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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】超音波探触子
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020112234
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011236
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門倉 雅彦
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270559(JP,A)
【文献】特開2009-45094(JP,A)
【文献】特開2011-4806(JP,A)
【文献】特開2019-37607(JP,A)
【文献】特開2001-333907(JP,A)
【文献】特開2006-198094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子ユニットと音響カップリング液を収容し音響ウィンドウを有した密閉液室内で当該超音波振動子ユニットを揺動させる超音波探触子であって、
前記超音波振動子ユニットは、当該超音波振動子ユニットの揺動時に前記音響ウィンドウに向いており超音波が出入射する正面と、当該正面に隣接し当該揺動の軸に平行な2つの側面とを有し、
前記音響ウィンドウと前記揺動の軸との間に前記正面が配置され、
前記密閉液室内は、前記超音波振動子ユニットが揺動する際に方向転換する揺動終端にある時に、前記2つの側面の一方に接近対峙する互いに異なる角度で配置された2つの内壁面を有し、
前記2つの側面及び/又は前記2つの内壁面は、前記音響カップリング液を前記揺動の軸を中心にした周方向に整流する整流形状を有する超音波探触子。
【請求項2】
前記2つの側面及び前記2つの内壁面が、前記整流形状を有する請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記2つの側面及び/又は前記2つの内壁面が有する前記整流形状は、1条又は並列2条以上の溝による請求項1又は請求項2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記2つの側面及び前記2つの内壁面が有する前記整流形状は、1条又は並列2条以上の溝により、
前記超音波振動子ユニットが前記揺動終端にある時に、前記側面の溝と前記内壁面の溝とが対向する請求項2に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記溝は、前記音響ウィンドウ側から前記揺動の軸側に至るに従い、次第に深く形成されている請求項3又は請求項4に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記超音波振動子ユニットが前記揺動終端にある時に、互いに近接対峙する前記側面と前記内壁面とは略平行となる請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記超音波振動子ユニットの前記正面に対する反対面と、前記密閉液室の内壁との間は、前記音響カップリング液が流通可能な隙間を保持している請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載の超音波探触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用した超音波診断装置の超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波探触子を患者の被検体の体表又は体腔内から当てるという簡単な操作で心臓や胎児の様子が超音波画像として得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。
【0003】
超音波探触子としては、3D/4Dの画像を取得するために、音響ウィンドウとフレームとで構成された密閉液室内で音響カップリング液に満たされた超音波振動子ユニットを揺動させるものがある。
このような揺動走査式の超音波振動子において、ボリュームレートを高速化する(高速揺動する)上で、音響カップリング液による流体負荷を低減することが必要となっている。
音響カップリング液は、液体の粘性をもっているため、超音波振動子ユニットが揺動動作することにより、液体の粘性が負荷となる。
超音波振動子ユニットが音響カップリング液の中を揺動するとき、音響カップリング液は、片側の領域から超音波振動子ユニットにより押し出されて、超音波振動子ユニットの奥側(音響ウィンドウの逆側)を通り、超音波振動子ユニットの反対側の領域に大きく移動することになる。このとき、音響ウィンドウとフレーム間の領域、すなわち密閉液室内の形状により、密閉液室内での音響カップリング液の流れが、渦を巻いたり、また、フレームに設置された構造物により流れが遮られたり、音響カップリング液が超音波振動子ユニットの揺動方向に垂直方向などに流れが発生したりする場合は、音響カップリング液の動きが大きな負荷となる。
特許文献1,2にあっては、可動部(超音波振動子ユニット)に流線形状部分を構成して整流性を高めようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4971905号公報
【文献】特開2005-270559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波探触子を小型軽量化させるために、音響カップリング液の容積を減らすことが望まれている。そのために密閉液室の内壁面を、当該内壁面側に揺動した超音波振動子ユニットの側面と平行にすることを考える。しかし、超音波振動子ユニットが揺動の両端に来て、内壁面と近接するときに流体の通路がさらに小さくなり、より流体の負荷が大きくなってしまう。
また、温度により音響カップリング液の粘性が強くなった場合は、さらに音響カップリング液による負荷抵抗が大きくなり、高速揺動が困難になる。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、超音波振動子ユニットと音響カップリング液を収容し音響ウィンドウを有した密閉液室内で当該超音波振動子ユニットを揺動させる超音波探触子において、当該密閉液室内の音響カップリング液の容量を減らして小型軽量化を実現し、かつ、超音波振動子ユニットの揺動時の音響カップリング液による負荷を低減して、高速揺動による高ボリュームレート化を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様の超音波探触子は、超音波振動子ユニットと音響カップリング液を収容し音響ウィンドウを有した密閉液室内で当該超音波振動子ユニットを揺動させる超音波探触子であって、前記超音波振動子ユニットは、当該超音波振動子ユニットの揺動時に前記音響ウィンドウに向いており超音波が出入射する正面と、当該正面に隣接し当該揺動の軸に平行な2つの側面とを有し、前記音響ウィンドウと前記揺動の軸との間に前記正面が配置され、前記密閉液室内は、前記超音波振動子ユニットが揺動する際に方向転換する揺動終端にある時に、前記2つの側面の一方に接近対峙する互いに異なる角度で配置された2つの内壁面を有し、前記2つの側面及び/又は前記2つの内壁面は、前記音響カップリング液を前記揺動の軸を中心にした周方向に整流する整流形状を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密閉液室内の音響カップリング液の容量を減らして超音波探触子の小型軽量化を実現するとともに、超音波振動子ユニットの側面及び/又は密閉液室の内壁面の整流形状により超音波振動子ユニットの揺動時の音響カップリング液の流動を整流して当該音響カップリング液による負荷を低減することで高速揺動による高ボリュームレート化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波探触子の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る超音波探触子の断面図であり、超音波振動子ユニットが図1とは逆に振れている状態を示す。
図3】本発明の一実施形態に係る超音波探触子の断面図であり、図1とは90°異なる断面図を示しており、超音波振動子ユニットを除いている。
図4】本発明の一実施形態に係る超音波探触子の断面図であり、図1とは90°異なる断面図を示している。
図5】本発明の一実施形態に係る超音波探触子の先端部の斜視図であり、音響ウィンドウを除いている。
図6】本発明の他の一実施形態に係る超音波探触子の先端部の斜視図であり、音響ウィンドウを除いている。
図7】深さ一定の溝の斜視図である。
図8】次第に深く形成されている溝の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0011】
図1から図5に示すように本発明の一実施形態に係る超音波探触子A1は、音響ウィンドウ10と、フレーム11と、グリップ部筐体12と、モーター13と、ケーブル14と、超音波振動子ユニット20とを備え、密閉液室15が構成されている。
【0012】
密閉液室15は、音響ウィンドウ10とフレーム11とにより構成され、超音波が出入射する音響ウィンドウ10を有する閉空間となっている。密閉液室15内に、超音波振動子ユニット20と音響カップリング液を収容している。
【0013】
超音波振動子ユニット20は、揺動の軸21で揺動可能にしてフレーム11に支持されている。
グリップ部筐体12に、モーター13が配置されている。伝動機構16によりモーター13の駆動力が超音波振動子ユニット20に伝動し、密閉液室15内で当該超音波振動子ユニットを揺動させる。
【0014】
超音波振動子ユニット20は、当該超音波振動子ユニット20の揺動時に音響ウィンドウ10に向いており超音波が出入射する正面22と、当該正面22に隣接し当該揺動の軸21に平行な2つの側面23,24とを有する。
音響ウィンドウ10と揺動の軸21との間に正面22が配置される。
音響ウィンドウ10は、図1及び図2に示す揺動の軸21に垂直な断面において、揺動の軸21を略中心とした円弧状に形成されており、正面22と音響ウィンドウ10の内面との距離がほぼ一定に保たれて超音波振動子ユニット20が揺動する。
正面22と音響ウィンドウ10の内面との間の隙間は常に狭く保たれており、音響カップリング液の十分な通過空間とはなりにくい。
これに対し、超音波振動子ユニット20の正面22に対する反対面25と、密閉液室15の内壁との間は、音響カップリング液が流通可能な比較的大きな隙間を保持している。
【0015】
図1は、超音波振動子ユニット20が揺動する際に方向転換する揺動終端にある時を示している。図2は、その逆側の揺動終端にある時を示している。
密閉液室15内は、超音波振動子ユニット20が揺動終端にある時に、2つの側面23,24の一方に接近対峙する2つの内壁面17,18を有する。すなわち、密閉液室15内は、図1に示すように超音波振動子ユニット20が一方の揺動終端にある時、側面23に近接対峙する内壁面17を有する。また、密閉液室15内は、図2に示すように超音波振動子ユニット20が他方の揺動終端にある時、側面24に近接対峙する内壁面18を有する。
【0016】
内壁面17と内壁面18とは、互いに異なる角度で配置されており、内壁面17は、図1において側面23に対向する角度、内壁面18は、図2において側面24に対向する角度に配置されている。すななわ、超音波振動子ユニット20が揺動終端にある時に、互いに近接対峙する側面23(24)と内壁面17(18)とは略平行となる。
これにより、密閉液室15は、図1及び図2に示すように揺動の軸21に垂直な断面において、超音波振動子ユニット20が揺動動作において存在し得る空間をわずかなマージンをとって囲むようなほぼ扇形となっている。
そのため、密閉液室15内の音響カップリング液の容量を減らして小型軽量化を実現することができる。
【0017】
2つの側面23,24及び/又は2つの内壁面17,18は、音響カップリング液を揺動の軸21を中心にした周方向に整流する整流形状を有する。
本実施形態においては、2つの内壁面17,18が当該整流形状としての溝17g,18gをそれぞれ有する。
溝17g,18gの連続方向が、音響ウィンドウ10側から揺動の軸21側に至る方向とされており、図1及び図2中に矢印で示すように、超音波振動子ユニット20が揺動した側の逆側に拡張される空間へと、音響カップリング液を円滑に移動させることができる。図1に示すように音響カップリング液が超音波振動子ユニット20の逆側に移動し、超音波振動子ユニット20が反転、揺動すれば、図2に示すように音響カップリング液が超音波振動子ユニット20の逆側に移動し、これを繰り返す。その際、溝17g,18gの整流作用により、音響ウィンドウ10の乱流化を抑え、流れを円滑に整流し、音響カップリング液による流体負荷を低く抑えることができる。
したがって、超音波振動子ユニット20の揺動時の音響カップリング液の流動を整流して当該音響カップリング液による負荷を低減することで高速揺動による高ボリュームレート化を実現することができる。
【0018】
以上まとめると、密閉液室15内の音響カップリング液の容量を減らして超音波探触子の小型軽量化を実現するとともに、超音波振動子ユニットの揺動時の音響カップリング液の流動を整流して当該音響カップリング液による負荷を低減することで高速揺動による高ボリュームレート化を実現することができる。
【0019】
上記の溝17g,18gのような整流形状としての溝は、1条又は並列2条以上を設けて実施することができる。本実施形態では、並列2条以上とする。溝を並列2条以上とすることで、揺動の軸21と平行な方向の流れを抑制して整流し、音響カップリング液による流体負荷を低く抑えることができる。
【0020】
また、図6に示す超音波探触子A2のように、2つの側面23,24が溝23g,24gを有する構成を実施してもよい。この場合も同様の効果が得られる。
さらに、図6に示すように2つの側面23,24及び2つの内壁面17,18の双方が溝17g,18g,23g,24gを有する構成を実施してもよい。さらに整流作用が得られる。
【0021】
また、図6に示すように超音波振動子ユニット20が揺動終端にある時に、側面23(24)の溝と内壁面17(18)の溝とが対向する配置とする。この対向する配置とは、1つの溝17g(18g)と1つの溝23g(24g)との底部中央ライン、両端エッジラインが対向する配置である。側面23(24)の溝と内壁面17(18)の溝とが対向する配置となることで、パイプ状の流路を形成して整流し、音響カップリング液による流体負荷を低く抑えることができる。
なお、整流形状は、溝に代え、フィン形状等にしてもよい。
【0022】
以上の溝17g,18g,23g,24gとしては、図7に示すように音響ウィンドウ10側から揺動の軸21側に辿って、深さd一定の溝G1を適用して実施してもよい。
また、以上の溝17g,18g,23g,24gとしては、図8に示すように音響ウィンドウ10側から揺動の軸21側に至るに従い、次第に深く形成されている溝G2を適用して実施してもよい。
超音波振動子ユニット20の揺動に伴い音響ウィンドウ10の流動速度が高まり得る揺動の軸21を回り込む空間において、溝G2を適用することにより、増速化を抑えて乱流化を防ぎ、より効果的に音響カップリング液による流体負荷を低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 音響ウィンドウ
11 フレーム
12 グリップ部筐体
13 モーター
14 ケーブル
15 密閉液室
16 伝動機構
17,18 内壁面
17g,18g 溝
20 超音波振動子ユニット
21 揺動の軸
22 正面
23,24 側面
23g,24g溝
25 反対面
A1 超音波探触子
A2 超音波探触子
G1 溝
G2 溝
d 溝の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8