、フォトレジスト組成物は、必要に応じて増感剤を含有できる。
増感剤は、例えば、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの中でもチオキサントン誘導体、ミヒラーケトン誘導体、カルバゾール誘導体が好ましい。具体的な化合物では、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、N-エチルカルバゾール、3-ベンゾイル-N-エチルカルバゾール、3,6-ジベンゾイル-N-エチルカルバゾール等が好ましい。
【0053】
増感剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0054】
増感剤の配合量は、光重合開始剤(a4)100質量部に対し、3~60質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましい。適量含有すると硬化性、現像性がより向上する。
【0055】
<<パターンの製造方法>>
<不透明無機基材>
本発明に使用する不透明無機基材としては、アルミニウム、銅、鉄、シリコンなどの各種金属、SiO、Alなどの金属酸化物、ステンレスなどの合金等が挙げられる。さらに、前記の各種金属や合金等の一部表面、または全表面にSiO、Alなどの金属酸化物などで被覆された基材も含まれる。さらに、非金属材料の表面を、前記金属などの材料を蒸着、塗布などの処理をして、不透明無機基材としたものであってもよい。
【0056】
<積層体を製造する工程>
これらの不透明無機基材上に着色層形成用組成物を、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法などで塗布し、加熱乾燥して溶剤分を除去することで着色層(A1)を形成する。
着色層(A1)の厚さは、1~4μm程度が好ましい。膜厚がこの範囲内であると、不透明無機基材に対する反射防止効果が良好となる。
【0057】
さらに着色層(A1)の上にフォトレジスト組成物を同様にキャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法などで塗布し、加熱乾燥して溶剤分を除去することで、不透明無機基材上に着色層(A1)を介してフォトレジスト層(A2)を形成した積層体を作成する。
着色層(A1)は、2層以上であってもよい。フォトレジスト層(A2)は、2層以上あってもよい。着色層(A1)とフォトレジスト層(A2)とが同一であって、積層体が、不透明無機基材と着色層(A1)との2層のみであってもよい。積層体が、不透明無機基材と着色層(A1)とフォトレジスト層(A2)との3層であって、着色層(A1)がフォトレジスト性を有していてもよい。不透明無機基材、着色層(A1)、フォトレジスト層(A2)の順で積層する形態が好ましいが、不透明無機基材、フォトレジスト層(A2)、着色層(A1)の順で積層する形態であってもよい。
【0058】
<露光する工程、フォトレジストパターンの潜像を形成する工程>
前記工程で不透明無機基材上に形成した積層体の表面に、所望のフォトマスクを公知の方法で形成し、波長240~450nmの範囲の光線、具体的にはg線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、半導体レーザ(波長405nm)などで露光し、フォトレジストパターンの潜像を形成できる。
また、波長240~450nmの範囲の光線が、波長幅が10nm以下である、レーザ、LEDである場合は、レーザのONOFF機能を利用して、フォトマスクを使用しないスキャン方式で露光して、フォトレジストパターンの潜像を形成することも可能である。
【0059】
本発明の積層体は、フォトレジストパターンの形状が、穿孔パターンであるときに、効果を発揮する。特に、穿孔部をマスクし、未露光部を現像除去する形態においては、課題に記載したような、露光部を露光した光線が散乱して未露光部である孔部領域を硬化させ、孔が埋まってしまうことを防止できる。ここで、穿孔パターンとは、積層体表面の現像部の外縁が閉曲線となるものをいう。閉曲線の形状は、必ずしも円形である必要はなく、積層体の縁まで到達しない糸状の細い溝であってもよい。また、孔は有機樹脂層(A)を貫通している必要もない。また、孔の内部がすべて空間ではなく、一部非現像部がある蛇の目形状であってもよい。
【0060】
<現像する工程>
フォトレジストパターンの潜像を形成後、アルカリ現像液で現像処理をすることによってフォトレジストパターンを形成する。
この方法によると、着色層(A1)によって、露光に使用する光線の高不透明無機基材表面での乱反射が抑制されるため、使用したフォトマスクに忠実なフォトレジストパターンを形成することができる。
当該フォトレジストパターンは、不透明無機基材を構成する金属などの材料をエッチングするための、エッチングレジストとして使用できるほか、凹凸の意匠や、反射光制御など凹凸を利用することができる。さらに、フォトレジストパターンの凹部に表面保護剤などを充填してもよい。
【0061】
ここで、不透明無機基材と、有機樹脂層(A)として、光重合性単量体(a3)と、光重合開始剤(a4)を含む着色層(A1)と、ネガ型のフォトレジスト層(A2)とからなる積層体にフォトレジストパターンを形成する実施形態の場合、フォトレジスト層(A2)とともに着色層(A1)の非露光部が現像処理で除かれるため、不透明無機基材表面が露出した状態となり、基材表面にエッチングパターンを形成するためのエッチングマスクなどに利用することができる。
また、不透明無機基材と、有機樹脂層(A)として光重合性単量体(a3)と、光重合開始剤(a4)を含む着色層(A1)のみからなる積層体(着色層(A1)とフォトレジスト層(A2)とが同一の場合に該当)にフォトレジストパターンを形成する実施形態の場合にも、同様に非露光部が現像処理で除かれるため、不透明無機基材表面が露出した状態となり、エッチングマスクなどに利用することができる。
一方、不透明無機基材と、フォトレジスト性を有さない着色層(A1)と、ネガ型のフォトレジスト層(A2)からなる積層体にフォトレジストパターンを形成する実施形態においては、基材表面の非露光部にも着色層(A1)が残った構造体となるが、そのままの構造体としても利用できるし、ドライエッチング等で非露光部の着色層(A1)を除去した構造体としても利用できる。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。製造例と実施例中、特に断りの無い限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0063】
まず、樹脂の重量平均分子量、及び樹脂の酸価の測定方法の計算方法について説明する。
【0064】
(樹脂の平均分子量)
樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8220GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは1質量%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20μl注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0065】
(樹脂の酸価)
樹脂溶液0.5~1gに、アセトン80ml及び水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM-555」平沼産業製)を用いて滴定し、樹脂溶液の酸価(mgKOH/g)を測定した。そして、樹脂溶液の酸価と樹脂溶液の不揮発分濃度から、樹脂の不揮発分あたりの酸価を算出した。
【0066】
<バインダー樹脂の製造例>
(バインダー樹脂溶液の調製)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコ内を窒素雰囲気とし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)150部を入れ、撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、ベンジルメタクリレート106部、アクリル酸22部及びジシクロペンタニルメタクリレート22部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル3.6部の混合液を、フラスコ内に滴下し、100℃で5時間撹拌し続けることにより、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が40%になるようにPGMAcを添加してバインダー樹脂溶液を調製した。重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0067】
(感光性樹脂溶液の調製)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計、ガス導入管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.5部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行った。
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、及びハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続け重量平均分子量(Mw)が約20,000の樹脂溶液を得た。
さらにテトラヒドロ無水フタル酸30.4部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が40%になるようにPGMAcを添加して感光性樹脂溶液を調製した。
【0068】
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1の調製)
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36を15部、分散剤としてBYK-LPN21116(ビックケミー社製)12.5部(不揮発分40質量%)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)72.5部を混合し、ビーズミルにより処理して、顔料分散液1を調製した。
【0069】
(顔料分散液2~6の調製)
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36に替えて表1に記載の顔料を使用した以外は上記と同様にして、顔料分散液2~6を調製した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1で使用した顔料は下記のとおりである。
PG36:リオノールグリーン 6YK、トーヨーカラー社製
PG58:FASTGEN GREEN A110、DIC社製
PR254:イルガフォアレッド B-CF、BASFジャパン社製
PR177:シニレックスレッド SR3C、シニック社製
PY150:Yellow Pigment E4GN、ランクセス社製
カーボンブラック:MA100、三菱ケミカル社製
【0072】
<着色層形成用組成物の調整>
(A1-1)
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、着色層形成用組成物(A1-1)を得た。
顔料分散液1 :40.0部
バインダー樹脂溶液(不揮発分40%) :40.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :20.0部
【0073】
(A1-2~7、CA1-1~2)
表2に記載した通りの材料種、質量に変更した以外は、着色層形成用組成物(A1-1)と同様にして着色層形成用組成物(A1-2~7、CA-1~2)をそれぞれ調整した。
【0074】
【表2】
【0075】
表2、3で使用した染料は下記の通りである。
ニグロシン染料:ニグロシンベースEX、オリエント化学工業社製
【0076】
(A1-11)
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、着色層形成用組成物(A1-11)を得た。
顔料分散液1 :50.0部
感光性樹脂溶液(不揮発分40%) :10.0部
エポキシ樹脂(EHPE-3150、ダイセル社製) : 1.5部
光重合性単量体(アロニックスM402、東亞合成社製) : 6.6部
光重合開始剤(イルガキュアOXE-02、BASF社製) : 0.7部
シリカ分散液(PMA-ST、日産化学工業社製シリカ微粒子のPGMAc分散液(不揮発分30%) : 3.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :28.2部
【0077】
(A1-12~17、CA1-3~4)
表3に記載した通りの材料種、質量に変更した以外は、着色層形成用組成物(A1-11)と同様にして着色層形成用組成物(A1-12~17、CA1-3~4)をそれぞれ調整した。
【0078】
【表3】
【0079】
<フォトレジスト組成物の調整>
(A2-1)
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、フォトレジスト組成物(B-1)を得た。
感光性樹脂溶液(不揮発分40%) :30.0部
エポキシ樹脂(EHPE-3150、ダイセル社製) : 1.5部
光重合性単量体(アロニックスM402、東亞合成社製) : 5.0部
光重合開始剤(イルガキュアOXE-02、BASF社製) : 1.0部
シリカ分散液(PMA-ST、日産化学工業社製シリカ微粒子のPGMAc分散液(不揮発分30%) : 9.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :53.5部
【0080】
[実施例1~14、比較例1~4]
<着色層(A1)の評価>
得られた着色層形成用組成物を用いて形成した着色層(A1)について、波長240~450nmの範囲の光線の最大光透過率、ならびに不透明無機基材上に形成した着色層(A1)の上面から見た基材表面の視認状態を下記の方法で評価した。結果を表4、5に示す。
【0081】
(最大光透過率)
着色層形成用組成物(A1-1~7、CA1-1~2)、ならびに(A1-11~17、CA1-3~4)を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基材(コーニング社製ガラス イーグル2000)上に、スピンコーターを用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次いで、着色層形成用組成物(A1-1~7、CA1-1~2)については基板を80℃のホットプレート上で10分間乾燥した後、230℃で20分間加熱し、ガラス基材に塗布した着色層(A1)を作製した。また、着色層形成用組成物(A1-11~17、CA1-3~4)については基板を80℃のホットプレート上で10分間乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて照度20mW/cm、露光量200mJ/cmで紫外線露光し、次いで230℃で20分間加熱して、ガラス基材に塗布した着色層(A1)を作製した。
得られた着色層(A1)を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて240~450nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定し、この範囲の透過率の最大値を最大光透過率(%)とした。
【0082】
(基材表面の視認状態)
シリコン表面の一部にSiOを被覆することでパターン形成された不透明無機基材表面に、着色層形成用組成物(A1-1~7、CA1-1~2)、ならびに(A1-11~17、CA1-3~4)をスピンコーターを用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、着色層形成用組成物(A1-1~7、CA1-1~2)については基板を80℃のホットプレート上で10分間乾燥した後、230℃で20分間加熱し、不透明無機基材に塗布した着色層(A1)を作製した。また、着色層形成用組成物(A1-11~17、CA1-3~4)については基板を80℃のホットプレート上で10分間乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて照度20mW/cm、露光量200mJ/cmで紫外線露光し、次いで230℃で20分間加熱して、不透明無機基材に塗布した着色層(A1)を作製した。
得られた着色層(A1)の上面から不透明無機基材表面を200倍の光学顕微鏡で観察したとき、基材表面の視認状態を下記基準で評価した。
〇:基材表面のパターン形状が認識できる。
×:基材表面のパターン形状が認識できない。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
[実施例15~28、比較例5、6、8、9]
(積層体の作製)
シリコン表面にSiOの被覆層を有する不透明無機基材表面に、着色層形成用組成物(A1-1~7、CA1-1~2、A1-11~17、CA1-3~4)をスピンコーターを用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で10分間乾燥した後、その上にフォトレジスト組成物(A2-1)をスピンコーターを用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように塗布し、さらに80℃に加熱したホットプレート上で10分間乾燥して、積層体を得た。
【0086】
(フォトレジストパターンの作製)
上記で得られた積層体について、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon社製)を使用して、365nmの波長で2000J/m2の露光を行った。露光は、10.0μm四方の正方形の遮光部と透過部が市松模様に並んだフォトマスクを通して行った。露光後の塗膜を有機アルカリ現像液NMD-3(東京応化工業社製)で1分間、パドル現像を行った。パドル現像後、20秒間スピンシャワーにて純水でリンスを行い、スピン乾燥により基板を乾燥させた後、クリーンオーブン中230℃で20分間加熱した。得られたフォトレジストパターンについて、遮光部により形成された穿孔パターンであるフォトレジストパターンを走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製「S-3000N」)を用いて観察し、下記基準で解像性とパターン矩形性を評価した。結果を表6、7に示す。
【0087】
(解像性)
◎:ホール寸法が9.5μm以上、10.0μm未満(非常に良好なレベル)
○:ホール寸法が9.0μm以上、9.5μm未満(良好なレベル)
△:ホール寸法が8.0μm以上、9.0μm未満(実用可能なレベル)
×:ホール寸法が8.0μm未満(実用には適さないレベル)
【0088】
(パターン矩形性)
◎;上底線幅/下底線幅≧0.90(非常に良好なレベル)
○;0.80≦上底線幅/下底線幅<0.90(良好なレベル)
△;0.70≦上底線幅/下底線幅<0.80(実用可能なレベル)
×;上底線幅/下底線幅<0.70(実用に適さないレベル)
【0089】
[比較例7]
シリコン表面にSiOの被覆層を有する不透明無機基材表面に、フォトレジスト組成物(A2-1)をスピンコーターを用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で10分間乾燥し、不透明無機基材上にフォトレジスト層(A2)を形成した。
このフォトレジスト層(A2)について、上記実施例15~28と同様の方法でフォトレジストパターンを作製し、解像性とパターン矩形性を評価した。結果を表6に示す。
【0090】
[実施例29]
シリコン表面にSiOの被覆層を有する不透明無機基材表面に、着色層形成用組成物(A1-13)をスピンコーターを用いて乾燥膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で10分間乾燥し、不透明無機基材上にフォトレジスト性を有する着色層を形成した。
このフォトレジスト性を有する着色層について、上記実施例15~28と同様の方法でフォトレジストパターンを作製し、解像性とパターン矩形性を評価した。結果を表7に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】