(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/04 20060101AFI20240312BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240312BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240312BHJP
【FI】
B60L3/04 D
B60L50/60
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2020112507
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】西 皓平
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】大川内 亮平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘崇
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123285(JP,A)
【文献】特開2020-089066(JP,A)
【文献】特開2020-010509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/04
B60L 50/60
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載されたバッテリ(210)と、
前記バッテリと車載機器(240,250,260)との間の通電と遮断を制御するスイッチ(221)と、
前記車載機器に含まれる走行用の動力源と前記バッテリとの電気的な接続状態に関わる接続情報を出力する接続判定部(270)と、
前記電動車両
が走行している状態と駐停車している状態を検出する走行センサ(283)と、
前記バッテリ、前記車載機器、および、これらを電気的に接続する経路(211,212)それぞれと人との接触可能性に関わる接触情報を出力する接触センサ(281)と、を有する車載システム(200)に含まれる制御装置であって、
前記接続判定部が正常な状態において前記接続情報と前記走行
センサによって検出される状態に基づいて前記スイッチの通電と遮断を制御し、前記接続判定部が異常な状態において前記接触情報と前記走行
センサによって検出される状態に基づいて前記スイッチの通電と遮断を制御する制御装置。
【請求項2】
前記接触情報よりも前記接触可能性の低い警告情報を出力する警告センサ(282)が前記車載システムに含まれており、
前記接続判定部が異常な状態において前記接触情報および前記警告情報の少なくとも1つと前記走行
センサによって検出される状態に基づいて前記スイッチの通電と遮断を制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記接触情報よりも前記接触可能性の低い警告情報を出力する警告センサ(282)が前記車載システムに含まれており、
前記接続判定部と前記接触センサそれぞれが異常な状態において前記警告情報と前記走行
センサによって検出される状態に基づいて前記スイッチの通電と遮断を制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記警告センサには、前記電動車両のシフトポジションを示すシフトポジションセンサ(282a)、前記電動車両のシートベルトの装着状態を示すシートベルトセンサ(282b)、前記電動車両のドアの開閉状態を示すドアセンサ(282c)のうちの少なくとも1つが含まれている請求項2または請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記バッテリ、前記車載機器、および、前記経路の少なくとも一部が収納されたルームの開口を閉塞するフードの開閉状態を示すフードセンサ(281a)、および、前記電動車両のサスペンションの長さを検出するサスペンションセンサ(281b)のうちの少なくとも1つが前記接触センサに含まれている請求項1~4いずれか1項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、バッテリと車載機器との間に設けられるスイッチの通電と遮断とを制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、蓄電装置の遮断禁止の維持と解除を制御するリレー制御装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるリレー制御装置のバッテリECUは、電動車両の走行中にインターロックコネクタ装着信号がオンからオフに変化すると、モータ回転数ゼロ、パーキングポジションになったとしても蓄電装置の遮断禁止を維持する。バッテリECUは、インターロックコネクタ装着信号がオフからオンに変化すると蓄電装置の遮断を許可する。
【0005】
このように特許文献1に示されるバッテリECUは、電動車両の走行中において、蓄電装置の遮断禁止の維持と解除をインターロックコネクタ装着信号に基づいて決定している。そのため、インターロックコネクタ装着信号を出力する装置(接続判定部)に異常が生じた場合、蓄電装置の遮断禁止の維持と解除を判断(制御)できなくなる懸念がある。
【0006】
本開示の目的は、接続判定部に異常が生じたとしても通電と遮断を制御することのできる制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による制御装置は、電動車両に搭載されたバッテリ(210)と、
バッテリと車載機器(240,250,260)との間の通電と遮断を制御するスイッチ(221)と、
車載機器に含まれる走行用の動力源とバッテリとの電気的な接続状態に関わる接続情報を出力する接続判定部(270)と、
電動車両が走行している状態と駐停車している状態を検出する走行センサ(283)と、
バッテリ、車載機器、および、これらを電気的に接続する経路(211,212)それぞれと人との接触可能性に関わる接触情報を出力する接触センサ(281)と、を有する車載システム(200)に含まれる制御装置であって、
接続判定部が正常な状態において接続情報と走行センサによって検出される状態に基づいてスイッチの通電と遮断を制御し、接続判定部が異常な状態において接触情報と走行センサによって検出される状態に基づいてスイッチの通電と遮断を制御する。
【0008】
これによれば、たとえ接続判定部(270)が異常な状態であっても、スイッチ(221)の通電と遮断を制御することができる。
【0009】
このスイッチ(221)の通電と遮断の制御には、バッテリ(210)、車載機器(240,250,260)、および、これらを電気的に接続する経路(211,212)それぞれと人との接触可能性に関わる接触情報が用いられる。そのため、たとえ接続判定部(270)が異常な状態であっても、この接触情報に基づいてスイッチ(221)の通電と遮断を制御することで、電力の流れるバッテリ(210)、車載機器(240,250,260)、および、経路(211,212)のいずれかに人が接触することが抑制される。
【0010】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1実施形態の遮断判定処理を説明するためのフロー図である。
【
図3】車載システムの状態変化を示すタイミングチャートである。
【
図4】車載システムの状態変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】車載システムの状態変化を示すタイミングチャートである。
【
図6】車載システムの状態変化を示すタイミングチャートである。
【
図7】車載システムの状態変化を示すタイミングチャートである。
【
図8】車載システムの状態変化を示すタイミングチャートである。
【
図9】第2実施形態の遮断判定処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0013】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
図1~
図8に基づいて制御装置100を含む車載システム200を説明する。車載システム200はハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に搭載されている。
【0015】
<車載システム>
図1に示すように車載システム200は制御装置100の他に、バッテリ210、SMR220、プリチャージ回路230、電力変換装置240、モータ250、電気負荷260、インターロック回路270、および、車載センサ280を有している。制御装置100は車載センサ280や図示しないセンサから入力される信号および他の車載制御装置との通信結果に基づいて、車載システム200に含まれるスイッチの通電と遮断を制御している。
【0016】
なお図面においては制御装置100をECU、電力変換装置240をINV、モータ250をMG、電気負荷260をCOMP、インターロック回路270をINLと表記している。SMRはSystem Main Relayの略である。
【0017】
バッテリ210は電気的に直列接続された複数の電池セルを備えている。この電池セルとしては例えばリチウムイオン電池などの二次電池を採用することができる。電気的に直列接続された複数の電池セルのうちの最低電位の電池セルの負極にNバスバ211が接続されている。最高電位の電池セルの正極にPバスバ212が接続されている。これらNバスバ211とPバスバ212それぞれに電力変換装置240と電気負荷260が電気的に接続されている。
【0018】
SMR220はNバスバ211とPバスバ212それぞれに設けられたメインスイッチ221を備えている。メインスイッチ221はノーマリクローズ式の電磁リレーである。メインスイッチ221は励磁電流が供給されない場合に通電状態、励磁電流が供給される場合に遮断状態になる。
【0019】
メインスイッチ221はNバスバ211とPバスバ212それぞれにおけるバッテリ210と電力変換装置240(電気負荷260)との間に設けられている。そのため、励磁電流の非供給によってメインスイッチ221が通電状態になると、バッテリ210が電力変換装置240および電気負荷260それぞれと電気的に接続される。励磁電流の供給によってメインスイッチ221が遮断状態になると、バッテリ210が電力変換装置240および電気負荷260それぞれと電気的に接続されなくなる。
【0020】
プリチャージ回路230は充電スイッチ231と充電抵抗232を備えている。充電スイッチ231と充電抵抗232は電気的に直列接続されて直列回路を構成している。この直列回路の一端がNバスバ211におけるメインスイッチ221とバッテリ210との間に接続されている。直列回路の他端がNバスバ211におけるメインスイッチ221と電力変換装置240(電気負荷260)との間に接続されている。これにより充電スイッチ231と充電抵抗232はNバスバ211に設けられたメインスイッチ221と並列接続されている。
【0021】
電力変換装置240は大容量の平滑コンデンサと電力変換回路を有している。平滑コンデンサの備える2つの電極の一方がNバスバ211に接続されている。2つの電極の他方がPバスバ212に接続されている。
【0022】
平滑コンデンサは電力変換回路の使用時に充電状態で用いられる。平滑コンデンサの充電はバッテリ210からの電力供給によって行われる。この電力供給は、Pバスバ212に設けられたメインスイッチ221とプリチャージ回路230の充電スイッチ231それぞれを通電状態、Nバスバ211に設けられたメインスイッチ221を遮断状態にすることで行われる。係るスイッチ制御により、バッテリ210から平滑コンデンサへの電力供給が充電抵抗232を介して行われる。バッテリ210から平滑コンデンサへと流れる電力の急激な増大が抑制される。
【0023】
電力変換回路はインバータ回路を含んでいる。インバータ回路はNバスバ211とPバスバ212との間で並列接続された少なくとも3つの相回路を有する。相回路は直列接続された2つのスイッチ素子と、これら2つのスイッチ素子それぞれに逆並列接続された還流ダイオードと、を備えている。
【0024】
モータ250は電動車両の走行に用いられる。モータ250の備えるステータコイルに相回路の備える2つのスイッチ素子の中点が電気的に接続される。メインスイッチ221の通電状態で、各相回路の備えるスイッチ素子がPWM制御される。これにより電力変換回路で三相交流が生成される。この三相交流がステータコイルに供給されることで、三相回転磁界がステータコイルから発生される。この三相回転磁界とモータ250のロータから発生される磁界との相互作用によって回転トルクがロータに発生する。これによりモータ250が力行状態になる。電動車両が走行可能状態になる。電力変換装置240とモータ250が走行用の動力源に相当する。
【0025】
また、モータ250が電動車両の走行輪の回転エネルギーによって回生発電した場合、例えばスイッチ素子が遮断状態に制御される。こうすることで回生発電によって生成された交流電力が還流ダイオードを通る。還流ダイオードによって交流電力が直流電力に変換される。この直流電力がバッテリ210や電気負荷260に供給される。なお電力変換回路は入力電力の電圧レベルを変換するコンバータ回路を含んでもよい。
【0026】
電気負荷260にはDCDCコンバータや車両アクセサリが含まれている。DCDCコンバータは供給された直流電力を12Vに降圧し、それをスピーカ、パワーウィンドウ、および、パワーステアリング装置などに供給する。車両アクセサリは例えばヒータや空調などであり、供給された直流電力によって駆動する。電力変換装置240、モータ250、および、電気負荷260が車載機器に含まれている。
【0027】
インターロック回路270はNバスバ211およびPバスバ212それぞれと電力変換装置240との接続状態を検出する。Nバスバ211およびPバスバ212の少なくとも一方が電力変換装置240と非接続状態の場合、インターロック回路270はローレベルの接続信号を制御装置100に出力する。Nバスバ211とPバスバ212それぞれが電力変換装置240と接続状態の場合、インターロック回路270はハイレベルの接続信号を制御装置100に出力する。インターロック回路270が接続判定部に相当する。接続信号が接続情報に相当する。
【0028】
以下においては表記を簡便とするためにローレベルの接続信号を非接続信号と表記する。ハイレベルの接続信号を単に接続信号と表記する。
【0029】
車載センサ280は各種車両状態を検出する機能を果たしている。車載センサ280に含まれる複数のセンサの検出する各種車両状態には、高電圧の電力の流れるバッテリ210や電力変換装置240などの車載機器、および、Nバスバ211やPバスバ212などの経路それぞれと人間との接触可能性に関する情報が含まれている。
【0030】
車載センサ280に含まれる複数のセンサは、検出する車両状態に含まれる上記の接触可能性の高さに応じて、第1センサ281と第2センサ282の二種類に大別することができる。第1センサ281の検出する車両状態に含まれる接触可能性の高さは第2センサ282の検出する車両状態に含まれる接触可能性よりも高くなっている。
【0031】
第1センサ281が接触センサに相当する。第1センサ281から出力される信号が接触情報に相当する。第2センサ282が警告センサに相当する。第2センサ282から出力される信号が警告情報に相当する。
【0032】
第1センサ281には例えばフードセンサ281aとサスペンションセンサ281bが含まれている。第2センサ282には例えばシフトポジションセンサ282a、シートベルトセンサ282b、および、ドアセンサ282cが含まれている。
【0033】
車載センサ280は第1センサ281と第2センサ282の他に走行センサ283を備えている。走行センサ283は電動車両が走行している状態と駐停車している状態それぞれを検出する機能を果たしている。電動車両の走行状態には、電動車両が走行している状態と駐停車している状態それぞれが含まれている。
【0034】
走行センサ283には例えば車速センサ283aと回転角センサ284bが含まれている。車速センサ283aと回転角センサ284bから出力される信号が走行情報に相当する。
【0035】
図面においては、フードセンサ281aをFSと表記している。サスペンションセンサ281bをSSと表記している。シフトポジションセンサ282aをSPSと表記している。シートベルトセンサ282bをSBSと表記している。ドアセンサ282cをDSと表記している。車速センサ283aをVSSと表記している。回転角センサ284bをRASと表記している。
【0036】
車載システム200に含まれる、高電圧の電力の流れる車載機器や経路の少なくとも一部は電動車両のボディによって基本構成の形作られるフロント側やリア側のルームに収納される。そしてこのルームの開口がフードによって閉塞されたり解放されたりする。フードセンサ281aはこのフードの開閉状態を検出する機能を果たしている。フードセンサ281aはフードが開口を閉塞する閉状態のときに閉信号、フードが開口を開放する開状態のときに開信号を出力する。
【0037】
フードが閉じることでルームの開口が閉塞されている場合、高電圧の電力の流れる車載機器や経路に人間が接触することが避けられる。しかしながらフードが開くことでルームの開口が解放されている場合、高電圧の電力の流れる車載機器や経路に人間が接触する可能性が跳ね上がる。このようにフードセンサ281aから出力される閉信号と開信号には接触可能性に関する情報が含まれている。
【0038】
以下においては表記を簡便とするために、高電圧の電力の流れる車載機器や経路を高電圧機器とまとめて表記する。
【0039】
サスペンションセンサ281bは電動車両のサスペンションの伸張度合いを検出するものである。制御装置100はサスペンションセンサ281bから出力される伸張信号と自身が保有している閾値とに基づいて、サスペンションの伸張度合いが通常状態であるのか、それとも伸張状態であるのかを判定する。
【0040】
サスペンションの状態が正常と異常とにかかわらず、電動車両が路面に設けられている場合、サスペンションセンサ281bから出力される伸張信号は閾値よりも値が低くなる。サスペンションの状態が正常と異常とにかかわらず、車両点検などのために電動車両が吊り上げられて路面から離れた場合、サスペンションセンサ281bから出力される伸張信号は閾値よりも値が高くなる。
【0041】
車両点検などのために電動車両が吊り上げられて路面から離れた場合、高電圧機器に人間が接触する可能性が跳ね上がる。このようにサスペンションセンサ281bから出力される信号には接触可能性に関する情報が含まれている。
【0042】
シフトポジションセンサ282aは電動車両のシフトポジションが走行状態を示すのか非走行状態を示すのかを検出する。走行状態のシフトポジションの場合、電動車両が動いている、若しくは、電動車両が動きやすい状態にあるので接触可能性が低い。しかしながら非走行状態のシフトポジションの場合、電動車両が自立走行しがたい状態にあるので接触可能性が高まる。このようにシフトポジションセンサ282aで検出される車両状態には接触可能性に関する情報が含まれている。
【0043】
なお、走行状態を示すシフトポジションにはドライブポジションやリバースポジションなどが含まれている。非走行状態を示すシフトポジションにはニュートラルポジションやパーキングポジションなどが含まれている。
【0044】
シートベルトセンサ282bはシートベルトの装着状態を検出する。シートベルトが装着状態の場合、電動車両に搭乗しているユーザが動きがたい状態にあるので接触可能性が低い。しかしながらシートベルトが未装着状態の場合、電動車両に搭乗しているユーザが車外に出やすい、若しくは、電動車両に誰も搭乗しておらず車外にユーザがいる可能性がある。車外にいるユーザの行動によっては接触可能性が高まる。このようにシートベルトセンサ282bで検出される車両状態には接触可能性に関する情報が含まれている。
【0045】
ドアセンサ282cは電動車両のドアの開閉状態を検出する。例えば走行状態であった電動車両のドアが閉状態を維持している場合、電動車両にユーザが搭乗しているとみなすことができる。そのために接触可能性が低いとみなすことができる。しかしながら走行状態から駐停車状態に移行した電動車両のドアが閉状態から開状態に変わった場合、電動車両に搭乗していたユーザが電動車両の外に出たので接触可能性が高まる。このようにドアセンサ282cで検出される車両状態には接触可能性に関する情報が含まれている。
【0046】
車速センサ283aは車両の速度を検出するものである。回転角センサ284bは走行輪の回転数とモータ250の回転数の少なくとも一方を検出するものである。車速センサ283aと回転角センサ284bは電動車両が走行している状態と駐停車している状態それぞれを検出する機能を果たしている。電動車両の走行状態には、電動車両が走行している状態と駐停車している状態それぞれが含まれている。
【0047】
<制御装置>
制御装置100はこれまでに説明したインターロック回路270と車載センサ280の信号、および、図示しない他のセンサの信号や他の車載制御装置との通信結果に基づいて、車載システム200に含まれるスイッチの通電と遮断を制御する。
【0048】
制御装置100はPバスバ212に設けられたメインスイッチ221とプリチャージ回路230の充電スイッチ231それぞれを通電状態にする。また制御装置100はNバスバ211に設けられたメインスイッチ221を遮断状態にする。こうすることで制御装置100は電力変換装置240に含まれる平滑コンデンサを充電する。
【0049】
制御装置100はNバスバ211とPバスバ212それぞれに設けられたメインスイッチ221を通電状態にする。また制御装置100は充電スイッチ231を遮断状態にする。こうすることで制御装置100はバッテリ210を電力変換装置240および電気負荷260それぞれと電気的に接続する。
【0050】
制御装置100はメインスイッチ221を通電状態にしつつ電力変換装置240に含まれるスイッチ素子をPWM制御する。こうすることで制御装置100はモータ250を力行する。また制御装置100はスイッチ素子を例えば遮断状態にする。こうすることで制御装置100はモータ250で生成された交流電力を直流電力に変換する。
【0051】
そして制御装置100は、メインスイッチ221を通電状態にしている際に、インターロック回路270と車載センサ280の出力に基づいて、通電状態のメインスイッチ221の遮断判定処理を行う。以下においてはこの遮断判定処理を詳説する。
【0052】
<遮断判定処理>
制御装置100はメインスイッチ221を通電状態にして電動車両を走行させている際に
図2に示す遮断判定処理を実施する。
図2では開始をS、終了をEで表記している。
【0053】
なお制御装置100は、
図2に示す遮断判定処理と並行して、センサから出力される信号を所定周期でサンプリングしている。以下には表記が煩雑となることを避けるために、必要に応じて、制御装置100がサンプリングしている各種センサの信号をまとめてセンサ信号と示す。インターロック回路270の出力する接続信号もこのセンサ信号に含まれている。
【0054】
図2に示すステップS10において制御装置100は、センサ信号に基づいて車載システム200における高電圧の電力供給の安定性が保たれているか否かを判断する。電力供給の安定性が保たれていると判断すると制御装置100はステップS20へ進む。電力供給の安定性が低まっていると判断すると制御装置100はステップS30へ進む。
【0055】
電力供給の安定性を図る一つの指標は、電動車両に推進力を付与するモータ250を制御する電力変換装置240とバッテリ210との電気的な接続状態の安定性である。この安定性はインターロック回路270から出力される接続信号と非接続信号とによって判断することができる。しかしながら、インターロック回路270に異常が生じている場合、その安定性を判断しきれなくなる。
【0056】
上記したようにインターロック回路270はNバスバ211およびPバスバ212の少なくとも一方が電力変換装置240と非接続状態の場合に非接続信号を出力する。インターロック回路270はNバスバ211とPバスバ212それぞれが電力変換装置240と接続状態の場合に接続信号を出力する。
【0057】
したがって、例えば電動車両の駐停車時に、車両整備などのためにNバスバ211およびPバスバ212それぞれと電力変換装置240とが非接続状態になると、インターロック回路270から制御装置100に非接続信号が出力されることが期待される。
【0058】
モータ250の力行による電動車両の走行時においては、Nバスバ211およびPバスバ212それぞれと電力変換装置240との接続によってバッテリ210から電力変換装置240に電力供給されていることが想定される。そのため、モータ250の力行による電動車両の走行時においては、インターロック回路270から制御装置100に接続信号が出力されることが期待される。
【0059】
逆に、モータ250の力行による電動車両の走行時にインターロック回路270から非接続信号が出力された場合、インターロック回路270に異常が生じている可能性がある。若しくは、Nバスバ211およびPバスバ212それぞれと電力変換装置240との接続状態が不安定の可能性がある。
【0060】
そこで制御装置100は、例えば回転角センサ284bから出力される回転数が時間的に安定した有限値を示す際に、インターロック回路270から接続信号が出力された場合、電力供給の安定性が保たれていると判断する。この場合に制御装置100はステップS20へ進む。
【0061】
制御装置100は、例えば回転角センサ284bから出力される回転数が時間的に安定した有限値を示す際に、インターロック回路270から非接続信号が出力された場合、電力供給の安定性が低下していると判断する。この場合に制御装置100はステップS30へ進む。
【0062】
なお、電動車両の使用時にインターロック回路270から非接続信号が出力されることはほぼ起きない。電動車両の使用時にインターロック回路270から非接続信号が出力されるのは緊急事態である。非接続信号が出力されるのはユーザが電動車両を使用しないイグニッションスイッチオフ時や、車両点検時などである。
【0063】
そのためにステップS10において制御装置100は、他のセンサ信号に関わらずに、単にインターロック回路270から接続信号が出力された場合にステップS20へ進んでもよい。単にインターロック回路270から非接続信号が出力された場合にステップS30へ進んでもよい。
【0064】
ステップS20へ進むと制御装置100は、センサ信号に基づいて電動車両が駐停車状態であるか否かを判定する。それとともに制御装置100は、イグニッションスイッチがオフか否かを判定する。電動車両が駐停車状態であり、なおかつ、イグニッションスイッチがオフであると判定すると制御装置100はステップS40へ進む。電動車両が走行状態、若しくは、イグニッションスイッチがオンであると判定すると制御装置100はステップS10へ戻る。
【0065】
このように制御装置100はインターロック回路270の正常時において、電動車両の走行時にインターロック回路270から接続信号が出力されている場合、メインスイッチ221を通電状態に維持する。
【0066】
ステップS40へ進むと制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。そして制御装置100は遮断判定処理を終了する。
【0067】
このように制御装置100は電力供給の安定性が保たれている際に電動車両が走行している状態から駐停車状態になり、イグニッションスイッチがオフになると、メインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。換言すれば、制御装置100はインターロック回路270から接続信号が出力されている際に電動車両が走行している状態から駐停車状態になり、イグニッションスイッチがオフになると、メインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。
【0068】
フローを遡って、ステップS10で電力供給の安定性が低下していると判断してステップS30へ進むと制御装置100は、第1センサ281が正常であるか否かをセンサ信号に基づいて判断する。第1センサ281が正常であると判断すると制御装置100はステップS50へ進む。第1センサ281が異常であると判断すると制御装置100はステップS60へ進む。
【0069】
上記したように第1センサ281にはフードセンサ281aとサスペンションセンサ281bが含まれている。フードセンサ281aは高電圧機器の少なくとも一部が収納されたルームの開口を閉塞したり解放したりするフードの開閉状態を検出している。フードセンサ281aはルームの開口が閉塞されているときに閉信号、開口が解放されているときに開信号を出力する。
【0070】
したがって、例えば電動車両の駐停車時に、車両整備などのために開口が解放状態になると、フードセンサ281aから制御装置100に開信号が出力されることが期待される。
【0071】
また、電動車両の走行時においては、開口は閉塞状態になっていることが想定される。そのため、電動車両の走行時においては、フードセンサ281aから制御装置100に閉信号が出力されることが期待される。
【0072】
そこで制御装置100は、例えば車速センサ283aと回転角センサ284bから出力される車速と回転数の少なくとも一方が有限値を示す際に、フードセンサ281aから閉信号が出力された場合、フードセンサ281aが正常であると判断する。逆に、車速センサ283aと回転角センサ284bから出力される車速と回転数の少なくとも一方が有限値を示す際に、フードセンサ281aから開信号が出力された場合、制御装置100はフードセンサ281aに異常が生じていると判断する。
【0073】
サスペンションセンサ281bは電動車両のサスペンションの伸張度合いを検出している。サスペンションの状態が正常と異常とにかかわらず、電動車両が路面に設けられている場合、サスペンションセンサ281bから出力される伸張信号は閾値よりも値が低くなる。サスペンションの状態が正常と異常とにかかわらず、車両点検などのために電動車両が吊り上げられて路面から離れた場合、サスペンションセンサ281bから出力される伸張信号は閾値よりも値が高くなる。
【0074】
そこで制御装置100は、例えば車速センサ283aから出力される車速が有限値を示す際に、サスペンションセンサ281bから出力される伸張信号が閾値よりも低い場合、サスペンションセンサ281bが正常であると判断する。逆に、車速センサ283aから出力される車速が有限値を示す際に、サスペンションセンサ281bから出力される伸張信号が閾値よりも高い場合、制御装置100はサスペンションセンサ281bに異常が生じていると判断する。
【0075】
制御装置100は第1センサ281に含まれるフードセンサ281aとサスペンションセンサ281bの両方が正常であると判断するとステップS50へ進む。制御装置100は第1センサ281に含まれるフードセンサ281aとサスペンションセンサ281bの少なくとも1つが異常であると判断するとステップS60へ進む。
【0076】
換言すれば、制御装置100はフードセンサ281aから閉信号が出力され、サスペンションセンサ281bから出力される伸縮信号が閾値を下回っていると判断するとステップS50へ進む。制御装置100はフードセンサ281aから開信号が出力されている、サスペンションセンサ281bから出力される伸縮信号が閾値を上回っている、の少なくとも1つが成立していると判断するとステップS60へ進む。
【0077】
ステップS50へ進むと制御装置100は、第1遮断条件が成立するか否かを判定する。第1遮断条件が成立する場合に制御装置100はステップS70へ進む。第1遮断条件が不成立の場合に制御装置100はステップS10へ戻る。
【0078】
ステップS70へ進むと制御装置100は、センサ信号に基づいて電動車両が駐停車状態であるか否かを判定する。電動車両が駐停車状態であると判定すると制御装置100はステップS40へ進む。電動車両が走行状態であると判定すると制御装置100はステップS10へ戻る。
【0079】
第1遮断条件の成否は、第1センサ281に含まれるフードセンサ281aとサスペンションセンサ281bの少なくとも1つの出力信号の変化に基づいて決定される。
【0080】
制御装置100は電動車両の駐停車時にフードセンサ281aの出力信号が閉信号から開信号に変化した場合、ルームの開口が解放状態になって接触可能性が跳ね上がったとみなして、第1遮断条件が成立したと判断する。制御装置100は電動車両の駐停車時にサスペンションセンサ281bの伸張信号が閾値を上回った場合、車両点検のために接触可能性が跳ね上がったとみなして、第1遮断条件が成立したと判断する。
【0081】
なお、上記したように第1遮断条件が成立するのは電動車両の駐停車時である。そのために第1遮断条件が成立すると、制御装置100はステップS70をパスしてステップS40に進む。そして制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態に変化させる。
【0082】
なお、第1センサ281の異常状態と絡めて第1遮断条件を説明するために、第1遮断条件に「電動車両の駐停車時」を含めた記載をした。しかしながら、制御装置100は第1遮断条件の成立後にステップS70で電動車両の駐停車を判定する。そのため、第1遮断条件に「電動車両の駐停車時」が含まれなくともよい。
【0083】
この場合、第1遮断条件の成立は、フードセンサ281aの出力信号が閉信号から開信号に変化した場合、若しくは、サスペンションセンサ281bの伸張信号が閾値を上回った場合になる。本実施形態の第1遮断条件には、これら第1センサ281の出力変化のみが含まれている。
【0084】
ステップS60へ進むと制御装置100は、第2遮断条件が成立するか否かを判定する。第2遮断条件が成立する場合に制御装置100はステップS70へ進む。第2遮断条件が不成立の場合に制御装置100はステップS10へ戻る。
【0085】
第2遮断条件の成否は、第2センサ282に含まれるシフトポジションセンサ282a、シートベルトセンサ282b、および、ドアセンサ282cの少なくとも1つの出力信号の変化に基づいて決定される。
【0086】
第2遮断条件には、以下に示す各センサで検出される状態変化の少なくとも1つが含まれている。シフトポジションセンサ282aで走行ポジションから非走行ポジションへの変化が検出された。シートベルトセンサ282bでシートベルトの装着から未装着への変化が検出された。ドアセンサ282cで閉状態から開状態への変化が検出された。
【0087】
本実施形態の第2遮断条件には非走行ポジションが含まれている。
【0088】
<タイミングチャート>
次に、
図3~
図8に基づいて車載システム200の時間変化を説明する。図面では上から順に、電力供給の安定性、フードセンサ281a、サスペンションセンサ281b、第1センサ281の状態それぞれの時間変化を示している。続いて、車速センサ283a、シフトポジションセンサ282a、シートベルトセンサ282b、ドアセンサ282c、メインスイッチ221それぞれの時間変化を示している。
【0089】
なお図面においては、電力供給の安定性をSPSと表記している。第1センサ281の状態をFSSと表記している。メインスイッチ221をMSと表記している。時間をTと表記している。
【0090】
また、正常をNORと表記している。異常をABNと表記している。閉をCLと表記している。開をOPと表記している。下回っている、をLOと表記している。上回っている、をBEと表記している。走行をDRと表記している。停車をSTと表記している。走行ポジションをDPと表記している。非走行ポジションをNDPと表記している。装着をISと表記している。未装着をNISと表記している。通電をPWと表記している。遮断をBLと表記している。
【0091】
図3に示す時間t0において電力供給の安定性は正常になっている。フードセンサ281aは閉信号を出力している。サスペンションセンサ281bの伸縮信号は閾値を下回っている。第1センサ281の状態は正常である。車速センサ283aは車速がゼロよりも大きい値を示している。図示しないが回転角センサ284bは回転数がゼロよりも大きい値を示している。シフトポジションセンサ282aは走行ポジションを検出している。シートベルトセンサ282bは装着を検出している。ドアセンサ282cは閉状態を検出している。メインスイッチ221は励磁電流の非供給によって通電状態になっている。
【0092】
以上により、時間t0において、電動車両が路面に設けられ、高電圧機器の収納されたルームの開口がフードで閉塞されている。電動車両に搭乗しているユーザがドアを閉めた状態でシートベルトを装着している。電力供給の安定性が保たれ、メインスイッチ221が通電状態となることで、バッテリ210から電力変換装置240に電力供給され、モータ250の力行によって電動車両が走行している。
【0093】
時間t0から時間t1になると、電力供給の安定性が異常状態になる。係る異常判定は
図2に基づいて説明したようにインターロック回路270の出力に基づいてなされる。これ以降、制御装置100は第1センサ281に異常が生じているか否かを判定する。そして制御装置100は第1センサ281に異常が生じていないと判定し続ける限り、第2センサ282の出力に限らずに、第1センサ281の出力に基づいてメインスイッチ221の遮断判定を行う。
【0094】
時間t2になると車速がゼロになる。それとともに回転角センサ284bで検出される回転数がゼロになる。この際に制御装置100は電動車両が走行している状態から駐停車状態に移行したと判定する。
【0095】
時間t3になるとシフトポジションが走行ポジションから非走行ポジションになる。時間t4になるとシートベルトが走行状態から未装着状態になる。時間t5になるとドアが閉状態から開状態になる。時間t6になるとドアが開状態から閉状態になる。
【0096】
これら時間t3~t6で起きる車両状態の変化は第2センサ282で検出される。時間t3~t6において第1センサ281に異常が生じていないと制御装置100は判定している。そのために制御装置100は第2センサ282の出力に基づいてメインスイッチ221の遮断判定を行わず、通電状態を維持している。
【0097】
時間t7になるとフードが開状態になる。フードセンサ281aから制御装置100に開信号が出力される。この際に制御装置100は第1遮断条件が成立したと判定する。そして制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。
【0098】
図4に示すタイミングチャートは、時間t7以降の振る舞いが
図3に示すタイミングチャートと異なる。
図4に示すタイミングチャートでは、時間t7になるとサスペンションセンサ281bの伸縮信号が閾値を上回る。制御装置100はこの際に第1遮断条件が成立したと判定する。制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。以上に示した
図3と
図4に示すタイミングチャートは、
図2に示す遮断判定処理におけるステップS10~S50に対応している。
【0099】
図5に示すタイミングチャートでは、時間t0と時間t1との間の時間t8において、フードセンサ281aから開信号が出力される。これは、電動車両が通常走行状態においてフードが開く緊急事態を示している。若しくは、フードセンサ281aの故障を示している。この際に制御装置100は第1センサ281に異常が生じていると判定する。
【0100】
時間t8から時間t1に至ると、電力供給の安定性が異常状態になる。この時点で制御装置100は電力供給の安定性が低下し、なおかつ、第1センサ281に異常が生じていると判定する。そのために制御装置100は第2センサ282の出力に基づいてメインスイッチ221の遮断判定を行うことを決定する。
【0101】
時間t3になるとシフトポジションが非走行ポジションになる。この際に制御装置100は電動車両が駐停車状態であり、第2遮断条件が成立したと判定して、メインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。
【0102】
図6に示すタイミングチャートは、時間t8以降のフードセンサ281aとサスペンションセンサ281bの振る舞いのみが
図5に示すタイミングチャートと異なる。
図6に示すタイミングチャートでは、時間t8になるとサスペンションセンサ281bの伸縮信号が閾値を上回る。電動車両は走行している状態なので、伸縮信号が閾値を上回ることは期待されない。そのために制御装置100はこの際に第1センサ281のサスペンションセンサ281bに異常が生じたと判定する。
【0103】
時間t8から時間t1に至ると、制御装置100は電力供給の安定性が低まり、第1センサ281に異常が生じていると判定する。そして制御装置100は時間t3で第2遮断条件が成立したと判定し、メインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。
【0104】
なお、第2遮断条件には、非走行ポジションの他に、シートベルト未装着が含まれてもよい。この場合、
図7に示すように時間t4で第2遮断条件が成立し、メインスイッチ221が遮断状態になる。
【0105】
また、第2遮断条件には、非走行ポジションとシートベルト未装着の他に、ドア開が含まれてもよい。この場合、
図8に示すように時間t5で第2遮断条件が成立し、メインスイッチ221が遮断状態になる。以上に示した
図5~
図8に示すタイミングチャートは、
図2に示す遮断判定処理におけるステップS10~S40,S60に対応している。
【0106】
<作用効果>
電動車両の走行時にインターロック回路270の異常によって電力供給の安定性が低下した場合、制御装置100は第1センサ281と走行センサ283の出力に基づいてメインスイッチ221の通電と遮断を制御する。
【0107】
これによれば、たとえインターロック回路270が異常な状態であっても、メインスイッチ221の通電と遮断を判断することができる。また、高電圧機器と人との接触可能性に関わる情報を含む車両状態を検出する第1センサ281の出力を用いてメインスイッチ221の通電と遮断が判断される。そのために例え電力供給の安定性が低下している状態であっても高電圧機器に人が接触することが抑制される。
【0108】
インターロック回路270の異常によって電力供給の安定性が低下し、なおかつ、第1センサ281に異常が生じた場合、制御装置100は第2センサ282と走行センサ283の出力に基づいてメインスイッチ221の通電と遮断を制御する。
【0109】
これによれば、たとえインターロック回路270と第1センサ281それぞれが異常な状態であっても、メインスイッチ221の通電と遮断を判断することができる。また、高電圧機器と人との接触可能性に関わる情報を含む車両状態を検出する第2センサ282の出力を用いてメインスイッチ221の通電と遮断が判断される。そのために例え電力供給の安定性が低下し第1センサ281に異常が生じている状態であっても高電圧機器に人が接触することが抑制される。
【0110】
図2に明示するように、制御装置100は電力供給の安定性が低下した場合、電動車両が走行状態から駐停車状態に変わったとしても、第1センサ281の出力に基づく第1遮断条件が成立しない限り、メインスイッチ221を通電状態に維持する。制御装置100は電力供給の安定性が低下して第1センサ281に異常が生じた場合、電動車両が走行状態から駐停車状態に変わったとしても、第2センサ282の出力に基づく第2遮断条件が成立しない限り、メインスイッチ221を通電状態に維持する。
【0111】
これによれば、電動車両が走行状態から一時的に駐停車状態に変化した場合に、高電圧機器と人との接触可能性が高まっていないにもかかわらず、メインスイッチ221が遮断状態になることが避けられる。メインスイッチ221の遮断によって電動車両が走行不能になることが避けられる。
【0112】
また、制御装置100は電力供給の安定性が低下した場合、第1遮断条件の成否にかかわらず、電動車両が走行状態から駐停車状態に変わらない限り、メインスイッチ221を通電状態に維持する。制御装置100は電力供給の安定性が低下して第1センサ281に異常が生じた場合、第2遮断条件の成否にかかわらず、電動車両が走行状態から駐停車状態に変わらない限り、メインスイッチ221を通電状態に維持する。
【0113】
これによれば、電動車両の走行中に第1遮断条件若しくは第2遮断条件の成立によってメインスイッチ221が遮断状態になることが避けられる。メインスイッチ221の遮断によって走行状態の電動車両が走行不能になることが避けられる。交差点などの意図しない場所で電動車両が停車することが抑制される。
【0114】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を
図9に基づいて説明する。
【0115】
第1実施形態では車載センサ280に含まれる複数のセンサの一部を、検出する車両状態に含まれる接触可能性の高さに応じて第1センサ281と第2センサ282の二種類に大別する例を示した。そして制御装置100は電力供給の安全性が保たれていない場合に第1センサ281と走行センサ283の出力に基づいてメインスイッチ221の遮断を判断する例を示した。制御装置100は電力供給の安全性が保たれず、なおかつ、第1センサ281が異常の場合に、第2センサ282と走行センサ283の出力に基づいてメインスイッチ221の遮断を判断する例を示した。
【0116】
これに対して本実施形態では、車載センサ280に含まれる複数のセンサの一部を接触可能性の高さに応じて種別しない。そして制御装置100は電力供給の安全性が保たれていない場合に車載センサ280の出力に基づいてメインスイッチ221の遮断を判断する。
【0117】
本実施形態の制御装置100は
図9に示す遮断判定処理を実施する。
図2に示す遮断判定処理との違いは、制御装置100がステップS30、ステップS50、ステップS60の代わりにステップS80を実施する点にある。
【0118】
ステップS10で電力供給の安定性が低下していると判断すると、制御装置100はステップS80へ進む。
【0119】
ステップS80へ進むと制御装置100は、車載センサ280の出力に基づいて遮断条件が成立するか否かを判定する。この遮断条件には、第1実施形態で示した第1遮断条件の中の少なくとも1つ、第2遮断条件の中の少なくとも1つが含まれている。すなわち遮断条件には、フードセンサ281aの異常、サスペンションセンサ281bの異常、非走行ポジション、シートベルト未装着、および、ドア開の少なくとも1つが含まれている。
【0120】
ステップS80において遮断条件が成立したと判定すると制御装置100はステップS70に進む。ステップS70において車載センサ280の出力に基づいて電動車両が駐停車していると判断すると制御装置100はステップS40に進む。ステップS40に進むと制御装置100はメインスイッチ221を通電状態から遮断状態にする。
【0121】
本構成によれば、インターロック回路270の故障などによって電力供給の安定性が低下したとしても、メインスイッチ221の通電と遮断とを制御することができる。
【0122】
なお本実施形態に記載の制御装置100には、第1実施形態に記載の制御装置100と同等の構成要素が含まれている。そのために本実施形態の制御装置100が第1実施形態に記載の制御装置100と同等の作用効果を奏することは言うまでもない。そのためにその記載を省略する。
【0123】
<制御装置の形態>
本実施形態で記載した制御装置100は電子制御装置(Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。制御装置100または制御システムは、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理、または、(b)機械学習でチューニングされた学習済みモデルによって提供することができる。機械学習でチューニングされた学習済みモデルは、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。
【0124】
制御装置100は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアである少なくとも1つプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、または、(iii)により提供することができる。
【0125】
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアはCPU、GPU、RISC-CPUなどと呼ばれる。CPUはCentral Processing Unitの略である。GPUはGraphics Processing Unitの略である。メモリは記憶媒体とも呼ばれる。メモリはプロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよびデータのうちの少なくとも一方」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または、光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
【0126】
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC、FPGA、PGA、CPLDなどとも呼ばれる。ASICはApplication-Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。PGAはProgrammable Gate Arrayの略である。CPLDはComplex Programmable Logic Deviceの略である。デジタル回路は、プログラムおよびデータのうちの少なくとも一方を格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0127】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
【0128】
制御装置100と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、ブロック、モジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、機能的な手段と呼ばれる。
【0129】
この開示に記載の制御装置100およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御装置100およびその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御装置100およびその手法は、1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0130】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0131】
100…制御装置、200…車載システム、210…バッテリ、211…Nバスバ、212…Pバスバ、221…メインスイッチ、240…電力変換装置、250…モータ、260…電気負荷、270…インターロック回路、281…第1センサ、281a…フードセンサ、281b…サスペンションセンサ、282…第2センサ、282a…シフトポジションセンサ、282b…シートベルトセンサ、282b…ドアセンサ、283…走行センサ、283a…車速センサ、283b…回転角センサ