(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ワークの配列装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/30 20060101AFI20240312BHJP
B65G 11/18 20060101ALI20240312BHJP
B65G 11/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65G47/30 L
B65G11/18 Z
B65G11/10 Z
(21)【出願番号】P 2020080678
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 高宏
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-040157(JP,A)
【文献】特開平06-009028(JP,A)
【文献】実開平04-022412(JP,U)
【文献】特公昭49-035385(JP,B1)
【文献】特開2018-074688(JP,A)
【文献】国際公開第2006/120975(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291117(US,A1)
【文献】特開昭58-022212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/30
B65G 11/00
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一配列で並べられている複数のワークを前記第一配列とは異なる第二配列に並べ替えるワークの配列装置であって、
前記第一配列と同じ配列で並んでおり上下方向に貫通するとともに前記第一配列で並べられている複数の前記ワークのそれぞれを前記第一配列を維持したまま挿入可能な複数の第一開口部を有する第一部材と、
前記第二配列と同じ配列で並んでおり上下方向に貫通する前記第一開口部と同数の第二開口部を有し、前記第一部材の下方に位置する第二部材と、
上端が前記第一部材に取り付けられており、下端が前記第二部材に取り付けられており、複数の前記第一開口部のうちの一つと複数の前記第二開口部のうちの一つとの間に設けられ、前記第一開口部のうちの一つに挿入された前記ワークが自重によって前記第二開口部のうちの一つに移動するように通過するとともに
通過する前記ワークをガイドする前記第一開口部と同数の経路部材と、
を有し、
複数の前記第一開口部と複数の前記第二開口部とは一対一の対応関係を有しており、前記対応関係を有する前記第一開口部と前記第二開口部とは、前記経路部材によって前記ワークが移動可能に接続されている、
ワークの配列装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの配列装置であって、
複数の前記経路部材は互いに別部材である、
ワークの配列装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のワークの配列装置であって、
複数の前記経路部材は、上端に設けられており上側に向かうにしたがって断面積が小さくなる先細り形状の第一取付部と、下端に設けられており下側に向かうにしたがって断面積が小さくなる先細り形状の第二取付部と、を有し、
複数の前記第一開口部は、上側に向かうにしたがって断面積が小さくなるテーパ孔であり、
複数の前記第二開口部は、下側に向かうにしたがって断面積が小さくなるテーパ孔であり、
複数の前記経路部材の前記第一取付部は前記第一開口部に挿入されており、前記第二取付部は前記第二開口部に挿入されている、
ワークの配列装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワークの配列装置であって、
複数の前記経路部材は、互いに所定の距離を置いて略平行な棒状の複数のガイド部を有し、複数の前記ガイド部どうしの間を前記ワークが前記経路部材の延伸方向に移動可能に構成される、
ワークの配列装置。
【請求項5】
請求項4に記載のワークの配列装置であって、
複数の前記経路部材の延伸方向の中間には、複数の前記ガイド部どうしを一体に繋ぐ固定部が設けられている、
ワークの配列装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワークの配列装置であって、
複数の前記経路部材の前記ガイド部、前記第一取付部、前記第二取付部、および前記固定部は互いに一体に繋がっており光硬化性樹脂からなる、
ワークの配列装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のワークの配列装置であって、
前記経路部材は、延伸方向が略上下方向に平行な垂直部と、延伸方向が上下方向に対して傾斜しており上端側から下端側に向かって下り勾配である傾斜部とを有しており、
前記垂直部には、通過する前記ワークを回転させるために前記経路部材が延伸方向に平行な線を中心として捩じれているワーク回転部が設けられている、
ワークの配列装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の配列で並んでいる複数のワークを他の所定の配列に並べ替えるワークの配列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの搬送や配列の変更には、搬送ロボットが用いられている。例えば特許文献1には、ワークを搬送する搬送ロボットとして、複数の関節部を有して三次元的に複雑な様々な動きをとり得るロボットハンドを備えた産業用ロボットが開示されている。このような搬送ロボットによれば、ロボットハンドの先端でワークを把持して移動させることができる。
【0003】
ところで、複数のワークをある工程から次の工程に搬送する際、当該ある工程の終了時点におけるワークの配列を、搬送ロボットによって当該次の工程に適した配列に並べ替えることがある。例えば、モータのステータの製造においては、複数の分割コアに対して巻き線を施して環状に配列する際に、各分割コアを所定の位置に配置するために分割コアの配置変更が必要になることがある。しかしながら、特許文献1に記載のような複数の関節部を有する搬送ロボットでは、ワークごとに把持、移動、解放という動作が必要であるために、ワークの並べ替えに時間を要する。さらに、並べ替えの対象であるワークの数が多くなると、ワークの数に比例して並べ替えに要する時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数のワークの配列の変更(すなわち、ワークの並べ替え)に要する時間を従来よりも短くできるワークの配列装置を提供することである。
【0006】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係るワークの配列装置(10)は、
第一配列で並べられている複数のワーク(分割コア(51))を前記第一配列とは異なる第二配列に並べ替えるワークの配列装置(10)であって、
前記第一配列と同じ配列で並んでおり上下方向に貫通するとともに、前記第一配列で並べられている複数の前記ワーク(分割コア(51))のそれぞれを、前記第一配列を維持したまま挿入可能な複数の第一開口部(111)を有する第一部材(11)と、
前記第二配列と同じ配列で並んでおり上下方向に貫通する前記第一開口部(111)と同数の第二開口部(121)を有し、前記第一部材(11)の下方に位置する第二部材(12)と、
上端が前記第一部材(11)に取り付けられ、下端が前記第二部材(12)に取り付けられ、複数の前記第一開口部(111)のうちの一つと複数の前記第二開口部(121)のうちの一つとの間に設けられており、前記第一開口部(111)のうちの一つに挿入されたワーク(分割コア(51))が自重によって前記第二開口部(121)のうちの一つに移動するように通過するとともに通過する前記ワーク(分割コア(51))をガイドする前記第一開口部(111)と同数の経路部材(13)と、
を有し、
複数の前記第一開口部(111)と複数の前記第二開口部(121)とは一対一の対応関係を有しており、前記対応関係を有する前記第一開口部(111)と前記第二開口部(121)とは前記経路部材(13)によってワーク(分割コア(51))が移動可能に接続されている。
【0007】
本発明がこのように構成されると、第一部材(11)に設けられている第一開口部(111)から経路部材(13)にワーク(分割コア(51))が投入されると、ワーク(分割コア(51))は自重によって各経路部材(13)にガイドされた状態で移動し、第二部材(12)に設けられており第一開口部(111)と一対一で対応関係を有する第二開口部(121)から排出される。第二部材(12)に設けられている複数の第二開口部(121)は第二配列で並んでいるから、ワーク(分割コア(51))が第一開口部(111)と一対一で対応する第二開口部(121)から排出された時点で、ワーク(分割コア(51))の並べ替え(すなわち、ワーク(分割コア(51))の配列を第一配列から第二配列に変更すること)が完了する。このため、ロボットによってワーク(分割コア(51))を個別に移動させる構成と比較して、ワーク(分割コア(51))の並べ替えに要する時間を短縮できる。さらに、複数のワークを一括して並べ替えることができるから、ワーク(分割コア(51))の数が多くなってもワーク(分割コア(51))の配列の変更に要する時間が従来よりも長くなることが無い。
【0008】
複数の前記経路部材(13)は互いに別部材である、という構成であってもよい。
【0009】
複数の前記経路部材(13)が互いに別部材であると、例えば1つの経路部材(13)に不具合等が生じた場合には、当該1つの経路部材(13)の交換または修理をすればよい。したがって、メンテナンスに要するコストや手間の削減を図ることができる。
【0010】
複数の前記経路部材(13)は、上端に設けられており上側に向かうにしたがって断面積、例えば、ワーク投入時の引っ掛かりを低減する通過面積が小さくなる先細り形状の第一取付部(131)と、下端に設けられており下側に向かうにしたがって断面積が小さくなる先細り形状の第二取付部(133)と、を有し、
複数の前記第一開口部(111)のそれぞれは、上側に向かうにしたがって断面積が小さくなるテーパ孔であり、
複数の前記第二開口部(121)のそれぞれは、下側に向かうにしたがって断面積が小さくなるテーパ孔であり、
前記経路部材(13)の前記第一取付部(131)とは前記第二取付部(133)は、一対一で対応する前記第一開口部(111)と前記第二開口部(121)に挿入されている、という構成であってもよい。
【0011】
本発明がこのように構成されると、各経路部材(13)の第一取付部(131)を第一部材(11)の下側から各第一開口部(111)に挿入するだけで、各経路部材(13)と各第一開口部(111)とを位置決めできる。同様に、各経路部材(13)の第二取付部(133)を第二部材(12)の上側から各第二開口部(121)に挿入するだけで、各経路部材(13)と各第二開口部(121)とを位置決めできる。したがって、各経路部材(13)の組付け作業が容易となる。さらに、各経路部材(13)と第一部材(11)および第二部材(12)との位置決めの精度の向上を図ることが容易になる。
【0012】
複数の前記経路部材(13)は、互いに所定の距離を置いて略平行な棒状の複数のガイド部(136,137,138)を有し、複数の前記ガイド部(136,137,138)どうしの間を前記ワーク(分割コア(51))が前記経路部材(13)の延伸方向に移動可能に構成される、という構成であってもよい。
【0013】
本発明がこのように構成されると、経路部材(13)を通過中のワーク(分割コア(51))に外部から目視できる。このため、例えば経路部材(13)を通過中にワーク(分割コア(51))の移動が停止した場合に、ワーク(分割コア(51))を経路部材(13)の外部から目視でき、即座に移動させることによって、ワーク(分割コア(51))の滞留を解消できる。
【0014】
複数の前記経路部材(13)の延伸方向の中間には、複数の前記ガイド部(136,137,138)どうしを一体に繋ぐ固定部(139)が設けられている、という構成であってもよい。
【0015】
本発明がこのように構成されると、固定部(139)によって複数のガイド部(136,137,138)どうしの相対的な位置関係を保持して、位置関係が変化しないように維持される。したがって、ガイド部(136,137,138)どうしの間隔が小さくなることが防止または抑制されるから、ワーク(分割コア(51))のスムーズな通過が確保される。また、ガイド部(136,137,138)どうしの間隔が大きくなることが防止または抑制されるから、ワーク(分割コア(51))が経路部材(13)から逸脱することが防止または抑制される。さらに、ガイド部(136,137,138)に外力が掛かった場合には、固定部(139)を通じて他のガイド部(136,137,138)に外力を分散させる(外力を負担させる)ことができるから、経路部材(13)の剛性を高めることができ、ガイド部(136,137,138)に不具合が発生することが防止または抑制される。
【0016】
複数の前記経路部材(13)の前記ガイド部(136,137,138)、前記第一取付部(131)、前記第二取付部(133)、および前記固定部(139)は互いに一体につながっており光硬化性樹脂からなる、という構成であってもよい。
【0017】
本発明がこのように構成されると、ガイド部(136,137,138)どうしの相対的な位置関係の精度を高めることができる。すなわち、前記ガイド部(136,137,138)、前記第一取付部(131)、前記第二取付部(133)、および前記固定部(139)が別部材であると、組付けの際の誤差によって、ガイド部(136,137,138)どうしの相対的な位置関係の精度が低下するおそれがある。その結果、ワーク(分割コア(51))がスムーズに通過できなくなるおそれがある。これに対して本発明がこのように構成されると、前記ガイド部(136,137,138)、前記第一取付部(131)、前記第二取付部(133)、および前記固定部(139)の組付けの誤差が発生しないから、ガイド部(136,137,138)どうしの相対的な位置関係の精度を高めることができる。
【0018】
前記経路部材(13)は、延伸方向が略上下方向に平行な垂直部(141)と、延伸方向が上下方向に対して傾斜しており上端側から下端側に向かって下り勾配である傾斜部(142)とを有しており、
前記垂直部(141)には、通過する前記ワーク(分割コア(51))を回転させるために前記経路部材(13)が延伸方向に平行な線を中心に捩じれているワーク回転部(143)が設けられている、という構成であってもよい。
【0019】
本発明がこのように構成されると、ワーク(分割コア(51))のスムーズな移動および回転を確保できる。すなわち、ワーク回転部(143)が垂直部(141)に設けられる構成であると、ワーク(分割コア(51))は自重(重力)によって下方に移動するとともに回転して向きが変わる。これに対して、ワーク回転部(143)が傾斜部(142)に設けられる構成であると、ワーク(分割コア(51))は重力の「経路部材(13)の延伸方向の分力」によって経路部材13の延伸方向に移動するとともに回転して向きが変わる。このため、ワーク回転部143が垂直部141に設けられる構成では、傾斜部142に設けられる構成と比較して、ワーク(分割コア(51))を経路部材(13)の延伸方向に移動させる力が大きくなるから、ワーク(分割コア(51))のスムーズな移動および回転(向きの変更)が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図2は、環状コアの構成部品である分割コアの斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るワークの配列装置を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るワークの配列装置を示す上面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るワークの配列装置を示す下面図である。
【
図8】
図8は、経路部材の一つを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、本発明の実施形態に係るワークの配列装置を、「本実施装置」と記すことがある。以下の実施形態では、ワークとしてモータのステータの環状コアの構成部品である分割コアを示す。
【0022】
図1は、環状コア50を示す斜視図であり、
図2はこの環状コア50の構成部品である分割コア51を示す斜視図である。
図1に示すように、環状コア50は、略円筒形状の円筒部501と、円筒部501からその半径方向中心側に向かって突出する複数のティース部502とを有している。そして、環状コア50は、環状に並んでおり互いに分離可能に連結している複数の分割コア51を構成部品として有している。本実施形態では、環状コア50が12個の分割コア51を有する例を示す。各分割コア51は、
図2に示すように環状コア50の円筒部501の一部を構成する外周部511および1つのティース部502を有しており、上下方向視(環状コア50の状態での環状コア50の軸線方向視)において略「T」字形状を有する。
【0023】
環状コア50は、電磁鋼板からなる板状のコア片503が環状に並んで互いに連結している連結体をプレス装置によって成形し、成形された環状の連結体をコア片503の厚さ方向(軸線方向)に積層することによって製造される。モータのステータの製造工程には、製造された環状コア50を1個ずつの個別の分割コア51に分離する工程と、分離された各分割コア51にインシュレータを成形(または装着)する工程と、インシュレータが成形された各分割コア51に導線を巻き付ける工程と、導線が巻き付けられた各分割コア51どうしを再び環状に連結する工程とが、一例としてある。
【0024】
本実施形態では、製造された環状コア50を1個ずつの個別の分割コア51に分離する工程における分割コア51の配列を維持したまま、分離された各分割コア51にインシュレータを成形する工程が実行される。そして、分離された各分割コア51にインシュレータを成形する工程の後、複数の分割コア51は、インシュレータが成形された各分割コア51に導線を巻き付ける工程に適した配列に並べ替えられる。本実施装置10は、個別に分離された各分割コア51にインシュレータを成形する工程と、インシュレータが成形された分割コア51に導線を巻き付ける工程との間において、分割コア51の並べ替えに用いられる。すなわち、インシュレータが成形された直後の分割コア51の配列(第一配列)を、インシュレータが成形された各分割コア51に導線を巻き付ける工程に適した配列(第二配列)に変更するために用いられる。
【0025】
図3は、インシュレータを成形する工程の直後における分割コア51の配列を示す図であり、本発明の第一配列の例である。
図4は、インシュレータが成形された各分割コア51に導線を巻き付ける工程のために並べ替えられた分割コア51の配列を示す図であり、本発明の第二配列の例である。
図3および
図4において、四角で囲まれた数字は、第一配列と第二配列において対応する分割コア51を示す。すなわち、
図3に示す第一配列において四角で囲まれた数字(識別番号)が「1」である分割コア51が、
図4に示す第二配列において四角で囲まれた数字(識別番号)が「1」である分割コア51である。
【0026】
第一配列は、
図3に示すように、各分割コア51が仮想的な1つの平面上に位置する状態で、互いに円周方向に離間した状態で環状に並ぶとともに、ティース部502が配列の中心側を向く配列である。すなわち、第一配列は、各分割コア51が
図1に示す環状コア50の状態からそれぞれ半径方向外側に等距離移動することによって円周方向に互いに離れた状態である。第二配列は、
図4に示すように、各分割コア51が仮想的な1つの平面上に位置する状態で2列に直線的に並ぶとともに、各分割コア51のティース部502が他方の列の側を向く配列である。このように、第一配列と第二配列とでは、各分割コア51の前述の仮想的な1つの平面上における相対的な位置関係が相違するとともに、互いの相対的な向きが相違する。なお、分割コア51の「向き」とは、前述の仮想的な1つの平面に直角な直線を中心とする回転方向の向きをいう。
【0027】
第二配列は、分割コア51に導線を巻き付ける工程に適するように、モータの結線構造に応じて規定される。本実施形態では、第二配列は、ステータが製造された状態で互いに直列に結線される2個の分割コア51どうしが互いに隣り合う(ティース部502どうしが対向する)配列である。本実施形態では、識別番号が「6」の分割コア51と識別番号が「1」の分割コア51が結線され、識別番号が「7」の分割コア51と識別番号が「12」の分割コア51が結線され、識別番号が「4」の分割コア51と識別番号が「11」の分割コア51が結線され、識別番号が「5」の分割コア51と識別番号が「10」の分割コア51が結線され、識別番号が「2」の分割コア51と識別番号が「9」の分割コア51が結線され、識別番号が「3」の分割コア51と識別番号「8」の分割コア51が結線される。なお、
図3においては、互いに結線される分割コアのペアを破線の矢印で示す。このためこの場合には、第二配列においては、識別番号が「6」の分割コア51と識別番号が「1」の分割コア51が隣り合い、識別番号が「7」の分割コア51と識別番号が「12」の分割コア51が隣り合い、識別番号が「4」の分割コア51と識別番号が「11」の分割コア51が隣り合い、識別番号が「5」の分割コア51と識別番号が「10」の分割コア51が隣り合い、識別番号が「2」の分割コア9と識別番号「9」の分割コア51が隣り合い、識別番号が「3」の分割コア51と識別番号が「8」の分割コア51が隣り合う。このような配列であれば、直列に結線される2個の分割コア51に導線を巻き付けやすい。または、2個の分割コア51に巻き付けられた導線どうしを結線しやすい。ただし、第二配列における各分割コア51の具体的な配列は、モータの結線構造に応じて規定されるものであり、前記配列に限定されるものではない。
【0028】
なお、製造された環状コア50を1個ずつの個別の分割コア51に分離する工程の後、導線の巻き付けに適した配列に並べ替え、並べかえられた分割コア51にインシュレータを成形し、その配列を維持して分割コア51に導線を巻き付けてもよい。この場合には、本実施装置10は、個別の分割コア51に分離された直後の分割コア51の配列(第一配列)を、分割コア51に導線を巻き付ける工程に適した配列(第二配列)に変更するために用いられる。
【0029】
また、
図3と
図4はそれぞれ第一配列と第二配列の一例であり、第一配列と第二配列の具体的な態様は
図3と
図4に限定されるものではない。第一配列と第二配列は互いに異なる配列であればよく、ワークである分割コア51の並べ替えの前後の工程に応じて適宜設定される。例えば、複数の分割コア51の径の大きさ(環状に並んでいる分割コア51どうしの距離)を変えたり、複数の分割コア51どうしの相対位置を変えたりしてもよい。
【0030】
次に、本実施装置10について説明する。本実施装置10は、第一配列で並んでいる複数の分割コア51を第二配列に並べ替えることができるように構成される。
図5は本実施装置10の斜視図であり、
図6は本実施装置10の上面図であり、
図7は本実施装置10の底面図である。なお、
図5においては、本実施装置10の上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。
図5~
図7に示すように、本実施装置10は、第一部材11と、第二部材12と、複数(ワークである分割コア51と同数であり、本実施形態では12個)の経路部材13とを有している。
【0031】
第一部材11と第二部材12はいずれも板状の部材であり、それぞれ面方向が上下方向(重力方向)に略直角な向きで配置される。第一部材11には、
図5および
図6に示すように、複数(ワークである分割コア51と同数)の第一開口部111が設けられている。各第一開口部111は、第一部材11を上下方向に貫通する貫通孔であり、後述する各経路部材13の第一取付部131を下側から挿入可能に構成されている。各第一開口部111には、第一部材11の下面側から上面側に向かって断面積(断面寸法)が小さくなるテーパ孔が適用される。本実施形態では、各第一開口部111の上下方向視の形状が円形で、第一部材11の下面側から上面側に向かうにしたがって径が小さくなる円形のテーパ孔(円錐台状の孔)である例を示す。ただし、各第一開口部111の上下方向視の形状は特に限定されるものではなく、多角形などであってもよい。
【0032】
複数の第一開口部111は、
図6に示すように上下方向視において第一配列と同じで並んでいる。すなわち、第一部材11の上側に複数の分割コア51を第一配列で並べた場合、上下方向視において各第一開口部111と各分割コア51との位置が一致する(より正確には、上下方向視において、1つの第一開口部111の内周側に1つの分割コア51が位置する)。本実施形態では、12か所の第一開口部111が環状に並ぶように設けられている。このため複数の第一開口部111は、第一配列で並べられている複数のワークのそれぞれを、第一配列を維持したまま挿入可能である。
【0033】
第二部材12は、第一部材11の下方に第一部材11から離間して配置される。第二部材12には、
図7に示すように、複数(ワークである分割コア51および第一部材11の第一開口部111と同数)の第二開口部121が設けられている。各第二開口部121は第二部材12を上下方向に貫通する貫通孔であり、後述する各経路部材13の第二取付部133を上側から挿入可能に構成されている。各第二開口部121には、第二部材12の上面側から下面側に向かって断面積(断面寸法)が小さくなるテーパ孔が適用される。なお、本実施形態では、各第二開口部121の上下方向視の形状が円形で、第二部材12の上面側から下面側に向かうにしたがって径が小さくなる円形のテーパ孔である例を示す。ただし、各第二開口部121の上下方向視の形状は特に限定されるものではなく、多角形などであってもよい。
【0034】
複数の第二開口部121は、
図7に示すように第二配列で並んでいる。すなわち、第一部材11の下側に複数の分割コア51を第二配列で配列した場合、上下方向視において各第二開口部121と各分割コア51との位置が一致する(より正確には、上下方向視において、1つの第二開口部121の内周側に1つの分割コア51が位置する)。本実施形態では、1列あたり6か所の第二開口部121が2列に並列的に並ぶように設けられている。
【0035】
複数の経路部材13は、第一部材11の各第一開口部111から第二部材12の各第二開口部121に至る分割コア51の通過経路を構成する部材である。本実施装置10は、第一開口部111および第二開口部121と同数(すなわち、ワークである分割コア51と同数)の経路部材13を有し、これらの経路部材13が、複数の第一開口部111のそれぞれと複数の第二開口部121のそれぞれとの間に設けられている。
図8は、複数の経路部材13のうちの一つを示す斜視図である。
図8においては、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。
図8に示すように、各経路部材13は棒状の形状を有している。そして、複数の経路部材13のそれぞれは、第一部材11の複数の第一開口部111と第二部材12の複数の第二開口部121のうちの一対一の対応関係を有する、分割コア51が移動可能に一対一で接続する。すなわち、複数の第一開口部111と複数の第二開口部121とは一対一の対応関係を有しており、複数の経路部材13のそれぞれは、一対一の対応関係を有している第一開口部111と第二開口部121を、分割コア51が移動可能に接続する。
【0036】
なお、各経路部材13がいずれの第一開口部111といずれの第二開口部121とを接続するか、換言すると、第一開口部111と第二開口部121との一対一の対応関係は、各分割コア51の「配列変更前における第一配列中での位置」と「配列変更後における第二配列中での位置」とに応じて規定される。すなわち、各分割コア51の「配列変更前の位置(第一配列中における位置)」と「配列変更後の位置(第二配列中における位置)」は、あらかじめ一対一で対応関係を有するように規定されている。このため、第一開口部111と第二開口部121との対応関係は、各分割コア51の「配列変更前の位置(第一配列中における位置)」と「配列変更後の位置(第二配列中における位置)」に応じて決定される。具体的には、第一開口部111と第二開口部121との対応関係は、各分割コア51の「配列変更前の位置(第一配列中における位置)」と「配列変更後の位置(第二配列中における位置)」の対応と同じになるように規定されている。そして、第一配列で並ぶ各分割コア51がそれぞれ第二配列中の所定の位置に移動するように、各経路部材13は、配列変更前の位置に対応する第一開口部111と配列変更後の位置に対応する第二開口部121とを接続する。なお、各分割コア51の「配列変更前の位置(第一配列中における位置)」と「配列変更後の位置(第二配列中における位置)」の対応、すなわち、第一開口部111と第二開口部121の対応関係は、適宜設定されるものであり限定されるものではない。
【0037】
各経路部材13は、
図8に示すように、上端に設けられている第一取付部131と、下端に設けられている第二取付部133と、第一取付部131と第二取付部133との間に設けられている経路部135とを有している。さらに各経路部材13は、単数または複数の固定部139を有していてもよい。
【0038】
図9は第一取付部131の上面図であり、
図10は第一取付部131を上下方向に平行な面で切断した断面図である。なお、
図10においては、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。第一取付部131は、第一部材11の第一開口部111に下面側から挿入可能な形状を有している。具体的には、第一取付部131は、第一部材11の第一開口部111と略同じ形状(第一部材11の第一開口部111に合致した形状)を有している。より具体的には、
図9と
図10に示すように、第一取付部131は上端側に向かって断面積(断面寸法)が小さくなる先細りの略円錐台状の形状を有している。第一取付部131にはワーク入口132が設けられている。ワーク入口132は、上下方向に貫通する貫通孔であり、分割コア51を挿通可能な寸法および形状を有している。本実施形態では、分割コア51の上下方向視(より正確には、前述の仮想的な平面に直角な方向視)の形状が略「T」字形状であるため、ワーク入口132も略「T」字形状を有する。
【0039】
図11は第二取付部132の下面図であり、
図12は第二取付部133を上下方向に平行な面で切断した断面図である。なお、
図12においては、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。第二取付部133は、第二部材12の第二開口部121に上面側から挿入可能な形状を有している。具体的には、第二取付部133は、第二部材12の第二開口部121と略同じ形状(第二部材12の第二開口部121に合致した形状)を有している。より具体的には、第二取付部133は、経路部材13の下端側に向かって断面積(断面寸法)が小さくなる先細りの略円錐台状の形状を有している。本実施形態では、第二取付部133は第一取付部131と形状が同じで向きが反対である。第二取付部133にはワーク出口134が設けられている。ワーク出口134は、上下方向に貫通する貫通孔であり、分割コア51を挿通可能な寸法および形状を有している。本実施形態では、分割コア51の上下方向視(より正確には、前述の仮想的な平面に直角な方向視)の形状が略「T」字形状であるため、ワーク出口134も略「T」字形状を有する。
【0040】
第一取付部131に設けられているワーク入口132の向きは、第一配列における各分割コア51の向き、および当該第一取付部131がいずれの第一開口部111に挿入されるかに応じて規定される。同様に、第二取付部133に設けられているワーク出口134の向きは、第二配列における各分割コア51の向き、および当該第二取付部133がいずれの第二開口部121に挿入されるかに応じて規定される。なお、ワーク入口132およびワーク出口134の「向き」とは、上下方向に平行な直線を中心線とする回転方向の向きをいう。
【0041】
具体的には、各経路部材13の第一取付部131のワーク入口132の向きは、第一取付部131が1つの第一開口部111に挿入され、第二取付部133が1つの第二開口部121に挿入された状態で、第一配列で並ぶ複数の分割コア51のうちのそれぞれ対応する分割コア51(上記のように、第一部材11の上側に複数の分割コア51を第一配列で配列した場合に、上下方向視で第一開口部111と位置が一致する分割コア51をいう)の向きと同じ向き(対応する分割コア51の向きを変更することなく、当該分割コア51を挿通可能な向き)である。同様に、各経路部材13の第二取付部133のワーク出口134の向きは、第一取付部131が第一開口部111に挿入され、第二取付部133が第二開口部121に挿入された状態で、第二配列で並ぶ分割コア51のうちの対応する分割コア51(上記のように、第二部材12の下側に複数の分割コア51を第二配列で配列した場合に、上下方向視で位置が一致する分割コア51をいう)の向きと同じ向きである。このため、第一取付部131のワーク入口132の向きと第二取付部133のワーク出口134の向きは、第一配列と第二配列における各分割コア51の向きに応じて、経路部材13ごとに個別に規定される。
【0042】
経路部135は、各経路部材13のワーク入口132とワーク出口134の間における分割コア51の通過経路である。経路部135は、その延伸方向に沿って分割コア51が移動可能に構成されている。さらに、経路部135は、分割コア51が自重(重力)によってその上端から下端に移動できるように構成されている。
【0043】
経路部135には、垂直部141と傾斜部142とが含まれる。垂直部141は、上下方向(重力方向)に延伸する部分である。傾斜部142は、上下方向に対して傾斜する方向に延伸する部分である。なお、傾斜部142は、各経路部材13の上端側から下端側に向かう場合に(すなわち、分割コア51がワーク入口132からワーク出口134に向かって通過する際に)下り勾配となる部分である。このような構成であれば、分割コア51は自重によってワーク入口132からワーク出口134に移動できる。そして、各経路部材13が傾斜部142を有することによって、分割コア51がワーク入口132からワーク出口134に自重によって移動する際に、分割コア51の水平方向位置を変更できる。
【0044】
各経路部材13の経路部135の垂直部141と傾斜部142の位置および寸法(特に、傾斜部の延伸方向の寸法および向き)は、各経路部材13の第一取付部131が挿入される第一開口部111と第二取付部133が挿入される第二開口部121との相対的な位置関係に応じて規定される。要は、各経路部材13の経路部135の垂直部141および傾斜部142は、他の経路部材13と干渉することなく第一開口部111と第二開口部121とを接続できるように構成されていればよい。なお、複数の経路部材13には、傾斜部142が設けられない経路部135を有する経路部材13が含まれていてもよい。具体的には、互いに接続する第一開口部111と第二開口部121の上下方向視の位置が一致している場合には、経路部材13の経路部135は垂直部141のみを有し傾斜部142を有さない。
【0045】
図13は、経路部135をその延伸方向に直角な面で切断した断面図である。経路部135は、複数のガイド部(本実施形態では、第一ガイド部136と第二ガイド部137と第三ガイド部138の3つのガイド部)を有している。これら複数のガイド部136,137,138は、いずれも棒状の形状を有しており、互いに略平行である。そして、複数のガイド部136,137,138は、分割コア51を経路部135の延伸方向に移動可能にガイドする。ただし、複数のガイド部136,137,138は、分割コア51が経路部135の延伸方向に直角な方向へ移動すること(すなわち、経路部材13から逸脱すること)と、および分割コア51が各ガイド部136,137,138に対して相対的に回転することは許容されないように構成される。
【0046】
各ガイド部136,137,138の具体的な構成は次のとおりである。第一ガイド部136は、延伸方向に直角な断面形状が略長方形の棒状の形状を有する。第二ガイド部137および第三ガイド部138は、延伸方向に直角な断面が略円形の丸棒状の形状を有する。そして、第一ガイド部136と第二ガイド部137と第三ガイド部138とは互いに離間している。このため、第一ガイド部136、第二ガイド部137および第三ガイド部138にガイドされている分割コア51に外部から目視可能である。第一ガイド部136と第二ガイド部137の距離、および第一ガイド部136と第二ガイド部137の距離は、分割コア51の外周部511を挿入可能な距離(分割コア51の外周部511の半径方向寸法より大きい距離)であるが、分割コア51が逸脱できない距離(分割コア51全体の半径方向寸法より小さい距離)である。第二ガイド部137と第三ガイド部138との距離は、分割コア51のティース部502を挿入可能な距離(分割コア51のティース部502の周方向寸法より大きい距離)であるが、分割コア51が逸脱できない距離(外周部511の径方向寸法より小さい距離)である。
【0047】
各ガイド部136,137,138がこのような構成を有すると、分割コア51の外周部511は、第一ガイド部136と第二ガイド部137の間および第一ガイド部136と第二ガイド部137の間に入り込み、ティース部502が第二ガイド部137と第三ガイド部138の間に入り込むことができる。そして分割コア51は、この状態で経路部135の延伸方向に移動可能である。一方で、分割コア51は、各ガイド部136,137,138により、経路部135の延伸方向に直角な方向への移動(すなわち、経路部135からの逸脱)と、各ガイド部136,137,138に対する相対的な回転は規制される。このように、棒状の複数のガイド部136,137,138によって、分割コア51の通過経路が構成される。
【0048】
なお、分割コア51が経路部材13の上端から下端まで移動(通過)できるように、複数のガイド部136,137,138の相対的な位置関係(より具体的には、経路部135の延伸方向に直角な面で切断した場合のガイド部136,137,138の断面どうしの相対的な位置関係)は、経路部135の全長にわたって略均一である。ただし、経路部135が湾曲している部分を有している場合には、分割コア51が経路部135の湾曲している部分をスムーズに通過できるように、湾曲している部分におけるガイド部136,137,138どうしの距離は直線的に延伸している部分における距離よりも大きくてもよい。
【0049】
また、複数のガイド部136,137,138の形状および相対的な位置関係は、ワークである分割コア51の寸法および形状(より具体的には、前述の仮想的な平面に直角な方向視における形状)に応じて規定されるものであり、上記構成に限定されるものではない。要は、複数のガイド部136,137,138は、分割コア51を経路部135の延伸方向に移動可能にガイドするが、延伸方向に直角な方向への移動と、各ガイド部136,137,138に対する相対的な回転を規制できるように構成されていればよい。さらに、経路部135に含まれるガイド部136,137,138の数も限定されるものではない。
【0050】
固定部139は、各経路部材13の経路部135上に(すなわち、第一取付部131と第二取付部133との間に)設けられている。
図14は、固定部139を示す図であり、経路部135の延伸方向視の図である。固定部139は、板状の形状を有しており、厚さ方向(経路部135の延伸方向)に貫通するワーク通過孔140が設けられている。ワーク通過孔140は分割コア51(ワーク)が通過できればよく、例えば第一取付部131のワーク入口132および第二取付部133のワーク出口134と同じ構成が適用できる。
【0051】
固定部139は、複数のガイド部136,137,138と一体に繋がっており、複数のガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係を保持する機能を有している。すなわち、複数のガイド部136,137,138の少なくとも一つに変形が生じると、複数のガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係(より具体的には、経路部135の延伸方向に直角な面で切断した場合の各ガイド部136,137,138の断面どうしの相対的な位置関係)が変化することがある。そして、ガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係が変化すると、分割コア51のスムーズな移動が損なわれるおそれがある。そこで、第一取付部131と第二取付部133の中間に単数または複数の固定部139を設けることにより、ガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係が変化することを防止または抑制する。これにより、分割コア51のスムーズな通過を確保する。
【0052】
なお、経路部135が有する固定部139の数と位置は限定されるものではない。前述のように、固定部139は、ガイド部136,137,138どうしを分割コア51がスムーズに通過できるような位置関係に保持できる構成であればよい。このため、固定部139の位置および数は、経路部135の長さや形状などに応じて適宜設定される。また、経路部135が有する固定部139の数は、経路部材13ごとに互いに相違していてもよい。さらに、複数の経路部材13には、経路部135に固定部139が設けられない経路部材13が含まれていてもよい。
【0053】
このほか、第一取付部131のワーク入口132と第二取付部133のワーク出口134の向きが互いに異なる経路部材13には、
図8に示すように、経路部135を通過中に分割コア51を回転させることによって分割コア51の向きを変更するワーク回転部143が設けられている。ワーク回転部143は、経路部材13がその延伸方向に平行な線を中心として回転するように捩じれている部分である。より具体的には、ワーク回転部143は、複数のガイド部136,137,138が相対的な位置関係を保持したまま(すなわち、経路部135の延伸方向に直角な面で切断した断面どうしの相対的な位置関係が不変なまま)、経路部135の延伸方向に平行な線(例えば経路部135の中心線C(
図13参照))を中心として回転するように捩じれている部分である。経路部材13の経路部135がこのようなワーク回転部143を有していると、分割コア51はワーク回転部143を通過する間に、経路部135の延伸方向に平行な線(中心線C)を中心として回転して向きが変わる。したがって、ワーク入口132とワーク出口134の向きが相違する場合、ワーク入口132に投入された分割コア51の向きをワーク出口134と同じ向き(すなわち、第二配列で並んだ場合の向き)に変更することができる。
【0054】
なお、ワーク回転部143は垂直部141に設けられることが好ましい。ワーク回転部143が垂直部141に設けられると、分割コア51は自重(重力)と慣性(運動エネルギー)によって、垂直部141を下方に移動するとともにワーク回転部143において回転する。これに対して、傾斜部142にワーク回転部143が設けられると、分割コア51は重力の「経路部材13の延伸方向の分力」と慣性(運動エネルギー)によって、傾斜部142をその延伸方向に移動するとともにワーク回転部143において回転する。このように、垂直部141においては傾斜部142に比較して、「分割コア51を経路部135の延伸方向に沿って移動させる力」が大きいから、ワーク回転部143が傾斜部142に設けられる構成に比較して、分割コア51はワーク回転部143をスムーズに通過できる。
【0055】
経路部材13の表面には、摩擦係数を下げるための表面処理が施されていてもよい。このような表面処理としては、例えば、DLC膜など、経路部材13よりも摩擦係数が低い材料のコーティングが適用できる。なお、このような表面処理は経路部材13の全体に施されていなくてもよい。例えば、ガイド部136,137,138の外周面のうちの分割コア51に接触する部分、第一取付部131のワーク入口132の内周面、第二取付部133のワーク出口134の内周面、固定部139のワーク通過孔140の内周面に表面処理が施されていればよい。
【0056】
各経路部材13は、光硬化性樹脂材料からなる。光硬化性樹脂材料には、例えば光硬化型のエポキシ樹脂が適用できる。ただし、光硬化性樹脂材料の具体的な材質は特に限定されるものではない。また、「光」には、可視光以外の波長域の電磁波も含まれるものとする。例えば、各経路部材13は、紫外線により硬化する樹脂材料により形成されてもよい。そして、経路部材13を構成する複数のガイド部136,137,138と、第一取付部131と、第二取付部133と、固定部139とは、互いに一体に繋がっている。このような経路部材13の製造方法としては、光造形(いわゆる3Dプリント)が適用できる。そして、光造形によって、第一取付部131と、第二取付部133と、固定部139とを一体に造形することで、各経路部材13を製造できる。
【0057】
次に、本実施装置10の組付けについて説明する。
図5に示すように、第一部材11と第二部材12とは上下方向に離間しており、相対的な位置が変化しないように支柱101によって互いに固定されている。なお、第一部材11と第二部材12とは相対的な位置関係が変化しないように互いに固定されていればよく、支柱101により固定される構造に限定されない。例えば、支柱101のほかに板材(立壁)によって互いに固定される構造であってもよい。
【0058】
各経路部材13は、第一部材11および第二部材12に着脱可能に取り付けられている。具体的には、各経路部材13の第一取付部131は、第一部材11の下側から各第一開口部111に挿入される。そして、さらにその下側から押さえ板102がネジ103によって第一部材11に着脱可能に固定される。これにより、各経路部材13の第一取付部131は、各第一開口部111から抜け出ないように保持される。同様に、各経路部材13の第二取付部133は、第二部材12の各第二開口部121に上側から挿入され、さらにその上側に押さえ板102がネジ103によって第二部材12に着脱可能に固定される。これにより、各経路部材13の第一取付部131は、第二部材12の各第二開口部121から抜け出ないように保持される。
【0059】
このような構成であると、各経路部材13の第一取付部131の上端面は各第一開口部111を介して第一部材11の上側に露出するから、第一取付部131に設けられているワーク入口132も第一部材11の上側に現れる。そして、複数の第一開口部111は第一配列で並んでおり、各第一開口部111に挿入されている各経路部材13の第一取付部131のワーク入口132の向きは、第一配列で並ぶ各分割コア51の向きと同じである。このため、第一配列で並んでいる(環状に並んでいる)複数の分割コア51を、その配列を保持したまま(すなわち、分割コア51どうしの相対的な位置関係を保持したまま)第一部材11の上側に移動させることによって、各分割コア51を第一部材11の上側から各経路部材13のワーク入口132に投入(挿入)できる。例えば、第一配列で並んでいる分割コア51を、第一配列を維持したまま一括して把持して第一部材11の上側に搬送し、第一部材11の上側で分割コア51の把持を解放することによって、各分割コア51を各経路部材13のワーク入口132に投入できる。
【0060】
各経路部材13の第一取付部131のワーク入口132に投入された各分割コア51は、自重によって各経路部材13の経路部135を下方に移動する。各経路部材13の経路部135は垂直部141と傾斜部142を有しており、さらに垂直部141にはワーク回転部143が設けられている。このため、各分割コア51が各経路部材13の経路部135を通過する間に、水平方向の位置および向きが変更される。
【0061】
各経路部材13の経路部135を通過した各分割コア51は、第二開口部121を通じて第二部材12の下面に現れているワーク出口134から、第二部材12の下側に排出される。第二部材12の複数の第二開口部121は第二配列で並んでおり、ワーク出口134の向きは第二配列で並ぶ各分割コア51と同じ向きである。このため、各分割コア51がワーク出口134から排出された時点で、複数の分割コア51は第二配列で並んでいる。換言すると、複数の分割コア51は、第二配列で並んだ状態で第二部材12の下側に排出される。
【0062】
このような構成であると、分割コア51の並べ替えに要する時間を短縮できる。例えば、多関節ロボットを用いて分割コア51を並べ替える構成では、分割コア51の把持、移動、回転、および解放の動作が必要である。さらに、複数の分割コア51のそれぞれについてこのような一連の動作を行わなければならないから、分割コア51の数が増加するにしたがって並べ替えに要する時間がさらに長くなる。
【0063】
これに対して、本実施装置10によれば、分割コア51がワーク入口132から自重によってワーク出口134に移動するまでの間に、経路部135の形状に応じて自動的に位置および向きが変更される。このため、ロボットによって個別に分割コア51の位置および向きを変更する構成に比較して並べ替えに要する時間を短縮できる。また、複数の分割コア51を前工程の終了時における配列を保持したまま(換言すると、配列を変更することなく)、第一部材11の上側に移動させて解放するだけでよいため、分割コア51の数が増加しても並べ替えに要する時間は長くならない。
【0064】
また、本実施形態では、各経路部材13が互いに独立している(別部材である)。このため、複数の経路部材13のうちの一部の経路部材13に不具合が発生した場合には、当該一部の経路部材13を交換するのみでよい。したがって、本実施装置10の維持コストの削減を図ることができる。
【0065】
第一開口部111がテーパ孔であり、第一取付部131が第一開口部111のテーパ形状に合致した先細り形状を有していると、第一取付部131を第一開口部111に挿入する(第一開口部111の内周面に第一取付部131の外周面を接触させる)だけで、経路部材13を第一部材11に対して位置決めできる。同様に、第二開口部121がテーパ孔であり、第二取付部133が第二開口部121のテーパ形状に合致した先細り形状を有していると、第二取付部133を第二開口部121に上側から挿入する(第二開口部121の内周面に第二取付部133の外周面を接触させる)だけで、各経路部材13を第二部材12に対して位置決めできる。したがって、本実施装置10の製造の際に位置決め作業が不要であり、かつ、第一部材11および第二部材12と各経路部材13とを高精度で位置決めされている状態に保持できる。
【0066】
本実施装置10では、経路部材13が互いに平行な複数のガイド部136,137,138を有し、これら複数のガイド部136,137,138が分割コア51の通過経路を構成する。このような構成であれば、経路部材13の外側から経路部135上に位置する分割コア51に容易に目視できる。このため、経路部材13の中間で分割コア51が詰まった場合(移動が止まった場合)であっても、分割コア51の詰まりを容易かつ即座に解消できる。例えば、経路部135が筒状であると、経路部135の中間で分割コア51が詰まった場合、ワーク入口132またはワーク出口134からエアーを送り込むか、またはワイヤー状のツールを挿入することによって分割コア51の詰まりを解消させなければならない。これに対して、本実施装置10では、複数のガイド部136,137,138にガイドされる分割コア51に外部から目視でき即座に移動させることができるから、エアーを送り込むための装置またはワイヤー状のツールが不要である。
【0067】
なお、棒状の複数のガイド部136,137,138によって分割コア51の通過経路である経路部135が構成されると、経路部135が筒状である構成と比較して剛性が低くなり、ガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係が変化しやすくなることがある。そこで、本実施装置10では、経路部135の中間に固定部139を設け、固定部139によってガイド部136,137,138どうしを一体に繋げている。これにより、ガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係を保持できるとともに、経路部135全体の剛性を高めることができる。
【0068】
そして、複数のガイド部136,137,138と第一取付部131と第二取付部133と固定部139とは一体に繋がっている。このような構成であればガイド部136,137,138と第一取付部131と第二取付部133と固定部139とが別部材である構成に比較して、ガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係の精度を高めることができる。すなわち、複数のガイド部136,137,138が別部材であると、組み立て時の公差などによってこれらの相対的な位置関係の精度が低下することがある。その結果、分割コア51のスムーズな通過が妨げられるおそれがある。これに対して、本実施装置10では、ガイド部136,137,138どうしの相対的な位置関係の精度を高められるから、分割コア51のスムーズな通過を確保できる。
【0069】
また、固定部139によってガイド部136,137,138どうしの間隔が大きくなることが防止または抑制されるから、分割コア51が経路部135から逸脱することが防止または抑制される。さらに、ガイド部136,137,138に外力が掛かった場合には、固定部139を通じて他のガイド部136,137,138に外力を分散させる(外力を負担させる)ことができるから、経路部材13の剛性を高めることができる。このため、ガイド部136,137,138の破損が防止または抑制される。
【0070】
なお、各経路部材13が光硬化性樹脂材料からなる構成であれば、各経路部材13の製造に光造形を用いることができる。光造形は、例えば射出成形に比較して成形する部材の形状の制限が少ないことから、経路部材13を分割コア51の第一配列と第二配列に適した形状に一体に成形することが容易である。また、光造形であれば、射出成形やプレス成形のように専用の成形型や金型を用意しなくてもよいため、経路部材13の製造コストの削減を図ることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
例えば、前記実施形態では、インシュレータを成形する工程の後、導線を巻き付ける工程の前に、ワークである分割コア51に導線を巻き付ける工程に適した配列に並べ替えるために使用される例を示したが、前後の工程は限定されるものではない。例えば、環状コア50を個別の分割コア51に分離する工程の後、インシュレータを成形する工程の前に、ワークである分割コア51をインシュレータの成形および導線の巻き付けに適した配列に並べ替えるために使用されてもよい。
【0073】
また、本実施装置10が分割コア51の並べ替えに用いられる構成を示したが、並べ替え対象のワークは分割コア51に限定されるものではない。また、本実施装置10が12か所の第一開口部111が設けられる第一部材11、12か所の第二開口部121が設けられる第二部材、および12個の経路部材13を有する構成を示したが、第一部材11に設けられる第一開口部111の数、第二部材12に設けられる第二開口部121の数および経路部材13の数は限定されるものではない。
【0074】
また、経路部135のガイド部136,137,138の数、形状、および相対的な位置関係は、ワークの形状に応じて適宜設定されるものであり、限定されるものではない。さらに、各経路部材13がいずれの第一開口部111といずれと第二開口部121とを接続するかも限定されるものではない。これらは、ワークの第一配列と第二配列に応じて適宜設定される。
【0075】
また、複数の第一開口部111のそれぞれの直下にシャッター機構を設けても良い。シャッター機構を設けることにより、第一配列に並べられているワークのそれぞれを、複数の第一開口部111に一時的に仮置きすることができる。そして、各第一開口部111の直下のシャッター機構を一斉に開放することにより、それぞれの第一開口部111に仮置きされているワークを同時に第二開口部121のそれぞれまで移動させることができる
【0076】
また、複数の第二開口部121のそれぞれの直下に、第二配列に並べ替えられた複数のワークを第二配列に保持する受け板部材を設けてもよい。受け板部材を設けることにより、第二開口部121のそれぞれを通過したワークが第二配列を維持した状態で受け板部材上に保持される。したがって、受け板部材上で第二配列に並べられたワークを受け板部材ごと次工程を行うステーションに移動させることができる。
【0077】
また、複数の第二開口部121のそれぞれの直上に、一時的にワークの移動を停止させる停止機構を設けてもよい。例えば停止機構として、ウレタンなどの柔らかい材料が外表面に取り付けられた棒と、この棒をその軸線方向(長手方向)に直線往復移動させる駆動源と有し、それぞれの経路部材13の複数の経路部136,137,138の間に駆動源によって棒を挿抜する機構が適用できる。そして、棒が複数のガイド部136,137,138の間に挿入されている状態では、ワーク入口132に投入されて下方に移動したワークは、この棒に接触して停止する。ワークがこの棒に接触して停止している状態でこの棒をそれぞれの経路部材13の複数の経路部136,137,138の間から引き抜くと、ワークは自重によって移動し、ワーク出口134から下方に排出される。このような停止機構を有すると、それぞれの経路部材13のワーク出口134から排出されるワークの移動速度を調節できる(具体的には、停止機構が設けられない構成に比較して、排出されるワークの移動速度を小さくできる)。
【0078】
また、前記実施形態では、各経路部材13が棒状の複数のガイド部136,137,138を有する構成を示したが、各経路部材13の構成はこのような構成に限定されるものではない。例えば、各経路部材13が筒状の構成を有していてもよい。この場合、ワークをエアーにより圧送することも可能となる。
【0079】
また、ワークの位置・位相・向きを、直線・曲線・捩じれを複合させた多次元的(二次元的、三次元的)な経路部材13によって、自重・圧送・進行方向への応力により自在に可変させた構成とすることもできる。また、複数の経路部材13を併用することにより、相対位置の変更が可能となる。
【符号の説明】
【0080】
10…ワークの配列装置、11…第一部材、111…第一開口部、12…第二部材、121…第二開口部、13…経路部材、131…第一取付部、132…ワーク入口、133…第二取付部、134…ワーク出口、135…経路部、136…第一ガイド部、137…第二ガイド部、138…第三ガイド部、139…固定部、140…ワーク通過孔、141…垂直部、142…傾斜部