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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B65G1/04 531D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020082514
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176795
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和代
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504244(JP,A)
【文献】特開2016-088696(JP,A)
【文献】特開2013-203526(JP,A)
【文献】特開2017-148886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1搬送装置と、
前記第1搬送装置の動作を制御する第1コントローラと、
第2搬送装置と、
前記第2搬送装置の動作を制御する第2コントローラと、
前記第1搬送装置と前記第2搬送装置のそれぞれとの間で電力を送受する電力供給部と、
を備え、
前記第1コントローラ及び前記第2コントローラは、互いに独立して、前記電力供給部と通信を行い、
前記第1コントローラは、前記第2コントローラとの間で通信を行い、
前記第1コントローラは、前記第1搬送装置を動作させる前に前記第2コントローラを介して前記第2搬送装置の状態を確認し、前記第2搬送装置が回生電力を発生させる動作を行っている場合、前記第1搬送装置が回生電力を発生させる動作を待機するように制御し、
前記第2コントローラは、前記第2搬送装置を動作させる前に前記第1コントローラを介して前記第1搬送装置の状態を確認し、前記第1搬送装置が回生電力を発生させる動作を行っている場合、前記第2搬送装置が回生電力を発生させる動作を待機するように制御する、
搬送システム。
【請求項2】
前記第1コントローラは、前記第1搬送装置を起動する際に、前記電力供給部にて異常が発生しているか否かを確認し、異常が発生していれば前記電力供給部の異常をリセットし異常が解消された後に前記第1搬送装置を起動し、異常が発生していなければ前記第1搬送装置を起動し、
前記第2コントローラは、前記第2搬送装置を起動する際に、前記電力供給部にて異常が発生しているか否かを確認し、異常が発生していれば前記電力供給部の異常をリセットし異常が解消された後に前記第2搬送装置を起動し、異常が発生していなければ前記第2搬送装置を起動する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記第1搬送装置及び前記第2搬送装置は、第1回生電力を発生させる第1動作と、前記第1回生電力よりも小さな第2回生電力を発生させる第2動作と、を実行可能であり、
前記第1搬送装置及び前記第2搬送装置の一方が前記第1動作を実行しており他方が前記第1動作を実行しようとする場合には、当該他方の搬送装置のコントローラは、当該他方の搬送装置に前記第1動作の実行を待機させ、
前記第1搬送装置及び前記第2搬送装置の一方が前記第1動作を実行しており他方が前記第2動作を実行しようとする場合には、当該他方の搬送装置のコントローラは、当該他方の搬送装置に前記第2動作を実行させる、
請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記電力供給部に電力を供給する電源部をさらに備え、
前記第1搬送装置及び前記第2搬送装置は、第1電力を必要とする第3動作と、前記第1電力よりも小さな第2電力を必要とする第4動作と、を実行可能であり、
前記第1電力は前記電力供給部から供給され、前記第2電力は前記電源部から供給される、請求項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記第1コントローラは、前記第2コントローラとの間で通信を行い、
前記第1搬送装置と前記第2搬送装置はそれぞれ昇降台を有し、
前記第1コントローラは、前記第1搬送装置の前記昇降台を下降させる前に前記第2搬送装置の前記昇降台の状態を確認し、前記第2搬送装置の前記昇降台が下降方向に加速中又は定速で下降している場合、前記第2搬送装置の前記昇降台が下降方向に減速するまで前記第1搬送装置の前記昇降台の下降を待機するように制御し、
前記第2コントローラは、前記第2搬送装置の前記昇降台を下降させる前に前記第1搬送装置の前記昇降台の状態を確認し、前記第1搬送装置の前記昇降台が下降方向に加速中、又は定速で下降している場合、前記第1搬送装置の前記昇降台が下降方向に減速するまで前記第2搬送装置の前記昇降台の下降を待機するように制御する、請求項1~のいずれかに記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の搬送を行う複数の搬送装置を備えた搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物などを収納するラックを備える自動倉庫において、荷物を搬送する搬送装置を複数設ける場合がある。例えば、ラックの長さ方向に走行して荷物を搬送する複数のスタッカクレーンを有する自動倉庫が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
この自動倉庫では、複数のスタッカクレーンに対して共通の1つのコンバータから電力供給がなされている。
【0003】
また、複数の台車を共通の電源により駆動するシステムにおいて、1つの台車に対してのみ加速を許可する一方で、他の台車に対しては加速を禁止することで、複数の台車がほぼ同時に加速して電源からその容量を超えた電力が出力されることを防止する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-88696号公報
【文献】特開2001-78312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、共通の1つの電源又はコンバータが複数の搬送装置への電力供給を担う従来のシステムにおいては、複数の搬送装置のうち1つの搬送装置の制御部のみが、当該電源又はコンバータと通信可能となっていた。
そのため、例えば、電源又はコンバータにおいて生じた異常をリセットする際に、その電源又はコンバータと通信可能な1つの制御部を通じてのみリセットが可能となっていた。その結果、従来のシステムでは、電源又はコンバータと通信可能な制御部を有する1つの搬送装置を動作させる必要がなく電力を送受しない場合でも、当該1つの搬送装置が有する制御部に対して常に電力を供給した状態としておく必要があった。つまり、従来のシステムでは、電力を送受可能とする必要がない搬送装置の制御部に対して無駄に電力を供給しておく必要があり、効率のよいシステムの運用ができなかった。
【0006】
本発明の目的は、共通の1つのコンバータで複数の搬送装置へ電力を供給する搬送システムを効率よく運用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る搬送システムは、第1搬送装置と、第1コントローラと、第2搬送装置と、第2コントローラと、電力供給部と、を備える。
第1コントローラは、第1搬送装置の動作を制御する。
第2コントローラは、第2搬送装置の動作を制御する。
電力供給部は、第1搬送装置と第2搬送装置のそれぞれとの間で電力を送受する。
第1コントローラ及び第2コントローラは、互いに独立して、電力供給部と通信を行う。
【0008】
共通の電力供給部により第1搬送装置と第2搬送装置とに電力を送受する上記の搬送システムでは、第1搬送装置を制御する第1コントローラと第2搬送装置を制御する第2コントローラとが互いに独立して電力供給部と通信を行っている。
これにより、電力を送受可能とする必要のある搬送装置を制御するコントローラのみに対して電力を供給すれば電力供給部を制御できるので、電力を供給する必要がないコントローラに常時電力を供給するといった非効率な運用をする必要がなくなる。その結果、搬送システムを効率よく運用できる。また、各コントローラが独立して電力供給部と通信可能となっていることにより、電力を送受可能とする必要がある搬送装置を制御するコントローラは、電力供給部の状態を確認するために他方のコントローラと通信する必要がない。
【0009】
第1コントローラは、第1搬送装置を起動する際に、電力供給部にて異常が発生しているか否かを確認し、異常が発生していれば電力供給部の異常をリセットし異常が解消された後に第1搬送装置を起動し、異常が発生していなければ第1搬送装置を起動してもよい。
一方、第2コントローラは、第2搬送装置を起動する際に、電力供給部にて異常が発生しているか否かを確認し、異常が発生していれば電力供給部の異常をリセットし異常が解消された後に第2搬送装置を起動し、異常が発生していなければ第2搬送装置を起動してもよい。
【0010】
これにより、電力供給部にて異常が発生して第1搬送装置及び第2搬送装置への電力の送受が不可能となっても、その後に電力を送受可能とする必要がある搬送装置を制御するいずれかのコントローラから、電力供給部にて発生した異常をリセットし、異常が解消された後に当該搬送装置を起動できる。
すなわち、電力供給部にて発生した異常をリセットするためにいずれかのコントローラに対して常時電力を供給する必要がなくなるので、搬送システムを効率よく運用できる。
【0011】
第1コントローラは、第2コントローラとの間で通信を行ってもよい。
この場合、第1コントローラは、第1搬送装置を動作させる前に第2コントローラを介して第2搬送装置の駆動状態を確認し、第2搬送装置が回生電力を発生させる動作を行っている場合、第1搬送装置が回生電力を発生させる動作を待機するように制御する。
一方、第2コントローラは、第2搬送装置を動作させる前に第1コントローラを介して第1搬送装置の駆動状態を確認し、第1搬送装置が回生電力を発生させる動作を行っている場合、第2搬送装置が回生電力を発生させる動作を待機するように制御する。
【0012】
これにより、第1搬送装置にて発生した回生電力と第2搬送装置にて発生した回生電力とが同時に電力供給部に入力されることを防止し、電力供給部に大きな回生電力が入力されることを防止できる。その結果、回生電力を考慮して電力供給部の容量を小さくできる。
【0013】
第1搬送装置及び第2搬送装置は、第1回生電力を発生させる第1動作と、第1回生電力よりも小さな第2回生電力を発生させる第2動作と、を実行可能であってもよい。
この場合、第1搬送装置及び第2搬送装置の一方が第1動作を実行しており他方が第1動作を実行しようとする場合には、当該他方の搬送装置のコントローラは、当該他方の搬送装置に第1動作の実行を待機させてもよい。
また、第1搬送装置及び第2搬送装置の一方が第1動作を実行しており他方が第2動作を実行しようとする場合には、当該他方の搬送装置のコントローラは、当該他方の搬送装置に第2動作を実行させてもよい。
【0014】
これにより、大きな第1回生電力を発生させる第1動作を第1搬送装置及び第2搬送装置にて同時に実行させることを回避しつつ、第1搬送装置及び第2搬送装置の一方で第1動作を実行させて他方で第1回生電力よりも小さな第2回生電力を発生する第2動作を実行できる。
その結果、大きな回生電力が同時に電力供給部に入力されることを回避しつつ、第1搬送装置と第2搬送装置を同時に動作させて搬送システムを効率よく運用できる。
【0015】
搬送システムは、電源部をさらに備えてもよい。電源部は、電力供給部に電力を供給する。また、第1搬送装置及び第2搬送装置は、第1電力を必要とする第3動作と、第1電力よりも小さな第2電力を必要とする第4動作と、を実行可能であってもよい。
この場合、第1電力は電力供給部から供給され、第2電力は電源部から供給されてもよい。
これにより、第3動作のための第1電力と第4動作のための第2電力とが同時に電力供給部から供給されなくなるので、供給される電力を考慮して電力供給部の容量をさらに小さくできる。
【0016】
第1コントローラは第2コントローラとの間で通信を行い、第1搬送装置と第2搬送装置はそれぞれ昇降台を有してもよい。
この場合、第1コントローラは、第1搬送装置の昇降台を下降させる前に第2搬送装置の昇降台の状態を確認し、第2搬送装置の昇降台が下降方向に加速中又は定速で下降している場合、第2搬送装置の昇降台が下降方向に減速するまで第1搬送装置の昇降台の下降を待機するように制御する。
一方、第2コントローラは、第2搬送装置の昇降台を下降させる前に第1搬送装置の昇降台の状態を確認し、第1搬送装置の昇降台が下降方向に加速中、又は定速で下降している場合、第1搬送装置の昇降台が下降方向に減速するまで第2搬送装置の昇降台の下降を待機するように制御する。
【0017】
搬送装置の昇降台が下降するとき、昇降台が加速しているか又は定速である場合に回生電力が発生して電力供給部に入力される一方、昇降台が減速している場合には昇降台が下方向に加速しているか下方向に低速移動している場合よりも小さな回生電力が発生して電力供給部に入力される。
従って、第1搬送装置及び第2搬送装置の昇降台の両方が下降する場合に、一方の昇降台が下降方向に減速するまで、他方の昇降台を下降方向に加速しないようにし、かつ、定速で下降しないようにすることで、第1搬送装置にて発生した大きな回生電力と第2搬送装置にて発生した大きな回生電力とが同時に電力供給部に入力されることを防止できる。その結果、回生電力を考慮して電力供給部の容量を小さくできる。
【発明の効果】
【0018】
共通の1つの電力供給部で複数の搬送装置への電力の送受を行う搬送システムにおいて、各搬送装置のコントローラが独立して電力供給部と通信可能であることにより、搬送システムを効率よく運用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る搬送システムの斜視図。
図2】第1実施形態に係る搬送システムの上面図。
図3】第1実施形態に係る搬送システムの側面図。
図4】搬送システムの制御構成を示す図。
図5】搬送装置の起動から1つの搬送及び移載動作を完了するまでの一連の動作を示すフローチャート。
図6】昇降台の上昇動作を示すフローチャート。
図7】昇降台の下降動作を示すフローチャート。
図8】移載部の移動動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
(1)搬送システムの全体構成
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1図3を用いて、第1実施形態に係る搬送システム100の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る搬送システム100の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る搬送システム100の上面図である。図3は、第1実施形態に係る搬送システム100の側面図である。
以下、搬送システム100の上面図を示す図2における左右方向を搬送システム100のX方向とし、上下方向を搬送システム100のY方向とし、それぞれ矢印で示す。また、搬送システム100の側面図を示す図3における上下方向を搬送システム100のZ方向(高さ方向)とし、矢印で示す。
【0021】
第1実施形態に係る搬送システム100は、X方向に並んで配置され、物品(コンテナC)の入出庫が可能な2つの自動倉庫を備えるシステムである。具体的には、搬送システム100は、ステーション1と、第1自動倉庫3Aと、第2自動倉庫3Bと、を備える。
【0022】
(2)ステーション
ステーション1は、荷物を搬送するコンベヤ1Aと、コンテナCが載置される第1小棚1B及び第2小棚1Cと、を有する。ステーション1には作業者Wが配置され、作業者Wが、コンベヤ1Aにより搬送されてきた荷物から物品をピッキングし、第1小棚1B又は第2小棚1Cに載置されたコンテナCに収納する。物品を収納したコンテナCは、第1自動倉庫3A又は第2自動倉庫3Bに入庫される。
また、作業者Wは、第1自動倉庫3A及び第2自動倉庫3Bから出庫されたコンテナCに収納された物品を大きなコンテナなどの容器に収納する。物品を収納した容器は、荷物として、コンベヤ1Aにより外部に搬送される。
【0023】
図1図3に示すように、第1小棚1Bは、作業者Wから見てX方向の左側に配置され、第1自動倉庫3Aに入出庫するコンテナCを載置する。一方、第2小棚1Cは、X方向の右側に配置され、第2自動倉庫3Bに入出庫するコンテナCを載置する。
第1小棚1B及び第2小棚1Cは、それぞれ、X方向に2つ、Z方向(高さ方向)に2つ、合計4つのコンテナCを載置可能となっている。また、第1小棚1B及び第2小棚1Cにおいて、X方向に並べて載置される2つのコンテナCの間隔は、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの移載部73における2つの移載装置73Aの配置間隔と同一となっている。これにより、移載部73は、第1小棚1B又は第2小棚1Cに載置された2つのコンテナCを同時に移載できる。
【0024】
(3)自動倉庫
(3-1)全体構成
以下、図1図3を用いて、第1自動倉庫3A及び第2自動倉庫3Bの構成を説明する。まず、第1自動倉庫3A及び第2自動倉庫3Bの全体構成を説明する。
第1自動倉庫3Aは、ステーション1に配置された作業者Wから見てX方向の左側(すなわち、第1小棚1Bが配置された側)に配置され、第1ラック5Aと、第1搬送装置7Aと、を有する。
第2自動倉庫3Bは、ステーション1に配置された作業者Wから見てX方向の右側(すなわち、第2小棚1Cが配置された側)に配置され、第2ラック5Bと、第2搬送装置7Bと、を有する。
【0025】
(3-2)ラック
第1ラック5A及び第2ラック5Bは、それぞれ、第1自動倉庫3A及び第2自動倉庫3Bにおいて、コンテナCを収納する。以下、図1図3を用いて、第1ラック5A及び第2ラック5Bの構成を具体的に説明する。第1ラック5Aと第2ラック5Bは、同一の構成を有するので、以下の説明では、第1ラック5Aを例にとってラックの詳細構成を説明する。
第1ラック5Aは、ステーション1(第1小棚1B)からY方向に所定の距離だけ離れた位置に配置され、一対の第1支柱51と、一対の第2支柱52と、第1横部材53と、第2横部材54と、複数の仕切部材55と、を有する。
【0026】
一対の第1支柱51は、Z方向に延びる部材であり、第1ラック5Aの第1搬送装置7Aと対向する側に所定間隔でX方向に並んで立設される。一対の第2支柱52は、Z方向に延びる部材であり、第1ラック5Aの第1搬送装置7Aと対向する側とは反対側に所定間隔でX方向に並んで立設される。
【0027】
第1横部材53は、X方向に延びる部材であり、第1ラック5Aの第1搬送装置7Aと対向する側で一対の第1支柱51をX方向に架橋する。第2横部材54は、X方向に延びる部材であり、第1ラック5Aの第1搬送装置7Aと対向する側とは反対側で一対の第2支柱52をX方向に架橋する。
図1図3に示すように、第1横部材53及び第2横部材54は、所定の間隔を空けてZ方向に複数ならんで配置されている。すなわち、第1ラック5A及び第2ラック5Bにおいては、高さ方向に複数の段が形成される。
【0028】
複数の仕切部材55は、第1横部材53と第2横部材54をY方向に架橋するように配置され、かつ、一対の第1支柱51及び第2支柱52の間において所定の間隔を空けて配置される。これにより、複数の仕切部材55のうち一対の仕切部材55の間に、コンテナCを収納できる。一対の仕切部材55の間に形成されるコンテナCを収納する空間を「収納空間」と呼ぶ。
本実施形態において、仕切部材55は第1ラック5A及び第2ラック5Bの段毎に3つ以上設けられているので、第1ラック5A及び第2ラック5Bの段毎に複数のコンテナCを収納できる。
【0029】
なお、仕切部材55は、ラックの各段において、移載装置と収納空間とを対向させるために用いられる。例えば、移載装置に設けられた光電センサ(図示せず)が仕切部材55を検出したときに、移載装置が収納部と対向すると判断できる。
【0030】
(3-3)搬送装置
第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bは、それぞれ、第1自動倉庫3A及び第2自動倉庫3Bにおいて、小棚とラックとの間でコンテナCの搬送及び移載を実行し、また、ラックの収納空間の間でコンテナCの搬送及び移載を実行する。以下、図1図3を用いて、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの構成を具体的に説明する。第1搬送装置7Aと第2搬送装置7Bは、同一の構成を有するので、以下の説明では、第1搬送装置7Aを例にとって搬送装置の詳細構成を説明する。
第1搬送装置7Aは、ステーション1(第1小棚1B)と第1ラック5Aとの間に配置され、マスト71A~71Cと、昇降台72と、を有する。
【0031】
マスト71A~71Cは、Z方向に延びる部材であり、搬送システム100全体において、所定間隔でX方向に並んで3つ立設される。
図1図3に示すように、X方向に並んだ3つのマスト71A~71Cのうち、左端のマスト71Aと中間のマスト71Bが第1搬送装置7Aの昇降台72を支持し、中間のマスト71Bと右端のマスト71Cが第2搬送装置7Bの昇降台72を支持する。このように、本実施形態においては、中間のマスト71Bが、第1搬送装置7Aの右側のマスト及び第2搬送装置7Bの左側のマストとして共用されている。
【0032】
なお、第1搬送装置7Aの右側のマストと第2搬送装置7Bの左側のマストとが1つのマスト71Bとして共用されていなくてもよい。すなわち、第1搬送装置7Aの右側のマストとしてのマスト71Bと、第2搬送装置7Bの左側のマストとしてのマスト71Bとが、個別に設けられていてもよい。
【0033】
昇降台72は、一対のマストの間でZ方向に昇降する。昇降台72は、支持部材72Aと、載置部材72Bと、を有する。
支持部材72Aは、第1搬送装置7Aの左端のマスト71Aと右端のマスト(つまり、中間のマスト71B)とにおいて、隣接して設けられる。支持部材72Aには、左端のマスト71A及び中間のマスト71Bに案内される昇降ガイドローラ72Cが回転自在に装着されている。昇降ガイドローラ72Cは、左端のマスト71A及び中間のマスト71Bの前後面を挟みかつ上下に間隔を隔てて配置されている。
昇降ガイドローラ72Cが上記2つのマストのY方向の前後面を挟むことにより、支持部材72A(昇降台72)を当該2つのマストに支持できる。
【0034】
載置部材72Bは、X方向に延びる部材であり、左端のマスト71Aと中間のマスト71Bとの間において、昇降台72の左端の支持部材72Aと右端の支持部材72AのY方向の両端部において、これら2つの支持部材72Aを架橋する。
【0035】
図1図3に示すように、載置部材72Bには、移載部73が設けられている。移載部73は、ラックの収納空間と昇降台72との間、及び、小棚と昇降台72との間でコンテナCを移載する。本実施形態の移載部73は、X方向に並んで配置された2つの移載装置73Aを有している。これにより、本実施形態の移載部73は、2つのコンテナCを同時に移載できる。移載部73は、例えば、X方向に並んで配置された2つのスライドフォーク式の移載装置73Aを搭載した移載装置である。なお、移載部73は、スライドフォーク式以外の方式の移載装置を搭載したものであってもよい。
【0036】
本実施形態において、移載部73は、載置部材72Bにおいて、載置部材72Bの長さ方向に沿ってX方向に移動可能となっている。これにより、移載部73は、昇降台72においてX方向に移動できる。
【0037】
上記のように、移載部73が昇降台72に設けられ、昇降台72においてX方向に移動可能であることにより、移載部73は、ラックに設けられた任意の収納空間にアクセスして、ラックの任意の収納空間との間でコンテナCを移載できる。また、小棚の配置位置まで昇降及び/又はX方向への移動をすることで、移載部73は、小棚との間でコンテナCを移載できる。
【0038】
(4)搬送システムの制御構成
以下、図4を用いて、コンテナCの搬送及び移載を実行する搬送システム100の制御構成を説明する。図4は、搬送システム100の制御構成を示す図である。
搬送システム100は、電源部91と、電力供給部92と、第1コントローラ93Aと、第2コントローラ93Bと、昇降駆動部94と、移動駆動部95と、移載駆動部96と、を制御構成として有する。
電力供給部92は、第1搬送装置7Aと第2搬送装置7Bの昇降駆動部94のそれぞれとの間で電力を送受する。電力供給部92は、電源部91から交流電力を入力し、入力した交流電力を直流電力に変換するコンバータである。また、電力供給部92は、昇降駆動モータM11、M21にて発生した回生電力を、昇降駆動部94を介して入力し、交流電力に変換して電源部91に出力する。
【0039】
電力供給部92は、電力供給部92において異常が発生した場合には、異常信号を出力して、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの昇降駆動部94のそれぞれへの電力の送受を停止する。具体的には、電力供給部92は、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの昇降駆動部94のそれぞれへの電力供給、又は、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの昇降駆動部94のそれぞれからの回生電力の入力を停止する。
電力供給部92において異常が発生する場合としては、例えば、過電流の出力又は入力や過電圧の入力など、電力供給部92に規定値を超えた電圧、電流の供給又は入力がされた場合などがある。
【0040】
電力供給部92において異常が発生した場合には、作業者Wが電力供給部92の異常の原因を取り除く処置をした後、第1コントローラ93A又は第2コントローラ93Bから電力供給部92にリセット信号が入力される。リセット信号を受信した電力供給部92は、異常の発生履歴をリセットし、上記処置により異常の原因が取り除かれていれば、異常状態から正常状態(電力供給又は回生電力の入力が可能な状態)へと復帰し、電力供給又は回生電力の入力を再開できる。
上記処置によっても異常が解消されない場合には、電力供給部92は、異常信号を出力したまま、電力供給及び回生電力の入力の停止を維持する。すなわち、電力供給部92は、異常が解消されるまで、電力供給及び回生電力の入力が不可能となる。
【0041】
第1コントローラ93Aは、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、HDD)、各種インタフェースにより構成されたコンピュータシステムである。第1コントローラ93Aは、以下に説明する機能の一部又は全部を、記憶装置に記憶されたプログラムにより実行してもよいし、ハードウェアにて実現してもよい。
第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aの昇降台72の昇降、移載部73のX方向の移動、及び、移載部73によるコンテナCの移載を制御する。具体的には、第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aの昇降駆動部94に昇降台72の昇降指令を出力し、第1搬送装置7Aの移動駆動部95に移載部73のX方向への移動指令を出力し、第1搬送装置7Aの移載駆動部96に移載指令を出力する。
【0042】
また、第1コントローラ93Aは、電力供給部92と通信可能となっている。具体的には、第1コントローラ93Aは、電力供給部92の異常信号の出力端子と、電力供給部92へのリセット信号の入力端子と、に接続される。
これにより、第1コントローラ93Aは、電力供給部92から異常信号が出力されているか否か、すなわち、電力供給部92にて異常が発生しているか否かを確認できる。
また、第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aを動作させる際に電力供給部92から異常信号が出力されていることを検出した場合には、電力供給部92の異常を解消後にリセット信号を電力供給部92に出力して、電力供給部92を正常状態に復帰できる。
【0043】
第1コントローラ93Aは、有線又は無線にて第2コントローラ93Bと通信可能となっている。第1コントローラ93Aは、第2コントローラ93Bを通じて、第2搬送装置7Bにおける昇降台72の昇降、移載部73のX方向への移動、及び、移載部73によるコンテナCの移載、の状態を把握できる。なお、第1コントローラ93Aは、大きな回生電力を出力しないので、電源部91から電力が供給される。
【0044】
第2コントローラ93Bは、CPU、記憶装置(例えば、RAM、ROM、SSD、HDD)、各種インタフェースにより構成されたコンピュータシステムである。第2コントローラ93Bは、以下に説明する機能の一部又は全部を、記憶装置に記憶されたプログラムにより実行してもよいし、ハードウェアにて実現してもよい。
第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bの昇降台72の昇降、移載部73のX方向の移動、及び、移載部73によるコンテナCの移載を制御する。具体的には、第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bの昇降駆動部94に昇降台72の昇降指令を出力し、第2搬送装置7Bの移動駆動部95に移載部73のX方向への移動指令を出力し、第2搬送装置7Bの移載駆動部96に移載指令を出力する。
【0045】
また、第2コントローラ93Bは、電力供給部92と通信可能となっている。具体的には、第2コントローラ93Bは、電力供給部92の異常信号の出力端子と、電力供給部92へのリセット信号の入力端子と、に接続される。
これにより、第2コントローラ93Bは、電力供給部92から異常信号が出力されているか否か、すなわち、電力供給部92にて異常が発生しているか否かを確認できる。
また、第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bを動作させる際に電力供給部92から異常信号が出力されていることを検出した場合には、(電力供給部92の異常を解消後に)リセット信号を電力供給部92に出力して、電力供給部92を正常状態に復帰できる。
【0046】
第2コントローラ93Bは、有線又は無線にて第1コントローラ93Aと通信可能となっている。第2コントローラ93Bは、第1コントローラ93Aを通じて、第1搬送装置7Aにおける昇降台72の昇降、移載部73のX方向への移動、及び、移載部73によるコンテナCの移載、の状態を把握できる。なお、第2コントローラ93Bは、大きな回生電力を出力しないので、電源部91から電力が供給される。
【0047】
上記の構成を有することで、本実施形態の第1コントローラ93A及び第2コントローラ93Bは、互いに独立して電力供給部92と通信可能となっている。これにより、電力を送受可能とする必要がある搬送装置を制御するコントローラのみに対して電力を供給すれば電力供給部92を制御できる(電力供給部92をリセットできる)ので、電力を供給する必要がないコントローラに対して常時電力を供給するといった非効率な運用をする必要がなくなる。その結果、搬送システム100を効率よく運用できる。
【0048】
第1コントローラ93A及び第2コントローラ93Bが互いに独立して電力供給部92と通信可能となっており、第1コントローラ93A及び第2コントローラ93Bのいずれからでも電力供給部92を制御できる。そのため、第1コントローラ93A又は第2コントローラ93Bの一方のコントローラを起動させる際には、他方のコントローラの起動状態を確認することなく、当該一方のコントローラを起動できる。
【0049】
上記の「起動」とは、コントローラに対して電力の供給が可能となることを意味する。具体的には、例えば、コントローラの電源スイッチがオフ状態からオン状態に切り替えること、作業者Wがコントローラへの電力供給を可能とする操作をすること、又は、上位コントローラ(図示せず)から起動指令がなされることを意味する。
また、作業者Wの操作、上位コントローラからの起動指令を検出するためのコントローラへの微小な電力供給は「起動」に含まれず、コントローラにて各種制御を実行可能とするための電力供給を「起動」と定義する。
【0050】
例えば、搬送システム100において第1自動倉庫3Aのみを動作可能な状態とし、第2自動倉庫3Bを動作可能な状態としない場合に、第2搬送装置7Bを制御する第2コントローラ93Bを起動しなくとも、電力を送受可能とする必要がある第1搬送装置7Aを制御する第1コントローラ93Aが起動して電力供給されていれば、当該第1コントローラ93Aが、独立して、電力供給部92にて異常が発生しているか否かを確認し、必要に応じて電力供給部92にリセット信号を出力して電力供給部92を正常状態に復帰させることができる。
【0051】
昇降駆動部94は、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bに設けられる。第1搬送装置7Aの昇降駆動部94は、第1コントローラ93Aから受信した昇降指令に基づいて、第1搬送装置7Aの昇降台72を昇降させる昇降駆動モータM11に電力を供給する。また、第1搬送装置7Aの昇降駆動部94は、昇降駆動モータM11から回生電力が入力された場合には、当該回生電力を電力供給部92に出力する。
一方、第2搬送装置7Bの昇降駆動部94は、第2コントローラ93Bから受信した昇降指令に基づいて、第2搬送装置7Bの昇降台72を昇降させる昇降駆動モータM21に電力を供給する。また、第2搬送装置7Bの昇降駆動部94は、昇降駆動モータM21から回生電力(第1回生電力)が入力された場合には、当該回生電力を電力供給部92に出力する。
【0052】
昇降駆動部94は、例えば、インバータ回路を含むモータドライバ、又は、サーボアンプである。
【0053】
昇降台72は大きな重量を有するので、特に昇降台72が下降する方向に加速するときには、昇降駆動モータM11、M21から大きな回生電力が発生する。従って、本実施形態においては、昇降駆動モータM11、M21にて発生する第1回生電力は、昇降駆動部94を介して、電力供給部92へ出力される。
また、昇降台72が上昇する場合には、電力供給部92が、昇降駆動部94を介して、昇降駆動モータM11、M21へ電力の供給を行う。
【0054】
移動駆動部95は、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bに設けられる。第1搬送装置7Aの移動駆動部95は、第1コントローラ93Aから受信した移動指令に基づいて、第1搬送装置7Aの移載部73をX方向へ移動させる移動駆動モータM12に電力を供給する。
一方、第2搬送装置7Bの移動駆動部95は、第2コントローラ93Bから受信した移動指令に基づいて、第2搬送装置7Bの移載部73のX方向へ移動させる移動駆動モータM22に電力を供給する。
【0055】
移動駆動部95は、例えば、インバータ回路を含むモータドライバ、又は、サーボアンプである。
本実施形態において、移載部73をX方向に移動させるために、移動駆動モータM12、M22に大きな電力を供給する必要はない。また、移動駆動モータM12、M22から発生する回生電力も大きくない。なぜなら、移動駆動モータM12、M22の駆動対象である移載部73は、重力の方向とは異なる水平方向へ移動をし、その水平方向の移動時の速度も大きくないからである。
【0056】
従って、本実施形態においては、移動駆動モータM12、M22が必要とする電力(第2電力)は、移動駆動部95を介して、電源部91から直接供給される。また、移動駆動モータM12、M22から発生する回生電力(第2回生電力)は、移動駆動部95を介して、電源部91へと直接出力される。
【0057】
移載駆動部96は、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bに設けられる。第1搬送装置7Aの移載駆動部96は、第1コントローラ93Aから受信した移載指令に基づいて、第1搬送装置7Aの移載装置73Aを動作させる移載駆動モータM13、M23に電力を供給する。
一方、第2搬送装置7Bの移載駆動部96は、第2コントローラ93Bから受信した移載指令に基づいて、第2搬送装置7Bの移載装置73Aを動作させる移載駆動モータM13、M23に電力を供給する。
【0058】
移載駆動部96は、例えば、インバータ回路を含むモータドライバ、又は、サーボアンプである。
本実施形態において、移載装置73Aを動作させるために、移載駆動モータM13、M23に大きな電力を供給する必要はない。また、移載駆動モータM13、M23から発生する回生電力も大きくない。なぜなら、移載装置73Aは、重力の方向とは異なる水平方向へ移動をし、その水平方向の移動時の速度も大きくないからである。従って、本実施形態においては、移載駆動モータM13、M23が必要とする電力は、移載駆動部96を介して、電源部91から直接供給される。また、移載駆動モータM13、M23から発生する回生電力(第2回生電力)は、移載駆動部96を介して、電源部91へと直接出力される。
【0059】
搬送システム100が図4に示すような制御構成を有することにより、本実施形態の搬送システム100では、1つの共通の電力供給部92により、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bとの複数の搬送装置に電力を供給できる。また、複数の搬送装置で発生した回生電力を1つの電力供給部92に入力できる。
これにより、搬送装置毎に電力供給部を設ける場合と比較して、電力供給部92自体、電力供給部92を設置するための各種部材、制御盤など搬送システム100を構成する部品点数を減少できるとともに、搬送システム100における配線量を減少できる。その結果、搬送システム100をコンパクトにできる。
【0060】
(5)搬送システムの動作
(5-1)具体的な動作
以下、搬送システム100におけるコンテナCの搬送及び移載の動作を説明する。具体的には、図5を用いて、搬送システム100のいずれかの自動倉庫において実行される、搬送装置の起動から1つの搬送及び移載動作を完了するまでの一連の動作を説明する。図5は、搬送装置の起動から1つの搬送及び移載動作を完了するまでの一連の動作を示すフローチャートである。
以下においては、第1自動倉庫3Aにおいて実行される、第1搬送装置7Aの起動からコンテナCの1つの搬送及び移載動作を完了するまでの一連の動作を例にとって説明する。第2自動倉庫3Bにおいても、以下に説明する第1自動倉庫3Aにおける動作と同様の動作が実行される。
【0061】
上位コントローラ(図示せず)などから第1コントローラ93Aに、起動指令がなされると、第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aの起動処理を実行する。その他、例えば、第1コントローラ93Aの電源スイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられるか、又は、作業者Wが第1コントローラ93Aの電力供給を開始する操作をした場合にも、第1搬送装置7Aの起動処理が実行される。起動処理は以下のように実行される。
第1コントローラ93Aが上位コントローラから起動指令を受信することで起動した後、第1コントローラ93Aの電源スイッチをオン状態とした後、又は、作業者Wにより第1コントローラ93Aに電力供給を開始する操作がなされた後、第1コントローラ93Aは、ステップS1において、電力供給部92から異常信号が出力されており、電力供給部92が異常状態、すなわち、電力供給及び回生電力の入力ができない状態となっているか否かを判断する。
【0062】
電力供給部92から異常信号が出力されている場合(ステップS1で「Yes」)、作業者Wが、電力供給部92にて発生した異常の原因を取り除く処置を実行する。
その後、第1コントローラ93Aは、ステップS2において、電力供給部92にリセット信号を出力する。リセット信号を受信した電力供給部92は、発生した異常の履歴をリセットし、発生していた異常の原因が取り除かれていれば、異常状態から正常状態、すなわち、電力供給及び回生電力の入力ができる状態に復帰する。
【0063】
ステップS2でリセット信号を出力後、ステップS1に戻り、第1コントローラ93Aは、再度、電力供給部92から異常信号が出力されているか否かを判断する。リセット信号を出力しても電力供給部92から異常信号が出力されている場合には、再度、作業者Wが電力供給部92の異常の原因を取り除く処置を実行した後に、リセット信号を電力供給部92に出力する。
なお、第1コントローラ93Aからリセット信号を出力しても解消できない電力供給部92の異常としては、例えば、電源部91の出力電圧が不足している場合が挙げられる。
【0064】
一方、第1コントローラ93Aを起動した当初から電力供給部92から異常信号が出力されていないか、又は、リセット信号を出力後に異常信号が出力されなくなった場合(ステップS1で「No」)、第1コントローラ93Aは、電力供給部92からの電力供給、及び、回生電力の電力供給部92への入力が可能と判断し、ステップS3において、昇降駆動部94、移動駆動部95、及び移載駆動部96に対して起動指令を出力して、これら駆動部を起動させる。これら駆動部が起動した後、コンテナCの搬送と移載を開始することができる。
【0065】
コンテナCの搬送を開始するにあたり、第1コントローラ93Aは、ステップS4において、コンテナCの搬送及び移載の指令(搬送移載指令)の内容を参照し、第1搬送装置7Aの昇降台72に対し実行する必要がある動作の種類を判断する。
【0066】
昇降台72を昇降させる必要がないと判断した場合(ステップS4で「動作不要」)、第1自動倉庫3AにおけるコンテナCの搬送/移載動作は、ステップS7に進む。すなわち、第1コントローラ93Aが、移載部73のX方向の移動と、昇降台72と第1小棚1B又は第1ラック5Aの収納空間との間のコンテナCの移載と、を実行する。
【0067】
一方、昇降台72を上昇させる必要があると判断した場合(ステップS4で「上昇」)、第1コントローラ93Aは、ステップS5において、昇降台72を上昇させる。
昇降台72を上昇させる場合、昇降台72の重力に逆らって昇降台72を上方に加速させる(第3動作と呼ぶ)ため、電力供給部92から昇降駆動部94を介して、昇降駆動モータM11に大きな電力(第1電力と呼ぶ)を供給する必要がある。なぜなら、昇降台72は大きな重量を有しているからである。
なお、上記の「第1動作」と「第3動作」は、同一の装置(例えば、昇降台72)による動作である。
【0068】
この場合、第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bにおいても電力供給部92から大きな第1電力を供給する必要があるために、電力供給部92からその容量を超えた電力が供給される事態が発生しうるか否かを判断し、電力供給部92からその容量を超えた電力が供給されないと判断される場合に昇降台72を上昇させる。
【0069】
具体的には、第1コントローラ93Aは、図6に示すフローに従って昇降台72の上昇を実行する。図6は、昇降台72の上昇動作を示すフローチャートである。
昇降台72を上昇させる前に、第1コントローラ93Aは、ステップS51において、第2コントローラ93Bと通信して昇降台72の状態を確認し、第2搬送装置7Bの昇降台72が第3動作を実行中(上方に加速中(上昇加速中))であるか否かを判断する。すなわち、第2搬送装置7Bに対して電力供給部92から大きな第1電力が供給されているか否かを判断する。
【0070】
昇降台72が上方に加速中であるか否かは、例えば、第2搬送装置7Bの昇降台72が上昇を開始してからの経過時間に基づいて判断できる。
第2搬送装置7Bの昇降台72が第3動作を実行中(上方に加速中)である場合(ステップS51で「Yes」)、第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bの昇降台72が上方に加速しなくなるまで待機する。すなわち、第2搬送装置7Bに対して電力供給部92から大きな電力が供給されなくなるまで待機する。
一方、第2搬送装置7Bの昇降台72が第3動作を実行中(上方に加速中)でない場合(ステップS51で「No」)、第1コントローラ93Aは、ステップS52において、昇降駆動部94に対して昇降指令を出力し、昇降台72の上昇(第3動作の実行)を開始する。
【0071】
昇降台72の上昇を開始できる「昇降台72が上方に加速中でない場合」としては、以下の場合がある。
(i)第2搬送装置7Bの昇降台72が上方に定速で移動しているか減速中の場合。
(ii)第2搬送装置7Bの昇降台72が停止している場合。
(iii)第2搬送装置7Bの昇降台72が下降している場合。
【0072】
第2搬送装置7Bの昇降台72が上方に定速で移動しているか減速中の場合、電力供給部92から第2搬送装置7Bに電力が供給されるものの、その大きさは比較的小さい。つまり、電力供給部92から第2搬送装置7Bに最大電力が供給されない。
第2搬送装置7Bの昇降台72が停止している場合、電力供給部92から第2搬送装置7Bに電力が供給されていないか、又は、第2搬送装置7Bに供給される電力は比較的小さい。昇降台72が停止している場合に電力が供給される場合としては、例えば、昇降駆動モータM11、M21に電力を供給することで発生する上向きの力と昇降台72の重力とをほぼ同一として、昇降台72を現在位置で停止させる場合がある。
【0073】
第2搬送装置7Bの昇降台72が下降している場合、下方に加速中又は定速移動中であれば、第2搬送装置7Bの昇降駆動部94から大きな回生電力が発生し、電力供給部92に供給される。電力供給部92は、この大きな回生電力の一部又は全部を、第1搬送装置7Aの昇降台72の上昇の電力として供給できる。また、電力供給部92は、追加の電力を第1搬送装置7Aに供給できる。
一方、第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に減速中の場合にも第2搬送装置7Bから電力供給部92へ回生電力が入力されるが、その大きさは比較的小さい。つまり、電力供給部92には大きな回生電力が入力されない。
【0074】
上記のように、一方の搬送装置の昇降台72の上昇を開始させるタイミングとして、電力供給部92から他方の搬送装置に対して大きな電力が供給されていないタイミングを選択することにより、電力供給部92から両方の搬送装置に対して同時に大きな電力が供給されることを防止できる。
その結果、両方の搬送装置に対して同時に大きな電力が供給されることに対応するために電力供給部92の容量(定格電力)を大きくする必要がなくなるので、電力供給部92の容量(定格電力)を小さくできる。
【0075】
図5に戻り、ステップS4において昇降台72を下降させる必要があると判断した場合(ステップS3で「下降」)、第1コントローラ93Aは、ステップS6において、昇降台72を下降させる。
昇降台72を下降させる場合、昇降台72の重力により、昇降台72が下方に加速中又は下方に定速移動中(第1動作と呼ぶ)に、昇降駆動モータM11から大きな回生電力(第1回生電力と呼ぶ)が発生し電力供給部92に入力される。この場合、第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bからも電力供給部92に大きな第1回生電力が入力され、その容量を超えた回生電力が電力供給部92に入力される事態が発生しうるか否かを判断し、電力供給部92にその容量を超えた回生電力が入力されないと判断される場合に、昇降台72の下降を開始させる。
【0076】
具体的には、第1コントローラ93Aは、図7に示すフローに従って昇降台72の下降を実行する。図7は、昇降台72の下降動作を示すフローチャートである。
昇降台72を下降させる前に、第1コントローラ93Aは、ステップS61において、第2コントローラ93Bと通信して昇降台72の状態を確認し、第2搬送装置7Bの昇降台72が第1動作(下方に加速中(下降加速中)であるか、又は、下方に定速移動中(定速下降中))を実行中であるか否かを判断する。すなわち、第2搬送装置7Bから電力供給部92に大きな第1回生電力が入力されているか否かを判断する。
【0077】
昇降台72が下方に加速中であるか、又は、下方に定速移動中であるか否かは、例えば、第2搬送装置7Bの昇降台72が下降を開始してからの経過時間に基づいて判断できる。
第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に加速中であるか、又は、下方に定速移動中である(すなわち、第2搬送装置7Bにて第1動作を実行中である)場合(ステップS61で「Yes」)、同様に昇降台72を下降(第1動作を実行)しようとしている第1搬送装置7Aの第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に加速及び定速移動しなくなるまで、昇降台72の下降の開始(第1動作の実行)を待機する。
一方、第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に加速中でもなく定速移動中でもない(すなわち、第2搬送装置7Bにて第1動作が実行されない)場合(ステップS61で「No」)、第1コントローラ93Aは、ステップS62において、昇降駆動部94に対して昇降指令を出力し、昇降台72の下降を開始する。
【0078】
昇降台72の下降を実行できる「昇降台72が下方に加速中でもなく定速移動中でもない場合」としては、以下の場合がある。
(i)第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に減速中の場合。
(ii)第2搬送装置7Bの昇降台72が停止している場合。
(iii)第2搬送装置7Bの昇降台72が上昇している場合。
【0079】
第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に減速中の場合、第2搬送装置7Bからは回生電力が発生するものの、その大きさは第1回生電力と比較して小さい。従って、第1搬送装置7Aにて大きな第1回生電力が発生したとしても、電力供給部92には規定値を超えた回生電力は入力されない。
【0080】
第2搬送装置7Bの昇降台72が停止している場合、電力供給部92から第2搬送装置7Bに電力が供給されないか、又は比較的小さな電力が第2搬送装置7Bに供給される。従って、第1搬送装置7Aにて大きな第1回生電力が発生したとしても、電力供給部92は、当該第1回生電力の一部又は全部を第2搬送装置7Bの昇降台72を停止させる電力として第2搬送装置7Bへ供給するか、第1回生電力と追加の電力を第2搬送装置7Bの昇降台72を停止させる電力として第2搬送装置7Bに供給するか、又は、第1搬送装置7Aから入力した余剰の回生電力を適切に変換して、電源部91に出力する。
上記いずれの場合であっても、電力供給部92に対して規定値を超えた回生電力が入力されることはない。
【0081】
また、第2搬送装置7Bの昇降台72が上昇している場合、第1搬送装置7Aにて大きな第1回生電力が発生したとしても、第1搬送装置7Aから入力した回生電力の一部又は全部が、第2搬送装置7Bに供給される。また、場合によっては、電力供給部92は、追加の電力を第2搬送装置7Bに供給する。さらに、第2搬送装置7Bに供給されなかった余剰の回生電力は、適切に変換されて電源部91に出力される。
上記いずれの場合であっても、電力供給部92に対して規定値を超えた回生電力が入力されることはない。
【0082】
上記のように、一方の搬送装置の昇降台72を下降させるタイミングとして、他方の搬送装置から電力供給部92に大きな第1回生電力が入力されないタイミングを選択することにより、両方の搬送装置から電力供給部92に対して同時に大きな第1回生電力が入力されることを防止できる。
その結果、両方の搬送装置から大きな回生電力が入力されることに対応するために電力供給部92の容量(定格電力)を大きくする必要がなくなるので、電力供給部92の容量(定格電力)を小さくできる。
【0083】
図5に戻り、上記のステップS4~S6の昇降動作を開始後、第1コントローラ93Aは、ステップS7において、移載部73をX方向に移動させる必要があるか否かを判断する。
移載部73を移動させる必要がない場合(ステップS7で「No」)、第1コントローラ93Aは、昇降台72を目標位置まで昇降させた後に、ステップS9において、移載駆動モータM13を制御して、移載装置73AにてコンテナCの移載を実行する。
【0084】
一方、移載部73を移動させる必要がある場合(ステップS7で「Yes」)、第1コントローラ93Aは、昇降台72の昇降を開始後に、ステップS8において、移載部73のX方向への移動を実行する。
【0085】
図4を用いて説明したように、本実施形態において、昇降駆動モータM11、M21から発生した大きな第1回生電力は電力供給部92に出力される一方、移動駆動モータM12、M22から発生した第2回生電力は電源部91に出力される。つまり、昇降台72が下方に加速中又は下方に定速移動中(昇降駆動モータM11、M21から第1回生電力が発生中)に移動駆動モータM12、M22及び/又は移載駆動モータM13、M23から第2回生電力が発生しても、昇降駆動モータM11、M21から発生する第1回生電力と移動駆動モータM12、M22及び/又は移載駆動モータM13、M23から発生する第2回生電力とは個別の電力系統へと出力される。
【0086】
なお、移動駆動モータM12、M22から第2回生電力が発生する場合としては、例えば、移載部73がX方向に慣性により移動している場合、X方向に減速中の場合がある。一方、移載駆動モータM13、M23から第2回生電力が発生する場合としては、例えば、移載装置73Aが減速中の場合がある。移載部73がX方向に慣性により移動するか、又は、X方向に減速中である、移載装置73Aが減速中など、搬送装置にて比較的小さな第2回生電力が発生する動作を「第2動作」と呼ぶ。
【0087】
また、昇降駆動モータM11、M21へ供給される第1電力は電力供給部92から供給される一方、移動駆動モータM12、M22及び/又は移載駆動モータM13、M23へ供給される第2電力は電源部91から供給される。つまり、昇降台72が上方に加速中(昇降駆動モータM11、M21に第1電力を供給中)に移動駆動モータM12、M22及び/又は移載駆動モータM13、M23へ第2電力が供給されても、昇降駆動モータM11、M21が必要とする第1電力と移動駆動モータM12、M22及び/又は移載駆動モータM13、M23が必要とする第2電力とは個別の電力系統から供給される。
【0088】
なお、移動駆動モータM12、M22が第2電力を必要とする場合としては、例えば、移載部73がX方向に加速中の場合がある。移載駆動モータM13、M23が第2電力を必要とする場合としては、例えば、移載装置73Aが加速中の場合がある。移載部73がX方向に加速中、移載装置73Aが加速中であるなど、搬送装置にて比較的小さな第2電力を必要とする動作を「第4動作」と呼ぶ。
なお、上記の「第2動作」と「第4動作」は、同一の装置(例えば、移載部73及び/又は移載装置73A)による動作である。
【0089】
これにより、第1回生電力と第2回生電力とが同時に電力供給部92に出力されなくなり、また、第1電力と第2電力とが同時に電力供給部92から供給されなくなるので、回生電力及び供給電力を考慮して電力供給部92の容量をさらに小さくできる。
【0090】
上記の理由から、本実施形態において、第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に加速中又は下方に低速移動中(すなわち、第2搬送装置7Bが第1動作を実行中)であるため大きな第1回生電力を発生していても、また、第2搬送装置7Bの昇降台72が上方に加速中(すなわち、第2搬送装置7Bが第2動作を実行中)であるため大きな第1電力が供給されていても、第1搬送装置7Aの移載部73をX方向へ移動させ、及び/又は、第1搬送装置7Aの移載装置73Aを動作させる(すなわち、第1搬送装置7Aに第2動作及び第4動作を実行させる)。
これにより、大きな回生電力が同時に電力供給部92に入力されることを回避しつつ、第1搬送装置7Aと第2搬送装置7Bを同時に動作させて搬送システム100を効率よく運用できる。
【0091】
また、本実施形態において、第1コントローラ93Aは、図8に示すフローに従って移載部73の移動を実行する。図8は、移載部73の移動動作を示すフローチャートである。
移載部73を移動させる前に、第1コントローラ93Aは、ステップS81において、第2コントローラ93Bと通信して移載部73の状態を確認し、第2搬送装置7Bの移載部73が加速中であるか否かを判断する。すなわち、第2搬送装置7Bに対しても電源部91から電力を供給する必要があるか否かを判断する。
【0092】
移載部73が加速中であるか否かは、例えば、第2搬送装置7Bの移載部73がX方向への移動を開始してからの経過時間に基づいて判断できる。
第2搬送装置7Bの移載部73が加速中である場合(ステップS81で「Yes」)、第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bの移載部73が加速しなくなるまで待機する。すなわち、第2搬送装置7Bに対して電源部91から大きな電力が供給されなくなるまで待機する。
一方、第2搬送装置7Bの移載部73が加速中でない場合(ステップS71で「No」)、すなわち、第2搬送装置7Bの移載部73が定速で移動しているか減速中であるか停止している場合、第1コントローラ93Aは、ステップS72において、移動駆動部95に対して移動指令を出力し、移載部73を移動させる。
【0093】
上記のステップS71~S72を実行することにより、電源部91から第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bに同時に大きな電力が供給されることを防止できる。例えば、電源部91のブレーカの容量を小さくしたり、電源部91の契約容量を小さくしたりできる。
【0094】
(5-2)まとめ
以上、図5図8を用いて、第1実施形態に係る搬送システム100において実行される動作を説明した。図5図8に示すフローチャートに従って搬送システム100が動作することにより、以下のような効果が得られる。
第1に、図5のステップS1~S3が第1搬送装置7Aで実行されることにより、第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aを起動する際に、電力供給部92にて異常が発生しているか否かを確認し、異常が発生していれば電力供給部92の異常をリセットし異常が解消された後に第1搬送装置7Aを起動し、異常が発生していなければ第1搬送装置7Aを起動できる。
一方、図5のステップS1~S3が第2搬送装置7Bで実行されることにより、第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bを起動する際に、電力供給部92にて異常が発生しているか否かを確認し、異常が発生していれば電力供給部92の異常をリセットし異常が解消された後に第2搬送装置7Bを起動し、異常が発生していなければ第2搬送装置7Bを起動できる。
【0095】
これにより、電力供給部92にて異常が発生して第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bへの電力の送受が停止しても、その後に電力を送受可能とする搬送装置を制御するいずれかのコントローラに電力を供給し、当該コントローラから電力供給部92にて発生した異常をリセットして、その後に当該搬送装置を起動できる。すなわち、電力供給部92にて発生した異常をリセットするためにいずれかのコントローラに対して常時電力を供給する必要がなくなるので、搬送システム100を効率よく運用できる。
【0096】
第2に、図7に示すステップS61~S62が第1搬送装置7Aで実行されることにより、第1コントローラ93Aは、第2搬送装置7Bが大きな第1回生電力を発生させる第1動作を実行しており、第1搬送装置7Aが同様に第1動作を実行しようとする場合に、第1搬送装置7Aにおいて第1動作の実行を待機させることができる。
具体的には、第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aを動作させる前に第2コントローラ93Bを介して第2搬送装置7Bの状態を確認し、第2搬送装置7Bが大きな回生電力を発生させる動作を行っている場合、第1搬送装置7Aが大きな回生電力を発生させる動作を待機させることができる。
【0097】
一方、図7に示すステップS61~S62が第2搬送装置7Bで実行されることにより、第2コントローラ93Bは、第1搬送装置7Aが第1動作を実行しており、第2搬送装置7Bが同様に第1動作を実行しようとする場合に、第2搬送装置7Bにおいて第1動作の実行を待機させることができる。
具体的には、第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bを動作させる前に第1コントローラ93Aを介して第1搬送装置7Aの状態を確認し、第1搬送装置7Aが大きな回生電力を発生させる動作を行っている場合、第2搬送装置7Bが大きな回生電力を発生させる動作を待機させることができる。
【0098】
これにより、第1搬送装置7Aにて発生した大きな回生電力と第2搬送装置7Bにて発生した大きな回生電力とが同時に電力供給部92に入力されることを防止し、電力供給部92に大きな回生電力が入力されることを防止できる。その結果、回生電力を考慮して電力供給部92の容量を小さくできる。
【0099】
第3に、本実施形態では、第2搬送装置7Bが第1動作を実行しており(すなわち、第2搬送装置7Bの昇降台72が下方に加速中又は下方に定速移動中に)、第1搬送装置7Aが第2動作を実行しようとする(すなわち、第1搬送装置7Aの移載部73をX方向に移動しようとする)場合には、第1搬送装置7Aに対して第2動作を実行させている。
その一方、第1搬送装置7Aが第1動作を実行しており(すなわち、第1搬送装置7Aの昇降台72が下方に加速中又は下方に定速移動中に)、第2搬送装置7Bが第2動作を実行しようとする(すなわち、第2搬送装置7Bの移載部73をX方向に移動しようとする)場合には、第2搬送装置7Bに対して第2動作を実行させている。
これにより、大きな回生電力が同時に電力供給部92に入力されることを回避しつつ、第1搬送装置7Aと第2搬送装置7Bを同時に動作させて搬送システム100を効率よく運用できる。
【0100】
第4に、図7に示すステップS61~S62が第1搬送装置7Aで実行されることにより、第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aの昇降台72を下降させる前に第2搬送装置7Bの昇降台72の状態を確認し、第2搬送装置7Bの昇降台72が下降方向に加速中又は定速で下降している場合、第2搬送装置7Bの昇降台72が下降方向に減速するまで第1搬送装置7Aの昇降台72の下降を待機させることができる。
一方、図7に示すステップS61~S62が第2搬送装置7Bで実行されることにより、第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bの昇降台72を下降させる前に第1搬送装置7Aの昇降台72の状態を確認し、第1搬送装置7Aの昇降台72が下降方向に加速中、又は定速で下降している場合、第1搬送装置7Aの昇降台72が下降方向に減速するまで第2搬送装置7Bの昇降台72の下降を待機させることができる。
【0101】
搬送装置の昇降台72が下降するとき、昇降台72が加速しているか又は定速である場合に大きな回生電力が発生して電力供給部92に入力される一方、昇降台72が減速している場合には昇降台72が下方向に加速しているか下方向に低速移動している場合よりも小さな回生電力が発生して電力供給部92に入力される。
従って、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの昇降台72の両方が下降する場合に、一方の昇降台72が下降方向に減速するまで、他方の昇降台72を下降方向に加速しないようにし、かつ、定速で下降しないようにすることで、第1搬送装置7Aにて発生した大きな回生電力と第2搬送装置7Bにて発生した大きな回生電力とが同時に電力供給部92に入力されることを防止できる。その結果、回生電力を考慮して電力供給部92の容量を小さくできる。
【0102】
(6)実施形態の特徴
前記実施形態は下記のようにも説明できる。
搬送システム100(搬送システムの一例)は、第1搬送装置7A(第1搬送装置の一例)と、第1コントローラ93A(第1コントローラの一例)と、第2搬送装置7B(第2搬送装置の一例)と、第2コントローラ93B(第2コントローラの一例)と、電力供給部92(電力供給部の一例)と、を備える。
第1コントローラ93Aは、第1搬送装置7Aの動作を制御する。
第2コントローラ93Bは、第2搬送装置7Bの動作を制御する。
電力供給部92は、第1搬送装置7Aと第2搬送装置7Bのそれぞれとの間で電力を送受する。
第1コントローラ93A及び第2コントローラ93Bは、互いに独立して、電力供給部92と通信を行う。
【0103】
共通の電力供給部92により第1搬送装置7Aと第2搬送装置7Bとに電力を送受する上記の搬送システム100では、第1搬送装置7Aを制御する第1コントローラ93Aと第2搬送装置7Bを制御する第2コントローラ93Bとが互いに独立して電力供給部92と通信を行っている。
これにより、電力を送受可能とする必要がある搬送装置を制御するコントローラのみに対して電力を供給すれば電力供給部を制御できるので、電力を供給する必要がないコントローラに対して常時電力を供給するといった非効率な運用をする必要がなくなる。その結果、搬送システム100を効率よく運用できる。また、各コントローラが独立して電力供給部92と通信可能となっていることにより、電力を送受可能とする必要がある搬送装置を制御するコントローラは、電力供給部92の状態を確認するために他方のコントローラと通信する必要がない。
【0104】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)図5図8に示す各フローチャートにおける各処理の順序及び/又は処理内容は、発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更できる。例えば、上記の第1実施形態では、図5のステップS4~S8が同時に実行され、昇降台72の昇降と移載部73のX方向への移動とが同時に実行されていた。しかし、これに限られず、昇降台72の昇降を実行後に移載部73の移動を実行することもできる。また、その逆に、移載部73の移動を実行後に昇降台72の昇降を実行することもできる。
【0105】
(B)第1実施形態において、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bは移動できず固定されていたが、これに限られず、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bをスタッカクレーンのような移動可能な搬送装置とすることもできる。
第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bをスタッカクレーンとする場合には、スタッカクレーンは高速で移動しており、減速する距離も長いので、スタッカクレーンの減速時には大きな回生電力が発生する。また、慣性走行時には小さい回生電力が発生する。
【0106】
従って、例えば、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの一方を制御するコントローラは、当該一方の搬送装置を動作させる前に他方の搬送装置の状態を確認し、他方の搬送装置が減速して大きな回生電力を発生している場合、一方の搬送装置の減速を待機させるように制御してもよい。
【0107】
また、例えば、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bの一方を制御するコントローラは、当該一方の搬送装置を動作させる前に他方の搬送装置の状態を確認し、他方の搬送装置の加減速と昇降台の昇降により大きな回生電力を発生するか又は大きな電力を供給している場合に、一方の搬送装置の加減速及び/又は昇降台の昇降を待機するように制御をしてもよい。
【0108】
(C)第1実施形態においては、第1自動倉庫3Aと第2自動倉庫3Bは同じ構成を有する同種類の自動倉庫であったが、これに限られず、第1自動倉庫3Aと第2自動倉庫3Bが異なる構成を有する異種類の自動倉庫であっても、第1実施形態で説明した技術を適用できる。
【0109】
(D)第1コントローラ93Aと第2コントローラ93Bとは互いに通信可能となっていなくともよい。
【0110】
(E)第1実施形態においては第1コントローラ93Aと第2コントローラ93Bとは直接通信していたが、第1コントローラ93Aと第2コントローラ93Bは、例えば、上位コントローラを介して、間接的に必要な情報のやりとりを実行してもよい。
【0111】
(F)第1実施形態においては、第1自動倉庫3Aと第2自動倉庫3BがX方向に一直線に並んで配置されていたが、これに限られず、第1自動倉庫3Aと第2自動倉庫3Bの配置は任意とできる。
【0112】
(G)第1コントローラ93Aは、第2コントローラ93Bと通信できない場合には、第2コントローラ93Bがオフ状態である判断し、電力供給部92から第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bに同時に大きな電力が供給されず、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bから同時に大きな回生電力が電力供給部92に入力されないと判断して、第1搬送装置7Aの昇降台72の昇降を実行可能と判断してもよい。
また、第2コントローラ93Bは、第1コントローラ93Aと通信できない場合には、第1コントローラ93Aがオフ状態である判断し、電力供給部92から第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bに同時に大きな電力が供給されず、第1搬送装置7A及び第2搬送装置7Bから同時に大きな回生電力が電力供給部92に入力されないと判断して、第2搬送装置7Bの昇降台72の昇降を実行可能と判断してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、荷物の搬送を行う複数の搬送装置を備えた搬送システムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0114】
100 搬送システム
1 ステーション
1A コンベヤ
1B 第1小棚
1C 第2小棚
3A 第1自動倉庫
3B 第2自動倉庫
5A 第1ラック
5B 第2ラック
51 第1支柱
52 第2支柱
53 第1横部材
54 第2横部材
55 仕切部材
7A 第1搬送装置
7B 第2搬送装置
71A、71B、71C マスト
72 昇降台
72A 支持部材
72B 載置部材
72C 昇降ガイドローラ
73 移載部
73A 移載装置
91 電源部
92 電力供給部
93A 第1コントローラ
93B 第2コントローラ
94 昇降駆動部
95 移動駆動部
96 移載駆動部
M11 昇降駆動モータ
M12 移動駆動モータ
M13 移載駆動モータ
M21 昇降駆動モータ
M22 移動駆動モータ
M23 移載駆動モータ
C コンテナ
W 作業者

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8