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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/183 20060101AFI20240312BHJP
   B62D 1/181 20060101ALI20240312BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240312BHJP
【FI】
B62D1/183
B62D1/181
B60W60/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020072930
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021109639
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020004125
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】枝元 祥馬
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 創
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特許第6596615(JP,B2)
【文献】特開2016-168972(JP,A)
【文献】特開2019-142337(JP,A)
【文献】特開2019-182054(JP,A)
【文献】特開平09-222922(JP,A)
【文献】特開2012-131327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転するために運転者が操作する操作部材と、
手動運転時に前記運転者が前記操作部材を操作する操作位置と、前記操作部材による前記車両の運転を行わない非操作位置との間で前記操作部材を移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御する移動制御部と、
前記操作部材が取り付けられる車両から前記移動手段を動作させる移動情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記移動制御部は、
前記情報取得部による移動情報の取得に基づき、前記操作部材が移動するように前記移動手段を制御し、
前記情報取得部は、
前記操作部材が取り付けられる車両が自動運転を実行している際に運転者が意図しない手動運転への移行を要求する強制手動運転情報を前記移動情報の一つとして取得し、
前記移動制御部は、
前記情報取得部による強制手動運転情報の取得に基づき、前記操作部材が前記操作位置に向かうように前記移動手段を制御する
操舵装置。
【請求項2】
前記移動制御部は、
前記情報取得部が前記強制手動運転情報を取得した後に前記運転者が意図する自動運転の維持を要求する自動運転維持情報を取得した場合でも前記操作部材の前記操作位置への移動を維持する
請求項に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、
前記車両から前記強制手動運転情報、および前記操作部材を前記操作位置に配置させるタイミングを示すタイミング情報を取得し、
前記移動制御部は、
前記タイミング情報に合わせて前記操作部材が前記操作位置に位置するように前記移動手段を制御する
請求項またはに記載の操舵装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、
前記車両から前記強制手動運転情報、および手動運転への移行の緊急性を示す緊急情報を取得し、
前記移動制御部は、
前記緊急情報を取得した場合、前記操作部材の移動速度が速くなるように前記移動手段を制御する
請求項またはに記載の操舵装置。
【請求項5】
前記非操作位置と前記操作位置の間であって前記運転者による前記操作部材の操作が可能な操作可能領域に前記操作部材が位置する場合において、前記情報取得部による強制手動運転情報の取得に基づき前記操作部材による運転を可能にする操作情報処理部
を備える請求項からのいずれか一項に記載の操舵装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、
前記操作位置、および前記非操作位置と前記操作位置の間であって前記運転者による前
記操作部材の操作が可能な操作可能領域の少なくとも一方に前記操作部材が位置する場合において、前記車両が備える転舵輪の転舵角に関する転舵情報を取得し、
前記操作部材の姿勢を変化させる姿勢変化手段と、
前記情報取得部が取得した転舵情報に基づき、転舵情報と前記操作部材の姿勢とが同期するように前記姿勢変化手段を制御する同期部と、
を備える請求項からのいずれか一項に記載の操舵装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、
前記操作部材の移動を中断させることを示す中断情報を取得し、
前記移動制御部は、
中断情報の取得に基づき、前記操作部材を前記操作位置に向かわせる前記移動手段の制御を中断する
請求項からのいずれか一項に記載の操舵装置。
【請求項8】
前記移動制御部は、
前記移動手段に前記操作部材を移動させる制御をする前に前記操作部材の移動の可否を運転者に問いあわせるための確認情報を出力し、前記確認情報に対応して前記運転者の移動の不許可を示す不許可情報を前記情報取得部が取得した場合に前記操作部材の移動を中止する
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項9】
前記確認情報を前記運転者に報知する報知手段と、
前記確認情報に対応する前記運転者の意図を受け付け、不許可情報を出力する意図情報出力手段と、
を備える請求項に記載の操舵装置。
【請求項10】
前記確認情報を無線通信により端末装置に送信し、前記不許可情報を無線通信により携帯端末から受信する無線通信手段を備える
請求項に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールなどの操作部材が車両からの情報に基づき操作位置と非操作位置との間で移動可能な操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両システムが自律的に車両を運転する自動運転としては、例えば常に車両システムが全ての運転タスクを実施する完全自動運転(レベル5)、特定条件下において車両システムが全ての運転タスクを実施する特定条件下における完全自動運転(レベル4)、車両システムが全ての運転タスクを実施するが、車両システムの介入要求等に対して運転者が適切に対応することが必要な条件付自動運転(レベル3)が検討されている。なお、括弧内は我が国におけるクラス分けを示している。
【0003】
例えば、特許文献1には、操作部材を格納する機能を有する操舵装置であって、自動運転のレベルに応じて操作部材の位置が変更される操舵装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-77354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特定条件下において完全自動運転が実施され操作部材が格納されている状況の下、道路状況、天候、車両の状況などにより自動運転が継続不可能な状況や手動運転が望ましい状況などが発生する場合がある。このような場合、特許文献1に記載のような従来の技術では操作部材が格納されているため、手動運転を実行することができない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、車両からの情報に基づいて操作部材の位置が移動する操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つである操舵装置は、車両を運転するために運転者が操作する操作部材と、手動運転時に前記運転者が前記操作部材を操作する操作位置と、前記操作部材による前記車両の運転を行わない非操作位置との間で前記操作部材を移動させる移動手段と、前記移動手段を制御する移動制御部と、前記操作部材が取り付けられる車両から前記移動手段を動作させる移動情報を取得する情報取得部と、を備え、前記移動制御部は、前記情報取得部による移動情報の取得に基づき、前記操作部材が移動するように前記移動手段を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両からの情報に基づき運転者の意図にかかわらず操作部材が移動し、状況に応じた運転を速やかに実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る操舵装置の機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る移動する操作部材の各段階を別々に示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る操舵装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態2に係る操舵装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態1に係る操舵装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、操舵装置の機能構成の別例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る操舵装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、操舵装置100の機能構成を示すブロック図である。図2は、移動する操作部材111の各段階を別々に示す図である。これらの図に示すように、操舵装置100は、操作部材111と、移動手段112と、を有する操舵ユニット110と、制御ユニット120とを備えている。制御ユニット120は、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現する機能部として、移動制御部121と、情報取得部122と、を備えている。本実施の形態1の場合、操舵ユニット110はさらに、姿勢変化手段113と、操作状態検出手段114とを備えている。また、制御ユニット120はさらに、操作情報処理部123と、同期部124と、を備えている。
【0012】
操作部材111は、車両200を運転するために運転者Dが操作する部材である。操作部材111の形状は、特に限定されるものではなく、棒状、円環の一部が切り取られた形状などを例示できる。本実施の形態1の場合、操作部材111は、いわゆるステアリングホイールと称される円環形状の部材である。車両200は、いわゆるステアバイワイヤシステムが搭載されている。ステアバイワイヤシステムとは、運転者Dが操作部材111を操作する際の操作状態を示す信号に基づき転舵輪(不図示)などを、アクチュエータを用いて旋回させ車両200を操向するシステムである。
【0013】
移動手段112は、車両200を手動運転する際に運転者Dが操作部材111を通常操作する位置である操作位置a(図2の上段部分参照)と、操作部材111による車両200の運転を行わない非操作位置c(図2の下段部分参照)との間で操作部材111を移動させることができる装置である。非操作位置cは、例えば運転者Dに対向するように配置されたダッシュボード等の内装部材に操作部材111が収納される位置である。
【0014】
移動手段112の具体的な機構は特に限定されるものではなく、リンクを組み合わせたレージトング機構、複数個差し込まれた筒状の部材を伸縮させるテレスコピック機構などを例示できる。本実施の形態1の場合、移動手段112は、レールとレールに沿って移動する移動体を備え、移動体に取り付けられた操作部材111を操作位置aと非操作位置cとの間で移動させる。移動手段112は、一軸方向の移動だけでなく、操作部材111の移動方向に直交する方向を回転軸として操作部材111を回転移動させることもできる。
【0015】
姿勢変化手段113は、取得した信号に基づき操作部材111の姿勢を変化させる装置である。姿勢変化手段113の構造は特に限定されるものではないが、本実施の形態1の場合、環状の操作部材111を操作部材111の軸周りに回転させる事のできる電動モータを備え、操作部材111を支持する軸体を直接、または減速機を介して回転させる事で操作部材111の姿勢を変化させることができる構造を備えている。また本実施の形態1の場合、姿勢変化手段113は、運転者Dが操作部材111に入力したトルクに抗する力を発生させて車両200の走行状態を運転者Dに伝えるいわゆる反力モータの機能を併有している。
【0016】
操作状態検出手段114は、運転者Dが操作部材111を操作している状態を取得する装置である。本実施の形態1の場合、操作部材111はステアリングホイールであるので、操作状態検出手段114は、操作部材111の回転角を操作状態として検出する。操作状態検出手段114は、運転者Dが操作部材111に入力するトルクなどを検出してもかまわない。
【0017】
情報取得部122は、操作部材111が取り付けられている車両200に搭載されるECU(Electronic Control Unit)などを含む車両システム201からCAN(Controller Area Network)規格などに基づく有線通信、無線通信などにより移動手段112を動作させる移動情報を取得する。情報取得部122が取得する移動情報の一つとして、車両200が自動運転を実行している際に運転者Dが意図しない手動運転への移行を要求する強制手動運転情報を例示することができる。
【0018】
本実施の形態1の場合、情報取得部122は、車両200に搭載されるボタンやタッチパネルなどの入力装置の操作、音声、ジェスチャーなどを検出する装置からの出力により運転者Dが意図して車両システム201に生成させる自動運転の維持を要求する自動運転維持情報を不許可情報の一つとして取得する。
【0019】
また、情報取得部122は、操作部材111を操作位置aに配置させるタイミングを示すタイミング情報を取得する。タイミング情報とは、例えば、自動運転、完全自動運転が可能な特定領域において積雪、豪雨などが発生している領域に車両が移動するタイミング、落雷などにより車両200が搭載しているセンサが正常に動作しない可能性がある領域に移動するタイミング、車両200が、自動運転が許可された特定領域から非特定領域へ移動するタイミング、などを例示することができる。
【0020】
また、情報取得部122は、手動運転への移行の緊急性を示す緊急情報を取得する。緊急情報とは、例えば、車両システム201が備える複数のセンサのうちの一つ、またはいくつかに不具合が発生した場合や、天候などにより複数のセンサのうちの一つ、またはいくつかが正常に動作しない場合など正確な自動運転が維持できない状況が発生した場合に生成される情報を例示することができる。また、緊急情報には、車両周辺の道路状況により正確な自動運転が維持できない状況が発生した場合に生成される情報を含めてもよい。
【0021】
また、情報取得部122は、操作部材111の移動を中断させることを示す中断情報を取得する。中断情報は、操作部材111の移動領域(例えば操作可能領域bおよびその近傍領域)を監視する監視システムが移動領域に障害物が存在していることを検出した場合に生成されてもよい。また、ボタンやタッチパネルなどの入力装置の操作、音声、ジェスチャーなどを検出する装置からの出力により運転者Dが意図して車両システム201に中断情報を生成させてもよい。
【0022】
移動制御部121は、移動手段112の動作を制御し、操作部材111を状況に対応した位置に配置する。例えば移動制御部121は、車両200が自動運転中において情報取得部122が強制手動運転情報を取得すると、操作部材111が操作位置aに向かうように移動手段112を制御する。
【0023】
また、移動制御部121は、情報取得部122が強制手動運転情報を取得し、操作部材111が操作位置aに向かうように移動手段112を制御している際に運転者Dが意図する自動運転の維持を要求する自動運転維持情報を情報取得部122が車両システム201から取得した場合でも操作部材111の操作位置aへの移動を維持するように移動手段112を制御する。つまり、移動制御部121は、強制手動運転情報と自動運転維持情報が競合した場合、強制手動運転情報を優先的に採用する。自動運転維持情報は、操作位置aに移動しつつある操作部材111を運転者Dが押し返す操作、車両200に備えられるボタンやタッチパネルなどの入力装置の操作、音声、ジェスチャーなどを検出する装置からの出力により運転者Dが意図して車両システム201に生成させる情報の一つである。
【0024】
移動制御部121は、強制手動運転情報と紐付けられた状態のタイミング情報を情報取得部122が取得した場合、取得したタイミング情報に合わせて操作部材111が操作位置aに位置するように移動手段112を制御する。例えば移動制御部121は、手動運転に移行すべき領域である特定領域内であって悪天候の領域に車両200が到達すると予測される時刻t1よりも余裕代である所定時間前の時刻t2に操作部材111が操作位置aに配置できるように移動手段112を動作させる。具体的に例えば、移動制御部121は、非操作位置cから操作位置aに操作部材111が通常移動する通常移動時間を保持しており、時刻t2よりも通常移動時間前の時刻t3において移動手段112の動作を開始する。なお、時刻t1は、天気予報、地震波到達予報、GPSなどの情報、および車両200の速度情報、道路の混雑情報などに基づき決定することができる。
【0025】
また、移動制御部121は、強制手動運転情報と紐付けられた状態の緊急情報を情報取得部122が取得した場合、非操作位置cから操作位置aに操作部材111が通常移動する通常移動時間よりも短くなるように、操作部材111の移動速度を速くする制御を実行する。
【0026】
また、移動制御部121は、情報取得部122が中断情報を取得すると、操作部材111を操作位置aに向かわせる移動手段112の制御を中断してもよい。中断時間は限定されるものではなく、例えば緊急情報を取得していない場合より緊急情報を取得している場合は中断時間を短くするなど、取得した情報に応じて中断時間を変化させてもかまわない。
【0027】
操作情報処理部123は、非操作位置cと操作位置aの間であって運転者Dによる操作部材111の操作が可能な操作可能領域b(図2の中段参照)に操作部材111が位置する場合において、情報取得部122による強制手動運転情報の取得に基づき操作部材111による車両200の運転を可能にする。操作可能領域bは、例えば収納されていた内装部材から操作部材111が露出し、運転者Dの操作により操作部材111が回転や傾動などの操作ができる領域である。
【0028】
具体的には、操作可能領域bに位置する操作部材111を運転者Dが操作することにより操作状態検出手段114が操作部材111の回転角を操作状態として検出し、操作情報処理部123が操作状態を示す情報を車両システム201に送信することにより車両200の運転を可能にしている。
【0029】
なお、操作可能領域bに位置する操作部材111は水平面に沿って配置された状態であるため、操作部材111を回転させるのではなく水平面に対し傾動させることにより車両200を運転する場合がある。この場合、操作状態検出手段114は、操作部材111の傾動の角度を操作状態として検出する機能を備え、操作情報処理部123は、操作部材111の傾動の角度を操作位置aにおける操作部材111の操作による回転角に一致するように変換して車両システム201に送信してもかまわない。
【0030】
同期部124は、操作位置a、および操作可能領域bの少なくとも一方に操作部材111が位置する場合に、車両200が備える転舵輪の転舵角と操作部材111の姿勢とを同期させる。具体的には、車両200が備える転舵輪の転舵角に関する転舵情報を情報取得部122が取得し、転舵情報と操作部材111の姿勢とが同期するように姿勢変化手段113を同期部124が制御する。これにより、運転者Dが意図しない状態で手動運転に移行する際に車両200の転舵状態と操作部材111の姿勢とが同期しているため、運転者Dが戸惑うことなくスムーズに手動運転を実行することが可能となる。
【0031】
次に、上記の操舵装置100の処理の流れを説明する。図3は、操舵装置の処理の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、車両200が自動運転中であり、操作部材111が非操作位置cに存在している状態において、情報取得部122が車両システム201から運転者Dの意図に関わりなく強制手動運転情報を取得すると(S101:Yes)、情報取得部122が緊急情報を取得しているか否かを移動制御部121が判断する(S102)。緊急情報を取得している場合(S102:Yes)、通常速度よりも早い緊急用速度で操作部材111が移動するように移動制御部121は、移動手段112を制御し、操作部材111を操作位置aに向かわせる(S113)。
【0032】
一方、緊急情報が取得されていない場合(S102:No)、次に情報取得部122がタイミング情報を取得しているか否かを移動制御部121が判断する(S103)。タイミング情報が取得されていない場合(S103:No)、中断情報が取得されているか否かが判断され(S104)、取得されていれば(S104:Yes)予め設定された中断時間移動の制御が中断される。中断情報が取得されていない(S104:No)、または中断時間が経過した場合、予め設定されている通常速度で操作部材111が非操作位置cから操作位置aへ移動するように移動制御部121は移動手段112の制御を開始する(S106)。
【0033】
一方、タイミング情報が取得されている場合(S103:Yes)、操作部材111が操作位置aに配置されるべき時刻t2よりも通常移動時間前の時刻t3になるまで移動制御部121は制御の開始を待ち(S107:No)、時刻t3になれば(S107:Yes)、通常速度で操作部材111の移動の制御を開始する(S106)。
【0034】
次に、操作部材111が操作可能領域bに到達すると(S108:Yes)、情報取得部122は、車両システム201から転舵情報を取得し(S109)、同期部124は、操作部材111のロックを解除して転舵情報と操作部材111の姿勢とが同期するように姿勢変化手段113を制御する(S110)。
【0035】
最後に、運転者Dによる操作部材111の操作に基づき操作情報処理部123が操作情報を車両システム201に送信すると(S111:Yes)、車両システム201は、手動運転モードに移行する(S112)。
【0036】
なお、移動制御の中断の判断がフロー中に設けられる場合(S104、S105)を説明したが、情報取得部122が中断情報を取得した場合、制御ユニット120の処理に中断の処理を割り込ませてもかまわない。つまり、緊急用速度で操作部材111が移動する(S113)途中や前後において移動の制御を中断してもよく、タイミング情報を取得後(S103:Yes)の時刻t3の経過後に移動の制御を中断してもかまわない。
【0037】
本実施の形態1に係る操舵装置100によれば、自動運転実行中の車両200が、天候やセンサの不具合などにより自動運転を維持することが困難であると判断した場合は、運転者Dの意図にかかわらず手動運転にスムーズに移行できるよう操作部材111を操作位置aに移動させることができる。また、手動運転を実行すべき領域に到達することを予め予想し、適切なタイミングで操作部材111を操作位置aに移動させることができる。
【0038】
また、操作位置aに操作部材111が到達する前であっても操作部材111を操作して手動運転に移行させることができるため、特に緊急情報を取得した場合などは、早期に手動運転に移行させることが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
次に操舵装置100の実施の形態2について説明する。なお、前記実施の形態1と同様の作用や機能、同様の形状や機構や構造を有するもの(部分)には同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下では実施の形態1と異なる点を中心に説明し、同じ内容については説明を省略する場合がある。
【0040】
図4は、操舵装置100の機能構成を示すブロック図である。実施の形態2の場合、操舵装置100は、報知手段115と、意図情報出力手段116と、をさらに備えている。
【0041】
報知手段115は、運転者Dに対し情報を報知する装置である。報知手段115の情報の報知方法は特に限定されるものではなく、例えば音、光、振動、およびディスプレイへの文字表示などの少なくとも1つにより情報を報知すればよい。具体的には、移動手段112に操作部材111を移動させる制御をする前に運転者Dに操作部材111の移動の可否を問いあわせる確認情報を移動制御部121から受信した場合、報知手段115は、ブザー音を鳴らすことで確認情報を運転者Dに報知する。
【0042】
意図情報出力手段116は、ボタンやタッチパネルなどの運転者Dが意図を入力できる入力装置、音声、ジェスチャーなどから運転者Dの意図を検出する装置、操作部材111の移動中に操作部材111の移動方向と反対に操作部材111を移動させる場合のモータの状態を検出する装置などを備え、運転者Dが示す意図を意図情報として出力する。意図情報としては、報知手段115に基づき運転者Dが認識した確認情報に対応して移動の不許可を示す不許可情報を例示することができる。例えば、報知手段115がブザー音を鳴らした後、所定期間内に運転者Dが「拒否」との言葉を発した場合、意図情報出力手段116は、不許可情報を生成して情報取得部122に出力する。
【0043】
移動制御部121は、強制手動運転情報以外の移動情報を取得すると、操作部材111が移動するように移動手段112を制御する前に操作部材111の移動の可否を運転者Dに問いあわせるための確認情報を出力し、所定時間待機する。
【0044】
移動制御部121は、待機時間中に情報取得部122から不許可情報を取得すると、操作部材111の移動の制御を中止する。一方、待機時間中に不許可情報を取得しなかった場合、操作部材111の移動の制御を開始する。
【0045】
なお、情報取得部122が強制手動運転情報以外の移動情報を取得し、操作部材111が操作位置aに向かうように移動手段112を制御している際に意図情報出力手段116が不許可情報の一つである自動運転維持情報を情報取得部122に出力した場合、操作部材111の操作位置aへの移動を中止し非操作位置cへ移動するように移動手段112を制御してもよい。
【0046】
次に、実施の形態2に係る操舵装置100の処理の流れを説明する。図5は、操舵装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
情報取得部122が車両システム201から運転者Dの意図に関わりなく移動情報を取得すると(S201:Yes)、情報取得部122が強制手動運転情報を取得しているか否かを移動制御部121が判断する(S202)。強制手動運転情報を取得している場合(S202:Yes)、図3に示すステップ102に移行する。
【0048】
一方、強制手動運転情報以外の移動情報が取得されていない場合(S202:No)、移動制御部121は、確認情報を出力する(S203)。確認情報を取得した報知手段115は、運転者Dにその旨を報知する(S204)。運転者Dに報知後の所定期間内(S205:No)では、移動制御部121は、情報取得部122が不許可情報を取得したか否かを監視し(S206)、不許可情報を取得した場合(S206:Yes)、移動制御部121は、操作部材111の移動を中止する(S207)。なお、操作部材111の移動の中止には、操作部材111の移動前であって移動の制御を行わない場合、操作部材111の移動中に操作部材の移動を停止させる制御を行う場合、および操作部材111の移動方向と逆方向に操作部材111を移動させる場合のいずれかが含まれる。
【0049】
一方、運転者Dに報知後、所定期間内に不許可情報が取得されない場合(S105:Yes)、操作部材111の移動が開始される(S208)。
【0050】
本実施の形態2に係る操舵装置100によれば、運転者Dの意思と関係なく自動運転レベルに応じて操作部材の位置が変更される場合等において、運転者Dの意図を反映させ、運転者Dの快適性を保障することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0052】
例えば、車両の幅方向に延在し移動方向と交差する回転軸周りに操作部材111が回転して格納される場合を説明したが、操作位置aにおける操作部材111の姿勢を維持した状態で内装部材内に埋没する場合など、操作部材111の格納状態は限定されるものではない。
【0053】
また、移動手段112による操作部材111の移動速度を通常速度と緊急用速度の2段階として説明したが、速度を任意に変更できるものでも構わない。例えば、手動運転に移行すべき領域時刻t1よりも所定時間前の時刻t2に操作部材111が操作位置aに配置できるように時刻t2と現在時刻との時間、および当該時間で非操作位置cから操作位置aに到達できる速度を算出し、算出された速度で操作部材111を移動させてもかまわない。これによれば、操作部材111のゆっくりとした移動により手動運転に移行すべき状況に近づいていることを運転者Dに報知することができ、操作部材111の移動領域に存在する障害物の排除など排除手動運転に移行する準備が整えやすくなる。
【0054】
また、操作部材111が操作可能領域b到達後に転舵情報と操作部材111の姿勢とを同期させる場合を説明したが、操作部材111が操作可能領域bに到達するまでの時間を予測し、操作部材111が操作可能領域bに到達するまでに転舵情報と操作部材111の姿勢が合致するように同期制御を実行してもかまわない。
【0055】
また、図6に示すように、操舵装置100は、無線通信手段130を備えても構わない。操舵装置100は、無線通信手段130を介して運転者Dなどが保有するスマートフォンなどの携帯端末装置に確認情報を送信し、携帯端末装置から不許可情報を無線通信により受信する。また、携帯端末装置は、プログラムを実行することにより、確認情報を運転者Dに報知する報知手段と、確認情報に対応する運転者Dの意図を受け付け、不許可情報を出力する意図情報出力手段と、が実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、自動運転、および手動運転が可能な車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
100…操舵装置、110…操舵ユニット、111…操作部材、112…移動手段、113…姿勢変化手段、114…操作状態検出手段、115…報知手段、116…意図情報出力手段、120…制御ユニット、121…移動制御部、122…情報取得部、123…操作情報処理部、124…同期部、200…車両、201…車両システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6