IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図1
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図2
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図3
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図4
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図5
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図6
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図7
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図8
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図9
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図10
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図11
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図12
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図13
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図14
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図15
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図16
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図17
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図18
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/32 20060101AFI20240312BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20240312BHJP
   H01T 13/54 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01T13/32
H01T13/20 B
H01T13/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020100406
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021197212
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-130302(JP,A)
【文献】特開2013-143371(JP,A)
【文献】特開2014-116181(JP,A)
【文献】特開2021-170475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/32
H01T 13/20
H01T 13/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出する中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの内周側において、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室を外部に連通させる噴孔(51)が設けられており、
上記接地電極は、上記放電ギャップに面する放電側端部(61)と、上記ハウジングに接合された接合側端部(62)とを有し、
上記放電側端部が、上記接合側端部よりも、軸方向(Z)の基端側に配置されており、
上記接地電極の上記放電側端部は、上記中心電極に対してプラグ径方向から対向配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記接地電極は、上記接合側端部と上記放電側端部とを軸方向に繋ぐ中継部(63)を有し、上記接合側端部は、上記ハウジングの先端面に接合され、上記中継部は、上記ハウジングの内周面に沿って配置されている、請求項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出する中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの内周側において、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室を外部に連通させる噴孔(51)が設けられており、
上記接地電極は、上記放電ギャップに面する放電側端部(61)と、上記ハウジングに接合された接合側端部(62)とを有し、
上記放電側端部が、上記接合側端部よりも、軸方向(Z)の基端側に配置されており、
上記接地電極は、上記接合側端部と上記放電側端部とを軸方向に繋ぐ中継部(63)を有し、上記接合側端部は、上記ハウジングの先端面に接合され、上記中継部は、上記ハウジングの内周面に沿って配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項4】
上記中継部は、上記ハウジングの内周面に向って突出する突起部(631)を有する、請求項2又は3に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
上記プラグカバーは、上記副燃焼室にスワール流が形成されるように、上記噴孔を形成してなり、上記中継部の内周側面は、上記スワール流の上流側から下流側に向うほどプラグ中心軸側に向うように傾斜している、請求項2~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
上記中心電極は、上記放電ギャップ側に、平坦面状の平坦放電面(41)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングの先端部にプラグカバーを設けて副燃焼室を形成したスパークプラグがある。かかるスパークプラグにおいて、放電ギャップをハウジングの先端よりも基端側に形成した構成が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたスパークプラグは、放電ギャップを上記のような位置に設けることで、ハウジングからプラグカバーの先端までの距離を小さくすることが可能となり、プラグカバーの熱引き性を向上させることができる。このような構成を実現すべく、上記スパークプラグにおいては、ハウジングの側壁に設けた貫通孔に、接地電極を貫通させて取り付けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102017221517号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたスパークプラグにおいては、ハウジングの側壁に貫通孔を設けると共に、貫通孔に接地電極を貫通させて接合する必要がある。それゆえ、スパークプラグの製造工程が複雑となる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、製造工程の簡素化を可能とする、内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出する中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの内周側において、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室を外部に連通させる噴孔(51)が設けられており、
上記接地電極は、上記放電ギャップに面する放電側端部(61)と、上記ハウジングに接合された接合側端部(62)とを有し、
上記放電側端部が、上記接合側端部よりも、軸方向(Z)の基端側に配置されており、
上記接地電極の上記放電側端部は、上記中心電極に対してプラグ径方向から対向配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
本発明の他の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出する中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの内周側において、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室を外部に連通させる噴孔(51)が設けられており、
上記接地電極は、上記放電ギャップに面する放電側端部(61)と、上記ハウジングに接合された接合側端部(62)とを有し、
上記放電側端部が、上記接合側端部よりも、軸方向(Z)の基端側に配置されており、
上記接地電極は、上記接合側端部と上記放電側端部とを軸方向に繋ぐ中継部(63)を有し、上記接合側端部は、上記ハウジングの先端面に接合され、上記中継部は、上記ハウジングの内周面に沿って配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記内燃機関用のスパークプラグにおいて、接地電極は、上記放電側端部が上記接合側端部よりも、軸方向の基端側に配置されている。それゆえ、ハウジングの先端部又はその近傍に、接地電極の接合側端部を接合しつつ、放電ギャップをハウジングの先端部よりも基端側に形成することができる。その結果、ハウジングの内周側に放電ギャップを備えたスパークプラグの製造工程を、簡素化することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、製造工程の簡素化を可能とする、内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
図2図1のII-II線矢視断面図。
図3】実施形態1における、内燃機関に取り付けられたスパークプラグの正面図。
図4】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の正面図。
図5】実施形態1における、気流と放電の様子を示す断面説明図。
図6】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
図7】実施形態2における、接地電極の一例の断面図。
図8】実施形態2の変形形態における、ハウジングに取り付けられた接地電極の断面図。
図9】実施形態3における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
図10図9のX-X線矢視断面図。
図11】実施形態4における、先端側から見たスパークプラグの説明図。
図12】実施形態4における、接地電極の断面説明図であって、図9のXII-XII断面相当の図。
図13】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
図14】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の正面図。
図15】実施形態6における、他のスパークプラグの先端部付近の正面図。
図16】実施形態7における、ハウジングに対する接地電極の取り付け状態を示す断面図。
図17】実施形態8における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
図18】実施形態9における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
図19】実施形態10における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、図1図5を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。
【0011】
中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。図1図2に示すごとく、接地電極6は、ハウジング2の内周側において、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0012】
プラグカバー5には、副燃焼室50を外部に連通させる噴孔51が設けられている。接地電極6は、放電ギャップGに面する放電側端部61と、ハウジング2に接合された接合側端部62とを有する。図1に示すごとく、放電側端部61が、接合側端部62よりも、軸方向Zの基端側に配置されている。
【0013】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。そして、図3に示すごとく、スパークプラグ1の軸方向Zの一端を、内燃機関の燃焼室に配置する。この内燃機関の燃焼室を、上述の「副燃焼室50」に対して、「主燃焼室11」という。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室11に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。
【0014】
図1に示すごとく、プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室11と区画している。本形態において、プラグカバー5には、複数の噴孔51が形成されている。各噴孔51は、先端側へ向かうほど外周側へ向かうように傾斜している。副燃焼室50にて生じた火炎は、噴孔51から主燃焼室11へ噴出する。
【0015】
図1に示すごとく、接地電極6は、接合側端部62と放電側端部61とを軸方向Zに繋ぐ中継部63を有する。接合側端部62は、ハウジング2の先端面21に接合されている。中継部63は、ハウジング2の内周面22に沿って配置されている。中継部63は、軸方向Zに立設している。
【0016】
接地電極6は、例えば、ニッケル基合金からなる金属部材からなる。放電側端部61は、中継部63の基端部から軸方向Zに直交する方向に突出している。接合側端部62は、中継部63の先端部から、軸方向Zに直交する方向であって、接合側端部62と反対側へ突出している。図2に示すごとく、軸方向Zから見て、接合側端部62から放電側端部61へ向かう向きが、プラグ径方向においてプラグ中心軸に向う向きとなるように、接地電極6が取り付けられている。なお、プラグ中心軸は、スパークプラグ1の中心軸を意味し、プラグ径方向は、プラグ中心軸に直交する直線に沿った方向を意味するものとする。
【0017】
図1図4に示すごとく、接地電極6は、接合側端部62における基端側面621が、ハウジング2の先端面に面接触する状態にて接合されている。そして、接地電極6の放電側端部61は、中心電極4に対してプラグ径方向から対向配置されている。放電側端部61が、中心電極4の先端部の外周面に対向配置されている。放電側端部61と中心電極4の外周面との間に、放電ギャップGが形成されている。すなわち、放電側端部61におけるプラグ中心軸側の端面が、中心電極4の外周面に対向して、放電面を構成している。
【0018】
本形態において、接合側端部62は、プラグカバー5に設けた基端切欠部52に配置されている。上述のように、プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に接合されているが、その接合側の端縁の一部に、基端切欠部52が形成されている。この基端切欠部52とハウジング2の先端面との間に、接地電極6の接合側端部62が配置されている。接合側端部62とプラグカバー5とは、互いに溶接等にて接合されているものとすることもできる。ただし、接合側端部62は、プラグカバー5に対して接合されていない構成とすることもできる。
【0019】
このように、本形態において、接地電極6は、接合側端部62がハウジング2の先端よりも先端側に配置され、放電側端部61がハウジング2の先端よりも基端側に配置されている。これに伴い、放電ギャップGはハウジング2の先端よりも基端側に形成されている。また、中心電極4の先端は、ハウジング2の先端よりも基端側に配置されている。
【0020】
ハウジング2は、例えば低炭素鋼等の金属からなる。ハウジング2は、図1図3に示すごとく、外周面に取付ネジ部23を有する。図3に示すごとく、取付ネジ部23が内燃機関のエンジンヘッド等に設けられたプラグホール12の雌ネジ部に螺合することで、内燃機関にスパークプラグ1が取り付けられる。スパークプラグ1は、先端側の一部を主燃焼室11に露出させた状態にて、内燃機関に取り付けられる。
【0021】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1において、接地電極6は、放電側端部61が接合側端部62よりも、軸方向Zの基端側に配置されている。それゆえ、ハウジング2の先端部に接地電極6の接合側端部62を接合しつつ、放電ギャップGをハウジング2の先端部よりも基端側に形成することができる。その結果、ハウジング2の内周側に放電ギャップGを備えたスパークプラグ1の製造工程を、簡素化することができる。
【0022】
ハウジング2の先端部にプラグカバー5を設けて副燃焼室50を形成したスパークプラグ1においては、図3に示すごとく、プラグカバー5が主燃焼室11に露出する。そのため、プラグカバー5の温度が上昇しやすい。プラグカバー5の温度が上昇しすぎると、プレイグニッション等の不具合を招きやすくなるため、極力、主燃焼室11へのプラグカバー5の突出量を小さくすることが求められる。そこで、図1に示すごとく、放電ギャップGをハウジング2の内周側、すなわち、ハウジング2の先端よりも基端側に配置することで、図3に示すごとく、ハウジング2からのプラグカバー5の突出量を小さくすることが可能となる。これにより、プラグカバー5の熱がハウジング2を介してエンジンヘッドに放出されやすくなり、プラグカバー5の温度上昇を抑制しやすくなる。
【0023】
その一方で、副燃焼室50において生じた火炎を充分に成長させた後に、噴孔51から火炎を噴出させることにより、強い火炎ジェットを主燃焼室11に噴射させることができる。かかる観点から、放電ギャップGと噴孔51との間の軸方向Zの距離を大きくしたいという要請もある。かかる要請と、上述のプラグカバー5の突出量を小さくしたいという要請との双方に対応するためには、ハウジング2の先端よりも基端側に放電ギャップGを形成することが求められる。
【0024】
ところが、放電ギャップGをハウジング2の先端よりも基端側に形成する場合、ハウジング2に対する接地電極の取付工程が複雑となる。例えば、ハウジング2にプラグ径方向の貫通孔を設けて、その貫通孔に接地電極を貫通させてハウジング2に取り付けることが考えられる。しかし、かかる場合には、ハウジング2に貫通孔を形成する工程が必要になり、製造工程が複雑となる。また、取付ネジ部23が形成された位置においてハウジング2に貫通孔を設ける場合には、取付ネジ部23の一部が欠損することとなり、エンジンヘッドへのスパークプラグ1の締結状態に影響することも懸念される。
【0025】
したがって、ハウジング2の先端よりも基端側に放電ギャップGを備えたスパークプラグ1を、簡素な製造工程にて製造することが求められる。そこで、上述のように、接地電極6を、放電側端部61が接合側端部62よりも、軸方向Zの基端側に配置される構成とした。これにより、特に複雑な工程を設けることなく、接地電極6をハウジング2の先端部に接合して、ハウジング2の先端よりも基端側に放電ギャップGを形成することが容易となる。
【0026】
また、接地電極6の放電側端部61は、中心電極4に対してプラグ径方向から対向配置されている。これにより、図5に示すごとく、副燃焼室50における気流Aが、放電ギャップGにおいて生じた放電Sを引き伸ばしやすくなる。これにより、副燃焼室50における着火性を向上させ、ひいては、主燃焼室11における着火性を向上させることができる。
【0027】
例えば、図5に示すごとく、内燃機関の圧縮行程等において、噴孔51から副燃焼室50に気流が導入される。この気流Aが、副燃焼室50において、タンブル流を形成することが考えられる。つまり、一部の噴孔51から導入された後、一旦、放電ギャップGよりも基端側に向かい、さらにその後、軸方向Zの先端側へ向かう気流Aが形成されることが考えられる。この場合、中心電極4の外周面にプラグ径方向から対向する位置に、放電ギャップGを設けることで、放電ギャップGに生じた放電Sが先端側へ引き伸ばされやすくなる。そうすると、副燃焼室50において火炎が形成され、成長しやすくなる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0028】
また、図1に示すごとく、接地電極6は中継部63を有する。そして、接合側端部62がハウジング2の先端面21に接合され、中継部63がハウジング2の内周面22に沿って配置されている。これにより、一層容易かつ正確に、接地電極6をハウジング2の先端部に接合しつつ、放電側端部61をハウジング2の内周側において中心電極4に対向させることができる。そして、中継部63の軸方向Zの長さを長くすることで、より基端側に放電ギャップGを形成することも容易となる。また、中継部63がハウジング2の内周面22に沿って配置されることで、中継部63が副燃焼室50における気流や火炎成長の妨げになることを抑制することができる。
【0029】
なお、上述の図5及びこれを用いた説明においては、副燃焼室50にタンブル流が形成される場合について説明したが、副燃焼室50にスワール流(図11の矢印As参照)が形成される場合においても、本形態のスパークプラグ1は、着火性を向上させることができる。すなわち、この場合、放電ギャップGを通過する気流によって、プラグ周方向に沿って放電が引き伸ばされることとなる。
【0030】
なお、副燃焼室50にスワール流を生じさせる場合には、後述する実施形態4のように、接地電極6の中継部63の内周側面632に、図11図12に示すようなテーパ面を形成することも有効である。
一方、副燃焼室50にタンブル流を生じさせる場合には、後述する実施形態8のように、図17に示すように、一対の放電面を傾斜させることも有効である。
【0031】
以上のごとく、本形態によれば、製造工程の簡素化を可能とする、内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
【0032】
(実施形態2)
本形態は、図6に示すごとく、中継部63が、ハウジング2の内周面22に向って突出する突起部631を有する形態である。
突起部631は、軸方向Zにおいて、放電側端部61よりも先端側であり、接合側端部62よりも基端側の位置に、形成されている。突起部631は、ハウジング2の内周面22に当接している。
【0033】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0034】
本形態においては、中継部63に突起部631が設けられているため、接地電極6をハウジング2に取り付ける際、プラグ径方向の位置決めを正確に行いやすい。すなわち、予め突起部631の突出高さを適切に設定しておくことで、突起部631をハウジング2の内周面22に当接させたとき、放電側端部61のプラグ径方向の位置を正確に決めることができる。そうすると、適切な大きさの放電ギャップGを、容易かつ正確に形成することができる。
【0035】
また、接地電極6がある程度変形可能な場合、突起部631をハウジング2の内周面22に当接させながら、接合側端部62を外周側へ移動させると、放電側端部61が中心電極4側に移動する。つまり、接地電極6を固定する前の段階においては、突起部631を支点として、接合側端部62をプラグ径方向にスライドさせることで、放電ギャップGの大きさの微調整を行うことも可能となる。これにより、ハウジング2の先端よりも基端側に配される放電ギャップGの微調整を、容易に行うことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0036】
なお、ハウジング2に取り付ける前の状態の接地電極6の形状として、図7に示すごとく、接合側端部62と中継部63との間のなす角度αが鋭角となる形状にしておくことも考えられる。この場合には、ハウジング2に取り付ける際に、突起部631をハウジング2の内周面22に押し付けて、上記角度αが広がるように、接地電極6を弾性変形させることができる。このときの角度αの調整により、接地電極6の放電側端部61の位置を調整し、放電ギャップGの大きさを調整することができる。
【0037】
また、本形態の変形形態として、図8に示すごとく、ハウジング2の内周面22に、接地電極6の中継部63へ向かって突出した突起部221を設けることもできる。この場合にも、上述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。ただし、生産性等の観点では、接地電極6に突起部631を設けた形態が好ましい。
【0038】
(実施形態3)
本形態は、図9図10に示すごとく、中心電極4が、放電ギャップG側に、平坦面状の平坦放電面41を有する形態である。
本形態においては、中心電極4の先端部に、延設部42を設けている。延設部42は、接地電極6側へ、中心電極4の母材40からプラグ径方向の外側へ突出している。延設部42は、中心電極4の母材40とは別部材として、母材40の先端面に接合してなる。この延設部42は、略直方形状の部材とすることができる。
【0039】
延設部42に設けた平坦面が、接地電極6の放電側端部61に対向している。つまり、延設部42における放電ギャップG側の平坦面が、上述の平坦放電面41となる。
本形態において、延設部42における平坦放電面41には、チップ411が設けてある。
【0040】
また、本形態においては、接地電極6の放電側端部61にも、チップ611が設けてある。チップ411、611は、例えば、イリジウム、白金等の貴金属又はその合金にて構成することができる。
【0041】
ただし、中心電極4におけるチップ411及び接地電極6におけるチップ611の、いずれか一方若しくは双方を設けない構成とすることもできる。
その他は、実施形態2と同様である。
【0042】
本形態においては、中心電極4における放電ギャップGに対向する面を、平坦な平坦放電面41とすることにより、電極消耗による放電ギャップGの拡大を抑制することができる。すなわち、実施形態1のように、円柱状の中心電極4の側面を、放電面とすると、放電による電極消耗によって、放電ギャップGが拡大しやすい。これに対して、平坦放電面41を設けることで、放電ギャップGの拡大を抑制することができる。
【0043】
また、本形態においては、平坦放電面41にチップ411を設けることで、一層、放電ギャップGの拡大が抑制される。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0044】
(実施形態4)
本形態は、図11図12に示すごとく、副燃焼室50にスワール流が形成されるように構成した形態である。
すなわち、プラグカバー5において、副燃焼室50にスワール流が形成されるように、噴孔51を形成してある。そして、中継部63の内周側面632は、スワール流Asの上流側から下流側に向うほどプラグ中心軸側に向うように傾斜している。
【0045】
図11図12に示すごとく、スワール流Asは、プラグ中心軸PCを略中心とした螺旋状に流れる気流である。
プラグカバー5は、複数の噴孔51を有する。そして、図11に示すごとく、それぞれの噴孔51の噴孔延長線51Lは、プラグ中心軸PCからずれるよう形成されている。Z方向から見たとき、噴孔51とプラグ中心軸PCとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VLと、噴孔延長線51Lとの間の角度βは、鋭角である。本形態において、各噴孔51に関する角度βは、互いに同等である。
【0046】
本形態において、接地電極6の中継部63の内周側面632は、テーパ面となっている。ただし、内周側面632は、スワール流Asの上流側から下流側に向うほどプラグ中心軸PC側に向うように傾斜していれば、曲面状とすることもできる。この場合において、内周側面632は、凹状の曲面とすることが望ましいが、凸状の曲面とすることもできる。
その他は、実施形態3と同様である。
【0047】
本形態の場合、中継部63の内周側面632が、スワール流Asをガイドすることができる。これにより、放電ギャップG付近を通過する気流は、スワール流Asとしてプラグ周方向に沿って流れつつ、徐々にプラグ中心軸PC側に導かれる。これにより、放電ギャップGにて形成された放電は、副燃焼室50における中心部よりに伸ばされやすくなる。その結果、副燃焼室50の側壁、すなわちハウジング2の内周面22から、より離れた位置において火炎を生じさせることができる。その結果、冷損を抑制して、副燃焼室50における火炎成長を促すことができる。これにより、副燃焼室50から主燃焼室11へ噴出する火炎ジェットを強力にすることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施形態5)
本形態は、図13に示すごとく、接地電極6の中継部63における突起部631よりも先端側の位置に、中継部63から突起部631と同じ方向に突出した追加突起部633を設けた形態である。
本形態において、追加突起部633は、中継部63と接合側端部62との間に形成されている。
【0049】
また、本形態においては、中心電極4の先端面にチップ411が接合されている。また、接地電極6の放電側端部61にもチップ611が接合されている。中心電極4のチップ411と接地電極6のチップ611とが、互いにプラグ径方向に対向している。このようにプラグ径方向に対向した中心電極4のチップ411と接地電極6のチップ611との間に、放電ギャップGが形成されている。
その他は、実施形態2と同様である。
【0050】
本形態においては、突起部631と追加突起部633との双方において、接地電極6の中継部63をハウジング2の内周面22に当接させることができる。それゆえ、ハウジング2への接地電極6の組付け時において、接地電極6の取付姿勢を安定させることができる。その結果、放電ギャップGの大きさを精度よく形成しやすい。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0051】
(実施形態6)
本形態は、図14図15に示すごとく、ハウジング2の先端に設けた先端切欠部24に、接地電極6の接合側端部62を配置した形態である。
図14に示すスパークプラグ1においては、プラグカバー5には、切欠部を設けていない。つまり、本形態において、プラグカバー5は、実施形態1に示した基端切欠部52を有していない。
【0052】
図15に示すスパークプラグ1においては、ハウジング2に先端切欠部24を設けると共に、プラグカバー5にも基端切欠部52を設けている。そして、先端切欠部24と基端切欠部52とが軸方向Zに重なるように、ハウジング2とプラグカバー5とが互いに接合されている。また、先端切欠部24と基端切欠部52とからなる空間に、接地電極6の接合側端部62が配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0053】
本形態の場合には、接地電極6をハウジング2に組み付ける際に、先端切欠部24が位置決め機能を発揮する。これにより、ハウジング2への接地電極6の組付けを容易にすることができる。また、図14に示すスパークプラグ1の場合、プラグカバー5の構造を簡素化することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(実施形態7)
本形態は、図16に示すごとく、接地電極6の接合側端部62が、ハウジング2及びプラグカバー5の外周側へ露出していない形態である。
すなわち、接地電極6の接合側端部62は、ハウジング2の外周面よりも内側であり、プラグカバー5の外周面よりも内側に配されている。接合側端部62は、ハウジング2の先端面21のうち、内周側の一部に係合している。
その他は、実施形態1と同様である。本形態の場合にも、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0055】
(実施形態8)
本形態は、図17に示すごとく、放電ギャップGを介して対向する一対の放電面を、軸方向Zの先端側へ向かうほど、プラグ中心軸側に向かうように傾斜させた形態である。
すなわち、接地電極6の放電側端部61における、放電ギャップGに面する端面が、軸方向Zの先端側へ向かうほど、プラグ中心軸側に向かうように傾斜している。また、中心電極4における平坦放電面41も、軸方向Zの先端側へ向かうほど、プラグ中心軸側に向かうように傾斜している。
【0056】
また、図6に示すスパークプラグ1おいては、接地電極6にも中心電極4にも、チップを設けていない。ただし、接地電極6と中心電極4との一方又は双方にチップを設けることもできる。
その他は、実施形態3と同様である。
【0057】
本形態においては、例えば、副燃焼室50においてタンブル流(図5の矢印A参照)が生じた場合に、放電ギャップGを軸方向に対して傾斜した気流が通過することが考えられる。この流れに沿った放電ギャップGの形状とすることで、放電が引き伸ばされやすくすることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0058】
(実施形態9)
本形態は、図18に示すごとく、プラグカバー5におけるプラグ中心軸と重なる位置に、軸方向Zに貫通した噴孔51を設けた形態である。
この軸方向Zの噴孔51は、中心電極4と軸方向Zに重なる位置に形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
(実施形態10)
本形態は、図19に示すごとく、プラグカバー5の先端から副燃焼室50側へ突出した突出筒状体53を有するスパークプラグ1の形態である。
突出筒状体53は、軸方向Zにおいて、先端部から基端側へ向かうほど縮径するような略円錐形状を有すると共に、軸方向Zに貫通している。この突出筒状体53の内側の貫通空間が、噴孔51の一つとなる。
その他は、実施形態1と同様である。
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0060】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 スパークプラグ
2 ハウジング
3 絶縁碍子
4 中心電極
5 プラグカバー
50 副燃焼室
51 噴孔
6 接地電極
61 放電側端部
62 接合側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19