(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 24/50 20110101AFI20240312BHJP
H01R 13/42 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
H01R24/50
H01R13/42 J
(21)【出願番号】P 2020155135
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】窪田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】金村 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】山中 航
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113364(JP,A)
【文献】特開平09-106841(JP,A)
【文献】特開2019-114487(JP,A)
【文献】特開2020-087530(JP,A)
【文献】実公昭47-001786(JP,Y1)
【文献】米国特許第06551115(US,B1)
【文献】米国特許第05885113(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内導体端子と、前記内導体端子の外周を覆う外導体端子と、前記内導体端子と前記外導体端子との間に配置される誘電体と、を備え、
前記誘電体は、前後方向に貫通する貫通孔が形成された誘電体本体を有し、
前記貫通孔の後端は、前記誘電体本体の後面に開口しており、
前記内導体端子は、前記前後方向に延びて
前記貫通孔に配置される筒状の端子本体と、前記端子本体に設けられ且つ前記誘電体に係止される突起と、有し、
前記突起は、前後に間隔を置いて複数設けられ、
前後に間隔を置いて設けられる複数の前記突起のうち最も後ろに配置される前記突起である後側突起は、前記内導体端子の後端に露出し、後方に向かうにつれて前記端子本体の軸心から離れる方向に広がる形状をなし、
前記内導体端子が前記誘電体に係止された状態において、前記後側突起の後面は、前記誘電体本体の後面よりも後方に配置されるコネクタ。
【請求項2】
前記誘電体は、前記内導体端子が係止された状態において、
前記誘電体本体の後面よりも後方に、前記後側突起の後面と前記前後方向の位置が揃う基準面を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記後側突起は、前記端子本体の一部が径方向外方に突出した形態をなす請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記内導体端子は、前記端子本体の後端に連なり、且つ屈曲して前記端子本体の後側の開口を覆う屈曲部を有し、
前記後側突起は、背面視において、前記屈曲部を挟んだ両側に張り出して設けられる請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
複数の前記突起は、前記後側突起と、前記後側突起よりも前側に位置する前側突起と、を有し、
前記後側突起と前記前側突起とは、いずれも前記端子本体の左右方向外方に突出した形態をなし、
前記後側突起の前記左右方向の突出端は、前記前側突起の前記左右方向の突出端よりも前記左右方向外方に突出した位置にある請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、ハウジングの内部に端子を備えた構成をなすコネクタが開示されている。このコネクタの端子は、内導体端子と、内導体端子の接続部の外周を覆う外導体端子と、内導体端子および外導体端子の間に配置される誘電体と、を有している。
【0003】
特許文献1のコネクタでは、内導体端子の接続部が円筒状に形成されており、外導体端子における内導体端子の接続部を覆う部分も円筒状に形成されている。このため、内導体端子と外導体端子との間のインピーダンスが均等になる。この内導体端子における接続部の長さ方向の中央部には、左右一対の突起が設けられている。内導体端子は、誘電体の内部に後方から挿入されると、突起が誘電体の内周面に食い込み、誘電体に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-113364号公報
【文献】特開2012-138201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の内導体端子は、誘電体に係止された後、突起を支点として傾くおそれがある。内導体端子が傾くと、内導体端子と外導体端子との間のインピーダンスが変化する等のデメリットが生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、誘電体内において内導体端子が傾くことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、内導体端子と、前記内導体端子の外周を覆う外導体端子と、前記内導体端子と前記外導体端子との間に配置される誘電体と、を備え、前記内導体端子は、前後方向に延びる筒状の端子本体と、前記端子本体に設けられ且つ前記誘電体に係止される突起と、有し、前記突起は、前後に間隔を置いて複数設けられるコネクタである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、誘電体内において内導体端子が傾くことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るコネクタの側断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るコネクタの平断面図である。
【
図4】
図4は、誘電体に内導体端子が係止された状態の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)内導体端子と、前記内導体端子の外周を覆う外導体端子と、前記内導体端子と前記外導体端子との間に配置される誘電体と、を備え、前記内導体端子は、前後方向に延びる筒状の端子本体と、前記端子本体に設けられ且つ前記誘電体に係止される突起と、有し、前記突起は、前後に間隔を置いて複数設けられる。
【0011】
このコネクタによれば、内導体端子の端子本体が、誘電体に対し、前後に間隔を置いた複数個所で係止される。したがって、誘電体内において内導体端子が傾きにくくなる。
【0012】
(2)前後に間隔を置いて設けられる複数の前記突起のうち最も後ろに配置される前記突起である後側突起は、前記内導体端子の後端に露出していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、内導体端子の後端に露出した後側突起を治具等で後方から押して、内導体端子を誘電体の内部に圧入させることができる。つまり、後側突起を押圧面として機能させることができる。このため、後側突起とは別に押圧面を有する部位を形成する構成と比較して構成を簡素化することができる。
【0014】
(3)前記誘電体は、前記内導体端子が係止された状態において、前記後側突起の後面と前記前後方向の位置が揃う基準面を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、内導体端子を誘電体の内部に圧入して係止させる際、後側突起を押す治具の面が基準面に突き当たるまで治具を押すことで、内導体端子の圧入方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0016】
(4)前記後側突起は、前記端子本体の一部が径方向外方に突出した形態をなすことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、端子本体の一部を曲げ起こすことによって後側突起を形成することができるので、成形が容易である。
【0018】
(5)前記内導体端子は、前記端子本体の後端に連なり、且つ屈曲して前記端子本体の後側の開口を覆う屈曲部を有し、前記後側突起は、背面視において、前記屈曲部を挟んだ両側に張り出して設けられることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、屈曲部を挟んだ両側から後側突起を押すことができるので、内導体端子を誘電体の内部に圧入させる過程において、内導体端子の姿勢が安定しやすく圧入しやすい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
実施形態1は、基板90に設置されるコネクタ10を例示する。なお、以下の説明では、図示しない相手側端子が接続される側を前方側とし、その反対側を後方側とする。また、コネクタ10に対し、基板90が配置される側を下方側とし、その反対側を上方側とする。また、前方側から見た左右方向を左右方向とする。
【0022】
コネクタ10は、
図1および
図2に示すように、内導体端子11、誘電体12、外導体端子13、ハウジング14および取付部材15を備える。
【0023】
内導体端子11は、金属板を折り曲げ加工等して形成される。内導体端子11は、
図3に示すように、端子本体20を有する。端子本体20は、前後方向に長い筒状、詳細には円筒状をなしている。端子本体20は、前側突起21および後側突起22を有する。前側突起21および後側突起22は、「突起」の一例に相当する。前側突起21および後側突起22は、互いに前後に間隔を置いて、端子本体20に設けられる。前側突起21および後側突起22は、端子本体20の左右両側に設けられ、端子本体20の左右方向外方に突出した形態をなしている。
【0024】
前側突起21は、端子本体20の前後方向中央部に配置されている。端子本体20には、前側突起21の後側にスリット23が形成されている。前側突起21は、端子本体20におけるスリット23の前側を外側に曲げ起こして形成される。スリット23の前側の縁部は、前側突起21の後端となる。前側突起21は、後方に向かうにつれて端子本体20の軸心から離れる方向に広がる形状をなしている。
【0025】
後側突起22は、端子本体20の後端に配置されている。後側突起22は、端子本体20の後端の左右両側を曲げ起こして形成される。後側突起22は、後方に向かうにつれて端子本体20の軸心から離れる方向に広がる形状をなしている。後側突起22の左右方向の突出端は、前側突起21の左右方向の突出端よりも左右方向外方に突出している。後側突起22の後端は、端子本体20の後端の左右両側部を左右両側に弧状に湾曲させた形状になっている。前側突起21および後側突起22は、それぞれ誘電体12の内周面に係止される。
【0026】
内導体端子11は、タブ部24および誘い込み部25を有する。タブ部24は、端子本体20よりも前方に配置され、相手側端子に接続される。タブ部24は、端子本体20よりも外径が小さい円筒状をなしている。タブ部24の前端部は、前方に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ状をなしている。誘い込み部25は、タブ部24と端子本体20との間に配置され、タブ部24の後端と端子本体20の前端とに連なる。誘い込み部25は、前方に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ状をなしている。
【0027】
内導体端子11は、屈曲部31、角筒部32、基板接続部33および突出部35を有する。屈曲部31は、付け根が端子本体20の後端の上部に連なり、後方に延出し、直角に屈曲して下方に延びている。屈曲部31の左右方向の幅は、屈曲部31の延出方向に一定である。上述した後側突起22は、背面視において、屈曲部31を挟んだ左右両側に突出している(
図4参照)。
【0028】
角筒部32は、上下方向に開放された角筒状をなしている。角筒部32は、後板部32A、左右両側の側板部32Bおよび前板部32Cを有する。後板部32Aの上端は、屈曲部31の下端に連なる。左右方向において、後板部32Aの幅は、屈曲部31の幅よりも大きい。突出部35は、左右両側の側板部32Bの上端から上方に突出している。
【0029】
基板接続部33は、基板90の導電路に接続される部位である。基板接続部33は、角筒部32の後板部32Aの下端から下方に延び、屈曲して後方に延びている。左右方向において、基板接続部33の幅は、後板部32Aの幅よりも小さい。
【0030】
誘電体12は、合成樹脂製である。誘電体12は、
図1および
図2に示すように、内導体端子11と外導体端子13との間に配置される。誘電体12は、誘電体本体40、第1壁部41、第2壁部42および張出部44を有する。誘電体本体40は、前後方向に開放された筒状、詳細には円筒状をなしている。第1壁部41は、誘電体本体40の後端の下部に連なり、角筒部32の前側を覆う。第2壁部42は、誘電体本体40および第1壁部41の後端に連なり、屈曲部31および角筒部32の上側および左右両側を覆う。張出部44は、第2壁部42の内側において、誘電体本体40の後面40Aの上部から後方に張り出している。張出部44の後面は、基準面45として構成されている。基準面45は、第2壁部42の後端よりも前方に凹むように配置されている。基準面45は、内導体端子11の後側突起22が誘電体12に係止された状態において、後側突起22の後面22Aと前後方向に揃う位置に配置される。基準面45の左右両端は、内導体端子11の屈曲部31の左右両端よりも左右方向外方に配置されている(
図4参照)。誘電体12は、内導体端子11の後面を覆っていない。つまり、内導体端子11の後側は、誘電体12の後面に露出している。
【0031】
誘電体本体40は、内導体端子11の端子本体20の外周を覆う。誘電体本体40には、前後に貫通した貫通孔40Bが形成されている。貫通孔40B内には、後方から挿入された端子本体20が配置される。貫通孔40Bの内周面には、端子本体20に設けられた前側突起21および後側突起22が係止される。前側突起21は、誘電体本体40の前後方向中央部に配置される。後側突起22は、誘電体本体40の後端部に配置される。後側突起22の後端は、誘電体本体40の後面40Aよりも後方に配置される。
【0032】
外導体端子13は、内導体端子11の外周を覆う部位であり、導電性の金属板を曲げ加工などして一体に形成される。外導体端子13は、外導体端子本体50、第1グランド接続部51、第2グランド接続部52、内側係止部53、外側係止部54および規制部55を有する。外導体端子本体50は、前後方向に開放された筒状、詳細には円筒状をなしている。外導体端子本体50は、誘電体12の誘電体本体40を介して内導体端子11の端子本体20の外周を覆う。第1グランド接続部51および第2グランド接続部52は、それぞれ基板90のグランド導電路に接続される。内側係止部53、外導体端子本体50の内側に突出している。内側係止部53は、外導体端子本体50の内部に後方から挿入された誘電体12の誘電体本体40に係止される。外側係止部54は、外導体端子本体50の外側に突出している。規制部55は、外側係止部54よりも後方において、外導体端子本体50の外側に突出している。
【0033】
ハウジング14は、合成樹脂製である。ハウジング14は、取付部60およびフード部61を有する。取付部60には、外導体端子13が取り付けられる。取付部60には、取付部60を前後方向に貫通した取付孔62が形成されている。取付孔62には、内部に後方から外導体端子13が挿入されて取り付けられる。詳細には、取付孔62の内周面に、外導体端子13の外側係止部54が係止される。外導体端子13の規制部55が取付部60の後面に突き当たることで、外導体端子13の前方への変位が規制される。フード部61は、取付部60の外周から前方に突出した筒状、詳細には角筒状をなしている。フード部61の内部は、前方に開放されている。ハウジング14の左右両側には、装着溝63が形成されている。装着溝63の各々には、金属製の取付部材15が装着される。コネクタ10は、取付部材15を介して基板90に取り付けられる。
【0034】
次に、コネクタ10の作用および効果について説明する。
コネクタ10では、内導体端子11の端子本体20が、誘電体12の貫通孔40Bに後方から挿入される。そして、端子本体20に設けられた前側突起21および後側突起22がそれぞれ貫通孔40Bの内周面に係止される。前側突起21および後側突起22は、誘電体12に対し、互いに同一の高さ位置で係止される。これにより、端子本体20が、誘電体12に対し、前後に間隔を置いた2カ所で係止される。したがって、誘電体12内において、内導体端子11が前側突起21または後側突起22を支点として傾きにくくなる。
【0035】
さらに、後側突起22の後面22Aは、内導体端子11の後端に露出している。このため、後側突起22の後面22Aを治具等で後方から押して、内導体端子11を誘電体12の内部に圧入させることができる。つまり、後側突起22の後面22Aを押圧面として機能させることができる。このため、後側突起22とは別に押圧面を有する部位を形成する構成と比較して構成を簡素化することができる。
【0036】
さらに、誘電体12は、内導体端子11が係止された状態において、後側突起22の後面22Aと前後方向の位置が揃う基準面45を有している。このため、内導体端子11を誘電体12の内部に圧入して係止させる際、後側突起22を押す治具の面が基準面45に突き当たるまで治具を押すことで、内導体端子11の圧入方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0037】
さらに、後側突起22は、端子本体20の一部が径方向外方に突出した形態をなしている。この構成によれば、端子本体20の一部を曲げ起こすことによって後側突起22を形成することができるので、成形が容易である。
【0038】
さらに、内導体端子11は、端子本体20の後端に連なり、且つ屈曲して端子本体20の後側の開口を覆う屈曲部31を有している。そして、後側突起22は、屈曲部31を挟んだ両側に張り出して設けられている。この構成によれば、屈曲部31を挟んだ両側から後側突起22を押すことができるので、内導体端子11を誘電体12の内部に圧入させる過程において、内導体端子11の姿勢が安定しやすく圧入しやすい。
【0039】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態1では、突起が端子本体の前後2か所に設けられる構成としたが、3か所以上に設けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…コネクタ
11…内導体端子
12…誘電体
13…外導体端子
14…ハウジング
15…取付部材
20…端子本体
21…前側突起(突起)
22…後側突起(突起)
22A…後側突起の後面
23…スリット
24…タブ部
25…誘い込み部
31…屈曲部
32…角筒部
32A…後板部
32B…側板部
32C…前板部
33…基板接続部
35…突出部
40…誘電体本体
40A…誘電体本体の後面
40B…貫通孔
41…第1壁部
42…第2壁部
44…張出部
45…基準面
50…外導体端子本体
51…第1グランド接続部
52…第2グランド接続部
53…内側係止部
54…外側係止部
55…規制部
60…取付部
61…フード部
62…取付孔
63…装着溝
90…基板