(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20240312BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F04C2/10 341F
F04C15/00 G
(21)【出願番号】P 2020107746
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孔二
(72)【発明者】
【氏名】呉 楠
(72)【発明者】
【氏名】グエン ティ タンタム
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105289(JP,A)
【文献】特開2018-127918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0200477(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011087307(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第110529378(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08- 2/28
F04C 11/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なシャフトを有するモータ部と、
前記モータ部の軸方向一方側に位置し、前記シャフトに連結されたポンプ部と、
を備え、
前記ポンプ部は、
前記シャフトに連結されたインナーロータと、
前記インナーロータを囲み、前記インナーロータと噛み合うアウターロータと、
を有し、
前記インナーロータは、前記シャフトの一部が挿入された穴部を有し、
前記シャフトは、
前記中心軸を中心とする径方向に前記インナーロータを支持する支持部と、
前記インナーロータにトルクを伝達するトルク伝達部と、
を有し、
前記穴部は、
前記支持部が内部に嵌め合わされた嵌合穴部と、
前記トルク伝達部が内部に挿入され、かつ、前記トルク伝達部が前記中心軸回りに連結する連結穴部と、
を有
し、
前記インナーロータは、
インナーロータ本体部と、
前記インナーロータ本体部から軸方向に突出する突出部と、
を有し、
前記穴部は、前記インナーロータ本体部と前記突出部とに跨って設けられ、
前記嵌合穴部は、前記インナーロータ本体部に設けられ、
前記連結穴部は、前記インナーロータ本体部と前記突出部とに跨って設けられている、電動ポンプ。
【請求項2】
前記トルク伝達部は、外周面に複数の外歯部を有し、
前記連結穴部は、内周面に前記複数の外歯部と互いに噛み合う複数の内歯部を有する、請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記連結穴部の内径は、前記嵌合穴部の内径よりも小さく、
前記トルク伝達部の外径は、前記支持部の外径よりも小さい、請求項
1又は請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記突出部の外径は、前記嵌合穴部の内径よりも大きい、請求項
3に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプ部は、前記インナーロータおよび前記アウターロータを内部に収容するポンプ室を有し、
前記ポンプ室の内側面のうち軸方向一方側の面には、前記突出部を内部に収容する凹部が設けられている、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記穴部は、前記インナーロータを軸方向に貫通し、
前記シャフトの軸方向一方側の端部は、前記インナーロータよりも軸方向一方側に突出し、かつ、前記凹部の内部に収容され、
前記凹部は、
内部に前記突出部が挿入された大径部と、
内部に前記シャフトの軸方向一方側の端部が挿入され、内径が前記大径部の内径よりも小さい小径部と、
を有する、請求項
5に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記穴部は、前記インナーロータを軸方向に貫通し、
前記トルク伝達部は、前記支持部よりも軸方向一方側に位置し、かつ、前記穴部を介して前記インナーロータよりも軸方向一方側に突出し、
前記トルク伝達部の軸方向一方側の端部は、軸方向一方側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ部を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ部のシャフトにインナーロータが連結された構造を有する電動ポンプが知られている。例えば、特許文献1には、そのような電動ポンプとして、車両用無段変速機のミッションケース内に配置されるオイルポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動ポンプにおいては、電動ポンプのケースにインナーロータを径方向に位置決めする部分を設ける場合がある。しかし、この場合、ケースの寸法精度が悪い場合、またはケースの組み付け精度が悪い場合等に、インナーロータの径方向位置がずれて、モータ部のシャフトに対してインナーロータを軸精度よく配置できない虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、シャフトに対するインナーロータの軸精度を向上できる構造を有する電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なシャフトを有するモータ部と、前記モータ部の軸方向一方側に位置し、前記シャフトに連結されたポンプ部と、を備える。前記ポンプ部は、前記シャフトに連結されたインナーロータと、前記インナーロータを囲み、前記インナーロータと噛み合うアウターロータと、を有する。前記インナーロータは、前記シャフトの一部が挿入された穴部を有する。前記シャフトは、前記中心軸を中心とする径方向に前記インナーロータを支持する支持部と、前記インナーロータにトルクを伝達するトルク伝達部と、を有する。前記穴部は、前記支持部が内部に嵌め合わされた嵌合穴部と、前記トルク伝達部が内部に挿入され、かつ、前記トルク伝達部が前記中心軸回りに連結する連結穴部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、電動ポンプにおいて、シャフトに対するインナーロータの軸精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動ポンプを示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電動ポンプの一部を示す断面図であって、
図1における部分拡大図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のシャフトの一部およびインナーロータを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のシャフトおよびポンプ部を示す断面図であって、
図2におけるIV-IV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明においては、各図に示すZ軸が延びる方向を上下方向とし、Z軸方向における正の側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。各図に示す中心軸Jの軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。中心軸Jの軸方向と平行な方向、すなわちZ軸方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において下側は、「軸方向一方側」に相当する。
【0010】
なお、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示す本実施形態の電動ポンプ10は、例えば、車両に搭載される。電動ポンプ10は、車両の内部において流体を送る。電動ポンプ10によって送られる流体は、例えば、オイルである。オイルは、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)である。
図1に示すように、本実施形態の電動ポンプ10は、モータ部20と、ケース30と、ポンプ部40と、ベアリング51,52と、バスバーユニット60と、センサマグネット70と、オイルシール80と、を備える。
【0012】
モータ部20は、ロータ20aと、ステータ20bと、を有する。ロータ20aは、シャフト21と、ロータ本体22と、を有する。つまり、モータ部20は、シャフト21と、ロータ本体22と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体22は、シャフト21の外周面に固定されたロータコアと、ロータコアに固定されたロータマグネットと、を有する。
【0013】
シャフト21は、中心軸Jに沿って軸方向に延びている。シャフト21は、例えば、中心軸Jを中心とする円柱状である。シャフト21は、軸方向に延びる中心軸Jを中心として回転可能である。シャフト21は、ベアリング51,52によって中心軸J回りに回転可能に支持されている。ベアリング51,52は、例えば、ボールベアリングである。シャフト21は、小径シャフト部21aと、被取付部21bと、大径シャフト部21cと、支持部21dと、トルク伝達部21eと、を有する。
【0014】
小径シャフト部21aの外周面には、ロータ本体22が固定されている。小径シャフト部21aは、ロータ本体22よりも軸方向両側に突出している。小径シャフト部21aの上側の端部は、ベアリング52によって中心軸J回りに回転可能に支持されている。つまり、ベアリング52は、シャフト21のうちロータ本体22よりも上側に位置する部分を回転可能に支持している。
【0015】
被取付部21bは、小径シャフト部21aの上側に段差を介して繋がっている。被取付部21bの外径は、小径シャフト部21aの外径よりも小さい。本実施形態において被取付部21bの上側の端部は、シャフト21の上側の端部である。被取付部21bの軸方向の寸法は、例えば、小径シャフト部21aの軸方向の寸法よりも小さい。被取付部21bには、取付部材71を介してセンサマグネット70が取り付けられている。
【0016】
大径シャフト部21cは、小径シャフト部21aの下側に段差を介して繋がっている。大径シャフト部21cの外径は、小径シャフト部21aの外径よりも大きい。大径シャフト部21cの軸方向の寸法は、例えば、小径シャフト部21aの軸方向の寸法よりも小さい。大径シャフト部21cの上側部分は、ベアリング51によって中心軸J回りに回転可能に支持されている。つまり、ベアリング51は、シャフト21のうちロータ本体22よりも下側に位置する部分を回転可能に支持している。
【0017】
支持部21dは、大径シャフト部21cの下側に段差を介して繋がっている。支持部21dの外径は、例えば、大径シャフト部21cの外径よりも小さい。支持部21dの外径は、例えば、小径シャフト部21aの外径と同じである。支持部21dの軸方向の寸法は、例えば、大径シャフト部21cの軸方向の寸法よりも小さい。
図2に示すように、支持部21dは、後述するインナーロータ41の嵌合穴部44aの内部に嵌め合わされている。支持部21dは、中心軸Jを中心とする径方向にインナーロータ41を支持している。
【0018】
本実施形態においてトルク伝達部21eは、支持部21dの下側に段差を介して繋がっている。つまり、トルク伝達部21eは、支持部21dよりも下側に位置する。本実施形態においてトルク伝達部21eの下側の端部は、シャフト21の下側の端部である。本実施形態においてトルク伝達部21eの外径は、支持部21dの外径よりも小さい。トルク伝達部21eの軸方向の寸法は、例えば、支持部21dの軸方向の寸法よりも小さい。
【0019】
図3に示すように、トルク伝達部21eは、外周面に複数の外歯部21fを有する。外歯部21fは、径方向外側に突出している。複数の外歯部21fは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。外歯部21fは、軸方向に延びている。
図2に示すように、外歯部21fは、例えば、トルク伝達部21eのうち支持部21dよりも僅かに下側に離れた部分から、トルク伝達部21eの下端まで延びている。本実施形態においてトルク伝達部21eは、スプラインシャフト部である。
【0020】
トルク伝達部21eは、後述する穴部44を介してインナーロータ41よりも下側に突出している。トルク伝達部21eの下側の端部は、下側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ部21gを有する。本実施形態においてテーパ部21gは、トルク伝達部21eのうち外歯部21fが設けられた部分に設けられている。トルク伝達部21eのうち外歯部21fが設けられた部分における外径は、例えば、複数の外歯部21fの外周面を通る仮想円筒の内径である。
図3に示すように、テーパ部21gは、例えば、複数の外歯部21fの下端部にそれぞれ設けられた縮径部21hを含む。縮径部21hの径方向外側面は、下側に向かうに従って径方向内側に位置する。縮径部21hにおける外歯部21fの径方向突出高さは、下側に向かうに従って小さくなっている。
【0021】
図1に示すように、ステータ20bは、ロータ20aと径方向に隙間を介して対向している。本実施形態においてステータ20bは、ロータ20aの径方向外側に位置する。ステータ20bは、ステータコア23と、インシュレータ24と、複数のコイル25と、を有する。ステータコア23は、ロータ本体22を囲む環状である。図示は省略するが、ステータコア23は、中心軸Jを中心とする円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。複数のコイル25は、複数のティースのそれぞれにインシュレータ24を介して取り付けられている。
【0022】
ケース30は、モータ部20およびポンプ部40を内部に収容している。本実施形態においてケース30は、ケース本体31と、環状部材32と、ポンプカバー33と、を有する。ケース本体31と環状部材32とポンプカバー33とは、例えば、互いに別部材である。ケース本体31と環状部材32とポンプカバー33とは、例えば、アルミニウム製である。なお、ケース本体31を構成する材料、環状部材32を構成する材料、およびポンプカバー33を構成する材料は、特に限定されない。ケース本体31と環状部材32とポンプカバー33とは、例えば、樹脂製であってもよいし、鋳鉄製であってもよい。また、例えば、ケース本体31および環状部材32が金属製で、ポンプカバー33が樹脂製であってもよい。
【0023】
ケース本体31は、上側に開口する筒状である。ケース本体31は、例えば、中心軸Jを中心とする円筒状である。ケース本体31は、内部にモータ部20を収容している。ケース本体31は、底部31aと、外筒部31bと、内筒部31cと、フランジ部31hと、を有する。底部31aは、ロータ本体22およびステータ20bの下側に位置する。底部31aは、径方向に広がっている。底部31aは、例えば、軸方向に見て、中心軸Jを中心とする円形状である。底部31aは、底部31aを軸方向に貫通する中央孔31gを有する。中央孔31gは、例えば、中心軸Jを中心とする円形状の孔である。中央孔31gには、シャフト21の下側部分が通されている。
【0024】
外筒部31bは、底部31aの径方向外周縁部から上側に延びる筒状である。外筒部31bは、例えば、中心軸Jを中心とし、上側に開口する円筒状である。外筒部31bは、ロータ20aおよびステータ20bの径方向外側に位置する。外筒部31bの内周面には、ステータコア23が固定されている。フランジ部31hは、外筒部31bの上側の端部から径方向外側に突出している。フランジ部31hは、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0025】
内筒部31cは、底部31aから上側に延びる筒状である。内筒部31cは、例えば、中心軸Jを中心とし、上側に開口する円筒状である。内筒部31cは、外筒部31bの径方向内側に位置する。内筒部31cは、軸方向に見て、中央孔31gを囲んでいる。内筒部31cの上側の端部は、外筒部31bの上側の端部よりも下側に位置する。内筒部31cの径方向内側には、シャフト21が軸方向に通されている。内筒部31cは、ベアリング保持部31dと、オイルシール保持部31eと、シャフト嵌合部31fと、を有する。ベアリング保持部31dとオイルシール保持部31eとシャフト嵌合部31fとは、上側から下側に向かってこの順に繋がっている。
【0026】
ベアリング保持部31dの径方向内側には、ベアリング51が保持されている。ベアリング保持部31dの上側の端部は、内筒部31cの上側の端部である。オイルシール保持部31eの内径は、例えば、ベアリング保持部31dの内径よりも小さい。内筒部31cの内周面においてベアリング保持部31dとオイルシール保持部31eとの間には、段差が設けられている。当該段差とベアリング51との軸方向の間には、例えば、ベアリング51に予圧を加えるウェーブワッシャが配置されている。オイルシール保持部31eの径方向内側には、オイルシール80が保持されている。
【0027】
オイルシール80は、シャフト21を囲む環状である。オイルシール80は、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。オイルシール80は、全周に亘ってシャフト21の外周面に接触している。より詳細には、オイルシール80は、全周に亘って大径シャフト部21cの外周面に接触している。オイルシール80は、オイルシール保持部31eの内周面とシャフト21の外周面との間を封止している。オイルシール80によって、後述するポンプ室43内に流入した流体がケース本体31の内部に漏れ出すことが抑制されている。
【0028】
シャフト嵌合部31fは、底部31aに繋がっている。シャフト嵌合部31fの下側の端部は、内筒部31cの下側の端部である。シャフト嵌合部31fの径方向内側には、シャフト21が嵌め合わされている。より詳細には、シャフト嵌合部31fの径方向内側には、大径シャフト部21cの下側の端部が隙間嵌めされている。シャフト嵌合部31fの内径は、例えば、オイルシール保持部31eの内径よりも小さい。内筒部31cの内周面においてオイルシール保持部31eとシャフト嵌合部31fとの間には、段差が設けられている。シャフト嵌合部31fの内径は、中央孔31gの内径よりも大きい。
【0029】
環状部材32は、ケース本体31の下側に位置する。環状部材32は、中心軸Jを囲む環状である。環状部材32の外周縁は、軸方向に見て、例えば、中心軸Jを中心とする円形状である。
図4に示すように、環状部材32の内周縁は、軸方向に見て、例えば、中心軸Jに対して径方向に偏心した偏心軸Eを中心とする円形状である。偏心軸Eは、中心軸Jと平行である。
図1に示すように、環状部材32の上側の面は、底部31aの下側の面に接触している。環状部材32の外径は、例えば、底部31aの外径と同じである。
【0030】
ポンプカバー33は、環状部材32の下側に位置する。ポンプカバー33は、カバー本体部33aと、カバーフランジ部33bと、ノズル部33cと、を有する。カバー本体部33aは、環状部材32の内部を下側から覆っている。カバー本体部33aの上側の面は、環状部材32の下側の面のうち径方向内周縁部と接触している。カバー本体部33aは、例えば、中心軸Jを中心とする円柱状である。カバー本体部33aの外径は、環状部材32の内径よりも大きい。
【0031】
カバーフランジ部33bは、カバー本体部33aの上側の端部から径方向外側に突出している。カバーフランジ部33bは、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。カバーフランジ部33bは、例えば、板面が軸方向を向く板状である。カバーフランジ部33bの上側の面は、環状部材32の下側の面の径方向外側部分と接触している。カバーフランジ部33bの上側の面は、カバー本体部33aの上側の面と滑らかに繋がり、軸方向と直交する平坦面を構成している。
【0032】
カバーフランジ部33bの外径は、例えば、環状部材32の外径と同じである。カバーフランジ部33bは、複数のボルト36によって環状部材32の下側の面に固定されている。ボルト36は、カバーフランジ部33bおよび環状部材32を軸方向に貫通して、ケース本体31に下側から締め込まれている。これにより、複数のボルト36によって環状部材32およびポンプカバー33が、ケース本体31に対して共締めされている。複数のボルト36は、周方向に沿って間隔を空けて設けられている。
【0033】
図2に示すように、本実施形態においては、ケース本体31と環状部材32とポンプカバー33とによって、ポンプ室43が構成されている。ポンプ室43は、後述するインナーロータ41およびアウターロータ42を内部に収容する部分である。ポンプ室43の内側面のうち上側に位置する面は、底部31aの下側の面によって構成されている。ポンプ室43の内側面のうち下側に位置する面43aは、カバー本体部33aの上側の面によって構成されている。ポンプ室43の内側面のうち径方向外側に位置する面は、環状部材32の内周面によって構成されている。
図4に示すように、ポンプ室43は、軸方向に見て、例えば、偏心軸Eを中心とする円形状である。
図2に示すように、ポンプ室43には、シャフト21の一部が挿入されている。より詳細には、ポンプ室43には、支持部21dの下側部分およびトルク伝達部21eの上側部分が挿入されている。本実施形態においてシャフト21は、ポンプ室43を軸方向に貫通している。
【0034】
図1に示すように、ノズル部33cは、カバー本体部33aから下側に突出している。ノズル部33cは、例えば、中心軸Jを中心とする円柱状である。ノズル部33cの外径は、カバー本体部33aの外径よりも小さい。
【0035】
ポンプカバー33は、インポート34aと、アウトポート34bと、を有する。インポート34aは、カバー本体部33aに設けられている。インポート34aは、カバー本体部33aのうちノズル部33cよりも径方向外側に位置する部分を軸方向に貫通している。インポート34aの上側の端部は、環状部材32の内部に開口している。つまり、インポート34aの上側の端部は、ポンプ室43の内部に開口している。アウトポート34bは、カバー本体部33aとノズル部33cとに跨って設けられている。アウトポート34bは、第1流路部34cと、第2流路部34dと、を有する。
【0036】
第1流路部34cは、カバー本体部33aの上側の面から下側斜め径方向内側に延びている。第1流路部34cの上側の端部は、環状部材32の内部に開口している。つまり、アウトポート34bの上側の端部は、ポンプ室43の内部に開口している。第1流路部34cは、例えば、インポート34aとの間で中心軸Jを径方向に挟む位置に設けられている。
【0037】
第2流路部34dは、第1流路部34cの下側の端部から下側に延びている。第2流路部34dは、カバー本体部33aからノズル部33cまで延びて、ノズル部33cを軸方向に貫通している。第2流路部34dにおける軸方向と直交する断面は、例えば、中心軸Jを中心とする円形状である。第2流路部34dの下側の端部は、ノズル部33cの下側の面に開口している。第2流路部34dが設けられることで、ノズル部33cは、中心軸Jを中心とする円筒状となっている。
【0038】
図2に示すように、ポンプカバー33は、ポンプカバー33の上側の面から下側に窪む凹部35を有する。本実施形態において凹部35は、カバー本体部33aの上側の面のうちポンプ室43の内側面の一部を構成する部分から下側に窪んでいる。つまり、ポンプ室43の内側面のうち下側の面43aには、凹部35が設けられている。凹部35の内周縁は、軸方向に見て、例えば、中心軸Jを中心とする円形状である。凹部35は、インポート34aとアウトポート34bとの径方向の間に位置する。凹部35の内部には、シャフト21の下側の端部が収容されている。凹部35は、大径部35aと、小径部35bと、を有する。
【0039】
大径部35aは、凹部35の上側部分である。小径部35bは、凹部35の下側部分である。小径部35bの内径は、大径部35aの内径よりも小さい。大径部35aの内周面と小径部35bの内周面との軸方向の間には、段差が設けられている。大径部35aの内部には、トルク伝達部21eが軸方向に通されている。小径部35bの内部には、上側からトルク伝達部21eの下側の端部が挿入されている。つまり、小径部35bの内部には、シャフト21の下側の端部が挿入されている。小径部35bの底面は、シャフト21の下側の端部と軸方向に隙間を介して対向している。小径部35bの底面は、凹部35の底面であり、凹部35の内側面のうち下側に位置する面である。
【0040】
図1に示すように、バスバーユニット60は、モータ部20およびケース30の上側に位置する。バスバーユニット60は、ケース本体31の上側の開口を塞いでいる。バスバーユニット60は、バスバーホルダ61と、バスバー62と、回路基板63と、磁気センサ64と、を有する。バスバーホルダ61は、例えば、樹脂製である。本実施形態においてバスバーホルダ61は、ベアリング52を保持している。バスバーホルダ61は、回路基板63を収容する収容部を有する。回路基板63は、シャフト21の上側に位置する。回路基板63は、板面が軸方向を向く板状である。
【0041】
バスバー62は、バスバーホルダ61に保持されている。バスバー62の一部は、バスバーホルダ61に埋め込まれている。バスバー62は、例えば、回路基板63に接続されたバスバー62と、ステータ20bのコイル25に電気的に接続されたバスバー62と、を含む。
【0042】
磁気センサ64は、回路基板63の下側の面に取り付けられている。磁気センサ64は、センサマグネット70の上側に隙間を空けて対向して配置されている。磁気センサ64は、センサマグネット70の磁界を検出可能である。磁気センサ64によってセンサマグネット70の磁界を検出することで、ロータ20aの回転を検出できる。磁気センサ64は、例えば、磁気抵抗素子である。なお、磁気センサ64は、ホールIC等のホール素子であってもよい。
【0043】
ポンプ部40は、モータ部20の下側に位置する。ポンプ部40は、シャフト21に連結されている。ポンプ部40は、インナーロータ41と、アウターロータ42と、ポンプ室43と、を有する。インナーロータ41は、シャフト21に連結されている。インナーロータ41は、シャフト21が回転することによって中心軸J回りに回転させられる。
図2および
図3に示すように、インナーロータ41は、インナーロータ本体部41aと、突出部41bと、を有する。
【0044】
インナーロータ本体部41aは、ポンプ室43内に位置する。インナーロータ本体部41aの軸方向の寸法は、ポンプ室43の軸方向の寸法とほぼ同じである。
図3および
図4に示すように、インナーロータ本体部41aは、径方向外側面に外歯歯車部41cを有するギヤである。外歯歯車部41cは、径方向外側に突出する複数の歯部41dを有する。複数の歯部41dは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。外歯歯車部41cの歯形は、例えば、トロコイド歯形である。外歯歯車部41cの外形は、軸方向に見て、例えば、トロコイド曲線からなる。
【0045】
図3に示すように、突出部41bは、インナーロータ本体部41aから軸方向に突出している。本実施形態において突出部41bは、インナーロータ本体部41aの下側の面から下側に突出している。突出部41bは、例えば、中心軸Jを中心とする円柱状である。突出部41bの軸方向の寸法は、例えば、インナーロータ本体部41aの軸方向の寸法よりも小さい。
【0046】
図2に示すように、本実施形態において突出部41bは、凹部35の内部に挿入されている。より詳細には、突出部41bは、大径部35aの内部に挿入されている。突出部41bの外径は、インナーロータ本体部41aの外径および大径部35aの内径よりも小さく、小径部35bの内径よりも大きい。突出部41bの外周面と大径部35aの内周面との径方向の間には、例えば、全周に亘って隙間が設けられている。突出部41bの下側の面は、大径部35aと小径部35bとの間に設けられた段差における上側を向く段差面の上側に離れて位置する。
【0047】
インナーロータ41は、シャフト21の一部が挿入された穴部44を有する。穴部44は、インナーロータ41の上側の面から下側に窪んでいる。穴部44は、例えば、中心軸Jを中心とする円形状の穴である。穴部44は、軸方向に見て、中央孔31gと重なっている。本実施形態において穴部44は、インナーロータ41を軸方向に貫通している。より詳細には、穴部44は、インナーロータ本体部41aと突出部41bとを軸方向に貫通している。つまり、本実施形態において穴部44は、インナーロータ本体部41aと突出部41bとに跨って設けられている。穴部44には、シャフト21の下側部分が軸方向に通されている。本実施形態においてシャフト21の下側の端部は、穴部44を介してインナーロータ41よりも下側に突出している。穴部44は、嵌合穴部44aと、連結穴部44bと、を有する。
【0048】
本実施形態において嵌合穴部44aは、穴部44の上側部分である。嵌合穴部44aは、上側に開口している。嵌合穴部44aの上側の開口は、中央孔31gの下側の開口と軸方向に対向している。嵌合穴部44aは、インナーロータ本体部41aに設けられている。嵌合穴部44aの下側の端部は、インナーロータ本体部41aの下側の面よりも上側に位置する。
【0049】
嵌合穴部44aの内径は、例えば、中央孔31gの内径とほぼ同じである。嵌合穴部44aの内径は、例えば、中央孔31gの内径よりも僅かに小さい。本実施形態において嵌合穴部44aの内径は、突出部41bの外径よりも小さい。言い換えれば、本実施形態において突出部41bの外径は、嵌合穴部44aの内径よりも大きい。嵌合穴部44aの内部には、支持部21dが嵌め合わされている。これにより、支持部21dは、嵌合穴部44aの内周面を介して、インナーロータ41を径方向に支持している。支持部21dは、嵌合穴部44a内に隙間嵌めされている。より詳細には、支持部21dの下側部分が、嵌合穴部44aの上側部分の内部に隙間嵌めされている。
【0050】
本実施形態において連結穴部44bは、穴部44の下側部分である。連結穴部44bは、嵌合穴部44aの下側に繋がっている。連結穴部44bは、下側に開口している。本実施形態において連結穴部44bは、インナーロータ本体部41aと突出部41bとに跨って設けられている。連結穴部44bは、突出部41bを軸方向に貫通している。連結穴部44bが設けられることで、突出部41bは、中心軸Jを中心とする円環状となっている。連結穴部44bの内径は、嵌合穴部44aの内径および小径部35bの内径よりも小さい。連結穴部44bの内部には、トルク伝達部21eが挿入されている。連結穴部44bの軸方向の寸法は、例えば、嵌合穴部44aの軸方向の寸法よりも小さい。
【0051】
嵌合穴部44aと連結穴部44bとの軸方向の間には、段差44dが設けられている。段差44dは、上側を向く段差面44eを有する。段差面44eは、軸方向と直交する平坦面である。段差面44eは、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。段差面44eは、インナーロータ本体部41aの下側の面よりも上側に位置する。段差面44eは、突出部41bの外周面よりも径方向内側に位置する。
【0052】
図3および
図4に示すように、連結穴部44bは、内周面に複数の内歯部44cを有する。内歯部44cは、径方向内側に突出している。複数の内歯部44cは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。内歯部44cは、軸方向に延びている。内歯部44cは、例えば、連結穴部44bの上側の端部から下側の端部まで延びている。複数の内歯部44cは、複数の外歯部21fと互いに噛み合っている。これにより、外歯部21fが内歯部44cに周方向に引っ掛かり、シャフト21のトルク伝達部21eが連結穴部44bに中心軸J回りに連結される。これにより、本実施形態においてトルク伝達部21eは、外歯部21fおよび内歯部44cを介して、インナーロータ41にトルクを伝達可能となっている。したがって、シャフト21の中心軸J回りの回転に伴って、インナーロータ41も中心軸J回りに回転する。
【0053】
本実施形態において連結穴部44bは、スプライン穴部である。つまり、本実施形態においてシャフト21とインナーロータ41とは、スプラインシャフト部であるトルク伝達部21eとスプライン穴部である連結穴部44bとが噛み合うスプライン結合によって連結されている。
【0054】
なお、本明細書において「トルク伝達部が連結穴部に中心軸回りに連結する」とは、トルク伝達部が中心軸回りに回転した際に、トルク伝達部からインナーロータに連結穴部を介して中心軸回りのトルクが伝達可能となっていればよい。本明細書において「トルク伝達部が連結穴部に中心軸回りに連結する」とは、トルク伝達部と連結穴部とが互いに中心軸回りの周方向に接触可能な部分を有することを含む。本実施形態では、複数の外歯部21fと複数の内歯部44cとが、中心軸J回りの周方向に接触可能である。
【0055】
図2に示すように、アウターロータ42は、ポンプ室43内に位置する。アウターロータ42は、インナーロータ41を囲んでいる。アウターロータ42は、インナーロータ41の径方向外側に位置する。
図4に示すように、アウターロータ42は、偏心軸Eを中心とする環状である。つまり、アウターロータ42とポンプ室43とは、同軸に配置されている。アウターロータ42は、ポンプ室43内に嵌め合わされている。アウターロータ42は、ポンプ室43内において、偏心軸E回りに回転可能に配置されている。
【0056】
アウターロータ42は、径方向内側面に内歯歯車部42aを有するギヤである。内歯歯車部42aは、径方向内側に突出する複数の歯部42bを有する。複数の歯部42bは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。内歯歯車部42aの歯形は、例えば、トロコイド歯形である。内歯歯車部42aの内縁は、軸方向に見て、例えば、トロコイド曲線からなる。内歯歯車部42aは、外歯歯車部41cと噛み合っている。より詳細には、周方向の一部において、外歯歯車部41cの歯部41dと内歯歯車部42aの歯部42bとが互いに噛み合っている。これにより、アウターロータ42は、インナーロータ41と噛み合っている。
【0057】
シャフト21によってインナーロータ41が中心軸J回りに回転させられると、外歯歯車部41cおよび内歯歯車部42aを介してアウターロータ42にトルクが伝達され、アウターロータ42が偏心軸E回りに回転する。これにより、ポンプ室43内における外歯歯車部41cと内歯歯車部42aとの隙間にインポート34aから流体が吸入される。吸入された流体は、インナーロータ41およびアウターロータ42の回転に伴って周方向に送られ、アウトポート34bから排出される。このようにして、ポンプ部40は、インポート34aからアウトポート34bへと流体を送ることができる。
【0058】
本実施形態によれば、シャフト21は、中心軸Jを中心とする径方向にインナーロータ41を支持する支持部21dを有し、インナーロータ41の穴部44は、支持部21dが内部に嵌め合わされた嵌合穴部44aを有する。そのため、シャフト21の一部である支持部21dによって、インナーロータ41を径方向に位置決めできる。これにより、ケース30の寸法精度およびケース30の組み付け精度等によらず、シャフト21に対してインナーロータ41を径方向に位置決めできる。また、シャフト21によって直接的にインナーロータ41を径方向に位置決めできるため、ケース30等の他の部材にインナーロータ41を位置決めする部分を設ける場合に比べて、シャフト21とインナーロータ41とを軸精度よく配置できる。以上により、シャフト21に対するインナーロータ41の軸精度を向上できる。そのため、シャフト21のトルク伝達部21eによって、インナーロータ41に好適にトルクを伝達することができる。これにより、電動ポンプ10を効率よく駆動できる。
【0059】
また、インナーロータ41を径方向に支持する部分には、流体の圧力等によって比較的大きな力が掛かりやすい。そのため、インナーロータ41をシャフト21以外の他の部材によって径方向に支持するためには、他の部材を比較的強度が高い材料で構成する必要がある。具体的に、例えば、ポンプカバー33に上側に突出する柱部を設け、当該柱部をインナーロータ41に設けられた穴に挿入してインナーロータ41を径方向に支持する場合、ポンプカバー33を比較的強度が高い材料で構成する必要がある。
【0060】
これに対して、本実施形態によれば、インナーロータ41を径方向に支持する部材がシャフト21であるため、シャフト21以外の他の部材を比較的強度が低い材料で作ることができる。具体的には、例えば、ポンプカバー33によってインナーロータ41を径方向に支持する必要がないため、ポンプカバー33を、アルミニウムおよび樹脂等の比較的強度が低い材料で構成することができる。これにより、ポンプカバー33の設計自由度を向上できる。
【0061】
また、例えば、インナーロータ41の穴部にシャフト21を圧入してインナーロータ41とシャフト21とを固定する場合、シャフト21が圧入された穴部を介して、シャフト21によってインナーロータ41を径方向に位置決めできるとともに、シャフト21からインナーロータ41にトルクを伝達できる。しかし、この場合、シャフト21からインナーロータ41に伝達できる最大トルクが小さくなりやすい。また、穴部にシャフト21を圧入する必要があるため、電動ポンプ10の組み立て性が低下しやすい。
【0062】
これに対して、本実施形態によれば、シャフト21に、インナーロータ41にトルクを伝達するトルク伝達部21eと、インナーロータ41を位置決めする支持部21dと、が設けられている。これにより、支持部21dによってインナーロータ41を位置決めできるため、トルク伝達部21eにおいては、インナーロータ41を位置決めする必要がない。したがって、トルク伝達部21eをインナーロータ41に圧入する必要がなく、トルク伝達部21eとインナーロータ41との連結方法として、圧入よりも伝達可能な最大トルクが大きい連結方法を採用することができる。これにより、支持部21dを介してインナーロータ41を径方向に好適に位置決めしつつ、シャフト21からインナーロータ41に伝達可能なトルクを大きくできる。また、圧入と異なり、シャフト21を穴部44に単に挿し込むことによって、シャフト21に対してインナーロータ41を径方向に位置決めしつつ、シャフト21とインナーロータ41とを連結しやすい。そのため、電動ポンプ10の組み立て性を向上できる。また、圧入と異なり、シャフト21とインナーロータ41との径方向の隙間にポンプ室43内に流入した流体が入り込みやすい。そのため、流体がオイルである場合等に、シャフト21とインナーロータ41とが接触する際の衝撃等を流体によって緩衝できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、トルク伝達部21eは、外周面に複数の外歯部21fを有し、連結穴部44bは、内周面に複数の外歯部21fと互いに噛み合う複数の内歯部44cを有する。そのため、複数の外歯部21fと複数の内歯部44cとの噛み合いによってシャフト21からインナーロータ41に好適にトルクを伝達することができる。したがって、シャフト21からインナーロータ41に伝達できる最大トルクを好適に大きくできる。
【0064】
また、本実施形態によれば、インナーロータ41は、インナーロータ本体部41aと、インナーロータ本体部41aから軸方向に突出する突出部41bと、を有する。穴部44は、インナーロータ本体部41aと突出部41bとに跨って設けられている。そのため、インナーロータ本体部41aの軸方向の寸法を大きくすることなく、突出部41bが設けられている分だけ、穴部44の軸方向の寸法を大きくできる。これにより、穴部44の一部を嵌合穴部44aとしても、連結穴部44bの軸方向の寸法を十分に確保しやすい。したがって、連結穴部44bを介して、インナーロータ41をシャフト21に対して好適に連結することができる。そのため、トルク伝達部21eを介して、シャフト21からインナーロータ41にトルクを伝達しやすくできる。
【0065】
また、本実施形態によれば、嵌合穴部44aは、インナーロータ本体部41aに設けられ、連結穴部44bは、インナーロータ本体部41aと突出部41bとに跨って設けられている。そのため、嵌合穴部44aと連結穴部44bとの境界部が、突出部41bが設けられた面、すなわちインナーロータ本体部41aの下面よりも上側に配置されている。具体的に本実施形態では、嵌合穴部44aと連結穴部44bとの境界部である段差面44eが、インナーロータ本体部41aの下面よりも上側に配置されている。これにより、段差面44eが、インナーロータ本体部41aの下面と軸方向において同じ位置、またはインナーロータ本体部41aの下面よりも下側に位置する場合に比べて、インナーロータ本体部41aと突出部41bとの接続部分を肉厚にしやすい。したがって、インナーロータ41の剛性を向上できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、連結穴部44bの内径は、嵌合穴部44aの内径よりも小さく、トルク伝達部21eの外径は、支持部21dの外径よりも小さい。そのため、トルク伝達部21eをシャフト21の下端部に設けて、穴部44に上側から挿し込む組み立て方法を採用できる。また、トルク伝達部21eをシャフト21の下端部に設けることができるため、トルク伝達部21eがシャフト21の軸方向中間部に設けられる場合に比べて、機械加工等によってトルク伝達部21eを作りやすい。
【0067】
また、本実施形態によれば、突出部41bの外径は、嵌合穴部44aの内径よりも大きい。そのため、突出部41bの外径が嵌合穴部44aの内径以下である場合に比べて、インナーロータ本体部41aと突出部41bとの接続部分を肉厚にしやすい。したがって、インナーロータ41の剛性をより向上できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、ポンプ室43の内側面のうち下側の面には、突出部41bを内部に収容する凹部35が設けられている。そのため、凹部35によって、軸方向に突出する突出部41bを逃がすことができる。これにより、突出部41bを設けても、ポンプ室43の軸方向の寸法を大きくする必要がない。したがって、電動ポンプ10全体が軸方向に大型化することを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態によれば、凹部35は、内部に突出部41bが挿入された大径部35aと、内部にシャフト21の下側の端部が挿入され、内径が大径部35aの内径よりも小さい小径部35bと、を有する。そのため、シャフト21の下端部および突出部41bを凹部35によって逃がしつつ、凹部35が設けられる領域を小さくしやすい。これにより、凹部35が設けられる部材、すなわち本実施形態ではポンプカバー33の剛性が低下することを抑制しやすい。特に、本実施形態のようにインポート34aとアウトポート34bとの間に凹部35が設けられる場合、インポート34aと凹部35との間およびアウトポート34bと凹部35との間を肉厚にできる。そのため、ポンプカバー33に、インポート34a、アウトポート34b、および凹部35を設けても、ポンプカバー33の剛性が低下することを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態によれば、トルク伝達部21eは、穴部44を介してインナーロータ41よりも下側に突出し、トルク伝達部21eの下側の端部は、下側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ部21gを有する。トルク伝達部21eの下側の端部にテーパ部21gが設けられることで、トルク伝達部21eを上側から穴部44に通しやすくできる。そのため、電動ポンプ10の組み立て性を向上できる。また、テーパ部21gにおいてはトルク伝達部21eの外径が小さくなるため、テーパ部21gは、連結穴部44bと好適に連結しにくい場合がある。具体的に本実施形態では、外歯部21fの下端部における突出高さが低くなるため、外歯部21fの下端部は、内歯部44cと噛み合いにくい場合がある。これに対して、本実施形態によれば、テーパ部21gが設けられた部分をインナーロータ41よりも下側に突出させることができるため、テーパ部21gを設けた場合であっても、トルク伝達部21eと連結穴部44bとを好適に連結できる。したがって、トルク伝達部21eを介して、シャフト21からインナーロータ41にトルクを伝達しやすくできる。
【0071】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。トルク伝達部と連結穴部との中心軸回りの連結方法は、特に限定されない。トルク伝達部と連結穴部とに互いに対向する平坦面をそれぞれ設けることで、トルク伝達部と連結穴部とが中心軸回りに連結されていてもよい。この場合、トルク伝達部と連結穴部とは、例えば、Dカット部によって中心軸回りに連結されていてもよい。支持部の外径およびトルク伝達部の外径は、特に限定されない。トルク伝達部の外径は、支持部の外径より大きくてもよい。トルク伝達部の外径と支持部の外径とは、同じであってもよい。
【0072】
支持部とトルク伝達部との軸方向位置は、特に限定されない。上述した実施形態において支持部21dとトルク伝達部21eとの軸方向位置が逆になっていてもよい。つまり、支持部21dがトルク伝達部21eの下側に位置してもよい。この場合、支持部21dの外径がトルク伝達部21eの外径より小さく、嵌合穴部の内径が連結穴部の内径より小さくてもよい。シャフトは、支持部とトルク伝達部との軸方向の間に別の部分を有してもよい。トルク伝達部は、テーパ部を有しなくてもよい。支持部の軸方向の寸法およびトルク伝達部の軸方向の寸法は、特に限定されない。支持部の軸方向の寸法とトルク伝達部の軸方向の寸法とは、互いに同じであってもよい。支持部の軸方向の寸法は、トルク伝達部の軸方向の寸法より小さくてもよい。
【0073】
嵌合穴部がインナーロータ本体部と突出部とに跨って設けられ、連結穴部が突出部に設けられてもよい。嵌合穴部がインナーロータ本体部と突出部とに跨って設けられ、連結穴部がインナーロータ本体部に設けられてもよい。嵌合穴部および連結穴部は、共にインナーロータ本体部と突出部とに跨らずに設けられてもよい。つまり、嵌合穴部は、インナーロータ本体部と突出部との一方に設けられ、連結穴部は、インナーロータ本体部と突出部との他方に設けられてもよい。突出部の外径は、嵌合穴部の内径と同じであってもよいし、嵌合穴部の内径より小さくてもよい。インナーロータは、突出部を有しなくてもよい。
【0074】
嵌合穴部の軸方向の寸法および連結穴部の軸方向の寸法は、特に限定されない。嵌合穴部の軸方向の寸法と連結穴部の軸方向の寸法とは、互いに同じであってもよい。嵌合穴部の軸方向の寸法は、連結穴部の軸方向の寸法より小さくてもよい。インナーロータに設けられた穴部は、インナーロータを軸方向に貫通しなくてもよい。つまり、穴部は、底部を有する穴であってもよい。穴部は、嵌合穴部と連結穴部との軸方向の間に他の部分を有してもよい。ポンプ室の内側面に設けられた凹部は、軸方向の全体に亘って内径が均一であってもよい。凹部は、設けられてなくてもよい。
【0075】
本発明が適用される電動ポンプの用途は、特に限定されない。電動ポンプは、車両以外の機器に搭載されてもよい。電動ポンプによって送られる流体は、特に限定されず、例えば、水等であってもよい。以上に本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0076】
10…電動ポンプ、20…モータ部、20a…ロータ、21…シャフト、21d…支持部、21e…トルク伝達部、21f…外歯部、21g…テーパ部、22…ロータ本体、35…凹部、35a…大径部、35b…小径部、40…ポンプ部、41…インナーロータ、41a…インナーロータ本体部、41b…突出部、42…アウターロータ、43…ポンプ室、44…穴部、44a…嵌合穴部、44b…連結穴部、44c…内歯部、J…中心軸