IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

特許7452167電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
<>
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図1
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図2
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/047 20060101AFI20240312BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20240312BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20240312BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20240312BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G03G5/047
G03G5/147 504
G03G5/05 104B
G03G5/147
G03G21/18 114
G03G15/00 651
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020055093
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156974
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真宏
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 有杜
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-287286(JP,A)
【文献】特開2000-019765(JP,A)
【文献】特開2016-009078(JP,A)
【文献】特開2003-066641(JP,A)
【文献】特開2013-088714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
G03G 21/18
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下であり、
空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%以下である電子写真感光体。
【請求項2】
前記酸化防止剤の分子量が240以上350以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記分子量が240以上350以下である酸化防止剤が、分子内に2つ以上のベンゼン環を有する化合物である請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する、前記酸化防止剤の含有量が20質量%以上60質量%以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記最表面層に対する、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量が5質量%以上20質量%以下である請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、
帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、
帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、
前記工程を、下記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、
前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V以下である、
電子写真感光体。
(条件)
・測定環境:温度20℃/湿度40%RH
・帯電電位:+600V
・露光光量:10mJ/m
・露光波長:780nm
・除電光光源:ハロゲンランプ
・除電光波長:600nm以上800nm以下
・除電光光量:30mJ/m
・感光体の回転速度:66.7rpm
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブレードの、少なくとも前記電子写真感光体と接触する部分がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が180℃以上220℃以下の範囲に持つ部材で構成されている、
請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブレードの、少なくとも前記電子写真感光体と接触する部分がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が180℃以上220℃以下の範囲に持つ部材で構成されている、
請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が樹脂を含有し、かつ該感光層がフェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「導電性支持体上に少なくとも電荷発生材料を含有する電荷発生層、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を順次積層した感光層を有する感光体において、該電荷発生層は、電荷発生材料を含有し、該電荷輸送層は、非ハロゲン系溶媒に電荷輸送材料、硫黄原子を有するフェノール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤を含有する塗工液にて成膜されたものであることを特徴とする感光体。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-045858号公報
【文献】特開2004-102158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する電子写真感光体において、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が炭素数10あたり30個超過である、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%超過である、又は、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、下記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V超過である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性を向上する電子写真感光体を提供することである。
(条件)
・測定環境:温度20℃/湿度40%RH
・帯電電位:+600V
・露光光量:10mJ/m
・露光波長:780nm
・除電光光源:ハロゲンランプ
・除電光波長:600nm以上800nm以下
・除電光光量:30mJ/m
・感光体の回転速度:66.7rpm
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1>
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下であり、
空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%以下である電子写真感光体。
<2>
前記酸化防止剤の分子量が240以上350以下である前記<1>に記載の電子写真感光体。
<3>
前記分子量が240以上350以下である酸化防止剤が、分子内に2つ以上のベンゼン環を有する化合物である前記<2>に記載の電子写真感光体。
<4>
前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する、前記酸化防止剤の含有量が20質量%以上60質量%以下である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<5>
前記最表面層に対する、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量が5質量%以上20質量%以下である前記<4>に記載の電子写真感光体。
<6>
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有し、
前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下あり、
帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、
帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、
前記工程を、下記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、
前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V以下である、
電子写真感光体。
(条件)
・測定環境:温度20℃/湿度40%RH
・帯電電位:+600V
・露光光量:10mJ/m
・露光波長:780nm
・除電光光源:ハロゲンランプ
・除電光波長:600nm以上800nm以下
・除電光光量:30mJ/m
・感光体の回転速度:66.7rpm
<7>
前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<8>
前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブレードの、少なくとも前記電子写真感光体と接触する部分がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が180℃以上220℃以下の範囲に持つ部材で構成されている、
前記<7>に記載のプロセスカートリッジ。
<9>
前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
<10>
前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブレードの、少なくとも前記電子写真感光体と接触する部分がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が180℃以上220℃以下の範囲に持つ部材で構成されている、
前記<9>に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する電子写真感光体において、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり30個超過、又は、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%超過である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体が得られる。
【0008】
<2>に係る発明によれば、前記酸化防止剤の分子量が240未満又は350超過である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体が得られる。
【0009】
<3>に係る発明によれば、前記酸化防止剤が、分子内に1つのベンゼン環を有する化合物である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体が得られる。
【0010】
<4>に係る発明によれば、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する、前記酸化防止剤の含有量が20質量%未満又は60質量%超過である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体が得られる。
【0011】
<5>に係る発明によれば、前記最表面層に対する、前記フッ素含有樹脂粒子の含有量が5質量%未満又は20質量%超過である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体が得られる。
【0012】
<6>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する電子写真感光体において、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり30個超過、又は、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、前記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、前記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V超過である場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体が得られる。
【0013】
<7>又は<9>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有し前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が炭素数10あたり30個超過である、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%超過である、又は、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、前記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、前記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V超過である電子写真感光体を備えた場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置が得られる。
【0014】
<8>又は<10>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有し、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下であり、且つ、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%以下である(又は、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、前記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、前記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V以下である)電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置において、前記クリーニング部材の、少なくとも前記電子写真感光体と接触する部分がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が180℃以上220℃以下の範囲に持つ部材で構成されているである場合と比較して、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0017】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0018】
<電子写真感光体>
第一実施形態に係る電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する。
かつ、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下であり、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの前記酸化防止剤の重量減少量が40質量%以下である。
【0019】
第一実施形態に係る感光体は、上記構成により、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する。その理由は、次の通り推測される。
【0020】
感光体の耐摩耗性向上の目的で、感光体の最表面層にフッ素含有樹脂粒子を含有する方法が用いられている。炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子は、感光体の帯電性を高めるが、最表面層中に含有される酸化防止剤が含有するヒドロキシ基との水素結合を形成しにくい。そのため、フッ素含有樹脂粒子及び酸化防止剤の相互作用が低下し、酸化防止剤が昇華しやすくなり、繰り返し使用により最表面層中の酸化防止剤含有量が低下する。最表面層中に含まれる酸化防止剤は、最表面層中の成分の酸化を防止するだけでなく、電荷を補足する効果も有する。そのため、最表面層中の酸化防止剤の濃度が低下することで、感光体の帯電性が低下するということがあった。つまり、炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子を感光体の最表面層に含む感光体は、初期帯電性が良好であっても、繰り返し使用による帯電維持性が低下することがあった。
一方、第一実施形態に係る感光体は、最表面層に、炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子と共に、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの重量減少量が40質量%以下である酸化防止剤を含有させる。重量減少量が上記範囲内である酸化防止剤は、フッ素含有樹脂粒子との相互作用がなくても昇華しにくい特性を有する。よって、最表面層中の酸化防止剤の昇華による、電荷補足能の低下が抑制される。
【0021】
そのため、第一実施形態に係る感光体は、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上すると推測される。
【0022】
第二実施形態に係る感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する。
かつ、前記フッ素含有樹脂粒子が含有するカルボキシ基の個数が、炭素数10あたり0個以上30個以下であり、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、下記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V以下である。
(条件)
・測定環境:温度20℃/湿度40%RH
・帯電電位:+600V
・露光光量:10mJ/m
・露光波長:780nm
・除電光光源:ハロゲンランプ
・除電光波長:600nm以上800nm以下
・除電光光量:30mJ/m
・感光体の回転速度:66.7rpm
【0023】
第二実施形態に係る感光体は、上記構成により、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上する。その理由は、次の通り推測される。
【0024】
前述の様に、最表面層に炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する感光体は、感光体の初期帯電性が良好であっても、連続使用によって最表面層中の酸化防止剤含有量が低下し、それに伴い感光体の帯電性が低下するということがあった。
第二実施形態に係る炭素数10あたり0個以上30個以下のカルボキシ基を含有するフッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する感光体は、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、前記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、前記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V以下である。第二実施形態に係る感光体が前記条件を満たすことは、フッ素含有樹脂粒子との相互作用がなくても酸化防止剤が昇華しにくいことを意味し、例えば、第二実施形態で用いられる酸化防止剤は、空気雰囲気下、150℃、10分加熱したときの重量減少量が40質量%以下となりやすい。よって、最表面層中の酸化防止剤の昇華による、電荷補足能の低下が抑制される。
【0025】
そのため、第二実施形態に係る感光体は、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上すると推測される。
【0026】
以下、第一及び第二実施形態に係る感光体のいずれにも該当する感光体(以下「本実施形態に係る感光体」とも称する)について詳細に説明する。ただし、本発明の感光体の一例は、第一及び第二実施形態に係る感光体のいずれか一方に該当する感光体であればよい。
【0027】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照して説明する。
図1に示す電子写真感光体7Aは、例えば、導電性基体4上に、下引層1と電荷発生層2と電荷輸送層3とが、この順序で積層された構造を有する感光体7Aが挙げられる。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。
【0028】
なお、電子写真感光体7Aは、下引層1が設けられていない層構成であってもよい。
また、電子写真感光体7Aは、電荷発生層2と電荷輸送層3との機能が一体化した単層型感光層を有する感光体であってもよい。単層型感光層を有する感光体の場合、単層型感光層が最表面層を構成する。
また、電子写真感光体7Aは、電荷輸送層3上、又は単層型感光層上に、表面保護層を有する感光体であってもよい。表面保護層を有する感光体の場合、表面保護層が最表面層を構成する。
【0029】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0030】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0031】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0032】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0033】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0034】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0035】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0036】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0037】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0038】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0039】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0040】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0041】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0042】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0044】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0047】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0048】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0049】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0050】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0051】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0052】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0053】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0054】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0055】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0056】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0057】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0058】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0059】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0061】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0062】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0063】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0064】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0065】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0066】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0067】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0068】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0069】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0070】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0071】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0072】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0073】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0074】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0075】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5-263007号公報、特開平5-279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5-98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5-140472号公報、特開平5-140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4-189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0077】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004-78147号公報、特開2005-181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
【0078】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0079】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n-型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012-155282号公報の段落[0288]~[0291]に記載された化合物(CG-1)~(CG-27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0080】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0081】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0082】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0083】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0084】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0085】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0086】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0087】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0088】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0089】
電荷輸送層が最表面層である場合、電荷輸送層は、結着樹脂及び電荷輸送材料に加え、フッ素含有樹脂粒子と、酸化防止剤と、を含有する。
なお、電荷輸送層上に他の層(例えば保護層等)が設けられており、電荷輸送層が最表面層ではない場合は、電荷輸送層は少なくとも結着樹脂及び電荷輸送材料を含有していればよく、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。結着樹脂、電荷輸送材料、及びその他の添加剤については、電荷輸送層が最表面層である場合と同様である。
以下、最表面層である電荷輸送層に含有される成分について説明する。
【0090】
-結着樹脂-
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
ここで、結着樹脂の含有量は、例えば、感光層(電荷輸送層)の全固形分に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、50質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
【0091】
-電荷輸送材料-
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0093】
【化1】
【0094】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0095】
【化2】
【0096】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0097】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0098】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8-176293号公報、特開平8-208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0099】
-フッ素含有樹脂粒子-
フッ素含有樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマーの粒子、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種又は2種以上と非フッ素系のモノマー(つまり、フッ素原子を有さないモノマー)との共重合体の粒子が挙げられる。
【0100】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、VdF、TFE、CTFE、HFPなどが好ましい。
【0101】
一方、非フッ素系のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン;シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル;ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、ルキルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ビニルエステル、反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0102】
これらの中でも、フッ素含有樹脂粒子としては、フッ素化率の高い粒子が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などの粒子がより好ましく、PTFE、FEP、PFAの粒子が特に好ましい。
【0103】
フッ素含有樹脂粒子は、カルボキシル基の個数が炭素数10個あたり0個以上30個以下である。
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の個数を上記範囲にすることで、帯電性を向上することができる。
【0104】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の個数は、帯電性を向上する観点から、0個以上20個が好ましい。
【0105】
ここで、フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基は、例えば、フッ素含有樹脂粒子に含まれる末端カルボン酸に由来するカルボキシル基である。
【0106】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の量を低減する方法としては、1)粒子製造の過程で放射線を照射しない方法、2)放射線を照射する際に酸素が存在しない条件又は酸素濃度を低減した条件で行う方法等が挙げられる。
【0107】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の量は、特開平4-20507などに記載のように、次の通り測定する。
フッ素含有樹脂粒子をプレス機にて予備成型し、およそ0.1mm厚みのフィルムを作製した。作製したフィルムを赤外吸収スペクトルを測定した。フッ素含有樹脂粒子にフッ素ガスを接触させて作製したカルボン酸末端を完全にフッ素化したフッ素含有樹脂粒子についても赤外吸収スペクトルを測定し、両者の差スペクトルから次式によって末端カルボキシル基の個数(炭素数10個当たり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
カルボキシル基の吸収波数は3560cm-1、補正係数は440とする。
【0108】
ここで、フッ素含有樹脂粒子は、放射線を照射して得られる粒子(本明細書では、「放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子」とも称する)、重合法により得られる粒子(本明細書では、「重合型のフッ素含有樹脂粒子」とも称する)等が挙げられる。
【0109】
放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子(放射線を照射して得られるフッ素含有樹脂粒子)とは、放射線重合と共に粒状化したフッ素含有樹脂粒子、重合後のフッ素含有樹脂を放射線照射による分解で、低分量化かつ微粒化したフッ素含有樹脂粒子を示す。
放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子は、空気中での放射線の照射により、カルボン酸が多く生成するため、カルボキシル基も多く含有する。
【0110】
一方、重合型のフッ素含有樹脂粒子(重合法により得られるフッ素含有樹脂粒子)とは、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子を示す。
【0111】
フッ素含有樹脂粒子は、重合型のフッ素含有樹脂粒子がよい。重合型のフッ素含有樹脂粒子は、上述のように、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子である。
ここで、懸濁重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を懸濁した後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
また、乳化重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を、界面活性剤(つまり乳化剤)により乳化させた後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
特に、フッ素含有樹脂粒子は、製造工程において放射線照射を行われないで得られた粒子であることがよい。
ただし、フッ素樹脂粒子は、酸素が存在しない又は酸素濃度が低減された条件で放射線照射が行われた放射線照射型のフッ素樹脂粒子も適用してもよい。
【0112】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、特に制限はないが、0.2μm以上4.5μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がより好ましい。
【0113】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、次の方法により測定される値である。
SEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、フッ素含有樹脂粒子(一次粒子が凝集した二次粒子)の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値をフッ素含有樹脂粒子の平均粒径とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0114】
フッ素含有樹脂粒子の比表面積(BET比表面積)は、分散安定性の観点から、5m/g以上15m/g以下であることが好ましく、7m/g以上13m/g以下であることがより好ましい。
なお、比表面積は、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0115】
フッ素含有樹脂粒子の見掛密度は、分散安定性の観点から、0.2g/ml以上0.5g/ml以下であることが好ましく、0.3g/ml以上0.45g/ml以下であることがより好ましい。
なお、見掛密度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される値である。
【0116】
フッ素含有樹脂粒子の溶融温度は、300℃以上340℃以下であることが好ましく、325℃以上335℃以下であることがより好ましい。
なお、溶融温度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される融点である。
【0117】
感光体の帯電性を向上する観点から、フッ素含有樹脂粒子の含有量は、最表面層に対して5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0118】
-酸化防止剤-
本実施形態に係る感光体は、最表面層中に酸化防止剤を含有する。
酸化防止剤としては、例えば、電子写真感光体の内部または表面に存在する酸化性物質に対して、光、熱、放電などの条件下で酸素の作用を防止または抑制する性質を有する物質が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、ラジカル重合禁止剤、過酸化物分解剤等が挙げられる。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ジアリルアミン系酸化防止剤、ジアリルジアミン系酸化防止剤、ハイドロキノン系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤が挙げられる。過酸化物分解剤としては、有機硫黄系(例えばチオエーテル系)酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤が挙げられる。
【0119】
最表面層中に含有される酸化防止剤は、150℃、10分加熱したときの重量減少量が40質量%以下である。
酸化防止剤の重量減少量を上記範囲内とすることで、酸化防止剤の感光層中からの昇華が抑制される。
【0120】
酸化防止剤の感光層中からの昇華を抑制する観点から、150℃、10分加熱したときの酸化防止剤の重量減少量は0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0121】
重量減少量の測定は、酸化防止剤の質量を、150℃条件下で10分間加熱する前後において各々測定し、重量減少率を算出することで行う。
【0122】
酸化防止剤の重量減少量を上記範囲内とするためには、下記に記載する酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0123】
酸化防止剤の分子量は240以上350以下であることが好ましく、270以上350以下であることがより好ましく、300以上350以下であることが更に好ましい。
【0124】
酸化防止剤の分子量を上記範囲内とすることで、酸化防止剤が感光層中に含有された場合における、感光層中からの昇華が抑制されるため好ましい。
【0125】
酸化防止剤としては、分子内に2つ以上のベンゼン環を有する化合物であることが好ましい。
酸化防止剤が、分子内に2つ以上のベンゼン環を有することで、酸化防止剤が感光層中に含有された場合における、感光層中からの昇華が抑制されるため好ましい。
【0126】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール環を有する化合物である。
【0127】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール環は、例えば、炭素数4以上8以下のアルキル基(例えば炭素数4以上8以下の分岐状のアルキル基)が少なくとも一つ置換されたフェノール環である。より具体的には、ヒンダードフェノール環は、例えば、フェノール性水酸基に対してオルトの位置が三級アルキル基(例えばtert-ブチル基)で置換されたフェノール環である。
【0128】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、
1)ヒンダードフェノール環を1つ有する酸化防止剤、
2)ヒンダードフェノール環を2つ以上4つ以下有し、且つ直鎖又は分岐状の2価以上4価以下の脂肪族炭化水素基からなる連結基、又は2価以上4価以下の脂肪族炭化水素基の炭素-炭素の結合間に、エステル結合(-C(=O)O-)及びエーテル結合(-O-)の少なくとも一方が介在した連結基で、2つ以上4つ以下のヒンダードフェノール環が連結された酸化防止剤
3)2つ以上4つ以下のヒンダードフェノール環と、一つのベンゼン環(未置換、又はアルキル基等で置換された置換ベンゼン環)又はイソシアヌレート環とを有し、2つ以上4つ以下のヒンダードフェノール環が、各々、ベンゼン環又はイソシアヌレート環とアルキレン基を介して連結された酸化防止剤
等が挙げられる。
酸化防止剤の感光層中からの昇華を抑制する観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては前記2)又は3)であることが好ましい。
【0129】
具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、酸化防止剤の感光層中からの昇華を抑制する観点から、下記式(HP)で示される酸化防止剤が好ましい。
【0130】
【化3】
【0131】
式(HP)中、RH1、及びRH2は、各々独立に、炭素数4以上8以下の分岐状のアルキル基を表す。
H3、及びRH4は、各々独立に、水素原子、又は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。
H5は、炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。
【0132】
式(HP)中、RH1、及びRH2が表すアルキル基としては、炭素数4以上8以下(好ましくは炭素数4以上6以下)の分岐状のアルキル基が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、tert-ブチル基、tert-ペンチル基が好ましく、tert-ブチル基がより好ましい。
【0133】
式(HP)中、RH3、及びRH4としては、炭素数1以上10以下(好ましくは炭素数1以上4以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0134】
式(HP)中、RH5は、炭素数1以上10以下(好ましくは炭素数1以上4以下)の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表す。
直鎖状のアルキレン基として具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基等が挙げられる。
分岐状のアルキレン基として具体的には、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert-ペンチレン基、イソヘキシレン基、sec-ヘキシレン基、tert-ヘキシレン基、イソヘプチレン基、sec-ヘプチレン基、tert-ヘプチレン基、イソオクチレン基、sec-オクチレン基、tert-オクチレン基、イソノニレン基、sec-ノニレン基、tert-ノニレン基、イソデシレン基、sec-デシレン基、tert-デシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等の低級アルキレン基が好ましい。
【0135】
なお、式(HP)中、RH1、RH2、RH3、RH4、及びRH5が表す上記各置換基は、さらに置換基を有する基も含む。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子)、アルコキシ基(例えば炭素数1以上4以下のアルコキシ基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。
【0136】
式(HP)において、酸化防止剤の感光層中からの昇華を抑制する観点から、RH1、及びRH2がtert-ブチル基を表すことが好ましく、RH1、及びRH2がtert-ブチル基を表し、RH3、及びRH4が炭素数1以上3以下のアルキル基(特にメチル基)を示し、RH5が炭素数1以上4以下のアルキレン基(特にメチレン基)を表すことがより好ましい。
具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例示化合物(HP-3)で示されるヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0137】
以下に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0138】
【化4】
【0139】
【化5】
【0140】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0141】
酸化防止剤の感光層中からの昇華を抑制する観点から、フッ素含有樹脂粒子の含有量に対する、酸化防止剤の含有量は20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0142】
-添加剤、形成方法及び膜厚-
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0143】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0144】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0145】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0146】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0147】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0148】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0149】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0150】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0151】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0152】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0153】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0154】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0155】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0156】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0157】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0158】
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0159】
(帯電電位の差分△VH)
本実施形態に係る感光体は、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた感光体電気特性評価装置に組み込み、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で1サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH1とし、前記工程を、下記条件で100サイクル行い、帯電した後の帯電電位をVH2としたとき、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値が5V以下である。
本実施形態に係る感光体は、上記構成とすることで、酸化防止剤の感光層中からの昇華が抑制される。
【0160】
前記帯電電位の差分△VHの絶対値を上記範囲内とするためには、感光体の最表面層が、含有するカルボキシ基の個数が炭素数10あたり0個以上30個以下であるフッ素含有樹脂粒子と、150℃、10分加熱したときの重量減少量が40質量%以下である酸化防止剤と、を含有することが好ましい。
【0161】
感光体の初期帯電性及び繰り返し使用による帯電維持性向上の観点から、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値は4V以下であることがより好ましく、3.5V以下であることがより好ましい。
【0162】
感光体の前記帯電電位の差分△VHの絶対値の測定は下記の通りに行う。
感光体を、帯電装置、露光装置、及び除電装置を備えた富士ゼロックス(株)製の感光体電気特性評価装置に組み込む。帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で1サイクル行った後、さらに帯電を行い、感光体表面の帯電電位を測定し、その値をVH1とする。つづいて、帯電、露光、及び除電の一連の工程を、下記条件で合計100サイクル行った後、さらに帯電を行い、感光体表面の帯電電位を測定し、その値をVH2とするそして、前記VH1と、前記VH2の差分△VHの絶対値を算出する。
なお、感光体表面の帯電電位の測定は、感光体表面から1mm離れた位置の帯電電位を、表面電位計(トレック社製、トレック334)を使用して測定した。
【0163】
(条件)
・測定環境:温度20℃/湿度40%RH
・帯電電位:+600V
・露光光量:10mJ/m
・露光波長:780nm
・除電光光源:ハロゲンランプ(林時計工業(株)製)
・除電光波長:600nm以上800nm以下
・除電光光量:30mJ/m
・感光体の回転速度:66.7rpm
【0164】
<画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る感光体が適用される。
【0165】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0166】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0167】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0168】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0169】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0170】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0171】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0172】
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0173】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0174】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0175】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0176】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0177】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0178】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
【0179】
ここで、クリーニングブレード131の電子写真感光体7と接触する部分を含む領域を構成する部材を「接触部材」と称する。
また、クリーニングブレード131が、前記接触部材と該接触部材以外の領域とがそれぞれ異なる材料にて構成されている場合には、接触部材以外の領域を構成する部材を「非接触部材」と称する。非接触部材は、1種の材料で構成されていても材料の異なる2種以上の部材から構成されていてもよい。
なお、本実施形態のクリーニングブレード131は前記接触部材のみからなっていてもよい。
【0180】
クリーニングブレード131は、少なくとも、電子写真感光体7と接触する部分(つまり接触部材)がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が180℃以上220℃以下の範囲に持つ部材で構成されていることが好ましい。
【0181】
クリーニングブレード131の、少なくとも接触部材がポリウレタンゴムを含有し、かつ示差走査熱量測定による吸熱ピークトップ温度が上記範囲内となることで、適度にポリウレタンの高結晶性が付与され、クリーニングブレードの耐摩耗性が向上する。その結果、感光体が表層側から適度に削られることで僅かに昇華した酸化防止剤のリフレッシュ性が高まるため好ましい。
【0182】
吸熱ピークトップ温度(溶融温度)の下限値は、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることが更に好ましい。吸熱ピークトップ温度(溶融温度)の上限値は、215℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることが更に好ましい。
【0183】
クリーニングブレード131の、吸熱ピークトップ温度の測定はASTM D2418-99に準じて行う。
測定には、パーキンエルマー社製Diamond-DSCを使用し、装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の溶融温度を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空のパンをセットし測定を行う。このときのDSCでの測定の際の昇温速度は3℃/mimとし、測定温度範囲は20℃から250℃とする。
【0184】
吸熱ピークトップ温度を上記範囲に制御する方法としては、例えば、ポリウレタンにおけるハードセグメント凝集体をより成長させる方法が挙げられる。具体的には、ポリウレタンにおける架橋構造の形成の際に化学架橋(架橋剤による架橋)よりも物理架橋(ハードセグメント同士の水素結合による架橋)がより効率的に進行するよう調整することで、ハードセグメント凝集体がより成長しやすい環境となる。尚、ポリウレタンの重合の際に重合温度を低く設定するほど熟成時間が長くなり、その結果物理架橋がより多く進行する傾向にある。
ここで「ハードセグメント」とは、ポリウレタンゴム材料中で、相対的に硬い材料を指す。一方、「ソフトセグメント」とは、ポリウレタンゴム材料中で、相対的に柔らかい材料を指す。
【0185】
ポリウレタンゴムは、通常ポリイソシアネートとポリオールとを重合することで合成される。また、ポリオール以外にイソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂を用いてもよい。尚、ポリウレタンゴムはハードセグメントとソフトセグメントとを有していることが好ましい。
【0186】
ハードセグメントを構成する材料(ハードセグメント材料)とソフトセグメントを構成する材料(ソフトセグメント材料)との組み合わせとしては、特に限定されず、一方が他方に対して相対的に硬く、他方が一方に対して相対的に柔らかい組み合わせとなるよう公知の樹脂材料から選択し得るが、本実施形態においては、以下の組み合わせが好適である。
【0187】
・ソフトセグメント材料
まず、ソフトセグメント材料としては、ポリオールとして、ジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、ジオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。なお、ソフトセグメント材料として用いられる上記ポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル社製のプラクセル205やプラクセル240などが挙げられる。
【0188】
・ハードセグメント材料
また、ハードセグメント材料としては、イソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂を用いることが好ましい。また、柔軟性のある樹脂であることが好ましく、柔軟性の点から直鎖構造を有する脂肪族系の樹脂であることがより好ましい。具体例としては、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂や、2つ以上のヒドロキシル基を含むポリブタジエン樹脂、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
【0189】
ハードセグメント材料およびソフトセグメント材料を用いる場合、ハードセグメント材料およびソフトセグメント材料の総量に対するハードセグメントを構成する材料の質量比(以下「ハードセグメント材料比」と称す)が10質量%以上30質量%以下の範囲内であることが好ましく、13質量%以上23質量%以下の範囲内であることがより好ましく、15質量%以上20質量%以下の範囲内であることが更に好ましい。
ハードセグメント材料比が、10質量%以上であることにより、耐摩耗性が得られ、長期に渡って良好なクリーニング性が維持される。一方、ハードセグメント材料比が30質量%以下であることにより、硬くなり過ぎることがなく、柔軟性や伸張性が得られ、欠けの発生が抑制されて、長期に渡って良好なクリーニング性が維持される。
【0190】
・ポリイソシアネート
ポリウレタンゴムの合成に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,6-ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)および3,3-ジメチルフェニル-4,4-ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
尚、求められる大きさ(粒子径)のハードセグメント凝集体の形成し易さという点から、ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)がより好ましい。
【0191】
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂100質量部に対する配合量は、20質量部以上40質量部以下が好ましく、更には20質量部以上35質量部以下がより好ましく、20質量部以上30質量部以下が更に好ましい。
20質量部以上であることにより、ウレタン結合量が多く確保されてハードセグメント成長し、求められる硬度が得られる。一方40質量部以下であることにより、ハードセグメントが大きくなり過ぎず、伸張性が得られ、クリーニングブレードの欠けの発生が抑制される。
【0192】
・架橋剤
架橋剤としては、ジオール(2官能)、トリオール(3官能)、テトラオール(4官能)等が挙げられ、これらを併用してもよい。また、架橋剤としてアミン系化合物を用いてもよい。尚、3官能以上の架橋剤を用いて架橋されたものであることが好ましい。3官能の架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0193】
架橋剤のイソシアネート基に対して反応し得る官能基を有する樹脂100質量部に対する配合量は2質量部以下が好ましい。2質量部以下であることにより、分子運動が化学架橋で拘束されることなく、熟成によるウレタン結合由来のハードセグメントが大きく成長し、求められる硬度が得やすくなる。
【0194】
・ポリウレタンゴムの製造方法
本実施形態における前記接触部材を構成するポリウレタンゴム部材の製造は、プレポリマー法やワンショット法など、ポリウレタンの一般的な製造方法が用いられる。プレポリマー法は強度、耐摩耗性に優れるポリウレタンが得られるため本実施形態には好適であるが、製法により制限されるものではない。
【0195】
尚、接触部材における吸熱ピークトップ温度(溶融温度)を前記範囲に制御する手段としては、ポリウレタン部材の結晶性を高めつつ且つ適正な範囲に制御する方法が挙げられ、例えばポリウレタンにおけるハードセグメント凝集体をより成長させる方法が挙げられる。具体的には、ポリウレタンにおける架橋構造の形成の際に化学架橋(架橋剤による架橋)よりも物理架橋(ハードセグメント同士の水素結合による架橋)がより効率的に進行するよう調整する方法が挙げられ、ポリウレタンの重合の際に重合温度を低く設定するほど熟成時間が長くなり、その結果物理架橋がより多く進行する傾向にある。
【0196】
かかるポリウレタンゴム部材は、上述したポリオールに、イソシアネート化合物および架橋剤等を配合して、分子配列のムラが抑制され得る成形条件で成形する。
具体的には、ポリウレタン組成物を調整する際に、ポリオールやプレポリマーの温度を低くしたり、硬化・成形の温度を低くしたりすることにより、架橋の進行が遅くなるよう調整する。これらの温度(ポリオールやプレポリマーの温度、硬化・成形の温度)を低く設定して反応性を下げることにより、ウレタン結合部が凝集し、ハードセグメントの結晶体が得られるので、ハードセグメント凝集体の粒子径が求められる結晶径となるよう温度を調整する。
これにより、ポリウレタン組成物に含まれる分子が並んだ状態となり、DSCを測定した際に、結晶融解エネルギーの吸熱ピークトップ温度が前記範囲の結晶体を含むポリウレタンゴム部材が成形される。
なお、ポリオール、ポリイソシアネート、および架橋剤の量や、架橋剤の比率等は求められる範囲に調整する。
【0197】
尚、クリーニングブレードの成形は、上記方法により調製されたクリーニングブレード形成用の組成物を、例えば、遠心成形や押し出し成形等を利用して、シート状に形成し、切断加工等を施すことにより作製される。
【0198】
本実施形態における前記ポリウレタンゴム部材の重量平均分子量は、1000乃至4000の範囲内であることが好ましく、1500乃至3500の範囲内であることがより好ましい。
【0199】
(非接触部材)
本実施形態のクリーニングブレードにおける非接触部材は、特に限定されずに公知の如何なる材料をも用い得る。
【0200】
非接触部材に用いられる材料としては、例えば、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中で、ポリウレタンゴムがよい。ポリウレタンゴムとしては、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタンが挙げられ、特にエステル系ポリウレタンが好ましい。
【0201】
尚、ポリウレタンゴムを製造する際には、ポリオールとポリイソシアネートとを用いる方法がある。
ポリオールとしては、ポリテトラメチルエーテルグリコール、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。中でもMDIが好ましい。
更に、ポリウレタンを硬化させる硬化剤として、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコールやこれらの混合物などの硬化剤が挙げられる。
【0202】
具体例を一例挙げて説明すると、例えば脱水処理したポリテトラメチルエーテルグリコールにジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネートを混入し反応させ生成したプレポリマーに、硬化剤として1,4-ブタジオールおよびトリメチロールプロパンを併用したものを用いることが好ましい。尚、反応調整剤等の添加剤を添加してもよい。
【0203】
非接触部材の作製方法は、作製に用いる原材料に応じて、従来公知の方法が利用され、例えば、遠心成形や押し出し成形等を利用して形成し、定められた形状に切断加工等することにより作製される。
【0204】
(クリーニングブレードの製造)
クリーニングブレードが接触部材及び非接触部材からなる場合、接触部材としての第一層および非接触部材としての第二層(3層以上の層構成である場合には複数の層)を、相互に貼り合わせることによりクリーニングブレードが作製される。上記貼り合わせる方法としては、両面テープ、各種接着剤等が好適に用いられる。また、成型時に時間差を置いて各層の材料を金型に流し込み、接着層を設けずに材料間で結合させることによって複数の層を接着してもよい。
【0205】
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0206】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0207】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0208】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例
【0209】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0210】
<フッ素含有樹脂粒子の製造>
(フッ素含有樹脂粒子(1)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
オートクレーブに、脱イオン水3リットルおよびパーフルオロオクタン酸アンモニウム3.0g、さらに乳化安定剤としてパラフィンワックス(日本石油(株)製)110gを仕込み、窒素で3回、TFE(テトラフルオロエチレン)で2回系内を置換して酸素を取り除いた後、TFEで内圧を1.0MPaにして、250rpmで撹拌しながら、内温を70℃に保った。つぎに、連鎖移動剤として常圧で150cc分のエタンおよび重合開始剤である300mgの過硫酸アンモニウムを溶かした20mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。反応中は、系内の温度を70℃に保ち、オートクレーブの内圧は常に1.0±0.05MPaに保つように連続的にTFEを供給した。開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが1000gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、反応を終了した。その後遠心分離により粒子を分離し、更にメタノール400質量部を採取し超音波を照射しながら攪拌機250rpmにて10分洗浄し、上澄みをろ過した。本操作を3回繰り返した後、ろ過物を減圧下60度、17時間乾燥させた。
以上の工程を経て、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
【0211】
(フッ素含有樹脂粒子(C1)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(C1)を製造した。
市販のホモポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ASTM D 4895(2004)に準拠して測定した標準比重2.175)100質量部、添加剤としてエタノール2.4質量部をバリアナイロン製の袋に添加した。その後、空気中、室温にてコバルト-60γ線を150kGy照射し、低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得た。得られた粉末を粉砕し、フッ素含有樹脂粒子(C1)を得た。
【0212】
<クリーニングブレードの製造>
(クリーニングブレード(1)の製造)
次の通り、クリーニングブレード(1)を製造した。
まず、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル社製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)およびポリカプロラクトンポリオール(ダイセル社製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)と、をポリオール成分のソフトセグメント材料として用いた。また、2つ以上のヒドロキシル基を含むアクリル樹脂(綜研化学社製、アクトフローUMB-2005B)をハードセグメント材料として用い、上記ソフトセグメント材料およびハードセグメント材料を8:2(質量比)の割合で混合した。
次に、このソフトセグメント材料とハードセグメント材料との混合物100部に対して、イソシアネート化合物として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMT)を6.26部加えて、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させた。尚、この反応で使用したイソシアネート化合物量は、反応系に含まれる水酸基に対するイソシアネート基の比(イソシアネート基/水酸基)が0.5となるよう選択したものである。
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3部加え、窒素雰囲気下で70℃で3時間反応させて、プレポリマーを得た。尚、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56部であった。
次に、このプレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した。その後、プレポリマー100部に対して、1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比=60/40)を7.14部加え、3分間泡をかまないように混合し、クリーニングブレード形成用組成物A1を調製した。
次いで、140℃に金型を調整した遠心成形機に上記クリーニングブレード形成用組成物A1を流し込み、1時間硬化反応させた。次いで、110℃で24時間熟成加熱し、冷却した後カットし、クリーニングブレード(1)(表2中「BLD1」と表記)を得た。
【0213】
(クリーニングブレード(2)の製造)
次の通り、クリーニングブレード(2)を製造した。
クリーニングブレード1の作製において、熱成加熱温度を75℃に変更した以外は、クリーニングブレード(1)と同様に、クリーニングブレード(2)(表2中「BLD2」と表記)を得た。
【0214】
(クリーニングブレード(3)の製造)
次の通り、クリーニングブレード(3)を製造した。
クリーニングブレード(1)の作製において、熱成加熱温度を75℃に、熱成加熱時間を32時間に変更した以外は、クリーニングブレード(1)と同様に、クリーニングブレード(3)(表2中「BLD3」と表記)を得た。
【0215】
(クリーニングブレード(4)の製造)
次の通り、クリーニングブレード(4)を製造した。
クリーニングブレード(1)の作製において、熱成加熱温度を75℃に、1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物の重量比を70/30に変更した以外は、クリーニングブレード(1)と同様に、クリーニングブレード(4)(表2中「BLD4」と表記)を得た。
【0216】
(クリーニングブレード(5)の製造)
次の通り、クリーニングブレード(5)を製造した。
クリーニングブレード(1)の作製において、ソフトセグメント材料を1,9-ノナンジオールとアジピン酸とから得た分子量2000の1,9-NDアジペートに変更した以外は、クリーニングブレード(1)と同様に、クリーニングブレード(5)(表2中「BLD5」と表記)を得た。
【0217】
<実施例1>
(感光体の作製)
次の通り感光体を作製した。
【0218】
酸化亜鉛:(平均粒径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBE503:信越化学工業社製)1.4部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5部とブチラール樹脂 (エスレックBM-1、積水化学工業社製)15部とメチルエチルケトン85部とを混合し混合液を得た。この混合液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社):30部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、円筒状アルミニウム基材上に塗布し、170℃、30分の乾燥硬化を行い厚さ24μmの下引層を得た。
【0219】
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM-5、積水化学工業社製)1部及び酢酸n-ブチル80部と混合し、これをガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間分散処理することにより電荷発生層用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層が形成された導電性基体上に浸漬塗布し、130℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0220】
電荷輸送材料として下記式(CTM1)で表されるベンジジン化合物45部、結着樹脂として下記式(PCZ1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)55部をトルエン350部、テトラヒドロフラン150部に溶解させ、フッ素含有樹脂粒子(1)11.2部、及び酸化防止剤(Add1)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である式(HP-2)で表される化合物(アデカスタブAO-20、Adeka社製)3部加え、高圧ホモジナイザーで5回処理して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、130℃、45分の加熱を行い膜厚31μmの電荷輸送層を形成した。
【0221】
【化6】

【0222】
【化7】

【0223】
以上の工程を経て、各感光体を作製した。
【0224】
(プロセスカートリッジの作製)
作製した感光体を、画像形成装置(DocuCentre-V C7775、富士ゼロックス社製)の、クリーニングブレード(1)を備えるプロセスカートリッジに装着し、プロセスカートリッジを得た。
【0225】
<実施例2~17、比較例1~8>
フッ素含有樹脂粒子の種類及び添加量、酸化防止剤の種類及び添加量、並びに、クリーニングブレードの種類を表1及び表2記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体及びプロセスカートリッジを作製した。
【0226】
<評価>
(潤滑性評価)
各例で得られた感光体の最表面層について、下記測定条件のHEIDON抵抗力測定法にて30回連続で摩擦係数を測定し、10回目から20回目の測定値の平均を算出した。なお、摩擦係数は針の動的なものを測定している。摩擦係数の測定に使用した測定機器名は以下の通りである。
新東科学株式会社製TRIBOGEAR(過重変動型摩擦摩耗試験システム):TYPEHHS2000(標準解析ソフト使用)
・測定条件
針の材質:ダイアモンド、針の先端形状:R=0.2mm、過重:20g、針の接触角度:90°(感光体表面に対して垂直方向)、針の移動距離:片道10mmで往復、往復回数:30回
-潤滑性評価基準-
A(○):0.6未満
B(△):0.6以上0.7未満
C(×):0.7以上
【0227】
(△VHの絶対値測定)
富士ゼロックス(株)製の感光体電気特性評価装置に、各例で得られた感光体を組み込み、前記VH1と、前記VH2との差分△VHの絶対値を、前記記載の手順で測定した。
【0228】
(実機評価)
-評価用画像形成装置-
各例で得られたプロセスカートリッジを、富士ゼロックス社製 DocuCentre-V C7775に装着した。また、表面電位計(トレック社製、トレック334)を用いて、感光体の表面から1mm離れた位置に測定対象の領域に表面電位プローブを設けた。
この装置を下記初期帯電性及び帯電維持性評価用画像形成装置とした。
【0229】
(初期帯電性評価)
評価用画像形成装置により、帯電後の表面電位を-700Vに設定した後、高温高湿環境下(温度28℃、湿度85%RHの環境下)で、A4用紙に画像濃度30%の全面ハーフトーン画像を1枚出力した。そして、表面電位計により表面電位を測定し、下記評価基準で評価した。
A(○):表面電位が-700V以上-680V未満
B(△):表面電位が-680V以上-660V未満
C(×):表面電位が-660V以上
【0230】
(帯電維持性評価)
評価用画像形成装置により、帯電後の表面電位を-700Vに設定した後、高温高湿環境下(温度28℃、湿度85%RHの環境下)で、A4用紙に画像濃度30%の全面ハーフトーン画像を70,000枚出力した。そして、表面電位計により表面電位を測定し、下記評価基準で評価した。
A(○):表面電位が-700V以上-680V未満
B(△):表面電位が-680V以上-660V未満
C(×):表面電位が-660V以上
【0231】
以下、下記表中の記載について説明する。
酸化防止剤種「Add1」は、式(HP-2)で表される化合物(アデカスタブAO-20、Adeka社製)を表す。
酸化防止剤種「Add2」は、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール(品名:Sumilizer MDP-S、住友化学社製)(式(HP-3)で表される化合物)を表す。
酸化防止剤種「Add3」は、Tris(nonylphenyl)phosphite(品名:Sumilizer TNP、住友化学社製)を表す。
酸化防止剤種「Add4」は、ブチルヒドロキシアニソールを表す。
酸化防止剤種「Add5」は、ジブチルヒドロキシトルエンを表す。
酸化防止剤種「Add6」は、化合物名称:2-Phenylethyl(E)-Cinnamate(東京化成工業社製)を表す。
「-」はフッ素含有樹脂粒子を含有しないこと、又は、フッ素含有樹脂粒子を含有しないため該当する項目の数値を算出できないことを示す。
フッ素含有樹脂粒子の「含有量 対電荷輸送層 (質量%)」は、電荷輸送層に対する、フッ素含有樹脂粒子の含有量を表し、単位は質量%である。
酸化防止剤の「含有量 対粒子 (質量%)」は、電荷輸送層に含有されるフッ素含有樹脂粒子の含有量に対する、酸化防止剤の含有量を表し、単位は質量%である。
酸化防止剤の「ベンゼン環数」は、酸化防止剤1分子が有するベンゼン環の個数を表す。
「|△VH|(V)」は、VH1と、VH2の差分△VHの絶対値を表す。
【0232】
【表1】
【0233】
【表2】
【0234】
上記結果から、本実施例の感光体は、初期帯電性が良好で繰り返し使用による帯電維持性が向上することがわかる。
【符号の説明】
【0235】
1下引層、2電荷発生層、3電荷輸送層、4導電性基体、7A,7電子写真感光体、8帯電装置、9露光装置、11現像装置、13クリーニング装置、14潤滑剤、40転写装置、50中間転写体、100画像形成装置、120画像形成装置、131クリーニングブレード、132繊維状部材(ロール状)、133繊維状部材(平ブラシ状)、300プロセスカートリッジ
図1
図2
図3