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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】駆動装置および負荷駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240312BHJP
   F16H 59/02 20060101ALI20240312BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20240312BHJP
【FI】
B60R16/02 645C
F16H59/02
F16H61/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020147784
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042372
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽人
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】渥美 敬介
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-017246(JP,A)
【文献】特開2005-170111(JP,A)
【文献】特開2010-250502(JP,A)
【文献】特開2004-080223(JP,A)
【文献】特開2012-002350(JP,A)
【文献】特開2018-090220(JP,A)
【文献】特開2008-121835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
F16H 59/02
F16H 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対応する複数の半導体スイッチを制御することで、複数の前記負荷を駆動する駆動装置であって、
各負荷の駆動状態を指示する信号を含む制御信号の今回値が記憶された制御用記憶部(11)と、
前記制御信号の今回値に応じて複数の前記半導体スイッチを制御する駆動部(20)と、
各負荷の現在の駆動状態である現駆動状態を取得する取得部(10,81~84,90、91、92)と、
前記現駆動状態からの駆動遷移に相関する値であり、前記制御用記憶部に記憶された前記制御信号の今回値が異常であるか否かを判定するための遷移判定値が記憶された判定用記憶部(50)と、
前記制御用記憶部に記憶された前記制御信号の今回値に相関する各負荷の相関駆動状態と前記遷移判定値とを比較して、前記相関駆動状態と前記遷移判定値とが所定の対応関係を満たす場合に、前記制御信号の今回値が異常と判定する判定部(30、40)と、を備えている駆動装置。
【請求項2】
前記制御用記憶部は、前記制御信号の今回値に加えて、前記制御信号の前回値を記憶しており、
前記駆動部は、前記判定部にて異常と判定された場合、前記前回値に応じて複数の前記半導体スイッチを制御する請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
複数の前記負荷への電源状態を切り替える電源部(70)を、さらに備えており、
前記電源部は、前記判定部にて異常と判定されなかった場合に前記電源状態を給電状態とし、前記判定部にて異常と判定された場合に前記電源状態を遮断状態とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記判定用記憶部は、前記遷移判定値として、前記現駆動状態からの前記駆動遷移の禁止を示す禁止判定値が記憶されており、
前記判定部は、前記相関駆動状態が前記禁止判定値に含まれる場合に、所定の対応関係を満たしており、前記制御信号の今回値が異常と判定する請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記判定用記憶部は、前記遷移判定値として、前記現駆動状態からの前記駆動遷移の許可を示す許可判定値が記憶されており、
前記判定部は、前記相関駆動状態が前記許可判定値に含まれない場合に、所定の対応関係を満たしており、前記制御信号の今回値が異常と判定する請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記遷移判定値と、前記相関駆動状態として前記制御用記憶部に記憶された前記制御信号の今回値とを比較する請求項1~5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記遷移判定値と、前記相関駆動状態として前記取得部で取得された前記現駆動状態とを比較する請求項1~5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記判定用記憶部は、前記制御信号の今回値と前記遷移判定値とが関連付けられて記憶されており、
前記判定部は、前記制御信号に関連付けられた前記遷移判定値を前記判定用記憶部から取得する請求項1~7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記判定用記憶部は、前記現駆動状態と前記遷移判定値とが関連付けられて記憶されており、
前記判定部は、前記取得部で取得した前記現駆動状態に関連付けられた前記遷移判定値を前記判定用記憶部から取得する請求項1~7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
車両に搭載された複数の前記負荷を駆動するものであり、
前記取得部は、前記現駆動状態に加えて、前記車両の車両状態を取得し、
前記判定用記憶部は、前記遷移判定値として、前記現駆動状態と前記車両状態からの駆動遷移に相関する値であり、前記制御用記憶部に記憶された前記制御信号の今回値が異常であるか否かを判定するための値が記憶されている請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記判定部は、シーケンス回路と比較回路とを含んでいる請求項1~10のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
電子制御装置と駆動装置とを備えた負荷駆動システムであって、
前記電子制御装置は、複数の負荷それぞれの駆動状態を指示する信号を含む制御信号を送信するものであり、
前記駆動装置は、前記負荷に対応する複数の半導体スイッチを制御することで、複数の前記負荷を駆動するであって、
前記駆動装置は、
前記制御信号の今回値が記憶された制御用記憶部(11)と、
前記制御信号の今回値に応じて複数の前記半導体スイッチを制御する駆動部(20)と、
各負荷の現在の駆動状態である現駆動状態を取得する取得部(10,81~84,90、91、92)と、
前記現駆動状態からの駆動遷移に相関する値であり、前記制御用記憶部に記憶された前記制御信号の今回値が異常であるか否かを判定するための遷移判定値が記憶された判定用記憶部(50)と、
前記制御用記憶部に記憶された前記制御信号の今回値に相関する各負荷の相関駆動状態と前記遷移判定値とを比較して、前記相関駆動状態と前記遷移判定値とが所定の対応関係を満たす場合に、前記制御信号の今回値が異常と判定する判定部(30、40)と、を備えている負荷駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置および負荷駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動装置の一例として、特許文献1に開示されたドライバ回路がある。
【0003】
ドライバ回路は、マイコンとともにECUに搭載されている。ドライバ回路は、ドライバ、マイコン監視回路などを備えている。マイコン監視回路は、マイコンの動作が正常である場合、駆動許可指令をドライバへ入力し、マイコンの動作が異常である場合、駆動禁止指令をドライバへ入力する。ドライバは、駆動許可指令が入力される期間に負荷制御信号に応じて負荷を駆動し、駆動禁止指令が入力される期間に負荷の駆動を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-150884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、駆動装置は、負荷制御信号に異状が生じることもありうる。しかしながら、特許文献1のドライバ回路では、負荷制御信号の異常を判定できない。
【0006】
開示される一つの目的は、制御信号の異常を判定できる駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された駆動装置は、
負荷に対応する複数の半導体スイッチを制御することで、複数の負荷を駆動する駆動装置であって、
各負荷の駆動状態を指示する信号を含む制御信号の今回値が記憶された制御用記憶部(11)と、
制御信号の今回値に応じて複数の半導体スイッチを制御する駆動部(20)と、
各負荷の現在の駆動状態である現駆動状態を取得する取得部(10,81~84,90、91、92)と、
現駆動状態からの駆動遷移に相関する値であり、制御用記憶部に記憶された制御信号の今回値が異常であるか否かを判定するための遷移判定値が記憶された判定用記憶部(50)と、
制御用記憶部に記憶された制御信号の今回値に相関する各負荷の相関駆動状態と遷移判定値とを比較して、相関駆動状態と遷移判定値とが所定の対応関係を満たす場合に、制御信号の今回値が異常と判定する判定部(30、40)と、を備えている。
【0008】
このように、駆動装置は、現駆動状態からの駆動遷移に相関する値であり、制御用記憶部に記憶された制御信号の今回値が異常であるか否かを判定するための遷移判定値を記憶している。そして、駆動装置は、制御用記憶部に記憶された制御信号に相関する各負荷の相関駆動状態と遷移判定値とを比較することで、制御信号の今回値が異常であるか否かを判定できる。
【0009】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における駆動装置の概略構成を示す回路図である。
図2】第1実施形態における駆動IC部分の概略構成を示す回路部である。
図3】第1実施形態における通電パターンの概略構成を示すイメージ図である。
図4】第1実施形態における遷移禁止パターンの概略構成を示すイメージ図である。
図5】第1実施形態における制御レジスタの概略構成を示すイメージ図である。
図6】第1実施形態におけるモニタレジスタの概略構成を示すイメージ図である。
図7】第1実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態におけるシーケンス回路の動作を示すブロックである。
図9】第1実施形態における通電パターンのセット動作を示すイメージ図である。
図10】第1実施形態における制御パターン(前回値)のセット動作を示すイメージ図である。
図11】第1実施形態における制御パターン(更新値)のセット動作を示すイメージ図である。
図12】第1実施形態における遷移禁止パターンのセット動作を示すイメージ図である。
図13】変形例1における遷移禁止パターンを示すイメージ図である。
図14】変形例2における遷移禁止パターンを示すイメージ図である。
図15】第2実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図16】第3実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図17】第4実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図18】第5実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図19】第6実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図20】第7実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図21】第8実施形態における駆動装置の動作を示すフローチャートである。
図22】第9実施形態における駆動装置の概略構成を示す回路図である。
図23】第10実施形態における駆動装置の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
【0012】
(第1実施形態)
図1図12を用いて、本実施形態の駆動装置100に関して説明する。駆動装置100は、たとえば車両に搭載された負荷を駆動する回路に適用可能である。以下では、車両の自動変速機に適用される例について説明する。
【0013】
<自動変速機>
自動変速機の概略構成について説明する。自動変速機は、例えば、バルブボディ、変速機構、オイルポンプ、パーキングロック機構などを備えている。変速機構は、たとえばクラッチやブレーキ等からなる複数の摩擦要素を有している。変速機構は、各摩擦要素を選択的に係合することで、変速比を段階的に変更可能である。
【0014】
バルブボディ内には、変速機構に供給される作動油の圧力を調節する油圧回路が形成されている。バルブボディは、オイルポンプから圧送された作動油を調圧して摩擦要素に供給する複数のソレノイドバルブを有している。ソレノイドバルブは、ソレノイドを有している。ソレノイドは、コイルと称されることがある。ソレノイドへの通電を制御することで、作動油が調節される。
【0015】
ソレノイドバルブは、負荷に相当する。また、本実施形態では、後ほど説明するアクチュエータ401~40nとしてソレノイドバルブを採用している。よって、負荷への通電状態は、ソレノイドバルブ(ソレノイド)への通電状態と同意である。なお、ソレノイドバルブは、リニアソレノイドバルブを採用できる。
【0016】
パーキングロック機構は、パーキングレンジが選択されると、自動変速機の出力軸(車軸)の回転をロックするパーキングロックを行う。パーキングロックの状態からパーキングレンジ以外のシフトレンジが選択されると、パーキングロック機構は、パーキングロックを解除する。これにより、出力軸がアンロックされる。しかしながら、自動変速機は、上記構成に限定されない。
【0017】
<負荷駆動システム>
次に、図1を用いて、負荷駆動システムの概略構成について説明する。図1は、負荷駆動システムを示す図である。なお、図1では、アクチュエータ401~40nの通電経路を簡素化している。
【0018】
負荷駆動システムは、少なくとも駆動装置100とECU200とを備えている。負荷駆動システムは、アクチュエータ401~40nの通電駆動(駆動状態)を制御する。また、負荷駆動システムは、アクチュエータ401~40nを通電駆動することで、バルブボディを含む自動変速機を制御するともいえる。
【0019】
なお、nは、2以上の自然数である。本実施形態では、一例として、n=8を採用している。よって、本実施形態では、第1アクチュエータ401~第8アクチュエータ408を通電駆動する例を採用している。また、本実施形態では、第1アクチュエータ401~第8アクチュエータ408の駆動を制御することで、自動変速機を1速~5速、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジの間で切り替える例を採用している。なお、アクチュエータ401~408は、それぞれを特に区別する必要がない場合、アクチュエータ40nとも称する。
【0020】
しかしながら、本開示は、これらに限定されない。本開示は、複数のアクチュエータ40nの駆動を制御することで、自動変速機の変速を1速~5速の間で切り替えるものであっても採用できる。また、本開示は、例えば、複数のアクチュエータ40nの駆動を制御することで、自動変速機をPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジの間で切り替えるものであっても採用できる。さらに、アクチュエータ40nとしては、オンオフソレノイドバルブであっても採用できる。
【0021】
ECU200は、少なくとも一つのCPU、少なくとも一つの記憶装置などを有したマイコンを備えている。また、ECU200は、各種センサや他のECUなどが接続されている。記憶装置には、プログラムやデータなどが記憶されている。データは、予め記憶されたものや、センサから出力されたセンサ信号などである。なお、ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0022】
ECU200は、CPUがプログラムを実行する。CPUは、プログラムを実行することで、データを用いつつ各種演算処理を行う。ECU200は、演算処理の結果として負荷制御信号などを出力する。
【0023】
負荷駆動システムのうち、駆動装置100は、バルブボディ上に配置されている。つまり、駆動装置100は、自動変速機と機電一体構造をなしている。ECU200は、自動変速機とは機械的に分離されている。
【0024】
ECU200と駆動装置100は、銅線などで接続されている。本実施形態において、ECU200と駆動装置100は、SPI通信によって、データの送受信を行う。ECU200は、駆動装置100に対し負荷制御信号などを送信する。駆動装置100は、負荷制御信号を受信すると、負荷制御信号に応じて動作する。なお、駆動装置100の構成や動作に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0025】
図1図2に示すように、負荷駆動システムは、複数の駆動スイッチ301~30nを備えている。各駆動スイッチ301~30nは、各アクチュエータ40nの通電経路に個別に設けられている。よって、本実施形態では、一例として、第1駆動スイッチ301~第5駆動スイッチ308が設けられている例を採用する。駆動スイッチ301~308は、それぞれを特に区別する必要がない場合、駆動スイッチ30nとも称する。駆動スイッチ30nは、駆動装置100に設けられている。駆動スイッチ30nは、後ほど説明する駆動IC20に含まれていてもよい。
【0026】
駆動スイッチ30nのオンにより、対応するアクチュエータ40nに対して電流の供給がされる。駆動スイッチ30nのオフにより、対応するアクチュエータ40nに対する電流の供給が遮断される。言い換えると、各アクチュエータ40nは、対応する駆動スイッチ30nがオンすることで通電される。また、各アクチュエータ40nは、対応する駆動スイッチ30nがオフすることで非通電とされる。
【0027】
図1図2に示すように、負荷駆動システムは、給電スイッチ500を備えている。また、負荷駆動システムは、各種センサを備えていてもよい。しかしながら、負荷駆動システムは、給電スイッチ500およびセンサを備えず、給電スイッチ500およびセンサが負荷駆動システムの外に配置された構成としてもよい。
【0028】
給電スイッチ500は、アクチュエータ40nの通電経路に設けられている。給電スイッチ500は、例えばMOSFETなどの半導体スイッチを採用できる。複数のアクチュエータ401~408に対して、単一(共通)の給電スイッチ500が設けられている。給電スイッチ500のオンにより、各アクチュエータ40nに対して電流の供給が可能となる。給電スイッチ500のオフにより、各アクチュエータ40nに対する電流の供給が遮断される。給電スイッチ500は、アクチュエータ40nに対して、ハイサイド側、すなわち電源側に配置されてもよいし、ローサイド側、すなわちグランド(GND)側に配置されてもよい。本実施形態の給電スイッチ500は、ハイサイド側に配置されている。給電スイッチ500は、駆動装置100に設けられている。
【0029】
センサは、負荷の状態を示す信号を出力する。センサは、バルブボディを含む自動変速機の状態を検出するともいえる。本実施形態では、センサの一例として、回転センサ600(RS)を備えている例を採用している。回転センサ600は、たとえば自動変速機の入力側の回転数を示す信号を出力するセンサと、出力側の回転数を示す信号を出力するセンサを含む。
【0030】
また、センサとしては、油圧センサ、回転センサ、油温センサ、パーキングロックセンサなどをあげることができる。この点に関しては、他の実施形態で説明する。
【0031】
<駆動装置構成>
駆動装置100に関して説明する。図2では、便宜上、一つのアクチュエータ401に対応する箇所のみを図示している。
【0032】
駆動装置100は、複数のアクチュエータ401~408を通電駆動する回路である。また、駆動装置100は、複数の駆動スイッチ301~308を制御することで、複数のアクチュエータ401~408を通電駆動する。駆動装置100は、ECU200と異なり、マイコンを備えていない。つまり、駆動装置100は、ハードウェアロジックによって、複数のアクチュエータ401~408を通電駆動する。第1駆動スイッチ301~第8駆動スイッチ308のそれぞれは、半導体スイッチに相当する。
【0033】
駆動装置100は、主に、制御レジスタ11を含むSPI回路10と、駆動IC20と、第1比較器40と、ROM50とを備えている。さらに、駆動装置100は、シーケンス回路30、レジスタ部60、給電回路70、電流検出抵抗81、増幅器82、第2比較器83、モニタレジスタ84、波形解析回路90などを備えている。
【0034】
SPI回路10(SPIC)は、ECU200と接続されており、ECU200とシリアル通信を行う回路である。また、SPI回路10は、駆動IC20、シーケンス回路30などと接続されている。SPI回路10は、受信したシリアルデータをパラレルデータに変換する変換回路を有している。さらに。SPI回路10は、制御レジスタ11(CREG)を有している。なお、制御レジスタ11は、制御用記憶部に相当する。SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略称である。
【0035】
ECU200から送信されるシリアルデータとしては、アクチュエータ401~408を通電駆動するための負荷制御信号などをあげることができる。負荷制御信号は、制御信号に相当する。
【0036】
負荷制御信号は、各アクチュエータ401~408への通電状態(駆動状態)を指示する信号(値)を含んでいる。つまり、負荷制御信号は、各アクチュエータ401~408に個別に対応した通電状態を指示する信号を含んでいるともいえる。また、負荷制御信号は、各アクチュエータ401~408の駆動状態を指示する信号を含んでいるともいえる。
【0037】
負荷制御信号は、例えば、通電を指示する信号として1、非通電を指示する信号として0を含んでいる。よって、負荷制御信号は、0と1によって表すことができる。本実施形態では、一例として、8ビットの負荷制御信号を採用する。しかしながら、本開示は、これに限定されず、複数ビットの負荷制御信号であれば採用できる。
【0038】
図5に示すように、負荷制御信号は、パラレルデータに変換されて制御レジスタ11に格納される。パラレルデータに変換された負荷制御信号は、制御パターンとみなすことができる。よって、負荷制御信号は、制御パターンともいえる。また、制御パターンは、通電を指示する信号としての1、非通電を指示する信号としての0によって表すことができる。制御レジスタ11は、各アクチュエータ401~408に対応したアドレスのビット111~118を有している。制御レジスタ11は、負荷制御信号における各アクチュエータ401~408への駆動状態を指示する信号が、各アドレスのビットに書き込まれる。
【0039】
第1ビット111は、第1アクチュエータ401に対応している。第2ビット112は、第2アクチュエータ402に対応している。第3ビット113は、第3アクチュエータ403に対応している。第4ビット114は、第4アクチュエータ404に対応している。第5ビット115は、第5アクチュエータ405に対応している。第6ビット116は、第6アクチュエータ406に対応している。第7ビット117は、第7アクチュエータ407に対応している。第8ビット118は、第8アクチュエータ408に対応している。
【0040】
さらに、制御レジスタ11には、少なくとも、制御パターンの今回値が格納されている。また、制御レジスタ11は、制御パターンの今回値に加えて、制御パターンの前回値が書き込まれていてもよい。この場合、制御レジスタ11は、制御パターンの今回値を格納する領域と、制御パターンの前回値を格納する領域を備えている。制御パターンの今回値は、制御パターンの前回値が更新されるものである。よって、制御パターンの今回値は、制御パターンの更新値ともいえる。
【0041】
このように、SPI回路10は、制御パターンの前回値を取得する。このため、SPI回路10は、取得部に相当する。
【0042】
なお、本実施形態では、制御レジスタ11に記憶された制御パターンの更新値に相関する各アクチュエータ401~408の相関駆動状態として、制御パターンの更新値そのものを採用している。図5では、制御パターンの更新値として、1速を示す制御パターンが記憶されている例を示している。相関駆動状態は、駆動遷移後の駆動状態とみなすことができる。よって、相関駆動状態は、次駆動状態ともいえる。
【0043】
制御パターンは、各アクチュエータ40nの駆動状態に対応している。つまり、制御パターンの前回値は、各アクチュエータ40nの現在の駆動状態である現駆動状態に対応している。一方、制御パターンの今回値は、各アクチュエータ40nの駆動遷移後の駆動状態(次回駆動状態)に対応している。このため、各アクチュエータ40nは、制御パターンが前回値から更新値に切り替わることで駆動状態が遷移する。
【0044】
なお、図5では、一例として、制御パターンの更新値として11100100(1速)が書き込まれた状態の制御レジスタ11を採用している。また、制御パターンは、遷移判定値としての遷移禁止パターン52と比較される。よって、制御パターンは、比較パターンともいえる。また、遷移禁止パターン52は、判定用パターンともいえる。
【0045】
本実施形態では、一例として、SPI回路10で負荷制御信号を取得する例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず、CANプロトコルに準拠した通信回路で負荷制御信号を取得してもよい。この場合、駆動装置100は、通信バスでECU200と接続される。駆動装置100は、CAN通信で受信したメッセージに含まれている負荷制御信号を取得する。制御レジスタ11には、負荷制御信号における駆動状態を指示する信号が書き込まれる。なお、CANは、Controller Area Networkの略称である。CANは、登録商標である。
【0046】
さらに、本開示は、複数の端子のレベルによって負荷制御信号を取得してもよい。この場合、駆動装置100は、複数の銅線でECU200と接続される。駆動装置100は、負荷制御信号における駆動状態を指示する信号の数よりも多くの銅線を介してECU200と接続されている。駆動装置100は、複数の銅線が個別に接続された端子を備えている。そして、駆動装置100は、各端子のレベル(Hi、Low)を負荷制御信号として取得する。制御レジスタ11には、各端子のレベルに応じた信号が書き込まれる。
【0047】
図1図2に示すように、駆動IC20(DIC)は、複数の駆動スイッチ301~308と接続されている。駆動IC20は、制御パターンに応じて複数の駆動スイッチ301~308を制御する。つまり、駆動IC20は、制御レジスタ11に格納されている制御パターンに応じて、駆動スイッチ301~308をオンオフさせる駆動信号を出力する。また、駆動IC20は、制御レジスタ11に格納されている制御パターンに応じて、複数の駆動スイッチ301~308を選択的にオンオフする。駆動IC20は、駆動部に相当する。
【0048】
駆動信号としては、PWM信号を採用できる。この場合、駆動IC20は、PWM信号のデューティ比を変えることにより、アクチュエータ40nに流す電流(すなわち、通電電流)を変えることができる。PWMは、Pulse Width Modulationの略である。
【0049】
例えば制御パターンが11100100の場合、駆動IC20は、第1駆動スイッチ301~第3駆動スイッチ303、第6駆動スイッチ306をオンする。これによって、駆動IC20は、第1アクチュエータ401~第3アクチュエータ403、第6アクチュエータ406に通電する。また、このとき、駆動IC20は、第4駆動スイッチ304、第5駆動スイッチ305、第7駆動スイッチ307、第8駆動スイッチ308をオフする。これによって、駆動IC20は、第4アクチュエータ404、第5アクチュエータ405、第7アクチュエータ407、第8アクチュエータ408を非通電とする。
【0050】
図8に示すように、シーケンス回路30(SQC)は、第1データローダ31と第2データローダ32と第3データローダ33と第4データローダ34と第3比較器41などを備えている。また、シーケンス回路30は、複数のスイッチング素子などを備えている。シーケンス回路30は、クロックに同期して動作する。シーケンス回路30は、制御パターンと判定用パターンとを比較するために動作する。シーケンス回路30は、判定部に相当する。
【0051】
第1データローダ31は、図11に示すように、制御レジスタ11に記憶されている制御パターンの更新値を第1データレジスタ61に書き込む。つまり、第1データローダ31は、制御レジスタ11の更新値における各ビットの信号をロードして第1データレジスタ61の各ビットに書き込む。
【0052】
第2データローダ32は、図10に示すように、制御レジスタ11に記憶されている制御パターンの前回値を第2データレジスタ62に書き込む。つまり、第2データローダ32は、制御レジスタ11の前回値における各ビットの信号をロードして第2データレジスタ62の各ビットに書き込む。本実施形態では、制御パターンの前回値の一例として、01110100(4速)を採用している。
【0053】
第3データローダ33は、図9に示すように、ROM50の記憶されている複数の通電パターン51を順番に第3データレジスタ63に書き込む。つまり、第3データローダ33は、通電パターン51における各ビットの信号をロードして第3データレジスタ63の各ビットに書き込む。なお、通電パターン51に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0054】
第3比較器41は、第2データレジスタ62にセットされた制御パターンと、第3データレジスタ63にセットされた通電パターン51とを順番に比較する。第3比較器41は、複数の通電パターン51から制御パターンの前回値に一致する通電パターン51を選択する。これは、制御パターンの前回値に対応する遷移禁止パターン52を選択するためである。第3比較器41は、制御パターンの前回値に一致する通電パターン51を示す信号を出力する。
【0055】
なお、第3比較器41は、制御パターンの前回値が4速を示す制御パターンであることを検出するともいえる。また、第3比較器41は、制御パターンの前回値が示す駆動状態から、制御パターンの更新値が示す駆動状態への駆動遷移を判定するともいえる。
【0056】
第4データローダ34は、図12に示すように、ROM50の記憶されている遷移禁止パターン52を第4データレジスタ64に書き込む。第4データローダ34は、第3比較器41から出力された信号に対応する遷移禁止パターン52を第4データレジスタ64に書き込む。遷移禁止パターン52が複数ある場合、第4データローダ34は、遷移禁止パターン52を順番に第4データレジスタ64に書き込む。つまり、第4データローダ34は、遷移禁止パターン52における各ビットの信号をロードして第4データレジスタ64の各ビットに書き込む。このように、第4データローダ34は、制御パターンに関連付けられた遷移禁止パターン52をROM50から取得する。
【0057】
本実施形態では、判定用パターンとして遷移禁止パターン52を採用している。なお、遷移禁止パターン52は、遷移判定値および禁止判定値に相当する。遷移禁止パターン52に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0058】
第1比較器40(1CMP)は、コンパレータなどによって構成されている。第1比較器40は、遷移禁止パターン52と、制御パターンの更新値とを比較する。第1比較器40は、遷移禁止パターン52の各信号と制御パターンの各信号を順番に比較する。第1比較器40は、遷移禁止パターン52と制御パターンとを比較して、遷移禁止パターン52と制御パターンとが所定の対応関係を満たしているか否かを判定する。そして、第1比較器40は、所定の対応関係を満たしている場合に制御パターンの更新値が異常と判定する。第1比較器40は、判定部に相当する。
【0059】
このように、本実施形態では、遷移判定値として遷移禁止パターン52を採用している。よって、第1比較器40は、遷移禁止パターン52と制御パターンの更新値とが一致していた場合に、所定の対応関係を満たしていると判定する。また、遷移禁止パターン52と制御パターンの更新値とが一致している状態は、制御パターンの更新値が遷移禁止パターン52に含まれるともいえる。一方、第1比較器40は、遷移禁止パターン52と制御パターンの更新値とが不一致の場合に、所定の対応関係を満たしていないと判定する。
【0060】
遷移禁止パターン52と一致した制御パターンの更新値は、現駆動状態から禁止されている駆動状態への駆動遷移を指示する制御パターンとなる。このため、この制御パターンの更新値は、異常な制御パターンである。異常な制御パターンが制御レジスタ11に格納される原因は、ECU200での誤演算などをあげることができる。
【0061】
一方、遷移禁止パターン52と一致していない制御パターンの更新値は、現駆動状態から禁止されていない駆動状態への駆動遷移を指示する制御パターンとなる。このため、この制御パターンの更新値は、正常な制御パターンである。
【0062】
よって、第1比較器40は、遷移禁止パターン52と制御パターンの更新値とが一致した場合、制御パターンの更新値が異常と判定する。一方、第1比較器40は、遷移禁止パターン52と制御パターンの更新値とが一致しなかった場合、制御パターンの更新値が正常と判定する。
【0063】
また、第1比較器40は、一致した場合と不一致の場合とで出力信号が異なる。第1比較器40は、一致した場合、制御パターンが異常であることを示す異常信号を出力する。異常信号は、給電回路70とECU200の少なくとも一方に出力される。第1比較器40は、一致しなかった場合、制御パターンが正常であることを示す正常信号を出力する。正常信号は、駆動IC20などに出力される。
【0064】
第1比較器40は、異常信号を給電回路70に出力することで、アクチュエータ40nに対する電源のカットを指示するといえる。また、第1比較器40は、異常信号をECU200に出力することで、ECU200に異常を通知するといえる。
【0065】
第1比較器40は、上記のように、制御パターンの更新値が入力される。よって、本実施形態では、一例として、制御レジスタ11に記憶された制御パターンの更新値と、判定パターンとを比較する第1比較器40を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。
【0066】
ROM50は、通電パターン51(EZP)と遷移禁止パターン52(PHP)が記憶されている。ROM50は、通電パターン51が記憶された通電パターンメモリと、遷移禁止パターン52が記憶された遷移禁止パターンメモリとを有しているともいえる。ROM50は、判定用記憶部に相当する。
【0067】
図3に示すように、通電パターン51は、各アクチュエータ40nへの駆動状態として取りうる全駆動状態のそれぞれに対応した制御パターンである。よって、ROM50は、複数の通電パターン51を記憶している。また、各通電パターン51は、各アクチュエータ40nの駆動状態を指示する信号を含むものである。さらに、各通電パターン51は、自動変速機の各状態に相関するものである。制御パターンの前回値と制御パターンの更新値は、正常であれば、通電パターン51の一つとなる。
【0068】
図4に示すように、遷移禁止パターン52は、各アクチュエータ40nへの駆動状態を示す通電パターン51である。遷移禁止パターン52は、現駆動状態からの駆動遷移に相関する値である。遷移禁止パターン52は、制御パターンの更新値が異常であるか否かを判定するための判定値である。ROM50は、制御パターンと遷移禁止パターン52とが関連付けられて記憶されている。
【0069】
遷移禁止パターン52は、制御パターンの前回値が示す駆動状態からの駆動遷移が禁止されている駆動状態を示すものである。遷移禁止パターン52は、自動変速機として好ましくない動作となる駆動遷移を示す通電パターン51といえる。
【0070】
図4図12の例では、一例として、4速を示す制御パターンに関連付けられた遷移禁止パターン52を示している。自動変速機が4速の場合、1速へのシフトダウンは、意図しない急減速になる。また、Rレンジへのシフトチェンジは、意図しない逆速になる。そして、Pレンジへのシフトチェンジは、意図しないPロックになる。このため、4速に対応する制御パターンには、1速、Rレンジ、Pレンジのそれぞれに対応する通電パターンが遷移禁止パターンとして関連付けられている。遷移禁止パターン52は、制御パターンとは異なり、予めROM50に記憶されている。なお、図12では、各アクチュエータ401~408をACT1~ACT8と示している。
【0071】
ROM50は、各アクチュエータ401~408に対応したアドレスのビットを有している。ROM50は、遷移禁止パターン52における各アクチュエータ401~408への駆動状態を示す信号(値)が、各アドレスのビットに書き込まれている。本実施形態では、一例として、8ビットの制御パターンを採用している。よって、各遷移禁止パターン52は、制御パターンと同じ8ビットとなる。各遷移禁止パターン52は、通電を示す信号として1、非通電を示す信号として0を含んでいる。よって、各遷移禁止パターン52は、0と1によって表すことができる。
【0072】
レジスタ部60(REG)は、第1データレジスタ61(1REG)、第2データレジスタ62(2REG)、第3データレジスタ63(3REG)、第4データレジスタ64(4REG)を備えている。各データレジスタ61~64には、上記のように値がセットされる。
【0073】
図1図2に示すように、給電回路70(PSC)は、電源部に相当する。給電回路70は、給電スイッチ500のオンオフを切り替える回路である。給電回路70は、給電スイッチ500のオンオフによって、複数のアクチュエータ401~408への電源状態を切り替える。
【0074】
給電回路70は、例えば、第1比較器40から異常信号が入力されると、給電スイッチ500のオフを示す信号を出力する。つまり、給電回路70は、給電スイッチ500をオフして、各アクチュエータ40nに対する電源状態を遮断状態にする。また、給電回路70は、異常な制御パターンによって各アクチュエータ40nが駆動されることを防止するために、給電スイッチ500をオフするともいえる。なお、異常信号は、給電スイッチ500のオフを指示する信号ともいえる。一方、給電回路70は、制御パターンの更新値が正常の場合、給電スイッチ500をオンして、各アクチュエータ40nに対する電源状態を給電状態とする。
【0075】
電流検出抵抗81は、増幅器82とともに電流検出部を構成している。電流検出部は、各アクチュエータ40nに個別に設けられている。よって、本実施形態では、五つの電流検出部が駆動装置100に設けられている。図1では、代表例として、第1アクチュエータ401に対応する電流検出部のみを図示している。
【0076】
各電流検出部は、対応するアクチュエータ40n(ソレノイド)に実際に流れる電流を検出する。言い換えると、各電流検出部は、対応するアクチュエータ40nの駆動状態を検出する。また、各電流検出部は、各アクチュエータ40nへの通電状態をモニタするともいえる。
【0077】
なお、電流検出部は、電流検出抵抗81と増幅器82に加えて、増幅器82で増幅された電圧のノイズを除去するフィルタを備えていてもよい。フィルタは、例えば抵抗とコンデンサで構成することができる。
【0078】
電流検出抵抗81は、アクチュエータ401に直列に接続されている。電流検出抵抗81は、第1アクチュエータ401に対してグランド側(下流側)に設けられている。増幅器82は、電流検出抵抗81の両端に生じ、電流に比例する電圧を増幅する。よって、増幅器82は、第1アクチュエータ401に流れる電流に比例した電圧信号を出力する。このため、各電流検出部は、対応する各アクチュエータ40nに流れる電流に比例した電圧信号を出力する。
【0079】
第2比較器83(2CMP)は、コンパレータなどによって構成されている。第2比較器83は、各アクチュエータ40nに個別に設けられている。また、第2比較器83は、電流検出抵抗81および増幅器82とセットで設けられている。本実施形態では、八つの第2比較器83が駆動装置100に設けられている。図1では、代表例として、第1アクチュエータ401に対応する第2比較器83のみを図示している。
【0080】
第2比較器83は、増幅器82が出力する電圧信号と基準値とを比較する。第2比較器82は、電圧信号が基準値よりも高ければ正の値を出力し、電圧信号が基準値よりも低ければ負の値を出力する。つまり、第2比較器83は、各電流検出部がモニタした各アクチュエータ40nへの通電状態を示すモニタ結果を出力するともいえる。第2比較器83は、例えば、第1アクチュエータ401が通電されている場合は正の値を出力する。また、第2比較器83は、例えば、第1アクチュエータ401が通電されていない場合は負の値を出力する。
【0081】
図6に示すように、モニタレジスタ84(MREG)は、各第2比較器83の出力が書き込まれる。つまり、モニタレジスタ84には、各アクチュエータ40nへの通電状態をモニタした結果であるモニタパターンが記憶されるといえる。モニタパターンは、現駆動状態とみなせる。また、モニタパターンは、相関駆動状態とみなすこともできる。モニタレジスタ84は、モニタ用記憶部ともいえる。図6では、一例として、4速を示すモニタパターンが記憶されたモニタレジスタ84を採用している。
【0082】
このように、駆動装置100は、電流検出抵抗81、増幅器82、第2比較器83、モニタレジスタ84によって、各アクチュエータ40nの現駆動状態を取得することができる。本実施形態は、現駆動状態として、制御パターンの前回値のかわりに、モニタパターンを用いることもできる。これらの構成要素81~84は、取得部に相当する。しかしながら、本開示は、構成要素81~84を備えていなくてもよい。特に、モニタレジスタ84は、設けられていなくてもよい。
【0083】
モニタレジスタ84は、各アクチュエータ401~408に対応したアドレスのビットを有している。モニタレジスタ84は、各アクチュエータ401~408への通電状態を示す信号(値)が、各アドレスのビットに書き込まれる。各アクチュエータ401~408への通電状態を示す信号は、各第2比較器83の出力である。
【0084】
モニタレジスタ84には、例えば、通電を示す信号として1、非通電を示す信号として0が書き込まれる。よって、モニタパターンは、0と1によって表すことができる。本実施形態では、一例として、8ビットの制御パターンを採用している。よって、モニタパターンは、制御パターンと同じ8ビットとなる。
【0085】
なお、モニタレジスタ84の第1ビット841は、第1アクチュエータ401に対応している。同様に、第2ビット842~第8ビット848のそれぞれは、第2アクチュエータ402~第8アクチュエータ408のそれぞれに対応している。
【0086】
モニタパターンは、各アクチュエータ40nへの通電状態をモニタした結果である。このため、モニタパターンと制御パターンは、ともに異常がない場合、同じパターンとなる。例えば、制御パターンが01110100の場合、モニタパターンは、01110100となる。しかしながら、モニタパターンと制御パターンの少なくとも一方が異常の場合、モニタパターンと制御パターンは、異なるパターンとなる。
【0087】
波形解析回路90は、回転センサ600の出力である回転センサ信号が入力される。波形解析回路90は、回転センサ信号[pls/s]に基づいて車速を判定する。波形解析回路90は、例えば、車速が高速、低速、0(停車)のいずれであるかを判定する。
【0088】
波形解析回路90は、回転センサ信号が予め決められた閾値に達した場合に高速と判定する。また、波形解析回路90は、回転センサ信号が予め決められた閾値に達しておらず、かつ、0でない場合に低速と判定する。そして、波形解析回路90は、回転センサ信号が0の場合に停車と判定する。
【0089】
よって、車速は、各アクチュエータ40nの現駆動状態とみなせる。よって、波形解析回路90は、取得部に相当する。しかしながら、本開示は、波形解析回路90を備えていなくてもよい。
【0090】
<駆動装置動作>
駆動装置100の動作に関して説明する。駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図7のフローチャートに示す動作を開始する。なお、このとき、給電回路70は、給電スイッチ500のオンを示す信号を出力しているものとする。つまり、各アクチュエータ40nは、電流の供給が可能となっている。
【0091】
ステップS10aでは、遷移禁止パターンをセットする。第2データローダ32、第3データローダ33、第4データローダ34は、上記のように、制御パターンの前回値に対応する遷移禁止パターン52をROM50から選択して、第4データレジスタ64にセットする。
【0092】
なお、ROM50に複数の遷移禁止パターン52が記憶されている場合、第4データローダ34は、ROM50の記憶されている遷移禁止パターン52を順番に第4データレジスタ64に書き込む。また、第4データローダ34は、第4データレジスタ64に書き込んだ遷移禁止パターン52が第1比較器40に出力されると、次の遷移禁止パターン52を第4データレジスタ64に書き込む。
【0093】
ステップS11では、負荷制御信号をセットする。第1データローダ31は、上記のように、制御レジスタ11から負荷制御信号である制御パターンの更新値をロードする。そして、第1データローダ31は、ロードした制御パターンの更新値を第1データレジスタ61にセットする。制御パターンは、第1データレジスタ61にセットされると、第1比較器40に出力される。
【0094】
ステップS12aでは、受信信号と遷移禁止パターンを比較する。受信信号は、制御パターンの更新値である。第1比較器40は、第1データレジスタ61にセットされた制御パターンの更新値と、第4データレジスタ64にセットされた遷移禁止パターン52とを比較する。ROM50に複数の遷移禁止パターン52が記憶されている場合、第1比較器40は、制御パターンの更新値と各遷移禁止パターン52とを順番に比較する。これによって、第1比較器40は、制御パターンの更新値と全遷移禁止パターン52とを比較する。
【0095】
第1比較器40は、制御パターンの更新値と全遷移禁止パターン52とが不一致の場合、ステップS13へ進む。この場合、制御パターンの更新値は、正常であるとみなせる。
【0096】
一方、第1比較器40は、制御パターンの更新値と遷移禁止パターン52とが一致した場合、ステップS14へ進む。つまり、第1比較器40は、遷移禁止パターン52の一つでも制御パターンの更新値と一致した場合、ステップS14へ進む。この場合、制御パターンの更新値は、異常であるとみなせる。
【0097】
本実施形態では、制御パターンの更新値として11100100を採用している。また、本実施形態では、遷移禁止パターン52として、図4図12に示す三つを採用している。よって、この制御パターンの更新値は、三つ目の遷移禁止パターン52と一致する。このため、第1比較器40は、制御パターンの更新値と遷移禁止パターン52とが一致と判定することになる。
【0098】
ステップS13では、負荷制御信号通りに通電する。第1比較器40は、制御パターンの更新値が正常であることを示す正常信号を出力する。駆動IC20は、正常信号が入力されると、負荷制御信号通りにアクチュエータ40nに通電する。つまり、駆動IC20は、制御レジスタ11に格納された制御パターンの更新値に従って、駆動スイッチ301~308を選択的にオンオフさせる。これによって、駆動IC20は、アクチュエータ40nを選択的に通電する。
【0099】
ステップS14では、異常を通知する。第1比較器40は、制御パターンの更新値が異常であることを示す異常信号をECU200に出力する。これによって、第1比較器40は、ECU200に異常を通知する。
【0100】
ステップS15では、電源をカットする。第1比較器40は、制御パターンの更新値が異常であることを示す異常信号を給電回路70に出力する。第1比較器40は、異常信号を給電回路70に出力することで、アクチュエータ40nに対する電源のカットを指示する。給電回路70は、異常信号が入力されると給電スイッチ500をオフして、各アクチュエータ40nに対する電流の供給を遮断する。これによって、駆動装置100は、異常である制御パターンでアクチュエータ40nを駆動することを防止できる。
【0101】
なお、本開示は、ステップS14とステップS15の少なくとも一方を行うものであればよい。
【0102】
また、第1比較器40は、異常信号を給電回路70に出力せず、駆動IC20に出力してもよい。この場合、駆動IC20は、制御パターンの前回値に従って、駆動スイッチ301~308を選択的にオンオフさせる。これによって、駆動IC20は、アクチュエータ40nを選択的に通電する。
【0103】
<効果>
このように、駆動装置100は、遷移禁止パターン52を記憶している。そして、駆動装置100は、制御パターンの更新値と遷移禁止パターン52とを比較することで、制御パターンの更新値が異常であるか否かを判定できる。
【0104】
判定用パターンとしては、制御パターンの前回値が示す駆動状態からの駆動遷移が許可されている駆動状態を示す遷移許可パターンを採用することもできる。しかしながら、駆動装置100は、判定用パターンとして、遷移禁止パターン52をROM50に記憶している。遷移禁止パターン52は、遷移許可パターンよりもパターン数が少ない。よって、駆動装置100は、ROM50における判定用パターンが占める容量を少なくすることができる。
【0105】
駆動装置100は、ECU200と異なりマイコンを備えていない。このため、駆動装置100は、マイコンを備えた構成よりも体格を小型化できる。また、駆動装置100は、マイコンを備えた構成よりも消費電力および発熱を低減できる。これによって、駆動装置100は、マイコンを備えた構成よりも、体格および発熱に伴う搭載性における制約を少なくできる。つまり、駆動装置100は、マイコンを備えた構成よりも、搭載自由度を向上できる。さらに、駆動装置100は、マイコンを備えた構成よりも、機能安全およびセキュリティの対応を低減することができる。なお、駆動装置100は、アクチュエータ40nの直近に配置することができ、ワイヤーハーネスの削減及び搭載性の向上ができる。
【0106】
なお、遷移禁止パターン52、および、遷移禁止パターン52の比較対象は、上記に限定されない。例えば、図13の変形例1に示すように、遷移禁止パターン52の比較対象は、制御パターンの前回値と更新値を並べた遷移パターンを採用できる。この場合、遷移禁止パターン52は、制御パターンの前回値と、前回値が示す駆動状態からの駆動遷移が禁止されている駆動状態を示す通電パターンとを並べたもの採用できる。第1比較器40は、遷移パターンと、遷移禁止パターン52とを比較する。
【0107】
図13の例では、一例として、制御パターンの前回値として4速を示す制御パターンと更新値として1速を示す制御パターンを並べた遷移パターンを示している。この場合、遷移禁止パターン52は、4速を示す制御パターンとPレンジを示す制御パターンを並べたもの、4速を示す制御パターンとRレンジを示す制御パターンを並べたもの、4速を示す制御パターンと1速を示す制御パターンを並べたものを採用する。
【0108】
また、遷移禁止パターン52、および、遷移禁止パターン52の比較対象は、識別子に変換されたものであっても採用できる。例えば、図14の変形例2に示すように、制御パターン(更新値、前回値)および遷移禁止パターン52は、4ビットの識別子に変換したものを採用する。第1比較器40は、制御パターンの更新値が変換された識別子と、遷移禁止パターン52が変換された識別子とを比較する。
【0109】
なお、変形例1と変形例2を組み合わせて実施することもできる。この場合、遷移パターンは、制御パターンの前回値が変換された識別子と、更新値が変換された識別子が並べられたものとなる。同様に、遷移禁止パターン52は、制御パターンの前回値が変換された識別子と、前回値が示す駆動状態からの駆動遷移が禁止されている駆動状態を示す通電パターンが変換された識別子が並べられたものとなる。
【0110】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。以下に、本開示のその他の形態として、第2~第10実施形態に関して説明する。上記実施形態および第2~第10実施形態は、それぞれ単独で実施することも可能であるが、適宜組み合わせて実施することも可能である。本開示は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【0111】
(第2実施形態)
図15を用いて、第2実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態では、主に、先行して説明した実施形態と異なる箇所に関して説明する。先行して説明した実施形態と同様に箇所に関しては、適宜採用することができる。この点は、下記の各実施形態でも同様である。
【0112】
本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。本実施形態は、遷移禁止パターン52のかわりに、遷移許可パターンを用いる点が第1実施形態と異なる。
【0113】
ROM50は、通電パターン51と遷移許可パターンが記憶されている。ROM50は、通電パターン51が記憶された通電パターンメモリと、遷移許可パターンが記憶された遷移許可パターンメモリとを有しているともいえる。ROM50は、判定用記憶部に相当する。
【0114】
遷移許可パターンは、各アクチュエータ40nへの駆動状態を示す通電パターンである。遷移許可パターンは、現駆動状態からの駆動遷移に相関する値である。遷移許可パターンは、制御パターンの更新値が異常であるか否かを判定するための判定値である。ROM50は、制御パターンと遷移許可パターンとが関連付けられて記憶されている。
【0115】
遷移許可パターンは、制御パターンの前回値が示す駆動状態からの駆動遷移が許可されている駆動状態を示すものである。遷移許可パターンは、現駆動状態からの駆動遷移許可を示すものといえる。遷移許可パターンは、自動変速機として許容される動作となる駆動遷移を示す通電パターンといえる。遷移許可パターンは、遷移判定値、許可判定値に相当する。
【0116】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図15のフローチャートに示す動作を開始する。なお、図15では、図7と同じ処理に同じステップ番号を付与している。
【0117】
ステップS10bでは、遷移許可パターンをセットする。シーケンス回路30は、遷移禁止パターン52をセットするのと同様に、遷移許可パターンを第4レジスタ64にセットする。つまり、シーケンス回路30は、制御パターンの前回値に対応する遷移許可パターンをROM50から選択して、第4データレジスタ64にセットする。
【0118】
ステップS12bは、受信信号と遷移許可パターンを比較する。受信信号は、制御パターンの更新値に相当する。第1比較器40は、第1データレジスタ61にセットされた制御パターンの更新値と、第4データレジスタ64にセットされた遷移許可パターンとを比較する(判定部)。ROM50に複数の遷移許可パターンが記憶されている場合は、上記実施形態と同様に比較する。
【0119】
第1比較器40は、制御パターンの更新値と少なくとも一つの遷移許可パターンとが一致した場合、ステップS13へ進む。この場合、制御パターンの更新値は、正常であるとみなせる。このように、第1比較器40は、制御パターンの更新値と少なくとも一つの遷移許可パターンとが一致する場合に、所定の対応関係を満たしていないと判定する。
【0120】
一方、第1比較器40は、制御パターンの更新値と全遷移許可パターンとが不一致の場合、ステップS14へ進む。この場合、制御パターンの更新値は、異常であるとみなせる。このように、第1比較器40は、制御パターンの更新値と全遷移許可パターンとが不一致の場合に、所定の対応関係を満たしていると判定する。また、遷移許可パターンと制御パターンの更新値とが不一致の状態は、制御パターンの更新値が遷移許可パターンに含まれないともいえる。
【0121】
第2実施形態の駆動装置100は、第1実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0122】
(第3実施形態)
図16を用いて、第3実施形態の駆動装置100に関して説明する。例えば、本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。
【0123】
本実施形態は、現駆動状態として、制御パターンの前回値のかわりに、波形解析回路90で判定された車速を用いる点が第1実施形態と異なる。よって、本実施形態の駆動装置100は、波形解析回路90を備えている必要がある。
【0124】
遷移禁止パターン52は、現駆動状態である波形解析回路90で判定された車速に関連づけられて記憶されている。遷移禁止パターン52は、例えば0と1などで示される各車速を示す信号に関連付けて記憶されている。例えば、高速に関連付けられた遷移禁止パターン52は、1速、Pレンジ、Rレンジを示す通電パターンを採用する。低速に関連付けられた遷移禁止パターン52は、Pレンジ、Rレンジを示す通電パターンを採用する。停車に関連付けられた遷移禁止パターン52は、3速、4速を示す通電パターンを採用する。遷移禁止パターン52は、遷移判定値、禁止判定値に相当する。
【0125】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図16のフローチャートに示す動作を開始する。ステップS25は、ステップS11と同様である。ステップS26aは、ステップS12aと同様である。ステップS27~ステップS29は、ステップS13~S15と同様である。
【0126】
ステップS20では、回転センサ信号を受信する。波形解析回路90は、回転センサ600から回転センサ信号を受信する。
【0127】
ステップS21では、車速を判定する。波形解析回路90は、受信した回転センサ信号から車速を判定する。波形解析回路90は、高速と判定した場合はステップS22へ進み、低速と判定した場合はステップS23へ進み、停車と判定した場合はステップS24へ進む。
【0128】
ステップS22では、高速時の遷移禁止パターンをメモリからセットする。シーケンス回路30は、ROM50から高速に関連付けられた遷移禁止パターン52を第4レジスタ64にセットする。
【0129】
ステップS23では、低速時の遷移禁止パターンをメモリからセットする。シーケンス回路30は、ROM50から低速に関連付けられた遷移禁止パターン52を第4レジスタ64にセットする。
【0130】
ステップS24では、停車時の遷移禁止パターンをメモリからセットする。シーケンス回路30は、ROM50から停車に関連付けられた遷移禁止パターン52を第4レジスタ64にセットする。
【0131】
このように、シーケンス回路30は、波形解析回路90で取得した車速に関連付けられた遷移禁止パターン52をROM50から取得する。なお、ステップS22~S24でのメモリは、ROM50における遷移禁止パターンメモリといえる。
【0132】
第3実施形態の駆動装置100は、第1実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0133】
(第4実施形態)
図17を用いて、第4実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。本実施形態は、第3実施形態と同様、現駆動状態として、波形解析回路90で判定された車速を用いる。よって、本実施形態の駆動装置100は、波形解析回路90を備えている必要がある。また、本実施形態は、第2実施形態と同様、遷移判定値として遷移許可パターンを用いる。
【0134】
遷移許可パターンは、現駆動状態である波形解析回路90で判定された車速に関連づけられて記憶されている。遷移許可パターンは、例えば0と1などで示される各車速を示す信号に関連付けて記憶されている。高速に関連付けられた遷移許可パターンは、2速、3速、4速を示す通電パターンを採用する。低速に関連付けられた遷移許可パターンは、1速、2速、3速を示す通電パターンを採用する。停車に関連付けられた遷移許可パターンは、1速、2速、Pレンジ、Rレンジを示す通電パターンを採用する。遷移許可パターンは、遷移判定値、許可判定値に相当する。
【0135】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図17のフローチャートに示す動作を開始する。図17では、図16と同じ処理に同じステップ番号を付与している。なお。ステップS26bは、ステップS12bと同様である。
【0136】
ステップS22aでは、高速時の遷移許可パターンをメモリからセットする。シーケンス回路30は、ROM50から高速に関連付けられた遷移許可パターンを第4レジスタ64にセットする。
【0137】
ステップS23aでは、低速時の遷移許可パターンをメモリからセットする。シーケンス回路30は、ROM50から低速に関連付けられた遷移許可パターンを第4レジスタ64にセットする。
【0138】
ステップS24aでは、停車時の遷移許可パターンをメモリからセットする。シーケンス回路30は、ROM50から停車に関連付けられた遷移許可パターンを第4レジスタ64にセットする。
【0139】
このように、シーケンス回路30は、波形解析回路90で取得した車速に関連付けられた遷移許可パターンをROM50から取得する。なお、ステップS22a~S24aでのメモリは、ROM50における遷移許可パターンメモリといえる。
【0140】
第4実施形態の駆動装置100は、第1、第2、第3実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0141】
(第5実施形態)
図18を用いて、第5実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。本実施形態は、相関駆動状態として、制御パターンの更新値のかわりに、モニタレジスタ84に記憶されたモニタパターンを用いる点が第1実施形態と異なる。よって、本実施形態の駆動装置100は、電流検出抵抗81、増幅器82、第2比較器83、モニタレジスタ84を備えている必要がある。なお、本実施形態の遷移禁止パターン52は、第1実施形態のものと同様である。
【0142】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図18のフローチャートに示す動作を開始する。なお、図18では、図7と同じ処理に同じステップ番号を付与している。
【0143】
ステップS12cでは、制御を開始する。駆動IC20は、制御レジスタ11に記憶された制御パターンの更新値に従って、駆動スイッチ301~308を選択的にオンオフさせる。これによって、駆動IC20は、アクチュエータ40nを選択的に通電する。駆動IC20は、モニタパターンを取得するために、制御を行うとみなせる。
【0144】
ステップS12dでは、制御結果をモニタする。駆動装置100は、上記のように電流検出抵抗81、増幅器82、第2比較器83が動作することで、モニタレジスタ84にモニタパターンを記憶させる。
【0145】
ステップS12eでは、モニタ結果と遷移禁止パターンを比較する。モニタ結果は、モニタパターンに相当する。第1比較器40は、第1データレジスタ61にセットされたモニタパターンと、第4データレジスタ64にセットされた遷移禁止パターン52とを比較する。ROM50に複数の遷移禁止パターン52が記憶されている場合は、上記実施形態と同様に比較する。
【0146】
第1比較器40は、モニタパターンと全遷移禁止パターン52とが不一致の場合、ステップS13へ進む。この場合、モニタパターンは、正常であるとみなせる。また、モニタパターンが正常であることで、制御パターンの更新値が正常であるとみなせる。
【0147】
一方、第1比較器40は、モニタパターンと遷移禁止パターン52とが一致した場合、ステップS14へ進む。つまり、第1比較器40は、遷移禁止パターン52の一つでもモニタパターンと一致した場合、ステップS14へ進む。この場合、モニタパターンは、異常であるとみなせる。また、モニタパターンが異常であることで、制御パターンの更新値が異常であるとみなせる。
【0148】
第5実施形態の駆動装置100は、第1実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。また、自動変速機は、例えば、実際に4速からPレンジへの遷移が指示された場合でも、油圧の応答等で、すぐにPレンジに遷移しない。このため、駆動装置100は、制御パターンの更新値のかわりにモニタパターンを用いることができる。
【0149】
(第6実施形態)
図19を用いて、第6実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。本実施形態は、第5実施形態と同様、相関駆動状態として、制御パターンの更新値のかわりに、モニタレジスタ84に記憶されたモニタパターンを用いる。また、本実施形態は、第2実施形態と同様、遷移判定値として遷移許可パターンを用いる。
【0150】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図19のフローチャートに示す動作を開始する。なお、図19では、図7図15と同じ処理に同じステップ番号を付与している。また、ステップS12f、S12gは、ステップS12c、S12dと同様である。
【0151】
ステップS12hでは、モニタ結果と遷移許可パターンを比較する。モニタ結果は、モニタパターンに相当する。第1比較器40は、第1データレジスタ61にセットされたモニタパターンと、第4データレジスタ64にセットされた遷移許可パターンとを比較する。ROM50に複数の遷移許可パターンが記憶されている場合は、上記実施形態と同様に比較する。
【0152】
第1比較器40は、モニタパターンと少なくとも一つの遷移許可パターンとが一致した場合、ステップS13へ進む。この場合、モニタパターンは、正常であるとみなせる。このように、第1比較器40は、モニタパターンと少なくとも一つの遷移許可パターンとが一致する場合に、所定の対応関係を満たしていないと判定する。
【0153】
一方、第1比較器40は、モニタパターンと全遷移許可パターンとが不一致の場合、ステップS14へ進む。この場合、モニタパターンは、異常であるとみなせる。このように、第1比較器40は、モニタパターンと全遷移許可パターンとが不一致の場合に、所定の対応関係を満たしていると判定する。また、遷移許可パターンとモニタパターンとが不一致の状態は、モニタパターンが遷移許可パターンに含まれないともいえる。
【0154】
第6実施形態の駆動装置100は、第1、第2、第5実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0155】
(第7実施形態)
図20を用いて、第7実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。
【0156】
本実施形態は、第3実施形態と同様、現駆動状態として波形解析回路90で判定された車速を用いる。よって、本実施形態の駆動装置100は、波形解析回路90を備えている必要がある。なお、本実施形態の遷移禁止パターン52は、第3実施形態のものと同様である。
【0157】
また、本実施形態は、第5実施形態と同様、相関駆動状態としてモニタパターンを用いる。よって、本実施形態の駆動装置100は、電流検出抵抗81、増幅器82、第2比較器83、モニタレジスタ84を備えている必要がある。
【0158】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図20のフローチャートに示す動作を開始する。なお、図20では、図16図18と同じ処理に同じステップ番号を付与している。また、ステップS26c~S26eは、ステップS12c~S12eと同様である。
【0159】
第7実施形態の駆動装置100は、第1、第3、第5実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0160】
(第8実施形態)
図21を用いて、第8実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態の駆動装置100は、第1実施形態と構成が同じである。よって、本実施形態では、第1実施形態と同じ符号を用いる。
【0161】
本実施形態は、第4実施形態と同様、現駆動状態として波形解析回路90で判定された車速を用いる。よって、本実施形態の駆動装置100は、波形解析回路90を備えている必要がある。なお、本実施形態の遷移許可パターンは、第4実施形態のものと同様である。
【0162】
また、本実施形態は、第6実施形態と同様、相関駆動状態としてモニタパターンを用いる。よって、本実施形態の駆動装置100は、電流検出抵抗81、増幅器82、第2比較器83、モニタレジスタ84を備えている必要がある。
【0163】
駆動装置100は、負荷駆動信号を受信すると、図21のフローチャートに示す動作を開始する。なお、図21では、図17図19と同じ処理に同じステップ番号を付与している。また、ステップS26f~S26hは、ステップS12f~S12hと同様である。
【0164】
第8実施形態の駆動装置100は、第1、第4、第6実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0165】
(第9実施形態)
図22を用いて、第9実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態は、現駆動状態として、制御パターンの前回値のかわりに、センサ検出回路91の各検出結果を用いる点が第1実施形態と異なる。また、本実施形態の駆動装置100は、センサ検出回路91を備える点が第1実施形態の駆動装置100と異なる。センサ検出回路91は、センサ700が接続されている。
【0166】
本実施形態のセンサ700は、油圧センサ701(OPS)と、回転センサ702(RS)と、油温センサ703(OTS)を有している。油圧センサ701は、油圧回路における作動油の圧力を示す信号を出力する。回転センサ702は、自動変速機の回転数を示す信号を出力する。回転センサ702は、たとえば自動変速機の入力側の回転数を示す信号を出力するセンサと、出力側の回転数を示す信号を出力するセンサを含む。油温センサ703は、油圧回路における作動油の温度を示す信号を出力する。
【0167】
センサ検出回路91(SEND)は、センサ700の信号を検出する。センサ検出回路91は、センサ700からの入力信号に対して所定処理、たとえば波形検出、A/D変換などを行う。センサ検出回路91は、負荷の状態、すなわちバルブボディを含む自動変速機の状態を検出する。つまり、バルブボディを含む自動変速機の状態は、各アクチュエータ40nの現在の駆動状態である現駆動状態とみなせる。同様に、センサ検出回路91の各検出結果は、現駆動状態とみなせる。センサ検出回路91は、取得部に相当する。
【0168】
センサ検出回路91の各検出結果は、例えば0と1によって表すことができる。センサ検出回路91は、各検出結果をシーケンス回路30に出力する。また、センサ検出回路91は、各検出結果をモニタレジスタ84に書き込むようにしてもよい。
【0169】
ROM50には、各検出結果と遷移禁止パターン52とが関連付けられて記憶されている。また、ROM50には、遷移禁止パターン52のかわりに、遷移許可パターンが各検出結果と関連付けられて記憶されていてもよい。ここでは、一例として、遷移禁止パターン52を採用する。
【0170】
シーケンス回路30は、各検出結果に基づいて、現駆動状態を判定する。また、シーケンス回路30は、各検出結果に関連付けられた遷移禁止パターン52を第4データレジスタ64にセットする。
【0171】
第1比較器40は、上記実施形態と同様に、制御パターンの更新値またはモニタパターンと、遷移禁止パターン52とを比較する。第1比較器40は、制御パターンの更新値と遷移禁止パターン52とが一致した場合に異常と判定し、不一致の場合に正常と判定する。
【0172】
第8実施形態の駆動装置100は、第1実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【0173】
(第10実施形態)
図23を用いて、第10実施形態の駆動装置100に関して説明する。本実施形態では、便宜的に、第1実施形態と同じ符号を用いている。
【0174】
第10実施形態の駆動装置100は、シフトバイワイヤシステムにおけるモータ800を駆動制御する点が上記実施形態と異なる。よって、アクチュエータ401~403は、モータ800のU相巻き線、V相巻き線、W相巻き線に相当する。なお、本実施形態の給電スイッチ500は、半導体スイッチではなくメカリレーを採用することができる。
【0175】
本実施形態の駆動装置100は、センサ検出回路92を備える点が第1実施形態の駆動装置100と異なる。本実施形態は、現駆動状態として、制御パターンの前回値のかわりに、センサ検出回路92の各検出結果を用いる点が第1実施形態と異なる。本実施形態は、遷移判定値が、現駆動状態と車両状態からの駆動遷移に相関する値である点が第1実施形態と異なる。
【0176】
本実施形態は、負荷制御信号における各アクチュエータ401~403への駆動状態を指示する信号が制御レジスタ11の各アドレスのビットに書き込まれる点が第1実施形態と異なる。本実施形態では、制御レジスタ11に記憶された制御パターンの更新値に相関する各アクチュエータ401~403の相関駆動状態として、制御パターンの更新値そのものを採用している。
【0177】
シフトバイワイヤシステムは、モータ800のほかにも、パーキングロック(Pロック)機構やシフトレンジ切替機構などを備えている。モータ800は、図示しない車両に搭載されるバッテリから電力が供給されることで回転し、シフトレンジ切替機構の駆動源として機能する。モータ800は、給電スイッチ500のオンにより、各アクチュエータ40nに対して電流の供給が可能となる。給電スイッチ500のオフにより、各アクチュエータ40nに対する電流の供給が遮断される。
【0178】
制御パターンの更新値は、例えば、Pロックの解除などを示すものを採用できる。つまり、ECU200は、駆動装置100に対する負荷制御信号として、単にモータ800の回転を指示する信号だけではなく、Pロックの解除を指示する信号なども含まれる。
【0179】
本実施形態のセンサは、ブレーキスイッチ704、Pロックセンサ705を有している。ブレーキスイッチ704(BS)は、ブレーキペダルが踏み込まれた状態か、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態かを示す信号を出力する。また、ブレーキスイッチ704は、ブレーキペダルの踏み込み量に応じた信号を出力するものであってもよい。Pロックセンサ705(PLS)は、Pロックがロック状態か非ロック状態かを示す信号を出力する。
【0180】
センサ検出回路92(SEND)は、センサ700の信号を検出する。センサ検出回路92は、センサ700からの入力信号に対して所定処理、たとえば波形検出、A/D変換などを行う。センサ検出回路92は、負荷の状態、すなわちシフトバイワイヤシステムの状態を検出する。つまり、シフトバイワイヤシステムの状態は、各アクチュエータ40nの現在の駆動状態である現駆動状態とみなせる。同様に、センサ検出回路92の検出結果は、現駆動状態とみなせる。また、センサ検出回路92は、車両のブレーキペダルの踏み込み状態を検出する。車両のブレーキペダルの踏み込み状態は、車両状態とみなせる。センサ検出回路92は、取得部に相当する。
【0181】
センサ検出回路92の各検出結果は、例えば0と1によって表すことができる。センサ検出回路92は、各検出結果をシーケンス回路30に出力する。また、センサ検出回路92は、各検出結果をモニタレジスタ84に書き込むようにしてもよい。
【0182】
ROM50には、センサ検出回路92の各検出結果と遷移禁止パターン52とが関連付けられて記憶されている。つまり、遷移禁止パターン52は、現駆動状態と車両状態に関連付けられている。また、ROM50には、遷移禁止パターン52のかわりに、遷移許可パターンが各検出結果と関連付けられて記憶されていてもよい。ここでは、一例として、遷移禁止パターン52を採用する。
【0183】
シーケンス回路30は、各検出結果に基づいて、現駆動状態と車両状態を判定する。また、シーケンス回路30は、各検出結果に関連付けられた遷移禁止パターン52を第4データレジスタ64にセットする。遷移禁止パターン52は、例えば、Pロックがロック状態で、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態に対して、Pロックの解除を示す制御パターンの更新値などを採用できる。
【0184】
第1比較器40は、上記実施形態と同様に、制御パターンの更新値と、遷移禁止パターン52とを比較する。第1比較器40は、制御パターンの更新値と遷移禁止パターン52とが一致した場合に異常と判定し、不一致の場合に正常と判定する。
【0185】
第8実施形態の駆動装置100は、第1実施形態の駆動装置100と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0186】
10…SPI回路、11…制御レジスタ、20…駆動IC、30…シーケンス回路、40…第1比較器、50…ROM、51…通電パターン、52…遷移禁止パターン、60…レジスタ部、61…第1データレジスタ、62…第2データレジスタ、63…第3データレジスタ、64…第4データレジスタ、70…給電回路、81…電流検出抵抗、82…増幅器、83…第2比較器、84…モニタレジスタ、90…波形解析回路、91,92…センサ検出回路、100…駆動装置、200…ECU、301~30n…第1~第n駆動スイッチ、401~40n…第1~第nアクチュエータ、500…給電スイッチ、600…回転センサ、700…センサ、701…油圧センサ、702…回転センサ、703…油温センサ、704…ブレーキスイッチ、705…Pロックセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23