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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20240312BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/534 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089029
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183023
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】示崎 幸生
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192714(JP,A)
【文献】特開2006-141647(JP,A)
【文献】特開2015-217067(JP,A)
【文献】特開平11-189997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
A61F 13/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股下に装着される吸収性物品であって、
繊維状材料からなる吸収体と、
前記吸収体と共に積層されるティッシュと、
少なくとも前記ティッシュに非固定状態で隣接配置されるSAPの粒子群によって形成されるSAP層と、を備え、
乾燥状態において平行状態から30度傾けた場合に、SAPの粒子が前記ティッシュと接触することにより35dB以上の音を発する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記ティッシュは、前記SAP層を包む、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ティッシュは、前記吸収体と前記SAP層の積層体を包む、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体と前記ティッシュと前記SAP層の積層体を包む不織布を更に備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体である第1吸収体とは異なる第2吸収体を更に備え、
前記SAP層及び前記ティッシュの少なくとも一部は、前記第1吸収体と前記第2吸収体との間に配置される、
請求項1から4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記SAP層は、非破砕のSAPの粒子群によって形成される、
請求項1から5の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記SAP層は、粒度が0.15mm以上1.00mm以下のSAP粒子によって形成される、
請求項1から6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつやパッド、生理用ナプキンといった吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品は、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている。吸収体には、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)が用いられている。吸収体は薄いシート状、マット状等の形状に形成される。例えば特許文献1には、不織布基材等に、熱可塑性樹脂等の結合剤を用いてSAP粒子を固定させた吸収性複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-24033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、通常、着用者の尿道口から排出された液体を吸収した後は交換される。吸収性物品が液体を吸収したか否かは、着用者の申告、吸収性物品の重さや大きさ、或いは、液体が接触すると変色するマークで確認できる。しかし、着用者が申告できない場合や、吸収性物品の状態が着衣等に覆われて確認できない場合には、着用者の付近に居る者が液体の吸収を確認することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、吸収性物品が着衣で覆われていても液体の吸収の有無を確認可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、SAP層をティッシュに隣接配置することにした。
【0007】
詳細には、本発明は、着用者の股下に装着される吸収性物品であって、繊維状材料からなる吸収体と、吸収体と共に積層されるティッシュと、少なくともティッシュに隣接配置されるSAPの粒子群によって形成されるSAP層と、を備える。
【0008】
なお、ティッシュは、SAP層を包んでいてもよい。
【0009】
また、ティッシュは、吸収体とSAP層の積層体を包んでいてもよい。
【0010】
また、上記の吸収性物品は、吸収体とティッシュとSAP層の積層体を包む不織布を更に備えていてもよい。
【0011】
また、上記の吸収性物品は、吸収体である第1吸収体とは異なる第2吸収体を更に備え、SAP層及びティッシュの少なくとも一部は、第1吸収体と第2吸収体との間に配置されていてもよい。
【0012】
また、SAP層は、非破砕のSAPの粒子群によって形成されていてもよい。
【0013】
また、SAP層は、粒度が0.15mm以上1.00mm以下のSAP粒子によって形
成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸収性物品が着衣で覆われていても液体の吸収の有無を確認可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、おむつの分解斜視図である。
図3図3は、股下領域をその幅方向に切断した場合の断面図である。
図4図4は、マットの詳細な構造を示した第1の図である。
図5図5は、マットの詳細な構造を示した第2の図である。
図6図6は、マットの構造の第1変形例を示した図である。
図7図7は、マットの構造の第2変形例を示した図である。
図8図8は、マットの構造の第3変形例を示した図である。
図9図9は、実施例に係るマットの構造図である。
図10図10は、比較例に係るマットの構造図である。
図11図11は、音量測定結果を示した表である。
図12図12は、音を検知できた人の数を音量毎に示した表である。
図13図13は、違和感を覚えた人数を試験体毎に示した表である。
図14図14は、音量をティッシュの目付量毎に示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0017】
<実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0018】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非肌面側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0019】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができるマット6が主に股下領域1B付近
を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排泄される液体は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1のマット6に吸収される。
【0020】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、図3は、股下領域1Bをその幅方向に切断した場合の断面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材である。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する箇所に設けられる。カバーシート4は、バックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0021】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、マット6、トップシート7を有する。バックシート5、マット6、トップシート7は、何れも長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート7は、マット6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通ってマット6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。さらにトップシート7も親水性を有していてもよい。
【0022】
そして、バックシート5とマット6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5とマット6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側までマット6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介してマット6に触れることになる。
【0023】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる。サイドシート8L,8Rには、おむつ1の立体ギャザー3BL,3BRと同様、着用者の大腿部が位置する箇所に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、括れ8KL,8KRには糸ゴム8EL,8ERが長手方向に沿って編み込まれている。よって、括れ8KL,8KRは、おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、糸ゴム8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザーとなる。
【0024】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための糸ゴム9ERは、マット6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。糸ゴム9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、糸ゴム9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、糸ゴム9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との
間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、マット6の両側にも、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ糸ゴム4SL,4SRが設けられている。
【0025】
マット6は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。
【0026】
このように構成されるおむつ1において、着用者から液体が排泄されると、排出された液体はトップシート7を介してマット6に接触する。その結果、マット6は、着用者から排出された液体を吸収し、液体がおむつ1から外部に漏れ出すのを好適に抑制する。
【0027】
このようなおむつ1の製造において、例えば、マット6とその周辺が以下のように構成されている場合に、おむつ1が着衣で覆われていても液体の吸収の有無を確認することが可能となる。図4は、マット6の詳細な構造を示した第1の図である。また、図5は、マット6の詳細な構造を示した第2の図である。図4では、マット6を肌対向面側から見た場合の構造が図示されている。また、図5では、図4において符号A-Aで示す線でマット6及びその周辺を切断した場合の断面が図示されている。
【0028】
図4及び図5に示されるように、マット6は、トップシート7側に配置された上層吸収体61と、バックシート5側に配置された下層吸収体62とを有している。下層吸収体62は、トップシート7側から見て上層吸収体61の下方に配置されている。上層吸収体61及び下層吸収体62には、針葉樹等の繊維材料を解砕して得られるフラッフパルプやSAP、親水性シート等、これらを組み合わせたものが用いられる。
【0029】
そして、マット6には、上層吸収体61を包む上層コアラップシート63と、下層吸収体62を包む下層コアラップシート64が備わっている。上層コアラップシート63は、上層吸収体61の上面と下面の両方を覆うように引き回されており、上層吸収体61全体を包んでいる。下層コアラップシート64も上層コアラップシート63と同様、下層吸収体62の上面と下面の両方を覆うように引き回されており、下層吸収体62全体を包んでいる。上層コアラップシート63又は下層コアラップシート64には、例えば、ティッシュのような薄葉紙が用いられる。ティッシュとは、湿潤強度が与えられた薄葉紙をいい、例えば、クラフトパルプやレーヨン等で構成されたものが挙げられる。上層コアラップシート63と下層コアラップシート64の何れか一方がティッシュであれば、SAP層65は、ティッシュに隣接配置されることになる。この場合、上層コアラップシート63と下層コアラップシート64の何れか他方は、SAP層65のSAP粒子が上層コアラップシート63と下層コアラップシート64の間で自在に移動するのを抑制するために、例えば、SAP粒子が繊維間に入り込みやすい嵩高不織布で構成されていることが好ましい。
【0030】
また、マット6は、上層コアラップシート63に包まれた上層吸収体61と、下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62との隙間に非固定状態で挟持されたSAP層65を有している。SAP層65は、SAPの粒子が複数集まって形成されている。SAP層65は、SAPの粒子を複数含むSAPの粒子群であり、上層吸収体61と下層吸収体62との間に導かれた液体を吸収して保持することができる。SAP層65は、マット6の中心部においてマット6の長手方向に沿うように配置されている。また、SAP層65は、上面視において長方形状に形成されている。SAP層65は、上面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0031】
SAP層65は、例えば、下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62の上にSAPの粒子を散布することにより形成できる。下層コアラップシート64に包まれた下
層吸収体62の上にSAPの粒子を散布してSAP層65を形成した後、上層コアラップシート63に包まれた上層吸収体61をSAP層65の上に重ねれば、上層コアラップシート63に包まれた上層吸収体61と下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62との隙間にSAP層65を挟持した状態にすることができる。上層コアラップシート63に包まれた上層吸収体61と下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62との隙間にSAP層65が挟持されているため、装着者の動作によりおむつ1が動いた場合であっても、SAP層65に含まれるSAPの粒子は、基本的に上層吸収体61と下層吸収体62との間に留まった状態で動く。
【0032】
また、SAP層65を上層吸収体61と下層吸収体62との間に配置することによって、毛細管現象により下層吸収体62のパルプが一旦吸収した尿をSAP層65に移動させることができる。これにより、おむつ1は、より尿の保持力が高いSAP層65で尿を保持することで、尿の漏出を抑制できる。
【0033】
このように、本実施形態に係るおむつ1は、肌対向面側から厚さ方向に見て、トップシート7、上層コアラップシート63に包まれた上層吸収体61、SAP層65、下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62、バックシート5、カバーシート4の順に積層された構造を有している。また、トップシート7とバックシート5の外周縁部が互いに接合されることにより、マット6がトップシート7及びバックシート5により周囲が囲まれて封止されている。よって、上層吸収体61と下層吸収体62との間に挟持されるSAP層65がおむつ1の外へ漏れ出ることは無い。
【0034】
このように構成される本実施形態のおむつ1では、着用者の動作に伴い、上層吸収体61と下層吸収体62との隙間に挟持されているSAP層65の粒子が動く。SAP層65の粒子は、上層吸収体61と下層吸収体62との隙間で動く際、上層コアラップシート63や下層コアラップシート64に接触する。SAP層65の粒子は、吸水前の乾燥状態においては硬質な粒であるため、SAP層65の粒子が上層コアラップシート63や下層コアラップシート64に接触すると音が発生する。一方、SAP層65の粒子は、吸水後の膨潤状態においては、軟質なゲル状になるため、SAP層65の粒子が上層コアラップシート63や下層コアラップシート64に接触しても音が発生しない。よって、おむつ1の装着者の周辺にいる人は、装着者が動いた際におむつ1から生ずる音を聞き分けることにより、装着者が尿をおむつ1へ排出したか否かの判断を行うことができる。
【0035】
本実施形態のおむつ1では、SAP層65が上層コアラップシート63に包まれた上層吸収体61と下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62との隙間に非固定状態で挟持されており、SAP層65がティッシュ製の上層コアラップシート63と下層コアラップシート64に隣接配置されているため、吸水前の乾燥状態において、SAP層65の粒子が上層コアラップシート63や下層コアラップシート64に接触した際に比較的大きい音が発生する。すなわち、上層吸収体61が繊維材料で構成されているため、例えば、SAP層65が上層吸収体61と共に上層コアラップシート63に包まれている場合、SAP層65の粒子は上層吸収体61を構成する繊維の隙間に入り込む。よって、着用者が動いてもSAP層65の粒子が上層コアラップシート63に接触しにくく、音があまり発生しない。一方、本実施形態のおむつ1であれば、SAP層65の粒子は上層コアラップシート63や下層コアラップシート64を構成する繊維の隙間に入り込めないため、着用者が動くと、SAP層65の粒子が上層コアラップシート63や下層コアラップシート64の表面に接触しながら動くことになる。よって、SAP層65が上層吸収体61と共に上層コアラップシート63に包まれている場合に比べると、発生する音が大きい。したがって、着用者がおむつ1の上に衣服を着用した状態であっても、おむつ1から発生する音を聞き分け、装着者が尿をおむつ1へ排出したか否かの判断を行うことができる。
【0036】
なお、SAP層65の粒子は、上層コアラップシート63や下層コアラップシート64の表面で動きやすいものの方が、発生する音がより大きい。よって、SAP層65の粒子は、SAPの塊を破砕して作った角のある粒子よりも、角や凹凸の少ないパール状の粒子といった非破砕の粒子の方が、上層コアラップシート63や下層コアラップシート64の表面を転がりやすく、着用者が動いた際に発生する音がより大きい。
【0037】
また、SAP層65の粒子が上層コアラップシート63や下層コアラップシート64の表面に接触する際の音をより効果的に発生させるには、上層コアラップシート63と下層コアラップシート64に不織布を用いるよりも、上述したようにティッシュを用いる方がよい。不織布は、ティッシュに比べると、表面が滑らかで剛性も高いため、不織布を上層コアラップシート63と下層コアラップシート64に用いるとSAP層65の粒子が上層コアラップシート63と下層コアラップシート64の表面をスムーズに動き、接触音が発生しにくくなるためと考えられる。但し、本実施形態は、上層コアラップシート63と下層コアラップシート64をティッシュで構成したものに限定されるものではない。少なくともSAP層65がティッシュに隣接配置されていれば、吸水前のSAP層65がティッシュに接触して接触音を発することができるため、本実施形態は、例えば、上層コアラップシート63と下層コアラップシート64を不織布で構成する場合であれば、接触音を発する目的でティッシュをSAP層65に隣接配置してもよい。
【0038】
また、SAP層65の粒子は、かさ比重のより大きいものの方が、上層コアラップシート63や下層コアラップシート64の表面に接触した際の衝突力が高まり、発生する音がより大きくなると考えられる。
【0039】
なお、SAP層65は、下層吸収体62の非肌面側に配置されていてもよい。図6は、マット6の構造の第1変形例を示した図である。SAP層65は、例えば、図6に示されるように、下層吸収体62の非肌面側であるバックシート5側において、下層吸収体62に非固定状態で隣接配置されていてもよい。上記実施形態のおむつ1をこのように変形しても、SAP層65が下層コアラップシート64に包まれた下層吸収体62に非固定状態で隣接配置されているため、吸水前の乾燥状態において、SAP層65の粒子がティッシュ製の下層コアラップシート64に接触した際に比較的大きい音が発生する。
【0040】
また、SAP層65の粒子は、上層コアラップシート63や下層コアラップシート64と同様のティッシュ製のシートに包まれた状態で上層吸収体61或いは下層吸収体62に隣接配置されていてもよい。図7は、マット6の構造の第2変形例を示した図である。SAP層65は、例えば、図7に示されるように、下層吸収体62の非肌面側であるバックシート5側において、ティッシュ製のSAP層ラップシート66に包まれた状態で下層吸収体62に非固定状態で隣接配置されていてもよい。上記実施形態のおむつ1をこのように変形しても、SAP層ラップシート66に包まれたSAP層65がティッシュに隣接配置されているため、吸水前の乾燥状態において、SAP層65の粒子がSAP層ラップシート66に接触した際に比較的大きい音が発生する。
【0041】
また、SAP層65は、マット6の全域に設けられていなくてもよい。図8は、マット6の構造の第3変形例を示した図である。SAP層65は、例えば、図8に示されるように、マット6のうち着用者の尿道口に対向する領域である尿道口対向領域R1の付近において、上層吸収体61や下層吸収体62に非固定状態で隣接配置されていてもよい。ティッシュに隣接配置されるSAP層65が尿道口対向領域R1付近にのみ配置されていれば、着用者の尿道口から尿が排出された場合に、SAP層65が全域に渡って尿を吸収し、膨潤することになる。よって、SAP層65がマット6の全域に配置されている場合に比べると、着用者が尿をおむつ1へ排出した後に、尿を吸収していないSAP層65の粒子が残存する可能性が低い。このため、着用者が尿をおむつ1へ排出した後に、乾燥状態の
SAP層65の粒子が上層コアラップシート63や下層コアラップシート64に接触して音を発生する可能性が抑制される。
【0042】
また、上記実施形態や変形例では、テープ型の使い捨ておむつが例示されていたが、その他の形態の吸収性物品であってもよい。このような吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッド等が挙げられる。
【0043】
以下、SAP層65の粒子が発する音の検証を行ったので、その結果を以下に示す。本検証においては、上記実施形態の変形例に相当する試験品(以下、「実施例」という)と、比較例に係る試験品(以下、「比較例」という)とを用意した。図9は、実施例に係るマットの構造図である。また、図10は、比較例に係るマットの構造図である。両試験品は、何れも、マットの断面構造の相違を除いた部分については上記実施形態と同様であるため、上記実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
実施例のマット6は、図9に示されるように、2つある吸収体のうちの下層吸収体62をSAP層65と共にティッシュ製の下層コアラップシート64で包んでおり、その上に上層吸収体61、及び、上層コアラップシート63を積層した形態となっている。一方、比較例のマット106は、図10に示されるように、下側から順に、下層コアラップシート64、下層吸収体62、SAP層65、上層吸収体61、上層コアラップシート63を積層した形態になっている。すなわち、実施例のマット6は、SAP層65がティッシュに隣接配置される形態となっている。一方、比較例のマット106は、SAP層65がティッシュに隣接配置されておらず、上層吸収体61と下層吸収体62に直接挟まれる形態となっている。
【0045】
本検証では、音量測定機器として、APPLE社のiPhone8Plus(iPhoneは登録商標)を用いた。アプリケーションには、SkyPaw Co.Ltd製の「Decibel X」(version8.1.3)を用いた。音響測定環境は、平常時の音量が27~dB程度の静かな部屋である。
【0046】
また、実施例と比較例の何れも、全体のサイズは、長さが400mmで横幅が100mmのものを用意した。トップシート7及びバックシート5に相当するシートのサイズは、長さが400mmで横幅が100mmである。また、上層コアラップシート63に相当するシートのサイズは、長さが380mmで横幅が70mmである。下層コアラップシート64に相当するシートのサイズは、実施例では長さが380mmで横幅が140mm、比較例では長さが380mmで横幅が70mmである。上層吸収体61と下層吸収体62に相当する各吸収体の目付量は、何れも、260g/mである。また、SAP層65のSAP量は、実施例と比較例の何れもそれぞれ8gである。SAPは、下層吸収体62の上に均一に散布した。
【0047】
本検証においては、音量測定機器を準備した状態で、サンプルの長手方向の一端を左手で掴み、他端を右手で掴んだ。音量測定機器とサンプルとの間の距離は30cmである。そして、サンプルを持つ右手を下げることで、サンプルを水平面に対して30度傾け、その際の音量測定機器の数値を読み取った。図11は、音量測定結果を示した表である。図11の表に示すように、SAP層が非破砕のSAP粒子であり、コアラップシートがティッシュ製で、断面構造が実施例のもの(実施例1)は、最も大きな音量となることが確認された。次いで、SAP層が破砕のSAP粒子であり、コアラップシートがティッシュ製で、断面構造が実施例のもの(実施例2)は、2番目に大きな音量となることが確認された。次いで、SAP層が非破砕のSAP粒子であり、コアラップシートが不織布製で、断面構造が実施例のもの(実施例3)は、3番目に大きな音量となることが確認された。S
AP層が非破砕のSAP粒子であり、コアラップシートがティッシュ製で、断面構造が比較例のものは、用意したサンプルの中で最も小さい音量となることが確認された。
【0048】
次に、人が感知できる音量の確認を行った。人が感知できる音量の確認は、サンプルから0.8m離れた箇所に全20名の被験者を一人ずつ交代で配置し、被験者が静止した状態でサンプルから発する音をどの程度感知できるのか確認した。この0.8mという距離は、おむつを装着した状態における被装着者の耳から当該おむつまでの距離、或いは、介護者が被装着者のベッド付近に立ち寄った状態における当該介護者の耳から被装着者のおむつまでの距離を想定したものである。図12は、音を検知できた人の数を音量毎に示した表である。図12の表に示すように、音量が32dB以下の場合には被験者の全20名が音を検知できなかった。そして、音量が35dB以上であれば概ね適切に感知され、音量が37dB以上であれば被験者の全20名が音を検知できた。よって、図11の表と図12の表を見比べると判るように、実施例1と実施例2については、音を十分に検知できると認められる。
【0049】
次に、SAP粒子の粒度が被験者の着用感に与える影響についても検証を行ったので、その結果を以下に示す。本検証では、上記の実施例1、すなわち、SAP層が非破砕のSAP粒子であり、コアラップシートがティッシュ製で、断面構造が実施例(図9)のものにおいて、SAP粒子の粒度を互い違いにした試験体を6種類用意し、20名の被験者に装着して違和感の有無を確認した。図13は、違和感を覚えた人数を試験体毎に示した表である。図13の表を見ると判るように、粒度1mmの試験体1については殆どの人が違和感を覚えた。そして、粒度0.15mmの試験体5や粒度0.08mmの試験体6については殆どの人が違和感を覚えなかった。但し、図13の表を見ると判るように、粒度0.08mmの試験体6については音量が33.6dBとなった。この結果より、粒度の下限については、0.15mm以上が好ましいことが判る。また、粒度の上限については、1.00mm以下であり、より好ましくは0.85mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下であることが望ましいことが判る。
【0050】
なお、コアラップシートに用いたティッシュの目付が音量に与える影響についても検証を行ったので、その結果を以下に示す。本検証では、上記の実施例1、すなわち、SAP層が非破砕のSAP粒子であり、コアラップシートがティッシュ製で、断面構造が実施例(図9)のものにおいて、ティッシュの目付を互い違いにした試験体を5種類用意し、音量測定を行った。図14は、音量をティッシュの目付量毎に示した表である。図14の表を見ると判るように、試験体1から試験体5まで、ティッシュの目付を順に25g/m、22g/m、19g/m、16g/m、13g/mと順次減らしたものを用意し、それぞれについて音量測定を行ったが、音量に有意な違いは見られなかった。よって、湿潤強度が与えられた薄葉紙のティッシュであれば、如何なる目付量であっても音量に影響は殆どないことが判る。
【符号の説明】
【0051】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F・・フロントパッチ
2L,2R・・テープ
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4KL,4KR・・括れ
5・・バックシート
6,106・・マット
7・・トップシート
8L,8R・・サイドシート
8KL,8KR・・括れ
4SL,4SR,8EL,8ER,9ER・・糸ゴム
61・・上層吸収体
62・・下層吸収体
63・・上層コアラップシート
64・・下層コアラップシート
65・・SAP層
66・・SAP層ラップシート
R1・・尿道口対向領域
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