(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両用制御装置、プログラム、車両用制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240312BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240312BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240312BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240312BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240312BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20240312BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/10 H
H02J7/10 P
H01M10/48 P
H01M10/44 P
B60L50/60
B60L58/15
B60L9/18 J
(21)【出願番号】P 2020054549
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019216999
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良友
(72)【発明者】
【氏名】北川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】馬場 浩輔
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131559(JP,A)
【文献】特開2007-290483(JP,A)
【文献】特開2012-144195(JP,A)
【文献】特開2018-122697(JP,A)
【文献】特開2019-062582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 50/60
B60L 58/15
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(31)において、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定部と、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する充電状態判定部と、
前記電気負荷の消費電力(We)を算出する負荷電力算出部と、
を備え、
前記設定部は
、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出部により算出された消費電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定する
とともに、前記電気負荷の消費電力と、前記充電電力制限値とのうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記電気負荷に供給される電流を検出する負荷電流センサ(53a~53d,57)を備え、
前記負荷電力算出部は、前記負荷電流センサの検出値に基づいて、前記電気負荷の消費電力を算出する請求項
1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(31)において、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定部と、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する充電状態判定部と、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力(Wmsys)を算出する損失電力算出部
と、
を備え、
前記設定部は、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記損失電力算出部により算出された損失電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力と、前記充電電力制限値とのうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する
、車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記インバータに流れる電流を検出する電源電流センサ(51)を備え、
前記損失電力算出部は、前記電源電流センサの検出値に基づいて、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力を算出する請求項
3に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(31)において、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定部と、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する充電状態判定部と、
前記電気負荷の消費電力(We)を算出する負荷電力算出部と、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力(Wmsys)を算出する損失電力算出部と
、
を備え、
前記設定部は、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出部により算出された消費電力、前記損失電力算出部により算出された損失電力、及び前記充電電力制限値に基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記電気負荷の消費電力、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力、並びに前記充電電力制限値のうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する
、車両用制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記電気負荷に供給される電流を検出する負荷電流センサ(53a~53d,57)と、前記インバータに流れる電流を検出する電源電流センサ(51)と、を備え、
前記負荷電力算出部は、前記負荷電流センサの検出値に基づいて、前記電気負荷の消費電力を算出し、
前記損失電力算出部は、前記電源電流センサの検出値に基づいて、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力を算出する請求項
5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
コンピュータに、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定処理と、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する処理と、
前記電気負荷の消費電力(We)を算出する負荷電力算出処理と、
を実行させ、
前記設定処理において、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出処理により算出された消費電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記電気負荷の消費電力と、前記充電電力制限値とのうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、プログラム。
【請求項8】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
コンピュータに、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定処理と、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する処理と、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力(Wmsys)を算出する損失電力算出処理と、
を実行させ、
前記設定処理において、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記損失電力算出処理により算出された損失電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力と、前記充電電力制限値とのうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、プログラム。
【請求項9】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
コンピュータに、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定処理と、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する処理と、
前記電気負荷の消費電力(We)を算出する負荷電力算出処理と、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力(Wmsys)を算出する損失電力算出処理と、
を実行させ、
前記設定処理において、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出処理により算出された消費電力、前記損失電力算出処理により算出された損失電力、及び前記充電電力制限値に基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記電気負荷の消費電力、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力、並びに前記充電電力制限値のうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、プログラム。
【請求項10】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御方法において、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定ステップと、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行うステップと、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定するステップと、
前記電気負荷の消費電力(We)を算出する負荷電力算出ステップと、
を備え、
前記設定ステップにおいて、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出ステップにより算出された消費電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記電気負荷の消費電力と、前記充電電力制限値とのうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、車両用制御方法。
【請求項11】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御方法において、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定ステップと、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行うステップと、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定するステップと、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力(Wmsys)を算出する損失電力算出ステップと、
を備え、
前記設定ステップにおいて、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記損失電力算出ステップにより算出された損失電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力と、前記充電電力制限値とのうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、車両用制御方法。
【請求項12】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷(41~44)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御方法において、
駆動輪(11)から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値(Plim)を、前記蓄電装置の充電電力制限値(Win)に基づいて設定する設定ステップと、
前記インバータから出力される回生電力(Piv)を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行うステップと、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定するステップと、
前記電気負荷の消費電力(We)を算出する負荷電力算出ステップと、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力(Wmsys)を算出する損失電力算出ステップと、
を備え、
前記設定ステップにおいて、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出ステップにより算出された消費電力、前記損失電力算出ステップにより算出された損失電力、及び前記充電電力制限値に基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定するとともに、前記電気負荷の消費電力、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力、並びに前記充電電力制限値のうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する、車両用制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置、プログラム及び車両用制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、例えば特許文献1に見られるように、蓄電装置と、蓄電装置に電気的に接続されるインバータと、インバータに電気的に接続される回転電機と、蓄電装置及びインバータに電気的に接続される電気負荷とを備える車両に適用されるものが知られている。この制御装置では、駆動輪から回転電機へと入力されるエネルギを利用して回転電機の回生発電が実施される。そして、この回生発電が実施される場合において、インバータから出力される回生電力が、蓄電装置の充電電力制限値に基づいて設定された回生電力制限値以下になるようにインバータの制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回生発電が実施される場合において、蓄電装置の充電状態が満充電状態の場合、蓄電装置が過充電となりやすく、蓄電装置の保護を図ることができない懸念がある。
【0005】
本発明は、蓄電装置を適正に保護できる車両用制御装置、プログラム及び車両用制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、蓄電装置と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータと、
前記インバータに電気的に接続される回転電機と、
前記蓄電装置に電気的に接続される電気負荷と、を備える車両に適用される車両用制御装置において、
駆動輪から前記回転電機へと入力されるエネルギを利用して前記回転電機の回生発電を実施する場合における前記インバータの回生電力制限値を、前記蓄電装置の充電電力制限値に基づいて設定する設定部と、
前記インバータから出力される回生電力を前記回生電力制限値以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
前記蓄電装置が満充電状態であるか否か判定する充電状態判定部と、を備え、
前記設定部は、前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも前記回生電力制限値を小さく設定する。
【0007】
第1の発明では、蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、蓄電装置が満充電状態でないと判定される場合よりも回生電力制限値が小さく設定される。この設定により、蓄電装置の充電状態が満充電状態の場合において、蓄電装置が過充電となることを防止できる。これにより、蓄電装置を適正に保護することができる。
【0008】
ここで、第1の発明は、例えば第2の発明のように具体化することができる。第2の発明は、前記電気負荷の消費電力を算出する負荷電力算出部と、
前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力を算出する損失電力算出部と、を備え、
前記設定部は、
前記蓄電装置が満充電状態でないと判定された場合、前記負荷電力算出部により算出された消費電力、前記損失電力算出部により算出された損失電力、及び前記充電電力制限値に基づいて、前記充電電力制限値よりも大きい値の前記回生電力制限値を設定し、
前記蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、前記電気負荷の消費電力、前記インバータ及び前記回転電機で発生する損失電力、並びに前記充電電力制限値のうち、前記充電電力制限値のみに基づいて、前記回生電力制限値を設定する。
【0009】
第2の発明では、電気負荷の消費電力が算出され、また、インバータ及び回転電機で発生する損失電力が算出される。
【0010】
ここで、例えば各算出部の演算誤差や演算の遅延により、算出された消費電力と、電気負荷の実際の消費電力との間の誤差が大きくなったり、算出された損失電力と、実際の損失電力との間の誤差が大きくなったりし得る。
【0011】
大きな誤差を含む消費電力の算出値と、大きな誤差を含む損失電力の算出値とが回生電力制限値の設定に用いられると、インバータから出力される回生電力が適正な値に対して大きくなり、蓄電装置の実際の充電電力が充電電力制限値を超えるおそれがある。この場合、蓄電装置の保護を図ることができなくなり得る。また、蓄電装置の充電状態が満充電状態の場合において、蓄電装置の実際の充電電力が充電電力制限値を超えてしまうと、蓄電装置が過充電となり、蓄電装置の保護を図ることができなくなり得る。
【0012】
そこで、第2の発明では、蓄電装置が満充電状態であると判定された場合、電気負荷の消費電力、インバータ及び回転電機で発生する損失電力、並びに充電電力制限値のうち、充電電力制限値のみに基づいて回生電力制限値が設定される。このため、発生し得る大きさ誤差が回生電力制限値の設定に及ぼす影響を低減できる。これにより、蓄電装置の実際の充電電力が充電電力制限値を超えたり、蓄電装置が過充電となったりすることを防止できる。
【0013】
ここで、第2の発明は、例えば第3の発明のように具体化することができる。第3の発明では、負荷電流センサの検出値に基づいて、電気負荷の消費電力が算出され、電源電流センサの検出値に基づいて、インバータ及び回転電機で発生する損失電力が算出される。
【0014】
ここで、負荷電流センサの検出値の検出誤差により、算出された消費電力と、電気負荷の実際の消費電力との間の誤差が大きくなり得る。また、電源電流センサの検出値の検出誤差により、算出された損失電力と、実際の損失電力との間の誤差が大きくなり得る。
【0015】
大きな誤差が含まれた検出値に基づいて算出された消費電力と、大きな誤差が含まれた検出値に基づいて算出された損失電力とが回生電力制限値の設定に用いられると、インバータから出力される回生電力が適正な値に対して大きくなり、蓄電装置の実際の充電電力が充電電力制限値を超えるおそれがある。この場合、蓄電装置の保護を図ることができなくなり得る。また、蓄電装置の充電状態が満充電状態の場合において、蓄電装置の実際の充電電力が充電電力制限値を超えてしまうと、蓄電装置が過充電となり、蓄電装置の保護を図ることができなくなり得る。この点、第3の発明によれば、検出誤差等が回生電力制限値の設定に及ぼす影響を低減できるため、蓄電装置の実際の充電電力が充電電力制限値を超えたり、蓄電装置が過充電となったりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る車載システムの全体構成図。
【
図2】EVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
【
図3】その他の実施形態に係る車載システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る制御装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の制御装置は、走行動力源として回転電機のみを備える電気自動車等の車両に搭載される。
【0018】
図1に示すように、車両10は、回転電機20、インバータ21、及び蓄電装置としての蓄電池22を備えている。本実施形態において、回転電機20は、3相の巻線を有し、例えば永久磁石型の同期機である。回転電機20のロータは、車両10の駆動輪11と動力伝達可能とされている。つまり、回転電機20は、車両10の走行動力源となる。
【0019】
インバータ21は、回転電機20のステータ巻線に電気的に接続されている。インバータ21は、上,下アームのスイッチを有している。蓄電池22は、複数のセルの直列接続体からなる組電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池等の2次電池である。
【0020】
車両10は、蓄電池22を監視する電池ECU30と、EVECU31とを備えている。電池ECU30は、蓄電池22の各セルの電圧及び蓄電池22の温度である電池温度等を検出する。電池ECU30は、それら検出値に基づいて、蓄電池22の充電電力制限値Winを設定したり、蓄電池22の充電率(SOC)を算出したりする。充電電力制限値Winは、蓄電池22に充電可能な電力の許容上限値であり、蓄電池22を保護する観点から設定される値である。充電電力制限値Winは、例えば、電池温度と関係づけられたマップ情報として、電池ECU30が備える記憶部としてのメモリに記憶されている。メモリは、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。電池ECU30は、設定した充電電力制限値Win及び算出したSOC等をEVECU31に送信する。
【0021】
車両10は、電気負荷としてのDCDCコンバータ41、電動コンプレッサ42、補機インバータ43及びヒータ44を備えている。
【0022】
DCDCコンバータ41は、蓄電池22の出力電圧を降圧して図示しない車載低圧負荷に供給する。低圧負荷は、例えば、低圧蓄電池及び低圧電気負荷のうち少なくとも一方を含む。低圧蓄電池は、蓄電池22よりも出力電圧の低い蓄電池であり、例えば鉛蓄電池である。
【0023】
電動コンプレッサ42は、車室内空調装置を構成し、車載冷凍サイクルの冷媒を循環させるべく、蓄電池22から給電されて駆動される。補機インバータ43は、蓄電池22から供給される直流電力を交流電力に変換する。変換された交流電圧は、例えば車内で使用する電気機器に供給される。ヒータ44は、例えば車室内空調装置を構成し、蓄電池22から給電されて発熱する。
【0024】
車両10は、相電流センサ50、電源電流センサ51、電源電圧センサ52及び回転角センサ55を備えている。相電流センサ50は、回転電機20の少なくとも2相分の相電流を検出する。電源電流センサ51は、インバータ21に流れる直流電流を検出し、電源電圧センサ52は、インバータ21に印加される電源電圧を検出する。回転角センサ55は、回転電機20のロータの回転角(電気角)を検出し、例えばレゾルバである。
【0025】
車両10は、第1~第4負荷電流センサ53a~53d及び第1~第4負荷電圧センサ54a~54dを備えている。第1負荷電流センサ53aは、DCDCコンバータ41に供給される電流を検出し、第1負荷電圧センサ54aは、DCDCコンバータ41に供給される電圧を検出する。第2負荷電流センサ53bは、電動コンプレッサ42に供給される電流を検出し、第2負荷電圧センサ54bは、電動コンプレッサ42に供給される電圧を検出する。第3負荷電流センサ53cは、補機インバータ43に供給される電流を検出し、第3負荷電圧センサ54cは、補機インバータ43に供給される電圧を検出する。第4負荷電流センサ53dは、ヒータ44に供給される電流を検出し、第4負荷電圧センサ54dは、ヒータ44に供給される電圧を検出する。各センサ50~52,53a~53d,54a~54d,55の検出値は、EVECU31に入力される。
【0026】
なお、第1負荷電流センサ53a及び第1負荷電圧センサ54aは、DCDCコンバータ41の外部に設けられていてもよいし、DCDCコンバータ41に内蔵されていてもよい。その他の各負荷電流センサ53b~53d及び各負荷電圧センサ54b~54dについても同様である。
【0027】
EVECU31は、インバータ21を構成する上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う。詳しくは、EVECU31は、車両10の走行用に回転電機20のロータを回転させるべく、蓄電池22から出力される直流電力を交流電力に変換して回転電機20のステータ巻線に供給するスイッチング制御である力行駆動制御を行う。また、EVECU31は、蓄電池22を充電したり、DCDCコンバータ41等に電力を供給したりすべく、回転電機20で回生発電される交流電力を直流電力に変換して蓄電池22側に出力するスイッチング制御である回生駆動制御を行う。
【0028】
続いて、
図2を用いて、EVECU31により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0029】
ステップS10では、電池ECU30から充電電力制限値Win及び蓄電池22のSOCを取得する。
【0030】
ステップS11では、取得したSOCが充電閾値Sα(例えば95%)以上であるか否かを判定する。ステップS11の処理は、蓄電池22が満充電状態であるか否かを判定するための処理である。なお、本実施形態において、ステップS11の処理が「充電状態判定部」に相当する。
【0031】
ステップS11において否定判定した場合には、満充電状態でないと判定し、ステップS12に進む。ステップS12では、回生電力制限値Plimを算出する。以下、この算出方法について説明する。
【0032】
ステップS12では、DCDCコンバータ41、電動コンプレッサ42、補機インバータ43及びヒータ44それぞれの消費電力の合計値である合計消費電力Weを算出する。ここでは、DCDCコンバータ41の消費電力を、第1負荷電流センサ53aにより検出された電流I1及び第1負荷電圧センサ54aにより検出された電圧V1の乗算値として算出し、電動コンプレッサ42の消費電力を、第2負荷電流センサ53bにより検出された電流I2及び第2負荷電圧センサ54bにより検出された電圧V2の乗算値として算出する。また、補機インバータ43の消費電力を、第3負荷電流センサ53cにより検出された電流I3及び第3負荷電圧センサ54cにより検出された電圧V3の乗算値として算出し、ヒータ44の消費電力を、第4負荷電流センサ53dにより検出された電流I4及び第4負荷電圧センサ54dにより検出された電圧V4の乗算値として算出する。
【0033】
また、ステップS12では、インバータ21及び回転電機20で発生する損失電力Wmsysを算出する。本実施形態では、回転電機20の回転動力から、インバータ21から出力される回生電力Pivを差し引くことにより、損失電力Wmsysを算出する。ここで、回転動力は、相電流センサ50の検出値に基づいて算出される回転電機20のトルクと、回転角センサ55の検出値に基づいて算出されるロータの回転速度とを用いて算出されればよい。また、インバータ21から出力される回生電力Pivは、電源電流センサ51により検出された電流Idc及び電源電圧センサ52により検出された電圧Vdcの乗算値として算出されればよい。
【0034】
なお、合計消費電力Weや損失電力Wmsysの算出に用いられる各センサは、DCDCコンバータ41及びインバータ21等の制御で通常用いられるものである。このため、例えば、合計消費電力Weや損失電力Wmsysの算出に新たなセンサを設けることなく、合計消費電力Weや損失電力Wmsysを算出できる。
【0035】
そして、ステップS12では、ステップS10で取得した充電電力制限値Win、算出した損失電力Wmsys及び算出した合計消費電力Weを加算することにより、回生電力制限値Plimを算出する。このように算出された回生電力制限値Plimが用いられることにより、DCDCコンバータ41等の各電気負荷の消費電力やインバータ21等で発生する損失電力を加味して回生駆動制御を実施できる。このため、回生電力によって蓄電池22を効率よく充電できる。
【0036】
続くステップS13では、ステップS12で算出した回生電力制限値Plimに基づいて、インバータ21のスイッチング制御を行う。具体的には、インバータ21から出力される回生電力Pivを、ステップS12で算出した回生電力制限値Plim以下にするようにスイッチング制御を行う。より具体的には、回生駆動制御によって駆動輪11に付与すべき制動力を実現するための回生電力(以下、要求回生電力)が回生電力制限値Plimを超える場合、インバータ21から出力される回生電力Pivを、ステップS12で算出した回生電力制限値Plimにするようにスイッチング制御を行う。一方、要求回生電力が回生電力制限値Plim未満の場合、インバータ21から出力される回生電力Pivをその要求回生電力にするようにスイッチング制御を行う。なお、本実施形態において、ステップS13の処理が「制御部」に相当する。
【0037】
一方、ステップS11において肯定判定した場合には、満充電状態であると判定し、ステップS14に進む。ステップS14では、ステップS10で取得した充電電力制限値Winと同じ値に回生電力制限値Plimを設定する。つまり、損失電力Wmsys及び合計消費電力Weを用いずに回生電力制限値Plimを設定する。
【0038】
そして、ステップS13では、ステップS14で算出した回生電力制限値Plimに基づいて、インバータ21のスイッチング制御を行う。具体的には、インバータ21から出力される回生電力Pivを、ステップS14で算出した回生電力制限値Plim以下にするように、インバータ21のスイッチング制御を行う。より具体的には、要求回生電力が回生電力制限値Plimを超える場合、インバータ21から出力される回生電力Pivを、ステップS14で算出した回生電力制限値Plimにするようにスイッチング制御を行う。一方、要求回生電力が回生電力制限値Plim未満の場合、インバータ21から出力される回生電力Pivをその要求回生電力にするようにスイッチング制御を行う。
【0039】
なお、以上の説明では、ステップS11において肯定判定した場合、損失電力Wmsysの算出処理及び合計消費電力Weの算出処理を行わないこととしたがこれに限らない。例えば、ステップS11の処理の開始前までに、先に説明した方法で損失電力Wmsys及び合計消費電力Weを算出しておく。そして、ステップS11において肯定判定した場合、ステップS14に進み、算出した損失電力Wmsys及び合計消費電力Weを用いることなく、取得した充電電力制限値Winと同じ値に回生電力制限値Plimを設定してもよい。
【0040】
ちなみに、本実施形態において、ステップS12,S14の処理が「設定部」、「負荷電力算出部」及び「損失電力算出部」に相当する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、EVECU31は、蓄電池22が満充電状態であると判定した場合、損失電力Wmsys、合計消費電力We及び充電電力制限値Winのうち、充電電力制限値Winのみを用いて、充電電力制限値Winと同じ値に回生電力制限値Plimを設定する。このため、各負荷電流センサ53a~53d、各負荷電圧センサ54a~54d及び回転角センサ55の検出誤差等が回生電力制限値Plimの設定に及ぼす影響を低減できる。これにより、蓄電池22の実際の充電電力が充電電力制限値Winを超えたり、蓄電池22が過充電となったりすることを防止できる。
【0042】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0043】
・DCDCコンバータ41,電動コンプレッサ42,補機インバータ43,ヒータ44の消費電力がDCDCコンバータ41,電動コンプレッサ42,補機インバータ43,ヒータ44が備えるコントローラにより算出されてもよい。この場合、DCDCコンバータ41,電動コンプレッサ42,補機インバータ43,ヒータ44のコントローラからEVECU31へと算出された消費電力が送信され、EVECU31は、受信した各消費電力を用いて合計消費電力Weを算出すればよい。
【0044】
・損失電力Wmsysの算出において、電源電圧センサ52の検出値に代えて、例えば蓄電池22の定格電圧が用いられてもよい。
【0045】
また、DCDCコンバータ41,電動コンプレッサ42,補機インバータ43,ヒータ44の消費電力の算出においても、各負荷電圧センサ54a~54dの検出値に代えて、例えば蓄電池22の定格電圧が用いられてもよい。
【0046】
・EVECU31は、ステップS12の処理おいて、合計消費電力Weを用いることなく、充電電力制限値Win及び損失電力Wmsysの加算値を回生電力制限値Plimに設定してもよい。また、EVECU31は、ステップS12の処理おいて、損失電力Wmsysを用いることなく、充電電力制限値Win及び合計消費電力Weの加算値を回生電力制限値Plimに設定してもよい。
【0047】
・ステップS14の処理は、例えば以下の(1),(2)のように変更することができる。
【0048】
(1)EVECU31は、充電電力制限値Winに所定のマージンを加算した値を回生電力制限値Plimに設定してもよい。なお、この場合に設定される回生電力制限値Plimも、ステップS12で設定する回生電力制限値Plimより小さい値である。また、上記マージンに、例えば、蓄電池22とDCDCコンバータ41,電動コンプレッサ42,補機インバータ43,ヒータ44との間の配線抵抗により発生する損失電力が含まれていてもよい。
【0049】
(2)EVECU31は、ステップS12と同様の方法で回生電力制限値Plimを算出し、算出した回生電力制限値Plimから所定電力を差し引くことにより、ステップS13で用いる最終的な回生電力制限値Plimを設定してもよい。
【0050】
・DCDCコンバータ41,電動コンプレッサ42,補機インバータ43,ヒータ44(以下、各電気負荷41~44ともいう)に対して個別に負荷電流センサ53a~53d及び負荷電圧センサ54a~54dが設けられる構成に代えて、
図3に示すように、各電気負荷41~44に共通の負荷電流センサ57及び共通の負荷電圧センサ58が設けられる構成であってもよい。負荷電流センサ57及び負荷電圧センサ58は、各電気負荷41~44の入り口側に設けられる。この場合、負荷電流センサ57により検出される電流Iaは、各電気負荷41~44に流れる電流の合計値となる。なお、
図2のステップS12では、負荷電流センサ57により検出された電流Ia及び負荷電圧センサ58により検出された電圧Vaの乗算値として合計消費電力Weが算出されればよい。
【0051】
ちなみに、合計消費電力Weの算出に、蓄電池22の定格電圧、電源電圧センサ52の検出値Vdc、
図3の負荷電圧センサ58の検出値Va又は
図1の各負荷電圧センサ54a~54dの検出値V1~V4を用いる4つの方法がある。また、合計消費電力Weの算出に、
図1の各負荷電流センサ53a~53dの検出値I1~I4又は
図3の負荷電流センサ57の検出値Iaを用いる2つの方法がある。合計消費電力Weの算出において、電圧についての4つの方法それぞれと、電流についての2つの方法それぞれとは任意の組み合わせとすることができる。
【0052】
・ステップS12において、合計消費電力Weの算出に電流センサの検出値が用いられなくてもよい。以下、電気負荷として電動コンプレッサ42及びDCDCコンバータ41が用いられる場合を例にして説明する。
【0053】
まず、電動コンプレッサ42について説明する。車両10は、空調装置の冷凍サイクルを循環する冷媒の圧力を検出する圧力センサと、電動コンプレッサ42の回転速度を検出する空調用回転速度センサとを備えている。圧力センサは、具体的には例えば、冷凍サイクルのうち電動コンプレッサ42の冷媒吐出側の冷媒圧力を検出する。EVECU31は、ステップS12において、圧力センサ及び空調用回転速度センサそれぞれの検出値と、冷媒圧力及び電動コンプレッサ42の回転速度と関係付けられて電動コンプレッサ42の消費電力が規定されたマップ情報又は数式情報に基づいて、電動コンプレッサ42の消費電力を算出する。
【0054】
続いて、DCDCコンバータ41について説明する。DCDCコンバータ41の消費電力は、例えば、低圧電気負荷の消費電力から把握することができる。以下、低圧電気負荷に、ブロワファン及びウォータポンプが含まれる場合について説明する。車両10は、ブロワファンの回転速度を検出するブロワ回転速度センサと、ウォータポンプの回転速度を検出するポンプ回転速度センサと、ウォータポンプから吐出された冷却水の循環流量を検出する流量センサとを備えている。EVECU31は、ステップS12において、ブロワファンの検出値と、ブロワファンの回転速度と関係付けられてブロワファンの消費電力が規定されたマップ情報又は数式情報に基づいて、ブロワファンの消費電力を算出する。また、EVECU31は、ポンプ回転速度センサ及び流量センサそれぞれの検出値と、ウォータポンプの回転速度及び冷却水の循環流量と関係付けられてウォータポンプの消費電力が規定されたマップ情報又は数式情報に基づいて、ウォータポンプの消費電力を算出する。そして、EVECU31は、算出したブロワファン及びウォータポンプの消費電力を低圧電気負荷の消費電力として把握し、把握した低圧電気負荷の消費電力又はこの消費電力にDCDCコンバータ41で発生する損失分を上乗せした値をDCDCコンバータ41の消費電力として算出する。
【0055】
このように、電気的な物理量を検出するセンサの検出値を用いることなく、回転速度、圧力及び流量等、電気的な物理量以外の物理量を検出するセンサの検出値を用いる場合であっても、センサの検出誤差等が回生電力制限値Plimの設定に影響を及ぼす上述した問題が発生し得る。また、マップ情報又は数式情報は、物理量及び消費電力が安定した定常状態で定められた情報である。このため、物理量が変化する過渡状態において、マップ情報又は数式情報に基づいて算出された消費電力と実際の消費電力とのずれが大きくなり、このずれの大きさが回生電力制限値Plimの設定に影響を及ぼし得る。したがって、電気的な物理量以外の物理量を検出するセンサの検出値を用いる場合であっても、ステップS11,S12の処理が有効である。
【0056】
ちなみに、損失電力Wmsysについても、電気的な物理量を検出するセンサの検出値を用いることなく算出できる。EVECU31は、相電流センサ50の検出値を用いることなく、例えば、回転電機20の指令トルク及び回転角センサ55の検出値に基づいて算出されるロータの回転速度と、回転電機20のトルク及びロータの回転速度と関係付けられて損失電力Wmsysが規定されたマップ情報又は数式情報とに基づいて、損失電力Wmsysを算出してもよい。また、例えば、EVECU31は、車両10を構成する車輪の回転速度を検出する車輪速センサの検出値及び車両10の指令駆動力と、車輪の回転速度及び車両10の駆動力と関係付けられて損失電力Wmsysが規定されたマップ情報又は数式情報とに基づいて、損失電力Wmsysを算出してもよい。ここで、指令駆動力は、例えばユーザにより操作されるアクセル操作部材(例えばアクセルペダル)の操作量に基づいて算出されればよい。
【0057】
・車両10に備えられる電気負荷としては、DCDCコンバータ41、電動コンプレッサ42、補機インバータ43及びヒータ44の4つに限らず、例えば、これらの一部であってかつ少なくとも1つであってもよい。また、上記電気負荷としては、DCDCコンバータ41、電動コンプレッサ42、補機インバータ43及びヒータ44に限らず、他の電気負荷であってもよい。
【0058】
・インバータ21と蓄電池22とがDCDCコンバータを介して電気的に接続されていてもよい。DCDCコンバータは、蓄電池22の出力電圧を昇圧してインバータ21に供給したり、インバータ21からの電圧を降圧して蓄電池22に供給したりする。
【0059】
・蓄電装置としては、蓄電池に限らず、例えば大容量のキャパシタであってもよい。
【0060】
・制御装置が搭載される車両としては、走行動力源として回転電機のみを備える車両に限らず、走行動力源として回転電機に加えて内燃機関を備える車両であってもよい。この場合であっても、上記実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることはできる。
【0061】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…車両、20…回転電機、21…インバータ、22…蓄電池、31…EVECU、41…DCDCコンバータ、42…電動コンプレッサ。