(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】緩衝構造体およびそれを備えた包装材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/107 20060101AFI20240312BHJP
B65D 5/50 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65D81/107
B65D5/50 101A
(21)【出願番号】P 2020066008
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇本 篤宏
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-062969(JP,A)
【文献】実開平05-054338(JP,U)
【文献】特開2010-089836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00-81/17
B65D 5/00- 5/76
B65D 77/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装箱と、前記包装箱に収納される被梱包物との間に配置され、前記被梱包物に加わる衝撃を緩衝する緩衝構造体であって、
前記緩衝構造体は、
前記被梱包物の緩衝面に接触する一つ以上の緩衝部材と、
前記緩衝部材を所定位置に着脱可能に保持する保持部を有する平板状の保持部材と、
を備え、
前記緩衝部材は、前記緩衝面に接触する接触面と、前記接触面に対向する対向面と、前記接触面および前記対向面と交差する第1側面と、前記第1側面と対向する第2側面と、を含む多面体であり、
前記対向面を横断するように前記対向面から前記接触面に向けて延びる第1係合溝と、
前記第1係合溝に連通して前記第1係合溝に交差する方向に延在し、前記第1側面から前記第2側面まで貫通する第2係合溝と、
を含む係合溝が形成されており、
前記保持部は、前記保持部材の所定箇所から第1折り線および平面視コ字状の第1切り込み線に沿って切り起こされ、
前記保持部材から前記第1折り線を介して略垂直に起立する第1挿入片と、
前記第1折り線と平行な第2折り線を介して前記第1挿入片に対し略垂直に延在する第2挿入片と、
を有し、
前記第1挿入片および前記第2挿入片を、それぞれ前記第1係合溝および前記第2係合溝に挿入することで、前記保持部材に対し前記緩衝部材を保持することを特徴とする緩衝構造体。
【請求項2】
前記保持部は、前記第1切り込み線の前記第2折り線に対向する部分から前記第2折り線に向けて延びる一対の第2切り込み線を有し、前記第2挿入片は、一対の前記第2切り込み線の間で前記第2折り線に沿って折り曲げて形成され、
前記第2係合溝への挿入方向に対し前記第2挿入片の上流側および下流側には、それぞれ前記第2折り線から前記第1挿入片に沿って延在する第1係合片および第2係合片が形成されており、
前記第1挿入片を
前記第1係合溝に、前記第2挿入
片を前記第2係合溝にそれぞれ挿入した状態で、前記第1係合片および前記第2係合片が、それぞれ前記第1側面および前記第2側面の外側に突出することで前記緩衝部材の前記挿入方向の移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の緩衝構造体。
【請求項3】
前記保持部の前記第1係合片と前記第2係合片との距離は、前記緩衝部材の前記第1側面から前記第2側面までの幅と略等しいことを特徴とする請求項2に記載の緩衝構造体。
【請求項4】
前記緩衝部材は、
前記第1係合溝および前記第2係合溝と、
前記第1係合溝に連通して前記第2係合溝と反対側に前記対向面と平行に延在し、前記第1側面から前記第2側面まで貫通する第3係合溝と、
で構成される前記係合溝が形成されており、
前記保持部は、一対の前記第2切り込み線の間で、前記第2折り線から前記第1折り線に向けて形成された平面視コ字状の第3切り込み線に沿って切り起こされ、前記第1挿入片に対し前記第2挿入片と反対側に略垂直に延在する第3挿入片を有し、
前記第1挿入片、前記第2挿入片および前記第3挿入片を、それぞれ前記第1係合溝、前記第2係合溝および前記第3係合溝に挿入することで、前記保持部材に対し前記緩衝部材を保持することを特徴とする請求項
2又は請求項
3に記載の緩衝構造体。
【請求項5】
前記保持部材は、一枚の板状部材を折り曲げて形成され、前記被梱包物の上面に対向する上面部と、前記上面部に隣接する3つの側面部と、を有し、
前記保持部は、前記側面部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の緩衝構造体。
【請求項6】
前記包装箱と、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の緩衝構造体と、
を有する包装材。
【請求項7】
前記包装箱は、前記緩衝構造体が装着された前記被梱包物に上方から被せる上箱を有することを特徴とする請求項6に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装箱と、包装箱に収納される被梱包物との隙間に配置される緩衝構造体、およびそれを備えた包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包装箱を用いて被梱包物を梱包する際に、被梱包物と包装箱との隙間に外部からの衝撃や振動を吸収する緩衝材を配置する。このような緩衝材は、被梱包物の外形に合わせて、衝撃を緩衝したい箇所に位置決めを行う必要がある。しかし、一部材で緩衝力と位置決め機能を両立させようとすると、緩衝力や緩衝位置を変更したい場合に設計面の制約によって変更が困難なことが多かった。
【0003】
そこで、緩衝材の位置決めを容易に行う方法が提案されており、例えば特許文献1には、段ボール又は板材と緩衝ブロックとを組み合わせてなる緩衝材において、胴体に段ボールの板が進入するスリットを切り込んだ緩衝ブロックと、緩衝ブロックがスリットを板面に平行にした姿勢で進入可能な貫通孔を備えた板状の段ボールとから成り、緩衝ブロックを貫通孔に挿入してスリットを貫通孔の縁に係止させる緩衝材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の緩衝材では、緩衝ブロックを段ボール又は板材の貫通孔に挿入してスリットを貫通孔の縁に係止させた状態で、緩衝ブロックの一部が段ボール又は板材の外側に突出する。そのため、被梱包物に緩衝材を装着した状態で外箱を被せる際に外箱が緩衝材の突出部分に引っ掛かるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、被梱包物に対する緩衝位置を容易に且つ精度よく位置決め可能であり、組み立て作業性も維持可能な緩衝構造体およびそれを備えた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、包装箱と、包装箱に収納される被梱包物との間に配置され、被梱包物に加わる衝撃を緩衝する緩衝構造体である。緩衝構造体は、被梱包物の緩衝面に接触する一つ以上の緩衝部材と、緩衝部材を所定位置に着脱可能に保持する保持部を有する保持部材と、を備える。緩衝部材は、緩衝面に接触する接触面と、接触面に対向する対向面と、接触面および対向面と交差する第1側面と、第1側面と対向する第2側面と、を含む多面体である。緩衝部材には、対向面を横断するように対向面から接触面に向けて延びる第1係合溝と、第1係合溝に連通して第1係合溝に交差する方向に延在し、第1側面から第2側面まで貫通する第2係合溝と、を含む係合溝が形成されている。保持部は、保持部材の所定箇所から第1折り線および平面視コ字状の第1切り込み線に沿って切り起こされ、保持部材から第1折り線を介して略垂直に起立する第1挿入片と、第1折り線と平行な第2折り線を介して第1挿入片に対し略垂直に延在する第2挿入片と、を有する。第1挿入片および第2挿入片を、それぞれ第1係合溝および第2係合溝に挿入することで、保持部材に対し緩衝部材を保持する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の構成によれば、緩衝部材に形成された第1係合溝および第2係合溝に、保持部の第1挿入片および第2挿入片を挿入することで、保持部材に対し緩衝部材の上下方向および内外方向の移動を規制することができる。従って、輸送中の振動や衝撃等によって緩衝部材が移動し難いため、被梱包物に対する緩衝部材の緩衝位置を精度よく位置決めすることができる。また、保持部は保持部材から切り起こして組み立てるだけの簡単な構造であり、緩衝部材を保持するための別部材を必要としないため、緩衝構造体の構成の簡素化や部材点数の削減、梱包材料の低コスト化、組み立て作業性も維持することができる。さらに、緩衝部材が保持部材の外側面から突出しないため、被梱包物に緩衝構造体を装着して上箱を被せる際に上箱が緩衝部材の突出部分に引っ掛かるおそれもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の緩衝構造体7bを用いる包装材100の分解斜視図
【
図2】包装箱1に使用される止め具10の使用前の状態を第1ヒンジ部18a、18bと垂直な方向から見た側面断面図
【
図3】止め具10のキー部材15が筒状部16の内部に挿入された状態を鍔部17側から見た斜視図
【
図4】製品4の周囲に下緩衝材7a、緩衝構造体7bを配置した状態を示す斜視図
【
図5】本発明の第1実施形態に係る緩衝構造体7bを構成する緩衝部材33の斜視図
【
図6】第1実施形態の緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37の組み立て前の状態を示す平面図
【
図7】第1実施形態の緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37を組み立てた状態を示す斜視図
【
図8】
図7の状態に組み立てられた保持部37を、第2係合片43側から緩衝部材33の係合溝35に挿入する様子を示す斜視図
【
図9】緩衝部材33への保持部37の挿入が完了した状態を第2側面33d側から見た斜視図
【
図10】
図9の状態から第2係合片43の折り曲げ状態を元に戻した状態を示す斜視図
【
図11】保持部材31の保持部37に保持された緩衝部材33を内側から見た斜視図
【
図12】保持部材31の保持部37に保持された緩衝部材33を外側から見た斜視図
【
図13】本発明の第2実施形態に係る緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37の組み立て前の状態を示す平面図
【
図14】第2実施形態の緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37を組み立てた状態を示す斜視図
【
図15】
図14の状態に組み立てられた保持部37を、第2係合片43側から緩衝部材33の係合溝35に挿入する様子を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の緩衝構造体7bを用いる包装材100の分解斜視図である。包装材100は、包装箱1と、包装箱1内に配置される下緩衝材7aおよび緩衝構造体7b(いずれも
図4参照)を含む。包装箱1は、トレイ付きパレット2と、上箱3とから構成されている。
【0011】
トレイ付きパレット2は、製品4(被梱包物)や下緩衝材7a(いずれも
図4参照)が載置される底面5aおよび底面5aの周縁に立設された側壁5bから成るトレイ5と、トレイ5の下面に固定されるパレット6とを有する。トレイ5の各側壁5bの中央部には長円形状の第1貫通穴8aが形成されている。
【0012】
上箱3は、製品4の側方および上方を覆う底面が開口した角筒状であり、側板3aに連設された4枚のフラップを閉じることで天面3bが形成される。上箱3の各側板3aの下部には、トレイ付きパレット2の第1貫通穴8aと重なる位置に、第2貫通穴8bが形成されている。第1貫通穴8a、8bを重ねた状態で止め具10(
図2参照)を差し込むことにより、トレイ付きパレット2と上箱3とを連結する。
【0013】
パレット6は、例えば段ボールシートを積層して形成した複数の支柱部6aと、各支柱部6aの上下面に固定される天板(図示せず)および底板6bとから成り、各支柱部6aの間には、フォークリフトやハンドパレット(パレット運搬用台車)のアームを挿入するアーム挿入穴9が形成されている。
【0014】
図2は、包装箱1に使用される止め具10の使用前の状態を第1ヒンジ部18a、18bと垂直な方向から見た側面断面図である。
図3は、止め具10のキー部材15が筒状部16の内部に挿入された状態を鍔部17側(包装箱1の外側)から見た斜視図である。
【0015】
図2および
図3に示すように、止め具10は、ベース部材14と、ベース部材14に対し折り曲げ可能に連結されるキー部材15とで構成される。ベース部材14は、筒状部16と、筒状部16の一端に設けられた鍔部17と、筒状部16の相対向する内面に第1ヒンジ部18a、18bを介して回動可能に連結された一対のフック部材19a、19bを有している。フック部材19a、19bは、それぞれ第1ヒンジ部18a、18bを基端部として断面視L字形状に屈曲しており、先端部が筒状部16から突出している。
【0016】
キー部材15は、筒状部16の内寸とほぼ同じ外寸の押し開き部25を有する。第2ヒンジ部24に沿ってキー部材15を折り曲げてベース部材14側へ折り返すことにより、押し開き部25がフック部材19a、19bに当接する。そして、押し開き部25をベース部材14の鍔部17側から筒状部16の内部に挿入する。これにより、フック部材19a、19bが押し開き部25によって押圧され、フック部材19a、19bは、それぞれ第1ヒンジ部18a、18bを回動軸として筒状部16の外側(
図2の矢印方向)に回動する。
【0017】
図3に示すように、キー部材15が完全にベース部14(筒状部16)の内部に挿入された状態では、押し開き部25によって押圧されたフック部材19a、19bの先端が筒状部16から鍔部17と略平行に突出する。これにより、トレイ付きパレット2の側壁5bと上箱3とが鍔部17とフック部材19a、19bによって挟持される。
【0018】
図4は、製品4の周囲に下緩衝材7a、緩衝構造体7bを配置した状態を示す斜視図である。
図4ではトレイ付きパレット2および上箱3の記載を省略している。下緩衝材7aは、製品4の下端部の4隅に配置され、製品4の下部を外部衝撃から保護する。
【0019】
緩衝構造体7bは、製品4の上面から左側面および右側面に沿って配置され、製品4の左側面および右側面を外部衝撃から保護する。緩衝構造体7bは、保持部材31と、緩衝部材33とを有する。保持部材31は、一枚の段ボールシートを折り曲げて形成される。保持部材31は、製品4の上面に対向する上面部31aと、上面部31aに隣接する3つの側面部31b(
図4では2つの側面部31bが視認可能)とを有する。緩衝部材33は、製品4の側面と対峙する保持部材31の3つの側面部31bの1箇所以上(
図4では4箇所が視認可能)に保持される。
【0020】
図1に示した包装箱1を用いて製品4を梱包する手順について説明する。先ず、トレイ付きパレット2の底面5a上に製品4を載置する。次に、製品4の下方および側面に下緩衝材7a、緩衝構造体7bを装着し、上箱3を被せた後、トレイ付きパレット2の各側壁5bを起立させる。最後に、側壁5bの第1貫通穴8aと、上箱3の第2貫通穴8bを重ねた状態で止め具10のベース部14を差し込み、押し開き部25を筒状部16の内部に挿入することにより、トレイ付きパレット2と上箱3とを一体に連結する。
【0021】
包装箱1を開梱する際は、
図3の状態から止め具10のキー部材15を押し上げることにより、押し開き部25を筒状部16から引き抜く。押し開き部25の引き抜き動作に伴い、押し開き部25に押圧されて外側に回動していたフック部材19a、19bが第1ヒンジ部18の復元力によって内側に回動し、
図2の状態に戻る。最後にベース部14を第1貫通穴8a、8bから引き抜いてトレイ付きパレット2の側壁5bと上箱3との連結を解除する。
【0022】
図5は、本発明の第1実施形態に係る緩衝構造体7bを構成する緩衝部材33を保持部材31側から見た斜視図である。緩衝部材33は、EPE(発泡ポリエチレン)により直方体状に形成されている。緩衝部材33の材質としては、EPEの他、発泡スチロール、ウレタン等の発泡性樹脂、若しくは段ボールシートを複数枚積層して形成された積層段ボール等が用いられる。
【0023】
緩衝部材33は、製品4の外装面(緩衝面)に接触する接触面33aと、接触面33aと対向する対向面33bと、接触面33aおよび対向面33bと交差する第1側面33cと、第1側面と対向する第2側面33dと、を有する。緩衝部材33には、対向面33bを横断するように第1側面33cから第2側面33dまで貫通する係合溝35が形成されている。係合溝35は、対向面33bから接触面33aに向けて延びる第1係合溝35aと、第1係合溝35aに連通して第1係合溝35aと直交する方向に延在する第2係合溝35bとで構成される側面視L字状である。
【0024】
図6は、第1実施形態の緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37の組み立て前の状態を示す平面図である。保持部37は、保持部材31の所定箇所に形成されており、第1挿入片40、第2挿入片41、第1係合片42、第2係合片43を有する。
【0025】
第1挿入片40は、第1折り線L1と平面視コ字状の切り込み線C1とで囲まれており、第1折り線L1を介して保持部材31に連設されている。第2挿入片41は、第1折り線L1と平行な第2折り線L2と、第1切り込み線C1の第2折り線L2に対向する部分から第2折り線L2に向けて垂直に延びる一対の第2切り込み線C2とで囲まれており、第2折り線L2を介して第1挿入片40に連設されている。第2挿入片41の長手方向の両端部には、第2切り込み線C2を挟んで第1係合片42、第2係合片43が形成されている。第2折り線L2は第1挿入片40と第2係合片43との間まで延在している。
【0026】
第1折り線L1と第2折り線L2との距離d1は、緩衝部材33の第1係合溝35aの深さw1(
図5参照)と略等しい。第2折り線L2と第2挿入片41、第1係合片42および第2係合片43の先端部との距離d2は、緩衝部材33の第2係合溝35bの深さw2(
図5参照)と略等しい。一対の第2切り込み線C2の間の距離d3(後述する第1係合片42と第2係合片43との距離)は、緩衝部材33の第1側面33cから第2側面33dまでの幅w3(
図5参照)と略等しい。
【0027】
次に、本実施形態の緩衝構造体7bの組み立て方法について説明する。先ず、
図6の状態から第1切り込み線C1に沿って第1挿入片40を切り起こし、第1折り線L1に沿って保持部材31の内側に略垂直に折り曲げる。次に、一対の第2切り込み線C2に沿って第2挿入片41および第2係合片43を切り起こし、第2折り線L2に沿って第1挿入片40に対して略垂直に折り曲げる。
【0028】
図7は、第1実施形態の緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37を組み立てた状態を示す斜視図である。なお、保持部材31は
図4に示したように製品4の側面を覆うように延在しているが、
図7および後述する
図8~
図11、
図14、
図15では、説明の便宜のため保持部材31の一部のみを矩形状に記載している。
【0029】
図7に示すように、第1挿入片40は、保持部材31から第1折り線L1を介して略垂直に起立する。第2挿入片41は、第1挿入片40から第2折り線L2を介して保持部材31と略平行に、即ち、第1挿入片40と略垂直に延在する。第2係合片43は、第2係合溝35bへの挿入方向(
図8の矢印方向)に対し第2挿入片41の下流側に隣接して、第2折り線L2を介して保持部材31と略平行に、即ち、第1挿入片40と略垂直に延在する。また、第2挿入片41の折り曲げによって、第1挿入片40の第2係合片43と反対側の端部に第1係合片42が起立する。
【0030】
次に、
図7の状態に組み立てられた保持部37の第2係合片43側を、
図8に示すように緩衝部材33の第1側面33c側から係合溝35に挿入する。より詳細には、第1挿入片40を第1係合溝35aに、第2係合片43および第2挿入片41を第2係合溝35bに、それぞれ挿入する。そして、第1係合片42が第1側面33cに当接したとき挿入動作を終了する。
【0031】
図9は、緩衝部材33への保持部37の挿入が完了した状態を第2側面33d側から見た斜視図である。
図9に示すように、緩衝部材33の第2側面33dから外側に第2係合片43が突出している。この状態から、第2折り線L2に沿って折り曲げられていた第2係合片43を第2切り込み線C2に沿って切り起こし、第2折り線L2での折り曲げ状態を元に戻す。
【0032】
図10は、
図9の状態から第2係合片43の折り曲げ状態を元に戻した状態を示す斜視図である。
図10に示すように、第2側面33d側では第2係合片43が第2係合溝35bに対して略垂直となるため、保持部37の引き抜き方向(第1側面33c方向)への移動が規制される。一方、第1側面33c側では第1係合片42が第2係合溝35bに対して略垂直となっているため、保持部37の挿入方向(第2側面33d方向)への移動が規制される。
【0033】
図11および
図12は、それぞれ保持部材31の保持部37に装着された緩衝部材33を内側(製品4側)および外側(上箱3側)から見た斜視図である。緩衝部材33は、第1係合片42と第2係合片43とによって緩衝部材33の左右方向(
図11の矢印X方向)への移動が規制される。また、第2係合溝35bに挿入された第2挿入片41(
図10参照)によって緩衝部材33の上下方向(
図11の矢印Y方向)および内外方向(
図11の矢印Z方向)への移動が規制される。
【0034】
従って、輸送中の振動や衝撃等によって緩衝部材33が移動しないため、製品4に対する緩衝部材33の緩衝位置を精度よく位置決めすることができる。また、保持部37は保持部材31から切り起こして組み立てるだけの簡単な構造であるため、緩衝構造体7bの構成の簡素化や組み立て作業性も維持することができる。さらに、緩衝部材33の固定のための別部材を必要としないため、部材点数の削減や梱包材料の低コスト化を図ることができる。
【0035】
緩衝構造体7bを廃棄する際は、
図9に示すように第2係合片43を第2折り線L2で再び折り曲げて緩衝部材33を第1側面33c側から引き抜くことにより、保持部材31と緩衝部材33を簡単に分離することができる。従って、保持部材31と緩衝部材33の材質が異なる場合の分別廃棄が容易となり、リサイクル性も向上する。
【0036】
また、
図12に示すように、緩衝部材33が保持部材31の外側面から突出しないため、製品4に緩衝構造体7bを装着して上箱3を被せる際に上箱3が緩衝部材33の突出部分に引っ掛かるおそれもなくなる。
【0037】
さらに、緩衝構造体7bは、保持部材31と、保持部材31の保持部37に着脱可能に装着される緩衝部材33とで構成されるため、保持部材31に形成される保持部37の位置を変更することにより製品4に対する緩衝部材33の接触位置(緩衝位置)を任意に調整することができる。保持部37の位置は、保持部材31を形成する段ボールシートを打ち抜く金型の変更によって容易に変更することができる。
【0038】
図13は、本発明の第2実施形態に係る緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37の組み立て前の状態を示す平面図である。本実施形態では、保持部37は、第1挿入片40、第2挿入片41、第1係合片42、第2係合片43に加えて第3挿入片45を有する。第3挿入片45は、平面視コ字状の第3切り込み線C3で囲まれており、第2折り線L2を挟んで第2挿入片41と反対側に、第1挿入片40と重なるように形成されている。また、第2折り線L2は第2挿入片41と第3挿入片45との間には形成されていない。保持部37の他の部分の構成は
図6に示した第1実施形態と同様である。
【0039】
図14は、第2実施形態の緩衝構造体7bを構成する保持部材31の保持部37を組み立てた状態を示す斜視図である。
図14に示すように、第2挿入片41を第2折り線L2に沿って折り曲げることによって、第1挿入片40から第3切り込み線C3に沿って第3挿入片45が切り起こされる。
【0040】
図15は、
図14の状態に組み立てられた保持部37を、第2係合片43側から緩衝部材33の係合溝35に挿入する様子を示す斜視図である。緩衝部材33に形成される係合溝35は、対向面33bから接触面33aに向けて延びる第1係合溝35aと、第1係合溝35aに連通して第1係合溝35aと直交する方向に延在する第2係合溝35bと、第1係合溝35aから第2係合溝35bと反対側に延在する第3係合溝35cと、で構成される側面視T字状である。
【0041】
図14の状態に組み立てられた保持部37の第2係合片43側を、
図15に示すように緩衝部材33の第1側面33c側から係合溝35に挿入する。より詳細には、第1挿入片40を第1係合溝35aに、第2係合片43および第2挿入片41を第2係合溝35bに、第3挿入片45を第3係合溝35cに、それぞれ挿入する。そして、第1係合片42が第1側面33cに当接したとき挿入動作を終了する。
【0042】
第1実施形態の構成では、緩衝部材33の上下端部を持ち上げて回転させる方向(
図15の矢印R、R′方向)の力が加えられたとき、第1挿入片40および第2挿入片41が、それぞれ第1係合溝35aおよび第2係合溝35bから抜けてしまい、緩衝部材33が保持部材31から脱落するおそれがあった。特に、緩衝部材33がEPE等の軟らかい材質で形成されている場合に緩衝部材33の脱落が発生する可能性が高くなる。
【0043】
本実施形態では、保持部37の第3挿入片45が緩衝部材33の第3係合溝35cに挿入されることで、緩衝部材33に回転方向(矢印R、R′方向)の力が加えられたとき第3挿入片45が抜け止め(規制部)となる。従って、緩衝部材33が軟らかい材質で形成されている場合であっても、保持部材31からの緩衝部材33の脱落を抑制することができる。
【0044】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では、トレイ5とパレット6とから成るトレイ付きパレット2を用いた包装箱1に用いる緩衝構造体7bについて説明したが、本発明の緩衝構造体7bは、パレット6が設けられておらず、上箱3とトレイ5のみから成るC式包装箱や、上箱とトレイ(底面)が一体となったA式やB式の包装箱に対しても同様に適用できるのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、被梱包物と、被梱包物を包装する包装箱との隙間に配置される緩衝構造体に利用可能である。本発明の利用により、被梱包物に対する緩衝位置や緩衝力を容易に変更可能であり、組み立て作業性も維持可能な緩衝構造体およびそれを備えた包装材を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 包装箱
2 トレイ付きパレット
3 上箱
4 製品(被梱包物)
4a 外装面(緩衝面)
7a 下緩衝材
7b 緩衝構造体
31 保持部材
33 緩衝部材
33a 接触面
33b 対向面
33c 第1側面
33d 第2側面
35 係合溝
35a 第1係合溝
35b 第2係合溝
35c 第3係合溝
37 保持部
40 第1挿入片
41 第2挿入片
42 第1係合片
43 第2係合片
45 第3挿入片
100 包装材
L1 第1折り線
L2 第2折り線
C1 第1切り込み線
C2、C3 第2切り込み線
C4 第3切り込み線