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特許7452270車載音響システム、及びこの車載音響システムを備える車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車載音響システム、及びこの車載音響システムを備える車両
(51)【国際特許分類】
   H04R 5/02 20060101AFI20240312BHJP
   H04R 3/14 20060101ALI20240312BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240312BHJP
   H04R 9/06 20060101ALI20240312BHJP
   H04R 9/04 20060101ALI20240312BHJP
   H04R 1/26 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H04R5/02 F
H04R3/14
H04R1/02 102B
H04R9/06 A
H04R9/04 104Z
H04R1/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020100712
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021197578
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 克也
(72)【発明者】
【氏名】疋田 智一
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇量
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-345099(JP,A)
【文献】特開2006-184423(JP,A)
【文献】特開2019-110425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 5/02
H04R 3/14
H04R 1/02
H04R 9/06
H04R 9/04
H04R 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音信号を、第1信号経路を経て第1中域用スピーカに出力する第1アンプと、
第2音信号を、第2信号経路を経て第2中域用スピーカに出力する第2アンプと、
第3音信号を、第1高域用スピーカと第1低域用スピーカとに出力する第3アンプと、
第4音信号を、第2高域用スピーカと第2低域用スピーカとに出力する第4アンプ、と、を有する車載音響システムであって、
前記第1高域用スピーカには、前記第3アンプから前記第1高域用スピーカに至る第3信号経路を経て前記第3音信号が入力され、
前記第2高域用スピーカには、前記第4アンプから前記第2高域用スピーカに至る第4信号経路を経て前記第4音信号が入力され、
前記第1音信号は、前記第1信号経路から分岐した第5信号経路を経て重低音用スピーカに入力され、
前記第1低域用スピーカには、前記第3信号経路から分枝する第6信号経路を経て前記第3音信号が入力され、
前記第2低域用スピーカには、前記第4信号経路から分枝する第7信号経路を経て前記第4音信号が入力され、
前記第1中域用スピーカと前記第1高域用スピーカと前記第1低域用スピーカとは、車両の左右の何れかの同じ側に設けられ、
前記第2中域用スピーカと前記第2高域用スピーカと前記第2低域用スピーカとは、前記車両の左右のうち前記第1中域用スピーカと反対側に設けられる、
車載音響システム。
【請求項2】
前記第1中域用スピーカの再生周波数帯域は、前記第1高域用スピーカの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる、
請求項1に記載の車載音響システム。
【請求項3】
前記第1中域用スピーカの再生周波数帯域の下限周波数に応じてカットオフ周波数が定められ、前記カットオフ周波数よりも低い周波数の信号を遮断する第1フィルタを、前記第1信号経路のうち、前記第1信号経路と前記第5信号経路との分岐点から前記第1中域用スピーカに至るまでの信号経路に有する、
請求項1又は請求項2に記載の車載音響システム。
【請求項4】
前記重低音用スピーカには、前記第2信号経路から分枝する第8信号経路を経て前記第2音信号が更に入力し、
前記重低音用スピーカは、前記第5信号経路に接続される第1ボイスコイルと、前記第8信号経路に接続される第2ボイスコイルと、を有する、
請求項1から3のうちの何れか1項に記載の車載音響システム。
【請求項5】
前記第1低域用スピーカの再生周波数帯域は前記第1中域用スピーカの再生周波数帯域に比較して低域側に広がり、
前記第2低域用スピーカの再生周波数帯域は前記第2中域用スピーカの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる、
請求項1から4のうちの何れか1項に記載の車載音響システム。
【請求項6】
前記第1高域用スピーカ及び前記第1低域用スピーカと、前記第2高域用スピーカ及び前記第2低域用スピーカとは、前記車室の前方に配置され、
前記第1中域用スピーカ、前記第2中域用スピーカ、及び前記重低音用スピーカは前記車室の後方に配置される、
請求項5に記載の車載音響システム。
【請求項7】
第1音信号を、第1信号経路を経て第1中域用スピーカに出力する第1アンプと、
第2音信号を、第2信号経路を経て第2中域用スピーカに出力する第2アンプと、
第3音信号を、第3信号経路を経て第1フルレンジスピーカに出力する第3アンプと、
第4音信号を、第4信号経路を経て第2フルレンジスピーカに出力する第4アンプと、
を有する車載音響システムであって、
前記第1音信号は、前記第1信号経路から分岐した第5信号経路を経て重低音用スピーカに入力され、
前記第1中域用スピーカと前記第1フルレンジスピーカは、車両の左右の何れかの同じ側に設けられ、
前記第2中域用スピーカと前記第2フルレンジスピーカは、前記車両の左右のうち前記第1中域用スピーカと反対側に設けられる、
車載音響システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちの何れか1項に記載の車載音響システムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載音響システム、及びこの車載音響システムを備える車両、に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、右のツイータに入力されるR信号及び左のツイータに入力されるL信号を用いて、デュアルボイスコイルスピーカのウーファを駆動する技術が開示されている。特許文献2には、右のフルレンジスピーカに入力されるR信号及び左のフルレンジスピーカに入力されるL信号を用いて、デュアルボイスコイルスピーカのウーファを駆動する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-74780号公報
【文献】特許3153101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用車等の車両の車室内に楽音等を出力する車載音響システムでは、フロントの左右に設けられるウーファ及びツイータと、リアの左右に設けられるウーファ及びツイータと、を4チャネルアンプで駆動することが一般的であるが、重低音に富んだ迫力のある音の出力を可能にするためにサブウーファを更に設けることが提案されている。フロント及びリアの左右のウーファ及びツイータに加えてサブウーファを設ける場合、これらスピーカを5チャネル以上のアンプで駆動すること、又はサブウーファの駆動用に4チャネルアンプとは別個のアンプを用いることが考えられる。しかし、5チャネル以上のアンプを用いる態様、及び重低音用に別個のアンプを設ける態様には、コストが増加するという問題がある。
【0005】
特許文献1に開示のようにウーファをツイータとセットで駆動する態様では、高周波ノイズの発生が懸念される。車載音響システムでは、低音域を大音量で出力したいという要求がある。このため、電源電圧にクリップさせた音信号を用いてウーファを駆動することが多い。このとき、電源電圧にクリップさせた音信号はツイータにも入力される。ツイータは高周波成分を出力する能力があるため、クリップにより発生する高周波成分が高周波ノイズとして放音される。同様に、特許文献2に開示の技術のように、フルレンジスピーカとウーファとをセットで駆動する場合も高周波ノイズの発生が懸念される。
【0006】
本開示は以上に説明した課題に鑑みて為されたものであり、4チャネルアンプを有する車載音響システムのチャネル数を増加させず、且つ重低音用のアンプを追加することなく、重低音域から高域までの広い周波数帯域の音を出力できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車載音響システムの一態様は、第1音信号を、第1信号経路を経て第1中域用スピーカに出力する第1アンプと、第2音信号を、第2信号経路を経て第2中域用スピーカに出力する第2アンプと、第3音信号を、第1高域用スピーカと第1低域用スピーカとに出力する第3アンプと、第4音信号を、第2高域用スピーカと第2低域用スピーカとに出力する第4アンプ、と、を有する。前記第1高域用スピーカには、前記第3アンプから前記第1高域用スピーカに至る第3信号経路を経て前記第3音信号が入力される。前記第2高域用スピーカには、前記第4アンプから前記第2高域用スピーカに至る第4信号経路を経て前記第4音信号が入力される。前記第1音信号は、前記第1信号経路から分岐した第5信号経路を経て重低音用スピーカに入力される。前記第1低域用スピーカには、前記第3信号経路から分枝する第6信号経路を経て前記第3音信号が入力される。前記第2低域用スピーカには、前記第4信号経路から分枝する第7信号経路を経て前記第4音信号が入力される。前記第1中域用スピーカと前記第1高域用スピーカと前記第1低域用スピーカとは、車両の左右の何れかの同じ側に設けられる。前記第2中域用スピーカと前記第2高域用スピーカと前記第2低域用スピーカとは、前記車両の左右のうち前記第1中域用スピーカと反対側に設けられる。
【0008】
また、本開示に係る車載音響システムの一態様は、第1音信号を、第1信号経路を経て第1中域用スピーカに出力する第1アンプと、第2音信号を、第2信号経路を経て第2中域用スピーカに出力する第2アンプと、第3音信号を、第3信号経路を経て第1フルレンジスピーカに出力する第3アンプと、第4音信号を、第4信号経路を経て第2フルレンジスピーカに出力する第4アンプと、を有する。前記第1音信号は、前記第1信号経路から分岐した第5信号経路を経て重低音用スピーカに入力される。前記第1中域用スピーカと前記第1フルレンジスピーカとは、車両の左右の何れかの同じ側に設けられる。前記第2中域用スピーカと前記第2フルレンジスピーカとは、前記車両の左右のうち前記第1中域用スピーカと反対側に設けられる。
【0009】
本開示に係る車両の一態様は、上記何れかの態様の車載音響システムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る音響システム1Aの構成例を示す図である。
図2】音響システム1Aを搭載する車両Cの車室CRにおけるスピーカ10-1A~10-7の配置例を示す図である。
図3】音響システム1Aを有する車両Cのフロント席において測定される音圧の周波数分布の一例を示す図である。
図4】音響システム1Aを有する車両Cのリア席において測定される音圧の周波数分布の一例を示す図である。
図5】変形例5の音響システム1Bの構成例を示す図である。
図6】変形例6の音響システム1Cの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示に係る実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、以下の実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
1.実施形態
図1は、本開示の一実施形態に係る音響システム1Aの構成例を示す図である。図1に示すように、音響システム1Aは、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A、スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5、スピーカ10-6及びスピーカ10-7と、フィルタ20-1~フィルタ20-4と、スピーカ10-1A~スピーカ10-7の各々を駆動する駆動装置30と、を備える。音響システム1Aは、乗用車等の車両に搭載され、当該車両の車室内に楽音等を出力する車載音響システムである。スピーカ10-1A、スピーカ10-2A及びスピーカ10-7は車室の後方に設けられる。スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5及びスピーカ10-6は車室の前方に設けられる。また、スピーカ10-1A、スピーカ10-3A及びスピーカ10-5は車室の右側に設けられる。スピーカ10-2A、スピーカ10-4A及びスピーカ10-6は車室の左側に設けられる。スピーカ10-1A~スピーカ10-7の配置の詳細については後に明らかにする。
【0013】
スピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aはスコーカである。スピーカ10-3A及びスピーカ10-4Aはツイータである。スピーカ10-5及びスピーカ10-6はウーファである。スピーカ10-7はサブウーファである。スピーカ10-5の再生周波数帯域は、スピーカ10-3Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる。再生周波数帯域とは、スピーカの入力端子に1Wに相当する正弦波の電圧を加えてスピーカの基準軸上で1m離れた位置の音圧を計測した場合に、音圧の計測値が20db以上低下しない周波数帯域のことをいう。スピーカ10-5の再生周波数帯域とスピーカ10-3Aの再生周波数帯域とは一部重なる。具体的には、スピーカ10-5の再生周波数帯域を表すグラフとスピーカ10-3Aの再生周波数帯域を表すグラフとは2~4kHz付近で交差する。スピーカ10-6の再生周波数帯域も、スピーカ10-4Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる。スピーカ10-6の再生周波数帯域とスピーカ10-4Aの再生周波数帯域とは一部重なる。スピーカ10-6の再生周波数帯域を表すグラフとスピーカ10-4Aの再生周波数帯域を表すグラフとは2~4kHz付近で交差する。
【0014】
スピーカ10-1Aの再生周波数帯域は、スピーカ10-3Aの再生周波数帯域と一部重なり、スピーカ10-5の再生周波数帯域とも一部重なる。スピーカ10-3Aの再生周波数帯域は、スピーカ10-1Aの再生周波数帯域に比較して高域側に広がる。スピーカ10-5の再生周波数帯域は、スピーカ10-1Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる。スピーカ10-1Aの再生周波数帯域を表すグラフとスピーカ10-5の再生周波数帯域を表すグラフとは200~400Hz付近で交差する。スピーカ10-2Aの再生周波数帯域は、スピーカ10-4Aの再生周波数帯域と一部重なり、スピーカ10-6の再生周波数帯域とも一部重なる。スピーカ10-4Aの再生周波数帯域は、スピーカ10-2Aの再生周波数帯域に比較して高域側に広がる。スピーカ10-6の再生周波数帯域は、スピーカ10-2Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる。スピーカ10-2Aの再生周波数帯域を表すグラフとスピーカ10-6の再生周波数帯域を表すグラフとは200~400Hz付近で交差する。
【0015】
スピーカ10-1Aは本開示における第1中域用スピーカの一例である。スピーカ10-2Aは本開示における第2中域用スピーカの一例である。スピーカ10-3Aは本開示における第1高域用スピーカの一例である。スピーカ10-4Aは本開示における第2高域用スピーカの一例である。スピーカ10-5は本開示における第1低域用スピーカの一例である。スピーカ10-6は本開示における第2低域用スピーカの一例である。
【0016】
スピーカ10-7の再生周波数帯域はスピーカ10-5の再生周波数帯域と一部重なる。スピーカ10-7の再生周波数帯域はスピーカ10-5の再生周波数帯域と比較して低域側に広がる。スピーカ10-7の再生周波数帯域を表すグラフとスピーカ10-5の再生周波数帯域を表すグラフとは100~200Hz付近で交差する。また、スピーカ10-7の再生周波数帯域はスピーカ10-6の再生周波数帯域と一部重なる。スピーカ10-7の再生周波数帯域はスピーカ10-6の再生周波数帯域と比較して低域側に広がる。スピーカ10-7の再生周波数帯域を表すグラフとスピーカ10-6の再生周波数帯域を表すグラフとは100~200Hz付近で交差する。スピーカ10-7は重低音域の再生を担当する重低音用スピーカの一例である。
【0017】
図1では詳細な図示を省略したが、スピーカ10-7は2つのボイスコイルを有するダブルボイスコイルスピーカである。スピーカ10-7が有する2つのボイスコイルの一方のボイスコイルには、駆動装置30からスピーカ10-1Aに至る信号経路SL1から分枝する信号経路SL5を介して音信号S1aが与えられる。信号経路SL5を介して音信号S1aが与えられるボイスコイルは本開示における第1ボイスコイルの一例である。また、スピーカ10-7が有する2つのボイスコイルのうちの他方のボイスコイルには、駆動装置30からスピーカ10-2Aに至る信号経路SL2から分枝する信号経路SL6を介して音信号S2aが与えられる。信号経路SL6を介して音信号S2aが与えられるボイスコイルは本開示における第2ボイスコイルの一例である。本実施形態では、音信号S1a及び音信号S2aの二つの音信号でスピーカ10-7を駆動するため、音信号S1a及び音信号S2aのうちの何れか一方でスピーカ10-7を駆動する態様に比較して出力音圧を大きくできる。スピーカ10-7がダブルボイスコイルスピーカであれば、スピーカ10-7としてシングルボイスコイルスピーカを用いる態様に比較して能率は低くてもよい。また、本実施形態のスピーカ10-7はダブルボイスコイルスピーカであるため、音信号S1aと音信号S2aとからモノラルの音信号を生成する回路を省略できる。
【0018】
駆動装置30は、音響システム1Aを搭載する車両のコンソール等に設置される。駆動装置30には、音信号S1~S4が、図示せぬプリアンプ等を介して与えられる。音信号S1~S4の各々は、楽曲の歌唱音声及び演奏音等の様々な音信号に音量の調整及びミキシング等を各々施して得られる。本実施形態では、音信号S1~S4の各々は楽曲の歌唱音声の音信号及び演奏音の音信号をミキシングして得られる音信号である。より詳細には、音信号S1及び音信号S3は、上記楽曲をステレオ再生する場合の右チャネルの音信号である。音信号S2及び音信号S4は、上記楽曲をステレオ再生する場合の左チャネルの音信号である。音信号S1及び音信号S2には、重低音域から高域に亘る周波数帯域の周波数成分が含まれる。音信号S3及び音信号S4には、低音域から高域に亘る周波数帯域の周波数成分が含まれる。なお、音信号S1~S4が全て同一の音信号であってもよい。
【0019】
駆動装置30は、4チャネルアンプである。駆動装置30は、音信号S1~S4を各々増幅して出力するアンプ310-1~310-4を有する。アンプ310-1は、音信号S1をスピーカ駆動に適したレベルに増幅する。アンプ310-1は、増幅済の音信号S1aを、スピーカ10-1Aに至る信号経路SL1へ出力する。アンプ310-1は本開示における第1アンプの一例である。アンプ310-1からスピーカ10-1Aに至る信号経路SL1は本開示における第1信号経路の一例である。音信号S1aは本開示における第1音信号の一例である。信号経路SL1から分岐してスピーカ10-7に至る信号経路SL5は本開示における第5信号経路の一例である。
【0020】
図1に示すように、信号経路SL1には、信号経路SL5との分岐点J1からスピーカ10-1Aに至るまでの間にフィルタ20-1が設けられる。本実施形態におけるフィルタ20-1は、カットオフ周波数以上の周波数の信号を通過させ、カットオフ周波数未満の周波数の信号を遮断するハイパスフィルタである。フィルタ20-1のカットオフ周波数は、スピーカ10-1Aの再生周波数帯域の下限周波数に応じて定められる。より具体的には、フィルタ20-1のカットオフ周波数は、スピーカ10-1Aの再生周波数帯域の下限周波数付近に設定される。フィルタ20-1は、上記カットオフ周波数よりも低い周波数の音信号がスピーカ10-1Aに与えられることに起因するスピーカ10-1Aの破損を回避するために設けられる。本実施形態のフィルタ20-1はハイパスフィルタであるが、バンドパスフィルタであってもよい。フィルタ20-1は本開示における第1フィルタの一例である。
【0021】
アンプ310-2は、音信号S2をスピーカ駆動に適したレベルに増幅する。アンプ310-2は、増幅済の音信号S2aを、スピーカ10-2Aに至る信号経路SL2へ出力する。アンプ310-2は本開示における第2アンプの一例である。アンプ310-2からスピーカ10-2Aに至る信号経路SL2は本開示における第2信号経路の一例である。音信号S2aは本開示における第2音信号の一例である。信号経路SL2から分岐してスピーカ10-7に至る信号経路SL6は本開示における第8信号経路の一例である。図1に示すように、信号経路SL2には、信号経路SL6との分岐点J2からスピーカ10-2Aに至るまでの間にフィルタ20-2が設けられる。フィルタ20-2もフィルタ20-1と同様にハイパスフィルタである。フィルタ20-2のカットオフ周波数は、スピーカ10-2Aの再生周波数帯域の下限周波数付近に設定される。フィルタ20-2は、フィルタ20-1と同様にスピーカ10-2Aの破損のために設けられる。フィルタ20-2もフィルタ20-1と同様にバンドパスフィルタであってもよい。フィルタ20-2は本開示における第2フィルタの一例である。
【0022】
アンプ310-3は、音信号S3をスピーカ駆動に適したレベルに増幅する。アンプ310-3は、増幅済の音信号S3aを、スピーカ10-3Aへ至る信号経路SL3へ出力する。アンプ310-3は本開示における第3アンプの一例である。アンプ310-3からスピーカ10-3Aへ至る信号経路SL3は本開示における第3信号経路の一例である。音信号S3aは本開示における第3音信号の一例である。図1に示すように、本実施形態では、信号経路SL3から、スピーカ10-5に至る信号経路SL7が分枝する。信号経路SL7は本開示における第6信号経路の一例である。図1に示すように、信号経路SL3には、信号経路SL7との分岐点J3からスピーカ10-3Aに至るまでの間にフィルタ20-3が設けられる。フィルタ20-3もフィルタ20-1と同様にハイパスフィルタである。フィルタ20-3のカットオフ周波数は、スピーカ10-3Aの再生周波数帯域の下限周波数付近に設定される。フィルタ20-3は、フィルタ20-1と同様にスピーカ10-3Aの破損回避ために設けられる。また、フィルタ20-3は、スピーカ10-3Aの再生周波数帯域とスピーカ10-5の再生周波数帯域とが重なる部分の周波数応答を平坦にする音質調整の役割も担っている。フィルタ20-3もフィルタ20-1と同様にバンドパスフィルタであってもよい。フィルタ20-3は本開示における第3フィルタの一例である。
【0023】
アンプ310-4は、音信号S4をスピーカ駆動に適したレベルに増幅する。アンプ310-4は、増幅済の音信号S4aを、スピーカ10-4Aへ至る信号経路SL4へ出力する。アンプ310-4は本開示における第4アンプの一例である。信号経路SL4は本開示における第4信号経路の一例である。音信号S4aは本開示における第4音信号の一例である。図1に示すように、本実施形態では、信号経路SL4から、スピーカ10-6に至る信号経路SL8が分枝する。信号経路SL8は、本開示における第7信号経路の一例である。図1に示すように、信号経路SL4には、信号経路SL8との分岐点J4からスピーカ10-4Aに至るまでの間に、フィルタ20-4が設けられる。フィルタ20-4もフィルタ20-1と同様にハイパスフィルタである。フィルタ20-4のカットオフ周波数は、スピーカ10-4Aの再生周波数帯域の下限周波数付近に設定される。フィルタ20-4は、フィルタ20-3と同様にスピーカ10-4Aの破損回避及び音質調整のために設けられている。フィルタ20-4もフィルタ20-1と同様にバンドパスフィルタであってもよい。フィルタ20-4は本開示における第4フィルタの一例である。
【0024】
本実施形態では、アンプ310-1はスピーカ10-1Aとスピーカ10-7とを駆動する。アンプ310-2はスピーカ10-2Aとスピーカ10-7とを駆動する。アンプ310-3はスピーカ10-3Aとスピーカ10-5とを駆動する。アンプ310-4はスピーカ10-4Aとスピーカ10-6とを駆動する。
【0025】
図2は、音響システム1Aを搭載した車両Cの平面図である。図2では、フィルタ20-1~20-4、及び駆動装置30の図示は省略されている。車両Cの車室CRには、矩形に配置された4つの座席51~54と、天井6と、フロントライトドア71と、フロントレフトドア72と、リアライトドア73と、リアレフトドア74と、が配置される。車両Cが日本向けの製品である場合、座席51は運転席であり、座席52は助手席である。但し、車両Cが米国又は欧米向けの製品である場合、座席51は助手席であり、座席52は運転席である。以下の説明では車両Cが日本向けの製品であることを想定する。座席53は後部右座席であり、座席54は後部左座席である。座席51~54は、共通の方向を向いている。以下では、座席51及び座席52を「フロント席」と呼び、座席53及び座席54を「リア席」と呼ぶ場合がある。
【0026】
図2に示すように、本実施形態ではスピーカ10-7はリア席の後方に配置される。より具体的に説明すると、スピーカ10-7は、図2に示すように、座席53及び座席54の間の位置、且つ座席53及び座席54の後方に配置される。本実施形態ではスピーカ10-1A、10-2A、10-3A、10-4A、10-5及び10-6の各々は所謂ドアスピーカである。図2に示すように、スピーカ10-3A及びスピーカ10-5は、各々の放音面を座席51に向けた姿勢でフロントライトドア71に配置される。図2に示すように、スピーカ10-4A及びスピーカ10-6は、各々の放音面を座席52に向けた姿勢でフロントレフトドア72に配置される。図2に示すように、スピーカ10-1Aは放音面を座席53に向けた姿勢でリアライトドア73に配置される。スピーカ10-2Aは放音面を座席54に向けた姿勢でリアレフトドア74に配置される。
【0027】
図3は、音響システム1Aを有する車両Cのフロント席において測定される音の音圧の周波数分布を示すグラフである。図3におけるグラフSubWFは、スピーカ10-7により発生する重低音域の音について、音圧の周波数分布を示す。図3におけるグラフWFは、スピーカ10-5及びスピーカ10-6により発生する低域の音について、音圧の周波数分布を示す。図3のグラフTWは、スピーカ10-3A及びスピーカ10-4Aにより発生する高域の音について、音圧の周波数分布を示す。図3に示すように、フロント席では、重低音域から高域まで隙間なく音圧が分布する音が測定される。このため、フロント席に着席する搭乗者は、重低音域から高域に至る周波数帯域の音を聴くことができる。
【0028】
図4は、音響システム1Aを有する車両Cのリア席において測定される音の音圧の周波数分布を示すグラフである。図4におけるグラフSQは、スピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aにより発生する中域の音について、音圧の周波数分布を示す。グラフSubWF、グラフWF及びグラフTWは図3におけるものと同様である。
【0029】
スピーカ10-1Aの再生周波数帯域はスピーカ10-5の再生周波数帯域に比較して高域側に広がっている。同様に、スピーカ10-2Aの再生周波数帯域もスピーカ10-6の再生周波数帯域に比較して高域側に広がっている。このため、スピーカ10-5及びスピーカ10-6が存在せず、スピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aだけであるとしたならば、低域の音圧が不足するが、本実施形態ではスピーカ10-5及びスピーカ10-6から出力される音により低域の音圧が補われる。図4では、スピーカ10-5及びスピーカ10-6から出力される音により低域の音圧が補われる様子が点線のグラフで示されている。また、スピーカ10-1Aの再生周波数帯域はスピーカ10-3Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がっている。同様に、スピーカ10-2Aの再生周波数帯域はスピーカ10-4Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がっている。このため、スピーカ10-3A及びスピーカ10-4Aが存在せず、スピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aだけでは高域の音圧が不足するが、本実施形態ではスピーカ10-3A及びスピーカ10-4Aから出力される音により高域の音圧が補われる。図4では、スピーカ10-3A及びスピーカ10-4Aから出力される音により高域の音圧が補われる様子が一点鎖線のグラフで示されている。このため、本実施形態の音響システム1Aによれば、リア席に着席する搭乗者も、重低音域から高域に至る周波数帯域の音を聴くことができる。
【0030】
加えて、本実施形態では、サブウーファであるスピーカ10-7とセットで駆動されるスピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aはスコーカである。前述したように、スピーカ10-1Aの再生周波数帯域は、ツイータであるスピーカ10-3Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がっている。同様に、スピーカ10-2Aの再生周波数帯域は、ツイータであるスピーカ10-4Aの再生周波数帯域に比較して低域側に広がっている。このため、スピーカ10-7を駆動する分だけ音信号S1と音信号S2の何れか一方又は両方の振幅をプリアンプにおいて引き上げ、アンプ310-1とアンプ310-2の何れか一方又は両方においてクリップが発生したとしても、スピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aから入力信号のクリップに起因する高周波ノイズが出力されることはない。また、重低音域の音圧分布は車室CRの形状に応じて定まるため、音信号S1及び音信号S2の振幅を大きくしても、必ずしもリア席の方がフロント席に比較して重低音域の音圧が高くなる訳ではなく、リア席において重低音域から高域に亘る音圧のバランスが崩れる訳ではない。
【0031】
以上説明したように本実施形態によれば、駆動装置30のチャネル数を増加させず、また、重低音用のアンプを追加することなく、重低音域から高域までの広い周波数帯域の音を出力することが可能になる。加えて、本実施形態によれば、サブウーファとセットで駆動されるスピーカから高周波ノイズが出力されることを回避しつつ、サブウーファを駆動することが可能になる。
【0032】
2.変形例
以上の実施態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0033】
2-1.変形例1
スピーカ10-1A、スピーカ10-2A、スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5及びスピーカ10-6はドアスピーカには限定されない。例えば、スピーカ10-3A及びスピーカ10-4Aは、フロントダッシュボード上面又はAピラー部に配置されてもよい。また、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A、スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5及びスピーカ10-6の各々が座席に向いていることも必須ではない。また、上記実施形態では、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A及びスピーカ10-7がリア席側に配置され、スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5及びスピーカ10-6がフロント席側に配置された。しかし、スピーカ10-3A~10-6がリア席側に配置され、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A及びスピーカ10-7がフロント席側に配置されてもよい。例えば、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A及びスピーカ10-7をフロント席側に配置する場合、助手席又は運転席の下にスピーカ10-7を配置すればよい。また、上記実施形態では、本開示の一実施形態の音響システム1Aについて説明したが、音響システム1Aを搭載した車両Cを製造又は販売してもよい。
【0034】
2-2.変形例2
スピーカ10-7の能率はスピーカ10-5の能率以上であってもよい。また、スピーカ10-7の能率はスピーカ10-6の能率以上であってもよい。スピーカ10-7の能率がスピーカ10-5の能率以上である場合、アンプ310-1のゲインはアンプ310-3のゲイン以下であってもよい。同様に、スピーカ10-7の能率がスピーカ10-6の能率以上である場合、アンプ310-2のゲインはアンプ310-4のゲイン以下であってもよい。
【0035】
2-3.変形例3
上記実施形態では、スピーカ10-7がダブルボイスコイルスピーカであったが、ボイスコイルが1個のサブウーファをスピーカ10-7として用いてもよい。ボイスコイルが1個のサブウーファをスピーカ10-7として用いる態様においては、音信号S1aと音信号S2aのうちの何れか一方、又は音信号S1aと音信号S2aとから生成されるモノラルの音信号をスピーカ10-7に与えればよい。
【0036】
2-4.変形例4
上記実施形態では、図1に示す音響システム1Aからスピーカ10-5及びスピーカ10-6を省略してもよい。スピーカ10-5及びスピーカ10-6を省略しても、スピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aから出力される音により、フロント席の搭乗者が聴く低域の音圧を補うことができるからである。なお、スピーカ10-5及びスピーカ10-6を省略する態様においては、スピーカ10-7の再生周波数帯域の上限周波数を上記実施形態よりも高くすることが好ましい。スピーカ10-7から出力される音によって、フロント席の搭乗者が聴く低域の音を補うためである。また、上記実施形態におけるフィルタ20-1~20-4は必ずしも必須ではなく、フィルタ20-1~20-4を省略してもよい。また、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A、スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5、スピーカ10-6、及びスピーカ10-7は本開示の車載音響システムの必須構成要素ではなく、本開示の車載音響システムは、スピーカ10-1A、スピーカ10-2A、スピーカ10-3A、スピーカ10-4A、スピーカ10-5、スピーカ10-6、及びスピーカ10-7の各々を駆動する駆動装置30を含んでいればよい。
【0037】
2-5.変形例5
上記実施形態では、スピーカ10-3A及び10-5をフロント席の右側に配置し、スピーカ10-4A及び10-6をフロント席左側に配置した。しかし、ツイータ及びウーファの組み合わせに代えてフルレンジスピーカを用いてもよい。図5に示す音響システム1Bでは、スピーカ10-3A及び10-5の代わりフルレンジスピーカであるスピーカ10-3Bが設けられており、スピーカ10-4A及び10-6の代わりフルレンジスピーカであるスピーカ10-4Bが設けられている。スピーカ10-3Bは本開示における第1フルレンジスピーカの一例である。スピーカ10-4Bは本開示における第2フルレンジスピーカの一例である。なお、音響システム1Bでは、スピーカ10-3B及び10-4Bの破損回避及び音質調整を考慮する必要がないため、フィルタ20-3及び20-4は省略されている。本態様によっても、駆動装置30のチャネル数を増加させず、また、重低音用のアンプを追加することなく、重低音域から高域までの広い周波数帯域の音を出力することが可能になる。また、本態様によっても、サブウーファとセットで駆動されるスピーカから高周波ノイズが出力されることを回避しつつ、サブウーファを駆動することが可能になる。
【0038】
2-6.変形例6
上記実施形態においてスピーカ10-1A及びスピーカ10-2Aはスコーカであった。しかし、スコーカに代えてフルレンジスピーカをスピーカ10-7とセットで駆動してもよい。図6に示す音響システム1Cでは、スピーカ10-1Aに代えてフルレンジスピーカであるスピーカ10-1Bが設けられており、スピーカ10-2Aに代えてフルレンジスピーカであるスピーカ10-2Bが設けられている。図6に示す音響システム1Cでは、フィルタ20-1及びフィルタ20-2のカットオフ周波数の設定により、スピーカ10-1B及び10-2Bから高周波ノイズが出力されることを回避しつつ、スピーカ10-7を駆動することが可能になる。
【0039】
3.実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様
本開示の車載音響システムの一例である音響システム1Aは、第1アンプの一例であるアンプ310-1、第2アンプの一例であるアンプ310-2、第3アンプの一例であるアンプ310-3及び第4アンプの一例であるアンプ310-4、を有する。第1アンプは、第1音信号の一例である音信号S1aを第1信号経路の一例である信号経路SL1を経て第1中域用スピーカの一例であるスピーカ10-1Aに出力する。第2アンプは、第2音信号の一例である音信号S2aを第2信号経路の一例である信号経路SL2を経て第2中域用スピーカの一例であるスピーカ10-2Aに出力する。第3アンプは、第3音信号の一例である音信号S3aを、第1高域用スピーカの一例であるスピーカ10-3A及び第1低域用スピーカの一例であるスピーカ10-5に出力する。第4アンプは、第4音信号の一例である音信号S4aを、第2高域用スピーカの一例であるスピーカ10-4A及び第2低域用スピーカの一例であるスピーカ10-6へ出力する。前記第1高域用スピーカには、前記第3アンプから前記第1高域用スピーカへ至る第3信号経路の一例である信号経路SL3を経て前記第3音信号が入力される。前記第2高域用スピーカには、前記第4アンプから前記第2高域用スピーカへ至る第4信号経路の一例である信号経路SL4を経て前記第4音信号が入力される。前記第1音信号は、前記第1信号経路から分岐した第5信号経路の一例である信号経路SL5を経て重低音用スピーカの一例であるスピーカ10-7に入力される。前記第1低域用スピーカには、前記第3信号経路から分岐する第6信号経路の一例である信号経路SL7を経て前記第3音信号が入力される。前記第2低域用スピーカには、前記第4信号経路から分岐する第7信号経路の一例である信号経路SL8を経て前記第4音信号が入力される。前記第1中域用スピーカと前記第1高域用スピーカと前記第1低域用スピーカとは、本開示における車両の一例である車両Cの左右の何れかの同じ側に設けられる。前記第2中域用スピーカと前記第2高域用スピーカと前記第2低域用スピーカとは、前記車両の左右のうち前記第1中域用スピーカと反対側に設けられる。本態様によれば、重低音用スピーカは第1中域用スピーカとセットで駆動されるので、標準の4チャネルアンプを有する車載音響システムのチャネル数を増加させず、且つ重低音用のアンプを追加することなく、重低音域から高域までの周波数帯域の音を出力することが可能になる。
【0040】
より好ましい態様の車載音響システムでは、前記第1中域用スピーカの再生周波数帯域は、前記第1高域用スピーカの再生周波数帯域に比較して低域側に広がる。本態様によれば、重低音用スピーカを駆動するために第1音信号の振幅を第3音信号の振幅よりも大きくすることによって、第1アンプにてクリップが発生しても、クリップに起因する高周波ノイズが第1中域用スピーカから出力されることを回避できる。
【0041】
より好ましい態様の車載音響システムは、前記第1中域用スピーカの再生周波数帯域の下限周波数に応じてカットオフ周波数が定められ、前記カットオフ周波数よりも低い周波数の信号を遮断する第1フィルタの一例であるフィルタ20-1を、前記第1信号経路のうち、前記第1信号経路と前記第5信号経路との分岐点から前記第1中域用スピーカに至るまでの信号経路に有してもよい。本態様の車載音響システムでは、前記第1フィルタは、前記第1信号経路のうち、前記第1信号経路と前記第5信号経路との分岐点の一例である分岐点J1から前記第1中域用スピーカに至るまでの信号経路に設けられる。本態様によれば、カットオフ周波数よりも低い周波数の信号が第1中域用スピーカに入力されることに起因する前記第1中域用スピーカの破損を回避することができる。
【0042】
より好ましい態様の車載音響システムでは、前記重低音用スピーカには、前記第2信号経路から分枝する第8信号経路の一例である信号経路SL6を経て前記第2音信号が更に入力されてもよい。本態様の車載音響システムでは、前記重低音用スピーカは、前記第5信号経路に接続される第1ボイスコイルと、前記第8信号経路に接続される第2ボイスコイルと、を有する。本態様によれば、第1音信号と第2音信号とからモノラルの音信号を生成する回路を省略できる。また、本態様によれば、重低音用スピーカは第1音信号と第2音信号とで駆動されるので、第1音信号のみで駆動する態様に比較して音圧を大きくできる。
【0043】
より好ましい態様の車載音響システムでは、第1低域用スピーカの再生周波数帯域は前記第1中域用スピーカに比較して低域側に広がり、第2低域用スピーカの再生周波数帯域は前記第2中域用スピーカに比較して低域側に広がる。本態様によれば、第1中域用スピーカ及び第2中域用スピーカの再生周波数帯域よりも低域側の音を第1低域用スピーカ及び第2低域用スピーカにより補い、迫力のある音の出力が可能になる。
【0044】
より好ましい態様の車載音響システムでは、前記第1高域用スピーカ及び前記第1低域用スピーカと、前記第2高域用スピーカ及び前記第2低域用スピーカとは、前記車室の前方に配置され、前記第1中域用スピーカ、前記第2中域用スピーカ、及び前記重低音用スピーカは前記車室の後方に配置されてもよい。
【0045】
本開示の車載音響システムの一例である音響システム1Bは、第1アンプの一例であるアンプ310-1、第2アンプの一例であるアンプ310-2、第3アンプの一例であるアンプ310-3及び第4アンプの一例であるアンプ310-4、を有する。第1アンプは、第1音信号の一例である音信号S1aを第1信号経路の一例である信号経路SL1を経て第1中域用スピーカの一例であるスピーカ10-1Aに出力する。第2アンプは、第2音信号の一例である音信号S2aを第2信号経路の一例である信号経路SL2を経て第2中域用スピーカの一例であるスピーカ10-2Aに出力する。第3アンプは、第3音信号の一例である音信号S3aを第3信号経路の一例である信号経路SL3を経て第1フルレンジスピーカの一例であるスピーカ10-3Bに出力する。第4アンプは、第4音信号の一例である音信号S4aを第4信号経路の一例である信号経路SL4を経て第2フルレンジスピーカの一例であるスピーカ10-4Bに出力する。前記第1音信号は、前記第1信号経路から分岐した第5信号経路の一例である信号経路SL5を経て重低音用スピーカの一例であるスピーカ10-7に入力される。前記第1中域用スピーカと前記第1フルレンジスピーカは、本開示における車両の一例である車両Cの左右の何れかの同じ側に設けられる。前記第2中域用スピーカと前記第2フルレンジスピーカは、前記車両の左右のうち前記第1中域用スピーカと反対側に設けられる。本態様においても、重低音用スピーカは第1中域用スピーカとセットで駆動されるので、標準の4チャネルアンプを有する車載音響システムのチャネル数を増加させず、且つ重低音用のアンプを追加することなく、重低音域から高域までの周波数帯域の音を出力することが可能になる。
【0046】
本開示の車両の一例である車両Cは、上記何れかの態様の車載音響システムを備える。本態様によっても、標準の4チャネルアンプを有する車載音響システムのチャネル数を増加させず、且つ重低音用のアンプを追加することなく、重低音域から高域までの広い周波数帯域の音を出力することが可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C…音響システム、10-1A,10-1B,10-2A,10-2B,10-3A,10-3B,10-4A、10-4B,10-5,10-6,10-7…スピーカ、20-1,20-2,20-3,20-4…フィルタ、30…駆動装置、310-1,310-2,310-3,310-4…アンプ、SL1,SL2,SL3、SL4,SL5,SL6,SL7,SL8…信号経路、S1,S2,S3,S4,S1a,S2a,S3a,S4a…音信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6