(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】水中油型乳化油脂組成物、ミンチ肉加工冷凍食品
(51)【国際特許分類】
A23D 7/005 20060101AFI20240312BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240312BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240312BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20240312BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A23D7/005
A23L29/256
A23L29/269
A23L13/60 Z
A23B4/06 501B
(21)【出願番号】P 2020055162
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠文
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-000118(JP,A)
【文献】特開2007-185148(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-7/06
A23L 29/00-29/30
A23L 13/00-13/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)を含むミンチ肉加工冷凍食品用の水中油型乳化油脂組成物。
(A)寒天
(B)脱アシル型ジェランガム
【請求項2】
請求項1に記載の水中油型乳化油脂組成物を含有する、ミンチ肉加工冷凍食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミンチ肉加工冷凍食品用の水中油型乳化油脂組成物およびミンチ肉加工冷凍食品に関する。より詳しくは、本発明の水中油型乳化油脂組成物は優れた耐熱性と硬さを有するが、冷凍解凍を経ることによりゲルおよび乳化が壊れることを特徴とすることで、ミンチ肉加工冷凍食品にジューシー感と肉粒感を与えることができる水中油型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグや肉団子等のミンチ肉加工品は、通常、ミンチ肉を主原料とし、玉ねぎ等の野菜や、パン粉等のつなぎ、調味料などを混合し、次いでフライパン等で加熱されることにより製造される。ミンチ肉加工品は、喫食時に肉が過度に練られたり柔らかくなったりせずに肉粒感があり、なおかつ肉の粒と粒の間から水分と油分を含む肉汁が溢れ出るジューシー感が求められる。
近年、共働き世帯の増加や高齢化などを要因として、簡便に調理が可能である冷凍食品の市場が拡大しており、ミンチ肉加工品においても冷凍食品の利用が盛んである。ミンチ肉加工品を冷凍して流通販売するミンチ肉加工冷凍食品は、通常、食品工場においてミンチ肉加工品と同様に種を製造した後、鉄板やオーブンなどを使用して焼成(一次加熱)した製品を冷凍もしくは真空包装後、冷凍状態で冷凍食品として流通販売される。その後、これらのミンチ肉加工冷凍食品は業務用、家庭用を問わず、電子レンジや熱湯等での解凍や、フライパンで焼く等の加熱処理(二次加熱)を経て、喫食される。
しかしながら、これらのミンチ肉加工冷凍食品は、加熱工程が繰り返されることで、ミンチ肉加工食品の肉汁が流出してしまい、食感がボソボソとしたものとなり、ミンチ肉加工品が本来持つジューシー感が失われてしまうことが課題であった。そこで、これまでミンチ肉加工冷凍食品にジューシー感を付与する様々な方法が提案されてきた。
【0003】
特許文献1には水中油型乳化油脂をミンチ肉加工品に添加することでジューシー感を付与する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、乳化物が液状であるため、ミンチ肉加工冷凍食品に添加した場合、肉が乳化物を吸収することで柔らかくなり、肉粒感が低下してしまうばかりではなく、乳化物が肉に吸収されているために得られるジューシー感も不十分であった。また、二次加熱後でも練りこんだ乳化物が乳化状態を維持するため、喫食時に白濁した乳化液が流れ出すなどして、透明感のある自然な肉汁によるジューシー感が得られなく、さらなる改善が求められている。また、特許文献2には、複数加熱後にもジューシー感と肉粒感を得るために、増粘剤としてグルコマンナンを使用した食品素材を練りこむ方法が開示されている。しかしながら、この食品素材は、ミンチ肉加工冷凍食品に練りこむ際にはペースト状であるため、肉に吸収されてしまい、肉粒感の低下を防ぐことができなない。また、肉汁は透明感があるものの、ジューシー感に関しては十分な肉汁の量が得られない。
特許文献3には、カット肉を使用することで肉粒感を得る方法が開示されている。しかしながら、肉汁の流出を防ぐことはできないため、ジューシー感の損失を補うことはできない。このように、従来の技術では肉粒感を損なうことなく、ジューシー感があり、肉汁に透明感があるミンチ肉加工冷凍品を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-103632号公報
【文献】特開2005-113号公報
【文献】特開2004-121052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、肉粒感を損なうことなく、ジューシー感があり、肉汁は透明感があるミンチ肉加工冷凍食品を提供することであり、また、このようなミンチ肉加工冷凍食品を得るための水中油型乳化油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、寒天、および脱アシル型ジェランガムを配合した水中油型乳化油脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の[1]~[2]である。
[1]
以下の成分(A)、(B)を含むミンチ肉加工冷凍食品用の水中油型乳化油脂組成物。
(A)寒天
(B)脱アシル型ジェランガム
[2]
前記[1]に記載の水中油型乳化油脂組成物を含有する、ミンチ肉加工冷凍食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、肉粒感を損なうことなく、ジューシー感があり、肉汁は透明感があるミンチ肉加工冷凍食品を提供することができる。また、このようなミンチ肉加工冷凍食品を得るための水中油型乳化油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水中油型乳化油脂組成物は(A)寒天、(B)脱アシル型ジェランガムを含有する。本発明の水中油型乳化油脂組成物によれば、(A)寒天によって硬さが付与され、さらに(B)脱アシル型ジェランガムを含有することで寒天によるゲルに耐熱性を付与することができる。本発明の水中油型乳化油脂組成物を含むミンチ肉加工冷凍食品では、一次加熱時には本発明の水中油型乳化油脂組成物のゲルおよび乳化が破壊されず、冷凍および二次加熱によりゲル及び乳化が破壊される。そのため、一次加熱時にはドリップが抑制され焼成歩留が向上し、さらに、二次加熱後の喫食時には、局所的に透明感のある肉汁が放出され、ジューシー感が強く感じられる。また、水中油型乳化油脂組成物は肉に吸収されずパテ中に粒子状態で局在化しているため、肉が柔らかくならず、喫食時に肉粒感が維持される。
【0009】
以下に、各成分等について詳細に説明する。
[(A)寒天]
寒天は、テングサ属やオゴノリ属などの紅藻海藻を主原料とし抽出された、アガロースとアガロペクチンを含有する多糖類である。本発明で使用できる寒天は、通常市販されているものを用いることができる。本発明の水中油型乳化油脂組成物における寒天の含有量は寒天のゼリー強度により異なる。例えば、後述の日寒水式測定法により測定したゼリー強度がa(g/cm2)である場合、本発明の水中油型乳化油脂組成物における寒天の含有量は、例えば、a×(-4.0)×10-4+0.8~a×(-4.0)×10-4+2.8質量%であり、好ましくは、a×(-4.0)×10-4+0.9~a×(-4.0)×10-4+2.3質量%、より好ましくは、a×(-4.0)×10-4+1~a×(-4.0)×10-4+1.8質量%である。例えばゼリー強度が、高強度である1800g/cm2の場合、本発明の水中油型乳化油脂組成物における寒天の含有量は、例えば0.1~2.1質量%であり、好ましくは0.2~1.6質量%、より好ましくは0.3~1.1質量%である。高強度の寒天としては、例えば超高強度寒天カリコリカン(ゼリー強度:1800g/cm2、伊那食品工業(株))等が挙げられる。中強度の寒天としては、例えば伊那寒天UP-37(ゼリー強度:700g/cm2、伊那食品工業(株))等が挙げられる。低強度の寒天としては、例えばウルトラ即溶性寒天UX-200(ゼリー強度:200g/cm2、伊那食品工業(株))等が挙げられる。
【0010】
本発明における寒天のゼリー強度は、日寒水式測定法により、寒天1.5%水溶液を20℃で15時間放置し、凝固させたゲルの硬さを測定し、寒天ゲルの表面1cm2あたり20秒間耐える最大重量(g)である。
なお、本明細書において、高強度の寒天とは、ゼリー強度が1200g/cm2以上の寒天であり、中強度の寒天とは、ゼリー強度が300g/cm2以上、1200g/cm2未満の寒天であり、低強度の寒天とは、ゼリー強度が300g/cm2未満の寒天である。
【0011】
本発明において、寒天は水中油型乳化油脂組成物に硬さを付与する目的で用いられる。寒天により硬さが付与された水中油型乳化油脂組成物は、ミンチ肉加工冷凍食品の製造時に肉に吸収されず、粒子状態で局在化するため、肉粒感が低下しない。一方、寒天のみを使用した場合では、一次焼成時に溶解してドリップするため、効果を得ることができない。
【0012】
[(B)脱アシル型ジェランガム]
脱アシル型ジェランガムはSphingomonas elodeaが産出する多糖類であり、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4つの糖分子を構成単位とする直鎖状の高分子である。本発明で使用できる脱アシル型ジェランガムは通常市販されているものを用いることができる。脱アシル型ジェランガムの含有量は、例えば0.1~1質量%であり、好ましくは0.12~0.5質量%、より好ましくは0.15~0.3質量%である。脱アシル型ジェランガムとしては、例えばケルコゲル(三栄源エフ・エフ・アイ(株))、ゲルアップK-S(三栄源エフ・エフ・アイ(株))等が挙げられる。
【0013】
本発明において、脱アシル型ジェランガムは主に水中油型乳化油脂組成物に耐熱性を付与する目的で用いられる。脱アシル型ジェランガムのみを使用した場合では、十分な硬さを得ることができず効果が得られないが、(A)寒天と併用することにより、水中油型乳化油脂組成物の硬さを補強するだけでなく、一次焼成で溶解しない優れた耐熱性が得られる。また、(A)寒天および(B)脱アシル型ジェランガムを使用したゲルは冷凍解凍により変性し、破壊される。このため、ミンチ肉加工冷凍食品に使用した場合、二次加熱後の喫食時にゲルから水分と油分が放出されることで、ミンチ肉加工冷凍食品にジューシー感を付与することができる。
【0014】
[食用油脂]
本発明の水中油型乳化油脂組成物には食用油脂が用いられる。本発明に使用する食用油脂は、食用に適したものであれば特に制限されないが、具体的にはパーム油、ナタネ油、大豆油、綿実油、コーン油、ヤシ油、パーム核油、等の天然の植物油脂;牛脂、豚脂、魚油、乳脂、等の天然の動物油脂;またはこれら単独あるいは組み合わせの硬化油、極度硬化油、分別油、エステル交換油が挙げられる。これらの油脂は目的に応じて適宜選択され、1種類または2種類以上を任意に組み合わせても良い。好ましくは、ハンバーグが冷めても油が固まらなくおいしさが得られることから、融点25℃以下の食用油脂が好ましい。食用油脂の含有量は、例えば2.5~75質量%であり、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~65%である。
【0015】
[乳化剤]
本発明には水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性の制御のために乳化剤を使用することができる。本発明に使用する乳化剤は、水中油型乳化に適するものであれば特に制限されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0016】
[塩類]
本発明には、脱アシル型ジェランガムをゲル化させるために、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、またはカリウム塩等のアルカリ金属塩などの塩類が用いられる。
脱アシル型ジェランガムは、カチオンの添加により、脱アシル型ジェランガムに含まれるカルボキシル基の電荷による電気的反発が抑制され、ゲル化する。1価のカチオンを添加した場合、カルボキシル基の電荷を打ち消すことで、脱アシル型ジェランガムの分子鎖が集合してゲル化する。2価のカチオンを添加した場合、カチオンがカルボキシル基同士を架橋させることで強くゲル化する。
本発明に用いられる塩類は、好ましくは、カルシウム塩である。カルシウム塩としては、例えば、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
脱アシル型ジェランガムは、2価のカチオンと反応した場合、品温が約40℃を下回るとゲル化が開始される。ゲル化が開始されてからも攪拌を続けると、ゲルが十分に形成されず、耐熱性が低下する。
【0017】
水中油型乳化油脂組成物における塩類の添加量は、特に制限されないが、例えば、0.01~5質量%であり、好ましくは0.05~1質量%である。
また、脱アシル型ジェランガムの含有量に対する塩類の含有量の比(塩類/脱アシル型ジェランガム)は、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.2~1である。脱アシル型ジェランガムと塩類の含有量の比を調整することにより、寒天によるゲルの耐熱性を向上しつつ、二次加熱によるゲル及び乳化が破壊されるという作用をより一層発揮することができる。また、水中油型乳化油脂組成物の粘度を向上し、乳化状態の保存安定性を高めることができる。
【0018】
本発明には、上記成分のほかにその他の添加剤として糖類、保存料、pH調整剤、色素、フレーバー、油溶性または水溶性エキスなど、水中油型乳化油脂組成物またはミンチ肉加工冷凍食品に用いる添加物を含むことができる。
【0019】
<水中油型乳化油脂組成物>
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、一般的な水中油型乳化油脂組成物を製造する要領で行うことができる。すなわち水相部の調製、油層部の調製、乳化、殺菌または滅菌、均質化、冷却といった製造工程である。殺菌方法は、バッチ殺菌またはUHT等による殺菌等が挙げられる。均質化する機械はホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、カッターミキサー等が挙げられる。均質化後、冷却工程によりゲル化させることで本発明の水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。
【0020】
乳化工程では、水相部に(A)寒天及び(B)脱アシル型ジェランガムを添加し、さらに塩類を添加する。塩類を添加するタイミングは、乳化後又は乳化前のいずれでもよい。(B)脱アシル型ジェランガムと塩類を混合した後に撹拌する場合には、40℃以上で撹拌することが好ましい。これにより、良好なゲルが形成され、耐熱性が向上する。
【0021】
<ミンチ肉加工冷凍食品>
本発明のミンチ肉加工冷凍食品は、前記の水中油型乳化油脂組成物を含有する。水中油型乳化油脂組成物は、特に、ハンバーグ、ミートボール、餃子、小籠包、肉まん、シューマイ、メンチカツ、ロールキャベツ、魚肉つみれなど、畜肉、魚肉などのミンチ肉加工冷凍食品に、例えば、0.01~40質量%程度を練り込むことにより特に優れた効果を発揮することができる。また、ミンチ肉加工冷凍食品に対する水中油型乳化油脂組成物の含有量は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは5~20質量%である。
ミンチ肉加工冷凍食品に水中油型乳化油脂組成物を練りこむ際には、予めチョッパーで挽く、または刻むなどしてから練り込むか、あるいは練りこむ際に攪拌する等によって、ミンチ肉加工冷凍食品中に水中油型乳化油脂組成物が粒子状に細かく分散させることが望ましい。
本発明のミンチ肉加工冷凍食品は、一次加熱後、冷凍することにより得ることができ、喫食時に二次加熱を行い、二次加熱直後、あるいは、弁当容器などに入れ室温保管後、喫食することができる。
【0022】
<ミンチ肉加工食品>
ミンチ肉加工食品は、前記の冷凍食品を加熱調理したものである。ミンチ肉加工食品は、加熱調理するだけで、簡単にジューシーで、透明感のある肉汁が流れ出るミンチ肉加工食品を提供することができる。加熱調理の方法は特に制限されず、例えば、電子レンジや熱湯等で加熱したり、オーブンやフライパンで焼いたりすればよい。
【実施例】
【0023】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
[水中油型乳化油脂組成物の製造]
(実施例1)
表1の配合組成(質量%)で以下の方法により水中油型乳化油脂組成物を製造した。すなわち、水相部として、水970gに(A)寒天8g、(B)脱アシル型ジェランガム4g、乳化剤20gを加え、原料が均一になるようにプロペラ攪拌機で混合しながら85℃まで昇温し、乳酸カルシウムを2g加えた。次に70℃に調温した菜種油1000gを加え、攪拌を続けた後、ホモジナイザーよって均質化圧5MPaで処理した。均質化後、10℃で一晩冷却することによりゲル化させ、本発明の水中油型乳化油脂組成物を得た。
【0024】
なお、寒天は、「超高強度寒天カリコリカン」(伊那食品工業(株)製、ゼリー強度1800g/m2)、脱アシル型ジェランガムは、「ケルコゲル」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を使用した。また、乳化剤は、モノステアリン酸ペンタグリセリン「サンソフトA-181E」(太陽化学(株)製)又はカゼインナトリウム「Sodium Caseinate180」(フォンテラジャパン(株)製)を使用した。
【0025】
(実施例2~11、比較例1~5)
実施例2~11および比較例1~5は表1および表2に示した配合で、実施例1に準じて水中油型乳化油脂組成物を製造した。
【0026】
【0027】
【0028】
表中に略記した原料の詳細は以下の通りである。
「寒天」:「超高強度寒天カリコリカン」(伊那食品工業(株))
「脱アシル型ジェランガム」:「ケルコゲル」(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
「菜種油」:「菜種油」(日油(株)製)
「牛脂」:「牛脂」(日油(株)製)
「パーム油」:「パーム油」(日油(株)製)
「モノステアリン酸ペンタグリセリン」:「サンソフトA-181E」(太陽化学製)
「カゼインNa」:「Sodium Caseinate180」(フォンテラジャパン(株)製)
「乳酸カルシウム」:「乳酸カルシウム」(白石カルシウム(株))
「塩化カルシウム」:「塩化カルシウム」(富田製薬(株))
「カラギニン」:「カラギニンCSK-1」(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
「ネイティブ型ジェランガム」:「ケルコゲルLT-100」(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
【0029】
[ミンチ肉加工冷凍食品(ハンバーグ)の製造]
表3に示した配合にて、挽肉、たまねぎソテー、パン粉、全卵、食塩を混合し、さらに水中油型乳化油脂組成物を加えて混合することで、水中油型乳化油脂組成物を生地中に粒子状態で分散させ、ハンバーグの生地を製造した。80gの円形に成型し、230℃のオーブンにて8分間加熱(一次加熱)した後、急速冷凍機を用いて凍結し、-20℃で7日間冷凍保管した。冷凍されたハンバーグを500Wの電子レンジで2分間加熱(二次加熱)して、評価に用いた。評価項目は、「二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)」、「二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)」、「肉汁の透明感の評価(目視評価)」、「肉粒感の評価(官能評価)」とし、評価結果は、表1~表2に示した。
【0030】
【0031】
<二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)>
二次加熱したハンバーグの重量を測定し、焼成前の生地重量で除して、焼成歩留を計算した。焼成歩留が大きいほうが、一次加熱、二次加熱で肉汁がドリップせず、ジューシー感が維持できていることを表す。
8枚測定した平均値にて以下の通りジューシー感を評価した。
◎:85.0%以上
○:82.5%以上、85.0%未満
△:80.0%以上、82.5%未満
×:80.0%未満
【0032】
<二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)>
二次加熱したハンバーグを半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱のみ(冷凍なし)したものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上3.0点を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0033】
<肉汁の透明感の評価(目視評価)>
二次加熱したハンバーグを半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0034】
<肉粒感の評価(官能評価)>
二次加熱したハンバーグを試食し、肉粒感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で官能評価した。官能評価においては、肉粒感が強いものを3点、肉粒感が感じられるものを2点、肉粒感が感じられないものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0035】
表1に示すように、本発明の水中油型乳化油脂組成物を冷凍ハンバーグに含有すると、焼成歩留まりに優れ、加熱直後のハンバーグにおけるジューシー感、肉汁の透明感および肉粒感優れるという効果が認められた。
【0036】
表2に示すように、寒天を含有しない場合には、二次加熱後のジューシー感が劣り、さらに肉汁の透明感や肉粒感が劣る結果となった(比較例1、4)。
脱アシル型ジェランガムを含有しない場合には、一次加熱時に肉汁が流出してしまい、二次加熱後のジューシー感が劣る結果となった(比較例2、5)。
油脂を含有しない場合には、ハンバーグの断面から流れ出る肉汁が低下した(比較例3)。
【0037】
[処方例1:中華まん]
表4に示した配合にて、豚挽肉と、たまねぎ、椎茸、茹で筍、醤油、オイスターソース、砂糖、食塩、片栗粉を混合し、さらに実施例3の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合することで、水中油型乳化油脂組成物を生地中に粒子状態で分散させ、中華まんの具を調製した。次いで、得られた中華まんの具を皮で包み、蒸し器で加熱することで中華まんを得た。
【0038】
【0039】
表4を見ると、中華まんを冷凍して一週間冷凍保管した後、電子レンジで再加熱したところ、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、肉粒感がある冷凍食品とすることができた。
【0040】
[処方例2:メンチカツ]
表5に示した配合にて、牛挽肉、豚挽肉、玉ねぎ、パン粉、全卵、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例8の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合することで、水中油型乳化油脂組成物を生地中に粒子状態で分散させ、メンチカツの具を調製した。次いで、このメンチカツの具に、バッター液、パン粉を付けて、約180℃の油で油ちょうし、メンチカツを得た。
【0041】
【0042】
表5を見ると、メンチカツを冷凍して一週間冷凍保管した後、電子レンジで再加熱したところ、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、肉粒感がある冷凍食品とすることができた。
【0043】
[処方例3:ロールキャベツ]
表6に示した配合にて、豚挽肉、鶏挽肉、玉ねぎ、パン粉、全卵、固形コンソメ、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例7の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合することで、水中油型乳化油脂組成物を生地中に粒子状態で分散させ、ロールキャベツの具を得た。この調製した具を、キャベツで包み、コンソメスープで煮込むことでロールキャベツを得た。
【0044】
【0045】
表6を見ると、ロールキャベツを冷凍して一週間冷凍保管した後、電子レンジで再加熱したところ、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、肉粒感がある冷凍食品とすることができた。