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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】推力発生装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20240312BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20240312BHJP
   F16H 57/031 20120101ALI20240312BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20240312BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20240312BHJP
   B64C 11/34 20060101ALI20240312BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240312BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20240312BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16H19/04 N
F16H19/04 E
F16H19/04 J
F16H19/04 G
F16H57/021
F16H57/031
F16H25/20 F
F16H25/20 E
F16H25/22 Z
B64C11/34
B64D27/24
H02K7/06 A
H02K7/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020137314
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2022033431
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩保
(72)【発明者】
【氏名】郡司 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴広
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実公昭38-013048(JP,Y1)
【文献】特開2020-078975(JP,A)
【文献】実開昭51-009431(JP,U)
【文献】特開平07-071567(JP,A)
【文献】特許第099271(JP,C1)
【文献】特開昭63-170588(JP,A)
【文献】特開平07-293670(JP,A)
【文献】特開2000-346182(JP,A)
【文献】実公昭17-014532(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
F16H 57/021
F16H 57/031
F16H 25/20
F16H 25/22
B64C 11/34
B64D 27/24
H02K 7/06
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼の推力を発生させる第1モータと、
前記回転翼のピッチ角を変化させる回転運動を発生させる第2モータと、
前記第2モータの回転運動を直線運動に変換する第1変換部と、
前記第1変換部で変換された直線運動を回転運動に変換する第2変換部とを備え、
前記第2変換部は、
前記第1変換部で変換された直線運動に従って直線運動可能な直動体と、
前記第1変換部で変換された直線運動を回転運動に変換するラックアンドピニオンと、
前記直動体および前記ラックアンドピニオンを収容するケースと、
前記ラックアンドピニオンのラックをピニオンに押し付ける方向に押付力を発生する付勢部材とを備え、
前記ラックは、前記直動体で支持され、前記ピニオンは、前記回転翼の支持軸側で支持され
前記付勢部材は、前記ケースと前記直動体との間の隙間に設けられ、前記ケース内に収容された状態で前記直動体と接触可能なスペーサであり、
前記スペーサは、
前記直動体に接触する第1接触面と、
前記ラックに接触する第2接触面と、
前記ケースの内面に接触する第3接触面を備えることを特徴とする推力発生装置。
【請求項2】
前記スペーサは、前記第2接触面と平行になるように前記第3接触面に設けられた切り欠きを備えることを特徴とする請求項1に記載の推力発生装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記ケース内に挿入されたボルトにて前記第1モータのロータ側に取り付けられ、
前記スペーサは、前記スペーサの底面側で前記ボルトを受け止める逃げ穴を備えることを特徴とする請求項2に記載の推力発生装置。
【請求項4】
前記ケースは、前記直動体および前記ラックアンドピニオンを前記ケース内に挿入可能な開口部を備え、
前記開口部を塞ぐ内蓋が前記ケースに固定された場合、前記逃げ穴の位置で前記ボルトが前記スペーサで押さえ付けられることを特徴とする請求項3に記載の推力発生装置。
【請求項5】
前記内蓋を前記ケースに固定するネジと、
前記ネジを前記内蓋に押さえ付ける外蓋とを備え、
前記内蓋と前記外蓋は互いに嵌め合い可能であることを特徴とする請求項4に記載の推力発生装置。
【請求項6】
前記直動体は、N(Nは2以上の整数)枚の回転翼のそれぞれに対応したN個の面を有し、
前記ラックアンドピニオンは、前記N枚の回転翼のそれぞれに対応したN個のラックとN個のピニオンを備え、
前記スペーサは、前記N個の面にそれぞれ接触可能なN個のスペーサを備え、
前記N個のラックは、前記N個の面でそれぞれ支持され、
前記N個のピニオンは、前記N枚の回転翼の支持軸側でそれぞれ支持されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の推力発生装置。
【請求項7】
前記N個の面は、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられ、
前記N個のラックは、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられ、
前記N個のピニオンは、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられ、
前記N個のスペーサは、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられることを特徴とする請求項6に記載の推力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧を用いることなく、電動でプロペラ(回転翼)の回転軸に対する取付角度であるピッチを可変にする技術として、例えば、特許文献1に開示がある。この技術では、回転主軸が中空状に形成され、この回転主軸内に操作ロッドが軸線方向にのみ移動可能に同心状に配設され、その操作ロッドの下端に固着されたアームが、リンクおよびレバー機構を介して羽根の各支持軸に連結されている。そして、操作ロッドを軸線方向に往復移動させることによって、リンクおよびレバー機構を介して各羽根の取付角度が変化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-87037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、各羽根の取り付け角度を変化させるために、操作ロッドの下端に固着されたアームが、リンクおよびレバー機構を介して羽根の各支持軸に連結される。このとき、リンクおよびレバー機構にガタがあると、ピッチ角の可変精度が低下するおそれがあった。
そこで、本発明は、直線運動から変換された回転運動に基づくピッチ角の可変精度の低下を抑制することが可能な推力発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、回転翼の推力を発生させる第1モータと、前記回転翼のピッチ角を変化させる回転運動を発生させる第2モータと、前記第2モータの回転運動を直線運動に変換する第1変換部と、前記第1変換部で変換された直線運動を回転運動に変換する第2変換部とを備え、前記第2変換部は、前記第1変換部で変換された直線運動に従って直線運動可能な直動体と、前記第1変換部で変換された直線運動を回転運動に変換するラックアンドピニオンと、前記直動体および前記ラックアンドピニオンを収容するケースと、前記ラックアンドピニオンのラックをピニオンに押し付ける方向に押付力を発生する付勢部材とを備え、前記ラックは、前記直動体で支持され、前記ピニオンは、前記回転翼の支持軸側で支持される。
【0006】
これにより、付勢部材にてラックをピニオンに押し付けることができ、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因して直動体が回転する場合においても、直動体の直線運動から変換された回転運動に基づくピッチ角の可変精度の低下を抑制することができる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記付勢部材は、前記ケースと前記直動体との間の隙間に設けられ、前記ケース内に収容された状態で前記直動体と接触可能なスペーサである。
【0008】
これにより、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因して直動体が回転する場合においても、その回転をスペーサで受け止めることができ、直動体の直線運動から変換された回転運動に基づくピッチ角の可変精度の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記スペーサは、前記直動体に接触する第1接触面と、前記ラックに接触する第2接触面と、前記ケースの内面に接触する第3接触面を備える。
【0010】
これにより、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因して直動体が回転する場合においても、直動体の回転を第1接触面で受け止め、ラックの回転を第2接触面で受け止め、スペーサの回転をケースの内面で受け止めることができる。このため、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時にバックラッシュが発生する場合においても、直動体の直線運動から変換された回転運動に基づくピッチ角の可変精度の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記スペーサは、前記第2接触面と平行になるように前記第3接触面に設けられた切り欠きを備える。
【0012】
これにより、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時に発生する分離力を利用してラックに予圧をかけることができ、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュを低減することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記ケースは、前記ケース内に挿入されたボルトにて前記第1モータのロータ側に取り付けられ、前記スペーサは、前記スペーサの底面側で前記ボルトを受け止める逃げ穴を備える。
【0014】
これにより、ボルトがケース外に露出するのを防止しつつ、第1モータのロータ側にケースを取り付けることが可能となるとともに、スペーサにてボルトの位置を固定することができ、ボルトの抜けを防止することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記ケースは、前記直動体および前記ラックアンドピニオンを前記ケース内に挿入可能な開口部を備え、前記開口部を塞ぐ内蓋が前記ケースに固定された場合、前記逃げ穴の位置で前記ボルトが前記スペーサで押さえ付けられる。
【0016】
これにより、スペーサにてボルトをケース内の底面に押さえ付けることができ、ボルトの抜けを防止することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記内蓋を前記ケースに固定するネジと、前記ネジを前記内蓋に押さえ付ける外蓋とを備え、前記内蓋と前記外蓋は互いに嵌め合い可能である。
【0018】
これにより、摩擦による締結方法を用いることなく、内蓋をケースに固定するネジの抜けを防止することができる。このため、航空法に依拠しつつ、回転翼を支持するハブを装着することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記直動体は、N(Nは2以上の整数)枚の回転翼のそれぞれに対応したN個の面を有し、前記ラックアンドピニオンは、前記N枚の回転翼のそれぞれに対応したN個のラックとN個のピニオンを備え、前記スペーサは、前記N個の面にそれぞれ接触可能なN個のスペーサを備え、前記N個のラックは、前記N個の面でそれぞれ支持され、前記N個のピニオンは、前記N枚の回転翼の支持軸側でそれぞれ支持される。
【0020】
これにより、1個の直動体を直線運動させることで、N枚の回転翼のそれぞれの支持軸を回転軸としたN個の回転運動を発生させることが可能となるとともに、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因して直動体が回転する場合においても、その回転を防止することができる。このため、N枚の回転翼のピッチ角の可変精度を向上させつつ、N枚の回転翼のピッチ角を可変とすることが可能となるとともに、第2変換部のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る推力発生装置によれば、前記N個の面は、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられ、前記N個のラックは、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられ、前記N個のピニオンは、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられ、前記N個のスペーサは、前記第1モータの回転軸の軸回りにN回の回転対称となる位置に設けられる。
【0022】
これにより、1個の直動体を直線運動させることで、N枚の回転翼のそれぞれの支持軸を回転軸としたN個の回転運動を均一に発生させることが可能となるとともに、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因して直動体が回転する場合においても、その回転を防止することができる。このため、N枚の回転翼のピッチ角の可変精度を均等に向上させつつ、N枚の回転翼のピッチ角を可変とすることが可能となるとともに、第2変換部のコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一つの態様によれば、直線運動から変換された回転運動に基づくピッチ角の可変精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1(a)は、実施形態に係る推力発生装置に回転翼を取り付けた状態を示す斜視図、図1(b)および図1(c)は、実施形態に係る推力発生装置に取り付けられた回転翼のピッチ角を変化させた状態を示す側面図である。
図2図2は、図1(a)の推力発生装置を回転軸の一端側から見たときの構成を分解して示す斜視図である。
図3図3は、図1(a)に示す推力発生装置を回転軸の他端側から見たときの構成を分解して示す斜視図である。
図4図4(a)は、図2に示す推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図、図4(b)は、図3に示す推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図である。
図5図5(a)は、実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、図5(b)は、図5(a)のA-A線に沿って切断した断面図である。
図6図6(a)は、実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、図6(b)は、図6(a)のB-B線に沿って切断した断面図である。
図7図7(a)は、実施形態に係る推力発生装置の推力発生用モータの構成を示す平面図、図7(b)は、図7(a)のC-C線に沿って切断した断面図である。
図8図8は、図1(b)のハブの構成を分解して示す斜視図である。
図9図9(a)は、図6のピッチ可変用モータ、垂直伝達部および回転直動変換部の構成を示す斜視図、図9(b)は、図9(a)のピッチ可変用モータ、垂直伝達部および直動案内部を除去した構成を示す斜視図である。
図10図10(a)は、実施形態に係るラックが取り付けられた直動体の構成を示す下面図、図10(b)は、図10(a)のD-D線に沿って切断した断面図、図10(c)は、図10(a)のE-E線に沿って切断した断面図、図10(d)は、実施形態に係るラックが取り付けられた直動体の構成を示す上面図である。
図11図11は、図10(a)のラックが取り付けられた直動体の構成を分解して示す斜視図である。
図12図12は、図8のケース内へのリフトスペーサの配置例を示す斜視図である。
図13図13は、図12のケース内への直動体、ラックアンドピニオンおよびリフトスペーサの配置例を示す斜視図である。
図14図14(a)は、図12のリフトスペーサの構成を示す斜視図、図14(b)は、図14(a)のリフトスペーサの構成を示す正面図、図14(c)は、図14(a)のリフトスペーサの構成を示す平面図、図14(d)は、図14(a)のリフトスペーサの構成を示す下面図である。
図15図15は、図8の内蓋と外蓋との嵌め合わせ方法を分解して示す斜視図である。
図16図16は、図10(d)のラックが取り付けられた直動体とピニオンとの位置関係を示す上面図である。
図17図17(a)は、図1(b)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図、図17(b)は、図1(c)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0026】
以下の説明では、推力発生装置で駆動される回転翼が3枚の場合を例にとるが、推力発生装置で駆動される回転翼は、必ずしも3枚に限定されることなく、N(Nは2以上の整数)枚であればよい。
図1(a)は、実施形態に係る推力発生装置に回転翼を取り付けた状態を示す斜視図、図1(b)および図1(c)は、実施形態に係る推力発生装置に取り付けられた回転翼のピッチ角を変化させた状態を示す側面図、図2および図3は、図1(a)の推力発生装置の構成を分解して示す斜視図、図4(a)および図4(b)は、図2および図3の推力発生装置の組み立て後の構成を示す斜視図である。
【0027】
図1(a)、図1(b)および図1(c)において、推力発生装置1は、回転翼H1~H3を電動で駆動する。回転翼H1~H3は、グリップP1~P3をそれぞれ介して推力発生装置1に装着される。グリップP1~P3は、推力発生装置1から水平方向に放射状に延びるように回転翼H1~H3を支持する。推力発生装置1は、装着面1Aを介して飛翔体に装着される。推力発生装置1が装着された飛翔体は、例えば、モータで飛行するマルチコプター、飛行機、回転翼機および飛行機能を備える自動車などの飛行可能な機体または車体である。
【0028】
図1(a)、図1(b)、図1(c)、図2図3図4(a)および図4(b)に示すように、推力発生装置1は、推力発生用モータ(第1モータ)2、ピッチ可変用モータ(第2モータ)5、回転伝達部6、回転直動変換部(第1変換部)7、直動回転変換部(第2変換部)8、エクステンション9およびハブ10を備える。推力発生用モータ2は、ステータ2A、ロータ2B、外側フレーム2C、内径部2Dおよび内側フレーム2Eを備える。また、ロータ2Bは、内径側にロータ軸4および中空部3A、3Bを備える。ロータ軸4の軸方向端部には、エクステンション9を介してハブ10を装着する装着部4Aが設けられる。
【0029】
内径部2Dの径方向外側には、内側フレーム2Eが位置し、内側フレーム2Eの径方向外側には、外側フレーム2Cが位置する。内径部2Dは、外側フレーム2C側に固定される。内側フレーム2Eは、ロータ軸4側に固定され、ロータ軸4とともに回転する。ロータ軸4は、内径部2D内に収容される。このとき、装着部4Aは、内径部2Dの軸方向外側に位置する。内側フレーム2Eの外周面に沿ってロータ2Bが位置する。外側フレーム2Cの内周面に沿ってステータ2Aが位置する。このとき、ロータ軸4、内径部2D、内側フレーム2E、ロータ2B、ステータ2Aおよび外側フレーム2Cは、回転軸S0から径方向外側に向かって同心円状に配置される。
【0030】
推力発生用モータ2は、図1(b)の回転軸S0の軸回りに回転翼H1~H3を回転させ、回転翼H1~H3の推力Fを発生させる。ステータ2Aは、電磁鋼鈑と巻線を備え、ロータ2Bの外側に位置する。ステータ2A、内径部2Dおよび装着面1Aは、外側フレーム2Cに固定される。このとき、装着面1Aは、支持部1Cを介して外側フレーム2Cに固定することができる。内径部2Dは、スペーサ2Fを介して装着面1Aの裏側に固定することができる。スペーサ2Fは、推力発生用モータ2内に回転伝達部6を収容するための空間を確保することができる。
【0031】
装着面1Aは、回転伝達部6を外側フレーム2C内に挿入可能な開口1Bを備える。支持部1Cは、外側フレーム2Cの外枠から内側に向かって放射状に延びる。内径部2Dは、円筒形状であり、軸受U1を介してロータ軸4を回転自在に支持する。内側フレーム2Eは、円環状であり、ロータ2Bを支持する。外側フレーム2Cは、円環状であり、ステータ2Aを支持する。
【0032】
装着面1A、外側フレーム2C、内径部2D、内側フレーム2Eおよびスペーサ2Fは、例えば、ジュラルミンなどの合金で形成することができる。装着面1A、外側フレーム2C、内径部2D、内側フレーム2Eおよびスペーサ2Fは、例えば、鋳造、鍛造または切削加工などの方法で一体的に形成することができる。
【0033】
ロータ2Bは、磁石などにより構成され、ロータ軸4の外側に位置する。ロータ2Bおよびロータ軸4は、内側フレーム2Eに固定される。ロータ軸4は、軸受U1を介して、回転軸S0の軸回りに回転する。ロータ軸4の回転に伴ってロータ2Bおよび内側フレーム2Eも回転軸S0の軸回りに回転する。ロータ軸4、装着部4Aおよび内側フレーム2Eは、例えば、ジュラルミンなどの合金で形成することができる。ロータ軸4、装着部4Aおよび内側フレーム2Eは、例えば、鋳造、鍛造または切削加工などの方法で一体的に形成することができる。
【0034】
中空部3A、3Bは、推力発生用モータ2内に位置する。また、中空部3Aは、ロータ2Bの円周方向に沿ってロータ2Bとロータ軸4の間に位置する。中空部3Bは、ロータ軸4の軸方向に沿ってロータ軸4内径側に位置する。
【0035】
ピッチ可変用モータ5は、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を変化させる回転運動を発生させる。ピッチ可変用モータ5は、内径部2Dに固定される。ピッチ可変用モータ5の少なくとも一部は、推力発生用モータ2内に収容される。このとき、ピッチ可変用モータ5は、中空部3Aに位置することができる。ピッチ可変用モータ5の回転軸は、推力発生用モータ2の回転軸S0と並列に位置することができる。
【0036】
回転伝達部6は、ピッチ可変用モータ5で発生された回転運動を推力発生用モータ2の回転軸S0に対して垂直方向に伝える。すなわち、ピッチ可変用モータ5の回転軸と、推力発生用モータ2の回転軸S0は平行な異なる軸であり、回転伝達部6によりピッチ可変用モータ5で発生された回転運動を、推力発生用モータ2の回転軸S0の軸上に伝達する。回転伝達部6は、内径部2Dに固定される。回転伝達部6の少なくとも一部は、推力発生用モータ2内に収容される。
【0037】
回転直動変換部7は、ピッチ可変用モータ5で発生され、回転伝達部6を介して伝えられた回転運動を、回転軸S0の軸方向の直線運動LMに変換する。回転直動変換部7の少なくとも一部は、推力発生用モータ2内に収容される。このとき、回転直動変換部7の少なくとも一部は、中空部3B内に位置することができる。この場合、回転直動変換部7の少なくとも一部は、回転軸S0の軸方向に沿って中空部3Bから回転翼H1~H3側に突出させることができる。回転直動変換部7は、内径部2Dに固定される。
【0038】
直動回転変換部8は、回転直動変換部7で変換された直線運動LMを、各支持軸M1~M3の軸回りの回転運動に変換する。直動回転変換部8は、推力発生用モータ2の外部に位置する。
【0039】
エクステンション9は、回転軸S0の軸方向において、推力発生用モータ2と回転翼H1~H3との間の間隔を保つためのスペーサである。エクステンション9は、回転翼H1~H3が推力発生用モータ2に衝突するのを防止する。エクステンション9は、装着部4Aを介してロータ軸4に固定され、ロータ軸4とともに回転する。
【0040】
ハブ10は、直動回転変換部8を収容するとともに、グリップP1~P3がハブ10から突出した状態でグリップP1~P3を支持する。ハブ10は、エクステンション9を介して、ロータ軸4に固定される。すなわち、ハブ10は、ロータ軸4を介して回転軸S0の軸回りに回転可能な状態で外側フレーム2Cに支持される。ハブ10は、グリップP1~P3を介し、回転軸S0の軸方向に対して垂直方向に回転翼H1~H3を支持する。
【0041】
推力発生用モータ2が動作すると、ロータ2Bが回転軸S0を中心に回転することで、回転翼H1~H3が回転する。そして、各回転翼H1~H3の回転R1~R3に伴って回転翼H1~H3の推力Fが発生する。
【0042】
ここで、ピッチ可変用モータ5、回転伝達部6および回転直動変換部7は、外側フレーム2C側に固定される。このため、ロータ2Bが回転しても、ピッチ可変用モータ5、回転伝達部6および回転直動変換部7は、回転軸S0の軸回りに回転しない。
【0043】
また、ピッチ可変用モータ5が動作すると、各回転翼H1~H3は、各支持軸M1~M3の軸回りに回転し、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化する。このとき、ピッチ可変用モータ5の回転運動は、回転伝達部6を介して回転直動変換部7に伝えられる。そして、ピッチ可変用モータ5の回転運動は、回転直動変換部7によって、回転軸S0の軸方向の直線運動LMに変換される。そして、回転直動変換部7で変換された1つの直線運動LMは、直動回転変換部8によって、各支持軸M1~M3の軸回りの3つの回転運動に変換される。そして、各支持軸M1~M3の回転運動は、グリップP1~P3をそれぞれ介し、各回転翼H1~H3に伝えられ、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化される。
【0044】
ここで、推力発生装置1は、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を可変とすることにより、推力を変化させることができる。また、推力発生装置1は、ピッチ角θ1~θ3を可変とすることにより推力変化の応答速度を速め、飛翔体の安定性を向上させることが可能となるとともに、ブレード長を長くすることなく、飛翔体に必要な推力を確保することができ、推力発生装置1の大型化および重量増を抑制することができる。また、各状況で必要な推力は固定ピッチと比較した場合、推力発生用モータ2の低い回転数で発生できるので、回転数に依存する騒音を抑制することができる。
【0045】
また、推力発生装置1は、回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を電動で可変とすることにより、油圧を用いる必要がなくなる。このため、油の給排を制御する油圧制御ユニットおよび回転体に対してオイルシールを行うための複雑な回転シール機構を設ける必要がなくなり、推力発生装置1の大型化を抑制することが可能となるとともに、推力発生装置1のメンテナンス性を向上させることができる。
【0046】
また、直動回転変換部8は、回転直動変換部7で変換された1つの直線運動LMを、各支持軸M1~M3の軸回りの3つの回転運動に変換することにより、回転直動変換部7で変換された1つの直線運動LMに基づいて、3枚の回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を調整することができ、推力発生装置1の大型化を抑制することができる。
【0047】
さらに、回転直動変換部7の少なくとも一部を、推力発生用モータ2内に収容することにより、回転軸S0の軸方向において推力発生用モータ2からの回転直動変換部7の突出量を減らすことができる。このため、推力発生用モータ2で回転翼H1~H3の推進力を発生させ、ピッチ可変用モータ5で回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3を可変とした場合においても、回転軸S0の軸方向に推力発生装置1をコンパクト化することが可能となる。
【0048】
さらに、回転直動変換部7の少なくとも一部を、中空部3B内に収容することにより、推力発生用モータ2を回転軸S0の軸方向に大型化することなく、回転直動変換部7の少なくとも一部を推力発生用モータ2内に収容することができ、回転軸S0の軸方向に推力発生装置1をコンパクト化することが可能となる。
【0049】
さらに、ピッチ可変用モータ5で発生された回転運動を、回転伝達部6を介して伝えることにより、推力発生用モータ2の回転軸S0とピッチ可変用モータ5の回転軸を並列に配置することが可能となり、ピッチ可変用モータ5を推力発生用モータ2内に収容することが可能となる。
【0050】
さらに、直動回転変換部8をハブ10内に収容することにより、回転軸S0の軸方向に推力発生装置1をコンパクト化することが可能となるとともに、直動回転変換部8が外部に露出するのを防止することが可能となる。
【0051】
ここで、回転翼H1~H3がロータ軸4の軸回りに回転すると、各回転翼H1~H3には遠心力F1~F3がそれぞれかかる。各回転翼H1~H3にかかる遠心力F1~F3は、グリップP1~P3をそれぞれ介し、各支持軸M1~M3に伝わる。このとき、各支持軸M1~M3は、各支持軸M1~M3に伝わった各遠心力F1~F3に基づいて、各支持軸M1~M3の回転軸芯を自動調整し、各支持軸M1~M3の軸回りの回転精度を向上させることができる。
【0052】
以下、回転伝達部6、回転直動変換部7および直動回転変換部8の構成および動作について、より具体的に説明する。
図5(a)および図6(a)は、実施形態に係る推力発生装置の構成を示す平面図、図5(b)は、図5(a)のA-A線に沿って切断した断面図、図6(b)は、図6(a)のB-B線に沿って切断した断面図、図7(a)は、実施形態に係る推力発生装置の推力発生用モータの構成を示す平面図、図7(b)は、図7(a)のC-C線に沿って切断した断面図、図8は、図1(b)のハブの構成を分解して示す斜視図である。
【0053】
図7(a)および図7(b)において、ロータ2Bは、軸受U1を介し、回転軸S0の軸回りに回転可能な状態で外側フレーム2Cにて支持される。また、推力発生用モータ2内において、ロータ2Bとロータ軸4の間には中空部3Aが設けられ、ロータ軸4内には中空部3Bが設けられている。
【0054】
また、図2図3図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)および図8において、回転伝達部6は、歯車G1~G3および支持部材BJ1~BJ3を備える。歯車G1~G3は、ピッチ可変用モータ5の回転運動を回転直動変換部7に伝える。歯車G1は、ボールねじ軸7Fの一端に取り付けられる。歯車G3は、ピッチ可変用モータ5の回転軸に取り付けられる。歯車G2は、歯車G1と歯車G3の間で歯車G1、G3と噛み合う位置に設けられる。
【0055】
内径部2Dは、支持部材BJ1を介し、歯車G1およびボールねじ軸7Fが回転可能な状態で歯車G1および回転直動変換部7を支持する。また、内径部2Dは、支持部材BJ3を介し、歯車G3およびピッチ可変用モータ5の回転軸を回転可能な状態で支持する。また、内径部2Dは、支持部材BJ1、BJ2を介し、歯車G2を回転可能な状態で支持する。このとき、歯車G2は、支持部材BJ1、BJ2で挟み込まれた状態で、歯車G1、G3と噛み合う位置に配置される。歯車G1~G3の材料は、例えば、炭素鋼であり、支持部材BJ1~BJ3の材料は、例えば、アルミ合金である。なお、回転伝達部の機構として、歯車の代わりにベルトを用いてもよい。
【0056】
回転直動変換部7の回転直動変換機構として、ボールねじを用いることができる。回転直動変換部7の回転直動変換機構として、すべりねじを用いるようにしてもよい。回転直動変換部7は、直動伝達軸7D、直動案内部7E、ボールねじ軸7Fおよびボールねじナット7Gを備える。
【0057】
直動案内部7Eは、回転軸S0に沿って直線運動する方向にボールねじナット7Gおよび直動伝達軸7Dを案内する。このとき、直動案内部7Eは、ボールねじ軸7Fの回転に伴ってボールねじナット7Gが回転運動するのを規制する。直動案内部7Eは、支持部材BJ1から突出する形状である。直動案内部7Eは、支持部材BJ1と一体的に設けることができる。
【0058】
ボールねじ軸7Fは、軸受U2を介し、回転可能な状態で支持部材BJ1にて支持されている。ボールねじ軸7Fは、転動体を介してボールねじナット7Gと螺合した状態で歯車G1とともに回転し、ボールねじナット7Gを直線運動させる。
ボールねじナット7Gは、ボールねじ軸7Fの回転運動に伴って直線運動し、その直線運動LMを直動伝達軸7Dに伝える。
【0059】
直動伝達軸7Dは、ボールねじナット7Gの直線運動LMを直動回転変換部8に伝える。直動伝達軸7Dは、ボールねじナット7Gに固定され、直動伝達軸7Dの先端は、軸受U3の内輪に挿入される。直動伝達軸7Dは、ボールねじナット7Gおよびボールねじ軸7Fの一部を内包する形状である。
【0060】
ハブ10は、直動回転変換部8、外蓋22および中蓋23を備える。直動回転変換部8の直動回転変換機構として、ラックアンドピニオンを用いることができる。直動回転変換部8は、直動体11、ラックA1~A3、ケース21、支持軸M1~M3、軸受E1~E3、アダプタD1~D3、ピニオンB1~B3およびリフトスペーサN1~N3を備える。
【0061】
直動体11は、軸受U3を介し、直動伝達軸7Dの軸回りに回転可能な状態で支持される。このとき、直動体11は、直動伝達軸7Dとともに、回転軸S0の軸方向に沿って直線運動可能である。
【0062】
ラックA1~A3は、直動体11にて支持される。各ラックA1~A3は、ピニオンB1~B3とそれぞれ噛み合った状態で直動体11とともに直線運動し、ピニオンB1~B3をそれぞれ回転運動させる。
【0063】
各支持軸M1~M3は、推力発生装置1から水平方向に放射状に突出するようにグリップP1~P3をそれぞれ支持する。各支持軸M1~M3は、軸受E1~E3をそれぞれ介し、各支持軸M1~M3の軸回りに回転可能な状態でケース21にて保持される。グリップP1と支持軸M1は一体的に設け、グリップP2と支持軸M2は一体的に設け、グリップP3と支持軸M3は一体的に設けることができる。グリップP1~P3と支持軸M1~M3の材料は、例えば、ジュラルミンである。グリップP1~P3と支持軸M1~M3の耐久性を増大させるため、グリップP1~P3と支持軸M1~M3の材料として、例えば、チタンを用いてもよい。
【0064】
各ピニオンB1~B3は、各支持軸M1~M3にそれぞれ固定される。各ピニオンB1~B3は、各ラックA1~A3の直線運動LMに伴って回転運動し、その回転運動を各支持軸M1~M3に伝える。ピニオンB1~B3およびラックA1~A3の材料は、例えば、クロムモリブデン鋼である。
【0065】
ケース21は、ハブ10の一部として用いることができる。ケース21は、1つの部材を分割することなく1つの部材を加工して製造された非分割ケースである。ケース21は、例えば、繋ぎ目のないシームレスケースである。ケース21は、直動体11、ラックA1~A3、支持軸M1~M3、軸受E1~E3、アダプタD1~D3およびピニオンB1~B3を収容する。このとき、ケース21は、ロータ軸4の円周方向に120°の間隔で支持軸M1~M3を収容することができる。ケース21は、エクステンション9を介してロータ2Bの端面に固定される。また、ケース21は、回転軸S0の軸回りの回転時に各回転翼H1~H3にかかる遠心力F1~F3に対抗して各支持軸M1~M3を支持することができる。ケース21は、例えば、ジュラルミンなどの切削加工で一体的に形成することができる。
【0066】
各アダプタD1~D3は、支持軸M1~M3と軸受E1~E3との間に設けられ、支持軸M1~M3にてそれぞれ支持される。各アダプタD1~D3の内周面は、支持軸M1~M3の外周面に沿うように形成され、各アダプタD1~D3の外周面は、軸受E1~E3の内周面に沿うように形成される。これにより、各アダプタD1~D3は、各支持軸M1~M3の径の変化に対応しつつ、各軸受E1~E3の内周側で各支持軸M1~M3を支持させることができる。アダプタD1~D3の材料は、例えば、ジュラルミンである。
【0067】
軸受U3、E1~E3は、例えば、複列アンギュラ玉軸受を用いることができる。複列アンギュラ玉軸受は、単列アンギュラ玉軸受を背面組合せにし、外輪を一体にしてもよいし、単列アンギュラ玉軸受を正面組合せにし、内輪を一体にしてもよい。複列アンギュラ玉軸受は、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を負荷することができ、背面組合せではモーメント荷重も負荷できる。
【0068】
各リフトスペーサN1~N3は、各ラックA1~A3を各ピニオンA1~A3に押し付ける方向に押付力を発生する付勢部材として用いられる。各リフトスペーサN1~N3は、ケース21と直動体11との間の隙間に設けられ、直動体11と接触可能である。このとき、各リフトスペーサN1~N3は、直動体11と接触した状態で収容部21Aの各コーナ部に配置することができる。各リフトスペーサN1~N3の高さは、収容部21Aの深さと等しくすることができる。各リフトスペーサN1~N3の材料は、例えば、樹脂である。
【0069】
エクステンション9は、装着部4Aを介し、ロータ軸4の端面に取り付け可能である。ここで、ボルトW1~W3を収容部21A内に挿入し、エクステンション9を通して装着部4Aにねじ止めすることで、ケース21およびエクステンション9をロータ軸4に固定することができる。エクステンション9の材料は、例えば、ジュラルミンである。
【0070】
このとき、ケース21とエクステンション9の対向面にノックピン9Eを挿入し、装着部4Aとエクステンション9の対向面にマーカピン9Fを挿入することができる。これにより、ケース21およびエクステンション9を装着部4Aにねじ止めするためのクリアランスを確保しつつ、ケース21およびエクステンション9の位置決め向上させることが可能となるとともに、ボルトW1~W3にかかる周方向のトルクを逃がすことができる。
【0071】
中蓋23は、収容部21Aをカバーする。中蓋23は、貫通孔23Aを備える。中蓋23は、ケース21にて支持される。中蓋23は、ボルトJ7にてケース21に固定することができる。外蓋22は、中蓋23をカバーする。外蓋22は、中蓋23に固定することができる。このとき、内蓋22と外蓋23は互いに嵌め合い可能とし、摩擦を使用しない固定方法を用いることができる。中蓋23の材料は、例えば、ジュラルミン、外蓋22の材料は、例えば、樹脂である。
【0072】
ピッチ可変用モータ5が回転すると、ピッチ可変用モータ5の回転運動に伴って歯車G1~G3が回転する。そして、歯車G1の回転運動に伴ってボールねじ軸7Fが回転し、ボールねじ軸7Fの回転運動に伴って、ボールねじナット7Gとともに直動伝達軸7Dが直線運動する。このとき、ボールねじナット7Gおよび直動伝達軸7Dの運動は、直動案内部7Eにて案内され、推力発生装置1内において、回転軸S0の軸方向に沿った直線運動に制限される。
【0073】
直動伝達軸7Dの直線運動LMは、直動体11に伝えられ、直動伝達軸7Dの直線運動LMに伴って、直動体11とともに各ラックA1~A3が直線運動する。このとき、各ラックA1~A3は、ピニオンB1~B3とそれぞれ噛み合った状態で直線運動し、各ピニオンB1~B3を回転させる。各ピニオンB1~B3の回転運動に伴って、各支持軸M1~M3がそれぞれの軸回りに回転する。そして、各支持軸M1~M3の回転運動は、グリップP1~P3をそれぞれ介し、各回転翼H1~H3に伝えられ、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化される。
【0074】
ここで、回転直動変換部7の回転直動変換機構としてボールねじを用いることにより、すべりねじを用いた場合に比べて、ピッチ可変に必要な駆動トルクを低減することができ、ピッチ可変用モータ5の省電力化を図ることができる。
また、回転直動変換部7に直動伝達軸7Dを設けることにより、ボールねじと直動体11を回転軸S0の軸方向に離間して配置することができ、ボールねじを推力発生用モータ2内に収容しつつ、直動体11をハブ10内に収容することができる。
さらに、直動回転変換部8の直動回転変換機構として、ラックアンドピニオンを用いることにより、各ラックA1~A3の長手方向を直動体11の直動方向に揃えることが可能となるとともに、各ピニオンB1~B3の円周方向を各支持軸M1~M3の円周方向に揃えることが可能となる。このため、3個のラックアンドピニオンの配置を直動体11の周囲でコンパクトにまとめることができ、各回転翼H1~H3に対応して3個のラックアンドピニオンを設けた場合においても、ハブ10の大型化を抑制しつつ、直動回転変換部8をハブ10内に収容することが可能となる。
【0075】
以下、回転伝達部6および回転直動変換部7の構成および動作について、さらに具体的に説明する。
図9(a)は、図6のピッチ可変用モータ、回転伝達部および回転直動変換部の構成を示す斜視図、図9(b)は、図9(a)の回転直動変換部を支持する支持部材および直動案内部を除去した構成を示す斜視図である。
【0076】
図9(a)および図9(b)において、支持部材BJ1は、ボルトJ1により内径部2Dに固定することができる。ボルトJ1は、例えば、支持部材BJ1の四隅に配置することができる。支持部材BJ2は、支持部材BJ1との間に歯車G2を挟み込んだ状態で、ボルトJ2と支柱31により支持部材BJ1に固定する。ボルトJ2は、例えば、支持部材BJ2の両端に配置することができる。歯車G2の両軸端は、軸受を介して支持部材BJ1およびBJ2に対し回転自在に支持される。支持部材BJ3は、ボルトJ3により内径部2Dに固定することができる。ボルトJ3は、例えば、支持部材BJ3の端部の2か所に配置することができる。また、支持部材BJ3は、ボルトJ4によりピッチ可変用モータ5を固定することができる。
【0077】
ボールねじナット7Gは、フランジ7Aを備える。フランジ7Aは、円筒を平行な二平面で切り取った形状であり、直動案内部7Eの開口部にフランジ7Aの突出部が配置される。フランジ7Aは、ボールねじナット7Gと一体的に設けることができる。
直動伝達軸7Dは、フランジ7Bおよび案内面7Cを備える。案内面7Cは、摺動部材7Hを備える。フランジ7Bおよび案内面7Cは、円筒を平行な二平面で切り取った形状であり、直動案内部7Eの開口部にフランジ7Bが配置される。
【0078】
フランジ7Bの平坦面と案内面7Cは一体の平面であってもよい。この平坦面は、互いに反対方向を向く2つの面であってもよい。フランジ7A、7Bの突出部には、ボルトJ5を挿入可能な領域を設けることができる。フランジ7A、7Bが重なった状態で、ボルトJ5にてフランジ7Aをフランジ7Bに固定することにより、直動伝達軸7Dをボールねじナット7Gに固定することができる。
【0079】
また、フランジ7Bの平坦面または案内面7Cには、摺動部材7Hを挿入可能な凹部を設けることができる。そして、その凹部に摺動部材7Hを挿入し、接着剤などでフランジ7Bに固定することができる。このとき、摺動部材7Hは、平坦面から突出する。摺動部材7Hの材料は、例えば、樹脂である。
【0080】
一方、直動案内部7Eの内側には、フランジ7A、7Bおよび案内面7Cの平坦面と対向する平面を設けることができる。そして、直動伝達軸7Dの直線運動LMに伴って摺動部材7Hが直動案内部7Eの平面を摺動することにより、直動伝達軸7Dの運動を回転軸S0の軸方向に制限することができる。
【0081】
ここで、フランジ7A、7Bの外周部の一部および案内面7Cに平坦面を設けるとともに、ボルトJ5を挿入可能な突出部をフランジ7A、7Bに設け、突出部を直動案内部7Eの開口部に配置することにより、直動案内部7Eの外径を小さくすることができ、推力発生用モータ2内のロータ軸4の径の増大を抑制しつつ、回転直動変換部7をロータ軸4内に収納することが可能となる。
【0082】
以下、直動回転変換部8の構成および動作について、さらに具体的に説明する。
図10(a)は、実施形態に係るラックが取り付けられた直動体の構成を示す下面図、図10(b)は、図10(a)のD-D線に沿って切断した断面図、図10(c)は、図10(a)のE-E線に沿って切断した断面図、図10(d)は、実施形態に係るラックが取り付けられた直動体の構成を示す上面図、図11は、図10(a)のラックが取り付けられた直動体の構成を分解して示す斜視図である。
【0083】
図10(a)~図10(d)および図11において、直動体11は、開口12および面Z1~Z3を備える。
各面Z1~Z3は、直動体11が回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に設けられる。3回の回転対称では、回転軸S0の軸回りに直動体11を120°だけ回転させる度に、回転後の形状を回転前の形状に重ねることができる。各面Z1~Z3は、ラックA1~A3をそれぞれ支持可能である。このとき、各面Z1~Z3は、各ラックA1~A3の歯がピニオンB1~B3の歯の方向を向く位置で各ラックA1~A3を支持する。
【0084】
開口12には軸受U3が挿入され、さらに軸受U3の内輪には直動伝達軸7Dが挿入される。
このとき、直動体11は、軸受U3の外輪で支持され、直動伝達軸7Dの先端は、軸受U3の内輪に固定される。軸受U3の外輪は、例えば、C型留め輪16にて直動体11に取り付けることができる。このとき、開口12の内周面には、C型止め輪16を位置決めする溝を設けることができる。また、軸受U3の外輪とC型止め輪16との間にスペーサ18を設け、軸受U3の外輪とC型止め輪16との間の隙間をなくすことができる。
軸受U3の内輪は、例えば、ナット15にて直動伝達軸7Dの先端に取り付けることができる。このとき、直動伝達軸7Dの先端には、図9(a)および図9(b)に示すように、ナット15をねじ止め可能な雄ねじ7Mを設けることができる。また、軸受U3の内輪とナット15との間にスペーサ17を設け、軸受U3の内輪とナット15との間の隙間をなくすことができる。
【0085】
ここで、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に各面Z1~Z3を設け、ラックA1~A3を各面Z1~Z3に配置するようにしたので、1個の直動体11を直線運動させることで、3個の各支持軸M1~M3の軸回りの3個の回転運動を発生させることができる。このため、直動回転変換部8をハブ10内に収容することを可能としつつ、3枚の回転翼H1~H3のピッチを可変とすることができる。
【0086】
また、軸受U3として複列アンギュラ玉軸受を用い、軸受U3の外輪を直動体11の内面側に取り付け、軸受U3の内輪を直動伝達軸7Dに取り付けることにより、回転軸S0の軸回りに直動伝達軸7Dが回転するのを防止しつつ、回転軸S0の軸回りに直動体11を回転可能に支持することが可能となるとともに、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を受けることができる。
【0087】
直動体11は、各ラックA1~A3を各面Z1~Z3で支持するため、各面Z1~Z3上に凸部X1~X3を備える。各ラックA1~A3は、各凸部X1~X3を嵌め込み可能な凹部Y1~Y3を備える。各凹部Y1~Y3は、各ラックA1~A3の歯が設けられる面と反対側の面に設けることができる。
各凸部X1~X3および各凹部Y1~Y3には、直動体11の直線運動LMの方向に沿ってガイドピンI1~I3をそれぞれ挿入可能な貫通孔を設けることができる。
【0088】
そして、各凸部X1~X3を各凹部Y1~Y3に嵌め込む。そして、凸部X1と凹部Y1にガイドピンI1を挿入し、凸部X2と凹部Y2にガイドピンI2を挿入し、凸部X3と凹部Y3にガイドピンI3を挿入することで、各ラックA1~A3を直動体11の各面Z1~Z3に固定することができる。
【0089】
直動回転変換部8は、直動体11の直線運動LMの移動範囲を制限するため、リフトガイド19、リニアブッシュL1~L3およびナットS1~S3をさらに備える。リフトガイド19は、ガイドピンT1~T3およびガイドベース13を備える。ガイドベース13は、直動伝達軸7Dの先端を通過可能な開口14を備える。また、直動体11は、開口V1~V3をさらに備える。
【0090】
各開口V1~V3は、ガイドピンT1~T3をそれぞれ挿入可能である。ガイドベース13は、ガイドピンT1~T3を直立した状態で支持する。ガイドピンT1~T3は、ガイドベース13と一体的に設けることができる。ガイドベース13の平面形状は、直動体11の平面形状と等しくすることができる。各開口V1~V3の位置は、ガイドピンT1~T3の位置に対応させることができる。
【0091】
各リニアブッシュL1~L3は、各開口V1~V3を介して直動体11内に挿入可能である。このとき、各リニアブッシュL1~L3は、直動体11と各ガイドピンT1~T3との間に介在される。各リニアブッシュL1~L3は、各ガイドピンT1~T3を挿入可能な円筒状とすることができる。各リニアブッシュL1~L3の材料は、例えば、銅または銅合金である。各リニアブッシュL1~L3は、直動体11の直線運動LMの位置決め精度を向上させるとともに、直動体11の直線運動時の低摩擦化を図ることができる。
【0092】
各ガイドピンT1~T3は、各開口V1~V3を介して直動体11内に挿入される。このとき、各ガイドピンT1~T3は、各リニアブッシュL1~L3を貫通し、直動体11と各ガイドピンT1~T3との間に介在される。そして、各開口V1~V3の内周面にC型止め輪C1~C3をそれぞれ装着し、各リニアブッシュL1~L3を各開口V1~V3内で保持することができる。このとき、各開口V1~V3の内周面には、C型止め輪C1~C3を支持する溝を設けることができる。また、各リニアブッシュL1~L3と各C型止め輪C1~C3との間にスペーサO1~O3を設け、各リニアブッシュL1~L3と各C型止め輪C1~C3との間の隙間をなくすことができる。
【0093】
ガイドピンT1~T3の先端は、貫通孔23Aを介して中蓋23の外側に突出する。そして、ガイドピンT1~T3の先端が中蓋23の外側に突出した状態で、ナットS1~S3が各ガイドピンT1~T3の先端に装着されることで、収容部21A内にガイドベース13を配置することができる。
【0094】
以下、直動回転変換部8が設けられたハブ10の構成について、さらに具体的に説明する。
図12は、図8のケース内へのリフトスペーサの配置例を示す斜視図、図13は、図12のケース内への直動体、ラックアンドピニオンおよびリフトスペーサの配置例を示す斜視図、図14(a)は、図12のリフトスペーサの構成を示す斜視図、図14(b)は、図14(a)のリフトスペーサの構成を示す正面図、図14(c)は、図14(a)のリフトスペーサの構成を示す平面図、図14(d)は、図14(a)のリフトスペーサの構成を示す下面図、図15は、図8の内蓋と外蓋との嵌め合わせ方法を分解して示す斜視図である。
【0095】
図8図12および図13において、ケース21は、収容部21A、中空部Q1~Q3、開口21B、21C、K1~K3を備える。エクステンション9は、段差9Bを備える。
開口21Bは、ラックA1~A3が取り付けられた直動体11をリフトガイド19とともに収容部21Aに挿入可能である。開口21Cは、ケース21内の直動体11に直動伝達軸7Dを挿入可能である。開口21Cは、ケース21の頂面21Dに位置する。ケース21の頂面21Dには、エクステンション9を装着可能である。
【0096】
収容部21Aは、ラックA1~A3が取り付けられた直動体11をリフトガイド19とともにケース21内に収容する。ただし、ガイドピンT1~T3の先端は、収容部21Aから突出可能である。収容部21Aは、例えば、ケース21内に設けられた中空部または凹部である。収容部21Aの平面形状は、ガイドベース13の平面形状に対応させることができる。このとき、収容部21Aの平面形状は、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称とすることができる。
【0097】
各開口K1~K3は、各支持軸M1~M3をケース21内に挿入可能である。開口K1~K3は、収容部21Aの外側の円周面に沿って配置することができる。このとき、支持軸M1、ピニオンB1、軸受E1およびアダプタD1を挿入可能な中空部Q1と、支持軸M2、ピニオンB2、軸受E2およびアダプタD2を挿入可能な中空部Q2と、支持軸M3、ピニオンB3、軸受E3およびアダプタD3を挿入可能な中空部Q3をケース21に設けることができる。各中空部Q1~Q3には、開口21Bを介し、支持軸M1~M3、ピニオンB1~B3、軸受E1~E3およびアダプタD1~D3をそれぞれ挿入可能である。
【0098】
そして、ラックA1~A3が取り付けられた直動体11は、収容部21Aに収納される。各ピニオンB1~B3が取り付けられた各支持軸M1~M3は、各中空部Q1~Q3に収納される。
【0099】
段差9Bは、エクステンション9の内周面側で回転軸S0の軸方向に突出する。そして、図12に示すように、段差9Bを開口21Cに挿入する。そして、図8に示すように、収容部21A内に挿入されたボルトW1~W3をエクステンション9に通し、図3の装着部4Aにねじ止めすることで、図5(b)に示すように、ケース21およびエクステンション9がロータ軸4に固定される。図8に示すように、ケース21とエクステンション9の各対向面には、例えば、ボルトW2の挿入位置に対応して貫通孔21E、9Cを設けることができる。また、図3に示すように、装着部4Aの装着面には、ボルトW2の挿入位置に対応して雌ねじ4Cを設けることができる。そして、図12の収容部21Aの頂面21D側から図8の貫通孔21E、9Cを介してボルトW2を図3の雌ねじ4Cにねじ込むことができる。このとき、ケース21内またはエクステンション9内にボルトW1~W3を収めた状態でケース21およびエクステンション9をロータ軸4に固定することができ、ボルトW1~W3が推力発生装置1の外部に露出するのを防止することができる。
【0100】
各リフトスペーサN1~N3は、直動体11の各面Z1~Z3と接触した状態で収容部21Aの各コーナ部に配置される。また、図16に示すように、リフトスペーサN1は、ラックA3に接触し、ラックA3に予圧を与える。リフトスペーサN2は、ラックA1に接触し、ラックA1に予圧を与える。リフトスペーサN3は、ラックA2に接触し、ラックA2に予圧を与える。また、各リフトスペーサN1~N3は、収容部21Aの各コーナの内面に接触し、収容部21Aの各コーナの内面で支持される。
【0101】
ここで、例えば、リフトスペーサN2は、図14(a)~図14(d)に示すように、接触面NA~NC、切り欠きNFおよび逃げ穴NGを備える。リフトスペーサN1、N3も、リフトスペーサN2と同様に構成することができる。
【0102】
リフトスペーサN2の接触面NAは、直動体11の面Z2に接触する。接触面NBは、ラックA1に接触する。接触面NCは、収容部21Aのコーナの内面に接触する。切り欠きNFは、接触面NBと平行になるように接触面NCに設けられる。切り欠きNFは、接触面NBにかかる力を緩衝することができる。逃げ穴NGは、リフトスペーサN2の頂面NE側でボルトW2を受け止める。
【0103】
そして、直動体11が直線運動すると、各ラックA1~A3と各ピニオンB1~B3のギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因して各ラックA1~A3と各ピニオンB1~B3との間に図13に示す分離力SF1~SF3が発生する。このとき、分離力SF1~SF3に起因する直動体11の回転を各リフトスペーサN1~N3の接触面NAで受け止め、各ラックA1~A3の回転を接触面NBで受け止め、各リフトスペーサN1~N3の回転を収容部21Aの内面で受け止めることができる。このため、各ラックA1~A3と各ピニオンB1~B3のギヤの噛み合い時にバックラッシュが発生する場合においても、直動体11の回転を抑制することができ、ピッチ角θ1~θ3の可変精度の低下を抑制することができる。
【0104】
また、各リフトスペーサN1~N3に切り欠きNFを設けることにより、各ラックA1~A3と各ピニオンB1~B3のギヤの噛み合い時に発生する分離力SF1~SF3を利用して各ラックA1~A3に予圧をかけることができ、各ラックA1~A3と各ピニオンB1~B3のギヤの噛み合い時のバックラッシュを低減することができる。
【0105】
また、図8に示すように、ボルトW2は、収容部21Aの頂面21D側から貫通孔21E、9Cを介して図3の雌ねじ4Cにねじ込まれる。そして、図12に示すように、ボルトW2の頭が逃げ穴NGに収まるように、リフトスペーサN2が収容部21A内の頂面21D上に配置される。そして、図13に示すように、直動体11、ラックA1~A3、ピニオンB1~B3およびリフトスペーサN1~N3が収容部21A内に配置された状態で、図5(b)に示すように、図13の開口21Bを塞ぐように中蓋23がケース21に装着され、外蓋22が中蓋23に装着される。
【0106】
ここで、図15に示すように、中蓋23は、溝23B、凸部23C、貫通孔23Dおよび円筒部23Eを備える。外蓋22は、爪22Bおよび凹部22Cを備える。円筒部23Eは、外蓋22の装着方向に突出する。溝23Bは、円筒部23Eの外周面に周方向に設けられる。溝23Bは、爪22Bと嵌め合わせ可能である。凸部23Cは、円筒部23Eから放射状に延びる。凸部23Cは、凹部22Cと嵌め合わせ可能である。貫通孔23Dは、ねじJ7を挿入可能である。
【0107】
そして、ねじJ7が貫通孔23Dに挿入された状態で、ねじJ7がケース21にねじ込まれることで中蓋23がケース21に固定される。このとき、各リフトスペーサN1~N3の上面は、中蓋23で押し付けられる。また、各ボルトW1~W3は、各リフトスペーサN1~N3の底面で押し付けられる。このため、中蓋23をケース21に固定することにより、各ボルトW1~W3の脱落を防止することができ、ケース21およびエクステンション9がロータ軸4から脱落するのを防止することができる。
【0108】
また、爪22Bが溝23Bに嵌め込まれ、凸部23Cが凹部22Cに嵌め込まれることで、外蓋22が中蓋23に固定される。このとき、ねじJ7は、外蓋22の外縁部22Dで押し付けられる。このため、摩擦を用いない方法で外蓋22を中蓋23に固定しつつ、ねじJ7の脱落を防止することができ、中蓋23がケース21から脱落するのを防止することができる。この結果、航空法に依拠しつつ、回転翼H1~H3を支持するハブ10を装着することができる。
【0109】
図16は、図10(d)のラックが取り付けられた直動体とピニオンとの位置関係を示す上面図である。
図16において、各支持軸M1~M3は、それぞれの回転軸JS1~JS3が直動体11の各面Z1~Z3に対して垂線方向JD1~JD3に向くように配置される。そして、各ラックA1~A3は、各面Z1~Z3上において、各ピニオンB1~B3と噛み合う位置でそれぞれ支持される。
【0110】
ここで、直動体11の各面Z1~Z3に対して垂直方向JD1~JD3に各支持軸M1~M3を配置することにより、直線運動を行う直動体11の各面Z1~Z3と、回転運動を行う各ピニオンB1~B3を、各回転翼H1~H3が延びる方向に直列に配置することができる。このため、直動体11に伝えられた1つの直線運動LMから、各支持軸M1~M3に伝えられる3個の回転運動にそれぞれ変換するための経路の経路長の増大を抑制することができ、直動回転変換部8のコンパクト化を図りつつ、3枚の回転翼H1~H3のピッチ角を可変とすることができる。
【0111】
また、各リフトスペーサN1~N3は、各面Z1~Z3と接触可能な状態で各ピニオンB1~B3に隣接して配置することができる。ここで、各ラックA1~Aは、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に設けられる。各ピニオンB1~B3は、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に設けられる。各リフトスペーサN1~N3は、回転軸S0の軸回りに3回の回転対称となる位置に設けられる。
【0112】
これにより、各ピニオンB1~B3を直動体11の各面Z1~Z3に対向配置しつつ、各ピニオンB1~B3に噛み合うように各ラックA1~Aを配置することが可能となるとともに、各ピニオンB1~B3に隣接するように各リフトスペーサN1~N3を配置することができる。このため、各ピニオンB1~B3の側方の空きスペースを有効活用しつつ、各リフトスペーサN1~N3を配置することができ、直動回転変換部8のコンパクト化を図りつつ、ラックアンドピニオンのギヤの噛み合い時のバックラッシュに起因する直動体11の回転を抑制することができる。
【0113】
図17(a)は、図1(b)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図、図17(b)は、図1(c)の回転翼のピッチ角に対応した直動体の位置を示す斜視図である。
【0114】
図17(a)および図17(b)において、図8(a)の直動伝達軸7Dの直線運動LMに伴って、直動体11とともに各ラックA1~A3が直線運動する。このとき、直動体11の直線運動LMは、ガイドピンT1~T3にて案内されるとともに、直動体11の直線運動LMの移動範囲が、ガイドベース13およびナットS1~S3にて制限される。各ラックA1~A3の直線運動LMに伴ってピニオンB1~B3がそれぞれ回転運動し、ピニオンB1~B3の回転運動に伴って、各支持軸M1~M3がそれぞれの軸回りに回転する。そして、各支持軸M1~M3の回転運動に伴って各回転翼H1~H3が回転し、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が変化される。
【0115】
例えば、直動体11が図17(a)の位置にあるときは、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が図1(b)に示すように設定され、直動体11が図17(b)の位置にあるときは、各回転翼H1~H3のピッチ角θ1~θ3が図1(c)に示すように設定される。
【0116】
上記の実施形態においては、各ラックA1~A3を各ピニオンA1~A3に押し付ける方向に押付力を発生する付勢部材として、リフトスペーサN1~N3を例にとった。この付勢部材は、必ずしもリフトスペーサN1~N3に限定されることなく、例えば、各ラックA1~A3を各ピニオンA1~A3に押し付け可能な板ばねであってもよい。また、付勢部材の配置位置は、各ラックA1~A3とケース21との間であってもよいし、各ラックA1~A3と直動体11との間であってもよい。
【0117】
また、上記の実施形態においては、各回転翼H1~H3は推力発生装置1の真下に配置され、推力発生装置1は飛翔体の機体の下部に装着されるが、各回転翼H1~H3は推力発生装置1の真上に配置され、推力発生装置1は飛翔体の機体の上部に装着されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 推力発生装置、H1~H3 回転翼、P1~P3 グリップ、2 推力発生用モータ、2A ステータ、2B ロータ、3A、3B 中空部、4 ロータ軸、5 ピッチ可変用モータ、6 回転伝達部、7 回転直動変換部、8 直動回転変換部、9 エクステンション
図1
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