(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】水流発電システム及び航走体
(51)【国際特許分類】
F03B 13/10 20060101AFI20240312BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240312BHJP
B63G 8/42 20060101ALI20240312BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240312BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20240312BHJP
G01S 7/52 20060101ALI20240312BHJP
G01S 5/18 20060101ALI20240312BHJP
G01P 5/24 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F03B13/10
B63B35/00 T
B63G8/42 Z
B63C11/00 B
B63C11/48 D
G01S7/52 V
G01S5/18
G01P5/24 B
(21)【出願番号】P 2020103941
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】市口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】石黒 泰大
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120667(JP,A)
【文献】特開2003-222677(JP,A)
【文献】特開2006-208300(JP,A)
【文献】特表2012-532274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0212350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63C 11/00
B63C 11/48
B63G 8/42
F03B 13/10
G01S 5/18
G01P 5/24
G01S 7/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を浮遊し、水流を利用して発電を行う水流発電装置と、
前記水流発電装置を所定の水域に留める係留装置と、
互いに異なる位置に配置され、前記水中に音波を送信する
音波送信器、及び前記音波の反射波を受信する
音波受信器をそれぞれが一つずつ含む第1音波送受信部及び第2音波送受信部と、
前記第1音波送受信部及び前記第2音波送受信部が受信した前記反射波を音波信号として検出し、前記音波信号に基づく情報を取得する制御部と、
を備え、
前記制御部は、検出した前記音波信号から、前記第1音波送受信部に起因する前記反射波を示す第1音波信号を識別すると共に、前記第2音波送受信部に起因する前記反射波を示す第2音波信号を識別
し、
前記第1音波送受信部及び前記第2音波送受信部は共に、前記音波が拡散する領域である互いの指向範囲が重なるように、前記水流発電装置及び前記係留装置のいずれかの一つの装置に設けられ、
前記制御部は、検出した前記音波信号に基づいて水流の流速を取得する、水流発電システム。
【請求項2】
前記第1音波送受信部及び前記第2音波送受信部は、互いに異なる周波数を有する前記音波を送信し、
前記制御部は、前記音波信号を構成する周波数成分のうち、前記第1音波送受信部が送信した音波の周波数に対応する周波数成分を前記第1音波信号として識別し、前記音波信号を構成する周波数成分のうち、前記第2音波送受信部が送信した音波の周波数に対応する周波数成分を前記第2音波信号として識別する、請求項1に記載の水流発電システム。
【請求項3】
前記第2音波送受信部は、前記第1音波送受信部が前記音波を送信したタイミングよりも後に、前記音波を送信し、
前記制御部は、検出した前記音波信号のうち、先に検出した前記音波信号を前記第1音波信号として識別し、後に検出した前記音波信号を前記第2音波信号として識別する、請求項1又は2に記載の水流発電システム。
【請求項4】
前記第2音波送受信部は、前記第1音波送受信部が送信した前記音波の前記反射波を示す前記音波信号を前記制御部が検出した後に、前記音波を送信する、請求項3に記載の水流発電システム。
【請求項5】
前記第1音波送受信部、前記第2音波送受信部、及び前記制御部は、前記水流発電装置に設けられている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の水流発電システム。
【請求項6】
前記係留装置は、水底に配置された錘部と、前記錘部に前記水流発電装置を連結する係留索部と、を有し、
前記第1音波送受信部、前記第2音波送受信部、及び前記制御部は、前記錘部に設けられている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の水流発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水流発電システム及び航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水中の調査等を行うために、水中又は水面を航走する航走体に音響通信器が搭載されることがある(例えば、特許文献1参照)。このような航走体においては、音響通信器が音波を送受信することで、航走体の周辺に関する情報を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような航走体において、音波の送受信に基づく情報(すなわち、航走体の周辺に関する情報)をより多く取得するために、航走体に複数の音響通信器を搭載することが考えられる。しかしながら、このように複数の音響通信器を航走体に搭載した場合、各音響通信器が、自己の送信した音波以外の音波を受信することがある。例えば、或る音響通信器が送信した音波の反射波を別の音響通信器が受信することがあり、この場合、その反射波を当該別の音響通信部に起因する反射波として誤って検出してしまい、音波の送受信に基づく情報を正確に取得することが困難になる虞がある。
【0005】
本開示は、音波の送受信に基づく情報を正確に取得することができる水流発電システム及び航走体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る水流発電システムは、水中を浮遊し、水流を利用して発電を行う水流発電装置と、水流発電装置を所定の水域に留める係留装置と、互いに異なる位置に配置され、水中に音波を送信すると共に音波の反射波を受信する第1音波送受信部及び第2音波送受信部と、第1音波送受信部及び第2音波送受信部が受信した反射波を音波信号として検出し、音波信号に基づく情報を取得する制御部と、を備え、制御部は、検出した音波信号から、第1音波送受信部に起因する反射波を示す第1音波信号を識別すると共に、第2音波送受信部に起因する反射波を示す第2音波信号を識別する。
【0007】
この水流発電システムでは、第1音波送受信部及び第2音波送受信部が音波の反射波を受信すると、制御部がその反射波を音波信号として検出する。ここで、制御部は、検出した音波信号から、第1音波送受信部に起因する反射波を示す第1音波信号を識別すると共に、第2音波送受信部に起因する反射波を示す第2音波信号を識別する。これにより、実際には第1音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号が、第2音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号として誤って検出されてしまう事態を抑制できる。また、実際には第2音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号が、第1音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号として誤って検出されてしまう事態を抑制できる。その結果、制御部は、識別された第1音波信号及び第2音波信号に基づいて情報を正確に取得することができる。
【0008】
いくつかの態様において、第1音波送受信部及び第2音波送受信部は、互いに異なる周波数を有する音波を送信し、制御部は、音波信号を構成する周波数成分のうち、第1音波送受信部が送信した音波の周波数に対応する周波数成分を第1音波信号として識別し、音波信号を構成する周波数成分のうち、第2音波送受信部が送信した音波の周波数に対応する周波数成分を第2音波信号として識別してもよい。この場合、制御部は、反射波が有する周波数の違いを利用して、第1音波信号と第2音波信号とを容易に識別することができる。
【0009】
いくつかの態様において、第2音波送受信部は、第1音波送受信部が音波を送信したタイミングよりも後に、音波を送信し、制御部は、検出した音波信号のうち、先に検出した音波信号を第1音波信号として識別し、後に検出した音波信号を第2音波信号として識別してもよい。この場合、制御部は、音波が送信されるタイミングの違いを利用して、第1音波信号と第2音波信号とを容易に識別することができる。
【0010】
いくつかの態様において、第2音波送受信部は、第1音波送受信部が送信した音波の反射波を示す音波信号を制御部が検出した後に、音波を送信してもよい。この場合、第2音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号が、第1音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号よりも先に検出されてしまう事態を抑制できる。すなわち、第2音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号が第1音波信号として誤って識別されてしまう事態を抑制できる。これにより、制御部は、音波が送信されるタイミングの違いを利用した第1音波信号及び第2音波信号の識別をより確実に行うことができる。
【0011】
いくつかの態様において、制御部は、検出した音波信号に基づいて水流の流速を取得してもよい。上述したように、検出した音波信号から第1音波信号及び第2音波信号が識別されるので、制御部は、識別された第1音波信号及び第2音波信号に基づいて水流の流速を正確に取得することができる。
【0012】
いくつかの態様において、第1音波送受信部、第2音波送受信部、及び制御部は、水流発電装置に設けられていてもよい。この場合、水流発電装置に搭載され得る音響センサを第1音波送受信部及び第2音波送受信部として利用することができる。従って、第1音波送受信部及び第2音波送受信部を水流発電装置に別途設ける必要が無いので、装置構成の大型化及び複雑化を抑制できる。
【0013】
いくつかの態様において、係留装置は、水底に配置された錘部と、錘部に水流発電装置を連結する係留索部と、を有し、第1音波送受信部、第2音波送受信部、及び制御部は、錘部に設けられていてもよい。この場合、錘部は、水中を浮遊する水流発電装置とは異なり、水中における位置が固定されるため、制御部は、音波信号に基づく情報を取得することで、水中における所定範囲の水流等を定点観測することができる。
【0014】
本開示の一形態に係る航走体は、水中又は水面を航走する航走体であって、互いに異なる位置に配置され、水中に音波を送信すると共に音波の反射波を受信する第1音波送受信部及び第2音波送受信部と、第1音波送受信部及び第2音波送受信部が受信した反射波を音波信号として検出し、音波信号に基づく情報を取得する制御部と、を備え、制御部は、検出した音波信号から、第1音波送受信部に起因する反射波を示す第1音波信号を識別すると共に、第2音波送受信部に起因する反射波を示す第2音波信号を識別する。
【0015】
この航走体では、第1音波送受信部及び第2音波送受信部が音波の反射波を受信すると、制御部がその反射波を音波信号として検出する。ここで、制御部は、検出した音波信号から、第1音波送受信部に起因する反射波を示す第1音波信号を識別すると共に、第2音波送受信部に起因する反射波を示す第2音波信号を識別する。これにより、実際には第1音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号が、第2音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号として誤って検出されてしまう事態を抑制できる。また、実際には第2音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号が、第1音波送受信部に起因する反射波を示す音波信号として誤って検出されてしまう事態を抑制できる。その結果、制御部は、識別された第1音波信号及び第2音波信号に基づいて情報を正確に取得することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示のいくつかの態様によれば、音波の送受信に基づく情報を正確に取得することができる水流発電システム及び航走体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水流発電システムの概略構成図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す水流発電装置の制御装置の構成図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る水流発電システムの水流発電装置の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る水流発電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。以下の説明において、「上流」又は「下流」との語は、水の流れを基準として用いられる。「前」との語は、水の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水の流れの下流側を意味する。「左」又は「右」との語は、水の流れに対して垂直で且つ水平な方向を意味し、前方すなわち上流側から見た場合を基準として用いられる。
【0019】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る水流発電システムについて説明する。第1実施形態では、「音波送受信部」及び「制御部」が水流発電装置に設けられる場合を例示する。
図1は、水流発電システム1の概略構成図である。
図1に示すように、水流発電システム1は、水流発電装置2と、係留装置7と、を備える。水流発電装置2は、水中を浮遊しながら、水流FWを利用して発電を行う浮遊式の水流発電装置である。水流発電装置2は、水中における所定の深度(水深)に配置された本体部20と、本体部20に搭載された複数の音響センサ30(後述する
図3参照)と、を備えている。係留装置7は、水流発電装置2を所定の水域に留めるために設けられている。係留装置7は、水底WBに配置された錘部3と、錘部3に水流発電装置2を連結する係留索部4と、を備えている。
【0020】
図2は、水流発電装置2の斜視図である。
図2に示すように、本体部20は、一対の発電ポッド21と、クロスビーム22と、各発電ポッド21に設けられたタービン23と、各タービン23に電気的に接続された発電機(不図示)と、を備えている。発電ポッド21は、水中を浮遊可能な浮体である。発電ポッド21は、例えば、円筒形状をなす中空の容器である。一対の発電ポッド21は、例えば左右に互いに離間して配置されている。発電ポッド21の前部21aは水流FWの上流に位置しており、発電ポッド21の後部21bは水流FWの下流に位置している。
【0021】
一対の発電ポッド21は、クロスビーム22によって連結されている。クロスビーム22は、例えば、中空の板状部材である。クロスビーム22は、その内部に空洞を有することによって、浮力を発生することができる。クロスビーム22は、浮遊する水流発電装置2の姿勢を安定させるべく、例えば翼形状をなしている。クロスビーム22は、例えば、一対の発電ポッド21の胴部の中央部に固定されている。
【0022】
発電ポッド21は、係留索部4を介して錘部3に接続されている。錘部3は、例えば、直方体状をなしており、その底面が水底WBに配置されている。錘部3は、例えば、摩擦式のシンカーでもよいし、その他のシンカーでもよい。或いは、錘部3は、水底WBに固定されたアンカーでもよい。この場合、アンカーは、パイル式のアンカーでもよく、サクション式のアンカーでもよく、その他のアンカーでもよい。係留索部4の下端は錘部3に接続され、係留索部4の上端は発電ポッド21に接続されている。係留索部4の上端は、例えば一対の発電ポッド21にそれぞれ接続されている。係留索部4は、発電ポッド21に代えて、クロスビーム22に接続されていてもよい。
【0023】
発電ポッド21にはケーブル5が接続されている。ケーブル5は、発電機によって生成された電力を伝送するための送電ケーブルと、陸上設備6(
図1参照)と通信するための通信ケーブルと、を含む。ケーブル5は、係留索部4に沿って発電ポッド21から錘部3に向けて延びるとともに、水底WBに沿って係留索部4から陸上設備6に向けて延びている。
【0024】
タービン23は、発電用のタービンである。タービン23は、発電ポッド21の後部21bに回転可能に設けられている。本実施形態では、タービン23として、いわゆるダウンウィンド型のタービンが採用されている。なお、タービン23は、アップウィンド型のタービンであってもよい。タービン23は、複数枚(例えば2枚)のブレードと、を含んでいる。本実施形態に係る水流発電装置2は、ダウンウィンド型のタービンを採用しているので、発電ポッド21の下流にブレードが配置されている。
【0025】
タービン23には、発電ポッド21に収容された不図示の回転軸が連結されている。タービン23の回転は、当該回転軸を介して発電ポッド21内の発電機に伝達される。当該回転軸は、例えば発電ポッド21の中心軸線に沿って設けられている。発電機は、タービン23の回転駆動力によって発電する。
【0026】
図3は、水流発電装置2を前側から見た正面図である。
図4は、水流発電装置2を右側から見た側面図である。
図3及び
図4に示すように、本体部20の外面に、複数の(本実施形態では、8個)の音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H(本実施形態における「音波送受信部」)が設けられている。以下の説明において、「音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H」をそれぞれ区別して説明する必要がない場合には、これらを総称して「音響センサ30」という。
【0027】
音響センサ30は、水中に音波を送信する音波送信器と、音波の反射波を受信する音波受信器とを含む音波送受信器である。音響センサ30は、或る一定の指向範囲R内において音響通信による情報の送受信を行う。或る一定の指向範囲Rとは、音響センサ30の発音源を中心とした球状において指向角度によって定義される範囲である。
【0028】
音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hは、その指向範囲Rが本体部20の周辺の領域を万遍なく含むように、本体部20の外面において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、
図3に示すように、音響センサ30A及び30Eは、左側の発電ポッド21の左側端部に配置され、音響センサ30B及び30Fは、左側の発電ポッド21の右側端部に配置されている。また、音響センサ30C及び30Gは、右側の発電ポッド21の左側端部に配置され、音響センサ30D及び30Hは、右側の発電ポッド21の右側端部に配置されている。
【0029】
音響センサ30A,30B,30C,及び30Dは、音響センサ30E,30F,30G,及び30Hに対して上側に配置され、音響センサ30A,30B,30C,及び30Dの指向範囲Rは、本体部20の上側を向くように設置されている。換言すると、音響センサ30A,30B,30C,及び30Dの指向範囲Rは、水面WSに向いている。音響センサ30E,30F,30G,及び30Hは、音響センサ30A,30B,30C,及び30Dに対して下側に配置され、音響センサ30E,30F,30G,及び30Hの指向範囲Rは、本体部20の下側を向くように設置されている。換言すると、音響センサ30E,30F,30G,及び30Hの指向範囲Rは、水底WBに向いている。また、音響センサ30E,30F,30G,及び30Hの指向範囲Rの向きは、音響センサ30A,30B,30C,及び30Dの指向範囲Rの向きと逆であるともいえる。各音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hの指向範囲Rが重なる部分は、重複部分RAとなっている。このように重複部分RAが形成されるように、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hを本体部20に配置することで、指向範囲Rにおける音響通信を精度良く行うことができる。
【0030】
図5は、水流発電装置2に搭載される制御装置40(本実施形態における「制御部」)の構成図である。制御装置40は、音響センサ30と電気的に接続されたコンピュータである。制御装置40は、CPU及びメモリ等を有し、メモリに記憶されたプログラムに従って動作する。制御装置40は、例えば、音響センサ30を制御するセンサ制御部41と、音響センサ30が受信した音波の反射波を処理する音波処理部42と、を有している。
【0031】
センサ制御部41は、例えば、周波数設定部41aと、起動指示部41bと、送信指示部41cと、を含んでいる。周波数設定部41aは、音響センサ30が送信する音波の周波数を設定する。本実態形態では、周波数設定部41aは、各音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信する音波の周波数を互いに異なる周波数に設定する。各音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信する音波の周波数は、例えば、少なくとも200kHz以上離れるように設定されてもよいし、少なくとも500kHz以上離れるように設定されてもよい。例えば、音響センサ30Aが送信する音波の周波数は、音響センサ30Bが送信する音波の周波数よりも200kHz以上高くてもよい。
【0032】
起動指示部41bは、音響センサ30の起動を指示する起動信号、又は音響センサ30の起動停止を指示する起動停止信号を、音響センサ30に出力する。送信指示部41cは、音響センサ30による音波の送信を指示する送信信号を音響センサ30に出力する。本実施形態では、送信指示部41cは、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hに対して送信信号を同時に出力し、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hは、当該送信信号を受けて音波を同時に送信する。
【0033】
音波処理部42は、音響センサ30が受信した反射波を音波信号として処理する。音波処理部42は、例えば、音波検出部42aと、計測部42bと、を含んでいる。音波検出部42aは、音響センサ30が受信した反射波を音波信号として検出する。本実施形態では、上述したように音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが音波を同時に送信するので、それら音波の反射波は、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hに同時に受信され得る。従って、例えば、音響センサ30Aには、自己が送信した音波の反射波に加え、音響センサ30B等の別の音響センサ30が送信した音波の反射波が同時に受信され得る。
【0034】
ここで、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信する音波の周波数は、周波数設定部41aによって互いに異なる周波数に設定されている。そこで、音波検出部42aは、音波の周波数の違いに基づいて、検出した音波信号から、各音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hに起因する反射波を示す音波信号をそれぞれ識別する。本実施形態において、「音響センサ30に起因する反射波」とは、音響センサ30が送信した音波の反射波、すなわち、音響センサ30に対応する反射波を意味する。
【0035】
例えば、音響センサ30A(本実施形態における「第1音波送受信部」)と音響センサ30B(本実施形態における「第2音波送受信部」)との関係に着目する。音響センサ30Aが送信した音波が周波数FAである場合、音響センサ30Aが送信した音波の反射波は、周波数FAに対応する周波数FAaを有する。同様に、音響センサ30Bが送信した音波が周波数FBを有する場合、音響センサ30Bが送信した音波の反射波は、周波数FBに対応する周波数FBaを有する。例えば、周波数FAaは、周波数FAに一致する場合もあるし、周波数FAaからずれる場合もあり得る。しかし、周波数FAと周波数FAaとのずれは、音響センサ30Aの周波数FAと音響センサ30Bの周波数FBとの差分と比べると極めて小さい。
【0036】
そこで、音波検出部42aは、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが受信した反射波のうち、周波数FAaを有する反射波を示す音波信号を、音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号(本実施形態における「第1音波信号」)として識別し、周波数FBaを有する反射波を示す音波信号を、音響センサ30Bに起因する反射波を示す音波信号(本実施形態における「第2音波信号」)として識別する。このような音波信号の識別は、例えば、通過帯域が周波数FAaを含む第1のフィルタと、通過帯域が周波数FAbを含む第2フィルタと、を用いて行うことができる。或いは、特定の周波数を有する反射波のみを通過させるフィルタを音響センサ30に設置することで、音波信号の識別を行うこともできる。
【0037】
上述した音響センサ30Aと音響センサ30Bとの関係は、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hのうちの任意の2個の音響センサ30の間において成立する。従って、音波検出部42aは、検出した音波信号から、音波信号が示す反射波の周波数の違いに基づいて、音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Bに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Cに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Dに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Eに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Fに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Gに起因する反射波を示す音波信号と、音響センサ30Hに起因する反射波を示す音波信号と、を識別することができる。
【0038】
計測部42bは、音波検出部42aによって検出された音波信号に基づいて、水流発電装置2の周辺の情報を取得する。例えば、計測部42bは、水流発電装置2の周辺を流れる水流の流速分布を計測して取得する。水流発電装置2が発電する電力は、周辺の水流の流速の変動に影響されやすい。このため、計測部42bによって周辺の流速分布を取得できれば、水中における所望の流速が得られる位置にタービン23を移動させることによって、水流発電装置2の発電効率を向上させることが可能となる。なお、計測部42bによる周辺の流速分布の計測は、例えば、音響センサ30から音波が送信されてから、その音波の反射波が音響センサ30に受信されるまでの音波の伝播時間に基づいて行うことができる。
【0039】
再び、
図3及び
図4を参照する。
図3及び
図4に示すように、水流発電装置2の周辺には、探査ロボット50が航走している。本実施形態において、探査ロボット50は、無人で水中を自律航走する水中航走体(Autonomous Underwater Vehicle:AUV)である。探査ロボット50は、無人で水面を自律航走する水面航走体(Autonomous Surface Vehicle:ASV)であってもよい。探査ロボット50は、例えば、水中における水流発電装置2の上側の領域を、予め定められた経路に沿って航走する。探査ロボット50は、水流発電装置2との間で音響通信可能に構成されている。探査ロボット50は、水中に配置された本体部51と、本体部51の外面に配置された音響通信器52と、を備えている。
【0040】
本体部51は、水中を航走可能に構成されている。音響通信器52は、例えば、本体部51の外面における下側(すなわち、水流発電装置2側)に配置されている。音響通信器52は、水流発電装置2の音響センサ30から送信された音波を受信する。また、探査ロボット50は、水流発電装置2と同様の音波処理部42を備えている。従って、音響通信器52が受信した音波は、探査ロボット50の音波処理部42の音波検出部42aによって検出され、当該音波処理部42の計測部42bによって、音波信号に基づく情報が取得される。
【0041】
上述したように、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信する音波の周波数は、互いに異なる周波数に設定されているので、探査ロボット50の音波処理部42も、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信した音波を示す音波信号から、その音波の周波数の違いに基づいて、各音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hに起因する音波を示す音波信号をそれぞれ識別することができる。
【0042】
図3に示す例では、探査ロボット50は、音響センサ30Cの指向範囲Rと、音響センサ30Dの指向範囲Rとの重複部分RAに位置しているので、探査ロボット50の音響通信器52は、音響センサ30Cが送信した音波と、音響センサ30Dが送信した音波とを同時に受信し得る。ここで、音響センサ30Cが送信した音波が周波数FCを有し、音響センサ30Dが送信した音波が周波数FDを有する場合、探査ロボット50の音波検出部42aは、音響通信器52が受信した音波のうち、周波数FCに対応する周波数FCaを有する音波を示す音波信号を、音響センサ30Cに起因する音波を示す音波信号として識別し、周波数FDに対応する周波数FDaを有する音波を示す音波信号を、音響センサ30Dに起因する音波を示す音波信号として識別する。このようにして、探査ロボット50の音波検出部42aは、音響センサ30が送信した音波を示す音波信号から、その音波の周波数の違いに基づいて、音響センサ30毎に識別することができる。
【0043】
探査ロボット50の計測部42bは、識別された音波信号に基づいて、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を計測(推定)する。具体的には、探査ロボット50の計測部42bは、識別された音波信号を受信することで、その音波信号に対応する音響センサ30の位置と、水流発電装置2の形状モデルとに基づいて、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を計測する。上述したように、探査ロボット50の音波処理部42は、音波の周波数の違いに基づいて音波信号を音響センサ30毎に識別しているので、検出した音波信号に対応する音響センサ30の位置を正確に取得することができる。その結果、探査ロボット50の計測部42bは、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を精度良く測定することが可能となる。
【0044】
続いて、本実施形態に係る水流発電システム1の効果について説明する。本実施形態に係る水流発電システム1では、上述したように、音波検出部42aは、検出した音波信号を音響センサ30毎に識別する。例えば、音響センサ30Aと音響センサ30Bとの関係に着目すると、音波検出部42aは、検出した音波信号から、音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号を識別すると共に、音響センサ30Bに起因する反射波を示す音波信号を識別する。これにより、実際には音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号が、音響センサ30Bに起因する反射波を示す音波信号として誤って検出されてしまう事態を抑制できる。また、実際には音響センサ30Bに起因する反射波を示す音波信号が、音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号として誤って検出されてしまう事態を抑制できる。このように音波検出部42aが音波信号を音響センサ30毎に識別することによって、計測部42bは、識別された音波信号に基づいて周辺の水流の流速等の情報を正確に取得することができる。また、本実施形態に係る水流発電装置2によれば、上述したような音波信号の誤検出を避けるために音響センサ30を遠い位置に配置する等の対応をとる必要がなく、音響センサ30の配置の制約がないので、設計の自由度を向上できる。
【0045】
本実施形態において、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hは、互いに異なる周波数を有する音波を送信し、水流発電装置2の音波検出部42aは、それら音波の周波数の違いに基づいて、検出した音波信号を音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に識別している。このように、水流発電装置2の音波検出部42aは、音波の周波数の違いを利用することで、その音波の反射波を示す音波信号を音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に容易に識別することができる。
【0046】
本実施形態において、水流発電装置2の計測部42bは、音波検出部42aによって検出された音波信号に基づいて本体部20の周辺の水流の流速分布を取得している。上述したように、検出された音波信号は音響センサ30毎に識別されるので、水流発電装置2の計測部42bは、識別された音波信号に基づいて、本体部20の周辺の水流の流速を正確に取得することができる。
【0047】
本実施形態において、音響センサ30及び制御装置40は、水流発電装置2に設けられている。この構成では、水流発電装置2に既に搭載されている音響センサ30を利用して音波信号の識別を行うことができるので、水流発電装置2に「音波送受信部」を別途設けることなく、音波の送受信に基づく情報を取得することができる。これにより、装置構成の大型化・複雑化を抑制できる。
【0048】
本実施形態において、探査ロボット50の計測部42bは、水流発電装置2の音響センサ30から送信された音波の音波信号に基づいて、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を計測している。このように、水流発電装置2に既に搭載されている音響センサ30を利用して水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を計測することで、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を計測するための音響灯台装置等の音響通信器を別途用意する必要が無くなる。これにより、このような音響通信器を別途用意することによる装置単価の増大、及び、当該音響通信器のメンテナンスに要するコストの増大を回避することができる。
【0049】
なお、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置の計測のために、探査ロボット50に音響通信器52を搭載することが必要になるが、探査ロボット50への音響通信器52の搭載は、水流発電装置2への音響通信器の搭載よりも容易に行うことができ、探査ロボット50は、水流発電装置2よりも陸上へ容易に揚収することができるので、探査ロボット50に搭載される音響通信器52のメンテナンスは比較的容易である。従って、探査ロボット50への音響通信器52の搭載によるコストは、水流発電装置2への音響通信器の搭載によるコストと比べて小さく抑えられる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る水流発電システムについて説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0051】
第1実施形態では、音響センサ30によって送信される音波の周波数が互いに異なる場合を例示したが、第2実施形態では、音響センサ30によって音波が送信されるタイミングが互いに異なる場合を例示する。第2実施形態では、周波数設定部41aは、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信する音波の周波数を互いに同一に設定する。そして、送信指示部41cは、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hに対して互いに異なるタイミングで送信信号を出力する。従って、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hは、送信指示部41cからの送信信号に従って、互いに異なるタイミングで音波を送信する。具体的には、或る音響センサ30が音波を送信した後のタイミングであって、その音波の反射波を示す音波信号が音波検出部42aに検出された後のタイミングで、次の音響センサ30が音波を送信する。
【0052】
例えば、送信指示部41cが音響センサ30Aに送信信号を出力すると、音響センサ30Aが送信信号を受けて音波を送信し、音波検出部42aは、その音波の反射波を音波信号として検出する。そして、送信指示部41cは、音波検出部42aが当該音波信号を検出したことを確認すると、次の音響センサ30Bに送信信号を出力し、音響センサ30Bが送信信号を受けて音波を送信する。そして、音波検出部42aがその音波の反射波を音波信号として検出すると、送信指示部41cは、音波検出部42aが当該音波信号を検出したことを確認して次の音響センサ30Cに送信信号を出力する。この動作を繰り返すことにより、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hから音波が送信されるタイミングを互いにずらすことができる。
【0053】
このように、音響センサ30Aが音波を送信した後のタイミング、具体的には、音波検出部42aがその音波の音波信号を検出した後のタイミングで、次の音響センサ30Bが音波を送信するように構成されている。例えば、音響センサ30A(本実施形態における「第1音波送受信部」)に音波を送信させた後に音響センサ30B(本実施形態における「第2音波送受信部」)に音波を送信させる場合、音響センサ30Aが送信した音波の反射波は、音響センサ30Bが送信した音波の反射波よりも先に音響センサ30Aに到達して音波信号として音波検出部42aに検出される。そこで、音波検出部42aは、音響センサ30A及び音響センサ30Bに対応する音波信号のうち、先に検出した音波信号を、音響センサ30Aに起因する反射を示す音波信号(本実施形態における「第1音波信号」)として識別し、後に検出した音波信号を、音響センサ30Bに起因する反射を示す音波信号(本実施形態における「第2音波信号」)として識別する。
【0054】
上述した音響センサ30Aと音響センサ30Bとの関係は、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hのうちの任意の2個の音響センサ30の間において成立する。従って、音波検出部42aは、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが音波を送信するタイミングの違いに基づいて、検出した音波信号を、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に識別することができる。
【0055】
本実施形態では、送信指示部41cは、音波検出部42aが或る音響センサ30の送信した音波の反射波を示す音波信号を検出したことを確認してから、次の音響センサ30に送信信号を出力しているが、送信指示部41cは、一定時間が経過する度に次の音響センサ30に送信信号を出力してもよい。この場合、送信指示部41cが或る音響センサ30に送信信号を出力してから次の音響センサ30に送信信号を出力するまでの時間は、或る音響センサ30が音波を送信してからその音波の反射波を示す音波信号が音波検出部42aによって検出されるまでの時間以上に設定されていればよい。
【0056】
上述した制御装置40の処理について、
図6を参照してより詳細に説明する。
図6は、制御装置40の処理方法の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、起動指示部41bは、全ての音響センサ30に起動停止信号を出力する(ステップS11)。次に、起動指示部41bは、使用したい音響センサ30を選択する(ステップS12)。使用したい音響センサ30とは、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hのうちの任意の音響センサ30である。ここでは、起動指示部41bが音響センサ30Aを最初に選択した場合について説明する。
【0057】
次に、起動指示部41bは、選択した音響センサ30Aに起動信号を出力し(ステップS13)、その音響センサ30Aが起動したか否かを判定する(ステップS14)。音響センサ30Aが起動したと判定された場合には(ステップS14においてYes)、送信指示部41cは、音響センサ30Aに音波を送信させる送信信号を出力する(ステップS15)。一方、音響センサ30Aが起動していないと判定された場合には(ステップS14においてNo)、再度ステップS13が行われる。
【0058】
次に、送信指示部41cは、音響センサ30Aが音波を送信したか否かを判定する(ステップS16)。音響センサ30Aが音波を送信したと判定された場合には(ステップS16においてYes)、音波検出部42aが、音響センサ30Aが送信した音波の反射波を音波信号として検出する(ステップS17)。一方、音響センサ30Aが音波を送信していないと判定された場合には(ステップS16においてNo)、再度ステップS15が行われる。
【0059】
次に、起動指示部41bは、音波検出部42aが音波信号を検出したか否かを判定する(ステップS18)。音波検出部42aが音波信号を検出したと判定された場合には(ステップS18においてYes)、起動指示部41bは、音響センサ30Aに起動停止信号を出力する(ステップS19)。このとき、音波検出部42aは、検出した音波信号を、音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号として識別する。一方、音波検出部42aが音波信号を検出していないと判定された場合には(ステップS18においてNo)、再度ステップS18が行われる。
【0060】
次に、起動指示部41bは、音響センサ30Aが起動停止したか否かを判定する(ステップS20)。音響センサ30Aが起動停止したと判定された場合には(ステップS20においてYes)、再度ステップS11に戻り、ステップS11からステップS20が繰り返される。一方、音響センサ30Aが起動停止していないと判定された場合には(ステップS20においてNo)、再度ステップS19が行われる。
【0061】
再度ステップS11に戻ってステップS12が行われる際には、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hのうち、既に選択された音響センサ30A以外の音響センサ30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hのいずれかが選択される。このように、ステップS12が行われる度に、既に選択された音響センサ30以外の別の音響センサ30が選択されるようにすることで、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hから音波を互いに異なるタイミングで送信させることが可能となり、音波が送信されるタイミングの違いに基づいて音波信号を音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に識別することが可能となる。そして、全ての音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが選択されて使用されたら、制御装置40は、一連の動作を終了する。
【0062】
上述したように、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hは、互いに異なるタイミングで音波を送信するので、探査ロボット50の音波処理部42も、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが送信した音波を示す音波信号を、その音波が送信されるタイミングの違いに基づいて音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に識別することができる。
【0063】
例えば、
図3に示す例において、音響センサ30Cが音波を送信した後のタイミングで、音響センサ30Dが音波を送信した場合、探査ロボット50の音波検出部42aは、先に検出した音波信号を、音響センサ30Cに起因する音波を示す音波信号として識別し、後に検出した音波信号を、音響センサ30Dに起因する音波を示す音波信号として識別する。このようにして、探査ロボット50の音波検出部42aは、音響センサ30が送信した音波を示す音波信号を、その音波が送信されるタイミングの違いに基づいて音響センサ30毎に識別することができる。その結果、第1実施形態と同様に、探査ロボット50の計測部42bは、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を精度良く測定することが可能となる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態では、音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30Hが互いに異なるタイミングで音波を送信し、水流発電装置2の音波検出部42aが、それらタイミングの違いに基づいて、検出した音波信号を音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に識別している。このように、水流発電装置2の音波検出部42aは、音波が送信されるタイミングの違いを利用することで、その音波の反射波を示す音波信号を音響センサ30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,及び30H毎に容易に識別することができる。
【0065】
本実施形態において、水流発電装置2の音波検出部42aは、その音波の音波信号を検出した後のタイミングで、次の音響センサ30が音波を送信している。これにより、例えば、或る音響センサ30Aに起因する反射波を示す音波信号よりも、次の音響センサ30Bに起因する反射波を示す音波信号が先に検出されてしまう事態を抑制できる。従って、水流発電装置2の音波検出部42aは、音波が送信されるタイミングの違いを利用した音響センサ30毎の音波信号の識別をより確実に行うことができる。
【0066】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る水流発電システムについて説明する。第3実施形態の説明において、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0067】
第1実施形態では、「音波送受信部」及び「制御部」が水流発電装置に設けられる場合を例示したが、第3実施形態では、「音波送受信部」及び「制御部」が係留装置に設けられる場合を例示する。
図7は、第3実施形態に係る水流発電システム1Aの概略構成図である。
図7に示すように、係留装置7Aは、錘部3に設けられた複数(本実施形態では2個)の音波送受信器30J及び30Kを備えている。
【0068】
音波送受信器30J及び30Kは、錘部3の上面側(すなわち、水底WBとは反対側)に設けられており、前後に並んで配置されている。音波送受信器30J及び30Kは、上述した音響センサ30と同様の機能を有している。係留装置7Aは、第1実施形態と同様の制御装置40を更に備えている。制御装置40は、例えば錘部3に搭載されており、音波送受信器30J及び30Kと電気的に接続されている。本実施形態では、制御装置40の周波数設定部41aは、第1実施形態と同様に、音波送受信器30J及び30Kが送信する音波の周波数を互いに異なる周波数に設定している。そして、制御装置40の音波検出部42aは、その音波の反射波が有する周波数の違いに基づいて、検出した音波信号を音波送受信器30J及び30K毎に識別する。
【0069】
すなわち、音波送受信器30J(本実施形態における「第1音波送受信部」)が送信した音波が周波数FJを有し、音波送受信器30K(本実施形態における「第2音波送受信部」)が送信した音波が周波数FKを有する場合、音波検出部42aは、音波送受信器30J及び30Kが受信した反射波のうち、周波数FJに対応する周波数FJaを有する反射波を示す音波信号を、音波送受信器30Jに起因する反射波を示す音波信号(本実施形態における「第1音波信号」)として識別し、周波数FKに対応する周波数FKaを有する反射波を示す音波信号を、音波送受信器30Kに起因する反射波を示す音波信号(本実施形態における「第2音波信号」)として識別する。
【0070】
従って、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態において、音響センサ30及び制御装置40は、錘部3に設けられている。錘部3は、水中を浮遊する水流発電装置2とは異なり、水中における位置が固定されるため、制御装置40は、音波信号に基づく情報を取得することで、水中における所定範囲の水流等を定点観測することができる。なお、本実施形態において、第2実施形態と同様に、音波検出部42aが、音波が送信されるタイミングの違いに基づいて、検出した音波信号を音波送受信器30J及び30K毎に識別してもよい。
【0071】
また、探査ロボット50の音波検出部42aも、音波送受信器30J及び30Kが送信した音波を示す音波信号を、その音波の周波数の違いに基づいて音波送受信器30J及び30K毎に識別してもよい。或いは、音波送受信器30J及び30Kが音波を送信するタイミングが互いに異なる場合は、探査ロボット50の音波検出部42aは、音波送受信器30J及び30Kが送信した音波を示す音波信号を、音波送受信器30J及び30Kが音波を送信するタイミングの違いに基づいて、音波送受信器30J及び30K毎に識別してもよい。そして、探査ロボット50の計測部42bは、識別された音波信号に基づいて、錘部3に対する探査ロボット50の相対位置を計測(推定)してもよい。
【0072】
本開示は、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、上述した各実施形態において、「音波送受信部」及び「制御部」が水流発電装置2又は係留装置7Aに設けられる場合を示したが、「音波送受信部」及び「制御部」は、「航走体」としての探査ロボット50に設けられてもよい。この場合、探査ロボット50は、「音波送受信部」としての複数の音響通信器52(
図3及び
図4参照)と、「制御部」としての制御装置40(
図3及び
図5参照)とを備え、音響通信器52は、上述した音響センサ30又は音波送受信器30J及び30Kと同様の機能を有する。
【0073】
そして、探査ロボット50の各音響通信器52が、互いに異なる周波数の音波を送信するか、或いは互いに異なるタイミングで音波を送信することにより、制御装置40の音波検出部42aがその音波の反射波を示す音波信号を音響通信器52毎に識別し、制御装置40の計測部42bがその音波信号に基づく情報を正確に取得できる。従って、このような形態であっても、上述した各実施形態と同様の効果を奏する。また、探査ロボット50の計測部42bは、上述した各実施形態と同様に、水流発電装置2に対する探査ロボット50の相対位置を取得してもよい。
【0074】
上述した各実施形態では、音響センサ30が、音波送信器と音波受信器とを含む音波送受信器である場合について説明したが、音波送信器と音波受信器とは別個に構成されてもよい。上述した第1実施形態及び第2実施形態では、8個の音響センサ30が水流発電装置2に配置される場合について説明したが、音響センサの数はこれに限られず、2個、3個、或いは4個以上でもよい。上述した第3実施形態においても同様に、音波送受信器の数は、2個に限られず、3個、或いは4個以上でもよい。また、音響センサの配置、音波送受信器、及び音波通信器の配置は、上述した各実施形態の例に限られず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1,1A 水流発電システム
2 水流発電装置
3 錘部
4 係留索部
7,7A 係留装置
30,30C~30H 音響センサ
30A 音響センサ(第1音波送受信部)
30B 音響センサ(第2音波送受信部)
30J,30K 音波送受信器
40 制御装置(制御部)
50 探査ロボット(航走体)
52 音響通信器
FW 水流
WB 水底