(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01B11/00 G
(21)【出願番号】P 2020077204
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松下 友紀
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-083457(JP,A)
【文献】特表2012-515341(JP,A)
【文献】特開2000-221013(JP,A)
【文献】特開平06-331314(JP,A)
【文献】特開2012-002619(JP,A)
【文献】特開2009-115734(JP,A)
【文献】特開2010-112768(JP,A)
【文献】特開昭63-229309(JP,A)
【文献】特開2007-085931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源部と、
前記光源部から出射された光のうち所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる前記光の波長を変更可能な分光素子と、
前記分光素子から出射された光を、測定対象に照射される測定光と、参照体で反射される参照光とに分離し、前記測定対象で反射された前記測定光と、前記参照体で反射された前記参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系と、
前記干渉光を受光する受光部と、
前記分光素子から透過される光の波長を変化させた場合の前記受光部での受光量の変化であるスペクトル情報に基づいて、前記測定対象の位置を算出する位置算出部と、
前記測定光及び前記参照光の光路長差を調整する光路長調整部と、を備え、
前記光路長調整部は、前記スペクトル情報の前記波長範囲内に含まれるピーク波長の数が、前記分光素子を透過する光の波長を前記波長範囲内で変化させて取得した前記スペクトル情報のうち最小となるように前記光路長差を調整する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の測定装置において、
前記光路長調整部は、前記測定光の光路長を変化させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の測定装置において、
前記光路長調整部は、前記参照光の光路長を変化させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記受光部は複数の画素を有し、
前記光路長調整部は、複数の前記画素のうちの1つを基準画素とし、前記基準画素で所定の基準波長の光を受光させた時に前記受光量がピークとなる位置に前記光路長差を変化させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項5】
光を出射する光源部と、前記光源部から出射された光のうち所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる前記光の波長を変更可能な分光素子と、前記分光素子から出射された光を、測定対象に照射される測定光と、参照体で反射される参照光とに分離し、前記測定対象で反射された前記測定光と、前記参照体で反射された前記参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系と、前記干渉光を受光する受光部と、
前記測定光及び前記参照光の光路長差を調整する光路長調整部、を備える測定装置における測定方法であって、
前記分光素子から透過される光の波長を変化させた場合の前記受光部での受光量の変化であるスペクトル情報を取得し、
前記光路長調整部は、前記スペクトル情報の前記波長範囲内に含まれるピーク波長の数が、前記分光素子を透過する光の波長を前記波長範囲内で変化させて取得した前記スペクトル情報のうち最小となるように前記光路長差を調整し、前記スペクトル情報に基づいて、前記測定対象の位置を算出する
ことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射された光を参照光と測定光とに分離し、対象物で反射された測定光と、参照体で反射された参照光とを合成して干渉光を形成し、干渉光の光量に基づいて対象物の形状や対象物までの距離を測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような測定装置では、測定光と参照光との光路長差が波長の整数倍となる場合に、干渉光の光量が最大となり、光路長差が波長の整数倍とならない場合に光量が減少する。したがって、干渉光の光強度に基づいて、測定装置から対象物の測定点までの距離を算出したり、対象物の形状を測定したりすることができる。
例えば、特許文献1では、参照体または光学系(ビームスプリッター)を可動部で移動させることで、測定光及び参照光の光路長を変化させ、光路長差に基づく干渉縞パターン、つまり、受光部で受光される干渉光の受光量(光強度)に基づいて、対象物の形状を測定する。
【0003】
つまり、光干渉を用いた測定装置において、測定光及び参照光の波長をλとし、光学系を対象物に向かって移動量zだけ移動させた場合に、受光部で受光される光の受光量がピーク値(最大)になったとする。この場合、受光部で受光される光の強度(受光量)Iと、λ、zとの関係は、以下の式(1)に示す関係となる。
I∝1+cos(2π/λ×2z)…(1)
対象物の表面に異物等による凹凸が存在し、測定光の進路方向に対する当該凹凸の寸法がδである場合、以下の式(2)に示す関係となる。
I∝1+cos{2π/λ×2(z-δ)}…(2)
したがって、受光部で受光される光の光量Iを測定することで、凹凸の寸法δを測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の干渉計では、凹凸の寸法δが波長λ以内である場合、高精度に寸法δを測定することはできるが、寸法δが波長λよりも大きくなる場合、正確に寸法δを測定することはできない。例えば、対象物の表面に光路差が数倍変化する急峻な勾配の突起や孔部等がある場合では、突起の高さや孔部の深さがどの程度の寸法δであるかを予測することが不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の測定装置は、光を出射する光源部と、前記光源部から出射された光のうち所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる前記光の波長を変更可能な分光素子と、前記分光素子から出射された光を、測定対象に照射される測定光と、参照体で反射される参照光とに分離し、前記測定対象で反射された前記測定光と、前記参照体で反射された前記参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系と、前記干渉光を受光する受光部と、前記分光素子から透過される光の波長を変化させた場合の前記受光部での受光量の変化であるスペクトル情報に基づいて、前記測定対象の位置を算出する位置算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第二態様に係る測定方法は、光を出射する光源部と、前記光源部から出射された光のうち所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる前記光の波長を変更可能な分光素子と、前記分光素子から出射された光を、測定対象に照射される測定光と、参照体で反射される参照光とに分離し、前記測定対象で反射された前記測定光と、前記参照体で反射された前記参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系と、前記干渉光を受光する受光部と、を備える測定装置における測定方法であって、前記分光素子から透過される光の波長を変化させた場合の前記受光部での受光量の変化であるスペクトル情報を取得し、前記スペクトル情報に基づいて、前記測定対象の位置を算出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態の測定装置の概略構成を示す図。
【
図2】第一実施形態の受光部の概略構成を示す平面図。
【
図3】第一実施形態の測定方法を示すフローチャート。
【
図4】第一実施形態において、分光素子を透過する光の波長を分光波長域内で変化させた場合の、基準画素におけるスペクトル情報の一例を示す図。
【
図5】
図3のステップS1の動作の詳細を示すフローチャート。
【
図6】第一実施形態において、測定対象に対して異物が付着していた場合の干渉光のスペクトル情報の一例を示す図。
【
図7】第二実施形態の測定装置の概略構成を示す図。
【
図8】第三実施形態の測定装置の概略構成を示す図。
【
図9】第三実施形態において、一つの画素で受光される干渉光のスペクトル情報の一例を示す図。
【
図10】
図9における一部の波長域を拡大した拡大図。
【
図11】変形例2に係る干渉光学系の概略構成を示す図。
【
図12】変形例3に係る干渉光学系の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態に係る測定装置について説明する。
図1は、第一実施形態の測定装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の測定装置1は、光源部10と、分光素子20と、干渉光学系30と、受光部40と、制御部50と、を含んで構成されている。
【0010】
光源部10は、光を出射する光源を備えて構成されている。光源としては、分光素子20において光を分光可能な分光波長域の各波長に対する光量が均一な光を出射すればよい。例えば、本実施形態では、分光素子20は、可視光域から近赤外域を分光波長域とし、当該分光波長域から、透過させる光のピーク波長を変化させる。この場合、可視光域から近赤外域の分光波長域の各波長に対して、閾値以上の光量の光を出射可能な光源(例えば、ハロゲンランプ等)を用いる。
【0011】
分光素子20は、光源部10から出射された光が入射され、所定波長の光を分光して出射する(透過させる)。この分光素子20は、分光波長を切り替えることが可能な波長可変型の光学素子である。本実施形態では、分光素子20として、波長可変型のファブリーペローエタロン素子を用いる。
このような波長可変型のファブリーペローエタロン素子により構成された分光素子20は、一対のミラーを有し、かつ、静電アクチュエーター等により一対のミラーの間隔(ミラーギャップ)を任意の値に設定することができる。これにより、分光素子20は、ミラーギャップに応じた波長の光を透過させることが可能となる。
分光素子20において、分光可能な分光波長域は、予め決められており、本実施形態では、400nm~1000nmを分光波長域とする。なお、分光波長域としては、これに限定されるものではなく、例えば紫外域から赤外域を含む範囲であってもよく、赤外域のみを分光波長域としてもよい。
なお、本実施形態では、分光素子20としてファブリーペローエタロン素子を用いるが、その他の素子が用いられてもよい。例えば、分光素子20として、AOTF(Acousto-Optic Tunable Filter)、LCTF( Liquid Crystal Tunable Filter)等を用いてもよい。
【0012】
干渉光学系30は、分光素子20を透過した光を、測定対象Wに向かう測定光と、参照体33に向かう参照光とに分離し、測定対象Wで反射された測定光と、参照体33で反射された参照光とを合成することで干渉光を生成して受光部40に向かって出射させる。
具体的には、干渉光学系30は、
図1に示すように、ハーフミラー31と、ビームスプリッター32と、参照体33と、昇降機構34と、を含んで構成されている。
【0013】
ハーフミラー31は、分光素子20を透過した光を測定対象Wに向かう方向に透過させ、測定対象W側から入射する光を受光部40に向かって反射させる。
ビームスプリッター32は、ハーフミラー31を透過した光を、測定光と参照光とに分割する。つまり、ビームスプリッター32は、測定光を測定対象Wに向かって透過させ、参照光を参照体33に向かって反射させる。このビームスプリッター32は、例えば無偏光ビームスプリッターであって、入射光を1:1の比率で、測定光と参照光とに分割する。また、ビームスプリッター32は、測定対象Wで反射された測定光を透過させ、参照体33で反射された参照光を反射させることで、測定光と参照光とを合成して干渉光を生成する。
参照体33は、参照光を反射させるミラーである。
昇降機構34は、測定光の光路長(測定光路長)を変化させる機構であり、本実施形態では、測定装置1を測定対象Wが載置されるステージ100に対して進退させる。なお、昇降機構34としては、測定装置1の全体をステージ100に対して進退させる構成を例示するがこれに限定されない。例えば、昇降機構34は、ビームスプリッター32及び参照体33をステージ100に対して進退させる構成としてもよく、ステージ100を測定装置1に対して進退させる構成としてもよい。
なお、本実施形態では、昇降機構34は、測定光路の光路長を変化させるものであり、参照光路の光路長は固定値である例を示す。
【0014】
受光部40は、ビームスプリッター32で合成され、ハーフミラーで反射された干渉光を受光する。
図2は、受光部40の概略構成を示す平面図である。
この受光部40は、干渉光の光軸に対して垂直な矩形平面状の受光面41を有する。この受光面41には、複数の画素42がマトリクス状に配置されている。各画素42は、分光素子20において、透過する光の波長の変更可能な波長域(分光波長域)に対して受光感度を有し、各画素42は干渉光が受光されることで、受光量に応じた受光信号を出力する。
ここで、以降の説明において、複数の画素42のうちの1つは、基準画素42Aであり、その他の画素42を周囲画素42Bと称する。基準画素42Aは、測定装置1における測定基準となる画素42であり、例えば、マトリクス状に配置された画素42のうちの中央に配置された画素42を基準画素42Aとすることができる。なお、基準画素42Aは、受光面41の中央の画素42に限定されない。例えば、矩形状に配置される各画素42のうち、1つの角部に配置された画素42を基準画素42Aとしてもよい。
【0015】
制御部50は、測定装置1の動作を制御し、測定対象Wの表面形状を測定する。制御部50は、測定装置1と通信可能に接続されたコンピューターにより構成されていてもよく、測定装置1に組み込まれたマイコンにより構成されていてもよい。制御部50は、メモリーやハードディスク等により構成される記憶部、CPU(Central Processing Unit)等により構成された演算部を含んで構成されている。そして、制御部50は、演算部が記憶部に記憶されたプログラムを読み出し実行することで、
図1に示すように、波長指令部51、光路長調整部52、及び位置算出部53として機能する。
【0016】
波長指令部51は、分光素子20を制御して、分光素子20を透過させる光の波長を切り替える。例えば、本実施形態では、静電アクチュエーターによりミラーギャップを変化させることで、透過させる光の波長を変更するファブリーペローエタロン素子を分光素子20として用いる。この場合、波長指令部51は、分光素子20の静電アクチュエーターに印加する電圧を制御することで、分光素子20から透過させる光の波長を変化させる。
【0017】
光路長調整部52は、測定光路の光路長(測定光路長ls)と、参照光路の光路長(参照光路長lr)との差である光路長差s(=|ls-lr|)を調整する。
なお、本実施形態では、参照光路長lrは固定値である。したがって、光路長調整部52は、昇降機構34を駆動させることで、干渉光学系30を含む測定装置1をステージ100に対して進退させることで、測定光路長lsを変化させ、これにより、光路長差sを変化させる。
【0018】
位置算出部53は、受光部40の各画素での干渉光の受光量、つまり、各画素から出力される受光信号に基づいて、各画素に対応した測定対象Wの各測定点の位置を算出する。具体的には、位置算出部53は、波長指令部51によって分光素子20を透過させる光の波長を変化させることで得られる各画素での受光量の変化であるスペクトル情報に基づいて、各測定点の位置を算出する。
なお、波長指令部51、光路長調整部52、及び位置算出部53の詳細な処理については後述する。
【0019】
[測定装置1を用いた測定方法]
次に、上記のような測定装置1を用いて、測定対象Wの表面形状を測定する測定方法について説明する。
図3は、本実施形態の測定方法を示すフローチャートである。
測定装置1を用いた測定方法では、まず、測定装置1の光路長調整部52は、昇降機構34を制御して、測定装置1と測定対象Wとの位置関係を基準位置に設定する(ステップS1)。
このステップS1では、分光素子20から所定の基準波長の光を透過させた場合に、受光部40の基準画素42Aの受光量がピーク値(最大値)となり、かつ、スペクトル情報に含まれるピーク波長の数が最小となるように、昇降機構34を調整する。本実施形態では、基準波長が480nmである例を示す。
【0020】
つまり、干渉光は、光路長差sが、下記式(3)の条件を満たす場合に、測定光と参照光との位相が一致することで光量がピーク値となる。
s=|ls-lr|=nλ …(3)
図4は、分光素子20を透過する光の波長を分光波長域内で変化させた場合の、基準画素42Aにおけるスペクトル情報の一例を示す図である。
図4において、実線は、次数nがn=1の場合のスペクトル情報であり、破線は、n=5の場合のスペクトル情報である。
図4に示すように、干渉光の受光量は、光路長差sが基準波長である480nmの整数倍となるときにピーク値となる。ここで、次数nがn=1である場合、分光波長域において、ピーク波長は480nmのみであるが、次数nを増加させると、スペクトル情報に含まれるピーク波長の数、つまり、分光波長域内でのピーク波長の数も増加する。例えば、n=5の場合では、
図4に示すように、4つのピーク波長が検出される。
【0021】
分光波長域に含まれるピーク数が多い場合、波長変化量に対する画素42での受光変化量が大きく、分解能が粗くなる。これに対して、分光波長域に含まれるピーク数の数が少ない場合、波長変化量に対する画素42での受光変化量が小さく、高分解能な測定が実施可能となる。
したがって、ステップS1では、光路長調整部52は、ピーク波長の数が最小値である例えば「1」となるように、昇降機構34を制御して、測定光路長lsを調整する。
【0022】
図5は、ステップS1の動作の詳細を示すフローチャートである。
ステップS1では、例えば、光路長調整部52は、昇降機構34を制御し、測定装置1を測定対象Wから最も離れた位置に移動させる。つまり、光路長調整部52は、測定光路長lsを最大値に設定する(ステップS11)。この際、光路長調整部52は、さらに、光路長差を設定するための高さ変数iを初期化(i=1)する。
【0023】
次に、波長指令部51は、分光素子20を制御して、分光素子20から透過させる光の波長を、基準波長である480nmに設定し、光源部10から光を出射させる(ステップS12)。これにより、分光素子20から基準波長の光が透過され、基準波長の干渉光が受光部40で受光される。
この後、光路長調整部52は、受光部40の基準画素42Aから出力される受光信号を参照しながら、測定装置1をステージ100に近接する方向に移動させ、測定光路長lsを減少させる(ステップS13)。
そして、光路長調整部52は、基準画素42Aから出力される受光信号が最大値(ピーク値)になったか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14でNOと判定される場合は、受光信号が最大値となるまで、ステップS13を継続する。
ステップS14でYESと判定される場合、光路長調整部52は、受光信号が最大値となる高さ位置で昇降機構34を停止させ、波長指令部51は、分光素子20から透過させる光の波長を分光波長域で順次切り替え、スペクトル情報を取得する(ステップS15)。つまり、光路長差sが基準波長の整数倍となる位置での、スペクトル情報を取得する。
また、ステップS15では、光路長調整部52は、取得されたスペクトル情報と、測定装置1の高さ位置とを、高さ変数iに対応付けて、記憶部に記憶する。
【0024】
次に、光路長調整部52は、高さ変数i-1に対応するスペクトル情報を記憶部から読み出し、高さ変数iのスペクトル情報に含まれるピーク数Miが、高さ変数i-1のスペクトル情報に含まれるピーク数Mi-1以下であるか否かを判定する(ステップS16)。
ステップS16でYESと判定される場合、高さ変数iに1を加算して(ステップS17)、ステップS12に戻る。
一方、ステップS16でNOと判定される場合、及び、測定光路長lsが昇降機構34により設定可能な最小値まで移動した場合、光路長調整部52は、昇降機構34を制御して、高さ変数i-1に対応する高さ位置に測定装置1を移動させる(ステップS18)。
つまり、ピーク数Mi-1に対して、ピーク数Miが大きくなる場合、測定光路長ls<参照光路長lrとなったことを意味するので、高さ変数i-1の光路長差sが、n=1の次数に対応した光路長差である。また、測定光路長lsを昇降機構34で変更可能な最小値まで移動させるまで、ピーク数Miがピーク数Mi-1より小さい場合では、基準画素42Aでピーク値が得られた直近の高さ位置、つまり高さ変数i-1に対応する高さ位置の光路長差sが、最小次数に対応した光路長差である。
以上により、スペクトル情報に含まれるピーク数の数が最も少なくなるように、つまり、次数nが最小となるように、光路長差sが調整される。
【0025】
以上のように、ステップS1での光路長差の調整処理を実施した後、波長指令部51は、分光素子20から透過させる光の波長を分光波長域で順次切り替え、受光部40の全ての画素42でのスペクトル情報を取得する(ステップS2)。
【0026】
そして、位置算出部53は、各画素42に対応する測定対象Wの各測定点の位置、つまり、各測定点の測定装置1からの距離を、スペクトル情報に基づいて算出する(ステップS3)。
【0027】
ここで、ステップS3における測定点の測定装置1からの距離の算出方法について、従来の例を比較して説明する。
例えば、特許文献1に記載のような従来の測定方法では、光源から波長を固定したレーザー光を照射し、当該レーザー光を測定光と参照光とに分離し、測定対象で反射された測定光と、参照体で反射された参照光との干渉光を得る。このような従来の測定方法では、受光量に応じた受光信号と、その微分信号を用いることで、レーザー光の1波長内の微小な形状を測定することができる。
【0028】
しかしながら、測定装置と測定対象との距離が、波長の整数倍で変化する場合、干渉光の光強度は同一となる。したがって、レーザー光の1波長よりも大きい形状変化を測定することはできない。なお、測定対象の表面が滑らかに変化している場合では、受光部の隣り合う画素での受光量の変化から形状の予測を行うことができるが、測定対象の表面に異物等があり、形状が大きく変化する場合には対応できない。
図6は、測定対象Wに対して異物が付着していた場合の干渉光のスペクトル情報の一例を示す図である。
図6において、破線は、異物がない場合のスペクトル情報であり、実線は、120nmの異物が付着している場合、一点鎖線は360nmの異物が付着している場合、二点鎖線は、600nmの異物が付着している場合の干渉光のスペクトル情報である。
図6に示すように、分光素子20から480nmの光を透過させる場合、測定対象Wに120nmの異物が付着している場合の光強度、360nmの異物が付着している場合の光強度、及び600nmの異物が付着している場合の光強度は、共に「0」となる。したがって、上記のように、従来の測定方法のように受光部で検出される受光量(光強度)のみを用いる場合では、1波長を超える形状変化は測定することができない。
【0029】
これに対して、本実施形態では、位置算出部53は、スペクトル情報に基づいて、測定装置1から測定対象Wまでの距離を算出する。つまり、
図6に示すように、異物のサイズが異なる場合、480nmでの干渉光の光強度が同一であっても、その他の波長での干渉光の光強度は、それぞれ異なる値となる。したがって、
図6に示すように、異物のサイズに応じて、異なる形状のスペクトル情報が得られる。
【0030】
そこで、本実施形態の位置算出部53は、各画素42で取得されたスペクトル情報の形状、すなわち、受光量がピーク値となるピーク波長、及び、ピーク波長間のピーク間隔とに基づいて、測定対象Wの各測定点の測定装置1からの距離を算出する。
すなわち、位置算出部53は、各画素42のスペクトル情報を取得することで、受光量がピーク値となる各ピーク波長を検出することができ、各ピーク波長とピーク間隔から、上述した式(3)における次数nを算出することができる。これにより、位置算出部53は、各画素42で受光した干渉光の光路長差sを算出することができる。また、本実施形態では、参照光路長lrが固定値であるため、光路長差sから測定光路長lsを容易に算出することができる。この測定光路長lsは、干渉光学系30におけるビームスプリッター32から、測定対象Wの各画素42に対応する測定点までの距離の2倍であるので、測定光路長lsから、測定装置1から測定対象Wの各測定点までの距離をそれぞれ算出することができる。
【0031】
つまり、本実施形態では、ステップS1において、基準画素42Aに対応する測定対象Wの基準点での光路長差sが、基準波長λの整数倍となるように、測定装置1と測定対象Wとの位置合わせを行う。さらに、ステップS2において、分光素子20で透過させる光の波長を変化させることで、周囲画素42Bを含めた各画素42のスペクトル情報を取得する。これにより、ステップS3では、位置算出部53は、測定対象Wの基準点の測定装置1からの距離を基準として、各測定点の基準点に対する測定装置1からの距離を高精度に算出することができる。
このため、測定対象Wにおける基準点に対する各測定点の位置も高精度に算出でき、各測定点の位置から、測定対象Wの凹凸や傾斜状態等の表面形状を高精度に測定することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、測定装置1から測定対象Wまでの各測定点までの距離Δhは、下記式(4)により算出できる。
Δh=∂h/∂z×Δz+∂h/∂λ×Δλ・・・(4)
式(4)において、第1項の∂h/∂zは、昇降機構34で測定装置1をステージ100に対して進退させる際の分解能であり、第2項の∂h/∂λは、分光素子20において透過させる光の波長を変更する際の分解能である。従来の測定方法では、波長λを固定しているため、第2項がなく、第1項のみの分解能で測定される。これに対して、本実施形態では、第1項及び第2項で、それぞれ独立した物理量を扱うことで、従来に比べてより高精度な測定が可能となる。
【0033】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の測定装置1は、光を出射する光源部10と、光源部10から出射された光から、所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる光の波長を変更可能な分光素子20と、分光素子20から出射された光を、測定対象Wに照射される測定光と、参照体33で反射される参照光とに分離し、測定対象Wで反射された測定光と、参照体33で反射された参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系30と、干渉光を受光する受光部40と、分光素子20を透過させる光の波長を変化させた場合の受光部40での受光量の変化であるスペクトル情報に基づいて、測定対象Wの位置を算出する位置算出部53と、を備える。
【0034】
つまり、本実施形態では、測定光及び参照光の波長を変化させ、各波長に対する干渉光の受光量を取得することで、波長と受光量との関係を示すスペクトル情報を取得する。
受光部40で受光される干渉光の光量がピークとなる条件は、式(3)に示す通りであり、異なる次数nの複数の光路長差sで、干渉光の光量がピークとなる。したがって、特定の波長の光のみを用いて干渉光を測定した場合では、このような次数nの違いによる光路長差sを検出することができない。これに対して、本実施形態では、受光部40で受光される干渉光のスペクトル情報には、複数のピーク波長が含まれることがあり、これらのピーク波長と、ピーク間隔を検出すれば、次数nを算出でき、精度よく光路長差sを算出することができる。したがって、測定対象Wに、干渉光の波長よりも大きい、異物が付着している場合や、凹凸が形成されている場合、急峻な傾斜勾配がある場合でも、その異物や凹凸のサイズ、測定対象Wの傾斜を高精度に算出することができる。
【0035】
本実施形態の測定装置1は、測定光及び参照光の光路長差を調整する光路長調整部52をさらに備える。そして、この光路長調整部52は、スペクトル情報の波長範囲内(分光波長域内)に含まれるピーク波長の数が最小となるように光路長差sを調整する。
分光波長域内に含まれるピーク数が最小となる場合、次数nが最小値に設定されたことを意味する。例えば、光路長差sが480nmに調整された場合、分光素子20を透過する光の波長が480nmの時に、受光部40で受光量がピークとなるが、分光波長域内にその他のピーク波長は出現しない。このようなスペクトル情報におけるピーク波長を高精度に検出することができ、測定精度の向上を図ることができる。つまり、式(4)における第2項の∂h/∂λが小さくなり、高い分解能で、測定装置1から測定対象Wまでの距離を算出することができる。
【0036】
本実施形態では、光路長調整部52は、干渉光学系30と測定対象Wとの距離である測定距離を変化させる。
具体的には、測定装置1は、干渉光学系30を含む測定装置1自身を、測定対象Wが載置されたステージ100に対して進退させる昇降機構34を備える。そして、光路長調整部52は、昇降機構34を制御することで、参照光路長lrを固定したまま、測定光路長lsを変化させる。
このように、参照光路長lrを固定したまま測定光路長lsを変化させることで、位置算出部53により算出された光路長差sの値から、測定光路長lsを正確に求めることができる。測定光路長lsは、ビームスプリッター32から出射された測定光が測定対象Wで反射されてビームスプリッター32に戻るまでの距離であるので、測定光路長lsの半値がビームスプリッター32から測定対象Wまでの距離として算出することができる。
【0037】
本実施形態の測定装置1では、受光部40は複数の画素42を有する。そして、光路長調整部52は、複数の画素42のうちの1つを基準画素42Aとし、基準画素42Aで所定の基準波長(例えば、480nm)の光を受光させた時に受光量がピークとなる位置に光路長差を変化させる。
これにより、基準画素42Aに対応する測定対象Wの基準点に対する、周囲画素42Bに対応する各測定点の位置を正確に算出することができる。また、基準画素42Aのスペクトル情報において次数nが最小値(例えば「1」)となるように、光路長差が設定されることで、その他の周囲画素42Bに対する測定点に異物や凹凸等の形状変化がある場合に、基準画素42Aのスペクトル情報に対して、スペクトル情報のスペクトル形状が大きく変化する。つまり、測定対象Wの各測定点に異物等による形状変化がある場合、各周囲画素42Bのスペクトル情報は、基準画素42Aのスペクトル情報に対して、ピーク波長の位置及びピーク間隔の変化が顕著に現れる。したがって、高い分解能で測定対象Wの各測定点の測定装置1からの距離を算出でき、当該距離に基づいて、測定対象Wの表面形状を高精度に測定することができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
第一実施形態では、測定装置1が昇降機構34を有し、昇降機構34によって、測定装置1をステージ100に対して進退させることで、測定光路長lsを変化させた。
これに対して、本実施形態は、参照光路長lrを変化させる点で第一実施形態と相違する。なお、以降の説明において、既に説明した構成については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0039】
図7は、本実施形態の測定装置1Aの概略構成を示す図である。
本実施形態の測定装置1Aは、第一実施形態と同様に、光源部10と、分光素子20と、干渉光学系30Aと、受光部40と、制御部50と、を備えている。
ここで、本実施形態の干渉光学系30Aは、ハーフミラー31、ビームスプリッター32、参照体33、及び参照体移動機構35を備えて構成されている。
参照体移動機構35は、参照体33をビームスプリッター32に対して進退させる機構である。
すなわち、本実施形態では、ステージ100に測定対象Wを載置した状態で、測定光路長lsを変更することができず、代わりに、参照体33をビームスプリッター32に対して進退させることで、参照光路長lrを変更することが可能に構成されている。
【0040】
このような本実施形態では、第一実施形態と略同様の測定方法により、測定対象Wの表面形状を測定することができる。
ここで、本実施形態では、ステップS1において、光路長調整部52は、参照体移動機構35を制御して、参照体33のビームスプリッター32に対する位置を調整する。例えば、ステップS11で参照体33をビームスプリッター32から最も離れた位置に移動させておき、ステップS13で、参照体33をビームスプリッター32に向かって移動させる。これにより、上記第一実施形態と同様の処理により、基準画素42Aで基準波長の干渉光を受光した時に、受光量がピークとなり、次数nが最小となる位置に、参照体33を移動させる。
なお、以降の処理に関しては、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
本実施形態の測定装置1Aでは、光路長調整部52は、参照光の光路長を変化させる。
具体的には、測定装置1Aは、干渉光学系30Aのビームスプリッター32と参照体33との距離を変化させる参照体移動機構35を備える。そして、光路長調整部52は、参照体移動機構35を制御することで、測定光路長lsを固定したまま、参照光路長lrを変化させる。
このように、測定光路長lsを固定したまま参照光路長lrを変化させることで、位置算出部53により算出された光路長差sの値から、測定光路長lsを正確に求めることができる。つまり、参照体33の移動量から参照光路長lrを算出することができ、光路長差sと、算出された当該参照光路長lrとに基づいて、測定光路長ls、及び、ビームスプリッター32から測定対象Wまでの距離を算出することができる。
【0042】
[第三実施形態]
上述した第一実施形態及び第二実施形態では、ステップS1において、基準画素42Aで受光される基準波長の干渉光の受光量がピークとなるように、光路長差sを調整する例を示した。
これに対して、第三実施形態では、光路長調整部52による光路長差の調整をせずに、測定対象Wの形状を測定する点で、上記第一及び第二実施形態と相違する。
【0043】
図8は、本実施形態の測定装置1Bの概略構成を示す図である。
図8に示すように、本実施形態の測定装置1Bは、光源部10と、分光素子20と、干渉光学系30Bと、受光部40と、制御部50Aとを備える。
そして、本実施形態の干渉光学系30Bは、
図8に示すように、ハーフミラー31、ビームスプリッター32、及び参照体33を備えるが、昇降機構34や参照体移動機構35が設けられていない。
【0044】
また、本実施形態の制御部50Aは、波長指令部51、及び位置算出部53Aとして機能する。
本実施形態では、位置算出部53Aは、スペクトル情報のみを用いて、各画素に対応した測定点の位置を算出する。ここで、本実施形態では、光路長差sは、所定値以上の比較的大きい値に設定されていることが好ましい。つまり、本実施形態では、式(3)における次数nが比較的大きい値を取り、例えば、n=100以上となるように、測定光路長lsと参照光路長lrとの光路長差sが予め設定されている。
【0045】
具体的には、本実施形態の測定装置1Bでは、ステップS1の処理が省略され、ステージ100に測定対象Wを載置した後、ステップS2の処理を実施して、各画素42のスペクトル情報を取得する。
この後、ステップS3において、位置算出部53Aは、各画素42に対するスペクトル情報を用いて、各測定点の位置を測定する。ここで、本実施形態では、上述したように、光路長差sが所定値以上となり、次数nが例えば100次以上の高次となる。
図9及び
図10は、本実施形態において、一つの画素42で受光される干渉光のスペクトル情報の一部の例を示す図である
図9及び
図10において破線は、異物がない場合のスペクトル情報、破線は120nmの異物が付着している場合のスペクトル情報、一点鎖線は360nmの異物が付着している場合のスペクトル情報、二点鎖線は600nmの異物が付着している場合のスペクトル情報である。
nが高次である場合、
図9及び
図10に示すように、狭い波長域内に複数のピーク波長が現れ、
図9のように、サイズが異なる複数種類の異物が付着している場合でも、同一のピーク波長が検出される場合がある。しかしながら、スペクトル情報における他の波長域を参照すれば、
図10のように、異物の種類によって、それぞれピーク波長が異なっていることが分かる。したがって、位置算出部53Aは、各スペクトル情報のピーク波長と、ピーク間隔を検出することで、各画素42に対応した測定対象Wの各測定点の測定装置1Bからの距離を算出することができる。
【0046】
本実施形態では、昇降機構34や参照体移動機構35が設けられないため、昇降機構34や参照体移動機構35の駆動時の振動が発生しない。したがって、振動に基づいた測定誤差も発生せず、測定精度の向上を図ることができる。さらに、昇降機構34や参照体移動機構35として、高分解能な移動機構を設ける必要がないため、測定装置1Bのコストを低減できるとともに、測定装置1Bの小型化をも図ることができる。
【0047】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0048】
[変形例1]
上記第一実施形態及び第二実施形態では、ステップS1において光路長差sを調整した後、ステップS2で分光素子20を透過させる光の波長を変化させて、各画素42についてスペクトル情報を取得した。
これに対し、ステップS1のステップS14及びステップS15において、基準画素42Aだけでなく、周囲画素42Bのスペクトル情報を取得してもよい。この場合、ステップS2の処理を省略できる。
【0049】
[変形例2]
上記実施形態では、干渉光学系30のハーフミラー31は、分光素子20を透過した光をビームスプリッター32に向かって透過させ、ビームスプリッター32側から入射する干渉光を受光部40に向かって反射させた。これに対して、ハーフミラー31は、分光素子20を透過した光をビームスプリッター32に向かって反射し、ビームスプリッター32側から入射する干渉光を受光部40に向かって透過させる構成としてもよい。
また、ハーフミラー31の代わりに、偏光ビームスプリッターを用いてもよい。
図11は、変形例2に係る干渉光学系30Cの概略構成を示す図である。なお、
図11において、昇降機構34又は参照体移動機構35は省略する。
例えば、
図11に示す干渉光学系30Cでは、分光素子20を透過した光は、偏光変換素子36Aに入射されることで直線偏光(例えばP偏光)の光に変換される。偏光変換素子36Aと透過した光は、偏光ビームスプリッター36Bに入射され、P偏光の光は偏光ビームスプリッター36Bを透過して、ビームスプリッター32に向かって出射される。偏光ビームスプリッター36Bとビームスプリッター32との間にはλ/4板36Cが設けられ、λ/4板36Cを透過することで円偏光となった光は、上記実施形態と同様に、ビームスプリッター32で測定光及び参照光に分離される。また、測定対象Wで反射された測定光、及び参照体33で反射された参照光は、再びビームスプリッター32に入射して合成され、干渉光として偏光ビームスプリッター36Bに向かって出射される。そして、λ/4板36Cによって、円偏光からS偏光に変換された干渉光は、偏光ビームスプリッター36Bにより反射されて、受光部40に受光される。
【0050】
[変形例3]
図12は、変形例3に係る干渉光学系30Dの概略構成を示す図である。なお、
図12において、昇降機構34は省略する。
上記実施形態では、ビームスプリッター32は、測定光をそのまま透過させ、参照光を参照体33に向かって反射させることで、分光素子20からの光を測定光と参照光とに分離したが、これに限定されない。
例えば、
図12に示す干渉光学系30Dのビームスプリッター37は、その表面に、入射光のうちの半分を透過させ、残りの半分を反射させる光学膜が形成されている。このようなビームスプリッター37では、入射光のうち、光学膜を透過する光が測定光となり、光学膜で反射される光が参照光となる。つまり、光学膜は本開示の参照体を構成する。この場合、光学膜で反射された参照光と、測定対象Wで反射された測定光とにより干渉光が生成される。
【0051】
[変形例4]
上記実施形態では、受光部40が複数の画素42を有し、各画素42から独立したスペクトル情報が取得される例を示したが、これに限定されない。
例えば、受光部40は、測定対象Wの所定の測定点で反射された光のみを受光してもよい。
また、受光部40は、複数の画素が矩形状の受光面41にマトリクス状に配置される例を示したが、複数の画素42が一直線上に配置されるラインセンサーであってもよい。
【0052】
[変形例5]
第一実施形態では、光路長調整部52は、昇降機構34を制御することで測定光路長lsを変化させ、第二実施形態では、光路長調整部52は、参照体移動機構35を制御することで、参照光路長lrを変化させる例を示した。これに対して、昇降機構34及び参照体移動機構35の双方が設けられ、光路長調整部52は、昇降機構34及び参照体移動機構35の双方を調整して、測定光路長ls及び参照光路長lrの双方を変化させてもよい。
【0053】
[変形例6]
第一実施形態では、ステップS11において、測定光路長lsを昇降機構34で設定可能な最大値に設定し、測定光路長lsを減少させながら、基準画素からの受光信号が最大となる際のスペクトル情報のピーク数を監視して、ピーク数が最小となる測定装置1の高さ位置を検出した。
これに対して、測定光路長lsを昇降機構34で設定可能な最小値に設定し、測定光路長lsを増大させながら、スペクトル情報のピーク数を監視して、ピーク数が最小となる測定装置1の高さ位置を検出してもよい。
なお、第二実施形態において、参照光路長lrを変化させる場合も同様である。
【0054】
[変形例7]
上記実施形態では、光源部10とハーフミラー31との間に分光素子20を配置する例を示したが、これに限定されない。例えば、ハーフミラー31と受光部40との間に分光素子20が設けられる構成としてもよい。
【0055】
[変形例8]
上記実施形態の測定装置1,1A,1Bとして、ステージ100に載置された測定対象Wを測定する装置を例示したがこれに限定されない。
例えば、多関節アーム等を備えたロボットアームに測定装置を適用してもよい。この場合、多関節アームのアーム先端に測定装置1,1A,1Bを設けることで、作業対象までの距離を測定装置1,1A,1Bにより測定することができる。
【0056】
[本発明のまとめ]
本発明の第一態様に係る測定装置は、光を出射する光源部と、前記光源部から出射された光のうち所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる前記光の波長を変更可能な分光素子と、前記分光素子から出射された光を、測定対象に照射される測定光と、参照体で反射される参照光とに分離し、前記測定対象で反射された前記測定光と、前記参照体で反射された前記参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系と、前記干渉光を受光する受光部と、前記分光素子から透過される光の波長を変化させた場合の前記受光部での受光量の変化であるスペクトル情報に基づいて、前記測定対象の位置を算出する位置算出部と、を備えることを特徴とする。
このような構成では、受光部で受光される干渉光のスペクトル情報には、複数のピーク波長が含まれることがあり、これらのピーク波長とピーク間隔を検出すれば、測定光と参照光の光路長差を精度よく算出することができる。したがって、測定対象に、干渉光の波長よりも大きい、異物が付着している場合や、凹凸が形成されている場合でも、その異物や凹凸のサイズを高精度に算出することができる。
【0057】
本態様の測定装置において、前記測定光及び前記参照光の光路長差を調整する光路長調整部をさらに備え、前記光路長調整部は、前記スペクトル情報の前記波長範囲内に含まれるピーク波長の数が最小となるように前記光路長差を調整することが好ましい。
これにより、エラー検出部は、受光部により測定を実施する時間に対する、波長シフトの発生頻度の程度に基づいて、エラーを検出することができ、より適正にエラー検出を行うことができる。
【0058】
第一態様及び第二態様に係る分光装置において、前記干渉フィルターは、前記ギャップ寸法を変化させるギャップ変更部を備え、前記ギャップセンサーにより検出される前記分光波長が前記目標波長に近づくように、前記ギャップ変更部をフィードバック制御するフィードバック制御部を備えることが好ましい。
干渉光の光強度がピークとなる条件は、測定光路長ls、参照光路長lr、次数n、波長λを用いて、s=nλである。したがって、分光波長域内に含まれるピーク数が最小となる場合、次数nが最小値に設定されたことを意味する。このような光路長差を設定することで、スペクトル情報におけるピーク波長を高精度に検出することができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0059】
本態様の測定装置において、前記光路長調整部は、前記測定光の光路長を変化させることが好ましい。
これにより、例えば、参照光路長を固定したまま測定光路長を変化させることで、位置算出部により算出された光路長差の値から、測定光路長を正確に求めることができる。
【0060】
本態様の測定装置において、前記光路長調整部は、前記参照光の光路長を変化させてもよい。
これにより、例えば、参照体の変化量から参照光路長を算出し、位置算出部により算出された光路長差の値から参照光路長を減算すれば、測定光路長を正確に求めることができる。
【0061】
本態様の測定装置において、前記受光部は複数の画素を有し、前記光路長調整部は、複数の前記画素のうちの1つを基準画素とし、前記基準画素で所定の基準波長の光を受光させた時に前記受光量がピークとなる位置に前記光路長差を変化させることが好ましい。
これにより、基準画素に対応する測定対象の基準点の位置に対し、基準画素以外の周囲画素に対応する各測定点の位置を正確に算出することができる。
また、基準画素のスペクトル情報に含まれるピーク波長の数が最小となるように光路長差が調整されている場合、周囲画素に対応した測定点に異物や凹凸等の形状変化があれば、そのスペクトル情報のスペクトル形状が、基準画素のスペクトル情報のスペクトル形状に対して大きく変化する。つまり、測定対象の各測定点に異物等による形状変化がある場合、基準画素スペクトル情報に対して、ピーク波長の位置及びピーク間隔の変化が顕著に現れる。したがって、高い分解能で測定対象の各測定点の位置を測定することができる。
【0062】
本発明の第二態様に係る測定方法は、光を出射する光源部と、前記光源部から出射された光のうち所定波長の光を透過させ、かつ所定の波長範囲内で透過させる前記光の波長を変更可能な分光素子と、前記分光素子から出射された光を、測定対象に照射される測定光と、参照体で反射される参照光とに分離し、前記測定対象で反射された前記測定光と、前記参照体で反射された前記参照光とを合成した干渉光を生成する干渉光学系と、前記干渉光を受光する受光部と、を備える測定装置における測定方法であって、前記分光素子から透過される光の波長を変化させた場合の前記受光部での受光量の変化であるスペクトル情報を取得し、前記スペクトル情報に基づいて、前記測定対象の位置を算出することを特徴とする。
これにより、第一態様の測定装置と同様に、測定対象に、干渉光の波長よりも大きい、異物が付着している場合や、凹凸が形成されている場合でも、その異物や凹凸のサイズを高精度に算出することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B…測定装置、10…光源部、20…分光素子、30,30A,30B,30C,30D…干渉光学系、31…ハーフミラー、32…ビームスプリッター、33…参照体、34…昇降機構、35…参照体移動機構、36A…偏光変換素子、36B…偏光ビームスプリッター、36C…λ/4板、37…ビームスプリッター、40…受光部、42…画素、42A…基準画素、42B…周囲画素、50,50A…制御部、51…波長指令部、52…光路長調整部、53,53A…位置算出部、100…ステージ、W…測定対象。