(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20240312BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60J5/04 Z
B60J5/00 Q
B60J5/00 P
(21)【出願番号】P 2020142451
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼野 礼子
(72)【発明者】
【氏名】平尾 晋介
(72)【発明者】
【氏名】中重 壮寛
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098685(JP,A)
【文献】特開2016-084031(JP,A)
【文献】特開2013-154784(JP,A)
【文献】特開2003-154848(JP,A)
【文献】特開2010-137792(JP,A)
【文献】特開2004-010014(JP,A)
【文献】特開2004-224120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0073627(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02698322(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 ; 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体部と、
上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、
上記ドア本体部は、
車幅方向内側を構成するドア内側面部と、
上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、
上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、
上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた
車両のドア構造であって、
上記ヒンジレインフォースメントは、
上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、
該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、
上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、
上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え
、
上記第1接合部は上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバーに固定され、
当該第1接合部は上記第2接合部の下側に配置されたことを特徴とする
車両のドア構造。
【請求項2】
ドア本体部と、
上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、
上記ドア本体部は、
車幅方向内側を構成するドア内側面部と、
上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、
上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、
上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた
車両のドア構造であって、
上記ヒンジレインフォースメントは、
上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、
該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、
上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、
上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え
、
上記第1接合部と上記第2接合部とが切換わる上下位置は、上記ドアヒンジの締結部間に設けられたことを特徴とする
車両のドア構造。
【請求項3】
ドア本体部と、
上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、
上記ドア本体部は、
車幅方向内側を構成するドア内側面部と、
上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、
上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、
上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた
車両のドア構造であって、
上記ヒンジレインフォースメントは、
上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、
該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、
上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、
上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え
、
上記第1接合部は、
上記補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びる延出部と、
該延出部のドア中央側端部から車幅方向外側に延びる縦壁と、
該縦壁の車外側端部から、前後方向に延びて上記インパクトバーに固定されるフランジ部と、を備えたことを特徴とする
車両のドア構造。
【請求項4】
上記内側連結部は、前後方向に延びる第1面部と、
上記第1面部の前後方向において、ドア中央側に位置する端部から上記ドア内側面部に向けて車幅方向に延びる第2面部と、を備え、
該内側連結部と上記ドア本体部との間に閉断面部が形成された
請求項1
または2に記載の車両のドア構造。
【請求項5】
上記内側連結部は前後方向に延びるビードを備える
請求項1
、2および4
のうち何れか一項に記載の車両のドア構造。
【請求項6】
上記第1接合部は、上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバーに固定され、
当該第1接合部は上記第2接合部と略同じ高さに設けられた
請求項1に記載の車両のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のドア構造に関し、詳しくは、ドア本体部の内部において前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、ドアヒンジブラケットが取付けられるドア本体部のドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えたような車両のドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のドア構造としては、
図12に示す構造がある。
すなわち、ヒンジピラー70にドアヒンジ80を介してドアとしてのフロントドア90を開閉可能に設けたものである。
【0003】
上述のヒンジピラー70は、ヒンジピラーアウタ71と、ヒンジピラーレインフォースメント72と、ヒンジピラーインナ73と、を接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面部74を形成した車体強度部材である。
【0004】
上述のドアヒンジ80は、ヒンジピラーアウタ71に締結される車体側ヒンジブラケット81と、フロントドア90のドアヒンジ取付け面部94bに締結されるドア側ヒンジブラケット82と、をヒンジピン83で枢支したものである。
【0005】
上述のフロントドア90は、ドア本体部91とドアサッシュ部とを有し、ドア本体部91の内部には、前後方向に延びて固定されるインパクトバー92を備えている。また、上記ドア本体部91はドアアウタパネル93と、ドアインナパネル94と、をヘミング加工して一体化されている。
【0006】
上述のドアインナパネル94は、車幅方向内側を構成するドア内側面部94aと、このドア内側面部94aから車幅方向外側に延び、ドア側ヒンジブラケット82を固定するドアヒンジ取付け面部94bと、該ドアヒンジ取付け面部94bの車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部94cとを備えている。
さらに、
図12に示すように、上述のドア本体部91の内部でドアヒンジ取付け面部94bに固定されるヒンジレインフォースメント95を備えている。
【0007】
このヒンジレインフォースメント95は、ドアヒンジ取付け面部94bに対向する補強面部95bと、この補強面部95bの車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びる内側連結部95aと、上記補強面部95bの車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部94cに固定される接合部95cと、を備えている。そして、この接合部95cには、上述のインパクトバー92のドア中央から離れる方向の端部92aを接合している。
【0008】
図12に示す従来構造において、矢印xで示す側突荷重がドア本体部91に入力すると、インパクトバー92が同図に仮想線αで示すようにドア本体部91内方側へ曲げ変形され、インパクトバー92の端部92aにはドア本体部91内側に引き込まれる力が作用する。このためインパクトバー92の端部92aが矢印yで示すように、外側に跳ね上がるような接合部への剥離方向の荷重により、当該端部92aが剥離破断する。このインパクトバー92の端部92aの剥離破断により、ドアヒンジ80を介したヒンジピラー70(車体)への荷重伝達が不可能となる。
【0009】
上述のドアヒンジ80を介した車体への荷重伝達を確実に行なうためには、インパクトバー92の板厚の増大や別途レインフォースメントを追加することが考えられるが、この場合には、重量が増加するという問題点があった。
【0010】
図13に示す従来構造は、
図12のヒンジレインフォースメント95の接合部95cに代えて、補強面部95bの車外側端から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びる接合部95dを設け、この接合部95dをインパクトバー92と接合固定したものである。
【0011】
図13に示す従来構造においては、矢印xで示す側突荷重の入力時に、上記接合部95dがドア本体部91の内方側へ曲げ変形されるインパクトバー92と共に当該内方側へ移動するので、
図12で示した従来構造のような剥離は生じないものの、側突大荷重が接合部95dに作用すると、
図13に仮想線βで示すように、補強面部95bがドアヒンジ取付け面部94bから剥離する。このため、ドアヒンジ80を介したヒンジピラー70(車体)への荷重伝達が不可能となる。
【0012】
上述のドアヒンジ80を介した車体への荷重伝達を確実に行なうためには、インパクトバー92やヒンジレインフォースメント95の板厚の増大や別途レインフォースメントを追加することが考えられるが、この場合には、重量が増加するという問題点があった。
【0013】
なお、
図13において、
図12と同一の部分には、同一符号を付している。また、
図12、
図13において、矢印Fは車両前方、すなわち、前後方向において、ドア中央から離れる方向を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0014】
ところで、特許文献1には上述の
図13のようなヒンジレインフォースメントを備えた車両のドア構造が開示されている。すなわち、ドアヒンジ取付け面部に対向するヒンジ取付け部と、該ヒンジ取付け部の車外側端部からドア中央に近づく方向に延びて、インパクトバーに接合されるインパクトバー結合部と、ヒンジ取付け部の車内側端部からドア中央に近づく方向に延びて、ドアインナパネルに接合される接合部と、を備えてなるヒンジレインフォースメントを備えたものである。
【0015】
特許文献1に開示された当該従来構造においても、側突時の荷重をドアヒンジを介して車体に確実に伝達するという観点で、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、この発明は、軽量な構造でありながら、車両側突時に、ヒンジレインフォースメントがドアフランジ部およびインパクトバーに固定される接合部の剥離破断を抑制し、ドアヒンジを介した車体への荷重伝達が可能となる車両のドア構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明による車両のドア構造は、ドア本体部と、上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、上記ドア本体部は、車幅方向内側を構成するドア内側面部と、上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた車両のドア構造であって、上記ヒンジレインフォースメントは、上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え、上記第1接合部は上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバーに固定され、当該第1接合部は上記第2接合部の下側に配置されたものである。
【0019】
上記構成によれば、車両側突時、上記第1接合部が側突時のインパクトバーの座屈点側であるドア中央側に接合されるため、第1接合部を介してヒンジレインフォースメントがインパクトバーの曲げ変形に追従し、上記第2接合部には、せん断荷重が入力される。これにより、第2接合部がドアフランジ部から剥離するのを抑制し、ドアヒンジを介した車体への荷重伝達が可能となる。
【0020】
また、第2接合部がヒンジレインフォースメントに入力した側突荷重をドア本体部に分散することで、ドアヒンジ取付け面部に入る剥離荷重を抑制することもできる。
要するに、板厚の増大や別途レインフォースメントを追加することなく、軽量な構造でありながら、車両側突時に、ヒンジレインフォースメントがドアフランジ部およびインパクトバーに固定される接合部の剥離破断を抑制し、ドアヒンジを介した車体への荷重伝達が可能となる。
【0021】
また上述したように、上記第1接合部は上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバーに固定され、当該第1接合部は上記第2接合部の下側に配置されたものであるため、第2接合部の下側に配置される第1接合部を、補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延出して、インパクトバーに固定するという簡単な形状で、上記効果を確保することができる。
【0022】
またこの発明による車両のドア構造は、ドア本体部と、上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、上記ドア本体部は、車幅方向内側を構成するドア内側面部と、上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた車両のドア構造であって、上記ヒンジレインフォースメントは、上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え、上記第1接合部と上記第2接合部とが切換わる上下位置は、上記ドアヒンジの締結部間に設けられたものである。
上記構成によれば、ドアヒンジの締結部に入力される荷重の低減を図ることができる。
【0023】
またこの発明による車両のドア構造は、ドア本体部と、上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、上記ドア本体部は、車幅方向内側を構成するドア内側面部と、上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた車両のドア構造であって、上記ヒンジレインフォースメントは、上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え、上記第1接合部は、上記補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びる延出部と、該延出部のドア中央側端部から車幅方向外側に延びる縦壁と、該縦壁の車外側端部から、前後方向に延びて上記インパクトバーに固定されるフランジ部と、を備えたものである。
上記構成によれば、上述の延出部と、縦壁と、フランジ部とで上記第1接合部を形成するので、当該第1接合部の加工性向上を図ることができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記内側連結部は、前後方向に延びる第1面部と、上記第1面部の前後方向において、ドア中央側に位置する端部から上記ドア内側面部に向けて車幅方向に延びる第2面部と、を備え、該内側連結部と上記ドア本体部との間に閉断面部が形成されたものである。
上記構成によれば、上述の閉断面部によりドアの変形を抑制することができる。
【0025】
この発明の一実施態様においては、上記内側連結部は前後方向に延びるビードを備えるものである。
上記構成によれば、上記ドア内側面部を含むドアインナパネルに対して、より一層側突荷重を伝達することができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、上記第1接合部は、上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバーに固定され、当該第1接合部は上記第2接合部と略同じ高さに設けられたものである。
【0027】
上述の補強面部、第1接合部および第2接合部を形成する部材は、押出材のように一部品で構成してもよく、あるいは、二部材で構成してもよい。
上記構成によれば、簡単な構成でありながら第1接合部と第2接合部とを同じ高さ位置に位置させることができ、インパクトバーの曲げ変形による第1接合部のモーメントが第2接合部により伝わりやすくなる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、軽量な構造でありながら、車両側突時に、ヒンジレインフォースメントがドアフランジ部に固定される接合部の剥離破断を抑制し、ドアヒンジを介した車体への荷重伝達が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の車両のドア構造を、ドアアウタパネルを取外した状態で示す側面図。
【
図5】車両のドア構造の要部を、後方かつ上方から見た状態で示す斜視図。
【
図8】第1接合部と第2接合部の切換わり上下位置を示す斜視図。
【
図10】車両のドア構造の他の実施例を示す断面図。
【
図11】車両のドア構造のさらに他の実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
軽量な構造でありながら、車両側突時に、ヒンジレインフォースメントがドアフランジ部およびインパクトバーに固定される接合部の剥離破断を抑制し、ドアヒンジを介した車体への荷重伝達を可能にするという目的を、ドア本体部と、上記ドア本体部の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、を備え、上記ドア本体部は、車幅方向内側を構成するドア内側面部と、上記ドア内側面部から車幅方向外側に延び、ドアヒンジを固定するドアヒンジ取付け面部と、上記ドアヒンジ取付け面部の車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部とを備え、上記ドア本体部の内部で上記ドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えた車両のドア構造であって、上記ヒンジレインフォースメントは、上記ドアヒンジ取付け面部に対向する補強面部と、該補強面部の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部に固定される内側連結部と、上記補強面部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバーに固定される第1接合部と、上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部に固定される第2接合部と、を備え、上記第1接合部は上記補強面部の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバーに固定され、当該第1接合部は上記第2接合部の下側に配置されるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0031】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のドア構造を示し、
図1は当該車両のドア構造を、ドアアウタパネルを取外した状態で示す側面図、
図2は
図1の要部拡大図、
図3は
図2のA-A線矢視断面図、
図4は
図2のB-B線矢視断面図、
図5は車両のドア構造の要部を、後方かつ上方から見た状態で示す斜視図である。
【0032】
また、
図6はヒンジレインフォースメントの側面図、
図7はヒンジレインフォースメントの後方斜視図、
図8は第1接合部と第2接合部の切換わり上下位置を示す斜視図、
図9は車両のドア構造の作用説明図である。
【0033】
なお、以下の実施例においては、車両のドア構造として、フロントドア構造を例示する。
車両のドア構造の説明に先立って、まずドア周辺の車体構造について説明する。
【0034】
図1に示すように、車室の前方側部において上下方向に延びるヒンジピラー10と、該ヒンジピラー10の下端部から車両後方に延びるサイドシル11と、上述のヒンジピラー10の上端部から斜め後方かつ上方に延びるフロントピラー12と、このフロントピラー12に連続して車両後方に延びるルーフサイドレール13と、このルーフサイドレール13とサイドシル11とを上下方向に連結するセンタピラー14とでフロントドア開口を形成している。
【0035】
上述のヒンジピラー10は、
図3、
図4に示すように、ヒンジピラーアウタパネル10Aと、ヒンジピラーレインフォースメント10Bと、ヒンジピラーインナパネル10Cとを接合固定して、上下方向に延びるヒンジピラー閉断面部10Dを形成した車体強度部材である。
【0036】
図3、
図4に示すように、上述のヒンジピラーアウタパネル10Aの車幅方向外側面部には、エプロンレインフォースメント15の後部が接合固定されている。
また、上述のサイドシル11は、サイドシルアウタとサイドシルインナとサイドシルレインフォースメントとを接合固定して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面部をもった車体強度部材である。
上述のフロントピラー12は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合固定して斜め方向に延びるフロントピラー閉断面部をもった車体強度部材である。
【0037】
さらに、上述のルーフサイドレール13は、ルーフサイドレールアウタとルーフサイドレールインナとを接合固定して車両の略前後方向に延びるルーフサイド閉断面部をもった車体強度部材である。
上述のセンタピラー14は、センタピラーアウタとセンタピラーレインフォースメントとセンタピラーインナとを接合固定して、車両の上下方向に延びるセンタピラー閉断面部をもった車体強度部材である。
【0038】
図1、
図4に示すように、上述のヒンジピラー10のヒンジピラーアウタパネル10Aには、上下一対のドアヒンジ16,17を介してフロントドア20を開閉可能に取付けている。
このフロントドア20は、ヒンジピラー10、サイドシル11、フロントピラー12、ルーフサイドレール13およびセンタピラー14で囲繞されたフロントドア開口を開閉可能に覆うものである。
【0039】
上述のフロントドア20は、ベルトラインBLよりも下側のドア本体部21と、ベルトラインBLよりも上側のドアサッシュ部22と、を備えている。ドアサッシュ部22の後辺部には上下方向に延びるドアピラーアウタ23が設けられている。
【0040】
図3、
図4に示すように、上述のドア本体部21はドアインナパネル24と、ドアアウタパネル25とをヘミング加工により一体的に連結して構成されており、ドア本体部21は、上下一対のドアヒンジ16,17が取付けられた前辺部20Aと、下辺部20Bと、後辺部20Cとを備えている。
【0041】
図1、
図2、
図3に示すように、ドア本体部21の内部で、ベルトラインBLに沿って前後方向に延びてドアインナパネル24に固定されるベルトラインレインフォースメントインナ26およびベルトラインレインフォースメントアウタ27を設けている。
【0042】
また、
図2、
図3に示すように、ベルトラインレインフォースメントインナ26とベルトラインレインフォースメントアウタ27との間には、ドアミラーを支持するドアミラー支持ブラケット28が設けられている。
さらに、
図1に示すように、上述の後辺部20Cにおけるドアインナパネル24のドア内部空間側には、ラッチレインフォースメント29を接合固定している。
【0043】
加えて、
図1に示すように、上述のベルトラインレインフォースメントアウタ27の前後方向の中間下部と、後辺部20Cにおけるドアインナパネル24のドアフランジ部24aと、の間にはアッパインパクトバー30を備えている。このアッパインパクトバー30は前端が高く、後端が低くなるように前後方向に傾斜状に延びて固定されている。
【0044】
また、
図1に示すように、前辺部20Aの上側におけるドアインナパネル24のドアフランジ部24dと、後辺部20Cのアッパインパクトバー30の後端より下方におけるドアインナパネル24のドアフランジ部24aと、の間にはロアインパクトバー31を備えている。このロアインパクトバー31は前端が高く、後端が低くなるように前後方向に傾斜状に延びて固定されている。
【0045】
上述のロアインパクトバー31は上述のアッパインパクトバー30と略平行に配置されると共に、該ロアインパクトバー31は、ドア本体部21の内部で前後方向に延びてドアインナパネル24に固定されている。
図3、
図4に示すように、上述のドア本体部21におけるドアインナパネル24は、ドア内側面部24bと、ドアヒンジ取付け面部24cと、ドアフランジ部24dとを備えている。
【0046】
上述のドア内側面部24bはドア本体部21の車幅方向内側を構成する。上述のドアヒンジ取付け面部24cは、ドア内側面部24bから車幅方向外側に延びて、ドアヒンジ16,17を固定する取付け面部を構成する。また、上述のドアフランジ部24dは、ドアヒンジ取付け面部24cの車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向(この実施例では前方)に延びるフランジ部である。
【0047】
さらに、上述のドアフランジ部24dから車幅方向外側に延びる段差部24eを設けると共に、この段差部24eの車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるエンドフランジ部24fを設けている。
【0048】
図1、
図2に示すように、ドア本体部21の内部で上下のドアヒンジ16,17に対応して上記ドアヒンジ取付け面部24cにはヒンジレインフォースメント40,50を設けている。
図1、
図2、
図5に示すように、下側のヒンジレインフォースメント50は、ドアインナパネル24のドアヒンジ取付け面部24cに対向する補強面部50aと、この補強面部50aの車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びてドア内側面部24bに固定される内側連結部50bと、上記補強面部50aの車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びてドアフランジ部24dに固定される接合部50cと、を備えている。
【0049】
図3~
図7に示すように、上側のヒンジレインフォースメント40は、2つのブラケット40A,40Bを接合一体化して形成されているが、単一のブラケットにてヒンジレインフォースメント40を形成してもよい。
図3~
図7、特に、
図3、
図4に示すように、上記ヒンジレインフォースメント40は、補強面部41と、内側連結部42と、第1接合部43と、第2接合部44と、を備えている。
【0050】
上述の補強面部41はドアインナパネル24のドアヒンジ取付け面部24cに対向すると共に、当該ドアヒンジ取付け面部24cに固定されている。
上述の内側連結部42は、補強面部41の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びて上述のドア内側面部24bに固定されている。
【0051】
上述の第1接合部43(
図4参照)は、補強面部41から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びて上記ロアインパクトバー31に固定されている。
上述の第2接合部44(
図3参照)は、補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部24dに固定されている。
【0052】
これにより、車両の側突時、上述の第1接合部43が側突時のロアインパクトバー31の座屈点側であるドア中央側に接合されるため、第1接合部43を介してヒンジレインフォースメント40がロアインパクトバー31の曲げ変形に追従し、第2接合部44に対してせん断荷重が入力されるように形成している。このため、第2接合部44がドアフランジ部24dから剥離するのを抑制し、ドアヒンジ16を介して側突荷重を車体としてのヒンジピラー10に伝達すべく構成したものである。
【0053】
また、
図2、
図4に示すように、上述の第1接合部43は補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びて、ロアインパクトバー31に固定されており、当該第1接合部43は上述の第2接合部44の下側に配置されている。
【0054】
ところで、上述のドアヒンジ16は、
図4に示すように、車体側ヒンジブラケット16Aと、ドア側ヒンジブラケット16Bと、両ブラケット16A,16Bを枢支するヒンジピン16Cとを備えている。そして、上述のドア側ヒンジブラケット16Bは、
図4、
図8に示すように、上下一対の締結ボルト45を用いて、ドアインナパネル24のドアヒンジ取付け面部24cと、ヒンジレインフォースメント40の補強面部41と、プレート46との各要素と共締め固定されている。
【0055】
図2、
図8に示すように、下側に位置する第1接合部43と、上側に位置する第2接合部44とが切換わる上下位置は、上述のドアヒンジ16(詳しくは、ドア側ヒンジブラケット16B)の締結部間である上下一対の締結ボルト45,45間に設けられている。これにより、ドアヒンジ16の締結部(締結ボルト45による締結部参照)に入力される側突荷重の低減を図るように構成している。
【0056】
図3、
図4に示すように、内側連結部42は、前後方向に延びる第1面部42aと、この第1面部42aの前後方向において、ドア中央側に位置する端部から上述のドア内側面部24bに向けて車幅方向に延びる第2面部42bと、この第2面部42bの車幅方向内端から、前後方向においてドア中央に近づく方向に延びるフランジ部42cと、を備えている。
【0057】
そして、上記フランジ部42cをドアインナパネル24のドア内側面部24bに接合固定することで、ヒンジレインフォースメント40の内側連結部42とドア本体部21との間に閉断面部47を形成している。当該閉断面部47によりフロントドア20の変形を抑制するように構成している。
【0058】
図5~
図8に示すように、一方のブラケット40Aにて形成された内側連結部42には、前後方向に延びる複数のビード48が一体形成されている。これにより、車両側突時にドアインナパネル24に対して、より一層側突荷重の伝達性を確保するように構成している。
【0059】
一方、
図1~
図4に示すように、ヒンジレインフォースメント40の上述の第1面部42aには、当該第1面部42aに沿って上下方向に延びる前側のガラスガイド51を設けている。また、
図1に示すように、ドアピラーアウタ23の前部に沿って上下方向に延びる後側のガラスガイド52を設けている。そして、これら前後一対のガラスガイド51,52によりドアサイドウインドガラス(図示せず)の昇降を案内するように構成している。
また、
図1、
図2に示すように、ドアインナパネル24のドア内側面部24bには、ドアモジュール配設用の開口部53と、スピーカ配置用の開口部54と、が開口形成されている。
【0060】
このように構成した車両のドア構造の作用を、
図9を参照して以下に説明する。
矢印xで示す側突荷重がドアアウタパネル25を介してロアインパクトバー31に入力すると、当該ロアインパクトバー31の前後方向中間部が車幅方向の内方へ曲げ変形される。
この際、第1接合部43がロアインパクトバー31の変形に追従するので、第1接合部43と当該第1接合部43が接合された部位のロアインパクトバー31にはモーメントmが発生する。
【0061】
このため、ロアインパクトバー31は前後方向においてドア中央に近づく矢印t方向に引き摺られ、これにより、第2接合部44に対してせん断荷重sが入力され、当該第2接合部44の剥離が抑制される。
この結果、ヒンジレインフォースメント40に入力された側突荷重を、ドアヒンジ16を介して車体としてのヒンジピラー10に伝達することができる。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0062】
このように、
図1~
図9で示した実施例1の車両のドア構造は、ドア本体部21と、上記ドア本体部21の内部で前後方向に延びて固定されるインパクトバー(ロアインパクトバー31)と、を備え、上記ドア本体部21は、車幅方向内側を構成するドア内側面部24bと、上記ドア内側面部24bから車幅方向外側に延び、ドアヒンジ16を固定するドアヒンジ取付け面部24cと、上記ドアヒンジ取付け面部24cの車幅方向外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びるドアフランジ部24dとを備え、上記ドア本体部21の内部で上記ドアヒンジ取付け面部24cに設けられるヒンジレインフォースメント(上側のヒンジレインフォースメント40)と、を備えた車両のドア構造であって、上記ヒンジレインフォースメント40は、上記ドアヒンジ取付け面部24cに対向する補強面部41と、該補強面部41の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記ドア内側面部24bに固定される内側連結部42と、上記補強面部41から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて上記インパクトバー(ロアインパクトバー31)に固定される第1接合部43と、上記補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア中央から離れる方向に延びて上記ドアフランジ部24dに固定される第2接合部44と、を備えたものである(
図3、
図4参照)。
【0063】
この構成によれば、車両側突時、上記第1接合部43が側突時のインパクトバー(ロアインパクトバー31)の座屈点側であるドア中央側に接合されるため、第1接合部43を介してヒンジレインフォースメント40がインパクトバー(ロアインパクトバー31)の曲げ変形に追従し、上記第2接合部44には、せん断荷重が入力される。これにより、第2接合部44がドアフランジ部24dから剥離するのを抑制し、ドアヒンジ16を介した車体への荷重伝達が可能となる。
【0064】
また、第2接合部44がヒンジレインフォースメント40に入力した側突荷重をドア本体部21に分散することで、ドアヒンジ取付け面部24cに入る剥離荷重を抑制することもできる。
【0065】
要するに、板厚の増大や別途レインフォースメントを追加することなく、軽量な構造でありながら、車両側突時に、ヒンジレインフォースメント40がドアフランジ部24dおよびインパクトバー(ロアインパクトバー31)に固定される接合部44,43の剥離破断を抑制し、ドアヒンジ16を介した車体への荷重伝達が可能となる。
【0066】
また、この発明の一実施形態においては、上記第1接合部43は上記補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバー(ロアインパクトバー31)に固定され、当該第1接合部43は上記第2接合部44の下側に配置されたものである(
図2参照)。
【0067】
この構成によれば、第2接合部44の下側に配置される第1接合部43を、補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延出して、インパクトバー(ロアインパクトバー31)に固定するという簡単な形状で、上記効果を確保することができる。
【0068】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記第1接合部43と上記第2接合部44とが切換わる上下位置は、上記ドアヒンジ16の締結部間(締結ボルト45,45間参照)に設けられたものである(
図8参照)。
この構成によれば、ドアヒンジ16の締結部(締結ボルト45による締結部参照)に入力される荷重の低減を図ることができる。
【0069】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記内側連結部42は、前後方向に延びる第1面部42aと、上記第1面部42aの前後方向において、ドア中央側に位置する端部から上記ドア内側面部24bに向けて車幅方向に延びる第2面部42bと、を備え、該内側連結部42と上記ドア本体部21との間に閉断面部47が形成されたものである(
図3、
図4参照)。
この構成によれば、上述の閉断面部47によりドア(フロントドア20参照)の変形を抑制することができる。
【0070】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記内側連結部42は前後方向に延びるビード48を備えるものである(
図5参照)。
この構成によれば、上記ドア内側面部24bを含むドアインナパネル24に対して、より一層側突荷重を伝達することができる。
【実施例2】
【0071】
図10は車両のドア構造の他の実施例を示す断面図である。
この実施例2においては先の実施例1に対して第1接合部43の構成が異なるものである。
当該実施例2の第1接合部43は、延出部43aと、縦壁43bと、フランジ部43cと、を備えている。
【0072】
上述の延出部43aは、補強面部41の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びている。
上述の縦壁43bは、上記延出部43aのドア中央側端部から車幅方向外側に延びている。
上述のフランジ部43cは、上記縦壁43bの車外側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びて、インパクトバーであるロアインパクトバー31に固定されている。
【0073】
図10で示す実施例2において、矢印xで示す側突荷重がドアアウタパネル25を介してロアインパクトバー31に入力すると、当該ロアインパクトバー31の前後方向中間部が車幅方向の内方へ曲げ変形される。
【0074】
この際、第1接合部43のフランジ部43cがロアインパクトバー31の変形に追従するので、フランジ部43cと当該フランジ部43cが接合された部位のロアインパクトバー31にはモーメントmが発生する。
【0075】
このため、ロアインパクトバー31は前後方向においてドア中央に近づく矢印t方向に引き摺られ、これにより、第2接合部44に対してせん断荷重sが入力され、当該第2接合部44の剥離が抑制される。
この結果、ヒンジレインフォースメント40に入力された側突荷重を、ドアヒンジ16を介して車体としてのヒンジピラー10に伝達することができる。
【0076】
このように、上記実施例2の第1接合部43は、上記補強面部41の車幅方向内側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びる延出部43aと、該延出部43aのドア中央側端部から車幅方向外側に延びる縦壁43bと、該縦壁43bの車外側端部から、前後方向に延びて上記インパクトバー(ロアインパクトバー31)に固定されるフランジ部43cと、を備えたものである(
図10参照)。
【0077】
この構成によれば、上述の延出部43aと、縦壁43bと、フランジ部43cとで上記第1接合部43を形成するので、当該第1接合部43の加工性向上を図ることができる。
なお、
図10において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0078】
図11は車両のドア構造のさらに他の実施例を示す断面図である。
この実施例3においては、先の実施例1、2に対して第1接合部43の構成が異なるものである。
当該実施例3の第1接合部43は、補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びて、ロアインパクトバー31に固定されている。
【0079】
詳しくは、上記補強面部41に対接し、締結ボルト45(前図参照)にて補強面部41と共締め固定される対接面部49を設け、この対接面部49の車外側端部から、前後方向において、ドア本体部21の中央に近づく方向に延びて、ロアインパクトバー31に固定される第1接合部43を設けたものである。
【0080】
上述の対接面部49と第1接合部43とを平面視でL字状に一体形成した部材は、補強面部41に対して別部材で構成したが、補強面部41を含むブラケット40Aと第1接合部43とは、押出し材にて一部品で構成してもよい。
しかも、上記第1接合部43は上記第2接合部44と略同じ高さに設けられている。
【0081】
図11で示す実施例3において、矢印xで示す側突荷重がドアアウタパネル25を介してロアインパクトバー31に入力すると、当該ロアインパクトバー31の前後方向中間部が車幅方向の内方へ曲げ変形される。
【0082】
この際、第1接合部43がロアインパクトバー31の変形に追従するので、第1接合部43と当該第1接合部43が接合された部位のロアインパクトバー31にはモーメントmが発生する。
【0083】
このため、ロアインパクトバー31は前後方向においてドア中央に近づく矢印t方向に引き摺られ、これにより、第2接合部44に対してせん断荷重sが入力され、当該第2接合部44の剥離が抑制される。
この結果、ヒンジレインフォースメント40に入力された側突荷重を、ドアヒンジ16を介して車体としてのヒンジピラー10に伝達することができる。
【0084】
このように、上記実施例3の第1接合部43は、上記補強面部41の車外側端部から、前後方向において、ドア中央に近づく方向に延びて、上記インパクトバー(ロアインパクトバー31)に固定され、当該第1接合部43は上記第2接合部44と略同じ高さに設けられたものである(
図11参照)。
【0085】
上記構成によれば、簡単な構成でありながら第1接合部43と第2接合部44とを同じ高さ位置に位置させることができ、ロアインパクトバー31の曲げ変形による第1接合部43のモーメントが第2接合部44により伝わりやすくなる。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のドアは、実施例のフロントドア20に対応し、
以下同様に、
ドア中央から離れる方向は、フロントドア20の矢印Fで示す車両前方に対応し、
ドア中央に近づく方向は、フロントドア20の矢印Rで示す車両後方に対応し、
インパクトバーは、ロアインパクトバー31に対応し、
ヒンジレインフォースメントは、上側のヒンジレインフォースメント40に対応し、
ドアヒンジは、上側のドアヒンジ16に対応し、
ドアヒンジの締結部間は、締結ボルト45,45間に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0087】
例えば、上記実施例においては車両のドア構造をフロントドア20に適用した場合について説明したが、当該車両のドア構造は観音開き構造のリヤドアにも適用することができる。この場合、ドア中央から離れる方向は車両後方となり、ドア中央に近づく方向は車両前方となる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、ドア本体部の内部において前後方向に延びて固定されるインパクトバーと、ドアヒンジブラケットが取付けられるドア本体部のドアヒンジ取付け面部に設けられるヒンジレインフォースメントと、を備えたような車両のドア構造について有用である。
【符号の説明】
【0089】
16…ドアヒンジ
20…フロントドア(ドア)
21…ドア本体部
24b…ドア内側面部
24c…ドアヒンジ取付け面部
24d…ドアフランジ部
31…ロアインパクトバー(インパクトバー)
40…ヒンジレインフォースメント
41…補強面部
42…内側連結部
42a…第1面部
42b…第2面部
43…第1接合部
43a…延出部
43b…縦壁
43c…フランジ部
44…第2接合部
47…閉断面部
48…ビード