(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ノズル装置、ノズル装置の製造方法、及びノズル部材
(51)【国際特許分類】
B07C 5/36 20060101AFI20240312BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B07C5/36
B05B1/14 Z
(21)【出願番号】P 2020070935
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 誠
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107170(JP,A)
【文献】特開平08-252535(JP,A)
【文献】特開2006-142246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/36
B05B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを備え、前記二つの部材を重ね合わせた重合面にノズル流路が形成され、前記ノズル流路の先端にノズル孔が開口するノズル装置において、
前記二つの部材は、ネジ部材により相互に締め付け固定するためのネジ用孔を前記ノズル流路の後方に有し、少なくとも一方の部材の前記ネジ用孔よりも後方には他方の部材に当接する当接部が形成されてなり、
前記二つの部材は、前記少なくとも一方の部材に形成される前記当接部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる前記少なくとも一方の部材の撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で相互に固定されていることを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
前記少なくとも一方の部材は、前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であり、
前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、
前記当接部は、前記先端との間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部であり、
前記二つの部材は、前記少なくとも一方の部材に形成される前記肉盛部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる前記少なくとも一方の部材の撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で相互に固定されている請求項1記載のノズル装置。
【請求項3】
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材は、前記重合面に前記ノズル流路を形成するための溝を有する請求項1又は2記載のノズル装置。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材は、前記重合面に形成される前記ノズル流路に連通する流体流路を有し、前記流体流路が前記重合面であって前記ノズル流路内に開口する請求項1乃至3のいずれかに記載のノズル装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記重合面に複数の前記ノズル流路を形成するための複数の溝を有するノズル部材であり、
前記第2部材は、圧縮流体源と連通する流体空間を有するとともに、前記流体空間と連通する複数の弁部材を備え、前記各弁部材の作動により前記重合面に形成される複数の前記ノズル流路に圧縮流体を供給する複数の前記流体流路を有し、前記各流体流路が前記重合面であって前記各ノズル流路内に開口する平坦面を有するマニホールドであり、
前記ノズル部材と前記マニホールドを重ね合わせた前記重合面に複数のノズル流路が形成され、前記各ノズル流路の先端に複数のノズル孔が開口する請求項
4に記載のノズル装置。
【請求項6】
二つの部材を重ね合わせた重合面にノズル流路が形成され、前記ノズル流路の先端にノズル孔が開口するノズル装置の製造方法であって、
前記二つの部材は、ネジ部材により相互に締め付け固定するためのネジ用孔を前記ノズル流路の後方に有する前記ノズル装置の製造方法において、
少なくとも一方の部材の前記ネジ用孔よりも後方に、他方の部材に当接する当接部を形成する形成工程と、
前記二つの部材の重合面の先端、及び前記少なくとも一方の部材に形成される前記当接部を前記他方の部材に当接させる当接工程と、
前記ネジ部材の締め付けにより、前記少なくとも一方の部材を撓ませ、前記ノズル流路が形成される重合面を密着させて前記二つの部材を相互に固定する固定工程と、
を備えることを特徴とするノズル装置の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも一方の部材は、前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であって、前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有してなり、
前記形成工程は、前記金型を用いた成形時に形成される前記当接部であって、前記先端との間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部を形成し、
前記当接工程は、前記二つの部材の重合面の先端、及び前記少なくとも一方の部材に形成される前記肉盛部を前記他方の部材に当接させ、
前記固定工程は、前記ネジ部材の締め付けにより、前記少なくとも一方の部材を撓ませ、前記ノズル流路が形成される重合面を密着させて前記二つの部材を相互に固定する請求項6記載のノズル装置の製造方法。
【請求項8】
二つの部材を重ね合わせた重合面にノズル流路が形成され、前記ノズル流路の先端にノズル孔が開口するノズル装置に使用する少なくとも一方の部材であって、
前記二つの部材は、ネジ部材により相互に締め付け固定するためのネジ用孔を前記ノズル流路の後方に有し、前記ネジ部材の締め付けにより相互に固定される前記ノズル装置に使用するノズル部材において、
前記ネジ用孔よりも後方には他方の部材に当接する当接部が形成されてなり、
前記当接部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で前記他方の部材と相互に固定されることを可能とするノズル部材。
【請求項9】
前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であり、前記対向面の前方部分には前記ノズル流路を形成する溝が形成されてなり、
前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、
前記当接部は、前記先端との間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部であり、
前記肉盛部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で前記他方の部材と相互に固定されることを可能とする請求項8記載のノズル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体を噴射するノズル装置に関し、特に粒状物選別機におけるエジェクタ等の流体機器に用いて好適なノズル装置、前記ノズル装置の製造方法、及び前記ノズル装置に使用するノズル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズル孔から気体や液体を噴射するノズル装置は、様々な用途で使用されており、例えば、粒状物選別機においては、穀粒や樹脂ペレット等の粒状物に混入する不良品や異物等をエアの噴射により吹き飛ばすエジェクタに使用されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されたノズル装置は、上部材と下部材を重ね合わせた重合面にノズル孔及び該ノズル孔が形成される噴出流路を有し、前記下部材に形成されるエア流路が前記噴出流路内に開口するものである。
また、特許文献1に記載されたノズル装置は、前記下部材に形成されるエア流路が、マニホールドに形成されるエア流路に連通するよう、前記マニホールドの上面にパッキンを介してねじ固定されるものであり、ねじの頭部を覆うカバー部材が前記上部材に設けられる切欠きを閉鎖するよう開閉可能に取付けられるものである。
【0004】
特許文献2に記載されたノズル装置は、上方部材と下方部材を重ね合わせた重合面に複数の空気噴射孔及び該空気噴射孔が形成される流路を有し、前記下方部材に形成される貫通孔が前記流路内に開口するものである。
【0005】
特許文献3に記載されたノズル装置は、エジェクタ体上面の段差面にノズルヘッドプレートを重ね合わせた重合面に噴風口及び該噴風口が形成される吐出室を有し、前記エジェクタ体に形成される空気供給路が前記吐出室内に開口するものである。
【0006】
ところで、特許文献1~3に記載されたノズル装置は、上下二つの部材が接着固定される場合、前記重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃できない問題がある。
また、特許文献1~3に記載されたノズル装置は、上下二つの部材がねじ固定される場合、前記重合面に形成されるノズル流路からエア漏れを生じる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-107170号公報
【文献】特開平8-252535号公報
【文献】特開平5-146764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、二つの部材を重ね合わせた重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がないノズル装置、前記ノズル装置の製造方法、及び前記ノズル装置に使用するノズル部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
第1部材と第2部材とを備え、前記二つの部材を重ね合わせた重合面にノズル流路が形成され、前記ノズル流路の先端にノズル孔が開口するノズル装置において、
前記二つの部材は、ネジ部材により相互に締め付け固定するためのネジ用孔を前記ノズル流路の後方に有し、少なくとも一方の部材の前記ネジ用孔よりも後方には他方の部材に当接する当接部が形成されてなり、
前記二つの部材は、前記少なくとも一方の部材に形成される前記当接部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる前記少なくとも一方の部材の撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で相互に固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のノズル装置は、
前記少なくとも一方の部材が、前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であることが好ましい。
【0011】
本発明のノズル装置は、
前記少なくとも一方の部材が、前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であり、
前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、
前記当接部は、前記先端との間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部であり、
前記二つの部材は、前記少なくとも一方の部材に形成される前記肉盛部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる前記少なくとも一方の部材の撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で相互に固定されていることが好ましい。
【0012】
本発明のノズル装置は、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材が、前記重合面に前記ノズル流路を形成するための溝を有することが好ましい。
【0013】
本発明のノズル装置は、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材が、前記重合面に複数の前記ノズル流路を形成するための複数の溝を有することが好ましい。
【0014】
本発明のノズル装置は、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の部材が、前記重合面に形成される前記ノズル流路に連通する流体流路を有し、前記流体流路が前記重合面であって前記ノズル流路内に開口することが好ましい。
【0015】
本発明のノズル装置は、
前記第1部材が、前記重合面に複数の前記ノズル流路を形成するための複数の溝を有するノズル部材であり、
前記第2部材が、圧縮流体源と連通する流体空間を有するとともに、前記流体空間と連通する複数の弁部材を備え、前記各弁部材の作動により前記重合面に形成される複数の前記ノズル流路に圧縮流体を供給する複数の前記流体流路を有し、前記各流体流路が前記重合面であって前記各ノズル流路内に開口する平坦面を有するマニホールドであり、
前記ノズル部材と前記マニホールドを重ね合わせた前記重合面に複数のノズル流路が形成され、前記各ノズル流路の先端に複数のノズル孔が開口することが好ましい。
【0016】
本発明のノズル装置は、
粒状物選別機において、穀粒や樹脂ペレット等の粒状物に混入する不良品や異物等をエアの噴射により吹き飛ばすエジェクタに使用されることが好ましい。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
二つの部材を重ね合わせた重合面にノズル流路が形成され、前記ノズル流路の先端にノズル孔が開口するノズル装置の製造方法であって、
前記二つの部材は、ネジ部材により相互に締め付け固定するためのネジ用孔を前記ノズル流路の後方に有する前記ノズル装置の製造方法において、
少なくとも一方の部材の前記ネジ用孔よりも後方に、他方の部材に当接する当接部を形成する形成工程と、
前記二つの部材の重合面の先端、及び前記少なくとも一方の部材に形成される前記当接部を前記他方の部材に当接させる当接工程と、
前記ネジ部材の締め付けにより、前記少なくとも一方の部材を撓ませ、前記ノズル流路が形成される重合面を密着させて前記二つの部材を相互に固定する固定工程と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のノズル装置の製造方法は、
前記少なくとも一方の部材が、前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であって、前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有してなり、
前記形成工程は、前記金型を用いた成形時に形成される前記当接部であって、前記先端との間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部を形成し、
前記当接工程は、前記二つの部材の重合面の先端、及び前記少なくとも一方の部材に形成される前記肉盛部を前記他方の部材に当接させ、
前記固定工程は、前記ネジ部材の締め付けにより、前記少なくとも一方の部材を撓ませ、前記ノズル流路が形成される重合面を密着させて前記二つの部材を相互に固定することが好ましい。
【0019】
さらに、上記目的を達成するため、本発明は、
二つの部材を重ね合わせた重合面にノズル流路が形成され、前記ノズル流路の先端にノズル孔が開口するノズル装置に使用する少なくとも一方の部材であって、
前記二つの部材は、ネジ部材により相互に締め付け固定するためのネジ用孔を前記ノズル流路の後方に有し、前記ネジ部材の締め付けにより相互に固定される前記ノズル装置に使用するノズル部材において、
前記ネジ用孔よりも後方には他方の部材に当接する当接部が形成されてなり、
前記当接部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で前記他方の部材と相互に固定されることを可能とする。
【0020】
本発明のノズル部材は、
前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であり、前記対向面の前方部分には前記ノズル流路を形成する溝が形成されてなり、
前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、
前記当接部は、前記先端との間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部であり、
前記肉盛部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で前記他方の部材と相互に固定されることを可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のノズル装置は、前記二つの部材が、前記ネジ部材の締め付けにより相互に固定されているので、前記ネジ部材を弛めて前記二つの部材を簡単に分解することができ、前記二つの部材を重ね合わせた重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができる。
また、本発明のノズル装置は、前記二つの部材が、前記ネジ部材の締め付けによる前記少なくとも一方の部材の撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で相互に固定されているので、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がない。
【0022】
本発明のノズル装置は、前記少なくとも一方の部材が、前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であり、前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、前記当接部は、前記先端との間の空間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部であり、前記二つの部材が、前記少なくとも一方の部材に形成される前記肉盛部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる前記少なくとも一方の部材の撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で相互に固定されていることとすれば、前記重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がない。
【0023】
また、本発明のノズル装置は、前記少なくとも一方の部材の撓みがスプリング効果となって、前記ネジ部材の弛み止めを兼ねることができる。
【0024】
本発明のノズル装置は、前記第1部材が、前記重合面に複数の前記ノズル流路を形成するための複数の溝を有するノズル部材であり、前記第2部材が、圧縮流体源と連通する流体空間を有するとともに、前記流体空間と連通する複数の弁部材を備え、前記各弁部材の作動により前記重合面に形成される複数の前記ノズル流路に圧縮流体を供給する複数の前記流体流路を有し、前記各流体流路が前記重合面であって前記各ノズル流路内に開口する平坦面を有するマニホールドであり、前記ノズル部材と前記マニホールドを重ね合わせた前記重合面に複数のノズル流路が形成され、前記各ノズル流路の先端に複数のノズル孔が開口することとすれば、特許文献1に記載されたように別途組立てたノズル装置をマニホールドの上面にパッキンを介してねじ固定する必要がなく、部品点数を削減し、コストダウンを図ることができる。
【0025】
また、本発明のノズル装置の製造方法は、少なくとも一方の部材の前記ネジ用孔よりも後方に、他方の部材に当接する当接部を形成する形成工程と、前記二つの部材の重合面の先端、及び前記少なくとも一方の部材に形成される前記当接部を前記他方の部材に当接させる当接工程と、前記ネジ部材の締め付けにより、前記少なくとも一方の部材を撓ませ、前記ノズル流路が形成される重合面を密着させて前記二つの部材を相互に固定する固定工程と、を備えるので、前記重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がないノズル装置を製造することができる。
【0026】
本発明のノズル装置の製造方法は、前記少なくとも一方の部材が、前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であって、前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、前記形成工程は、前記金型を用いた成形時に形成される前記当接部であって、前記先端との間の空間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部を形成し、前記当接工程は、前記二つの部材の重合面の先端、及び前記少なくとも一方の部材に形成される前記肉盛部を前記他方の部材に当接させ、前記固定工程は、前記ネジ部材の締め付けにより、前記少なくとも一方の部材を撓ませ、前記ノズル流路が形成される重合面を密着させて前記二つの部材を相互に固定することとすれば、前記重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がないノズル装置を製造することができる。
【0027】
本発明のノズル装置の製造方法は、前記少なくとも一方の部材の撓みがスプリング効果となって、前記ネジ部材の弛み止めを兼ねることができる。
【0028】
さらに、本発明のノズル部材は、前記ネジ用孔よりも後方には他方の部材に当接する当接部が形成されてなり、前記当接部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で前記他方の部材と相互に固定されることを可能とするので、前記重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がないノズル装置に使用することができる。
【0029】
本発明のノズル部材は、前記他方の部材に対向する対向面であって前記他方の部材に当接する当接面を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて成形された樹脂部材であり、前記対向面の前方部分には前記ノズル流路を形成する溝が形成されてなり、前記当接面は、前記重合面に前記ノズル孔が開口する先端及び前記当接部が形成される後方に対し、前記ネジ用孔を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有し、前記当接部は、前記先端との間の空間に形成される平面であって当該当接部及び前記先端が接する平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部であり、前記肉盛部が前記他方の部材に当接するとともに、前記ネジ部材の締め付けによる撓みにより、前記ノズル流路が形成される重合面が密着した状態で前記他方の部材と相互に固定されることを可能とすることとすれば、前記重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がないノズル装置に使用することができる。
【0030】
本発明のノズル部材は、前記ネジ部材の締め付けによる撓みがスプリング効果となって、前記ネジ部材の弛み止めを兼ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態におけるノズル装置の概略説明図。
【
図2】
図1のノズル装置におけるノズル部の拡大図。
【
図4】
図1のノズル装置に使用するノズル部材の下面図。
【
図6】
図1のノズル装置に使用するノズル部材の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるノズル装置の概略説明図を示す。
図2は
図1のノズル装置におけるノズル部の拡大図を示す。
図3は
図1のノズル装置の組立分解図を示す。
図4は
図1のノズル装置に使用するノズル部材の下面図を示す。ここで、本件の各図面において、ノズル部材及びマニホールドはいずれも概略断面図を示す。
【0033】
本発明の実施の形態におけるノズル装置1は、ノズル部材2と、前記ノズル部材2が固定されるマニホールド3を備える。
前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2と前記マニホールド3の二つの部材を重ね合わせた重合面4に複数のノズル流路41が形成され、前記各ノズル流路の先端に複数のノズル孔42が開口する。
【0034】
前記ノズル部材2は、前記マニホールド3の平坦な上面31に対向する下面であって、前記マニホールド3の上面31に当接する当接面21を有し、前記当接面21の前方部分には、前記マニホールド3の上面31と重ね合わせた前記重合面4に複数の前記ノズル流路41を形成するための複数の溝22を有する。
【0035】
前記マニホールド3は、図示しない圧縮エア源と連通するエア空間32を有するとともに、前記エア空間32と連通する複数の弁部材33を着脱可能に備え、前記上面31であって前記ノズル部材2を重ね合わせた前記重合面4に開口し、前記各弁部材33の作動により前記重合面4に形成される複数の前記ノズル流路41に圧縮エアを供給するための複数のエア流路34を有する。
【0036】
ここで、前記弁部材33には、圧電素子の変位を利用してバルブを開閉する圧電式バルブを用いることが好ましいが、これに限定されるものでなく、他のバルブを用いることもできる。
【0037】
前記ノズル部材2と前記マニホールド3は、ボルト5により相互に締め付け固定するためのボルト用孔25,35を前記ノズル流路41の後方にそれぞれ有する。
また、前記ノズル部材2の下面であって前記ボルト用孔25よりもさらに後方位置には、前記マニホールド3の前記上面31形成される凹部36に嵌入する位置決め用凸部26が形成されている。
【0038】
図5はノズル部材の説明図を示す。
図6は
図1のノズル装置に使用するノズル部材の説明図を示す。
前記ノズル部材2は、ポリアセタール(POM)等の樹脂製品とすることが好ましく、前記当接面21を形成するための対応する面を平面上に有する金型を用いて射出成形により製造されることが好ましいが、その場合、偏肉による反りを生じるため、
図5に示すように、前記当接面21が前方部分及び後方部分に対し前記ボルト用孔25を有する中央部分を凸状とする形状の反りを有している。
【0039】
そのため、
図5に示すノズル部材2を、前記ボルト5により金属製品等の前記マニホールド3の上面31に固定した場合には、前記重合面4に形成される前記ノズル流路41からエア漏れが生じることが懸念される。
【0040】
そこで、本発明の実施の形態では、前記ノズル部材2の製造に際し、
図6に示すように、前記当接面21の後方部分であって前記位置決め用凸部26の近傍に、前記当接面21の先端27との間の空間に形成される仮想平面に対し前記中央部分であって前記凸状の部分が交差しない高さの肉盛部28を形成する。前記仮想平面は、前記肉盛部28及び前記当接面21の先端27が接する平面である。
【0041】
図7乃至
図10は、
図1のノズル装置の組付け方法の説明図であって、ノズル部材とマニホールドを組付ける様子の説明図を示す。
図7に示すように、前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2、前記マニホールド3、及び前記ノズル部材2と前記マニホールド3を相互に締付け固定する前記ボルト5により構成される。
【0042】
前記ノズル装置の組付けに際しては、
図8に示すように、まず、前記ノズル部材2の前記下面に形成される前記位置決め用凸部26を前記マニホールド3の前記上面31形成される凹部36に嵌入し位置決めしながら、前記ノズル部材2の前記先端27と前記肉盛部28を前記マニホールド3の平坦な前記上面31に当接させる。
【0043】
次に、
図9に示すように、前記ボルト5を前記ノズル部材2及び前記マニホールド3の前記各ボルト用孔25,35に挿入し、前記ノズル部材2と前記マニホールド3を組付ける。
ここでは、
図9に示すように、前記ノズル部材2の当接面21(下面)と前記マニホールド3の上面31との間には隙間が存在している。
【0044】
そして、
図10に示すように、前記ボルト5を締付けることで前記ノズル部材2を撓ませ、前記ノズル部材2の当接面21と前記マニホールド3の上面31を密着させて、前記ノズル部材2と前記マニホールド3を相互に固定する。
【0045】
ここで、前記ノズル部材2の前記当接面21は、少なくとも前記ノズル流路41を形成するための複数の溝22を有する前方部分が、前記マニホールド3の前記上面31に密着して前記重合面4を構成すればよく、すべての部分が前記マニホールド3の前記上面31に密着する必要はない。
【0046】
また、前記ノズル部材2に形成される前記肉盛部28は、前記ボルト5を締付けて前記ノズル部材2を撓ませることで、少なくとも前記ノズル流路41が形成される前記ノズル部材2と前記マニホールド3との前記重合面4が密着する高さとする。
【0047】
本発明の実施の形態において、前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2と前記マニホールド3が、前記ボルト5の締め付けにより相互に固定されるので、前記ボルト5を弛めて簡単に分解することができ、前記ノズル部材2と前記マニホールド3の重合面4に形成されるノズル孔42及びノズル流路41を清掃することができる。
【0048】
本発明の実施の形態において、前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2と前記マニホールド3が、前記ボルト5の締め付けによる前記ノズル部材2の撓みにより、前記ノズル流路41が形成される前記重合面4が密着した状態で相互に固定されるので、前記重合面4に形成される前記ノズル流路41からエア漏れを生じる虞がない。
【0049】
本発明の実施の形態において、前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2を撓ませて、前記ノズル流路41が形成される前記重合面4を密着させるので、前記ノズル部材2の撓みがスプリング効果となって、前記ボルト5の弛み止めを兼ねることができる。
【0050】
本発明の実施に形態において、前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2と前記マニホールド3を重ね合わせた前記重合面4に複数のノズル流路41が形成され、前記各ノズル流路41の先端に複数のノズル孔42が開口するので、特許文献1に記載されたように、別途組立てたノズル装置をマニホールドの上面にパッキンを介してねじ固定する必要がなく、部品点数を削減し、コストダウンを図ることができる。
【0051】
本発明の実施の形態において、前記ノズル装置1は、前記ノズル部材2を前記マニホールド3の平坦な上面31に重ね合わせた重合面4に複数のノズル流路41が形成されるものであったが、前記マニホールド3は、上面が平坦なものに限定されるものでなく、例えば前記ノズル部材2の前記溝22とともに前記ノズル流路41を形成する溝を有するものでもよい。
【0052】
上記本発明の実施の形態では、前記ノズル部材2と前記マニホールド3を重ね合わせて前記ノズル装置1を構成したが、前記ノズル部材2を二つ重ね合わせてノズル装置を構成することや、前記ノズル部材2と他の部材を重ね合わせてノズル装置を構成することもできる。
【0053】
上記本発明の実施の形態では、前記ノズル装置1が圧縮エアを噴射するものを例として説明したが、他の流体を噴射することもできる。
【0054】
上記本発明の実施の形態では、前記ノズル部材2は樹脂製品としたが、ボルトの締め付けにより撓み、少なくとも前記ノズル流路が形成される重合面が密着するのであれば、金属等の他の材料の製品とすることもできる、
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のノズル装置は、二つの部材を重ね合わせた重合面に形成されるノズル孔及びノズル流路を清掃することができるとともに、前記重合面に形成される前記ノズル流路から流体の漏れを生じる虞がないものであり、様々な用途で利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ノズル装置
2 ノズル部材
21 当接面
22 溝
25 ボルト用孔(ネジ用孔)
26 位置決め用凸部
27 先端
28 肉盛部
3 マニホールド
31 上面
32 エア空間
33 弁部材
34 エア流路
35 ボルト用孔(ネジ用孔)
36 凹部
4 重合面
41 ノズル流路
42 ノズル孔
5 ボルト(ネジ部材)