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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240312BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/18
B41J2/14 305
B41J2/14 611
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020074940
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021171936
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福澤 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】平井 栄樹
(72)【発明者】
【氏名】長沼 陽一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 捷太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷内 章紀
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208445(JP,A)
【文献】特開2018-114675(JP,A)
【文献】特開2011-121211(JP,A)
【文献】特開2020-116902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延びており、液体を吐出するノズルが設けられるノズル流路と、
前記第1方向に交差する第2方向に延びており、前記第1圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第1連通流路と、
前記第2方向に延びており、前記第2圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第2連通流路と、
前記第1方向に延びる部分を有しており、前記第1連通流路とは異なる経路で前記第1圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第1分岐流路と、を有する、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1分岐流路は、
前記第1方向に延びており、前記第1圧力室に連通する第1流路と、
前記第2方向に延びており、前記第1流路と前記ノズル流路とを連通させる第2流路と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1圧力室および前記ノズル流路のそれぞれは、前記第1方向に延びており、
前記第1連通流路は、前記第1方向における一方側の前記第1圧力室の端部と、前記第1方向における他方側の前記ノズル流路の端部とを連通させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1分岐流路は、前記第1連通流路よりも前記ノズルに近い位置で前記ノズル流路に連通する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1方向に延びる部分を有しており、前記第2連通流路とは異なる経路で前記第2圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第2分岐流路をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズル流路とは異なる経路で前記第1分岐流路と前記第2分岐流路とを連通させる第3連通流路をさらに有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1分岐流路と前記第2分岐流路との間を隔てる第1隔壁と、
前記第1連通流路と前記第1分岐流路との間を隔てる第2隔壁と、をさらに有し、
前記第1方向における前記第1隔壁の厚さは、前記第1方向における前記第2隔壁の厚さよりも薄い、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1分岐流路および前記第2分岐流路は、前記第2方向に延びる共用の部分を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1圧力室および前記第2圧力室が設けられる圧力室基板と、
前記ノズル流路、前記第1連通流路、前記第2連通流路および前記第1分岐流路が設けられる連通板と、
前記ノズルが設けられるノズル基板と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1分岐流路の壁面は、前記圧力室基板で構成される第1壁面と、前記第2方向で前記第1壁面とは反対側に位置し、前記連通板で構成される第2壁面と、を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記ノズル流路の壁面は、前記連通板で構成される第3壁面と、前記第2方向で前記第3壁面とは反対側に位置し、前記ノズル基板で構成される第4壁面と、を有する、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第1圧力室に連通し、前記第1圧力室に液体を供給する供給流路と、
前記第2圧力室に連通し、前記第2圧力室から液体が排出される排出流路と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記第2圧力室に連通し、前記第2圧力室に液体を供給する供給流路と、
前記第1圧力室に連通し、前記第1圧力室から液体が排出される排出流路と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第1分岐流路は、前記第2方向に延びており、前記ノズル流路に連通する第2流路を有しており、
前記第2方向でみたときの前記第2流路の面積は、前記第2方向でみたときの前記第1連通流路の面積に等しい、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
駆動電圧が印加されることにより前記第1圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第1エネルギー生成素子と、
駆動電圧が印加されることにより前記第2圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第2エネルギー生成素子と、
前記第1エネルギー生成素子および前記第2エネルギー生成素子の両方に駆動電圧を印加するための駆動回路と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記駆動回路は、前記第2方向でみたとき、前記第1方向における前記第1エネルギー生成素子と前記第2エネルギー生成素子との間に位置する、
ことを特徴とする請求項15に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンターに代表される液体吐出装置は、一般に、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する。液体吐出ヘッドは、例えば、特許文献1に開示されるように、液体に圧力を付与する圧力室と、圧力室に連通し、液体を吐出するノズルが設けられる流路と、を有し、これらが互いに連通する。特許文献1では、当該圧力室および当該流路が所定方向に沿って複数配列される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-184372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力室からノズルに至る流路の形状によっては、圧力室からの圧力がノズルに伝達し難い場合がある。例えば、圧力室からノズルに至る流路が長くなったり屈曲した部分を有する形状をなしたりする場合、圧力室からの圧力がノズルに伝達し難くなる。この場合、圧力室からの圧力をノズルに伝達しやすくするには、圧力室からノズルに至る流路の断面積を大きくすることにより、当該流路の流路抵抗を低くすることが考えられる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のように圧力室からノズルに至る流路の数が1個である場合、当該流路の断面積を大きくすると、隣り合う流路間を隔てる隔壁が撓みやすくなる。このため、従来では、圧力室からの圧力をノズルに効率的に伝達させようとすると、当該隔壁の撓みに起因する構造クロストークが生じるという課題がある。
【0006】
なお、「構造クロストーク」とは、互いに隣り合う2つの流路の間で、一方の流路における振動が他方の流路に伝搬することにより、当該他方の流路に設けられるノズルからのインクの吐出特性を低下させる現象をいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、液体に圧力を付与する第1圧力室と、液体に圧力を付与する第2圧力室と、第1方向に延びており、液体を吐出するノズルが設けられるノズル流路と、前記第1方向に交差する第2方向に延びており、前記第1圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第1連通流路と、前記第2方向に延びており、前記第2圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第2連通流路と、前記第1方向に延びる部分を有しており、前記第1連通流路とは異なる経路で前記第1圧力室と前記ノズル流路とを連通させる第1分岐流路と、を有する。
【0008】
本発明の好適な態様に係る液体吐出装置は、前述の態様の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドにおける液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の構成例を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る液体吐出ヘッドにおける流路の模式図である。
図3図2中のA-A線断面図である。
図4図3に示す液体吐出ヘッドの一部を示す拡大断面図である。
図5】第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部を示す拡大断面図である。
図6】第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部を示す拡大断面図である。
図7】第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの一部を示す拡大断面図である。
図8】参考例に係る液体吐出ヘッドにおける流路の模式図である。
図9図8中のA1-A1線断面図である。
図10図8中のA2-A2線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
なお、以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。X軸は、「第1軸」の一例である。Z軸は、「第2軸」の一例である。Y軸は、「第3軸」の一例である。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。X軸に沿った方向は、「第1方向」の一例である。Z軸に沿った方向は、「第2方向」の一例である。Y軸に沿った方向は、「第3方向」の一例である。X1方向は、「第1方向の一方側」の一例である。X2方向は、「第1方向の他方側」の一例である。ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0012】
A:第1実施形態
A1:液体吐出装置の全体構成
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100の構成例を示す模式図である。液体吐出装置100は、インク等の液体を液滴として媒体11に対して吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体11は、例えば、印刷用紙である。なお、媒体11は、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象であってもよい。
【0013】
液体吐出装置100には、液体容器12が装着される。液体容器12は、インクを貯留する。液体容器12の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで構成される袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器12に貯留されるインクの種類は任意である。
【0014】
液体吐出装置100は、図1に示すように、制御ユニット21と搬送機構22と移動機構23と液体吐出ヘッド24とを有する。制御ユニット21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素の動作を制御する。ここで、制御ユニット21は、「制御部」の一例であり、液体吐出ヘッド24におけるインクの吐出動作を制御する。
【0015】
搬送機構22は、制御ユニット21による制御のもとで、媒体11をY軸に沿って搬送する。移動機構23は、制御ユニット21による制御のもとで、液体吐出ヘッド24をX軸に沿って往復させる。移動機構23は、液体吐出ヘッド24を収容する略箱型の搬送体231と、搬送体231が固定される無端の搬送ベルト232と、を有する。なお、搬送体231に搭載される液体吐出ヘッド24の数は、1個に限定されず、複数個でもよい。また、搬送体231には、液体吐出ヘッド24のほかに、前述の液体容器12が搭載されてもよい。
【0016】
液体吐出ヘッド24は、制御ユニット21による制御のもと、液体容器12から供給されるインクを複数のノズルのそれぞれから媒体11に吐出する。この吐出が搬送機構22による媒体11の搬送と移動機構23による液体吐出ヘッド24の往復移動とに並行して行われることにより、媒体11の表面に画像が形成される。
【0017】
A2:液体吐出ヘッドの流路
図2は、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド24における流路の模式図である。液体吐出ヘッド24には、図2に示すように、複数のノズルNと複数の個別流路Pと第1共通液室R1と第2共通液室R2とが設けられるとともに、循環機構26が接続される。
【0018】
具体的に説明すると、液体吐出ヘッド24は、媒体11に対向する表面を有し、当該表面には、図2に示すように、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNは、Y軸に沿って配列される。複数のノズルNのそれぞれは、Z2方向にインクを吐出する。
【0019】
ここで、複数のノズルNの集合は、ノズル列Lを構成する。また、複数のノズルNは、ピッチθで等間隔に配列される。ピッチθは、Y軸に沿う方向における複数のノズルNの中心間の距離である。
【0020】
複数のノズルNのそれぞれには、個別流路Pが連通する。複数の個別流路Pのそれぞれは、X軸に沿って延びており、相異なるノズルNに連通する。複数の個別流路Pの集合は、個別流路列25を構成する。また、複数の個別流路Pは、Y軸に沿って配列される。
【0021】
図2に示すように、各個別流路Pは、圧力室Caと圧力室Cbとノズル流路Nfとを有する。ここで、圧力室Caは、第1圧力室の一例である。圧力室Cbは、第2圧力室の一例である。各個別流路Pにおける圧力室Caおよび圧力室Cbのそれぞれは、X軸に沿って延びており、当該個別流路Pに連通するノズルNから吐出されるインクが貯留される空間である。図2に示す例では、複数の圧力室Caは、Y軸に沿って配列される。同様に、複数の圧力室Cbは、Y軸に沿って配列される。なお、各個別流路Pにおいて、Y軸に沿う方向における圧力室Caおよび圧力室Cbの位置は、図2に示す例では互いに同じであるが、互いに異なってもよい。また、以下では、圧力室Caおよび圧力室Cbを特に区別しない場合に単に「圧力室C」ともいう。
【0022】
各個別流路Pにおける圧力室Caと圧力室Cbとの間には、ノズル流路Nfが配置される。各個別流路Pにおいて、ノズル流路Nfは、X軸に沿って延びており、圧力室Caと圧力室Cbとを連通させる流路の少なくとも一部を構成する。また、複数のノズル流路Nfは、互いに間隔をあけてY軸に沿って配列される。各ノズル流路Nfには、ノズルNが設けられる。各ノズル流路Nfでは、前述の圧力室Caおよび圧力室Cb内の圧力が変化することで、ノズルNからインクが吐出される。
【0023】
複数の個別流路Pには、第1共通液室R1および第2共通液室R2が連通する。第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれは、複数のノズルNが分布する全範囲に亘ってY軸に沿って延びる空間である。Z軸に沿う方向にみて(Z軸に沿う方向からみて)、第1共通液室R1と第2共通液室R2との間には、前述の個別流路列25および複数のノズルNが位置する。言い換えると、第1共通液室R1と第2共通液室R2のX軸に沿う方向における間に、個別流路列25や複数のノズルNが位置する。なお、以下では、Z軸に沿う方向にみることを「平面視」ともいう。
【0024】
ここで、第1共通液室R1は、各個別流路PのX2方向での端部E1に接続される。第1共通液室R1には、各個別流路Pに供給するためのインクが貯留される。一方、第2共通液室R2は、各個別流路PのX1方向での端部E2に接続される。第2共通液室R2には、吐出に供されずに各個別流路Pから排出されるインクが貯留される。
【0025】
第1共通液室R1および第2共通液室R2には、循環機構26が接続される。循環機構26は、第1共通液室R1にインクを供給するとともに、第2共通液室R2から排出されるインクを第1共通液室R1への再供給のために回収する機構である。循環機構26は、第1供給ポンプ261と第2供給ポンプ262と貯留容器263と回収流路264と供給流路265とを有する。
【0026】
第1供給ポンプ261は、液体容器12に貯留されるインクを貯留容器263に供給するポンプである。貯留容器263は、液体容器12から供給されるインクを一時的に貯留するサブタンクである。回収流路264は、第2共通液室R2と貯留容器263とを連通させており、第2共通液室R2からのインクを貯留容器263に回収するための流路である。貯留容器263には、液体容器12に貯留されるインクが第1供給ポンプ261から供給されるほか、各個別流路Pから第2共通液室R2に排出されるインクが回収流路264を介して供給される。第2供給ポンプ262は、貯留容器263に貯留されるインクを送出するポンプである。供給流路265は、第1共通液室R1と貯留容器263とを連通させており、貯留容器263からのインクを第1共通液室R1に供給するための流路である。
【0027】
A3:液体吐出ヘッドの具体的な構造
図3は、図2中のA-A線断面図である。図3では、個別流路Pに沿ってX軸およびZ軸に平行な平面で切断される液体吐出ヘッド24の断面が示される。液体吐出ヘッド24は、図3に示すように、流路構造体30と複数の圧電素子41と筐体部42と保護基板43と配線基板44とを有する。
【0028】
流路構造体30には、前述の第1共通液室R1、第2共通液室R2、複数の個別流路Pおよび複数のノズルNが設けられる。具体的には、流路構造体30は、ノズル基板31、連通板33、圧力室基板34および振動板35がこの順にZ1方向に向かって積層される構造体である。ノズル基板31、連通板33、圧力室基板34および振動板35の各部材は、Y軸に沿って延びており、例えば、半導体加工技術を用いてシリコンの単結晶基板を加工することにより製造される。また、これらの部材は、接着剤等により互いに接合される。なお、流路構造体30を構成する複数の部材のうちの隣り合う2つの部材間には、接着層等の他の層または基板が適宜に介在してもよい。
【0029】
ノズル基板31には、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNのそれぞれは、ノズル基板31を貫通しており、インクを通過させる貫通孔である。
【0030】
連通板33には、第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれの一部と複数の個別流路Pにおける圧力室Caおよび圧力室Cbを除く部分とが設けられる。ここで、各個別流路Pは、前述の圧力室Ca、圧力室Cbおよびノズル流路Nfのほか、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、供給流路Ra1および排出流路Ra2を有する。これらのうち、ノズル流路Nf、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、第1分岐流路B1、第2分岐流路B2、供給流路Ra1および排出流路Ra2が連通板33に設けられる。
【0031】
第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれの一部は、連通板33を貫通する空間である。連通板33のZ2方向を向く面には、当該空間による開口を閉塞する吸振体361および吸振体362が設置される。
【0032】
吸振体361および吸振体362のそれぞれは、弾性材料で構成される層状部材である。吸振体361は、第1共通液室R1の壁面の一部を構成しており、第1共通液室R1における圧力変動を吸収する。同様に、吸振体362は、第2共通液室R2の壁面の一部を構成しており、第2共通液室R2における圧力変動を吸収する。
【0033】
ノズル流路Nfは、連通板33のZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル基板31は、ノズル流路Nfの壁面の一部を構成する。
【0034】
第1連通流路Na1および第2連通流路Na2のそれぞれは、Z軸に沿って延びており、連通板33を貫通する空間である。第1連通流路Na1は、圧力室Caとノズル流路Nfとを連通させており、圧力室Caからのインクをノズル流路Nfに導く。一方、第2連通流路Na2は、圧力室Cbとノズル流路Nfとを連通させており、ノズル流路Nfからのインクを圧力室Cbに導く。
【0035】
第1分岐流路B1および第2分岐流路B2のそれぞれは、連通板33のZ1方向を向く面に設けられる溝とZ軸に沿って連通板33を貫通する孔とで形成される空間である。第1分岐流路B1は、第1連通流路Na1とは異なる経路で圧力室Caとノズル流路Nfとを連通させる。本実施形態の第1分岐流路B1は、X軸に沿う方向に延びる第1流路B1aと、Z軸に沿う方向に延びる第2流路B1bと、を有する。一方、第2分岐流路B2は、第2連通流路Na2とは異なる経路で圧力室Cbとノズル流路Nfとを連通させる。本実施形態の第2分岐流路B2は、X軸に沿う方向に延びる第3流路B2aと、Z軸に沿う方向に延びる第4流路B2bと、を有する。なお、第1分岐流路B1および第2分岐流路B2については、後に詳述する。
【0036】
供給流路Ra1および排出流路Ra2のそれぞれは、Z軸に沿って延びており、連通板33を貫通する空間である。供給流路Ra1は、第1共通液室R1と圧力室Caとを連通させており、第1共通液室R1からのインクを圧力室Caに供給する。ここで、供給流路Ra1の一端は、連通板33のZ1方向を向く面に開口する。これに対し、供給流路Ra1の他端は、個別流路Pの上流側の端部E1であり、連通板33における第1共通液室R1の壁面に開口する。一方、排出流路Ra2は、第2共通液室R2と圧力室Cbとを連通させており、圧力室Cbからのインクを第2共通液室R2に排出する。ここで、排出流路Ra2の一端は、連通板33のZ1方向を向く面に開口する。これに対し、排出流路Ra2の他端は、個別流路Pの下流側の端部E2であり、連通板33における第2共通液室R2の壁面に開口する。
【0037】
圧力室基板34には、複数の個別流路Pの圧力室Caおよび圧力室Cbが設けられる。圧力室Caおよび圧力室Cbのそれぞれは、圧力室基板34を貫通しており、連通板33と振動板35との間における間隙である。
【0038】
振動板35は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板35は、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成される第1層と、酸化ジルコニウム(ZrO)で構成される第2層と、を含む積層体である。ここで、第1層と第2層との間には、金属酸化物等の他の層が介在してもよい。なお、振動板35の一部または全部は、圧力室基板34と同一材料で一体に構成されてもよい。例えば、所定厚の板状部材における圧力室Cに対応する領域について厚さ方向の一部を選択的に除去することで、振動板35および圧力室基板34を一体に形成することができる。また、振動板35は、単一材料の層で構成されてもよい。
【0039】
振動板35のZ1方向を向く面には、相異なる圧力室Cに対応する複数の圧電素子41が設置される。ここで、各圧力室Caに対応する圧電素子41は、第1エネルギー生成素子の一例である。各圧力室Cbに対応する圧電素子41は、第2エネルギー生成素子の一例である。各圧力室Cに対応する圧電素子41は、平面視で圧力室Cに重なる。各圧電素子41は、例えば、互いに対向する第1電極および第2電極と、両電極間に配置される圧電体層との積層により構成される。各圧電素子41は、圧力室C内のインクの圧力を変動させることで圧力室C内のインクをノズルNから吐出させる。圧電素子41は、駆動電圧が供給されることにより、自身の変形に伴い、振動板35を振動させる。この振動に伴って、圧力室Cが膨張および伸縮することにより、圧力室C内のインクの圧力が変動する。
【0040】
筐体部42は、インクを貯留するためのケースである。筐体部42には、第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれについて連通板33に設けられる一部以外の残部を構成する空間が設けられる。また、筐体部42には、供給口421および排出口422が設けられる。供給口421は、第1共通液室R1に連通する管路であり、循環機構26の供給流路265に接続される。このため、第2供給ポンプ262から供給流路265に送出されるインクは、供給口421を経由して第1共通液室R1に供給される。他方、排出口422は、第2共通液室R2に連通する管路であり、循環機構26の回収流路264に連結される。このため、第2共通液室R2内のインクは排出口422を経由して回収流路264に排出される。
【0041】
保護基板43は、振動板35のZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子41を保護するとともに振動板35の機械的な強度を補強する。ここで、保護基板43と振動板35との間には、複数の圧電素子41が収容される。
【0042】
配線基板44は、振動板35のZ1方向を向く面に実装されており、制御ユニット21と液体吐出ヘッド24とを電気的に接続するための実装部品である。例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板44が好適に利用される。配線基板44には、各圧電素子41に駆動電圧を供給するための駆動回路45が実装される。
【0043】
以上の構成の液体吐出ヘッド24では、前述の循環機構26の動作により、インクが第1共通液室R1、供給流路Ra1、圧力室Ca、第1連通流路Na1、ノズル流路Nf、第2連通流路Na2、圧力室Cb、排出流路Ra2および第2共通液室R2にこの順に流通する。ここで、圧力室Caから圧力室Cbに向かうインクのうち、一部が第1連通流路Na1、ノズル流路Nf、第2連通流路Na2をこの順に経由し、残部が第1分岐流路B1および第2分岐流路B2のうちの少なくとも一方を適宜に経由する。図3に示す例では、圧力室Caから圧力室Cbに向かうインクのうちの一部は、ノズル流路Nfを経由せずに、第1分岐流路B1および第2分岐流路B2を経由してもよい。
【0044】
また、駆動回路45からの駆動電圧により、圧力室Caおよび圧力室Cbの両方に対応する圧電素子41が同時に駆動することで、圧力室Caおよび圧力室Cbの圧力を変動させ、その圧力変動に伴ってノズルNからインクが吐出される。なお、循環機構26の動作期間または動作タイミングは、任意であり、ノズルNからインクを吐出する期間またはタイミングと重複するか否かも任意である。
【0045】
このように、液体吐出ヘッド24に用いるインクを循環させることにより、ノズルNの近傍におけるインクの増粘または成分の沈殿を低減することができる。このため、液体吐出ヘッド24におけるインクの吐出量または吐出速度等の吐出特性の悪化を防止することができる。この結果、長期にわたり、液体吐出ヘッド24におけるインクの吐出特性の安定化を図ることができる。
【0046】
A4:第1分岐流路および第2分岐流路の詳細
図4は、図3に示す液体吐出ヘッド24の一部を示す拡大断面図である。図4では、圧力室Caおよび圧力室CbのそれぞれからノズルNへのインクの流通経路が太い破線で示される。
【0047】
前述のように、ノズル流路Nfは、連通板33のZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル流路Nfの壁面は、連通板33のZ2方向を向く面による壁面F3と、ノズル基板31のZ1方向を向く面による壁面F4と、を有する。壁面F3は、第3壁面の一例である。壁面F4は、第4壁面の一例である。
【0048】
ノズル流路Nfは、X軸に沿って延びており、ノズル流路Nfの途中には、ノズルNが設けられる。図4に示す例では、X軸に沿う方向におけるノズル流路Nfの中央にノズルNが設けられる。また、ノズル流路NfのX2方向での端には、第1連通流路Na1を介して圧力室Caが連通する。このため、圧力室Caからの圧力が第1連通流路Na1およびノズル流路Nfを介してノズルNに伝達される。一方、ノズル流路NfのX1方向での端には、第2連通流路Na2を介して圧力室Caが連通する。このため、圧力室Cbからの圧力が第2連通流路Na2およびノズル流路Nfを介してノズルNに伝達される。
【0049】
ここで、ノズルNが圧力室Caの直下に位置せずにノズル流路Nfの途中に設けられるため、圧力室Caから第1連通流路Na1を介してノズルNに至る流路の流路抵抗が高くなりやすい。
【0050】
具体的には、前述のように、第1連通流路Na1がZ軸に沿う方向に延びるのに対し、ノズル流路NfがX軸に沿う方向に延びる。このため、第1連通流路Na1およびノズル流路Nfが互いに直交する。したがって、圧力室Caから第1連通流路Na1を介してノズルNに至る流路では、その長さに応じてインクの壁面での摩擦による圧力損失が増大する。更に、場合によっては、第1連通流路Na1とノズル流路Nfとの接続部においてインクの渦による圧力損失が生じる可能性もある。これの結果、当該流路の流路抵抗が高くなりやすい。
【0051】
第1連通流路Na1およびノズル流路Nfのそれぞれの断面積を大きくすれば、圧力室Caから第1連通流路Na1を介してノズルNに至る流路の流路抵抗を低くすることができる。しかし、そうすると、Y軸に沿う方向に隣り合う2つの第1連通流路Na1間を隔てる隔壁が撓みやすくなり、当該隔壁の撓みに起因する構造クロストークが生じてしまう。
【0052】
そこで、液体吐出ヘッド24は、圧力室Caからノズル流路Nfに至る流路として、第1連通流路Na1のほかに、第1分岐流路B1を有する。同様の観点から、液体吐出ヘッド24は、圧力室Cbからノズル流路Nfに至る流路として、第2連通流路Na2のほかに、第2分岐流路B2を有する。
【0053】
第1分岐流路B1は、隔壁331により第1連通流路Na1との間を隔てられており、第1連通流路Na1とは異なる流路である。前述のように、第1分岐流路B1は、X軸に沿う方向に延びる第1流路B1aと、Z軸に沿う方向に延びる第2流路B1bと、を有する。同様に、第2分岐流路B2は、隔壁332により第2連通流路Na2との間を隔てられており、第2連通流路Na2とは異なる流路である。前述のように、第2分岐流路B2は、X軸に沿う方向に延びる第3流路B2aと、Z軸に沿う方向に延びる第4流路B2bと、を有する。
【0054】
ここで、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とはX軸に沿う方向で対称に構成される以外は、互いに同様に構成される。したがって、第1流路B1aと第3流路B2aとはX軸に沿う方向で対称に構成される。また、第2流路B1bと第4流路B2bとはX軸に沿う方向で対称に構成される。
【0055】
以下、第1分岐流路B1について代表的に説明し、第2分岐流路B2については、その説明を適宜に省略する。なお、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とはX軸に沿う方向で非対称に構成されてもよい。ただし、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とはX軸に沿う方向で対称に構成されることにより、液体吐出ヘッド24の設計が容易となるという利点がある。
【0056】
第1流路B1aは、連通板33のZ1方向を向く面に設けられる溝で形成される空間である。ここで、第1流路B1aの壁面は、圧力室基板34のZ2方向を向く面による壁面F1と、連通板33のZ1方向を向く面による壁面F2と、を有する。壁面F1は、第1壁面の一例である。壁面F2は、第2壁面の一例である。以上の第1流路B1aのX2方向での端は、圧力室Caに連通する。一方、第1流路B1aのX1方向での端は、第2流路B1bに連通する。
【0057】
第2流路B1bは、Z軸に沿って連通板33を貫通する孔で形成される空間である。第2流路B1bのZ1方向での端は、第1流路B1aに連通する。一方、第2流路B1bのZ2方向での端は、ノズル流路Nfに連通する。ここで、第2流路B1bは、Z軸に沿う方向でみてノズルNに重なる位置にある。このため、第2流路B1bからの圧力を直接的にノズルNに伝達することができる。
【0058】
本実施形態では、第2流路B1bは、第2分岐流路B2の第4流路B2bと共用される。すなわち、第2流路B1bおよび第4流路B2bは、Z軸に沿う方向に延びる1つの流路を構成する。このため、Z軸に沿う方向でみてノズルNに重なる位置に第2流路B1bおよび第4流路B2bの両方を配置することができる。
【0059】
また、本実施形態では、圧力室Caから第1分岐流路B1を介してノズルNに至る流路の長さが、圧力室Caから第1連通流路Na1を介してノズルNに至る流路の長さに略等しい。
【0060】
以上の第1分岐流路B1では、圧力室Caからの圧力を第1連通流路Na1および第1分岐流路B1の両方を介してできるだけ効率的に伝達させるべく、圧力室Caから第1分岐流路B1を介してノズルNに至る流路の流路抵抗が、圧力室Caから第1連通流路Na1を介してノズルNに至る流路の流路抵抗と同程度であることが好ましい。
【0061】
このような観点から、第1流路B1aの断面積は、ノズル流路Nfの断面積に等しいことが好ましい。したがって、Y軸に沿う方向における第1流路B1aの幅とY軸に沿う方向におけるノズル流路Nfの幅とが互いに等しい場合、Z軸に沿う方向における第1流路B1aの幅Wb1とZ軸に沿う方向におけるノズル流路Nfの幅Wfとが互いに等しいことが好ましい。
【0062】
また、前述のように、本実施形態では、第2流路B1bが第2分岐流路B2の第4流路B2bと共用されるため、第2流路B1bの流路抵抗と第1連通流路Na1の流路抵抗とが互いに等しくなるように、第2流路B1bの断面積は、第1連通流路Na1の断面積よりも大きいことが好ましい。したがって、Y軸に沿う方向における第2流路B1bの幅とY軸に沿う方向における第1連通流路Na1の幅とが互いに等しい場合、X軸に沿う方向における第2流路B1bの幅Wb2がX軸に沿う方向における第1連通流路Na1の幅Wa1よりも大きいことが好ましい。なお、第2流路B1bの流路抵抗と第1連通流路Na1の流路抵抗とが互いに等しくなるように、Y軸に沿う方向における第2流路B1bの幅とY軸に沿う方向における第1連通流路Na1の幅とが互いに異なってもよい。
【0063】
以上の液体吐出ヘッド24は、前述のように、第1圧力室の一例である圧力室Caと、第2圧力室の一例である圧力室Cbと、ノズル流路Nfと、第1連通流路Na1と、第2連通流路Na2と、第1分岐流路B1と、を有する。
【0064】
圧力室Caおよび圧力室Cbのそれぞれは、液体の一例であるインクに圧力を付与する。ノズル流路Nfは、第1軸の一例であるX軸に沿う方向に延びており、ノズル流路Nfには、インクを吐出するノズルNが設けられる。第1連通流路Na1は、第1軸に交差する第2軸の一例であるZ軸に沿う方向に延びており、圧力室Caとノズル流路Nfとを連通させる。第2連通流路Na2は、Z軸に沿う方向に延びており、圧力室Cbとノズル流路Nfとを連通させる。第1分岐流路B1は、X軸に沿う方向に延びる部分を有しており、第1連通流路Na1とは異なる経路で圧力室Caとノズル流路Nfとを連通させる。
【0065】
以上の液体吐出ヘッド24では、第1連通流路Na1および第1分岐流路B1のそれぞれが圧力室Caとノズル流路Nfとを連通させるので、第1分岐流路B1を設けない構成に比べて、圧力室Caからノズル流路Nfに至る流路の流路抵抗を低減することができる。この結果、第1分岐流路B1を設けない構成に比べて、圧力室Caからの圧力をノズルNに効率的に伝達することができる。
【0066】
ここで、第1分岐流路B1が第1連通流路Na1とは異なる経路であるため、圧力室Caからノズル流路Nfに至る流路の流路抵抗を低減しても、第1分岐流路B1を設けない構成に比べて、各流路の断面積を小さくすることができる。このため、これらの流路がY軸方向に複数配列されても、流路間を隔てる隔壁の撓みを低減することができる。この結果、当該流路間における当該隔壁の撓みによる構造クロストークを低減することができる。
【0067】
また、第1分岐流路B1がX軸に沿う方向に延びる部分を有するので、当該部分を有しない構成に比べて、前述の隔壁の厚さを厚くすることができる。また、当該部分を有する構成では、X軸に沿う方向に延びるノズル流路Nfの途中にノズルNが設けられても、当該部分を有しない構成に比べて、第1分岐流路B1とノズル流路Nfとの連通位置をノズルNに近づけやすい。このため、当該連通位置をノズルNに近づけることにより、第1分岐流路B1を介して圧力室Caからの圧力をノズルNに効率的に伝達することもできる。
【0068】
本実施形態では、第1分岐流路B1は、前述のように、第1流路B1aと第2流路B1bとを有する。第1流路B1aは、X軸に沿う方向に延びており、圧力室Caに連通する。一方、第2流路B1bは、Z軸に沿う方向に延びており、第1流路B1aとノズル流路Nfとを連通させる。このような第1流路B1aおよび第2流路B1bを有する第1分岐流路B1では、圧力室Caとノズル流路Nfとを連通させるとともに、第1流路B1aの長さに応じてX軸に沿う方向における隔壁331の厚さを厚くすることができる。
【0069】
また、前述のように、圧力室Caおよびノズル流路Nfのそれぞれは、X軸に沿う方向に延びる。ここで、第1連通流路Na1は、X軸に沿う一方の方向であるX1方向における圧力室Caの端部と、X軸に沿う他方の方向であるX2方向におけるノズル流路Nfの端部とを連通させる。このため、第1連通流路Na1がX軸に沿う方向における圧力室Caまたはノズル流路Nfの途中に連通する構成に比べて、第1連通流路Na1を介して圧力室Caからの圧力をノズルNに効率的に伝達することができる。
【0070】
また、前述のように、第1分岐流路B1は、第1連通流路Na1よりもノズルNに近い位置でノズル流路Nfに連通する。このため、第1分岐流路B1が第1連通流路Na1よりもノズルNに遠い位置でノズル流路Nfに連通する構成に比べて、第1分岐流路B1を介して圧力室Caからの圧力をノズルNに効率的に伝達することができる。
【0071】
液体吐出ヘッド24では、前述のように、圧力室Cbに関する流路も圧力室Caに関する流路と同様に構成される。すなわち、液体吐出ヘッド24は、第2分岐流路B2をさらに有する。第2分岐流路B2は、X軸に沿う方向に延びる部分を有しており、第2連通流路Na2とは異なる経路で圧力室Cbとノズル流路Nfとを連通させる。
【0072】
このため、第2分岐流路B2を設けない構成に比べて、前述の圧力室Caからノズル流路Nfに至る流路と同様、圧力室Cbからノズル流路Nfに至る流路の流路抵抗を低減したり、流路間を隔てる隔壁の撓みを低減したりすることができる。また、前述の圧力室CaからノズルNaへの圧力伝達と同様、第2分岐流路B2を介して圧力室Cbからの圧力をノズルNbに効率的に伝達することができる。
【0073】
ここで、前述のように、第2分岐流路B2は、第1分岐流路B1の第1流路B1aおよび第2流路B1bと同様、第3流路B2aおよび第4流路B2bを有する。本実施形態では、第2流路B1bおよび第4流路B2bが共通である。すなわち、第1分岐流路B1および第2分岐流路B2は、Z軸に沿う方向に延びる共用の部分として、第2流路B1bおよび第4流路B2bを有する。このため、第1分岐流路B1とノズル流路Nfとの連通位置と、第2分岐流路B2とノズル流路Nfとの連通位置とを一致させることができる。この結果、これらの連通位置の両方をノズルNに近づけることができる。
【0074】
液体吐出ヘッド24は、前述のように、圧力室基板34と連通板33とノズル基板31とをさらに有する。圧力室基板34には、圧力室Caおよび圧力室Cbが設けられる。連通板33には、ノズル流路Nf、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2および第1分岐流路B1が設けられる。ノズル基板31には、ノズルNが設けられる。このような複数の基板を用いて構成される液体吐出ヘッド24では、当該複数の基板を加工および接合することにより、寸法精度に優れる各流路および各圧力室Cを歩留まりよく形成することができる。
【0075】
ここで、第1分岐流路B1の壁面は、第1壁面の一例である壁面F1と、第2壁面の一例である壁面F2と、を有する。壁面F1が、圧力室基板34で構成される。壁面F2は、Z軸に沿う方向で壁面F1とは反対側に位置し、連通板33で構成される。このように、連通板33および圧力室基板34を用いて第1分岐流路B1の壁面を構成することにより、壁面F1または壁面F2に形成される溝等を用いて、第1分岐流路B1にX軸に沿う方向に延びる部分を容易に形成することができる。
【0076】
また、ノズル流路Nfは、第3壁面の一例である壁面F3と、第4壁面の一例である壁面F4と、を有する。壁面F3は、連通板33で構成される。壁面F4は、Z軸に沿う方向で壁面F3とは反対側に位置し、ノズル基板31で構成される。このように、ノズル基板31および連通板33を用いてノズル流路Nfの壁面を構成することにより、壁面F3または壁面F4に形成される溝等を用いて、X軸に沿う方向に延びるノズル流路Nfを容易に形成することができる。
【0077】
液体吐出ヘッド24は、前述のように、供給流路Ra1と排出流路Ra2とをさらに有する。供給流路Ra1は、圧力室Caに連通し、圧力室Caにインクを供給する。排出流路Ra2は、圧力室Cbに連通し、圧力室Cbからインクが排出される。このような供給流路Ra1および排出流路Ra2により、供給流路Ra1と排出流路Ra2との間の流路におけるインクの滞留を低減することができる。このため、ノズルNの近傍におけるインクの増粘または成分の沈殿を低減することができる。この結果、液体吐出ヘッド24におけるインクの吐出量または吐出速度等の吐出特性の悪化を防止することができる。
【0078】
ここで、供給流路Ra1から圧力室Caへのインクの供給と圧力室Cbから排出流路Ra2へのインクの排出とは、循環機構26の作動により行われる。なお、循環機構26と液体吐出ヘッド24との接続形態を前述の接続形態に対して供給側と排出側とで逆にしてもよい。この場合、供給流路Ra1は、圧力室Caからインクが排出される排出流路として機能し、排出流路Ra2は、圧力室Cbにインクを供給する供給流路として機能する。
【0079】
前述のように、第1分岐流路B1は、Z軸に沿う方向に延びる部分として、第2流路B1bを有する。ここで、Z軸に沿う方向でみたときの第2流路B1bの面積は、Z軸に沿う方向でみたときの第1連通流路Na1の面積に等しいことが好ましい。これらの面積を互いに等しくすることにより、第1連通流路Na1の流路抵抗と第1分岐流路B1の流路抵抗とを互いに等しくすることができる。この結果、これらの流路抵抗が互いに異なる構成に比べて、第1連通流路Na1および第1分岐流路B1のそれぞれにおけるインクの流通を円滑に行うことができる。なお、本明細書において、「等しい」とは、厳密に等しい場合のほか、製造誤差等の程度の相違を有する場合も含む概念である。
【0080】
液体吐出ヘッド24は、前述のように、複数の圧電素子41と、駆動回路45とをさらに有する。ここで、複数の圧電素子41のうち、駆動電圧が印加されることにより圧力室Caのインクに圧力を付与するためのエネルギーを生成する圧電素子41は、第1エネルギー生成素子の一例であり、駆動電圧が印加されることにより圧力室Cbのインクに圧力を付与するためのエネルギーを生成する圧電素子41は、第2エネルギー生成素子の一例である。駆動回路45は、これらの圧電素子41の両方に駆動電圧を印加する。このため、圧力室Caのための圧電素子41と圧力室Cbのための圧電素子41とで別々の駆動回路を用いる構成に比べて、液体吐出ヘッド24の構成を簡単化することができる。
【0081】
ここで、駆動回路45は、X軸に沿う方向において、圧力室Caのための圧電素子41と圧力室Cbのための圧電素子41との間に位置する。このため、駆動回路45が他の位置にある構成に比べて、駆動回路45からこれらの圧電素子41の両方への駆動電圧の供給経路を短くすることができる。また、このような構成では、駆動回路45の設置スペースを確保するために、X軸に沿う方向にノズル流路Nfの長さが長くなってしまう。したがって、このような構成を採用する場合、圧力室Caおよび圧力室Cbのそれぞれからノズル流路Nfに至る流路の流路抵抗を小さくすることは、特に有用である。
【0082】
以上の液体吐出装置100は、前述のように、液体吐出ヘッド24と、制御部の一例である制御ユニット21と、を有する。制御ユニット21は、液体吐出ヘッド24からのインクの吐出動作を制御する。以上の液体吐出装置100では、前述のように液体吐出ヘッド24が優れた吐出特性を有するので、画質を向上させることができる。
【0083】
B:第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0084】
図5は、第2実施形態に係る液体吐出ヘッド24Aの一部を示す拡大断面図である。液体吐出ヘッド24Aは、流路構造体30に代えて、流路構造体30Aを有する以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド24と同様である。流路構造体30Aは、連通板33に代えて連通板33Aを有する以外は、流路構造体30と同様である。連通板33Aは、隔壁333が設けられる以外は、連通板33と同様である。なお、以下では、第1分岐流路B1に関する事項を代表的に説明し、第2分岐流路B2に関する事項については、第1分岐流路B1と同様であるため、その説明を適宜に省略する。
【0085】
隔壁333は、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2との間を隔てる部材である。図5に示す例では、隔壁333は、圧力室基板34からN2方向に延びる。隔壁333とノズル基板31との間には、Z軸に沿う方向におけるノズル流路Nfの幅Wfと同程度の隙間が形成される。
【0086】
以上のように、本実施形態の液体吐出ヘッド24Aは、第1隔壁の一例である隔壁333と、第2隔壁の一例である隔壁331と、を有する。隔壁333は、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2との間を隔てる。隔壁331は、第1連通流路Na1と第1分岐流路B1との間を隔てる。
【0087】
ここで、X軸に沿う方向における隔壁333の厚さt1は、X軸に沿う方向における隔壁331の厚さt2よりも薄い。このため、隔壁333の厚さt1が隔壁331の厚さt2よりも厚い構成に比べて、第1分岐流路B1とノズル流路Nfとの連通位置と、第2分岐流路B2とノズル流路Nfとの連通位置との間の距離を短くすることができる。この結果、これらの連通位置のそれぞれをノズルNに近づけることができる。また、隔壁333を設ける構成では、隔壁333を設けない構成に比べて、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2との間でのインクの流通が低減されるので、これらの流路間の乱流等における圧力損失を低減することができる。
【0088】
また、X軸に沿う方向における隔壁333の厚さtは、圧力室CaからノズルNに至る流路の長さをできるだけ短くする観点から、X軸に沿う方向における第1連通流路Na1の幅Wa1よりも小さいことが好ましい。なお、図5に示す例では、厚さtが一定であるが、厚さtが一定でなくともよい。
【0089】
また、前述の第1実施形態と同様、第1分岐流路B1は、Z軸に沿う方向に延びる部分として、第2流路B1bを有する。ここで、Z軸に沿う方向でみたときの第2流路B1bの面積は、Z軸に沿う方向でみたときの第1連通流路Na1の面積に等しいことが好ましい。これらの面積を互いに等しくすることにより、第1連通流路Na1の流路抵抗と第1分岐流路B1の流路抵抗とを等しくすることができる。この結果、これらの流路抵抗が互いに異なる構成に比べて、第1連通流路Na1および第1分岐流路B1のそれぞれにおけるインクの流通を円滑に行うことができる。
【0090】
以上の第2実施形態によっても、所望の吐出特性を得つつ、圧力室CaからノズルNへの圧力を効率的に伝達することができる。
【0091】
また、第2実施形態では、第1分岐流路B1を通るインクも必ずノズルNの直上を通過することになる。よって、第1実施形態に比べて、ノズルNの直上を通過するインク量は増大する。よってノズルNからのインクの蒸発等に起因するノズルN近傍における増粘をより低減することが可能となる。
【0092】
C:第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0093】
図6は、第3実施形態に係る液体吐出ヘッド24Bの一部を示す拡大断面図である。液体吐出ヘッド24Bは、流路構造体30に代えて、流路構造体30Bを有する以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド24と同様である。流路構造体30Bは、連通板33に代えて連通板33Bを有する以外は、流路構造体30と同様である。連通板33Bは、隔壁333に代えて隔壁333Bを有する以外は、前述の第2実施形態の連通板33Aと同様である。なお、以下では、第1分岐流路B1に関する事項を代表的に説明し、第2分岐流路B2に関する事項については、第1分岐流路B1と同様であるため、その説明を適宜に省略する。
【0094】
隔壁333Bは、第3連通流路B3を有する以外は、前述の第2実施形態の隔壁333と同様である。第3連通流路B3は、隔壁333Bを貫通する流路であり、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とを連通させる。図6に示す例では、第3連通流路B3は、隔壁333BのZ1方向を向く面に設けられる溝により形成される。なお、第3連通流路B3は、隔壁333Bを貫通する貫通孔により形成されてもよい。
【0095】
以上のように、液体吐出ヘッド24Bは、ノズル流路Nfとは異なる経路で第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とを連通させる第3連通流路B3をさらに有する。このため、第3連通流路B3を介して第1分岐流路B1および第2分岐流路B2のうちの一方から他方へ気泡を流通させることができる。この結果、第1分岐流路B1および第2分岐流路B2における気泡の滞留を低減することができる。なお、第3連通流路B3を通じた気泡の流通は、主に、前述の循環機構26の作動に伴って行われる。
【0096】
ここで、Z軸に沿う方向における第3連通流路B3の幅は、第1流路B1aから第2流路B1bへの圧力の伝達を効率的に行う観点から、第1流路B1aの幅Wb1よりも小さいことが好ましい。
【0097】
以上の第3実施形態によっても、所望の吐出特性を得つつ、圧力室CaからノズルNへの圧力を効率的に伝達することができる。
【0098】
D:第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0099】
図7は、第4実施形態に係る液体吐出ヘッド24Cの一部を示す拡大断面図である。液体吐出ヘッド24Cは、流路構造体30に代えて、流路構造体30Cを有する以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド24と同様である。流路構造体30Cは、連通板33に代えて連通板33Cを有する以外は、流路構造体30と同様である。連通板33Cは、第1分岐流路B1および第2分岐流路B2の構成が異なる以外は、連通板33と同様である。なお、以下では、第1分岐流路B1に関する事項を代表的に説明し、第2分岐流路B2に関する事項については、第1分岐流路B1と同様であるため、その説明を適宜に省略する。
【0100】
本実施形態の第1分岐流路B1は、圧力室CaからZ2方向に延びる部分を有しており、隔壁335により第1連通流路Na1との間を隔てられる。本実施形態の第1分岐流路B1は、Z軸に沿う方向に延びる第1流路B1cと、X軸に沿う方向に延びる第2流路B1dと、を有する。
【0101】
同様に、本実施形態の第2分岐流路B2は、圧力室CbからZ2方向に延びる部分を有しており、隔壁336により第2連通流路Na2との間を隔てられる。本実施形態の第2分岐流路B2は、Z軸に沿う方向に延びる第3流路B2cと、X軸に沿う方向に延びる第4流路B2dと、を有する。
【0102】
ここで、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とはX軸に沿う方向で対称に構成される以外は、互いに同様に構成される。したがって、第1流路B1cと第3流路B2cとはX軸に沿う方向で対称に構成される。また、第2流路B1dと第4流路B2dとはX軸に沿う方向で対称に構成される。
【0103】
以下、第1分岐流路B1について代表的に説明し、第2分岐流路B2については、その説明を適宜に省略する。なお、第1分岐流路B1と第2分岐流路B2とはX軸に沿う方向で非対称に構成されてもよい。
【0104】
第1流路B1cは、Z軸に沿って連通板33Cを貫通する孔で形成される空間である。以上の第1流路B1cのZ1方向での端は、圧力室Caに連通する。一方、第1流路B1cのZ2方向での端は、第2流路B1dに連通する。
【0105】
第2流路B1dは、連通板33のZ2方向を向く面に設けられる溝で形成される空間である。第2流路B1dのX2方向での端は、第1流路B1cに連通する。一方、第2流路B1dのX1方向での端は、ノズル流路Nfに連通する。ここで、第2流路B1dは、ノズル流路Nfを延長した形態であり、ノズル流路Nfの一部を構成するともいえる。
【0106】
以上の第4実施形態によっても、所望の吐出特性を得つつ、圧力室CaからノズルNへの圧力を効率的に伝達することができる。また、本実施形態では、第1分岐流路B1および第2分岐流路B2におけるX軸に沿って延びる部分の長さを短くすることができる。このため、これらの流路の流路抵抗を低くしやすいという利点がある。
【0107】
E:参考例
以下、参考例について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0108】
E1:液体吐出ヘッドの流路
図8は、参考例に係る液体吐出ヘッド24Dにおける流路の模式図である。液体吐出ヘッド24Dは、複数の個別流路Pに代えて複数の個別流路Paおよび複数の個別流路Pbを有する以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド24と同様である。すなわち、液体吐出ヘッド24Dは、図8に示すように、複数のノズルNと複数の個別流路Paと複数の個別流路Pbと第1共通液室R1と第2共通液室R2とが設けられるとともに、循環機構26が接続される。
【0109】
具体的に説明すると、液体吐出ヘッド24Dは、媒体11に対向する表面を有し、当該表面には、図8に示すように、複数のノズルNaと複数のノズルNbとが設けられる。これらのノズルのそれぞれは、前述の第1実施形態におけるノズルNと同様に構成されており、Z2方向にインクを吐出する。なお、以下では、ノズルNaおよびノズルNbを特に区別しない場合に単に「ノズルN」ともいう。
【0110】
複数のノズルNaは、Y軸に沿って配列されており、これらの集合は、第1ノズル列Laを構成する。同様に、複数のノズルNbは、Y軸に沿って配列されており、これらの集合は、第2ノズル列Lbを構成する。
【0111】
第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとは、X軸に沿う方向に所定の間隔をあけて並ぶ。ここで、ノズルNaの配列ピッチとノズルNbの配列ピッチが互いに等しいが、互いに最も近いノズルNaおよびノズルNbがY軸に沿う方向に前述のピッチθで互いにずれるように配置される。
【0112】
複数のノズルNaのそれぞれには、個別流路Paが連通する。複数の個別流路Paのそれぞれは、X軸に沿って延びており、相異なるノズルNaに連通する。同様に、複数のノズルNbのそれぞれには、個別流路Pbが連通する。複数の個別流路Pbのそれぞれは、X軸に沿って延びており、相異なるノズルNbに連通する。個別流路Paと個別流路Pbとは、Y軸に沿って交互に配列されており、複数の個別流路Paおよび複数の個別流路Pbの集合は、個別流路列25Dを構成する。
【0113】
個別流路Paは、圧力室Cbを省略した以外は、前述の第1実施形態の個別流路Pと同様である。具体的には、個別流路Paは、第1部分Pa1と第2部分Pa2とを含む。各個別流路Paにおける第1部分Pa1は、当該個別流路Paにおける上流側の端部E1とノズルNaとの間の流路である。第1部分Pa1は、圧力室Caを含む。他方、各個別流路Paにおける第2部分Pa2は、当該個別流路Paにおける下流側の端部E2とノズルNaとの間の流路である。
【0114】
個別流路Pbは、圧力室Caを省略した以外は、前述の第1実施形態の個別流路Pと同様である。具体的には、個別流路Pbは、第3部分Pb1と第4部分Pb2とを含む。各個別流路Pbにおける第3部分Pb1は、当該個別流路Pbにおける上流側の端部E1とノズルNbとの間の流路である。他方、各個別流路Pbにおける第4部分Pb2は、当該個別流路Pbにおける下流側の端部E2とノズルNbとの間の流路である。第4部分Pb2は、圧力室Cbを含む。
【0115】
以上の各個別流路Paおよび各個別流路Pbのそれぞれの上流側の端部E1には、第1共通液室R1が接続される。一方、各個別流路Paおよび各個別流路Pbのそれぞれの下流側の端部E2には、第2共通液室R2が接続される。
【0116】
E2:液体吐出ヘッドの具体的な構造
図9は、図8中のA1-A1線断面図である。図9では、個別流路Paに沿ってX軸およびZ軸に平行な平面で切断される液体吐出ヘッド24Dの断面が示される。図10は、図8中のA2-A2線断面図である。図10では、個別流路Pbに沿ってX軸およびZ軸に平行な平面で切断される液体吐出ヘッド24Dの断面が示される。
【0117】
図9および図10に示すように、液体吐出ヘッド24Dは、一部の圧力室Caを横連通流路Cq1に代えるとともに一部の圧力室Cbを横連通流路Cq2に代えた以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド24と同様である。
【0118】
液体吐出ヘッド24Dは、図9および図10に示すように、流路構造体30Dと複数の圧電素子41と筐体部42と保護基板43と配線基板44とを有する。
【0119】
流路構造体30Dには、前述の第1共通液室R1、第2共通液室R2、複数の個別流路Pa、複数の個別流路Pbおよび複数のノズルNが設けられる。具体的には、流路構造体30Dは、ノズル基板31、連通板33および圧力室基板34に代えてノズル基板31D、連通板33Dおよび圧力室基板34Dを有する以外は、前述の第1実施形態の流路構造体30と同様である。
【0120】
ノズル基板31Dには、複数のノズルNaおよび複数のノズルNbが設けられる。ここで、ノズル基板31Dは、ノズルNaおよびノズルNbの配置に関する相違以外は、前述のノズル基板31と同様に構成される。
【0121】
連通板33Dには、第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれの一部と複数の個別流路Paにおける圧力室Caを除く部分と複数の個別流路Pbにおける圧力室Cbを除く部分とが設けられる。
【0122】
各個別流路Paは、図9に示すように、前述の圧力室Caのほか、ノズル流路Nfa、横連通流路Cq1、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、分岐流路Ba、供給流路Ra1および排出流路Ra2を有する。これらのうち、ノズル流路Nfa、横連通流路Cq1、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、分岐流路Ba、供給流路Ra1および排出流路Ra2が連通板33Dに設けられる。
【0123】
ノズル流路Nfaは、連通板33DのZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル基板31Dは、ノズル流路Nfaの壁面の一部を構成する。ノズル流路Nfaには、ノズルNaが設けられる。
【0124】
第1連通流路Na1は、圧力室Caとノズル流路Nfaとを連通させており、圧力室Caからのインクをノズル流路Nfaに導く。一方、第2連通流路Na2は、横連通流路Cq1とノズル流路Nfaとを連通させており、ノズル流路Nfaからのインクを横連通流路Cq1に導く。
【0125】
分岐流路Baは、第1連通流路Na1とは異なる経路で圧力室Caとノズル流路Nfaとを連通させており、圧力室Caからのインクをノズル流路Nfに導く。分岐流路Baは、前述の第1実施形態の第1分岐流路B1と同様、X軸に沿う方向に延びる第1流路B1aと、Z軸に沿う方向に延びる第2流路B1bと、を有する。
【0126】
横連通流路Cq1は、X軸に沿って延びる空間である。横連通流路Cq1は、第2連通流路Na2と排出流路Ra2とを連通させており、第2連通流路Na2からのインクを排出流路Ra2に導く。
【0127】
供給流路Ra1は、第1共通液室R1と圧力室Caとを連通させており、第1共通液室R1からのインクを圧力室Caに供給する。一方、排出流路Ra2は、第2共通液室R2と横連通流路Cq1とを連通させており、横連通流路Cq1からのインクを第2共通液室R2に排出する。
【0128】
一方、各個別流路Pbは、前述の個別流路PaとX軸に沿う方向で対称に構成される。具体的には、各個別流路Pbは、図10に示すように、前述の圧力室Cbのほか、ノズル流路Nfb、横連通流路Cq2、第3連通流路Nb1、第4連通流路Nb2、分岐流路Bb、供給流路Rb1および排出流路Rb2を有する。これらのうち、ノズル流路Nfb、横連通流路Cq2、第3連通流路Nb1、第4連通流路Nb2、分岐流路Bb、供給流路Rb1および排出流路Rb2が連通板33Cに設けられる。
【0129】
ノズル流路Nfbは、連通板33DのZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル基板31Dは、ノズル流路Nfbの壁面の一部を構成する。ノズル流路Nfbには、ノズルNbが設けられる。
【0130】
第3連通流路Nb1は、横連通流路Cq2とノズル流路Nfbとを連通させており、横連通流路Cq2からのインクをノズル流路Nfbに導く。一方、第4連通流路Nb2は、圧力室Cbとノズル流路Nfbとを連通させており、ノズル流路Nfbからのインクを圧力室Cbに導く。
【0131】
分岐流路Bbは、第4連通流路Nb2とは異なる経路で圧力室Cbとノズル流路Nfbとを連通させており、圧力室Cbからのインクをノズル流路Nfbに導く。分岐流路Bbは、前述の第1実施形態の第2分岐流路B2と同様、X軸に沿う方向に延びる第3流路B2aと、Z軸に沿う方向に延びる第4流路B2bと、を有する。
【0132】
横連通流路Cq2は、供給流路Rb1と第3連通流路Nb1とを連通させており、供給流路Rb1からのインクを第3連通流路Nb1に導く。
【0133】
供給流路Rb1は、第1共通液室R1と横連通流路Cq2とを連通させており、第1共通液室R1からのインクを横連通流路Cq2に供給する。一方、排出流路Rb2は、第2共通液室R2と圧力室Cbとを連通させており、圧力室Cbからのインクを第2共通液室R2に排出する。
【0134】
圧力室基板34Dは、圧力室Caおよび圧力室Cbの配置が異なる以外は、前述の第1実施形態の圧力室基板34と同様である。具体的には、圧力室基板34Dには、図9および図10に示すように、複数の個別流路Paにおける圧力室Caと複数の個別流路Pbにおける圧力室Cbとが設けられる。なお、複数の圧電素子41は、圧力室基板34Dに設けられる複数の圧力室Caおよび複数の圧力室Cbの配置に対応して配置される。
【0135】
以上の参考例によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本参考例の液体吐出ヘッド24Dでは、各個別流路Paの圧力室Caおよび横連通流路Cq1には、当該個別流路Paに隣り合う個別流路Pbの流路が重ならない。同様に、各個別流路Pbの圧力室Cbおよび横連通流路Cq2には、当該個別流路Pbに隣り合う個別流路Paの流路がY軸に沿う方向でみて重ならない。このため、前述の各実施形態に比べて、ピッチθを小さくしたとしても、互いに隣り合う個別流路Paおよび個別流路Pb間におけるクロストークが発生しにくい。この結果、ピッチθの狭小化に伴って、Z軸に沿う方向におけるノズル解像度を高くすることにより、高画質化を図ることができる。
【0136】
F:変形例
以上に例示される各形態は、多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択される態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0137】
(変形例1)
前述の各形態では、ノズル流路、第1連通流路および第2連通流路のそれぞれが一定幅で直線的に延びる形状をなす構成が例示されるが、この構成に限定されず、例えば、これらの各流路は、その途中に屈曲または湾曲する部分を有してもよいし、幅の異なる複数の部分を有してもよい。同様に、第1分岐流路における第1流路または第2流路も、その途中に屈曲または湾曲する部分を有してもよいし、幅の異なる複数の部分を有してもよい。また、第2分岐流路における第3流路または第4流路も、その途中に屈曲または湾曲する部分を有してもよいし、幅の異なる複数の部分を有してもよい。
【0138】
(変形例2)
前述の各形態では、液体吐出ヘッドに用いるインクを循環機構により循環させる構成が例示されるが、この構成に限定されず、このような循環のための機構を有しない構成でもよい。
【0139】
(変形例3)
圧力室C内のインクの圧力を変化させるエネルギー生成素子は、前述の各形態で例示した圧電素子41に限定されない。例えば、加熱により圧力室Cの内部に気泡を発生させることでインクの圧力を変動させる発熱素子をエネルギー生成素子として利用してもよい。
【0140】
(変形例4)
前述の各形態では、液体吐出ヘッド24を搭載した搬送体231を往復させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、複数のノズルNが媒体11の全幅にわたり分布するライン方式の液体吐出装置にも本発明は適用される。
【0141】
前述の形態で例示した液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用されてもよく、本発明の用途は特に限定されない。もっとも、液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示パネル等の表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、生体に関する有機物の溶液を噴出する液体吐出装置は、例えばバイオチップを製造する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0142】
11…媒体、12…液体容器、21…制御ユニット、22…搬送機構、23…移動機構、24…液体吐出ヘッド、24A…液体吐出ヘッド、24B…液体吐出ヘッド、24C…液体吐出ヘッド、24D…液体吐出ヘッド、25…個別流路列、25D…個別流路列、26…循環機構、30…流路構造体、30A…流路構造体、30B…流路構造体、30C…流路構造体、30D…流路構造体、31…ノズル基板、31D…ノズル基板、33…連通板、33A…連通板、33B…連通板、33C…連通板、33D…連通板、34…圧力室基板、34D…圧力室基板、35…振動板、41…圧電素子、42…筐体部、43…保護基板、44…配線基板、45…駆動回路、100…液体吐出装置、231…搬送体、232…搬送ベルト、261…第1供給ポンプ、262…第2供給ポンプ、263…貯留容器、264…回収流路、265…供給流路、331…隔壁、332…隔壁、333…隔壁、333B…隔壁、335…隔壁、336…隔壁、361…吸振体、362…吸振体、421…供給口、422…排出口、B1…第1分岐流路、B1a…第1流路、B1b…第2流路、B1c…第1流路、B1d…第2流路、B2…第2分岐流路、B2a…第3流路、B2b…第4流路、B2c…第3流路、B2d…第4流路、B3…第3連通流路、Ba…分岐流路、Bb…分岐流路、C…圧力室、Ca…圧力室(第1圧力室)、Cb…圧力室(第2圧力室)、Cq1…横連通流路、Cq2…横連通流路、E1…端部、E2…端部、F1…壁面(第1壁面)、F2…壁面(第2壁面)、F3…壁面(第3壁面)、F4…壁面(第4壁面)、L…ノズル列、La…第1ノズル列、Lb…第2ノズル列、N…ノズル、Na…ノズル、Na1…第1連通流路、Na2…第2連通流路、Nb…ノズル、Nb1…第3連通流路、Nb2…第4連通流路、Nf…ノズル流路、Nfa…ノズル流路、Nfb…ノズル流路、P…個別流路、Pa…個別流路、Pa1…第1部分、Pa2…第2部分、Pb…個別流路、Pb1…第3部分、Pb2…第4部分、R1…第1共通液室、R2…第2共通液室、Ra1…供給流路、Ra2…排出流路、Rb1…供給流路、Rb2…排出流路、t…厚さ、t1…厚さ、t2…厚さ、θ…ピッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10