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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240312BHJP
   B23P 19/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
G01L5/00 L
B23P19/00 303Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020115014
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022022722
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】郷古 倫央
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 敦資
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敏尚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】井村 友弘
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181582(JP,A)
【文献】特開平07-016688(JP,A)
【文献】特開平09-049702(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00ー5/28
B23P 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座(3)に載置されたワーク(2)に対し加圧機(1)の加工ヘッド(9)が押圧し、ワークに加わる加工圧力を検出する圧力検出装置(30,70,90)であって、
前記加圧機の可動プレート(5)に固定され、前記加圧機の駆動力を受ける固定支持部材(32,73)と、
ワークに当接可能で加工圧力を加える加工ヘッドと、
前記固定支持部材と加工ヘッドとの間に固定され、前記加工圧力に応じて座屈により歪を生じる歪変換部(33,74,94)と、
記歪変換部の座屈による歪変動量(ΔX)を検出可能な座屈検出部(40,60,80,100,110)と、
を備える圧力検出装置。
【請求項2】
前記座屈検出部は、
前記歪変動量に応じて発生する変位を検出する変位検出部(41,45,63,84)と、
前記歪変換部に座屈の生じるX軸方向から接触する接触点(51,76)及び、前記固定支持部材に前記ワークに加工圧力を加えるY軸方向から接触する支点(54,79)及び、前記歪変動量前記変位検出部の一方の面へ伝播可能な作用部(53,78)を有し、前記歪変動量を増幅して前記作用部の変位に変換するように前記支点を中心に可動可能なレバー(50,61,72)と、
前記変位検出部の他方の面に接する抑え部材(56,62,67,83)と、
前記レバーの可動範囲において前記変位検出部が少なくとも圧縮されるように、前記抑え部材と前記変位検出部と前記レバーとを前記固定支持部材に共締めする与圧部材(37,38,39,82)と、
を備えた請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記変位検出部(41,45,63,84)は、前記作用部の変位を圧縮の変化量(ΔY)として熱流に変換可能な弾性部材(42,46,85)、及び前記弾性部材の発する熱流を電気信号に変換可能な熱流センサ(43,47,86)を有し、
前記弾性部材と前記熱流センサとが積層されている請求項2に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記座屈検出部(40、60、80)は、前記歪変換部の軸心線(15)から偏心した位置に配置されており、
前記レバー(50,61)は、
屈曲部(52)で曲げた棒体または板体であり、
前記接触点(51)は、前記レバーのレバー外側面(55)の一端が前記X軸方向から前記歪変換部(33)に接触し、
前記支点(54)は、前記屈曲部を挟んだ他端が前記Y軸方向から前記固定支持部材(32)の前記歪変換部側の端面に接触する請求項2または3に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
前記レバー(72)は、
屈曲部(77)で曲げた棒体または板体であり、
前記接触点(76)は、前記レバーのレバー内側面(81)の一端が前記X軸方向から前記歪変換部(74,94)に接触し、
前記支点(79)は、前記屈曲部を挟んだ他端が前記Y軸方向から前記固定支持部材(73)の前記歪変換部とは反対側の面に接触し、
前記固定支持部材の前記歪変換部とは反対側に前記支点及び前記変位検出部を容可能な凹部(87)が形成されている請求項2または3に記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工、圧入組付けなど加圧によって加工を行う際の加圧状態を検出する圧力検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス加工、圧入組付けなどの加工作業では、加工後の良品、不良品の判定を目視で確認することができなかった。特許文献1に示すように、圧力検出装置は、可動プレートとワーク側のベースプレートとセンサユニットとを備える。センサユニットは、作用軸上方向荷重を受けるように圧入装置側の可動プレートとワーク側のベースプレートとの間に挟み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-181582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧力検出装置は、センサユニットに水晶圧電式のセンサを用いていた。水晶圧電式のセンサが加圧機の荷重を検知していた。センサは耐荷重の範囲内でしか使用ができなく、加圧機がワークに加える荷重よりもセンサの耐荷重が小さい場合、圧力検出装置を使用することが困難であった。
【0005】
センサユニットにロードセルや荷重センサを付けることも、同様に、加圧機がワークに加える荷重よりもセンサの耐荷重が小さく使用できなかった。耐荷重の大きなセンサを用いると、感度が低くなり、不良判定が難しくなる。
【0006】
本発明は、この点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、加圧機の加工圧力を直接受けることなしにワークに作用する加工圧力の検出を可能とする圧力検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧力検出装置(30,70)は、加工機の台座(3)の上面(14)に載置されたワーク(2)に対し、前記上面に垂直な方向に沿って、加圧機(1)の加工ヘッド(9)からワークに作用する加工圧力を検出する圧力検出装置である。
【0008】
加圧機の可動プレート(5)に固定され、加圧機からの加工圧力を受ける固定支持部材(32,73)と、固定支持部材と加工ヘッドとの間に固定され、加工圧力に応じて座屈により歪を生じる歪変換部(33,74,94)と、歪変換部の座屈による歪変動量(ΔX)を検出可能な座屈検出部(40,60,80,100,110)とを備える。
【0009】
これにより、加圧機から加わる圧力を直接検出するのでなく、歪変換部の座屈による歪変動量(ΔX)を座屈検出部が検出するので、座屈検出部に加圧機の加工圧力が加わることがなくなり、加工圧力に耐える座屈検出部を選定することが不要となる。加圧機の加工圧力を受けずに加工圧力の検出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の圧力検出装置の設置状態を示す正面図。
図2】(a)第1実施形態の圧力検出装置を示す部分拡大正面図、(b)図2(a)を正面としたときの右側から見た側面図。
図3】第1実施形態の圧力検出装置の座屈検出部における変位検出部および与圧部材を示す図。
図4】(a)第1実施形態の圧力検出装置の座屈検出部の初期状態を説明する図、(b)第1実施形態の圧力検出装置の座屈時の歪の検出を説明する図。
図5】第1実施形態の圧力検出装置を装着して押圧加工をしたときの状態を説明する図。
図6】(a)第1実施形態の押圧加工時の歪変換部の状態を説明する図、(b)図5における歪が歪変換部から座屈検出部へ伝わる状態を説明する図。
図7】(a)第1実施形態の押圧加工時の歪変換部の別の状態を説明する図、(b)図6(a)における歪が歪変換部から座屈検出部へ伝わる状態を説明する図。
図8】第1実施形態の圧力検出装置を用いたときの加工圧力の検出例を示す図。
図9】第2実施形態の圧力検出装置を示す図。
図10】第2実施形態の圧力検出装置を示す図であり、図9のA-A断面図。
図11】第3実施形態の圧力検出装置であり、一つの固定支持部材に歪変換部と加工ヘッドとの一式を多数隣接させて備えた形態を示す図。
図12】第3実施形態の圧力検出装置を示す図であり、図11のA-A断面図。
図13】第4実施形態の座屈検出部における与圧部材と抑え部材を備えた座屈検出部の構成を示す図。
図14】第5実施形態の座屈検出部における変位検出部の熱流センサ及び弾性部材一式を2段積層した構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態の圧力検出装置30は、図1から図4に示すように、圧入ピン抜き取り装置としての加圧機1に装着される。加圧機1は、台座3の上面14に載置したワーク2に対し、上面14に対し垂直なY軸方向に圧力を加えて加工をする。
加圧機1による加工圧力を検出する圧力検出装置30は、歪変換部33の軸心線15から偏心した位置に設けられ、加圧機1の圧力を受ける歪変換部33の座屈現象が生じるX軸方向の歪変動量を検出する。
【0013】
作業開始前の加圧機1は、図1に示すように、ワーク2を載置可能にした台座3の上面14から立ち上がるガイドロッド4と、ガイドロッド4によって案内されY軸方向に上下移動可能な可動プレート5と、可動プレート5を上下移動させるボールナット6及びボールねじ7と、ボールねじ7を回転させるモータ8とからなる。加工ヘッド9を装着した圧力検出装置30は、可動プレート5の下面に固定される。
【0014】
圧力検出装置30は、図1に示すように、Y軸上で可動プレート5と台座3との中間位置に配置されている。圧力検出装置30は、固定支持部材32及び歪変換部33を有する本体31と、座屈検出部40とを備える。
【0015】
本体31の上部は固定支持部材32を有する。固定支持部材32は可動プレート5の下面に固定されている。本体31の下部は歪変換部33を有する。固定支持部材32は、加圧機1からの加工圧力を受ける板体である。固定支持部材32は、Y軸と直交する位置で可動プレート5にねじ止めされる。固定支持部材32は、歪変換部33の最下端に加工ヘッド9を装着可能である。
【0016】
歪変換部33は、固定支持部材32の下面に加工ヘッド9との間に固定される板体である。図2(a),(b)に示すように、歪変換部33の上面16が前記Y軸と交差し、厚み方向がY軸に対して垂直なX軸方向となるように固定される。歪変換部33を形成する板体は、超鋼材で形成される。厚み(W)に対して、高さ(H)と奥行き(D)の長さが10倍程度大きい板材である。各部の寸法がH>D>Wの平板である。加工ヘッド9からの反作用を受けたとき、固定支持部材32の取り付け面に対する加工ヘッド9の取り付け面の平行度は、加工に影響が無い程度に収まるようにする。例えば、荷重が10Kgfのときの平行度が0.05以下になるためには、歪変換部33は材質が超鋼でWが8mm、Dが80mm、Hが100mmである。
【0017】
座屈検出部40は、図2(a),(b)に示すように、歪変換部33の軸心線15から偏心した位置に配置される。加圧機1が可動プレート5に加える圧力が座屈検出部40に加わらないようにするためである。座屈検出部40は、歪変換部33からX軸方向に伝播する歪変動量を検出し電気信号に変換可能である。座屈検出部40は、変位検出部41と、レバー50と、抑え部材56と、与圧部材37とを備える。
【0018】
変位検出部41は、図3に示すように、歪による変位を熱に変換可能な弾性部材42と弾性部材42の発する熱流を電気信号に変換可能な熱流センサ43との積層体である。弾性部材42は、熱弾性効果により熱を発生することができる超高分子ポリエチレン製の樹脂、ゴム、金属のいずれか、またはこれらを組み合わせたものである。熱流センサ43は、厚み方向に熱流が通過すると、ゼーベック効果によって熱起電力を発生させる電圧型のセンサである。変位検出部41は、熱流センサ43と弾性部材42とを積層した積層体であり、熱流センサ43は弾性部材42が弾性変形により発生する熱流を検知する。
【0019】
レバー50は、図2(a)に示すように、接触点51、屈曲部52、作用部53、支点54を軸線方向に順番に備える棒体または板体である。レバー50は、てこの原理により、接触点51の微動(歪変動量)を作用部53で増幅して変位とする。
【0020】
レバー50は、屈曲部52で、90度に曲げられる。屈曲部52の外角を形成する面をレバー外側面55とすると、接触点51と支点54とは、レバー外側面55のそれぞれの端部に位置し、レバー50の軸線と交差する陵線を有する。接触点51の稜線は、X軸方向から歪変換部33に接触する。同様に支点54の稜線は、Y軸方向から固定支持部材32の下面に接触する。固定支持部材32の下面とは、固定支持部材32の歪変換部33側の端面である。作用部53は、変位検出部41が接触するレバー50上の部分である。作用部53は、レバー50によって増幅された変位を圧縮の変化量として、弾性部材42に加える部位である。
【0021】
抑え部材56は、与圧部材37によって、変位検出部41をレバー50の作用部53に押え付ける板体である。屈曲部52の内角を形成する面をレバー内側面57とすると、抑え部材56は、レバー内側面57に変位検出部41を抑え付ける。
【0022】
与圧部材37は、図3に示すように、作用部53から変位が弾性部材42に加わるように、また、弾性部材42からの熱流が熱流センサ43に伝わるように押圧するボルトである。作用部53の変位は、弾性部材42の圧縮量を変化させるものである。与圧部材37は、作用部53で抑え部材56と変位検出部41とレバー50とを固定支持部材32に共締めする一本のボルトである。与圧部材37は抑え部材56及び変位検出部41の中央部とレバー50とを貫通して固定支持部材32に締結される。
【0023】
与圧部材37を締結すると、座屈検出部40は、図4(a)に示すように、初期状態は次の動作(1)-(3)を生じる。
(1)弾性部材42に与圧部材37の締結方向(Y軸方向、矢印a)の変位が生じる。弾性部材42はレバー50の可動範囲内で圧縮される。
(2)レバー50の接触点51は歪変換部33からX軸方向(矢印b)に斥力を受ける。
(3)レバー50の支点54は固定支持部材32からY軸方向(矢印c)の斥力を受ける。
【0024】
次に、初期状態のもとで接触点51と支点54と弾性部材42の圧縮量の関係を説明する。接触点51における歪変換部33の座屈による歪変動量がΔXのとき、レバー50が支点54を中心に回転する。その際、図4(b)に示すように、レバー50からの変位で弾性部材42の圧縮量が変化する。弾性部材42の圧縮の変化量をΔYとする。なお、レバー50の可動範囲において弾性部材42が少なくとも圧縮されるように、初期状態は、抑え部材56と変位検出部41とレバー50とが固定支持部材32に共締めされているので、歪変動量ΔXに対応して圧縮の変化量ΔYは、増加と減少のどちらにも変位が可能である。
(1)ΔYは、レバー50の水平長さLが長いほど大きくなる。
(2)ΔYは、レバー50の垂直長さVが長いほど小さくなる。
(3)ΔYは、支点54から与圧部材37(ボルトの中心)までの距離Pが大きいほど大きくなる。
【0025】
ただし、ΔYが大きくなると弾性部材42に伝わる力は小さくなり、逆にΔYが小さくなると力は大きくなる。弾性部材42の発熱及び吸熱は、変形速度と力に比例するため、引き抜き工程の速度が遅い場合、弾性部材42に伝わる力が大きくなるように設定される。引き抜き力が小さい場合は、ΔYが大きくなる。言い換えると、変形速度が速くなるようにする。具体的には、工程の条件により、レバー50の寸法や支点54から与圧部材37までの位置を調整する。このような関係のもとで、弾性部材42に加わる圧縮量が減少すると弾性部材42へ吸熱の流れが発生する。弾性部材42に加わる圧縮量が増加すると弾性部材42へ吸熱の流れが発生する。
【0026】
次に圧力検出装置30の作動を説明する。
【0027】
図1に示すように、加圧機1はワーク2に挿入された圧入ピン10を抜く工程を行う。初期状態として、台座3の上面14にワーク2が載置されている。ワーク2の中心部には圧入ピン10が圧入されている。
【0028】
(1)モータ8が動作すると、図5に示すように、ボールねじ7が回転をする。ボールねじ7の回転によって、ボールナット6側の可動プレート5が下降する。可動プレート5とともに圧力検出装置30は、下降し、加工ヘッド9の先端がワーク2の圧入ピン10に当接し、さらに押し下げる。加圧機1を動作し続けると、圧入ピン10がワーク2から下方へ抜ける。
【0029】
(2)圧入ピン10をワーク2から下方へ抜きとる工程で、図6(a)に示すように、歪変換部33は加圧機1からY軸方向の圧力(矢印d)とワーク2からの反作用力(矢印e)とを受ける。歪変換部33に上下両端から力が加わるため、歪変換部33は座屈を起こし、第2軸方向の中央部が一方の側に膨らむ。歪変換部33の座屈に伴う歪が、歪変換部33の平面側である図6(a)のX軸方向(矢印f方向)に発生する。X軸方向の歪は図4(b)に示すように歪変動量(ΔX)となって、接触点51に伝わる。
【0030】
(3-1)レバー50の接触点51は歪変換部33に対する接触(図4(a)における矢印b方向)が弱くなり、図6(b)矢印gで示すように、支点54を中心にレバー50が回転する方向に微動する。矢印g方向の微動は、作用部53で増幅され、矢印h方向(Y軸方向)の変位となる。矢印h方向の変位は弾性部材42に加えた初期の変位を減少させる。つまり、矢印f方向の歪変動量によって、レバー50が作用部53で弾性部材42の圧縮量を減少させる。弾性部材42に加わる圧縮量が減少すると、圧縮の変化量(ΔY)に応じて弾性部材42へ吸熱の流れが発生する。
【0031】
(3-2)また、図7(a)に示すように歪変換部33が矢印k方向(矢印f方向とは逆方向)に歪む場合には、レバー50の接触点51は歪変換部33に対する接触(図4(a)における矢印b方向)が強くなり、図7(b)矢印mで示すように、支点54を中心にレバー50が回転する方向に微動する。矢印m方向の微動は、作用部53で増幅され、矢印n方向(Y軸方向)の変位となる。矢印n方向の変位は弾性部材42に加える圧力を増加させる。つまり、矢印k方向の歪変動量によって、レバー50が作用部53で弾性部材42に加える圧縮量を増加させる。弾性部材42に加わる圧縮量が増加すると、圧縮の変化量(ΔY)に応じて弾性部材42から発熱の流れを生じる。
【0032】
(4)弾性部材42の発熱は、熱流センサ43を通過する熱流を生じさせるので、熱流センサ43から時系列的に変化する電気信号を取り出すことが可能となる。与圧部材37によって、レバー50の可動範囲においてあらかじめ所定の圧縮量を加えておくことで、歪変換部33が、矢印f方向、矢印k方向のどちらの方向に歪を発生しても、弾性部材42に加わる変位に変化が生じる。弾性部材42に加わる変位は、圧縮量を変化させるので熱流を発生させて、熱流センサ43が熱流の変化を電気信号として出力することが可能である。
【0033】
第1実施形態の圧力検出装置を用いた検出結果の一例を図8に示す。
【0034】
図8、破線Rで示すように、あらかじめ、正常なピン抜き作業での座屈に伴う歪を時系列的な標準電気信号波形として記録しておく。ピン抜きの作業ごとに電気信号波形を検出する。検出電気信号波形と標準電気信号波形とを比較して、ピン抜き加工後のワークの良否の判定を行う。本実施形態の圧力検出装置30では、電気信号波形を用いて加圧作業時のピークの高さと時間の組み合わせで判定が行える。例えば、ピン抜き作業を行ったとき、実線Sで示すようにピークP1とピークP2が観測されると、破線Rで示す波形で観測されるピークPrと比べることができる。ピークの高さ、観測される時間を組み合わせて比較することで、工程の異常を判定することができる。本実施形態の構成では、ピークP1をスパイク状の波形として検出することもでき、良否判定の精度が向上する。
【0035】
座屈検出部40は、図2(a)、図2(b)に示すように、歪変換部33の軸心線15の外側に配置されるので、加圧機1の加工圧力を受けることがなく、加工圧力の検出が可能である。加工圧力に耐える座屈検出部40を選定が不要となる。
【0036】
レバー50は、屈曲部52で曲げた棒体または板体である。レバー外側面55の一端と他端とに、X軸方向から歪変換部33に接触する接触点51と、屈曲部52を挟んだ他端がY軸方向から固定支持部材32の歪変換部33側の端面に接触する支点54とを備えたので、加圧機1がワーク2へ加える圧力が座屈検出部40に加わることがない。座屈検出部40は、加圧機1の加工圧力を受けることがなく、歪変換部33の座屈を検出可能である。圧力検出装置30は、歪変換部33の座屈の検出により、加圧機1による加工圧力の検出が可能となり、ワーク2の加工の良否判定が容易にできる。
【0037】
(第2実施形態)
図9,10に示すように、第2実施形態の圧力検出装置70は、座屈検出部100が備えるレバー72の形状及び配置が第1実施形態のものと異なる。圧力検出装置70は、ワーク2に加工圧力を加えるY軸方向で可動プレート5と台座3との中間位置に配置可能である。
【0038】
図10に示すように、圧力検出装置70は、固定支持部材73及び歪変換部74を有する本体71と、座屈検出部100とを備える。本体71の上部は、固定支持部材73を有し、可動プレート5の下面に固定可能である。本体71の下部は歪変換部74を有し、Y軸上に加工ヘッド9を装着可能である。固定支持部材73は、加圧機1からの加工圧力を受ける板体である。Y軸と直交する位置で可動プレート5にねじ止めされる。
【0039】
座屈検出部100は、変位検出部84と、レバー72と、抑え部材83と、与圧部材82とを備える。
【0040】
変位検出部84は弾性部材85と熱流センサ86とを有する。
座屈検出部100のレバー72は、図10に示すように、接触点76、屈曲部77、作用部78、支点79を軸線方向に順番に備える棒体または板体である。
【0041】
レバー72は、屈曲部77で90度に曲げられる。屈曲部77の内角を形成する面をレバー内側面81とすると、接触点76と支点79とは、レバー内側面81のそれぞれの端部でレバー72の軸線と交差する陵線を有する。接触点76の稜線は、加圧機1の圧力が加わらないように、歪変換部74に座屈の生じるX軸方向から接触する。同様に支点79の稜線は固定支持部材73の上面側に前記Y軸方向から接触する。固定支持部材73の上面側とは、固定支持部材73の歪変換部74とは反対側の面である。
【0042】
さらに、座屈検出部100に加圧機1の圧力が加わらないようにするために、固定支持部材73の上面側に凹部87を設け、凹部87内に、レバー72の支点79及び作用部78と、変位検出部84と、抑え部材83と、与圧部材82とを容する。作用部78は、変位検出部75が接触するレバー72上の部分である。作用部78は、レバー72によって増幅された変位を圧縮の変化量として、弾性部材85に加える部位である。
【0043】
抑え部材83は、与圧部材82によって、変位検出部84をレバー72の作用部78に押え付ける板体である。屈曲部77の外角を形成する面をレバー外側面88とすると、抑え部材83は、レバー外側面88で変位検出部84の抑え付けをする。
【0044】
与圧部材82は、レバー72の変位が弾性部材85に加わるように、また、弾性部材85からの熱流が熱流センサ86に伝わるように押圧するボルトである。作用部78で抑え部材83と変位検出部84とレバー72とを固定支持部材73に共締めする一本のボルトである。与圧部材82は、抑え部材83及び変位検出部84の中央部とレバー72を貫通して固定支持部材73に締結する。
【0045】
与圧部材82を締結すると、座屈検出部80の初期状態は次の動作(1)-(3)を生じる。
(1)レバー72の接触点76に歪変換部74からX軸方向に斥力を受ける。
(2)レバー72の支点79に固定支持部材73からY軸方向の斥力を受ける。
(3)弾性部材85に与圧部材82の締結方向の変位が生じる。弾性部材85はレバー72の可動範囲内で圧縮される。
【0046】
第1実施形態と同様に、加圧機1がワーク2に挿入されたピンを抜く工程を行うと、歪変換部74に座屈に伴う歪が発生する。歪変換部74は板体であって、歪変換部74の上面17がY軸と交差し、厚み方向がX軸方向となるように固定されるので、歪変換部74の平面側であるX軸方向に歪が発生する。歪は、歪変動量(ΔX)として接触点76に伝播する。
【0047】
接触点76が受けた歪変動量(ΔX)は、検知レバー72本体を通じて増幅され作用部78へ伝播させる。これにより作用部78は、弾性部材85に変位を加える。弾性部材85に加わる変位が小さくなると、弾性部材85の圧縮量が減少し、弾性部材85への吸熱の流れが生じる。また、弾性部材85加わる変位が大きくなると、弾性部材85の圧縮量が増加し、弾性部材85から発熱の流が生じる。つまり、圧縮の変化量(ΔY)は、熱流センサ86が受ける熱流に変化を生じさせ、変位検出部84で時系列的に変化する電気信号を取り出すことが可能となる。
【0048】
図9,12に示すように、固定支持部材73の上面側に凹部87を設ける。座屈検出部100は、凹部87内にレバー72の支点79及び作用部78と、変位検出部84と、抑え部材83と、与圧部材82とを収容するので、変位検出部84が加圧機1の加工圧力を受けずに加工圧力の検出が可能となる。
【0049】
レバー72は、屈曲部77で曲げた棒体または板体である。レバー内側面81の一端がX軸方向から歪変換部74に接触可能である接触点76と、屈曲部77を挟んだ他端がワーク2に加工圧力を加えるY軸方向から固定支持部材73の前記歪変換部とは反対側の面に接触する支点79と、固定支持部材73の歪変換部74とは反対側に支点79及び変位検出部84を埋設可能な凹部87とを備えたので、加圧機1がワーク2へ加える圧力は、圧力検出装置70に備えた座屈検出部100に加わることがない。座屈検出部100は、加圧機1の加工圧力を受けることがなく、歪変換部74の座屈を検出できる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態について図11及び図12に基づいて説明する。一つの材料から同一多数のワークの加工をする場合、図11,12に示すように、一つの固定支持部材73に歪変換部74と加工ヘッド9の一式を多数隣接させて備えることが想定される。第2実施形態の圧力検出装置70に加えて、同じ構成の圧力検出装置90を備える。歪変換部94は、歪変換部74と同じものである。また、座屈検出部110は、座屈検出部100と同じ構成のものである。その他、圧力検出装置90が備える構成は、圧力検出装置70と同じである。
【0051】
座屈検出部100、座屈検出部110を固定支持部材73の上面側からそれぞれ固定するので、図10、13のように、くし形に配置された歪変換部74,94に対して、圧力検出装置70と圧力検出装置90とを固定支持部材73の上面側から固定することが可能である。
【0052】
以上、第1実施形態及び第2実施形態及び第3実施形態の座屈検出部40,60,80,100,110は、変位検出部41,45,63,84と、レバー50,61,72と、抑え部材56,62,67,83と、与圧部材37,38,39,82を備える。変位検出部41,63,84は、歪変換部33,74の歪変動量に応じて発生する変位を検出する。レバー50,61,72は、歪変換部33,74に座屈の生じるX軸方向から接触する接触点51,76及び、固定支持部材32,73にワーク2に加工圧力を加えるY軸方向から接触する支点54,79及び、前記歪変動量を変位検出部41,45,63,84の一方の面へ伝播可能な作用部53,78を有する。レバー50,61,72は、歪変換部33,74の歪変動量を増幅して作用部53,78の変位に変換するように支点54,79を中心に可動可能である。抑え部材56,62,67,83は、変位検出部41,45,63,84の他方の面に接する。与圧部材37,38,39,82は、レバー50,61,72の可動範囲において変位検出部41,63,84が少なくとも圧縮されるように、抑え部材56,62,67,83と変位検出部41,63,84とレバー50,72とを固定支持部材32,73に共締めする。これにより、加圧機1がワーク2へ加える圧力が、圧力検出装置30,70,90に備えた座屈検出部40,60,80,100,110に加わることない。また、座屈検出部40,60,80,100,110は、接触点51,76で歪変換部33,74,96の座屈を検出し、レバー50,72が作用部53,78で増幅することができる。変位検出部41,63,84、94で座屈にともなう歪を検出して加圧機1によるワーク2の加工の良否判定が容易にできる。
【0053】
また、変位検出部41,45,63,84は、作用部53,78の変位を圧縮の変化量(ΔY)として熱流に変換可能な弾性部材42,46,85、及び弾性部材42,46,85の発する熱流を電気信号に変換可能な熱流センサ43,47,86の積層体である。これにより、座屈検出部40,60,80,100,110は、歪変換部33,74,96の座屈を、弾性部材42,46,85の圧縮の変化量にして、熱流センサ43,47,86で圧縮の変化量に伴う熱流によって検出することができる。歪変換部33,74,94の座屈により、加圧機1によるワーク2の加工の良否判定が容易にできる。
【0054】
(第4実施形態)
第4実施形態について図13にもとづいて説明する。
【0055】
与圧部材38,39を備えた構成について説明する。第1実施形態の圧力検出装置30では与圧部材37として、一本のボルトを用いたが、与圧部材38、39として二本のボルトを用いてもよい。
【0056】
座屈検出部60は、レバー61を横断する位置で与圧部材38,39として二本のボルトを用いて、抑え部材62及びレバー61で変位検出部63を挟みこむことができる。変位検出部63は、歪による変位を熱流に変換可能な弾性部材65と弾性部材65の発する熱流を電気信号に変換可能な熱流センサ66との積層体である。与圧部材38,39を用いると、変位検出部63はボルトを通す穴をあける必要がなくなり、穴のない矩形形状にできる。形状及び取付けの自由度が増加する。
【0057】
(第5実施形態)
第5実施形態について図14にもとづいて説明する。
【0058】
変位検出部45を備えた構成について説明する。第1実施形態の圧力検出装置30では、変位検出部41は、図3に示すように、弾性部材42と熱流センサ43との積層体で構成した。これに対して、図14に示すように、本例の変位検出部45は、座屈検出部80において、抑え部材67から弾性部材46と熱流センサ47、熱流センサ43と弾性部材42の順に2段になるように積層した構成を有する。弾性部材46は、弾性部材42と同じものである。また、熱流センサ47は、熱流センサ43と同じものである。このようにすると変位検出部45の両面からの熱流の出入りを検出することができ、1段で積層した場合に比べて、座屈による歪の特徴をより詳細に検出できる。
【0059】
(その他の実施形態)
(a)実施形態では、接触点の稜線が歪変換部に接触し、支点の稜線が固定支持部材に接触する構成を説明したが、それぞれ稜線による接触でなく点接触とする構成にしてもよい。感度を高くする場合、点接触がよく、計測の安定を重視する場合、陵線による接触がよい。また、どちらか一方を点接触とする構成にしてもよい。
【0060】
(b)一つの固定支持部材に歪変換部と加工ヘッドとの一式を多数隣接させて備える場合、実施形態では、2セットを備えた例を説明したが、これに限定されるものではない。必要に応じて、セット数を増やすことができる。
【0061】
(c)本発明の圧力検出装置において、変位検出部は、歪による変位を熱に変換可能な弾性部材と弾性部材の発する熱量を電気信号に変換可能な熱流センサとを積層した構成を有するが、これに限定するものではない。変位検出部は、ロードセルまたはマグネスケール(登録商標)を有するものでもよい。
【0062】
(d)圧力検出装置の使用範囲は、加圧機による圧入ピンを抜き取る工程に限定されない。カーボン材を打ち抜く工程等適宜、加圧工程で使用できる。
【0063】
(e)第1実施形態では、歪変換部33を形成する板体は、超鋼材で形成される。本発明の歪変換部の材料は超鋼材に限られない。歪変換部の形状は、板体でなくともよく、棒体でもよく、形状は実施形態に限定されない。
【0064】
(f)第1実施形態における歪変換部は、厚み(W)に対して、高さ(H)と奥行き(D)の長さが10倍程度大きい板材としたが、本発明では、厚み(W)に対する高さ(H)と奥行き(D)の長さはこの倍率に限られない。
【0065】
(g)また、厚み(W)、高さ(H)、奥行き(D)の具体的な寸法を提示して説明をしたが、これらの寸法に限定されない。座屈を起こさせる点で、厚み(W)は、高さ(H)及び奥行き(D)を含む平面に変位を生じさせるように設定すればよい。
【0066】
(h)固定支持部材の取り付け面に対する加工ヘッドの取り付け面の平行度を数値で示したが加工精度が確保できればこれに限定されない。
【0067】
(i)第1実施形態では、弾性部材42は、熱弾性効果により熱を発生することができる超高分子ポリエチレン製の材料を用いたが、本発明の弾性部材は、熱弾性効果により熱を発生することができる材質であればよい。
【0068】
本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・加圧機、 2・・・ワーク、
3・・・台座、 5・・・可動プレート、
9・・・加工ヘッド、 15・・・軸心線、
30,70,90・・・圧力検出装置、
31,71・・・本体、
32,73・・・固定支持部材、 33,74,94・・・歪変換部、
40,60,80,100,110・・・座屈検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14