(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240312BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240312BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240312BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240312BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L29/04 D
C08K3/34
C08L23/26
C08L53/02
(21)【出願番号】P 2020074785
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】福井 康治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】堀池 勇馬
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007384(JP,A)
【文献】特開2005-145995(JP,A)
【文献】特開2015-212341(JP,A)
【文献】特開平01-308454(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118034(WO,A1)
【文献】特開2006-028223(JP,A)
【文献】特開2006-028222(JP,A)
【文献】特開2006-213798(JP,A)
【文献】特開2001-226538(JP,A)
【文献】特開平03-014854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)40~80質量%、芳香族ポリアミド樹脂(B)0~20質量%、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)
5~25質量%、耐衝撃材(D)10~30質量%、及び(A)~(D)以外の成分(E)
0質量%以上を含み、(A)~(E)の合計は100質量%である、ポリアミド樹脂組成物であって、
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種のポリアミド樹脂であり、
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていても良い、
ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記粘土鉱物は、スメクタイト族、カオリナイト族、バーミキュライト族及びマイカ族からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のエチレン含有量は、25~50モル%である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記耐衝撃材(D)は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体、酸変性スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体及びこれらの水素添加物かならなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物から得られる成形品。
【請求項6】
前記成形品は、高圧ガスと接する、請求項5に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有することから、エンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、機械部品、電気電子部品等に広く利用されている。特に、ポリアミド樹脂は、水素自動車で使用される水素タンクにおける、樹脂製の内層(ライナー)としての用途が注目されている。そして、水素タンク用の樹脂には、高圧水素の充填及び放圧の繰り返しに耐えうる強度が要求される。このような要求に対して、特許文献1には、ポリアミド樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体との合計100重量部に対して、ポリアミド樹脂85~99重量部及びエチレン-ビニルアルコール共重合体1~15重量部を配合してなる、高圧水素に触れる成形品用のポリアミド樹脂組成物が提案されている。また、レーザー溶着の場合にレーザー透過側材料としてレーザー光が溶着させたい部分まで十分に透過し、接合面のレーザー吸収材を発熱し溶融する必要がある。このような要求に対して、特許文献2には、レーザー溶着可能な水素タンクライナー用材料として、ポリアミド6、共重合ポリアミド及び耐衝撃材を含むポリアミド樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-212341号公報
【文献】特開2009-191871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、ポリアミド6が90重量部とエチレン-ビニルアルコール共重合体が10重量部とのみからなる実施例が1つしか開示されておらず、前記比率以外で効果を奏するか否かについて何ら開示されていなかった。また、本発明者らの知見によれば、特許文献2に開示されているようなポリアミド樹脂組成物のレーザー透過性について、更なる改善の余地があることが見いだされた。
【0005】
よって、本発明の課題は、機械的特性及びレーザー透過性に優れる、ポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
[1]脂肪族ポリアミド樹脂(A)40~80質量%、芳香族ポリアミド樹脂(B)0~20質量%、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)2~30質量%、耐衝撃材(D)10~30質量%、及び(A)~(D)以外の成分(E)0~48質量%を含み、(A)~(E)の合計は100質量%である、ポリアミド樹脂組成物であって、前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種のポリアミド樹脂であり、前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていても良い、ポリアミド樹脂組成物。
[2]前記粘土鉱物は、スメクタイト族、カオリナイト族、バーミキュライト族及びマイカ族からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のエチレン含有量は、25~50モル%である、[1]又は[2]のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記耐衝撃材(D)は、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体、酸変性スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体及びこれらの水素添加物かならなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかのポリアミド樹脂組成物から得られる成形品。
[6]前記成形品は、高圧ガスと接する、[5]の成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械的特性及びレーザー透過性に優れる、ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)40~80質量%、芳香族ポリアミド樹脂(B)0~20質量%、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)2~30質量%、耐衝撃材(D)10~30質量%、及び(A)~(D)以外の成分(E)0~48質量%を含み、(A)~(E)の合計は100質量%であり、前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種のポリアミド樹脂であり、前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていても良い。
ポリアミド樹脂組成物は、機械的特性及びレーザー透過性に優れるのみならず、低ガス透過性(ガスバリア性)にも優れる。
【0010】
≪脂肪族ポリアミド樹脂(A)≫
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていても良い。即ち、脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂及び粘土鉱物が分散されていない脂肪族ポリアミド樹脂からなる少なくとも1種の脂肪族ポリアミド樹脂である。また、脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、芳香環及び脂環式基を有さないポリアミド樹脂である。脂肪族ポリアミド樹脂(A)としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)が挙げられる。
【0011】
<脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)>
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0012】
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、6~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、6~12であることが好ましい。
【0013】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられ、これらの組合せの等モル塩が好ましく用いられる。
【0015】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。
【0016】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
【0017】
<脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)>
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上であり、かつ、芳香環及脂環式基を有さない脂肪族ポリアミド樹脂である。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0018】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の具体例としては、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)等が挙げられる。
【0019】
<好ましい態様>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリアミド6、及びポリアミド6/66からなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0020】
<粘土鉱物>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていても良い。粘土鉱物としては、スメクタイト族、カオリナイト族、バーミキュライト族及びマイカ族等が挙げられる。
【0021】
スメクタイト族としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。カオリナイト族としては、カオリナイト、ハロサイト等が挙げられる。バーミキュライト族としては、ジオクタヘドラルバーミキュライト、トリオクタヘドラルバーミキュライト等が挙げられる。マイカ族としては、テニオライト、テトラシリシックマイカ、マスコバイト、イライト、セリサイト、フォロゴバイト、バイオタイト等が挙げられる。
【0022】
粘土鉱物は、スメクタイト族であることが好ましい。
この他に粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、例えば、特開平3-14854号公報に記載されたとおりである。
【0023】
<脂肪族ポリアミド樹脂(A)の特性>
また、JIS K-6920に準拠して、96質量%硫酸中、濃度1質量%、25℃で測定した脂肪族ポリアミド(A)の相対粘度は、機械的特性及び成形性の観点から、1.5以上5.0以下であることが好ましく、2.0以上4.5以下であることがより好ましく、2.3以上3.5以下であることが特に好ましい。粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂の相対粘度は、当該粘土鉱物を除いた脂肪族ポリアミド樹脂を用いて測定された相対粘度である。相対粘度の測定は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれの脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド樹脂(A)全体の相対粘度とすることができる。
【0024】
<脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造装置>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。また、粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂は、例えば、特開平3-14854号公報に記載された方法により、製造することができる。
【0025】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。即ち、脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていても良い脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)、粘土鉱物が分散されていても良い脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)、粘土鉱物が分散されていても良い脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)と粘土鉱物が分散されていても良い脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の組み合わせが挙げられる。脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、粘土鉱物が分散されていない脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)、粘土鉱物が分散されていない脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)、又は、粘土鉱物が分散された脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)と粘土鉱物が分散された脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の組み合わせであることが好ましい。
【0026】
≪芳香族ポリアミド樹脂(B)≫
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、芳香環を含むポリアミド樹脂である。よって、芳香族ポリアミド樹脂(B)としては、芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)及び芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)が挙げられる。
【0027】
<芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)>
芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。よって、芳香族ホモポリアミド樹脂(B-2)としては、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せからが挙げられる。ここで、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸は、前記したものが挙げられる。
【0028】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、脂環式ジカルボン酸としては、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0029】
芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンが挙げられる。また、脂環式ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0030】
芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)の具体例としては、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンスクシナミド(ポリアミドMXD4)、ポリメタキシリレングルタミド(ポリアミドMXD5)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンスクシナミド(ポリアミドPXD4)、ポリパラキシリレングルタミド(ポリアミドPXD5)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンスベラミド(ポリアミドPXD8)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)等が挙げられる。
【0031】
<芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)>
芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)は、芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上である、芳香族ポリアミド樹脂である。ここで、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)としては、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せから選択されるモノマーの共重合体である芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。ここで、芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、ジアミン及びジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種のジアミンと1種のジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。ここで、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸は、前記したものが挙げられる。
【0032】
芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)の具体例としては、ポリ(テトラメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド4T/6T)、ポリ(テトラメチレンテレフタラミド/テトラメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド4T/46)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/2-メチルペンタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/M5T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/カプロアミド)共重合体(ポリアミド6T/6)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/612)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/612)等が挙げられる。
【0033】
また、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)の具体例としては、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/12)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ノナメチレンイソフタラミド/2-メチルオクタメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/9I/M8I)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N/11)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/1012)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10N/11)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10N/12)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10N/1010)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10N/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/1012)等が挙げられる。
【0034】
また、芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)の具体例としては、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/1212)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12N/11)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12N/12)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12N/1210)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12N/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/1212)等が挙げられる。
【0035】
<好ましい態様>
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、脂肪族ジカルボン酸とm-若しくはp-キシレンジアミンとからなる芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)又はテレフタル酸に由来する単位40~95モル%及びイソフタル酸に由来する単位5~60モル%と、脂肪族ジアミンとからなる芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)であることが好ましく、脂肪族ジカルボン酸とm-キシレンジアミンとからなる芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)又は脂肪族ジアミンとイソフタル酸及びテレフタル酸とからなるモノマー成分に由来する単位を60~99質量%で含み、脂肪族ポリアミド成分に由来する単位を1~40質量%で含む芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)であることがより好ましい。
【0036】
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、粘土鉱物が分散されていても良い。粘土鉱物及び含有量については、脂肪族ポリアミド樹脂(A)で前記及び後述するとおりである。
【0037】
芳香族ポリアミド樹脂(B)の製造装置及び重合方法としては、脂肪族ポリアミド樹脂(A)において前記した製造装置及び重合方法が挙げられる。
【0038】
芳香族ポリアミド樹脂(B)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0039】
≪エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)≫
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)は、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物とも呼ばれる。エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体を、アルカリ触媒等を用いて公知の方法により、ケン化して得られる。
【0040】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のエチレン含有量は、レーザー透過性がより優れる観点から、25~50モル%であることが好ましく、26~49モル%であることが特に好ましい。ここで、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)が、エチレン含有量の異なる2種類以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体の混合物からなる場合には、それぞれのエチレン含有量と混合質量比から算出される値をエチレン含有量とする。
【0041】
また、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のビニルエステル成分のケン化度は、ガスバリア性の観点から、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98%モル以上であることが更に好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。ここで、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)がケン化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、それぞれのケン化度と混合質量比から算出される値をケン化度とする。なお、エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0042】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のメルトフローレート(MFR)(210℃、2,160g荷重下)は、溶融時の粘度を適正範囲にして望ましい成形性を確保し、溶融張力を過度に低下させず、成形時にドローダウン等の問題の発生を防止する観点から、0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、0.3g/10分以上50g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上20g/10分以下であることが更に好ましい。
【0043】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更なるコモノマーに由来する構造単位を含んでいてもよい。このようなコモノマーとして、例えば、WO2016/039445、WO2018/088347に記載されたエチレン-ビニルアルコール共重合体のためのコモノマーが挙げられる。更なるコモノマーに由来する構造単位は、0~10モル%であることが好ましく、0~5モル%であることが特に好ましい。
【0044】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0045】
≪耐衝撃材(D)≫
ポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃材(D)を含む。耐衝撃材(D)としては、ゴム状重合体が挙げられる。耐衝撃材(D)は、ASTM D-790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
【0046】
耐衝撃材(D)としては、(エチレン及び/又はスチレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はスチレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等が挙げられる。
【0047】
(エチレン及び/又はスチレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はスチレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素原子数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、 4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。
【0048】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。また、また共重合体が非共役ジエン等のポリエンを共重合した共重合体である場合、その水素添加物であってもよい。
【0049】
(エチレン及び/又はスチレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はスチレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、α,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。
【0050】
耐衝撃材(D)として用いられる(エチレン及び/又はスチレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はスチレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で、一部又は全部のエチレン及び/又はスチレンが変性されていてもよい。耐衝撃材(D)が、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された前記共重合体である場合、脂肪族ポリアミド樹脂(A)、又は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)と芳香族ポリアミド樹脂(B)との組合せに対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
【0051】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0052】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基を含む化合物、すなわちカルボン酸及びその誘導体の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。ポリアミド樹脂(A)、又は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)と芳香族ポリアミド樹脂(B)との組合せに対して親和性を有する官能基を含む化合物は、無水マレイン酸であることが好ましい。
【0053】
耐衝撃材(D)における酸無水物基の含有量は、特に限定されないが、25μmol/g超100μmol/g未満であることが好ましく、35μmol/g以上95μmol未満であることがより好ましく、40~90μmol/gであることが特に好ましい。含有量が25μmol/g超過である場合、高い溶融粘度の組成物を得ることができ、ブロー成形において目標の肉厚寸法を得ることができる。また含有量が100μmol/g未満である場合、溶融粘度が高すぎず、押出機に負荷を抑えて良好に成形加工できる。耐衝撃材(D)が有する酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定される。
【0054】
耐衝撃材(D)として、酸無水物基の含有量が異なる2種以上の耐衝撃材を用いる場合、耐衝撃材(D)における酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定されるのが好ましいが、それぞれの耐衝撃材の酸無水物基の含有量とその混合比が判明している場合、それぞれの酸無水物基の含有量にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、耐衝撃材(D)の酸無水物量としてもよい。
【0055】
耐衝撃材(D)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2160gで測定したMFRが0.1~10.0g/10分であることが好ましい。この範囲にあることで、押出成形におけるブロー成形時にパリソンの形状が不安定になることが抑制され、成形体の厚みがより均一になる傾向があるとともに、パリソンのドローダウンが大きくなりすぎず、良好なブロー成形性が得られる傾向がある。
【0056】
耐衝撃材(D)は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された(エチレン及び/又はスチレン)/α-オレフィン系共重合体、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された(エチレン及び/又はスチレン)/α-オレフィン/(エチレン及び/又はスチレン)系共重合体、並びに(エチレン及び/又はスチレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体であることが好ましい。耐衝撃材(D)は、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体、酸変性スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体及びこれらの水素添加物かならなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0057】
耐衝撃材(D)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0058】
≪(A)~(D)以外の成分(E)≫
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(D)以外の成分(E)を含むことができる。このような成分(E)としては、無機化合物、含窒素化合物、可塑剤、耐熱剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の機能性付与剤等が挙げられる。
【0059】
無機化合物としては、ハロゲン化金属及びハロゲン化金属以外の無機化合物が挙げられる。
【0060】
ハロゲン化金属は、ハロゲンと金属との化合物である。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。金属としては、第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素~第12族元素(例えば、遷移金属)等が挙げられる。ハロゲン化金属における金属は、第1族元素(アルカリ金属)、第11族元素(銅族)の金属であることが好ましい。金属が第1族元素(アルカリ金属)である場合のハロゲン化金属としては、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム又は塩化ナトリウム等が挙げられる。また、金属が第11族元素(銅族)である場合のハロゲン化金属としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化金属は、ヨウ化カリウム及び/又はヨウ化第一銅であることが特に好ましい。
【0061】
ハロゲン化金属以外の無機化合物としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、炭酸金属塩、ケイ酸金属塩、チタン酸金属塩、ホウ酸金属塩、硫酸金属塩、硝酸金属塩等が挙げられる。ハロゲン化金属以外の無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、水酸化アルミニウム、ドロマイト、カオリン、シリカ、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等が挙げられる。
【0062】
含窒素化合物としては、メラミン、ベングアナミン、ジメチロール尿素及びシアヌール酸等が挙げられる。
【0063】
上記した以外の機能性付与剤としては、例えば、特開2002-370551号公報に記載された成分が挙げられる。
【0064】
成分(E)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。成分(E)は、1種以上の無機化合物であることが好ましい。また、成分(E)は、無機化合物による効果がより高まる観点から、1種以上の無機化合物と1種以上の含窒素化合物との組合せであることがより好ましく、1種以上のハロゲン化金属と1種以上の含窒素化合物との組合せであることが特に好ましい。
【0065】
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)以外のポリアミド樹脂を含まないことが好ましい。即ち、ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)のみからなることが好ましい。
【0066】
≪含有量≫
ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、各成分の含有量は以下の通りである。なお、ポリアミド樹脂組成物において、(A)~(E)の合計は100質量%である。
【0067】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、40~80質量%である。ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、50~80質量%であることが好ましく、75~80質量%であることが特に好ましい。また、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の全質量に対する、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、60~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂(A)の全質量に対する、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の合計の含有量は、良好なガスバリア性と低温で優れた耐衝撃性を発現させる観点から、60~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることが特に好ましい。
【0068】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂である場合、粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂中の粘土鉱物の含有量は、特に限定されないが、0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることが特に好ましい。
【0069】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)中の、粘土鉱物が分散された脂肪族ポリアミド樹脂の含有量は、0~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることが特に好ましい。
【0070】
芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量は、0~20質量%である。ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、0~15質量%であることが好ましく、0~12質量%であることが特に好ましい。
【0071】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)及び芳香族ポリアミド樹脂(B)の合計の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、51質量%超88質量%以下であることがより好ましく、51~85質量%であることが特に好ましい。
【0072】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の含有量は、2~30質量%である。ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の含有量は、レーザー透過性がより優れる観点から、5~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~25質量%であることが特に好ましい。
【0073】
耐衝撃材(D)の含有量は、10~30質量%である。ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、耐衝撃材(D)の含有量は、耐衝撃性の観点から、12~30質量%であることが好ましく、15~30質量%であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂組成物を塩酸で150℃16時間処理することで、ポリアミド成分を加水分解させることができ、未分解物成分を耐衝撃材(D)成分として取り出すことができる。これにより、耐衝撃材(D)の含有量を求めることができる。
【0074】
(A)~(D)以外の成分(E)の含有量は、0~48質量%である。機械物性や成形加工性の観点から、0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。
成分(E)がハロゲン化金属である場合、ハロゲン化金属の含有量は、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることが特に好ましい。
【0075】
≪ポリアミド樹脂組成物の製造方法≫
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。脂肪族ポリアミド樹脂(A)、芳香族ポリアミド樹脂(B)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)、耐衝撃材(D)、及び(A)~(D)以外の成分(E)との混合は、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロール等、通常公知の溶融混練機を用いることができる。限定されない混合の具体的な方法としては、二軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法;一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法;又は、一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法等が挙げられる。
【0076】
[ポリアミド樹脂組成物の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形品の製造に用いることができる。具体的には、ポリアミド樹脂組成物は、ブロー成形によるブロー成形品の製造、又は押出成形による押出成形品の製造に用いることができる。ポリアミド樹脂からブロー成形によりブロー成形品を製造する方法は、一般的には、通常のブロー成形機を用いて、パリソンを形成した後、ブロー成形を実施することを含む。パリソン形成時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点より10℃から70℃高い温度範囲であることが好ましい。
【0077】
ポリアミド樹脂から押出成形により押出成形品を製造する方法は、一般的には、ポリエチレン等のポリオレフィンや他の熱可塑性樹脂と共押出した後、ブロー成形を行い、多層構造体を得ることを含む。ここで、ポリアミド樹脂組成物層とポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂層の間に接着層を設けることも可能である。成形品が多層構造体である場合、本発明のポリアミド樹脂組成物は外層、内層のいずれにも使用し得る。
【0078】
ブロー成形によるブロー成形品又は押出成形による押出成形品としては、特に限定されないが、スポイラー、エアインテークダクト、インテークマニホールド、レゾネーター、燃料タンク、ガスタンク、作動油タンク、燃料フィラーチューブ、燃料デリバリーパイプ、その他各種ホース・チューブ・タンク類等の自動車部品、電動工具ハウジング、パイプ類等の機械部品を始め、タンク、チューブ、ホース、フィルム等の電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途が好適に挙げられる。
【0079】
ポリアミド樹脂組成物は、ガスバリア性に優れるため、高圧ガスと接触する成形品、たとえば、高圧ガスに接するタンク、チューブ、ホース、フィルム等に好適に用いられる。前記ガスの種類としては、特に制限されず、水素、窒素、酸素、ヘリウム、メタン、ブタン、プロパン等が挙げられ、極性の小さいガスが好ましく、水素、窒素、メタンが特に好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。表における各成分の含有量は、いずれも、質量%である。なお、実施例および比較例において使用した成分及び成形品の物性評価方法を以下に示す。
【0081】
[使用した成分]
1.脂肪族ポリアミド樹脂(A)
(1)脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)
PA6:ポリアミド6(宇部興産株式会社製:相対粘度=2.98)
PA6-NCH(1):ポリアミド6の粘土鉱物分散品(宇部興産株式会社製:相対粘度=2.72、モンモリロナイト含有量:2.0質量%)
PA6-NCH(2):ポリアミド6の粘土鉱物分散品(宇部興産株式会社製:相対粘度=3.45、モンモリロナイト含有量:2.0質量%)
PA66:ポリアミド66(宇部興産株式会社製:相対粘度=2.75)
(2)脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)
PA6/66-NCH:ポリアミド6/66の粘土鉱物分散品(宇部興産株式会社製:相対粘度=3.38、モンモリロナイト含有量:1.8質量%)
PA6/66:ポリアミド6/66(宇部興産株式会社製:相対粘度=2.47)
【0082】
なお、実施例で使用した脂肪族ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、JIS K 6920に準じて、96質量%硫酸中濃度1質量%、25℃で測定した値である。なお、粘土鉱物分散品の相対粘度は、当該粘土を除いた脂肪族ポリアミド樹脂の相対粘度である。
【0083】
2.芳香族ポリアミド樹脂(B)
(1)芳香族ホモポリアミド樹脂(B-1)
MXD6:ポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学株式会社製、S6001)
(2)芳香族共重合ポリアミド樹脂(B-2)
PA6T/6I:ポリアミド6T/6I共重合体(エムスケミー・ジャパン株式会社製、Grivory G21)
【0084】
3.エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)
EVOH(1):エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製、エバールG156、エチレン含有量47モル%)
EVOH(2):エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製、エバールSP521B、エチレン含有量27モル%)
EVOH(3):エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製、エバールH101B、エチレン含有量38モル%)
EVOH(4):エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製、エバールF101B、エチレン含有量32モル%)
4.耐衝撃材(D)
タフマーMH5020:無水マレイン酸変性エチレン・ブチレン共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)MH5020:密度ρ=0.86)
5.その他の成分(E)
耐熱剤として、CuI/KI=1/6(質量比)
CuI:ヨウ化第一銅(伊勢化学工業株式会社製)
KI:粉末ヨウ化カリウム(三井ファイン株式会社製)
【0085】
[ポリアミド樹脂組成物ペレットの作製]
表1に記載した各成分を二軸混練機TEX44HCT、シリンダー径44mm、L/D35で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転120rpm、吐出量40kg/hにて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
得られたペレットを下記特性評価に使用した。
【0086】
[機械的特性]
(1)引張最大引張強さ、及び引張破断点伸度
前記ペレットを用いて、ASTMD638に従い、厚み3.2mmの試験片を用いて23℃で引張試験を実施した。
(2)曲げ強さ、及び曲げ弾性率
前記ペレットを用いて、ASTMD790に従い、厚み6.4mmの短冊状試験片を用いて23℃で曲げ試験を実施した。
(3)Izod衝撃強さ
前記ペレットを用いて、ASTMD256に従い、厚み6.4mmの短冊状試験片を用いて後加工でノッチをつけて23℃でIzod衝撃試験を実施した。
なお、引張最大引張強さが45MPa以上であり、引張破断点伸度が120%以上であり、曲げ強さが55MPa以上であり、曲げ弾性率が1.5GPa以上であり、Izod衝撃強さが750J/m以上である場合は、「機械的特性に優れる」と判断した。
【0087】
[レーザー透過率]
パワーエネルギーアナライザー(コヒレント・ジャパン社製 FieldMaster(登録商標)GS LM-45)を用いて、ASTM1号ダンベルの形状に成形した厚さ3.2mmものについて測定した。
なお、レーザー透過率が10.5%以上である場合は、「レーザー透過性に優れる」と判断した。
【0088】
[ヘリウム(He)ガス透過係数]
理化精機工業(株)製非定常透過計測システムを用いて、以下の試験方法で測定した。
評価試験サンプルサイズ:47mmΦ(T-ダイフィルム成形機で50μmの成形したもの)
セル温度 : 30℃
評価ガス : 純ヘリウム(99.99995%)
供給圧 : 1.0kgf/cm2
なお、ヘリウム(He)ガス透過係数が2.0×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)未満である場合は、「低ガス透過性(ガスバリア性)に優れる」と判断した。
【0089】
結果を表1に示す。なお、表中の組成の単位は質量%である。
【0090】
【0091】
表1の結果から明らかなとおり、実施例のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性及びレーザー透過性に優れていた。また、実施例3、5~6、8、10~11は、Heガス透過係数が小さく、低ガス透過性(ガスバリア性)に優れていた。
特に、実施例1及び2の比較、並びに、実施例5、7及び8の比較により、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のエチレン含有量が多くなる場合、レーザー透過性がより優れていた。
また、実施例3、5及び6の比較、並びに、実施例10、11及び12の比較により、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の含有量が多くなる場合、レーザー透過性がより優れていた。
また、実施例3及び4の比較により、樹脂組成物が芳香族ポリアミド樹脂(B)を含む場合、曲げ強さ及び曲げ弾性率がより優れていた。
比較例1の樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量が80質量%を超え、かつ、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)を含まないため、機械的特性が劣っていた。
比較例2~5の樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)を含まないため、機械的特性及びレーザー透過性の少なくとも一方が劣っていた。
比較例6の樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の含有量が30質量%を超えるため、機械的特性が劣っていた。
また、比較例1~3及び5は、Heガス透過係数が大きく、ガスバリア性に劣っていた。