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特許7452249真空圧密管理システム及び地盤改良工事の品質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】真空圧密管理システム及び地盤改良工事の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
E02D3/10 103
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020090264
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185290
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 由貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真一
(72)【発明者】
【氏名】杉江 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196614(JP,A)
【文献】特開平04-034123(JP,A)
【文献】特開平03-281818(JP,A)
【文献】特開2017-002556(JP,A)
【文献】特開2002-242171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
17/18
27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空圧密工法により軟弱地盤の強度増加を図る地盤改良工事の品質管理を行うための真空圧密管理システムにおいて、
前記地盤改良工事の品質管理に用いる計測項目の計測を行う計測装置と、
前記計測項目の計測結果に基づいて、前記軟弱地盤の沈下量を制御する真空圧密制御装置と、を備え、
前記計測項目は、少なくとも前記軟弱地盤の沈下量を含み、
前記真空圧密制御装置は、目標曲線作成部と、圧密荷重調整部とを有し、
前記目標曲線作成部は、前記軟弱地盤の沈下量を経時変化させて目標最終沈下量に到達させるための指標となる、目標沈下曲線を作成し、
前記圧密荷重調整部は、前記目標沈下曲線と、沈下量の計測結果とに基づいて、調整後の軟弱地盤の沈下量が目標沈下曲線に沿って経時変化するよう、圧密荷重を適時調整することを特徴とする真空圧密管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の真空圧密管理システムにおいて、
前記軟弱地盤が複数の区画に区分けされるとともに、前記真空圧密制御装置がさらに区画間調整部を備え、
前記区画間調整部は、前記区画ごとで、前記目標沈下曲線及び沈下量の計測値と、隣接する区画における沈下量の計測値とに基づいて、前記区画ごとの前記圧密荷重を適時調整することを特徴とする真空圧密管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空圧密管理システムにおいて、
前記計測項目に、前記軟弱地盤における間隙水の揚水量と真空圧とを含み、
前記圧密荷重調整部では、揚水量もしくは真空圧を増減し圧密荷重を調整することを特徴とする真空圧密管理システム。
【請求項4】
請求項1または3に記載の真空圧密管理システムを用いて、真空圧密工法により軟弱地盤の強度増加を図る地盤改良工事の品質管理を行う、地盤改良工事の品質管理方法において、
前記軟弱地盤の沈下量を経時変化させて目標最終沈下量に到達させるための指標となる、目標沈下曲線を作成する工程と、
前記軟弱地盤に圧密荷重を作用させ、管理時刻に前記計測項目の計測を行う工程と、
前記計測項目のうちの沈下量の計測値と前記目標沈下曲線とに基づいて圧密荷重を調整し、調整後の前記軟弱地盤の沈下量が前記目標沈下曲線に沿って経時変化するよう制御する工程と、を備えることを特徴とする地盤改良工事の品質管理方法。
【請求項5】
請求項2または3に記載の真空圧密管理システムを用いて、真空圧密工法により軟弱地盤の強度増加を図る地盤改良工事の品質管理を行う、地盤改良工事の品質管理方法において、
軟弱地盤を目標最終沈下量ごとの区画に区分けする工程と、
前記区画ごとで、前記軟弱地盤の沈下量を経時変化させて目標最終沈下量に到達させるための指標となる、目標沈下曲線を作成する工程と、
前記区画ごとに圧密荷重を作用させ、管理時刻に前記計測項目の計測を行う工程と、
前記区画ごとで、前記目標沈下曲線及び沈下量の計測値と、隣接する区画における沈下量の計測値とに基づいて圧密荷重を調整し、調整後の前記軟弱地盤の沈下量が前記目標沈下曲線に沿って経時変化するよう制御する工程と、
を備えることを特徴とする地盤改良工事の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空圧密工法に用いる真空圧密管理システム、及び真空圧密管理システムを用いた地盤改良工事の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軟弱地盤の圧密沈下促進、強度増加を図る工法として、真空圧密工法が採用されている。真空圧密工法は、真空圧(負圧)を利用して軟弱地盤内の間隙水や空気を排出し、短期間に地盤の沈下を促進させ、せん断強度の増加を図る工法であり、例えば特許文献1には、ドレーン材を用いて軟弱地盤内に負圧を作用させる方法が開示されている。
【0003】
具体的には、鉛直ドレーン材を軟弱地盤中に間隔を設けて複数埋設するとともに、埋設したドレーン材の上端部どうしを集水管で連結する。この集水管には真空ポンプが接続されており、真空ポンプを作動させることによって集水管及び鉛直ドレーン材を介して軟弱地盤内を減圧し、圧密を促進させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-226951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の真空圧密工法を実施する際には一般に、施工対象領域全域に一定の真空圧を継続して作用させることを前提とし、施工対象領域の沈下量や周辺地盤に影響を与えるような変形を生じる可能性等を事前に予測する。
【0006】
そのうえで、目標とする沈下量が得られない可能性がある場合、載荷盛土の施工を併用したり、周辺地盤に影響を与える可能性がある場合、補助工法等を実施する等している。しかし、このような対策工を合わせて実施する作業は煩雑であり、工期が長期化しやすく工費も膨大となりやすい。
【0007】
また、改良後は、高層建築物等の重量構造物が構築される、もしくは、道路等の軽量構造物が構築される等、その敷地用途は様々であり、施工対象領域が広域にわたる場合には、改良後の敷地内で用途の異なる領域が混在することが想定される。このような場合には、改良直後の敷地内に不同沈下が見られなくても、用途に応じた構造物を構築したのちに構造物の重量に応じた残留沈下が生じ、将来的に構造物間で不同沈下を生じることも考えられる。
【0008】
ところが、真空圧密工法を実施するにあたり、このような改良後の敷地用途による残留沈下に起因して発生する可能性のある将来的な不同沈下を予測して、施工対象領域に作用させる真空圧を設定し、沈下量を制御する方法は検討されていない。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、真空圧密工法により、経済的かつ効率よく軟弱地盤の強度増加を図りつつ、高品質な改良地盤を得ることの可能な、真空圧密管理システム、及び真空圧密管理システムを用いた地盤改良工事の品質管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の真空圧密管理システムは、真空圧密工法により軟弱地盤の強度増加を図る地盤改良工事の品質管理を行うための真空圧密管理システムにおいて、前記地盤改良工事の品質管理に用いる計測項目の計測を行う計測装置と、前記計測項目の計測結果に基づいて、前記軟弱地盤の沈下量を制御する真空圧密制御装置と、を備え、前記計測項目は、少なくとも前記軟弱地盤の沈下量を含み、前記真空圧密制御装置は、目標曲線作成部と、圧密荷重調整部とを有し、前記目標曲線作成部は、前記軟弱地盤の沈下量を経時変化させて目標最終沈下量に到達させるための指標となる、目標沈下曲線を作成し、前記圧密荷重調整部は、前記目標沈下曲線と、沈下量の計測結果とに基づいて、調整後の軟弱地盤の沈下量が目標沈下曲線に沿って経時変化するよう、圧密荷重を適時調整することを特徴とする。
【0011】
本発明の真空圧密管理システムは、前記軟弱地盤が複数の区画に区分けされるとともに、前記真空圧密制御装置がさらに区画間調整部を備え、前記区画間調整部は、前記区画ごとで、前記目標沈下曲線及び沈下量の計測値と、隣接する区画における沈下量の計測値とに基づいて、前記区画ごとの前記圧密荷重を適時調整することを特徴とする。
【0012】
本発明の真空圧密管理システムは、前記計測項目に、前記軟弱地盤における間隙水の揚水量と真空圧とを含み、前記圧密荷重調整部では、揚水量もしくは真空圧を増減し圧密荷重を調整することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の地盤改良工事の品質管理方法は、本発明の真空圧密管理システムを用いて、真空圧密工法により軟弱地盤の強度増加を図る地盤改良工事の品質管理を行う、真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法において、前記軟弱地盤の沈下量を経時変化させて目標最終沈下量に到達させるための指標となる、目標沈下曲線を作成する工程と、前記軟弱地盤に圧密荷重を作用させ、管理時刻に前記計測項目の計測を行う工程と、前記計測項目のうちの沈下量の計測値と前記目標沈下曲線とに基づいて圧密荷重を調整し、調整後の前記軟弱地盤の沈下量が前記目標沈下曲線に沿って経時変化するよう制御する工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の地盤改良工事の品質管理方法は、本発明の真空圧密管理システムを用いて、真空圧密工法により軟弱地盤の強度増加を図る地盤改良工事の品質管理を行う、真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法において、軟弱地盤を目標最終沈下量ごとの区画に区分けする工程と、前記区画ごとで、前記軟弱地盤の沈下量を経時変化させて目標最終沈下量に到達させるための指標となる、目標沈下曲線を作成する工程と、前記区画ごとに圧密荷重を作用させ、管理時刻に前記計測項目の計測を行う工程と、前記区画ごとで、前記目標沈下曲線及び沈下量の計測値と、隣接する区画における沈下量の計測値とに基づいて圧密荷重を調整し、調整後の前記軟弱地盤の沈下量が前記目標沈下曲線に沿って経時変化するよう制御する工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の真空圧密管理システム及び地盤改良工事の品質管理方法によれば、地盤改良工事中に計測される計測項目を真空圧密管理システムで集約管理できるとともに、この計測項目に基づいて、調整した圧密荷重を軟弱地盤に作用させて沈下量を制御することができる。これにより、効率よく軟弱地盤の強度増加を図りつつ、高品質な改良地盤を構築することが可能となる。
【0016】
また、目標最終沈下量を、改良後の敷地用途に要求される地盤強度に基づいて設定すれば、改良後に敷地用途に応じて構造物を構築したことに起因して、改良後の地盤に生じる残留沈下を最小限に抑制することが可能となる。また、改良対象領域を過剰に圧密促進させることもないため、真空ポンプや揚水ポンプ等を含む諸設備の運転費等を低減できるなど工費削減に寄与できる。また、無駄な覆土工を削除できるなど、地盤改良工事の合理化を図ることが可能となる。
【0017】
また、施工対象領域が広域にわたり、改良後の敷地内で用途の異なる領域が混在する場合には、施工対象領域を将来の敷地用途で区分けし、区画ごとでの目標最終沈下量を、改良後の敷地用途に要求される地盤強度に基づいて設定できる。これにより、敷地用途に応じた構造物を構築したこよる残留沈下に起因して、将来的に構造物間で不同沈下が発生する現象を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、品質管理に用いる計測項目の計測値に基づいて調整した圧密荷重を軟弱地盤に作用させて沈下量を制御するため、経済的かつ効率よく軟弱地盤の強度増加を図りつつ、高品質な改良地盤を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における真空圧密管理システムの概略を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における施工対象領域を区割りして真空圧密工法を実施する様子を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法のフローを示す図である。
図4】本発明の実施の形態における真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法の事前準備のフローを示す図である。
図5】本発明の実施の形態における圧密荷重の調整方法の概念を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における真空圧密工法により施工対象領域が沈下した様子を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における施工対象領域を区割りして真空圧密工法を実施する際のフローを示す図である。
図8】本発明の実施の形態における施工対象領域を区割りして真空圧密工法を実施した際の、各区画が沈下する様子を示す図である。
図9】本発明の実施の形態における施工対象領域を区割りして真空圧密工法を実施した際の、圧密荷重の調整方法の概念を示す図である。
図10】本発明の実施の形態における施工対象領域を区割りして真空圧密工法を実施する際の補助工法を示す図である。
図11】本発明の実施の形態における鉛直ドレーンを用いた真空圧密工法を事例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態における土壌排水装置が複数の集水層を有する場合の事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理を行うためのシステム及び方法であって、軟弱地盤に設定した施工対象領域に所望の地盤強度を発現させるべくあらかじめ目標最終沈下量を設定し、この目標最終沈下量を満足するよう圧密荷重を制御するものである。
【0021】
本実施の形態では、後述する土壌排水装置を用いた真空圧密工法を事例に挙げ、真空圧密管理システム及び真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法の詳細を、以下に図1図12を参照しつつ説明する。
【0022】
図1で示すように、軟弱地盤Gに設定された施工対象領域10には、土壌排水装置1と、施工中の品質管理を行う際に必要となる計測項目を計測するための計測装置200が、適宜の位置に配置されている。また、計測装置200は、真空圧密制御装置100とともに真空圧密管理システム300を構成している。
【0023】
<土壌排水装置>
土壌排水装置1は、軟弱地盤G中に圧密荷重Pを作用させて間隙水及び空気を排出する装置であり、間隙水を集水する集水層2と、集水層2を介して軟弱地盤Gに負圧を作用させる負圧作用設備3と、を備えている。
【0024】
集水層2は、良質な砂材もしくは礫を含む砂材を用いた透水性の高い敷砂であるサンドマットを採用しているが、高い透水性能を有し地盤上で面状に敷設できるものであればいずれを用いてもよい。例えば、水平ドレーン材、立体網状体、グラベルマット、サンドマットと透水シートを組み合わせたもの等であってもよい。
【0025】
負圧作用設備3は、軟弱地盤G中に立設される貯水槽31と、貯水槽31の側壁に設けられる連通部32と、貯水槽31内を減圧する減圧装置33と、貯水槽31内に貯留した間隙水を排出する排水装置34とを備えている。
【0026】
貯水槽31は、水密性及び気密性を有する円筒状の容器であり、その下端部近傍の周壁に連通部32が設けられている。貯水槽31は、密閉可能に構成されていれば、その形状や構造はいずれであってもよい。また、連通部32は、集水層2に埋設される高さ位置に設けられており、貯水槽31の内空部と集水層2とを連通させている。なお、連通部32は、例えばストレーナーを用いるなど、水分及び空気を透過するものの土砂等の流入を抑制できる構造であれば、いずれを採用してもよい。
【0027】
減圧装置33は、貯水槽31に一端が挿入された排気管331と、排気管331の他端が接続された真空ポンプ332とを備えている。これらは、真空ポンプ332を稼働させることにより、排気管331を介して貯水槽31内に一次貯留された空気を排気し減圧する。排水装置34は、一端が貯水槽31内に挿入された揚水管341と、貯水槽31内で揚水管341に接続された揚水ポンプ342とを備えている。これにより、揚水ポンプ342を稼働させることで、貯水槽31中に一次貯留された貯留水を揚水することができる。
【0028】
このような構成の土壌排水装置1によれば、減圧装置33の真空ポンプ332を稼働して貯水槽31内を減圧することで、連通部32からこれらと対向する集水層2を介して、その上方に積層された軟弱地盤Gに負圧を作用させることができる。また、排水装置34の揚水ポンプ342の稼働によっても、同じく軟弱地盤Gに負圧を作用させることができる。
【0029】
つまり、真空ポンプ332の稼働によって軟弱地盤Gに作用した負圧によりに、集水層2を介して貯水槽31に強制的に吸引・排水された軟弱地盤G中の間隙水を、排水装置34の揚水ポンプ342を介して揚水する。すると、連通部32からこれらと対向する集水層2を介して、その上方に積層された軟弱地盤Gに負圧が作用することとなる。
【0030】
したがって、土壌排水装置1では、減圧装置33の真空ポンプ332を作動させた際の負圧と、貯水槽31内の貯留水位Wの設定(揚水ポンプ342を作動させた際の揚水量の調整)の両者によって、施工対象領域10に作用させる圧密荷重Pを調整することができる。このため、図示は省略するが、減圧装置33には真空ポンプ332を作動させた際の圧力計が備えられている。また、同じく図示は省略するが、排水装置34には、排出した間隙水の揚水量を計測する流量計が、貯水槽31内の貯留水位Wを計測する水位計がそれぞれ備えられている。
【0031】
なお、真空ポンプ332を作動させた際の負圧と貯水槽31内の貯留水位Wは、上記のとおり運転管理に係る計測項目であり、間隙水の排出量は沈下管理に係る計測項目である。したがって、これらを計測する減圧装置33に設ける圧力計、排水装置34に設ける流量計及び水位計はいずれも、後述する計測装置200に含まれる。
【0032】
≪≪地盤改良工事の品質管理方法≫≫
上記の土壌排水装置1を利用して地盤改良工事が実施される施工対象領域10は、改良後の敷地用途が既に決定されている場合が多く、超高層建物等の重量構造物が構築される、道路等の軽量構造物が構築される、地下構造物が構築される、もしくは不同沈下が許容されるような敷地活用がされる等、その用途は様々である。したがって、改良後に施工対象領域10に要求される地盤強度もその敷地用途により異なる。
【0033】
そこで、真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法では、施工対象領域10に対して、改良後の敷地用途に見合った強度を発現させるよう目標最終沈下量Sfを設定する。そして、この目標最終沈下量Sfを満足するよう圧密荷重Pを適時調整することで、施工対象領域10の沈下量を制御することとした。
【0034】
こうすると、改良後に敷地用途に応じて構造物等を構築したことに起因して、改良後の地盤に生じる残留沈下を最小限に抑制することが可能となる。また、施工対象領域10を過剰に圧密促進させることもないため、真空ポンプ332や揚水ポンプ342等を含む、減圧装置33や排水装置34の運転費を低減できるなど工費削減に寄与できる。また、無駄な覆土工を削除できるなど、地盤改良工事全体の合理化を図ることが可能となる。
【0035】
また、施工対象領域10が広域にわたることにより、改良後の敷地内で用途の異なる領域が混在する場合には、図2(a)(b)で示すように、施工対象領域10を複数の区画(区画10A~区画10D)に区分けする。そのうえで区画ごとに、目標最終沈下量Sfを改良後の敷地用途に要求される地盤強度に基づいて設定し、地盤改良工事を行うこととした。
【0036】
こうすると、敷地用途に応じた構造物を構築したこよる残留沈下に起因して、将来的に構造物間で不同沈下が発生する現象を抑制することが可能となる。なお、区画ごとに異なる目標最終沈下量Sfを設定して地盤改良工事を実施する場合には、隣接する区画における施工状況の影響を各区画が受ける。このため、圧密荷重Pを調整する際には、区画ごとで設定した目標最終沈下量Sfに加えて、隣接する区画の沈下量の計測値を監視しつつ適時に調整する。
【0037】
≪真空圧密管理システム≫
上記のような品質管理方法を実施するにあたっては、以下に説明する真空圧密管理システム300を用いる。真空圧密管理システム300は、図1で示すように、計測装置200と、真空圧密制御装置100とを備えている。
【0038】
<計測装置>
計測装置200は、前述した、運転管理に係る計測項目である真空ポンプ332による負圧及び貯水槽31内の貯留水位Wを計測するための、減圧装置33に設ける圧力計及び排水装置34に設ける水位計と、沈下管理に係る計測項目である間隙水の排出量を計測するための排水装置34に設ける流量計に加えて、図1で示すような、沈下量計測部201及び水圧計測部202を備えている。
【0039】
沈下量計測部201は、施工対象領域10における地表面の沈下量を計測するものであり、沈下板(トータルステーションのターゲットとなりうるもの)や水盛式沈下計等が採用できる。また、水圧計測部202は、軟弱地盤G内の圧密荷重Pを確認するべく間隙水圧を計測するものであり、間隙水圧計が採用される。なお、沈下板や間隙水圧計は、真空圧密工法で一般に採用されている計測機器を使用することができる。また、これら沈下量及び間隙水圧はいずれも、沈下管理に係る計測項目に含まれる。
【0040】
<真空圧密制御装置>
真空圧密制御装置100は、図1(b)で示すように、入力部110、出力部120、記憶部130、及びCPU、GPU、ROM、RAM及びハードウェアインタフェース等の演算処理部140を備える、コンピュータシステムにより構成されている。
【0041】
入力部110は、上記の計測装置200をはじめ、キーボードやマウス等の入力装置から入力される情報を、真空圧密制御装置100に供給する。また、出力部120は、入力部110から供給された情報や記憶部130に格納された情報等を、ディスプレーやプリンタ等の出力装置や、土壌排水装置1を構成する減圧装置33及び排水装置34に出力する。そして、演算処理部140のCPUが所定のプログラムを実行することにより、目標曲線作成部141、圧密荷重調整部142、区画間調整部143の機能が実現される。
【0042】
≪真空圧密工法による地盤改良工事の品質管理方法≫
上述する真空圧密管理システム300を用いた地盤改良工事の品質管理方法を、真空圧密制御装置100の詳細と併せて、図3及び図4のフローで示す手順に沿って以下に説明する。
【0043】
≪≪施工対象領域を区割りしない場合の地盤改良工事の品質管理方法≫≫
<事前準備>
図1で示すような、区割りをしない施工対象領域10に対して真空圧密工法を実施するにあたり、事前準備として、施工対象領域10の目標最終沈下量Sfの設定と、目標最終沈下量Sfを達成するための目標沈下曲線TCの作成、及び施工対象領域10に作用させる圧密荷重Pの設定を行う。
【0044】
具体的には、真空圧密制御装置100の演算処理部140が目標曲線作成部141の指令を受け、図4のフローで示す手順に従って、上記の目標最終沈下量Sfの設定、目標沈下曲線TCの作成、及び圧密荷重Pの設定を行い、真空圧密制御装置100の記憶部130に格納する。
【0045】
その手順は、まず、施工対象領域10の目標最終沈下量Sfを、改良後の敷地用途に要求される地盤強度や地盤条件、その他真空圧密工法を実施する際一般に検討される事項を、適宜反映させ設定する。次に、目標最終沈下量Sfと土壌排水装置1の運転予定期間等に基づいて、施工対象地盤に作用させる圧密荷重Pを設定する。また、土壌排水装置1の運転予定期間の終了時に目標最終沈下量Sfまで沈下させるための沈下曲線(沈下量の経時変化を示す曲線)を推定する。
【0046】
推定した沈下曲線の妥当性を検証し最適なものを、図5で示すように、施工対象領域10の目標沈下曲線TCとして決定する。さらに、施工対象領域10に圧密荷重Pを作用させるべく、減圧装置33の真空ポンプ332に設定する負圧、及び貯水槽31内の貯留水位Wを算定する。
【0047】
上記の作業と並行してもしくは前後して、図1で示すように、施工対象領域10に土壌排水装置1を中心として、所定の位置に計測装置200を設置する。
【0048】
なお、土壌排水装置1を用いた真空圧密工法では、前述したように、貯水槽31の連通部32とこれに対向する集水層2を介して、軟弱地盤Gに圧密荷重Pを作用させる。このため、図6(b)で示すように、貯水槽31周りに形成される圧密荷重Pを作用させた際の影響範囲Rのうち、貯水槽31の近傍では沈下量が大きく、また貯水槽31から離間するに伴い沈下量が減少する傾向にある。
【0049】
したがって、計測装置200を設置するにあたり、沈下量計測部201及び水圧計測部202は、図6(b)で示すように、施工対象領域10の平面全体を網羅するように配置するとよい。
【0050】
<圧密荷重の載荷>
これらの事前準備が終了したところで、施工対象領域10に対して圧密荷重Pの載荷を開始する。
【0051】
土壌排水装置1における貯水槽31内を事前準備で算定した貯留水位Wを設定するとともに、減圧装置33の真空ポンプ332に事前準備で算定した負圧を設定する。これらの設定操作は、現場作業員が、減圧装置33及び排水装置34を直接操作して行ってもよいし、土壌排水装置1と無線もしくは有線で接続した真空圧密制御装置100により操作してもよい。
【0052】
真空圧密制御装置100により設定する場合には、真空圧密制御装置100の演算処理部140が目標曲線作成部141の指令を受け、減圧装置33の真空ポンプ332に設定する真空圧と、貯水槽31内の貯留水位Wを算定したのち、これらの算定結果を記憶部130に格納する。また、出力部120を介して土壌排水装置1における減圧装置33及び排水装置34に出力すればよい。
【0053】
施工対象領域10に作用する圧密荷重Pが設定されたところで、土壌排水装置1の運転を開始し、圧密荷重Pを作用させる。すると、施工対象領域10に作用する圧密荷重Pにより軟弱地盤G中の間隙水及び空気が、土壌排水装置1の集水層2及び貯水槽31を介して外部に排出され、これに伴って施工対象領域10の地表面は、図6(a)で示すように徐々に沈下していく。
【0054】
このように経時的に沈下する施工対象領域10の地表面は、複数の沈下量計測部201各々によって、あらかじめ設定した管理時刻ごと(例えば、1週間ごと等)に計測される。そして、これら複数の沈下量計測部201各々で計測された沈下量Si(i=沈下量計測部201各々に付された個体番号)は、時間情報との関連付けが行われたうえで、真空圧密制御装置100の入力部110を介して記憶部130に格納される。
【0055】
真空圧密制御装置100に、管理時刻における施工対象領域10の沈下量Siが入力されると、真空圧密制御装置100の演算処理部140が圧密荷重調整部142の指令を受け、沈下量Siと施工対象領域10の目標沈下曲線TCとを比較し、圧密荷重Pの調整の必要性を検証する。検証した結果、調整の必要ありと判定した場合には、調整量を算定し、また、調整の必要なしと判定した場合には、調整量を0とし、時間情報とともに記憶部130に格納する。また、出力部120を介して土壌排水装置1の減圧装置33及び排水装置34に出力する。
【0056】
ここで、沈下量Siは、施工対象領域10に設置した沈下量計測部201の数量iに相当する計測値が出力されることから、検証にあたって、施工対象領域10の全体の沈下傾向を表す代表値Stを算出するとよい。なお、代表値Stは、複数の沈下量計測部201各々の計測値である沈下量Siの平均値や中央値もしくは最頻値等いずれを採用してもよい。または、代表値Stではなく、他の統計処理により算出した統計値を採用してもよい。
【0057】
圧密荷重Pの調整の必要性を確認するための検証は、目標沈下曲線TCに基づいて行う。その方法はいずれでもよいが、例えば図5で示すような、施工対象領域10の目標沈下曲線TCを表した沈下量と時間との関係を示すグラフに、管理時刻の沈下量の代表値Stをプロットする。
【0058】
例えば図5では、管理時刻t1に計測した沈下量の代表値Stがグラフ上にプロットされている。そのうえで、圧密荷重Pの調整を行わない場合の沈下曲線を予測し、予測した沈下曲線と目標沈下曲線TCとの乖離が大きい場合には、圧密荷重Pの調整が必要と判定する。なお、予測した沈下曲線と目標沈下曲線TCとの乖離は、例えば、あらかじめ許容値を設定して記憶部130に格納しておき、予測した沈下曲線がこの許容値に収まるか否かにより、圧密荷重Pの調整について必要性の有無を判定するとよい。
【0059】
調整の必要ありと判定した場合には、土壌排水装置1における運転予定期間の残り期間で、施工対象領域10における沈下量の代表値Stが目標沈下曲線TCに沿って経時的に変化するよう、圧密荷重Pを調整する。圧密荷重Pの調整は、減圧装置33の真空ポンプ332に設定する真空圧及び貯水槽31内の貯留水位Wのいずれか、もしくは両方を調整することにより行う。なお、沈下量の代表値Stが、目標最終沈下量Sfを超えている場合には、圧密荷重Pが0となるように調整する。
【0060】
上記の作業を、土壌排水装置1における運転予定期間の終了日が到来するまで、管理時刻が到来するごとに繰り返す。これにより、土壌排水装置1の運転終了後には、図5で示すように、沈下量の代表値Stをプロットした沈下曲線(調整後)が目標沈下曲線TCにほぼ沿った状態となり、施工対象領域10には、敷地用途に要求される地盤強度を有する高品質な改良地盤が構築される。
【0061】
なお、本実施の形態では。管理時刻を1週間ごととしたが、適時の間隔で設定すればよく、また、必ずしも一定の間隔ごとでなくてもよい。また、管理時刻には、計測装置200に含まれる他の計測機器による計測も併せて行い、取得した計測値は、記憶部130に格納しておく。こうすると、地盤改良工事中に計測される計測項目を真空圧密制御装置100で集約管理できるため、施工管理を合理的に実施することが可能となるだけでなく、これら集約管理し蓄積した計測値から、改良後の地盤に生じる将来の不同沈下を予測することも可能となる。
【0062】
≪≪施工対象領域を区割りした場合の地盤改良工事の品質管理方法≫≫
次に、図2(a)(b)で示すように、施工対象領域10を複数の区画に区割りし、区画(区画10A~区画10D)ごとに管理する場合を、図7のフロー図に沿って説明する。
【0063】
<事前準備>
施工対象領域10を複数の区画に区割りし、各区画で前述した図4のフロー図に従って、施工対象領域10の目標最終沈下量Sf、目標最終沈下量Sfを達成するための目標沈下曲線TC、及び施工対象領域10に作用させる圧密荷重Pを設定し、事前準備を行う。
【0064】
このとき、例えば、改良後の敷地用途が同一であるが、施工対象領域10が広域であるために施工対象領域10を区分けした場合は、目標最終沈下量Sf、目標最終沈下量Sfを達成するための目標沈下曲線TC、圧密荷重Pは、各区画(区画10A~区画10D)で同一となる。
【0065】
一方、施工対象領域10内で、改良後の敷地用途が異なる領域が存在するため、敷地用途に対応させて複数の区画に区割りした場合には、各区画(区画10A~区画10D)で異なる目標最終沈下量Sf、目標最終沈下量Sfを達成するための目標沈下曲線TC、圧密荷重Pが設定される。
【0066】
<圧密荷重の載荷>
これらの事前準備が終了したところで、施工対象領域10内の区画(区画10A~区画10D)各々に対して、設定した圧密荷重Pの載荷を開始する。なお、各区画で実施する載荷手順は、設定した圧密荷重Pが、区画ごとで同一の場合及び異なる場合のいずれも、前述した区割りしない場合と同様である。
【0067】
つまり、土壌排水装置1の運転を開始したのち、例えば図8で示すように、区画10A及び10Bの地表面は徐々に沈下する。したがって、複数の沈下量計測部201各々によって、あらかじめ設定した管理時刻ごとに沈下量Si(i=沈下量計測部201各々に付された個体番号)計測し、時間情報との関連付けが行われたうえで、真空圧密制御装置100の入力部110を介して記憶部130に格納する。
【0068】
<隣り合う区画の負圧の影響を考慮した区画間調整>
図2(a)(b)で示すように、区画(区画10A~区画10D)ごとに設置された土壌排水装置1は、圧密荷重Pを作用させた際の影響範囲Rが重複するように配置されている。このため、各区画は、隣接する区画に作用する圧密荷重Pの影響を受けやすい。
【0069】
そこで、例えば区画10Aを例にとると、区画10Aの沈下量Siが記憶部130に格納される。すると、真空圧密制御装置100の演算処理部140が区画間調整部143の指令を受け、区画10Aの計測値である沈下量Siと目標沈下曲線TCに加えて、区画10B~10Dの沈下量Siに基づいて、区画10Aが、隣接する区画10B~10Dの影響を受けているか否かを検証する。
【0070】
なお、検証の際には前述したように、複数の沈下量計測部201各々で計測された沈下量Si(i=沈下量計測部201各々に付された個体番号)をそのまま用いてもよいが、これらから沈下量の代表値Stを算定し、この沈下量の代表値Stを採用すると良い。
【0071】
そして、区画10Aが、区画10B~10Dの影響を受けていると判定した場合は、これらの影響を考慮して圧密荷重Pを調整し、時間情報とともに記憶部130に格納する。また、出力部120を介して土壌排水装置1の減圧装置33及び排水装置34に出力する。そして、土壌排水装置1の運転を継続する。
【0072】
隣り合う区画の影響を受けているか否かは、例えば、次の手順により判定することができる。区画10Aを事例として説明すると、図9のグラフには、区画10Aの目標沈下曲線TCAが表され、また、管理時刻t1に計測した沈下量の代表値SAtがプロットされている。また、隣接する区画10B~10Dの目標沈下曲線TCBCDが表され、また、管理時刻t1に計測した沈下量の代表値SBt~SDtがプロットされている。ここで、区画10B~10Dは、ともに目標沈下曲線TCBCDが同一であり、沈下量の代表値SBt~SDtも同一であったと仮定する。
【0073】
このような場合において、区画10Aは、沈下量の代表値SAtから予測した沈下曲線と目標沈下曲線TCAとの乖離が大きく、また設計より過剰に沈下している様子がわかる。一方、区画10Aと隣接する区画10B~10Dは、沈下量の代表値SBt~SDtから予測した沈下曲線が、目標沈下曲線TCBCDより上方に位置し、設計より沈下量が少ない様子がわかる。
【0074】
そして、区画10Aの沈下量の代表値SAtから予測した沈下曲線は、区画10B~10Dの沈下量の代表値SBt~SDtから予測した沈下曲線と比較して、その沈下量が大きい。してみると、区画10Aの間隙水及び空気は、区画10A内に設置した土壌排水装置1からの排出のみでなく、区画10B~10Dへ流亡している可能性がある。したがって、各区画(区画10A~区画10D)は互いに影響を受けているものと判定できる。
【0075】
なお、例えば、区画10Aにおいて、沈下量の代表値SAtから予測した沈下曲線と目標沈下曲線TCAとの乖離が大きいものの、区画10B~10Dは、沈下量の代表値SBt~SDtから予測した沈下曲線が目標沈下曲線TCBCDに対して、ほぼ沿って推移している。このような場合には、各区画(区画10A~区画10D)は互いに影響を受けていないものと判定できる。したがって、区画10Aは圧密荷重Pについて、区画間調整は不要であり、区画10A内で調整を行えばよい。
【0076】
区画10Aの圧密荷重Pを調整する場合には、まず、土壌排水装置1における運転予定期間の残り期間で、施工対象領域10における沈下量の代表値SAtが目標沈下曲線TCAに沿って経時的に変化するよう、圧密荷重Pを低減する。さらに、間隙水及び空気が、区画10B~10Dに流亡することを考慮し、前記低減させる調整をした圧密荷重Pを、さらに低減させる。
【0077】
一方で、区画10B~区画10Dは、区画10Aの圧密荷重Pが管理時刻t1以前よりも低減されたことを鑑みると、圧密荷重の調整を行わなかった場合には沈下量が減少し、土壌排水装置1における運転予定期間の残り期間で、目標沈下曲線TCBCDとの間に大きい乖離を生じる可能性がある。そこで、区画10B~10Dでは、区画10Aの調整に対応させて、圧密荷重Pを増大させる調整を図る。
【0078】
こうすると、土壌排水装置1の運転予定期間終了後には、図9で示すように各区画(区画10A~区画10D)の調整後の沈下曲線は、いずれも、目標沈下曲線TCAもしくは目標沈下曲線TCBCDにほぼ沿った状態となり、施工対象領域10には、区画ごとで敷地用途に要求される地盤強度を有する高品質な改良地盤が構築される。
【0079】
一方、区画10Aが、区画10B及び10Cの影響を受けていないと判定した場合は、沈下量の代表値SAtを圧密荷重調整部142に供給する。そして、施工対象領域10を区割りしない場合と同様の手順で、沈下量SAtと区画Aの目標沈下曲線TCAとを比較し、圧密荷重Pの調整の必要性を検証する。
【0080】
検証した結果、調整の必要ありと判定した場合には、調整量を算定し、また、調整の必要なしと判定した場合には、調整量を0とし、時間情報とともに記憶部130に格納する。また、出力部120を介して土壌排水装置1の減圧装置33及び排水装置34に出力する。そして、土壌排水装置1の運転を継続すればよい。
【0081】
上記の真空圧密管理システム及び地盤改良工事の品質管理方法によれば、効率よく軟弱地盤の強度増加を図りつつ、高品質な改良地盤を構築することが可能となる。
【0082】
なお、施工対象領域10を区割りした区画について、上述するような区画間調整が困難な場合には、図10で示すように、区画ごとの境界部に遮水壁4を設けるなどの対策工を実施してもよい。こうすると、遮水壁4で各区画(区画10A~区画10D)を分離できるため、互いに圧密荷重Pを作用させた際の影響を抑止できる。
【0083】
本発明の真空圧密管理システム300及び地盤改良工事の品質管理方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、本実施の形態では、真空圧密工法に土壌排水装置1を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、図11(a)(b)で示すような、鉛直ドレーン12を採用した排水装置11を採用してもよい。
【0085】
この場合には、下端部に閉塞キャップを設けた鉛直ドレーン12を軟弱地盤G中に間隔を設けて複数埋設する。また、埋設した鉛直ドレーン12の上端部どうしを排水パイプ13で連結する。そして、排水パイプ13に真空ポンプ14を接続し、真空ポンプ14を作動させることにより排水パイプ13を介して軟弱地盤G内に圧密荷重Pを作用させ、間隙水及び空気を排出する。圧密荷重Pは、真空ポンプ14に設ける圧力計により計測する負圧で調整することが可能である。
【0086】
また、本実施の形態では、土壌排水装置1に1層の集水層2を設け、その上面に軟弱地盤Gを堆積させた形状のものを採用したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図12で示すように、集水層2と軟弱地盤Gとを深度方向に交互に積層した構成としてもよい。
【0087】
図12の土壌排水装置1は、貯水槽31の側面であって集水層2と当接する位置にそれぞれ連通部32が設けられて、貯水槽31の内空部と複数の集水層2各々とが連通されている。そして、複数の集水層2をすべて利用して、軟弱地盤Gの圧密荷重を作用させて間隙水及び空気を排出する。すると、堆積された軟弱地盤Gに対して高さ方向に均一に圧密荷重Pを作用させて、効率よく軟弱地盤の強度増加を図ることが可能となる。
【0088】
もしくは、連通部32をそれぞれ開閉自在な構成とし、複数の集水層2のうち、1層もしくは複数層を選択的に利用して、軟弱地盤Gの間隙水及び空気を排出できるようにしてもよい。こうすると、施工対象領域10の所望の深さ位置に対して圧密荷重を作用させることができる。また、施工対象領域10を区割りした際には、区画ごとで異なる深さ位置に圧密荷重Pを作用させることもできる。これにより、軟弱地盤Gの性状や要求される地盤強度等に応じて、区画ごとで最適な方法で圧密荷重を作用させることができ、施工性を大幅に向上できるだけでなく、高品質な改良地盤を構築できる。
【0089】
なお、土壌排水装置1について、軟弱地盤Gの間隙水及び空気を排出させるに際し、複数の集水層2を選択的に利用可能とする構成は、必ずしも開閉自在な連通部32に限定されるものではない。その詳細は、特願2020-047319号に譲る。
【0090】
また、図12のように、軟弱地盤Gを複数層に分割する際には、分割した層ごとに計測装置200の沈下量計測部201と水圧計測部202を設けると良い。こうすると、軟弱地盤Gにおける各層ごとの上面沈下量と圧密荷重Pを確認することができる。これらは、計測値を取得するごとに沈下管理に係る計測項目として、真空圧密制御装置100の記憶部130に格納し集約管理することもできる。
【0091】
さらに、施工対象領域10を区割りした場合には、図2(a)(b)で示すように、各区画(区画10A~区画10D)に設置された土壌排水装置1ごとで圧密荷重Pを作用させる。このため、影響範囲Rが重複する領域に集中して、不同沈下を生じる恐れがある。したがって、隣り合う区画間で圧密荷重Pの調整を図る際には、これら重複する領域近傍に生じる不同沈下の大きさも考慮すると良い。
【符号の説明】
【0092】
1 土壌排水装置
2 集水層
3 負圧作用設備
31 貯水槽
32 連通部
33 減圧装置
331 排気管
332 真空ポンプ
34 排水装置
341 揚水管
342 揚水ポンプ
4 遮水壁
10 施工対象領域
11 排水装置
12 鉛直ドレーン
13 排水パイプ
14 真空ポンプ
100 真空圧密制御装置
110 入力部
120 出力部
130 記憶部
140 演算処理部
141 目標曲線作成部
142 圧密荷重調整部
143 区画間調整部
200 計測装置
201 沈下量計測部
202 水圧計測部
300 真空圧密管理システム

G 軟弱地盤
R 影響範囲
W 貯留水位
TC 目標沈下曲線
Sf 目標最終沈下量
Si 沈下量
St 沈下量の代表値
P 圧密荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12