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特許7452150プログラム、動態解析装置及び動態解析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プログラム、動態解析装置及び動態解析システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240312BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240312BHJP
【FI】
A61B6/00 530A
A61B6/00 550A
A61B6/40 500D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020050419
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146011
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長束 澄也
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180512(JP,A)
【文献】特開2005-342088(JP,A)
【文献】特開2008-142166(JP,A)
【文献】特開2017-000299(JP,A)
【文献】特開2013-081579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の特定部位の動態が写った放射線動画に基づいて解析処理をコンピューターに実行させるプログラムであって、
前記解析処理において、前記放射線動画が前記特定部位の可動に伴った平面を可動平面とするものであった場合、前記放射線動画として、前記特定部位に対し前記可動平面と直交するように放射線を照射することにより得られたものに基づいて解析を実行させ
前記解析処理を実行する前に、前記特定部位を撮影したときに、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定する判定処理を、前記コンピューターに更に実行させ、
前記判定処理において、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されていないと判定した場合、前記放射線動画に写る前記特定部位を、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたことになるよう三次元補正する補正処理を、前記コンピューターに更に実行させるプログラム。
【請求項2】
前記判定処理において、前記放射線を前記特定部位に照射する放射線照射手段の設定状況に基づいて、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定させる請求項に記載のプログラム。
【請求項3】
前記解析処理において、前記放射線動画を構成する一のフレームにおける画素の信号値と、前記一のフレームと前後する他のフレームにおける前記画素と同一座標にある他の画素の信号値と、の差分を算出させる請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記解析処理において、算出された前記差分に基づいて、前記特定部位の移動距離、速度、加速度、可動範囲のうちの少なくともいずれかを更に算出させる請求項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記解析処理において、算出された前記差分に基づいて前記特定部位の非連続的な動作の変化を検出させる請求項又は請求項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記特定部位は、関節又は脊椎である請求項1から請求項のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
被検者の特定部位の動態が写った放射線動画に基づいて解析を行う解析手段を備える動態解析装置であって、
前記解析手段は、前記放射線動画が前記特定部位の可動に伴った平面を可動平面とするものであった場合、前記放射線動画として、前記特定部位に対し前記可動平面と直交するように放射線を照射することにより得られたものに基づいて解析を実行し、
前記解析を実行する前に、前記特定部位を撮影したときに、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理において、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されていないと判定した場合、前記放射線動画に写る前記特定部位を、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたことになるよう三次元補正する補正処理を実行する動態解析装置。
【請求項8】
被検者の特定部位の動態が写った放射線動画を生成する動画生成手段と、
前記放射線動画に基づいて解析を行う解析手段と、を備える動態解析システムであって、
前記解析手段は、前記放射線動画が前記特定部位の可動に伴った平面を可動平面とするものであった場合、前記放射線動画として、前記特定部位に対し前記可動平面と直交するように放射線を照射することにより得られたものに基づいて解析を実行し、
前記解析を実行する前に、前記特定部位を撮影したときに、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理において、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されていないと判定した場合、前記放射線動画に写る前記特定部位を、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたことになるよう三次元補正する補正処理を実行する動態解析システム。
【請求項9】
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画を構成する複数のフレームのうちの少なくとも一つを保存する保存手段を更に備える請求項に記載の動態解析システム。
【請求項10】
前記動画生成手段が前記放射線動画を生成している間に発生した外部情報を検知する検知手段と、
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画を再生する再生手段と、を備え、
前記再生手段は、前記検知手段が検知した前記外部情報に基づいて前記放射線動画の再生の仕方を変える請求項又は請求項に記載の動態解析システム。
【請求項11】
前記再生手段は、前記検知手段が前記外部情報を検知した時に生成されたフレームから前記放射線動画の再生速度を下げる請求項10に記載の動態解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、動態解析装置及び動態解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影を行う際、撮影対象となる特定部位に対して、放射線を、当該特定部位の表面と直交するように照射することが従来行われている。
例えば、特許文献1には、X線源、X線撮像手段、及びこれらの回転中心並びに被写体を、X線ビームの照射方向にみて、X線源-被写体-回転中心-X線撮像手段の位置関係となるように配置し、被写体上をX線ビームがスキャンしていく方向とX線撮像手段上に投影像が動く方向とは、逆方向に被写体像がX線撮像手段上を移動し得るようにしたX線撮影方法について記載されている。
【0003】
また、X線源とX線検出器を備え、被写体に低線量のX線を照射しながら被写体内を透視し(その際、例えば血管内にカテーテル等がきちんと挿入されているかどうかを確認したりする)、被写体が所定状態となったところで高線量のX線を用いた静止画(例えば、カテーテルがきちんと挿入されたことを示す証拠写真)の撮影を行う、といったことも従来行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-254472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放射線撮影は、関節等の異常を発見する際にも活用されている。
例えば、膝関節にある膝蓋骨は、膝関節の曲げ伸ばしに伴って左右方向に移動することが知られているが、膝関節が何らかの異常を有している場合、膝蓋骨の動作が途中から非連続的に変化する(例えば瞬間的に動きが早くなる)ことがある。
こうした非連続的な動作の変化を画像として残しておくことができれば、膝関節の異常を解消するためのより効果的な診断を行うことが可能となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のX線撮影方法は、被写体を固定し、X線源と及びX線撮像手段を移動させるようになっている。このため、この方法を用いて撮影を行っても、特定部位は動作することは無く、非連続的な動作の変化を画像に収めることはできない。
また、状態(曲げ角度)を少しずつ変えながら特定部位の静止画を撮影し、それに基づいて診断を行うといったことも考えられるが、このような動かし方では上述したよう非連続発的な動作の変化が発生しない場合があるし、発生したとしてもその瞬間を撮影できるとは限らない。
一方、透視は、こうした非連続的な動作の変化を発見することはできるが、動作の変化はいつ発生するか分からないし、発生してもそれは一瞬の出来事である。つまり、透視で得た瞬間的な情報に基づいて診断を行うことは医師にとって容易なことではない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、非連続的に動きを変化させることがある特定部位の診断を容易に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、
被検者の特定部位の動態が写った放射線動画に基づいて解析処理をコンピューターに実行させるプログラムであって、
前記解析処理において、前記放射線動画が前記特定部位の可動に伴った平面を可動平面とするものであった場合、前記放射線動画として、前記特定部位に対し前記可動平面と直交するように放射線を照射することにより得られたものに基づいて解析を実行させ
前記解析処理を実行する前に、前記特定部位を撮影したときに、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定する判定処理を、前記コンピューターに更に実行させ、
前記判定処理において、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されていないと判定した場合、前記放射線動画に写る前記特定部位を、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたことになるよう三次元補正する補正処理を、前記コンピューターに更に実行させる
【0009】
また、本発明に係る動態解析装置は、
被検者の特定部位の動態が写った放射線動画に基づいて解析を行う解析手段を備える動態解析装置であって、
前記解析手段は、前記放射線動画が前記特定部位の可動に伴った平面を可動平面とするものであった場合、前記放射線動画として、前記特定部位に対し前記可動平面と直交するように放射線を照射することにより得られたものに基づいて解析を実行し、
前記解析を実行する前に、前記特定部位を撮影したときに、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理において、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されていないと判定した場合、前記放射線動画に写る前記特定部位を、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたことになるよう三次元補正する補正処理を実行する。
【0010】
また、本発明に係る動態解析システムは、
被検者の特定部位の動態が写った放射線動画を生成する動画生成手段と、
前記放射線動画に基づいて解析を行う解析手段と、を備える動態解析システムであって、
前記解析手段は、前記放射線動画が前記特定部位の可動に伴った平面を可動平面とするものであった場合、前記放射線動画として、前記特定部位に対し前記可動平面と直交するように放射線を照射することにより得られたものに基づいて解析を実行し、
前記解析を実行する前に、前記特定部位を撮影したときに、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたか否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理において、前記特定部位に前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されていないと判定した場合、前記放射線動画に写る前記特定部位を、前記放射線が前記可動平面と直交するように照射されたことになるよう三次元補正する補正処理を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非連続的に動きを変化させることがある特定部位の診断を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る動態解析システムを表すブロック図である。
図2】特定部位の撮影の仕方の一例を示す図である。
図3】特定部位の動作の一例を示す図である。
図4】特定部位の動作の他の例を示す図である。
図5】特定部位の動作の他の例を示す図である。
図6】特定部位の動作の他の例を示す図である。
図7図1の放射線撮影システムが備える動態解析装置を表すブロック図である。
図8図7の動態解析装置が実行する動態解析処理の流れを表すフローチャートである。
図9】放射線動画に写る特定部位の三次元補正の仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0014】
〔1.動態解析システム〕
初めに、本実施形態に係る動態解析システム(以下、システム100)の概略構成について説明する。図1はシステム100を表すブロック図、図2は特定部位の撮影の仕方の一例を示す図、図3~6は特定部位の動作の一例を示す図である。
【0015】
システム100は、図1に示すように、放射線発生装置1と、放射線検出器2と、動態解析装置3と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム100は、コンソール4と、情報検知器5と、を更に備えている。
各装置1~5は、例えば通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0016】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と通信することが可能となっていてもよい。
【0017】
(放射線発生装置)
放射線発生装置1は、ジェネレーター11と、照射指示スイッチ12と、放射線源13と、を備えている。
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール4等と共に回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものとなっていてもよい。
【0018】
ジェネレーター11は、照射指示スイッチ12が操作されたことに基づいて、予め設定された撮影条件(例えば撮影部位、撮影方向、体格等の被検者Sに関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)等の放射線Rの照射に関する条件)に応じた電圧を放射線源13(管球)へ印加するようになっている。
【0019】
放射線源13は、ジェネレーター11から電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線R(例えばX線等)を発生させるようになっている。
また、放射線源13は、X軸方向、X軸と直交するY軸方向、X軸及びY軸と直交するZ軸方向に移動することが可能であるとともに、Y軸、Z軸と平行な回転軸を中心に回転して放射線の照射口の向きを変えることが可能となっている。
【0020】
放射線発生装置1は、このように構成されることで、撮影形態(静止画撮影・動画撮影)に応じた態様で放射線Rを発生させるようになっている。
また、放射線発生装置1は、例えば図2に示すように、任意の体位(立位、臥位、座位等)でいる被検者Sの任意の部位(膝、肩、肘、手首等)に、照射方向(放射線の光軸の延長方向)が、水平面H及び鉛直線Vに対し任意の角度をなすように放射線Rを照射することが可能となっている。
すなわち、放射線発生装置1は、放射線照射手段をなす。
【0021】
(放射線検出器)
放射線検出器2は、図示を省略するが、放射線Rを受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列されたセンサー基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査回路、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し回路、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータや各種信号等を外部へ送信したり、各種情報や各種信号を受信したりする通信部等を備えている。
【0022】
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線Rが照射されるタイミングと同期して、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを行うことにより、照射された放射線Rの線量に応じた放射線画像を生成するようになっている。
特に、特定部位の動態を撮影する場合には、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを短時間に複数回(例えば1秒間に15回)繰り返すことにより複数のフレームからなる放射線動画を生成する。
すなわち、放射線検出器2は、動画生成手段をなす。
【0023】
また、本実施形態に係る放射線検出器2は、図2に示したように、任意の方向に照射される放射線Rに対し、放射線入射面2aを、特定部位を挟んだ放射線Rの照射方向延長線上に配置することが可能となっている。
なお、図2には放射線検出器2をそれのみで配置した場合を例示したが、放射線検出器2は、図示しない撮影台等に支持されていてもよい。
【0024】
(動態解析装置)
動態解析装置3は、PCや専用の装置等で構成されている。
そして、動態解析装置3は、被検者Sの特定部位の動態が写った放射線動画に基づいて特定部位の動態を解析するようになっている。
この動態解析装置3の詳細については後述する。
【0025】
(コンソール)
コンソール4は、PCや専用の装置等で構成されている。
また、コンソール4は、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報やユーザーによる操作に基づいて、各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、撮影部位、撮影方向等)を撮影装置等に設定することが可能となっている。
なお、図1には、コンソール4とは別に動態解析装置3を備えるシステム100を例示したが、コンソール4は動態解析装置3と一体になっていてもよい。
【0026】
(情報検知器)
情報検知器5は、放射線検出器2が放射線動画を生成している(動画撮影を行っている)間に発生した外部情報を検知するものである。
本実施形態に係る情報検知器5は、被検者Sの近傍に配置されるマイクや、被検者Sが操作可能な押しボタン等で構成されている。
この「外部情報」は、撮影を行っている間に被検者Sが関節の曲げ伸ばし等によって痛みを感じたときに発した声や、被検者Sが痛みを感じたときに押しボタンを押したことにより出力された操作信号等である。
また、情報検知器5は、外部情報を検知すると、検知した旨の情報検知信号を動態解析装置3へ送信するようになっている。
情報検知器5は、以上のような動作をすることにより検知手段をなす。
なお、情報検知器5は、情報検知信号を、放射線動画のデータを扱う他の装置(例えば、放射線検出器2やコンソール4等)に送信するようになっていてもよい。
【0027】
(動態解析システムの概略動作)
このように構成されたシステム100は、放射線発生装置1の放射線源と放射線検出器2とを間を空けて対向配置し、それらの間に配置された被検者Sの特定部位へ放射線源13から放射線Rを照射することにより、被検者Sの放射線画像を撮影することが可能となっている。
静止状態の被検者を撮影する場合には、1回の撮影操作(照射指示スイッチの押下)につき放射線Rの照射及び放射線画像の生成を1回だけ行い、特定部位の動態を撮影する場合には、1回の撮影操作につきパルス状の放射線Rの照射及びフレームの生成を短時間に複数回繰り返す。
そして、システム100は、放射線検出器2が生成した動画を動態解析装置3へ送信し、動態解析装置3が動画に写る特定部位の動態を解析するようになっている。
【0028】
(解析対象とする動態)
システム100は、どのような特定部位の動態であっても解析を行うことが可能である。
しかし、本実施形態に係るシステム100は、特定部位に特有の可動平面Pに沿った移動の解析、すなわち、特定部位に対し可動平面Pと直交するように放射線Rを照射することにより得られた放射線動画に基づく解析を行う場合に適したものとなっている。
このような特有の可動平面Pを有する特定部位としては、関節又は脊椎が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係るシステム100は、その中でも特に、膝関節の膝蓋骨B1を特定部位としている。
膝蓋骨B1は、図3に示すように、膝の曲げ伸ばしに伴って、大腿骨B2の延長方向及び脛骨B3の延長方向とそれぞれ直交する方向(図3(a)における紙面と直交する方向、図3(b)における左右方向)に移動することが知られている。
また、膝蓋骨は、膝関節に異常がある場合、可動平面Pに沿う移動を行う際に、非連続的に動作が変化することがある。
この「非連続的」な動作の変化とは、急に動きが早まる、急に動く方向を変える等の突発的な変化を指す。
このため、図2,3に示したように、膝関節に対し、膝の曲げ伸ばしに伴う膝蓋骨B1の可動平面P(膝蓋骨B1の移動方向に延びる直線を通る平面)と直交するように放射線Rを照射して撮影すると、こうした膝蓋骨B1の非連続的な動作の変化が発生した場合に、それを放射線動画に収めることができる。
【0030】
なお、特定部位は、例えば図4に示すような屈曲・伸展を行うときの肘関節J1であってもよい。
この場合、肘関節J1と、上腕骨の軸と、橈骨の軸と、を通る平面(図4の紙面に沿う平面が可動平面Pということになる。
また、特定部位は、例えば図5(a)に示すような屈曲・伸展、図5(b)に示すような内転・外転、又は図5(c)に示すような内旋・外旋を行うときの肩関節J2等であってもよい。
この場合、肩関節J2及び上腕の軸を通る平面や、肘関節J1及び前腕の軸を通る平面が可動平面Pということになる。
また、特定部位は、例えば図6に示すような屈曲・伸展を行うときの手関節J3であってもよい。
この場合、手関節J3と、橈骨の軸と、中手骨の軸を通る平面(図6の紙面に沿う平面が可動平面Pということになる。
【0031】
〔2.動態解析装置〕
次に、上記システム100が備える動態解析装置3の具体的構成について説明する。
図7は動態解析装置3を表すブロック図、図8は動態解析装置3が実行する動態解析処理の流れを表すフローチャートである。
【0032】
(動態解析装置の構成)
動態解析装置3は、図7に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、を備えている。
また、本実施形態に係る動態解析装置3は、表示部34と、操作部35と、を更に備えている。
各部31~35は、バス等で電気的に接続されている。
【0033】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、動態解析装置3各部の動作を集中制御するようになっている。
【0034】
通信部32は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部32は、通信ネットワークNを介して接続された他の装置(例えば、放射線検出器2やコンソール4等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
なお、動態解析装置3は、通信部32の代わりに記憶媒体の記憶内容を読み取ることが可能な読取部を備え、記憶媒体を使って各種データを取り込むようになっていてもよい。
【0035】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラム(後述する動態解析処理を含む)やプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、記憶部33は、放射線画像を記憶することが可能となっていてもよい。
【0036】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の画像を表示するモニターで構成されている。
そして、表示部34は、制御部31から入力される制御信号に基づいて、各種画像等を表示するようになっている。
【0037】
本実施形態に係る操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部34の表面に積層されるタッチパネル等によって構成されている。
そして、操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力するようになっている。
【0038】
なお、表示部34及び操作部35の少なくとも一方は、コンソール4と共用になっていてもよい。
【0039】
(動態解析装置の動作)
このように構成された動態解析装置3の制御部31は、以下のような機能を有している。
【0040】
・解析機能
例えば、制御部31は、所定条件の成立に基づいて、例えば図8に示すような動態解析処理を実行するようになっている。
この「所定条件」とは、例えば、電源がオンにされる、通信ネットワークNに接続される、操作部35に所定の開始操作がなされる、通信部32が他の装置から所定の制御信号を受信する、といったものが挙げられる。
【0041】
この動態解析処理で、制御部31は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理で、制御部31は、他の装置から解析対象となる放射線動画を取得する。
本実施形態に係る制御部31は、通信部32を介してデータを受信することにより放射線動画を取得する。
なお、記憶媒体に記憶されたデータを読み取ることにより取得するようになっていてもよい。
また、制御部31は、動態解析処理を、放射線動画を取得したことを契機として開始するようになっていてもよい。その場合、この動態解析処理において取得処理の実行は不要である。
【0042】
放射線動画を取得した後、本実施形態に係る制御部31は、保存処理を実行する(ステップS2)。
この保存処理で、制御部31は、取得した放射線動画を構成する複数のフレームのうちの少なくとも一つを記憶部33に記憶させる。
すなわち、記憶部33は、保存手段をなす。
また、本実施形態に係る制御部31は、全てのフレームを記憶させるようになっている。
なお、制御部31は、この保存処理を実行せずに、後述する第二保存処理においてフレームを保存するようになっていてもよい。
また、制御部31は、放射線動画を記憶部33に記憶させるのではなく、保存手段を有する他の装置(コンソール4や図示しないサーバ等)に送信して記憶させるようになっていてもよい。
【0043】
放射線動画を保存した後、本実施形態に係る制御部31は、後述する解析処理を実行する前に、判定処理を実行する(ステップS3)。
この判定処理において、制御部31は、特定部位B1を撮影したときに、特定部位B1に放射線Rが可動平面Pと直交するように照射されたか否かを判定する。
本実施形態に係る制御部31は、この判定処理において、放射線発生装置1の設定状況に基づいて、放射線Rが可動平面Pと直交するように照射されたか否かを判定するようになっている。
なお、制御部31は、この判定処理において、放射線Rの光軸と可動平面Pとのなす角が90°である場合に限って直交していると判定するようになっている必要はなく、例えば90°±10°の範囲内に入っているか否かで判断するようになっていてもよい。
【0044】
この判定処理において、特定部位B1に放射線Rが前記可動平面Pと直交するように照射されていないと判定した場合(ステップS3:No)、本実施形態に係る制御部31は、補正処理を実行する(ステップS4)。
この補正処理において、制御部31は、放射線動画に写る特定部位B1を、放射線Rが可動平面Pと直交するように照射されたことになるよう三次元回転する。
例えば、図9に示すように、非動作部分Fの骨位置の端部四点、骨位置の端部四点の対角線の交点、及び骨面積の重心が一定となるように三次元回転させる。又は、非動作部分Fの骨の重なりの同じ部分が一番多くなるように三次元回転させる。
【0045】
一方、判定処理において、特定部位B1に放射線Rが可動平面Pと直交するように照射されていると判定した場合(ステップS2:Yes)、制御部31は、補正処理をスキップして次処理へ進む。
制御部31は、以上説明してきた判定処理を実行することにより判定手段をなす。
【0046】
上記判定処理でYesと判断した後、又は三次元補正を行った後、制御部31は、解析処理を実行する(ステップS5)
上述したように、本実施形態に係る制御部31は、特定部位B1に対し可動平面Pと直交するように放射線Rを照射することにより得られた放射線動画に基づいて解析を実行する。
この解析処理で、制御部31は、放射線動画を構成する一のフレームにおける、特定部位B1を構成する画素の信号値と、一のフレームと前後する他のフレームにおける画素と同一座標にある他の画素の信号値と、の差分を算出する。
そして、制御部31は、算出された差分に基づいて、特定部位B1の移動距離、速度、加速度、可動範囲のうちの少なくともいずれかを更に算出する。
【0047】
また、制御部31は、解析処理において、算出された差分に基づいて特定部位B1の非連続的な動作の変化を検出する。
具体的には、制御部31は、算出された差分に基づいて、各フレームにおける特定部位B1の速度又は加速度をそれぞれ算出し、速度の変化量(前フレームで算出した速度との差分)、又は加速度が所定閾値を超えたか否かをフレーム毎に判断する。
そして、あるフレームにおいて、速度の変化量又は加速度が所定閾値を超えた場合には、そのフレームが生成されたタイミングで非連続的な動作の変化があったことになる。
制御部31は、以上説明してきた解析処理を実行することにより解析手段をなす。
【0048】
特定部位B1の動態の解析を行った後、本実施形態に係る制御部31は、第二保存処理を実行して(ステップS6)、動態解析処理を終了する。
この第二保存処理で、制御部31は、特定部位B1の動態の解析結果を保存する。
【0049】
・タイミング情報付与機能
また、本実施形態に係る制御部31は、取得した放射線動画のデータに、上述した外部情報を検知したタイミングを示すタイミング情報を付与する機能を有している。
例えば、放射線検出器2がフレームを生成し次第直ちに動態解析装置3に送信するようになっている場合には、情報検知信号を受信したときに受信したフレームにタイミング情報を付与する。
一方、放射線検出器2及び動態解析装置3がそれぞれ時計機能を有している場合には、各フレームに対し生成された時刻の情報を、情報検知信号に対し受信した時刻を、タイミング情報としてそれぞれ付与する。
こうすることで、特定部位B1が移動している間のどのタイミングで外部情報を検知したのか(関節をどのくらい曲げたときに痛みを感じたのか)を動画の再生に反映させることができる。
【0050】
・再生機能
また、本実施形態に係る制御部31は、放射線検出器2が生成した放射線動画を再生する機能を有している。
本実施形態に係る制御部31は、特定部位B1の動態の解析が済んでいる場合、解析結果を表示しつつ放射線動画を再生することも可能となっている。
また、制御部31は、情報検知器5が検知した外部情報に基づいて放射線動画の再生の仕方を変えるようになっている。
具体的には、制御部31は、放射線動画のデータに付与されたタイミング情報に基づいて、情報検知器5が外部情報を検知した時に生成されたフレームから放射線動画の再生速度を下げるようになっている。
制御部31は、このような再生機能を有することにより再生手段をなす。
こうすることで、外部情報を検知した後の特定部位B1の動態をより注意深く観察することができる。
【0051】
〔3.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係るシステム100は、特定部位B1の可動平面Pに沿った移動を、撮影の開始から終了まで連続的に撮影した放射線動画に基づいて、特定部位B1の動態を解析する。このため、動作の途中で動作の変化が非連続的に発生した場合であっても、その非連続的な動きの変化を検知することができる。
また、システム100は、こうした特定部位B1の動作を放射線動画として残しておくため、撮影後の任意のタイミングで何度でも見直すことができる。
このため、システム100によれば、非連続的に動きを変化させることがある特定部位B1の診断を容易に行うことができる。
【0052】
なお、放射線画像のみを再生する場合であっても、どこかのタイミングで、特定部位B1の動作が非連続的に変化する瞬間が表示されることになる。
このため、診断者の技量、放射線動画の再生速度、非連続的な動作の変化の大きさ等によっては、表示された放射線動画を見るだけでも特定部位B1の診断を比較的容易に行うことができる場合もある。
この場合、動態解析処理における解析処理において、信号値の差分を算出する代わりに、各フレームにノイズ除去等の一般的な画像処理を施すようにしてもよい。
【0053】
〔4.その他〕
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、撮影対象とする特定部位を膝蓋骨B1や肘関節J1、肩関節J2としたが、システム100は、通常は滑らかな動作をするが、異常を有する場合に静止画では捉えることが困難な通常時とは異なる動作する部位であれば特定部位として解析することができる。
上記実施形態では、動態解析装置3が検知情報付与機能や再生機能を有していたが、これらの機能は動態解析装置3ではなく、コンソール4が有していてもよい。
【0055】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0056】
100 動態解析システム
1 放射線発生装置
11 ジェネレーター
12 照射指示スイッチ
13 放射線源
2 放射線検出器
2a 放射線入射面
3 動態解析装置
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
4 コンソール
5 情報検知器
1 膝蓋骨
1 特定部位
2 大腿骨
3 脛骨
F 非動作部分
H 水平面
1 肘関節
2 肩関節
N 通信ネットワーク
P 可動平面
R 放射線
S 被検者
V 鉛直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9