(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】調光制御装置、調光制御方法、調光制御プログラム、及び調光制御システム
(51)【国際特許分類】
E06B 9/24 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
E06B9/24 C
(21)【出願番号】P 2020117670
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】上村 博典
(72)【発明者】
【氏名】田中 博
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-64376(JP,A)
【文献】特開2010-117999(JP,A)
【文献】特開2017-218733(JP,A)
【文献】特開平8-177341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記建物の調光窓を透明又は不透明に切り替える調光制御部と、
を備える、調光制御装置。
【請求項2】
前記調光制御部は、前記建物に対して前記列車が接近したと判定すると、前記調光窓を不透明状態に切り替え、前記建物から前記列車が離反したと判定すると、前記調光窓を透明状態に切り替える、
請求項1に記載の調光制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記列車の発信器から送信される信号の受信状態から、前記建物に対して前記列車が接近又は離反したことを判定する、
請求項1又は2に記載の調光制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記列車の走行を管理する中央管制塔のサーバが保有する走行情報から、前記建物に対して前記列車が接近又は離反したことを判定する、
請求項1又は2に記載の調光制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、時刻表に基づき算出される時刻から、前記建物に対して前記列車が接近又は離反したことを判定する、
請求項1又は2に記載の調光制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、センサ装置から受信する画像情報から、前記建物に対して前記列車が接近又は離反したことを判定する、
請求項1又は2に記載の調光制御装置。
【請求項7】
判定部が、建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定することと、
調光制御部が、前記判定部の判定結果に基づき、前記建物の調光窓を透明又は不透明に切り替えることと、
を含む、調光制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、
建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記建物の調光窓を透明又は不透明に切り替える調光制御部と、
として機能させる、調光制御プログラム。
【請求項9】
建物の調光窓と、
前記建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記調光窓を透明又は不透明に切り替える調光制御部と、
を備える、調光制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光制御装置、調光制御方法、調光制御プログラム、及び調光制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の線路に沿って建設された住宅では、住宅内の様子が車内の乗客から見られてしまうことがある。このため、プライバシーを確保するために、住民は、列車が近づいたら、外窓のカーテンやブラインドを締め切るようにしている。しかしながら、終日、外窓のカーテンやブラインドを締め切っていると、室内に外光が取り込めず、快適な生活が維持できない。このため、鉄道沿線の線路脇にある住宅では、列車の接近や離反に応じて、カーテンやブラインドを開けたり、閉めたりする作業が強いられる。
【0003】
また、特許文献1には、電圧のオン又はオフにより、透明又は不透明を切り替えることができる調光フィルムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーテンやブラインドを手動で開閉する代わりに、モータ等を用いて、自動的に開閉できるものもある。鉄道沿線の線路脇にある住宅では、このようなカーテンやブラインドを導入すれば、スイッチ操作だけで、カーテンやブラインドを開閉できる。しかしながら、このようなカーテンやブラインドを用いたとしても、列車の接近を気にしながら、カーテンやブラインドを開閉する作業は大変である。
【0006】
本発明は、上述の課題を鑑み、鉄道沿線の線路に沿って建設された建物でのプライバシーを保護することが可能な調光制御装置、調光制御方法、調光制御プログラム、及び調光制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る調光制御装置は、建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づき、前記建物の調光窓を透明又は不透明に切り替える調光制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る調光制御方法は、判定部が、建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定することと、調光制御部が、前記判定部の判定結果に基づき、前記建物の調光窓を透明又は不透明に切り替えることと、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係る調光制御プログラムは、コンピュータを、建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づき、前記建物の調光窓を透明又は不透明に切り替える調光制御部と、として機能させる。
【0010】
本発明の一態様に係る調光制御システムは、建物の調光窓と、前記建物に対して列車が接近し又は離反したことを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づき、前記調光窓を透明又は不透明に切り替える調光制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄道沿線の線路に沿って建設された建物でのプライバシーを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムの概要の説明図である。
【
図1B】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムの概要の説明図である。
【
図1C】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムの概要の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムの各部の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムにおける調光フィルムの説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムにおける調光フィルムの説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムにおける調光フィルムの説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る調光制御システムにおける調光制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る調光制御システムの各部の説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る調光制御システムにおける調光管理サーバの処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る調光制御システムにおける調光制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る調光制御システムの各部の説明図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る調光制御システムの各部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1A、
図1B、及び
図1Cは、本発明の第1の実施形態に係る調光制御システム1の概要の説明図である。
図1Aから
図1Cにおいて、住宅10(建物の一例)は、列車50が走行する線路51に沿って建設されている。住宅10としては、戸建住宅であっても良いし、マンション等の中高層の建築物であっても良い。窓11は、調光窓である。調光窓としては、例えば、複層ガラスの中間層に調光フィルム20を位置させたものや、窓ガラスの少なくともいずれか一方の表面に調光フィルム20を貼り付けたものが想定される。本実施形態では、住宅10において線路51に近接する側の窓11に調光フィルム20が貼り付けられている。そして、列車50が住宅10に対して接近したか否かに応じて、調光フィルム20の状態が透明又は不透明の状態に切り替えられる。即ち、窓11(調光窓)の状態が透明又は不透明の状態に切り替えられる。このようにして、本実施形態ではプライバシーの保護を図るようにしている。
【0014】
すなわち、調光フィルム20は、電源のオン又はオフにより、透明又は不透明に切り替えることができる部材である。
図1Aに示すように、住宅10の近辺に列車50が来ていないときには、調光フィルム20は透明な状態となっている。調光フィルム20が透明なときには、住宅10内には、窓11を介して、外光を取り込むことができる。
図1Bに示すように、列車50が住宅10に対して接近してくると、調光フィルム20は不透明な状態に切り替わる。これにより、住宅10内の様子が窓11を介して見えなくなり、プライバシーを保護することができる。そして、
図1Cに示すように、列車50が住宅10から離反していくと、調光フィルム20は、透明な状態に戻る。
【0015】
このように、本発明の第1の実施形態に係る調光制御システム1は、列車50の接近及び離反を検知し、列車50が住宅10に対して接近したら調光フィルム20を不透明な状態に切り替え、列車50が住宅10から離反したら調光フィルム20を透明な状態に切り替えることで、住宅10内に住む住民のプライバシーを保護することができる。
【0016】
ここで、本発明の第1の実施形態は、列車50の住宅10への接近又は離反を列車50から送信される信号を受信することにより検知している。つまり、近年では、車両運行に伴う各種の情報提供サービスを実現するために、各種の情報を含むビーコンが列車50から送信されている。また、車両の保安システムのために、列車50からは各種の信号が送信されている。列車50の住宅10への接近や離反は、列車50から送信されるこれらの信号が受信できるか否かにより検知できる。なお、列車50から送信される信号は、電波を利用して情報を搬送するものに限らず、超音波ビーコンや光ビーコン等、音波や光を利用して情報を搬送するものであっても良い。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る調光制御システム1の各部の説明図である。
図2において、列車50には、発信器52が搭載されている。発信器52は、ビーコン等の各種の信号を送信する。
【0018】
住宅10の窓11には、調光フィルム20が貼り付けられる。調光フィルム20は、電圧の印加に応じて透過率の変化する部材であり、印加電圧に応じて透明から白濁色に変化する。調光フィルム20には、ノーマルタイプとリバースタイプがある。ノーマルタイプは、電圧を印加しているときには透明の状態となり、電圧を印加しないときには不透明の状態となる。リバースタイプは、電圧を印加しているときには不透明の状態となり、電圧を印加しないときには透明の状態となる。
【0019】
本実施形態で用いられる調光フィルム20としては、ノーマルタイプのものを用いても良いし、リバースタイプのものを用いても良い。なお、本実施形態の場合、通常時には窓11を透明とし、列車50が近づいたときだけ窓11を不透明とすることから、調光フィルム20として、電源オフ時に透明で、電源オン時に不透明となるようなリバースタイプのものを用いることが好ましい。
【0020】
図3、
図4、及び
図5は、本発明の第1の実施形態に係る調光制御システム1における調光フィルム20の説明図である。
図3に示すように、調光フィルム20は、切替部21とともにユニット化され、調光装置23を構成している。そして、調光フィルム20は、窓11の大きさに応じた形状にカットされ、窓11に貼り付けられる。
【0021】
図4に示すように、切替部21は、切替信号受信部25と、駆動部26と、電源27とから構成される。切替信号受信部25は、調光フィルム20を透明又は不透明に切り替える調光制御信号を受信し、この調光制御信号に応じて、駆動部26を切り替える。すなわち、
図5に示すように、切替部21は、調光制御信号として調光オン信号を受信すると、調光フィルム20が不透明になるように、駆動部26を切り替え、調光制御信号として調光オフ信号を受信すると、調光フィルム20が透明になるように、駆動部26を切り替える。
【0022】
例えば、調光フィルム20としてリバースタイプのものを用いた場合、切替信号受信部25から調光制御信号として調光オン信号を受信すると、駆動部26は導通する。これにより、電源27からの電源が調光フィルム20に印加されるようになり、
図5に示したように、調光フィルム20は、白濁した状態に切り替わる。そして、切替信号受信部25から調光制御信号として調光オフ信号を受信すると、駆動部26が非導通に切り替わる。このため、調光フィルム20に電圧が印加されなくなり、調光フィルム20は、透明な状態になる。
【0023】
図2において、調光制御部30は、図示はしないが例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリ等から構成されており、列車50の接近や離反を検知して、切替部21に調光制御信号を送信する。調光制御部30として、専用のハードウェアを用意しても良いし、PC(Personal Computer)等の汎用の機器を利用して調光制御部30を実現しても良い。さらに、調光制御部30と切替部21とを一体化して構成しても良い。また、調光制御部30と切替部21との間は、透明なフレキシブル基板等を用いて有線で接続しても良いし、無線で接続しても良い。
【0024】
調光制御部30は、受信部31と、判定部32とを含んでいる。なお、調光制御部30としてPCを用いるような場合には、受信部31は別体で用意されることになる。受信部31は、列車50の発信器52からの信号を受信する。判定部32は、受信部31の検出信号から、列車50が住宅10に対して接近又は離反しているかを判定し、これに応じて、切替部21に、調光制御信号を送信する。すなわち、調光制御部30は、受信部31で列車50の発信器52からの信号が検出できた又は列車50の発信器52からの信号の信号レベルが所定値以上になったことを検出すると、列車50が住宅10に対して接近したと判定して、切替部21に調光制御信号として調光オン信号を送信する。また、調光制御部30は、受信部31で列車50の発信器52からの信号が検出できなくなった又は列車50の発信器52からの信号の信号レベルが所定値未満になったことを検出すると、列車50が住宅10から離反したと判定して、切替部21に調光オフ信号を送信する。
なお、第1の実施形態における調光制御装置は、少なくとも調光制御部30及び判定部32を備える装置である。
【0025】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る調光制御システム1における調光制御部3での処理を示すフローチャートである。
【0026】
(ステップS101)切替部21は、初期状態では、調光フィルム20を透明状態に設定している。
【0027】
(ステップS102)調光制御部30は、列車50からの信号が受信できたか否かを判定する。列車50からの信号を受信できていないと判定した場合(ステップS102:No)、調光制御部30は、ステップS102の処理を繰り返す。列車50からの信号を受信できたと判定した場合(ステップS102:Yes)、調光制御部30は、処理をステップS103に進める。
【0028】
(ステップS103)調光制御部30は、調光制御信号として調光オン信号を切替部21に送信して、処理をステップS104に進める。
【0029】
(ステップS104)調光制御部30は、列車50からの信号の受信を継続しているか否かを判定する。列車50からの信号の受信を継続していると判定した場合(ステップS104:Yes)、調光制御部30は、ステップS104の処理を繰り返す。列車50からの信号の受信を継続していないと判定した場合(ステップS104:No)、調光制御部30は、処理をステップS105に進める。
【0030】
(ステップS105)調光制御部30は、調光制御信号として調光オフ信号を切替部21に送信して、処理をステップS101に戻す。
【0031】
ステップS101からステップS105で示すように、調光制御部30は、初期状態では、調光フィルム20を透明状態に設定している。そして、調光制御部30は、列車50からの信号を受信すると(ステップS102:Yes)、調光制御信号として調光オン信号を切替部21に送信する(ステップS103)。
図5に示したように、切替部21は、調光オン信号を受信すると、調光フィルム20を不透明状態に切り替える。これにより、列車50が近づいても、住宅10内を見られることがなくなり、住民のプライバシーを保護することができる。そして、調光制御部30は、列車50からの信号が受信できなくなると(ステップS104:No)、調光オフ信号を切替部21に送信する(ステップS105)。
図5に示したように、切替部21は、調光オフ信号を受信すると、調光フィルム20を透明状態に切り替える。これにより、列車50が離反したら、住宅10内に外光を取り込むことができる。
【0032】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る調光制御システム1は、列車50からの信号を受信することで列車50の住宅10への接近を検知している。そして、列車50からの信号の受信状態から、列車50が住宅10に対して接近したと判定したら、調光フィルム20を不透明に切り替え、列車50が住宅10から離反したと判定したら、調光フィルム20を透明に切り替えている。これにより、利用者が手動でカーテンやブラインドを開閉することなく、列車50が住宅10に対して接近すると、住宅10の窓11を不透明にして、プライバシーを保護することができる。
【0033】
なお、上述の例では、住宅10の窓11に貼り付けられる1枚の調光フィルム20のみを図示しているが、住宅10に複数の窓11がある場合には、各窓11ごとに、複数の調光フィルム20が貼り付けられる。また、この場合、調光フィルム20の制御は、設けられているフィルム単位で行われても良いし、グループ単位で行われても良い。
【0034】
例えば、一戸建て住宅の場合、住宅10に設けられている全ての調光フィルム20を一括で制御しても良いし、複数部屋あるいは一部屋単位、複数窓あるいは一窓単位、複数フィルムあるいは一フィルム単位で制御しても良い。一例として、一戸の住宅の部屋Aに2つの調光フィルム20、部屋Bに3つの調光フィルム20が設けられている場合、5つの調光フィルム20を1つの単位として一括で制御しても良いし、部屋Aの2つの調光フィルム20と部屋Bの3つの調光フィルム20をそれぞれ1つの単位として部屋ごとに制御しても良い。
【0035】
マンション等のように1つの建物に複数戸が存在する場合も、マンション全体の調光フィルム20を一括で制御しても良いし、複数戸あるいは一戸単位、複数部屋あるいは一部屋単位、複数窓あるいは一窓単位、複数フィルムあるいは一つのフィルム単位で制御しても良い。
【0036】
また、窓11に調光フィルム20を貼り付ける場合、窓11全体に調光フィルム20を貼り付けても良いし、窓11の一部に調光フィルム20を貼り付けても良い。
【0037】
また、調光フィルム20を不透明にする際に、部分的に不透明にしても良い。例えば、対象となる調光フィルム20が貼られた窓11が列車50よりも高い位置にある場合、列車50内の乗客は当該窓11を見上げることになる。この場合、例えば窓11の下半分だけを不透明にすることで、住宅10内の部屋の中を見えなくすることも可能である。逆に、窓11の位置が列車50よりも低い位置にある場合には、窓11の上半分だけを不透明にすれば良い。
【0038】
また、調光フィルム20を透明又は不透明に切り替える際に、透明度を徐々に変化させても良い。例えば、列車50が近づくにつれて徐々に不透明に近づけていき、列車50が離れていくにつれて徐々に透明に近づけていくようにしても良い。
【0039】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る調光制御システム101の各部の説明図である。
図7において、住宅110、窓111、調光フィルム120、調光装置123、切替部121、調光制御部130、列車150、線路151は、第1の実施形態における、住宅10、窓11、調光フィルム20、切替部21、調光装置23、調光制御部30、列車50、線路51に対応している。
【0040】
図7において、中央管制塔サーバ160は、中央管制室からの情報に基づいて、運行される列車150に関する情報を記憶している。列車150に関する情報は、例えば、中央管制塔サーバ160が保有する列車150の走行情報である。具体的に、走行情報は、列車150の位置情報、列車150の速度情報等である。
【0041】
調光管理サーバ170は、線路151に隣接する住宅110の位置情報を記憶する住宅位置記憶部171と、列車150の住宅110への接近又は離反を検知する判定部172とを有している。調光管理サーバ170の判定部172は、中央管制塔サーバ160からの列車150の走行情報と、住宅位置記憶部171に記憶されている住宅110の位置情報とから、列車150の住宅110への接近や離反を演算する。
【0042】
演算処理の方法としては、以下のようなものが考えられる。すなわち、判定部172は、例えば、中央管制塔サーバ160から取得される列車150の位置情報と、住宅位置記憶部171に記憶されている住宅110の位置情報とに基づき、住宅110の位置から所定の範囲内に、列車150が位置するか否かを演算する。判定部172は、演算結果に基づき、列車150が住宅110に接近しているか否かを演算する。そして、調光管理サーバ170は、列車50が住宅110に対して接近していることを示す演算結果が得られたら、ネットワーク180を介して、列車接近信号を調光制御部130へ送信する。一方、調光管理サーバ170は、列車150が住宅110から離反していることを示す演算結果が得られたら、ネットワーク180を介して、列車離反信号を調光制御部30へ送信する。
【0043】
ネットワーク180としては、有線ネットワークでも良いし、無線ネットワークでも良い。例えば、5G(第5世代移動通信)のモバイルネットワークを用いれば、列車接近信号又は列車離反信号を調光管理サーバ170から調光制御部130へ遅延なく送信することができる。
【0044】
また、判定部172は、列車150の位置情報、速度情報、住宅110の位置情報から、列車150が住宅に対して接近する時刻(列車150が住宅110から所定の距離に到達する時刻)と、列車150が住宅110から離反する時刻(列車150が住宅110から所定の距離以上離れる時刻)を演算して求めるようにしても良い。
【0045】
なお、中央管制塔サーバ160に列車150の位置情報の履歴が時系列で記憶されている場合、この履歴より、ある位置からある位置までの移動時間と移動距離が分かり、速度が算出できる。そのため、中央管制塔サーバ160には、必ずしも列車150の速度が記憶されている必要はない。
【0046】
調光制御部130は、判定部132を含んでいる。調光制御部130は、調光管理サーバ170からの列車接近信号又は列車離反信号を受信する。判定部132は、調光制御部130が受信した信号から、列車150が住宅110に対して接近又は離反しているかを判定し、これに応じて、切替部121に、調光制御信号を送信する。すなわち、調光制御部130は、調光管理サーバ170から列車接近信号を受信すると、列車150が住宅110に接近していると判定し、調光制御信号として調光オン信号を切替部121に送信して、調光フィルム120を不透明状態に切り替える。また、調光制御部130は、調光管理サーバ170から列車離反信号を受信すると、列車150が住宅110から離反していると判定し、調光オフ信号を切替部121に送信して、調光フィルム120を透明状態に切り替える。
なお、第2の実施形態における調光制御装置は、少なくとも調光制御部130及び判定部132を備える装置である。
【0047】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る調光制御システム101における調光管理サーバ170の処理を示すフローチャートである。
【0048】
(ステップS201)利用者は、調光管理サーバ170に、住宅110の位置情報を入力して登録する。なお、利用者の登録は、サービスの提供を受けるときに、一度、行えば良い。
【0049】
(ステップS202)調光管理サーバ170は、中央管制塔サーバ160から列車150の位置情報を取得して、処理をステップS203に進める。
【0050】
(ステップS203)調光管理サーバ170は、中央管制塔サーバ160からの列車150の位置情報と、住宅位置記憶部171に記憶されている住宅110の位置情報から、列車150が住宅110に対して接近しているか否かを判定する。列車150が住宅110に対して接近していないと判定した場合(ステップS203:No)、調光管理サーバ170は、処理をステップS202に戻す。列車150が住宅110に対して接近していると判定した場合(ステップS203:Yes)、調光管理サーバ170は、処理をステップS204に進める。
【0051】
(ステップS204)調光管理サーバ170は、住宅110の調光制御部130に、列車接近信号を送信して、処理をステップS205に進める。
【0052】
(ステップS205)調光管理サーバ170は、中央管制塔サーバ160から列車150の位置情報と、住宅位置記憶部171に記憶されている住宅110の位置情報から、列車150が離反しているか否かを判定する。列車150が離反していないと判定した場合(ステップS205:No)、調光管理サーバ170は、ステップS205の処理を繰り返す。列車150が離反していると判定した場合(ステップS205:Yes)、調光管理サーバ170は、処理をステップS206に進める。
【0053】
(ステップS206)調光管理サーバ170は、住宅110の調光制御部130に、列車離反信号を送信して、処理をステップS202に戻す。
【0054】
ステップS201からステップS206で示すように、調光管理サーバ170は、中央管制塔サーバ160からの列車150の位置情報と、住宅位置記憶部171に記憶されている住宅110の位置情報から、列車150が住宅110に対して接近しているか否かを判定し(ステップS203)、列車150が住宅110に対して接近していると判定したら(ステップS203:Yes)、調光制御部130に列車接近信号を送信している。また、調光管理サーバ170は、中央管制塔サーバ160から列車150の位置情報と、住宅位置記憶部171に記憶されている住宅110の位置情報から、列車150が住宅110から離反しているか否かを判定し(ステップS205)、列車150が住宅110から離反していると判定したら(ステップS205:Yes)、調光制御部130に列車離反信号を送信している。
【0055】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る調光制御システム101における調光制御部30の処理を示すフローチャートである。
【0056】
(ステップS301)切替部121は、初期状態では、調光フィルム120を透明状態に設定している。
【0057】
(ステップS302)調光制御部130は、調光管理サーバ170から、列車接近信号を受信したか否かを判定する。調光管理サーバ170から列車接近信号を受信していないと判定した場合(ステップS302:No)、調光制御部130は、ステップS302の処理を繰り返す。調光管理サーバ170から列車接近信号を受信したと判定した場合(ステップS302:Yes)、調光制御部130は、処理をステップS303に進める。
【0058】
(ステップS303)調光制御部130は、調光制御信号として調光オン信号を切替部121に送信して、処理をステップS304に進める。
【0059】
(ステップS304)調光制御部130は、調光管理サーバ170から、列車離反信号を受信したか否かを判定する。調光管理サーバ170から列車離反信号を受信していないと判定した場合(ステップS304:No)、調光制御部130は、ステップS304の処理を繰り返す。調光管理サーバ170から列車離反信号を受信したと判定した場合(ステップS304:Yes)、調光制御部130は、処理をステップS305に進める。
【0060】
(ステップS305)調光制御部130は、調光オフ信号を切替部121に送信して、処理をステップS301に戻す。
【0061】
前述したように、調光管理サーバ170は、列車150が住宅110に対して接近していると判定したら(ステップS203:Yes)、調光制御部130に列車接近信号を送信している。また、調光管理サーバ170は、列車150が住宅110から離反していると判定したら(ステップS205:Yes)、調光制御部130に列車離反信号を送信している。
【0062】
ステップS301からステップS306で示すように、調光制御部130は、列車接近信号を受信すると(ステップS302:Yes)、調光制御信号として調光オン信号を切替部121に送信する(ステップS303)。切替部121は、調光オン信号を受信すると、調光フィルム120を不透明状態に切り替える。
【0063】
また、調光制御部130は、列車離反信号を受信すると(ステップS304:Yes)、調光オフ信号を切替部121に送信する(ステップS305)。切替部121は、調光オン信号を受信すると、調光フィルム120を不透明状態に切り替える。
【0064】
なお、調光管理サーバ170と調光制御部130間において、列車150の接近を示す信号(列車接近信号)の送受信は必須であるが、列車150の離反を示す信号(列車離反信号)の送受信は必須ではない。例えば、調光制御部130側で、調光管理サーバ170から接近を示す信号を受信してから所定の時間経過後に、切替部121へ調光フィルム120を透明にするよう指示する信号を送信するように設定しておけば、離反を示す信号を送信しないことも可能である。ただし、プライバシー確保の観点から精度が低下する可能性がある。例えば、列車150の走行に遅延、徐行、事故等が生じた場合、所定の時間内に列車150が住宅110から十分に離れていないことが考えられる。そのため、制御の精度をより高めるためには、離反の送受信も行う方が良い。
【0065】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態に係る調光制御システム101は、中央管制室からの情報に基づいて、列車150の接近を検知し、列車が接近したら調光フィルム120を不透明に切り替えることで、プライバシーを保護することができる。
【0066】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る調光制御システム201の各部の説明図である。
図10において、住宅210、窓211、調光フィルム220、切替部221、調光装置223、調光制御部230、列車250、線路251は、第1の実施形態における、住宅10、窓11、調光フィルム20、切替部21、調光装置23、調光制御部30、列車50、線路51に対応している。
【0067】
調光制御部230は、時刻表記憶部231と、判定部232とを含んでいる。時刻表記憶部231には、列車250の時刻表が記憶されている。判定部232は、時刻表記憶部231に記憶されている時刻表に基づき、列車250が住宅に対して接近する時刻(列車250が住宅210から所定の距離に到達する時刻)と、列車250が住宅210から離反する時刻(列車250が住宅210から所定の距離以上離れる時刻)を演算する。判定部232は、演算結果に基づき、列車250が住宅210に対して接近又は離反しているかを判定し、これに応じて、切替部221に、調光制御信号を送信する。
【0068】
調光制御部230は、列車250が住宅210に接近する時刻になったら、列車250が住宅210に対して接近していると判定して、調光制御信号として調光オン信号を切替部221に送信する。切替部221は、調光オン信号を受信すると、調光フィルム220を透明状態に切り替える。
【0069】
また、調光制御部230は、列車250が住宅210から離反する時刻になったら、列車250が住宅210から離反していると判定して、調光制御信号として調光オフ信号を切替部221に送信する。切替部221は、調光オフ信号を受信すると、調光フィルム220を不透明状態に切り替える。
【0070】
なお、調光制御部230は、時刻表の改正に対応できるように、例えばインターネット経由で最新の時刻表を取得可能な構成を有しても良い。
【0071】
なお、第3の実施形態における調光制御装置は、少なくとも調光制御部230及び判定部232を備える装置である。
【0072】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態に係る調光制御システム201は、時刻表記憶部231に記憶されている時刻表の情報に基づいて、列車250の住宅210への接近を検知し、列車250が住宅210に対して接近したと判定したら、調光フィルム220を不透明に切り替え、列車250が住宅210から離反したと判定したら、調光フィルム220を透明に切り替える。これにより、利用者が手動でカーテンやブラインドを開閉することなく、プライバシーを保護することができる。
【0073】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第4の実施形態に係る調光制御システム301の各部の説明図である。
図11において、住宅310、窓311、調光フィルム320、切替部321、調光装置323、調光制御部330、列車350、線路351は、第1の実施形態における、住宅10、窓11、調光フィルム20、切替部21、調光装置23、調光制御部30、列車50、線路51に対応している。
【0074】
図11において、センサ装置370は、列車350の接近又は離反を検出可能な情報を取得するセンサである。センサ装置370としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等の撮像装置であり、線路方向の画像を撮像して、その画像を調光制御部330へ送信する。
【0075】
なお、センサ装置370は、調光フィルム320が貼り付けられている窓の外側に設けられ、例えば、列車350が接近して来る方向と列車350が離反してくる方向を撮像可能である。なお、センサ装置370の数は限定されない。
【0076】
調光制御部330は、判定部332を含んでいる。判定部332は、センサ装置370が取得した画像情報を受信し、当該画像情報の画像解析を行い、列車350が住宅310に対して接近又は離反しているか否かを判定する。そして、調光制御部330は、列車350が住宅310に対して接近又は離反しているかの判定結果に応じて、切替部321に、調光制御信号を送信する。
【0077】
すなわち、調光制御部330は、センサ装置370の画像情報の画像解析を行って、列車350が住宅310に対して接近していると判定されたら、調光制御信号として調光オン信号を切替部321に送信する。切替部321は、調光オン信号を受信すると、調光フィルム320を不透明状態に切り替える。
【0078】
また、調光制御部330は、センサ装置370の画像解析を行って、列車350が住宅310から離反していると判定されたら、調光制御信号として調光オフ信号を切替部321に送信する。切替部321は、調光オフ信号を受信すると、調光フィルム320を透明状態に切り替える。
【0079】
なお、第4の実施形態における調光制御装置は、少なくとも調光制御部330及び判定部332を備える装置である。
【0080】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態に係る調光制御システム301は、センサ装置370により撮像された画像情報に基づいて、列車350の接近を検知し、列車350が住宅310に対して接近したら調光フィルム320を不透明に切り替え、列車350が住宅310から離反したら、調光フィルム320を透明に切り替えている。これにより、利用者が手動でカーテンやブラインドを開閉することなく、プライバシーを保護することができる。
【0081】
なお、上述した各実施形態のいずれにおいても、調光フィルム20の状態は、ユーザの手動操作によって透明又は不透明のいずれかの状態に強制的に切り替えられてもよい。例えば、住宅に対して列車が接近していると判定されて調光フィルムが透明から不透明に切り替えられた場合、ユーザは、手動操作によって調光フィルムを不透明から透明に切り替えてもよい。これにより、ユーザは、住宅に対して列車が接近している場合であっても、住宅の外の様子や通過する列車の様子を確認したり、室内に自然光を取り入れたりすることができる。一方、住宅から列車が離反していると判定されて調光フィルムが不透明から透明に切り替えられた場合、ユーザは、手動操作によって調光フィルムを透明から不透明に切り替えてもよい。これにより、ユーザは、住宅に対して列車が接近していない場合であってもプライバシーを保護することができる。
【0082】
また、上述した各実施形態のいずれにおいても、住宅に対して特定の列車(例えばドクターイエロー)が接近していると判定された場合、調光制御装置は、調光フィルム20の状態を透明から不透明に切り替えなくてもよい。これは、ドクターイエロー等の珍しい車両が通過する様子を確認したい人が存在し得るためである。例えば、第2の実施形態と第3の実施形態においては、PC等を用いて予め設定することにより、調光制御装置は、特定の列車が通過する際に調光フィルムを不透明にしないイレギュラー処理が可能となる。
【0083】
上述した実施形態における調光制御システム1、101、201、301の全部又は一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0084】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10,110,210,310…住宅、11、111,211,311…窓、20,120,220,320…調光フィルム、21,121,221,321…切替部、23,123,223,323…調光装置、25…切替信号受信部、30,130,230,330…調光制御部、32,132,232,332…判定部