(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】溶断検知装置、溶断検知方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/74 20200101AFI20240312BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01R31/74
B60R16/02 635
(21)【出願番号】P 2020157027
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】澤野 峻一
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525210(JP,A)
【文献】特表2002-529904(JP,A)
【文献】特開平5-30634(JP,A)
【文献】特開2020-89138(JP,A)
【文献】特開平4-77681(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007054297(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/74
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかを検知する溶断検知装置であって、
前記複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、
前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗と、
処理を実行する処理部と
を備え、
前記処理部は、
前記回路スイッチのオンへの切替えを指示し、
前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得し、
取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する
溶断検知装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記回路スイッチがオンである状態で前記抵抗電圧の検出値を経時的に取得し、
取得した複数の検出値に基づいて前記抵抗電圧の時定数を決定し、
決定した時定数に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する
請求項1に記載の溶断検知装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記複数の検出値の取得中に前記直流電源の電源電圧が変化したか否かを判定する
請求項2に記載の溶断検知装置。
【請求項4】
前記処理部は、
取得した複数の検出値を、前記抵抗電圧の複数の検出値と、前記抵抗電圧の時定数との関係を学習した学習済みモデルに入力し、
前記学習済みモデルの出力に基づいて前記抵抗電圧の時定数を決定する
請求項2又は請求項3に記載の溶断検知装置。
【請求項5】
前記処理部は、
前記直流電源の電源電圧値を取得し、
前記回路スイッチがオンに切替わってから所定時間が経過した時点の前記抵抗電圧の検出値を取得し、
取得した電源電圧値及び検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する
請求項1に記載の溶断検知装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示してから前記所定時間が経過するまでに前記直流電源の電源電圧が変化したか否かを判定する
請求項5に記載の溶断検知装置。
【請求項7】
前記直流電源の一端にアノードが接続されるダイオードと、
前記ダイオードのカソードから出力された電流が流れる放電スイッチ及び放電抵抗と
を備え、
前記放電スイッチがオンである場合、電流は、前記キャパシタの一端から前記ヒューズ、ダイオード、前記放電抵抗及び前記キャパシタの他端の順に流れる
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の溶断検知装置。
【請求項8】
前記複数のヒューズそれぞれの下流側の一端にアノードが接続される複数のダイオードと、
複数のダイオードのカソードから出力された電流が流れる放電スイッチ及び放電抵抗と
を備え、
前記放電スイッチがオンである場合、電流は、前記キャパシタの一端から前記ダイオード、前記放電抵抗及び前記キャパシタの他端の順に流れる
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の溶断検知装置。
【請求項9】
前記処理部は、取得した検出値がゼロVを示すか否かに基づいて、前記複数のヒューズの全てが溶断されているか否かを判定する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溶断検知装置。
【請求項10】
直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗とを含む回路にて、前記複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかをコンピュータが検知する溶断検知方法であって、
前記コンピュータは、
前記回路スイッチのオンへの切替えを指示するステップと、
前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得するステップと、
取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知するステップと
を実行する溶断検知方法。
【請求項11】
直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗とを含む回路にて、前記複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかを検知するコンピュータプログラムであって、
前記回路スイッチのオンへの切替えを指示するステップと、
前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得するステップと、
取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶断検知装置、溶断検知方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、直流電源から負荷に電力を供給する電源システム(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載の電源システムでは、直流電源の正極から負荷に流れる電流の電流経路にヒューズが配置されている。負荷は車両に搭載される電気機器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源システムの1つとして、直流電源が複数の負荷に電力を供給する電源システムがある。この電源システムでは、直流電源の正極から分流された複数の電流の電流経路それぞれにヒューズが配置されている。負荷の数、即ち、ヒューズの数が多い電源システムでは、通常、各負荷に対応するヒューズが把握されていない場合が多い。また、1つの負荷が作動しない場合、負荷が作動しない理由の1つとして、負荷への電流経路に配置されたヒューズの溶断が考えられる。
【0005】
ヒューズの数が多い場合において、1つの負荷が作動しないとき、例えば、車両のディーラーは、複数のヒューズそれぞれについて、溶断が発生しているか否かを確認する必要がある。ディーラーは、例えば、テスタを用いて、ヒューズの両端間の電圧を測定することによって、ヒューズが溶断しているか否かを確認することができる。しかしながら、ディーラーが、複数のヒューズそれぞれについて、溶断が発生しているか否かを確認するためにかかる時間は長く、効率が悪い。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のヒューズの中で溶断されたヒューズがあるかを適切に検知する溶断検知装置、溶断検知方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る溶断検知装置は、直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかを検知する溶断検知装置であって、前記複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗と、処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示し、前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得し、取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する。
【0008】
本開示の一態様に係る溶断検知方法は、直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗とを含む回路にて、前記複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかをコンピュータが検知する溶断検知方法であって、前記コンピュータは、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示するステップと、前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得するステップと、取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知するステップとを実行する。
【0009】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗とを含む回路にて、前記複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかを検知するコンピュータプログラムであって、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示するステップと、前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得するステップと、取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知するステップとをコンピュータに実行させる。
【0010】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える溶断検知装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする溶断検知方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、溶断検知装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、溶断検知装置を含む電源システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、複数のヒューズの中で溶断されたヒューズがあるかを適切に検知する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】直流電源の要部構成を示すブロック図である。
【
図4】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図5】溶断検知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】溶断検知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態2におけるマイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図9】時定数の決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態3における溶断検知方法の概要の説明図である。
【
図11】抵抗電圧テーブルの内容を示す図表である。
【
図12】溶断検知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】溶断検知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態4における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(1)本開示の一態様に係る溶断検知装置は、直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかを検知する溶断検知装置であって、前記複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗と、処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示し、前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得し、取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する。
【0015】
(2)本開示の一態様に係る溶断検知装置では、前記処理部は、前記回路スイッチがオンである状態で前記抵抗電圧の検出値を経時的に取得し、取得した複数の検出値に基づいて前記抵抗電圧の時定数を決定し、決定した時定数に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する。
【0016】
(3)本開示の一態様に係る溶断検知装置では、前記処理部は、前記複数の検出値の取得中に前記直流電源の電源電圧が変化したか否かを判定する。
【0017】
(4)本開示の一態様に係る溶断検知装置では、前記処理部は、取得した複数の検出値を、前記抵抗電圧の複数の検出値と、前記抵抗電圧の時定数との関係を学習した学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルの出力に基づいて前記抵抗電圧の時定数を決定する。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る溶断検知装置では、前記処理部は、前記直流電源の電源電圧値を取得し、前記回路スイッチがオンに切替わってから所定時間が経過した時点の前記抵抗電圧の検出値を取得し、取得した電源電圧値及び検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する。
【0019】
(6)本開示の一態様に係る溶断検知装置では、前記処理部は、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示してから前記所定時間が経過するまでに前記直流電源の電源電圧が変化したか否かを判定する。
【0020】
(7)本開示の一態様に係る溶断検知装置は、前記直流電源の一端にアノードが接続されるダイオードと、前記ダイオードのカソードから出力された電流が流れる放電スイッチ及び放電抵抗とを備え、前記放電スイッチがオンである場合、電流は、前記キャパシタの一端から前記ヒューズ、ダイオード、前記放電抵抗及び前記キャパシタの他端の順に流れる。
【0021】
(8)本開示の一態様に係る溶断検知装置は、前記複数のヒューズそれぞれの下流側の一端にアノードが接続される複数のダイオードと、複数のダイオードのカソードから出力された電流が流れる放電スイッチ及び放電抵抗とを備え、前記放電スイッチがオンである場合、電流は、前記キャパシタの一端から前記ダイオード、前記放電抵抗及び前記キャパシタの他端の順に流れる。
【0022】
(9)本開示の一態様に係る溶断検知装置では、前記処理部は、取得した検出値がゼロVを示すか否かに基づいて、前記複数のヒューズの全てが溶断されているか否かを判定する。
【0023】
(10)本開示の一態様に係る溶断検知方法は、直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗とを含む回路にて、前記複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかをコンピュータが検知する溶断検知方法であって、前記コンピュータは、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示するステップと、前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得するステップと、取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知するステップとを実行する。
【0024】
(11)本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、直流電源の一端から分流された複数の電流経路それぞれに配置されている複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に接続される複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを介して流れた複数の電流が入力される回路スイッチ及び回路抵抗とを含む回路にて、前記複数のヒューズの中に、溶断されたヒューズがあるかを検知するコンピュータプログラムであって、前記回路スイッチのオンへの切替えを指示するステップと、前記回路スイッチがオンである状態で時間の経過とともに低下する前記回路抵抗の両端間の抵抗電圧の検出値を取得するステップと、取得した検出値に基づいて、前記複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知するステップとをコンピュータに実行させる。
【0025】
上記の態様に係る溶断検知装置、溶断検知方法及びコンピュータプログラムにあっては、複数のキャパシタに電力が蓄えられていない状態で回路スイッチがオンに切替わった場合、抵抗電圧は、直流電源の電源電圧値から、時間の経過とともに低下する。抵抗電圧の時定数は、溶断されていないヒューズに接続されている一又は複数のキャパシタの静電容量の和と、回路抵抗の抵抗値との積で表される。従って、溶断されたヒューズの数が多い程、時定数は小さい。時定数は小さい程、抵抗電圧は急速に低下する。従って、抵抗電圧の検出値に基づいて、複数のヒューズの中に溶断されたヒューズがあるかが適切に検知される。
【0026】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、取得した複数の検出値に基づいて、抵抗電圧の時定数を決定する。決定した時定数が、全てのヒューズが溶断されていない場合における抵抗電圧の時定数よりも低い場合、溶断されたヒューズがあることを検知する。
【0027】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、複数の検出値の取得中、即ち、複数の検出値を検出している間に直流電源の電源電圧が変化した場合、適切な検出値を取得することができない。このため、複数の検出値を取得している間に電源電圧が変化したか否かを判定する。
【0028】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、取得した複数の検出値を学習済みモデルに入力する。これにより、学習済みモデルは、例えば、予め設定された複数の時定数それぞれについて、抵抗電圧の時定数に該当する確率を示す情報を出力する。学習済みモデルの出力に基づいて、抵抗電圧の時定数を決定する。
【0029】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、回路スイッチがオンに切替わってから所定時間が経過した時点の抵抗電圧値は、直流電源の電源電圧値と、時定数とに応じて変化する。前述したように、複数のヒューズ中の少なくとも1つが溶断された場合、抵抗電圧の時定数が低下する。従って、回路スイッチがオンに切替わってから所定時間が経過した時点の抵抗電圧値は低い。取得した検出値が、溶断されたヒューズの数がゼロである状態で回路スイッチがオンに切替わってから所定時間が経過した時点の抵抗電圧値よりも低い場合、溶断されたヒューズがあることを検知する。
【0030】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、回路スイッチがオンに切替わってから所定時間が経過するまでに、直流電源の電源電圧が変化した場合、適切な抵抗電圧の検出値を取得することができない。このため、回路スイッチのオンへの切替えを指示してから所定時間が経過するまでに、直流電源の電源電圧が変化したか否かを判定する。
【0031】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、直流電源の一端にダイオードのアノードが接続されている。放電スイッチをオンに切替えた場合、複数のキャパシタは、放電抵抗を介して放電する。
【0032】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、複数のヒューズそれぞれの下流側の一端に複数のダイオードのアノードが接続されている。放電スイッチをオンに切替えた場合、複数のキャパシタは、放電抵抗を介して放電する。
【0033】
上記の態様に係る溶断検知装置にあっては、全てのヒューズが溶断されている場合においては、回路スイッチがオンであるときであっても、回路抵抗を介して電流は流れない。このため、回路スイッチがオンに切替わった時点において、抵抗電圧は既にゼロVである。マイコンは、抵抗電圧の検出値がゼロVである場合、全てのヒューズの溶断を検知する。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
(実施形態1)
<電源システムの構成>
図1は、実施形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は車両に搭載されている。電源システム1は、直流電源10、溶断検知装置11、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fn、n個の給電スイッチQ1,Q2,・・・,Qn及びn個の負荷U1,U2,・・・,Unを備える。ここで、nは2以上の整数である。
【0036】
以下では、1以上であり、かつ、n以下である任意の整数をiで表す。整数iは、1以上であり、かつ、n以下である整数のいずれであってもよい。
直流電源10の一端はヒューズFiの一端に接続されている。ヒューズFiの他端は給電スイッチQiの一端に接続に接続されている。給電スイッチQiの他端は、負荷Uiの一端に接続されている。直流電源10の負極と、負荷Uiの他端は接地されている。ヒューズFi及び給電スイッチQiの接続ノードは溶断検知装置11に接続されている。溶断検知装置11は、更に、接地されている。
【0037】
負荷Uiは車両に搭載された電気機器である。給電スイッチQiがオフからオンに切替わった場合、直流電源10の一端から、電流がヒューズFi、給電スイッチQi、負荷Ui及び直流電源10の他端の順に流れ、直流電源10は負荷Uiに電力を供給する。直流電源10が負荷Uiに電力が供給された場合、負荷Uiは作動する。給電スイッチQiがオンからオフに切替わった場合、給電スイッチQiを介した電流の通流が停止し、直流電源10から負荷Uiへの給電が停止する。負荷Uiへの給電が停止した場合、負荷Uiは動作を停止する。
【0038】
n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnが溶断されてない状態で、n個の給電スイッチQ1,Q2,・・・,Qnがオンである場合、直流電源10の一端から分流されたn個の電流それぞれがn個のヒューズF1,F2,・・・,Fnを介して流れる。従って、直流電源10の一端から分流されたn個の電流の電流経路それぞれに、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnが配置されている。溶断検知装置11は、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの下流側の一端に各別に接続されている。
【0039】
図2は直流電源10の要部構成を示すブロック図である。直流電源10は、発電機20及びバッテリ21を有する。発電機20の一端は、バッテリ21の正極と、ヒューズFiの上流側の一端とに接続されている。バッテリ21の正極は、前述した直流電源10の一端に相当する。発電機20の他端はバッテリ21の負極に接続されている。バッテリ21の負極は接地されている。以下では、バッテリ21の正極の電圧を電源電圧と記載する。電源電圧の基準電位は接地電位である。
【0040】
図示しないエンジンが車両に搭載されている。発電機20は、エンジンに連動して交流電力を発生させ、発生させた交流電力を直流電力に整流する。発電機20は、発電している場合、整流した直流電力に係る直流電圧を出力電圧として出力する。発電機20の出力電圧はバッテリ21の出力電圧よりも高い。発電機20及びバッテリ21の出力電圧の基準電位は接地電位である。
【0041】
発電機20及びバッテリ21それぞれの内部には、図示しない内部抵抗が設けられており、内部抵抗を介して電圧が出力される。このため、発電機20及びバッテリ21それぞれについて、内部抵抗を介して流れる電流の電流値が大きい程、出力電圧は低い。例えば、負荷U1がエンジンを始動させるためのスタータであると仮定する。この場合、負荷U1は、発電機20が発電を停止している状態で作動する。給電スイッチQ1がオンに切替わった場合、大きい電流がバッテリ21から負荷U1に供給される。このとき、バッテリ21の内部抵抗で大きな電圧降下が生じ、バッテリ21の出力電圧、即ち、直流電源10の電源電圧は低下する。
【0042】
以上のように、直流電源10の電源電圧は、発電機20が発電しているか否か、及び、大きい電流が供給される大電流負荷が作動しているか否かに応じて変動する。大電流負荷は、n個の負荷U1,U2,・・・,Un中の1つである。
なお、n個の負荷U1,U2,・・・,Unの中に大電流負荷が含まれていなくてもよい。以下では、n個の負荷U1,U2,・・・,Unの中に大電流負荷が含まれている例を説明する。
【0043】
発電機20が発電している場合、直流電源10の電源電圧は発電機20の出力電圧であり、発電機20はバッテリ21を充電する。発電機20が発電を停止している場合、直流電源10の電源電圧は、バッテリ21の出力電圧である。ヒューズFiが溶断されておらず、かつ、給電スイッチQiがオンであると仮定する。この場合において、発電機20が発電しているとき、発電機20が負荷Uiに電力を供給する。同様の場合において、発電機20が発電を停止しているとき、バッテリ21が負荷Uiに電力を供給する。
【0044】
ヒューズFiを介して流れる電流の電流値が所定電流値以上である場合、ヒューズFiは溶断される。ヒューズFiが溶断された場合、ヒューズFiを介した通流が停止する。ヒューズFiは、所定電流値以上である過電流が長期間流れ続けることを防止する。
なお、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの所定電流値は同じであってもよい。また、ヒューズFiの所定電流値は、他のヒューズの所定電流値の少なくとも1つと異なっていてもよい。
【0045】
車両のイグニッションスイッチがオンに切替わった場合、
図1に示す溶断検知装置11にIG信号が入力される。溶断検知装置11は、IG信号が入力された場合、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか、及び、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの全てが溶断されているか否かを検知する。溶断検知装置11は、溶断されたヒューズの存在を検知した場合、溶断されたヒューズの数を決定する。
【0046】
<溶断検知装置11の構成>
図1に示すように、溶断検知装置11は、回路スイッチ30、回路抵抗31、放電スイッチ32、放電抵抗33、電圧検出回路34、第1切替え回路35、第2切替え回路36、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)37、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cn及びn個のダイオードD1,D2,・・・,Dnを有する。電圧検出回路34は、2つの分圧抵抗Rd1,Rd2を有する。
【0047】
キャパシタCiの一端は、ヒューズFiの下流側の一端に接続されている。n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnの他端は回路スイッチ30の一端に接続されている。回路スイッチ30の他端は、回路抵抗31の一端に接続されている。回路抵抗31の他端は接地されている。ダイオードDiのアノードも、ヒューズFiの下流側の一端に接続されている。n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnのカソードは、放電スイッチ32の一端に接続されている。放電スイッチ32の他端は放電抵抗33の一端に接続されている。放電抵抗33の他端は、キャパシタCi及び回路スイッチ30間の接続ノードに接続されている。
【0048】
回路スイッチ30及び回路抵抗31間の接続ノードには、分圧抵抗Rd1の一端が接続されている。電圧検出回路34内では、分圧抵抗Rd1の他端は分圧抵抗Rd2の一端に接続されている。分圧抵抗Rd2の他端は接地されている。2つの分圧抵抗Rd1,Rd2間の接続ノードはマイコン37に接続されている。マイコン37は、第1切替え回路35及び第2切替え回路36に各別に接続されている。
【0049】
マイコン37は、第1切替え回路35に、ハイレベル電圧又はローレベル電圧を示す第1指示信号を出力している。マイコン37は、更に、第2切替え回路36に、ハイレベル電圧又はローレベル電圧を示す第2指示信号を出力している。第1指示信号が示す電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、第1切替え回路35は、回路スイッチ30をオンに切替える。第1指示信号が示す電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、第1切替え回路35は、回路スイッチ30をオフに切替える。
【0050】
同様に、第2指示信号が示す電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、第2切替え回路36は、放電スイッチ32をオンに切替える。第2指示信号が示す電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、第2切替え回路36は、放電スイッチ32をオフに切替える。
【0051】
IG信号はマイコン37に入力される。マイコン37は、IG信号が入力される直前においては、第1指示信号及び第2指示信号それぞれが示す電圧をローレベル電圧及びハイレベル電圧に維持している。このため、第1切替え回路35は回路スイッチ30をオフに維持しており、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオンに維持している。
【0052】
放電スイッチ32がオンである場合において、キャパシタCiに電力が蓄えられるとき、電流は、キャパシタCiの一端から、ダイオードDi、放電スイッチ32、放電抵抗33及びキャパシタCiの他端の順に流れ、キャパシタCiは放電する。
【0053】
従って、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnに電力が蓄えられている状態で放電スイッチ32がオンに切替わった場合、n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnのカソードから電流が出力される。n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnのカソードから出力された電流は放電スイッチ32及び放電抵抗33を介して流れる。
【0054】
前述したように、第1指示信号及び第2指示信号それぞれが示す電圧がローレベル電圧及びハイレベル電圧に維持されている状態でIG信号はマイコン37に入力される。マイコン37は、IG信号が入力された場合、第2指示信号が示す電圧をハイレベル電圧からローレベル電圧に切替える。これにより、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオフに切替える。次に、マイコン37は、第1信号をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替える。これにより、第1切替え回路35は、放電スイッチ32がオフである状態で回路スイッチ30をオンに切替える。
【0055】
この場合において、ヒューズFiが溶断されてないとき、電流は、キャパシタCiの両端間の電圧が直流電源10の電源電圧に一致するまで、直流電源10の一端から、ヒューズFi、キャパシタCi及び回路スイッチ30の順に流れる。回路スイッチ30の下流側の一端から出力された電流の一部は、回路抵抗31及び直流電源10の他端の順に流れる。回路スイッチ30の下流側の一端から出力された残りの電流は、分圧抵抗Rd1,Rd2及び直流電源10の他端の順に流れる。
【0056】
ここで、分圧抵抗Rd1,Rd2の合成抵抗値は、回路抵抗31の抵抗値よりも十分に大きい。このため、回路抵抗31を介して流れる電流の電流値は、分圧抵抗Rd1,Rd2を介して流れる電流の電流値よりも十分に大きい。結果、回路スイッチ30を介して流れる電流の電流値は、回路抵抗31を介して流れる電流の電流値と実質的に一致する。
【0057】
n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnが溶断されていない場合において、回路スイッチ30がオンに切替わったとき、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnを介してn個の電流が流れる。前述したように、回路スイッチ30を介して流れる電流の電流値は、回路抵抗31を介して流れる電流の電流値と実質的に一致するので、n個の電流は回路スイッチ30及び回路抵抗31に入力される。
【0058】
以下では、回路抵抗31の両端間の電圧を抵抗電圧と記載する。電圧検出回路34は、抵抗電圧を検出し、検出した検出値を示すアナログの検出情報をマイコン37に出力する。電圧検出回路34内では、分圧抵抗Rd1,Rd2は抵抗電圧を分圧する。分圧抵抗Rd1,Rd2が抵抗電圧を分圧することによって得られた電圧値を、アナログの検出情報として、マイコン37に出力する。マイコン37は、分圧抵抗Rd1,Rd2の抵抗値によって決まる分圧比と、検出情報とに基づいて、抵抗電圧の検出値を算出することができる。
【0059】
マイコン37は、電圧検出回路34から出力された検出情報を繰り返し取得する。マイコン37は、取得した検出情報の数が所定数となった場合、第1指示信号が示す電圧をハイレベル電圧に切替える。これにより、第1切替え回路35は回路スイッチ30をオフに切替える。その後、マイコン37は、第2指示信号が示す電圧をハイレベル電圧に切替える。これにより、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオンに切替える。前述したように、放電スイッチ32がオンに切替わった場合、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnの中で、電力が蓄えられているキャパシタは放電抵抗33を介して放電する。
【0060】
マイコン37は、取得した複数の検出情報が示す複数の検出値に基づいて、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かと、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの全てが溶断されたか否かとを検知する。
【0061】
図3は、マイコン37が行う検知方法の説明図である。直流電源10の電源電圧の値である電源電圧値をVbで表している。抵抗電圧の値である抵抗電圧値をVrで表している。n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中で溶断されたヒューズの数を整数kで表している。整数kは、ゼロ以上であり、かつ、(n-1)以下である。n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnの静電容量は一致している。n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnそれぞれの静電容量をqで表している。回路抵抗31の抵抗値をrで示している。回路スイッチ30がオンに切替わってから経過した時間をtで表している。
なお、n個の静電容量の一致は完全な一致のみを意味しない。n個の静電容量が一致している状態には、n個の静電容量の最大値及び最小値の差が誤差範囲内に収まっている状態も含まれる。
【0062】
図3の下側には、回路スイッチ30の両端間の電圧である抵抗電圧の推移が示されている。横軸には時間tが表されている。
図3に示すように、回路スイッチ30がオンに切替わった場合、抵抗電圧は、電源電圧値Vbから時間の経過とともに低下する。抵抗電圧値Vrは、以下の(1)式を満たす。
Vr=Vb・exp(-t/τ)・・・(1)
ここで、τは抵抗電圧の時定数である。「・」は積を示す。
【0063】
図3及び(1)式に示すように、抵抗電圧が低下する速度は、時定数τが小さい程、速い。時定数τは、以下の(2)式で表される。
τ=(n-k)・q・r・・・(2)
(n-k)・qは、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中で溶断されていない一又は複数のヒューズに接続されている一又は複数のキャパシタを含む並列回路の静電容量である。前述したように、抵抗値rは回路抵抗31の抵抗値である。
【0064】
マイコン37は、複数の検出値に基づいて抵抗電圧の時定数τを決定する。決定される時定数τは、(n・q・r),((n-1)・q・r),((n-2)・q・r),・・・,(q・r)中の1つである。マイコン37は、決定した時定数τが(n・q・r)未満である場合、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中の溶断されたヒューズがあると判定する。マイコン37は、決定した時定数を(q・r)で除算する。これにより、溶断されていないヒューズの数、即ち、(n-k)が算出される。マイコン37は、時定数を除算することによって算出された値をnから減算することよって、溶断されたヒューズの数、即ち、整数kを算出する。
【0065】
n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの全てが溶断されている場合においては、回路スイッチ30がオンであっても、回路抵抗31を介して電流が流れることはない。このため、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの全てが溶断されている場合、抵抗電圧は、回路スイッチ30がオンに切替わった時点において、既にゼロVである。その後、抵抗電圧はゼロVに維持される。このため、マイコン37は、検出値がゼロVである場合、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの溶断を検知する。
【0066】
<マイコン37の構成>
図4はマイコン37の要部構成を示すブロック図である。マイコン37は、第1出力部41、第2出力部42、A/D変換部43、入力部44、タイマ45、報知部46、記憶部47及び制御部48を有する。これらは内部バス49に各別に接続されている。第1出力部41は、更に、第1切替え回路35に接続されている。第2出力部42は、更に、第2切替え回路36に接続されている。A/D変換部43は、更に、電圧検出回路34が有する分圧抵抗Rd1,Rd2間の接続ノードに接続されている。
【0067】
第1出力部41は第1切替え回路35に第1指示信号を出力している。制御部48は、第1出力部41に回路スイッチ30のオンへの切替えを指示する。この場合、第1出力部41は、第1指示信号が示す電圧をハイレベル電圧に切替える。これにより、第1切替え回路35は回路スイッチ30をオンに切替える。制御部48は、更に、第1出力部41に回路スイッチ30のオフへの切替えを指示する。この場合、第1出力部41は、第1指示信号が示す電圧をローレベル電圧に切替える。これにより、第1切替え回路35は回路スイッチ30をオフに切替える。
【0068】
第2出力部42は第2切替え回路36に第2指示信号を出力している。制御部48は、第2出力部42に放電スイッチ32のオンへの切替えを指示する。この場合、第2出力部42は、第2指示信号が示す電圧をハイレベル電圧に切替える。これにより、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオンに切替える。制御部48は、更に、第2出力部42に放電スイッチ32のオフへの切替えを指示する。この場合、第2出力部42は、第2指示信号が示す電圧をローレベル電圧に切替える。これにより、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオフに切替える。
【0069】
電圧検出回路34からA/D変換部43に、抵抗電圧の検出値を示すアナログの検出情報が入力される。A/D変換部43は、電圧検出回路34から入力されたアナログの検出情報をデジタルの検出情報に変換する。制御部48は、A/D変換部43からデジタルの検出情報を取得する。制御部48が取得した検出情報が示す検出値は、取得時点において電圧検出回路34が検出した抵抗電圧の検出値に一致する。
なお、2つの検出値の一致は、完全な一致のみを意味しない。2つの検出値が一致している状態には、2つの検出値の差が誤差範囲内に収まっている状態も含まれる。
【0070】
入力部44にはIG信号が入力される。
制御部48はタイマ45に計測の開始を指示する。この場合、タイマ45は、計測の開始を指示されてから経過した時間を計測する。タイマ45が計測した計測時間は、制御部48によって読み出される。制御部48はタイマ45に計測の終了を指示する。この場合、タイマ45は計測を終了する。
【0071】
報知部46は、制御部48の指示に従って報知を行う。n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズが存在する場合、報知部46は、例えば、溶断されたヒューズの数を示す第1報知信号を図示しない装置に出力することによって、報知を行う。n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの全てが溶断されている場合、報知部46は、例えば、その旨を示す第2報知信号を装置に出力することによって報知を行う。
【0072】
記憶部47は不揮発性メモリである。記憶部47には、コンピュータプログラムPが記憶されている。制御部48は、処理を実行する処理素子、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する。制御部48の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPを実行することによって、溶断検知処理等を実行する。制御部48は処理部として機能する。
溶断検知処理は、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かと、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの全てが溶断されたか否かとを検知する処理である。
【0073】
なお、コンピュータプログラムPは、制御部48の処理素子が読み取り可能に記憶媒体Aに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Aから読み出されたコンピュータプログラムPが記憶部47に書き込まれる。記憶媒体Aは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない装置からコンピュータプログラムPをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPを記憶部47に書き込んでもよい。
【0074】
制御部48が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。この場合、複数の処理素子がコンピュータプログラムPに従って、溶断検知処理等を協同で実行してもよい。
【0075】
<溶断検知処理>
図5及び
図6は溶断検知処理の手順を示すフローチャートである。制御部48は、回路スイッチ30及び放電スイッチ32それぞれがオフ及びオンである状態で溶断検知処理を実行する。記憶部47には、変数Bの値が記憶されている。変数Bの値は、抵抗電圧の検出値を示す検出情報を取得した回数を示す。変数Bの値は、制御部48によって変更される。
【0076】
溶断検知処理では、制御部48は、最初に、入力部44にIG信号が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。制御部48は、IG信号が入力されていないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行し、入力部44にIG信号が入力されるまで待機する。制御部48が待機している間、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnは放電抵抗33を介して放電する。
【0077】
制御部48は、IG信号が入力されたと判定した場合(S1:YES)、変数Bの値をゼロに設定し(ステップS2)、第2出力部42に放電スイッチ32のオフへの切替えを指示する(ステップS3)。これにより、第2指示信号が示す電圧がローレベル電圧に切替わり、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオフに切替える。
【0078】
次に、制御部48は、第1出力部41に回路スイッチ30のオンへの切替えを指示する(ステップS4)。これにより、第1指示信号が示す電圧がハイレベル電圧に切替わり、第1切替え回路35は回路スイッチ30をオンに切替える。前述したように、回路スイッチ30がオンである状態では、回路抵抗31の両端間の電圧である抵抗電圧は、直流電源10の電源電圧値から時間の経過とともに低下する。
【0079】
次に、制御部48は、回路スイッチ30がオンである状態で、A/D変換部43から抵抗電圧の検出値を示す検出情報を取得する(ステップS5)。ステップS4が実行された直後に実行されるステップS5で取得される検出情報が示す検出値は、直流電源10の電源電圧値に実質的に一致する。制御部48は、ステップS5を実行した後、タイマ45に計測の開始を指示する(ステップS6)。これにより、タイマ45は、計測の開始が指示されてから経過した時間を計測する。
【0080】
次に、制御部48は、変数Bの値を1だけインクリメントし(ステップS7)、変数Bの値が所定数と一致するか否かを判定する(ステップS8)。所定数は2以上の整数である。所定数は、一定値であり、予め設定されている。所定数は、例えば、記憶部47に記憶されている。制御部48は、変数Bの値が所定数と一致していないと判定した場合(S8:NO)、タイマ45が計測している計測時間が基準時間以上であるか否かを判定する(ステップS9)。基準時間は、一定値であり、予め設定されている。基準時間は、例えば、記憶部47に記憶されている。
【0081】
制御部48は、計測時間が基準時間未満であると判定した場合(S9:NO)、ステップS9を再び実行し、計測時間が基準時間に到達するまで待機する。制御部48は、計測時間が基準時間以上であると判定した場合(S9:YES)、タイマ45に計測の終了を指示する(ステップS10)。これにより、タイマ45は、時間の計測を終了する。制御部48は、ステップS10を実行した後、ステップS5を再び実行し、検出情報を取得する。
以上のように、制御部48は、変数Bの値が所定数と一致するまで、回路スイッチ30がオンである状態で、基準時間が経過する都度、検出情報を取得する。基準時間は、例えば5[ms]である。所定数は3以上であることが好ましい。
【0082】
制御部48は、変数Bの値が所定数に一致すると判定した場合(S8:YES)、タイマ45に計測の終了を指示する(ステップS11)。これにより、タイマ45は、時間の計測を終了する。次に、制御部48は、第1出力部41に回路スイッチ30のオフへの切替えを指示する(ステップS12)。これにより、第1指示信号が示す電圧がローレベル電圧に切替わり、第1切替え回路35は回路スイッチ30をオフに切替える。回路抵抗31を介した電流の通流は停止する。
【0083】
次に、制御部48は、第2出力部42に放電スイッチ32のオンへの切替えを指示する(ステップS13)。これにより、第2指示信号が示す電圧がハイレベル電圧に切替わり、第2切替え回路36は放電スイッチ32をオンに切替える。放電スイッチ32がオンに切替わった場合、前述したように、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnは放電抵抗33を介して放電する。
【0084】
制御部48は、ステップS13を実行した後、取得した複数の検出情報が示す複数の検出値に基づいて、全てのヒューズ、即ち、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnが溶断されているか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14では、制御部48は、取得した検出情報が示す検出値がゼロであるか否かに基づいて、全てのヒューズが溶断されているか否かを判定する。ステップS14の第1例では、制御部48は、複数の検出値の全てがゼロVである場合に全てのヒューズが溶断されていると判定する。ステップS14の第2例では、制御部48は、ステップS4が実行されてから最初に検出された抵抗電圧の検出値がゼロVである場合に全てのヒューズが溶断されていると判定する。
【0085】
制御部48は、全てのヒューズが溶断されないと判定した場合(S14:NO)、複数の検出情報の取得中に直流電源10の電源電圧が変化したか否かを判定する(ステップS15)。複数の検出情報の取得中に直流電源10の電源電圧が変化した場合、制御部48は、適切な検出情報、即ち、適切な検出値を取得することができない。このため、ステップS15が実行される。複数の検出情報が取得されている期間は、例えば、ステップS4が実行されてから、ステップS11が実行されるまでの期間である。
【0086】
電源電圧が上昇した場合、連続して取得した2つの検出情報が示す2つの検出値の差は小さい。このため、電源電圧の上昇を検知する第1方法として、連続して取得した2つの検出情報が示す2つの検出値の差が第1閾値未満であるか否かを判定する方法が挙げられる。第1閾値は、一定値であり、予め設定されている。発電機20が発電するか、又は、大きい電流が供給される大電流負荷が動作を停止した場合に電源電圧は上昇する。このため、電源電圧の上昇を検知する第2方法として、例えば、発電機20、又は、大電流負荷の動作状態を示す状態信号に基づいて、発電機20又は大電流負荷が作動したか否かを判定する方法が挙げられる。前述したように、大電流負荷は、n個の負荷U1,U2,・・・,Un中の1つである。
【0087】
電源電圧が低下した場合、連続して取得した2つの検出情報が示す2つの検出値の差は大きい。このため、電源電圧の低下を検知する第1方法として、連続して取得した2つの検出情報が示す2つの検出値の差が第2閾値以上であるか否かを判定する方法が挙げられる。第2閾値は、一定値であり、予め設定されている。第2閾値は第1閾値以上である。発電機20が発電を停止するか、又は、大電流負荷が作動した場合に電源電圧は低下する。このため、電源電圧の低下を検知する第2方法として、例えば、前述した状態信号に基づいて、発電機20又は大電流負荷が動作を停止したか否かを判定する方法が挙げられる。
【0088】
制御部48は、電源電圧が変化したと判定した場合(S15:YES)、ステップS2を実行し、複数の検出情報を再び取得する。制御部48は、電源電圧が変化していないと判定した場合(S15:NO)、取得した複数の検出情報が示す複数の検出値に基づいて抵抗電圧の時定数を決定する(ステップS16)。ステップS16の第1例では、ステップS4が実行された直後に実行されるステップS5で取得される検出情報が示す検出値を電源電圧として、時定数が(n・q・r),((n-1)・q・r),((n-2)・q・r),・・・,(q・r)である(n-1)個のグラフを描く。ここで、グラフは抵抗電圧の推移を示す。(n-1)個のグラフの中で、基準時間間隔で検出された複数の検出値の近傍を通る1つのグラフを選択する。制御部48は、時定数を、選択したグラフの時定数に決定する。
【0089】
ステップS16の第2例では、(1)式の抵抗電圧値Vr及び時間tそれぞれに、複数の検出値、及び、回路スイッチ30のオンへの切替えを指示してから検出情報値を取得するまでの複数の期間を代入することによって連立方程式を作成する。作成した連立方程式を解くことによって時定数τを算出する。その後、抵抗電圧の時定数を、(n・q・r),((n-1)・q・r),((n-2)・q・r),・・・,(q・r)の中で算出した時定数に最も近い値に決定する。
【0090】
次に、制御部48は、ステップS16で決定した時定数に基づいて、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17では、制御部48は、ステップS16で決定した時定数が(n・q・r)である場合、溶断されたヒューズはないと判定する。制御部48は、ステップS16で決定した時定数が(n・q・r)未満である場合、溶断されたヒューズがあることを検知する。ここで、(n・q・r)は、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnが溶断されていない場合における抵抗電圧の時定数である。
なお、ステップS17の実行は、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かの検知に相当する。
【0091】
制御部48は、溶断されたヒューズがあると判定した場合(S17:YES)、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中で溶断されたヒューズの数を算出する(ステップS18)。ステップS16で決定した時定数を(q・r)で除算することによって、溶断されてないヒューズの数、即ち、(n-k)を算出することができる。算出した数をnから減算することによって溶断されたヒューズの数、即ち、整数kが算出される。
【0092】
制御部48は、全てのヒューズが溶断されていると判定した場合(S14:YES)、又は、ステップS18を実行した後、報知部46に報知を指示する(ステップS19)。ステップS18を実行した後に実行されるステップS19では、制御部48は、例えば、報知部46に、ステップS18で算出した数を示す第1報知信号を図示しない装置に出力させる。全てのヒューズが溶断されていると制御部48が判定した場合に実行されるステップS19では、制御部48は、例えば、報知部46に全てのヒューズの溶断を示す第2報知信号を装置に出力する。
【0093】
制御部48は、溶断されたヒューズがないと判定した場合(S17:NO)、又は、ステップS19を実行した後、溶断検知処理を終了する。制御部48は、溶断検知処理を終了した後、再び、溶断検知処理のステップS1を実行し、IG信号が入力されるまで待機する。
【0094】
以上のように構成された溶断検知装置11では、回路スイッチ30がオンに切替わった場合、抵抗電圧が低下する。抵抗電圧の低下速度は、抵抗電圧の時定数が小さい程、速い。時定数は、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中で溶断されたヒューズの数に応じて変化する。このため、制御部48は、抵抗電圧の検出値に基づいて、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるかを適切に検知することができる。
【0095】
(実施形態2)
実施形態1における溶断検知処理では、マイコン37の制御部48は、複数の検出値に基づいて抵抗電圧の時定数を決定する。時定数の決定に、抵抗電圧の複数の検出値と抵抗電圧の時定数との関係を学習した学習済みモデルを用いてもよい。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0096】
<マイコン37の構成>
図7は、実施形態2におけるマイコン37の構成を示すブロック図である。実施形態2におけるマイコン37は、実施形態1におけるマイコン37が有する構成部を同様に有する。マイコン37の記憶部47には、更に、抵抗電圧の複数の検出値と抵抗電圧の時定数との関係を学習した時定数推定モデルM(学習済みモデル)が記憶されている。
【0097】
<時定数推定モデルMの説明>
図8は時定数推定モデルMの説明図である。時定数推定モデルMは、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。時定数推定モデルMは、入力層、2つの中間層及び出力層を備える。
図8の例では、2つの中間層を記載している。しかしながら、中間層の数は、2に限定されず、3以上であってもよい。
【0098】
入力層、中間層及び出力層それぞれには、一又は複数のノードが存在する。各層のノードは、前後の層の両方又は一方に存在するノードと、一方向に所望の重み及びバイアスによって結合されている。時定数推定モデルMの入力層のノードの数は、入力層に入力するデータの数と一致する。実施形態2における溶断検知装置11では、入力層のノードに入力されるデータは、制御部48が取得した検出情報が示す抵抗電圧の検出値である。
【0099】
入力層に入力されたデータは、入力層を構成するノードを通じて、最初の中間層が有するノードへ出力される。最初の中間層に入力されたデータは、この中間層を構成するノードを通じて、次の中間層が有するノードへ出力される。このとき、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いて出力が算出される。以下同様にして、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算を実行し、出力層の演算結果が得られるまで、演算結果が次々と後の層に伝達される。ここで、データの入出力及び演算は制御部48の処理素子によって実行される。
【0100】
出力層は、抵抗電圧の時定数に関する演算結果を出力する。具体的には、時定数がn・c・rである確率、及び、時定数が(n-1)・c・rである確率等が出力される。n・c・r,(n-1)・c・r,・・・,c・rそれぞれに対応する確率が出力される。
【0101】
時定数推定モデルMに関して、ノード間を結合する重み及びバイアス等のパラメータは、所定の学習アルゴリズムによって学習される。各種パラメータを学習する学習アルゴリズムには、例えば誤差逆伝搬法を含む深層学習の学習アルゴリズムが用いられる。抵抗電圧の複数の検出値と、これらの検出値に対応する1つの時定数とを示す訓練データを収集し、収集した訓練データを用いて学習を行う。
【0102】
具体的には、時定数推定モデルMの入力層に訓練データが示す複数の検出値を入力する。これにより、出力層から出力された結果を評価する。その後、出力層の出力結果が、訓練データが示す時定数に対応する結果となるように、所定の学習アルゴリズムによってノード間の重み及びバイアスを含む各種パラメータを学習する。訓練データが示す時定数に対応する結果は、例えば、訓練データが示す時定数に対応する確率が最も高いことである。
なお、時定数推定モデルMの生成は、溶断検知装置11の内部で行われてもよいし、溶断検知装置11とは異なる装置によって行われてもよい。
【0103】
<時定数の決定処理>
図9は時定数の決定処理の手順を示すフローチャートである。実施形態2における溶断検知処理では、制御部48は、ステップS16において、時定数決定処理を実行する。時定数決定処理では、制御部48は、最初、溶断検知処理のステップS5を繰り返し実行することによって取得した複数の検出情報が示す複数の検出値を時定数推定モデルMに入力する(ステップS21)。これにより、時定数推定モデルMにおいて、演算が行われ、出力層から、(n・q・r),((n-1)・q・r),・・・,(q・r)に対応する複数の確率を示す確率情報が出力される。前述したように、時定数推定モデルMにおける演算は制御部48によって実行される。
【0104】
制御部48は、ステップS21を実行した後、時定数推定モデルMの出力層から出力された時定数の確率情報を取得する(ステップS22)。次に、制御部48は、抵抗電圧の時定数を、例えば、ステップS22で取得した確率情報が示す(n-1)個の確率の中で最も高い確率に対応する時定数に決定する(ステップS23)。制御部48は、ステップS23を実行した後、溶断検知処理のステップS17を実行する。溶断検知処理のステップS17,S18では、時定数の決定処理のステップS23で決定した時定数が用いられる。
【0105】
ステップS21において時定数推定モデルMに入力された複数の検出値と、ステップS23において決定した時定数とを示すデータを前述した訓練データとして用いてもよい。これにより、時定数推定モデルMの再学習を行うことができる。
【0106】
<効果及びなお書き>
実施形態2における溶断検知装置11は、実施形態1における溶断検知装置11が奏する効果を同様に奏する。
なお、時定数推定モデルMに入力されるデータは、検出情報が示す検出値に限定されず、検出情報そのもの、即ち、電圧検出回路34の分圧抵抗Rd1,Rd2が分圧を行うことによって得られた値であってもよい。この場合、時定数推定モデルMは、抵抗電圧に関する複数の分圧値と、抵抗電圧の時定数との関係を学習した学習済みモデルである。また、時定数推定モデルMは、複数の確率ではなく、1つの時定数を出力するように構成されていてもよい。
【0107】
(実施形態3)
実施形態1では、マイコン37の制御部48は、時定数を決定し、決定した時定数に基づいて、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知する。しかしながら、溶断されたヒューズがあるか否かを検知する溶断検知方法において用いられる値は、時定数に限定されない。
以下では、実施形態3について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0108】
<溶断検知方法の概要>
図10は、実施形態3における溶断検知方法の概要の説明図である。
図10には、
図3の下側に示されている抵抗電圧の推移が示されている。実施形態1の説明で述べたように、溶断されたヒューズの数が多い程、時定数は小さい。時定数が小さい程、抵抗電圧の低下速度は速い。従って、直流電源10の電源電圧値Vbが固定されている場合においては、回路スイッチ30がオンに切替わってから一定の目標時間が経過した時点の抵抗電圧値は、時定数、即ち、溶断されたヒューズの数に応じて異なる。
【0109】
実施形態1における溶断検知処理では、マイコン37の制御部48は、回路スイッチ30のオンへの切替えを指示してから目標時間が経過した時点において検出した抵抗電圧の検出値に基づいて溶断されたヒューズがあるか否かを検知する。
【0110】
<マイコン37の構成>
実施形態3におけるマイコン37の記憶部47には、回路スイッチ30がオンに切替わってから目標時間が経過した時点の抵抗電圧値を示す抵抗電圧テーブルが記憶されている。
【0111】
図11は抵抗電圧テーブルを示す図表である。抵抗電圧テーブルでは、直流電源10の電源電圧値と、溶断されたヒューズの数とに応じた複数の抵抗電圧値が示されている。
図11の例では、電源電圧値として、14.0V、13.9V、13.8V及び12.0V等が挙げられている。溶断されたヒューズの数として、0,1,・・・,(n-1)が挙げられている。抵抗電圧テーブルが示す抵抗電圧値は、実測又はシミュレーション等を行うことによって得られた値である。
【0112】
<溶断検知処理>
図12及び
図13は溶断検知処理の手順を示すフローチャートである。制御部48は、実施形態1と同様に、回路スイッチ30及び放電スイッチ32それぞれがオフ及びオンである状態で溶断検知処理を実行する。実施形態3における溶断検知処理の一部は実施形態1における溶断検知処理の一部と共通している。このため、実施形態3における溶断検知処理において、実施形態1における溶断検知処理のステップと共通するステップには、実施形態1と同様の番号を付し、これらのステップの処理の詳細な説明を省略する。具体的には、ステップS1,S3,S4,S12,S13,S19の詳細な説明を省略する。
【0113】
マイコン37の記憶部47には、第1電圧値及び第2電圧値が記憶されている。第1電圧値は、直流電源10の電源電圧値として扱われる。対象電圧値は、回路スイッチ30がオンに切替わってから目標時間が経過した時点の抵抗電圧値として扱われる。第1電圧値及び第2電圧値は、制御部48によって更新される。
【0114】
溶断検知処理では、制御部48は、入力部44にIG信号が入力されたと判定した場合(S1:YES)、ステップS3を実行する。制御部48がステップS3,S4を実行することによって、回路スイッチ30及び放電スイッチ32それぞれはオン及びオフに切替わる。前述したように、回路スイッチ30がオンである状態では、抵抗電圧は、直流電源10の電源電圧値から時間の経過とともに低下する。
【0115】
制御部48は、ステップS4を実行した後、タイマ45に計測の開始を指示する(ステップS31)。これにより、タイマ45は、計測の開始が指示された時点、即ち、回路スイッチ30がオンに切替わった時点から経過した時間を計測する。制御部48は、ステップS31を実行した後、A/D変換部43から抵抗電圧の検出値を示す検出情報を取得する(ステップS32)。この検出値は、回路スイッチ30がオンに切替わった直後に検出された抵抗電圧値であり、直流電源10の電源電圧値に実質的に一致する。ステップS32の実行は、直流電源10の電源電圧値の取得に相当する。
【0116】
次に、制御部48は、第1電圧値をステップS32で取得した検出情報が示す検出値に更新する(ステップS33)。制御部48は、ステップS33を実行した後、タイマ45が計測している計測時間が目標時間以上であるか否かを判定する(ステップS34)。制御部48は、計測時間が目標時間未満であると判定した場合(S34:NO)、ステップS34を再び実行し、計測時間が目標時間に到達するまで待機する。制御部48は、計測時間が目標時間以上であると判定した場合(S34:YES)、A/D変換部43から検出情報を取得する(ステップS35)。ステップS35において取得される検出情報が示す検出値は、回路スイッチ30がオンに切替わってから目標時間が経過した時点の抵抗電圧の検出値である。目標時間は所定時間に相当する。次に、制御部48は、第2電圧値を、ステップS35で取得した検出情報が示す抵抗電圧の検出値に更新する(ステップS36)。
【0117】
制御部48は、ステップS36を実行した後、タイマ45に計測の終了を指示する(ステップS37)。これにより、タイマ45は時間の計測を終了する。制御部48は、ステップS37を実行した後、ステップS12,S13を順次実行する。これにより、回路スイッチ30及び放電スイッチ32それぞれは、オフ及びオンに切替わる。実施形態1の説明で述べたように、回路スイッチ30がオフに切替わった場合、回路抵抗31を介した電流の通流は停止する。放電スイッチ32がオンである場合、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnは放電抵抗33を介して放電する。
【0118】
制御部48は、ステップS13を実行した後、第1電圧値、即ち、ステップS32で取得した検出情報が示す検出値に基づいて、全てのヒューズ、即ち、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnが溶断されているか否かを判定する(ステップS38)。ステップS38では、制御部48は、第1電圧値がゼロであるか否かに基づいて、全てのヒューズが溶断されているか否かを判定する。前述したように、第1電圧値は、回路スイッチ30がオンに切替わった直後において検出された抵抗電圧値である。制御部48は、第1電圧値がゼロVである場合、全てのヒューズが溶断されていると判定する。制御部48は、第1電圧値がゼロVではない場合、全てのヒューズが溶断されていないと判定する。
【0119】
制御部48は、全てのヒューズが溶断されないと判定した場合(S38:NO)、タイマ45が計測を開始してから目標時間が経過するまでに直流電源10の電源電圧が変化したか否かを判定する(ステップS39)。回路スイッチ30がオンに切替わってから目標時間が経過するまでに直流電源10の電源電圧が変化した場合、制御部48は、適切な検出情報、即ち、適切な検出値を取得することができない。このため、ステップS39が実行される。
【0120】
電源電圧が上昇した場合、第1電圧値及び第2電圧値の差は小さい。このため、電源電圧の上昇を検知する第1方法として、第1電圧値及び第2電圧値の差が第1閾値未満であるか否かを判定する方法が挙げられる。実施形態1の説明で述べたように、第1閾値は、一定値であり、予め設定されている。発電機20が発電するか、又は、大きい電流が供給される大電流負荷が動作を停止した場合、電源電圧は上昇する。このため、電源電圧の上昇を検知する第2方法として、例えば、発電機20、又は、大電流負荷の動作状態を示す状態信号に基づいて、発電機20又は大電流負荷が作動したか否かを判定する方法が挙げられる。実施形態1の説明で述べたように、大電流負荷は、n個の負荷U1,U2,・・・,Un中の1つである。
【0121】
電源電圧が低下した場合、第1電圧値及び第2電圧値の差は大きい。このため、電源電圧の低下を検知する第1方法として、第1電圧値及び第2電圧値の差が第2閾値以上であるか否かを判定する方法が挙げられる。実施形態1の説明で述べたように、第2閾値は、一定値であり、予め設定されている。第2閾値は第1閾値以上である。発電機20が発電を停止するか、又は、大電流負荷が作動した場合に電源電圧は低下する。このため、電源電圧の低下を検知する第2方法として、例えば、前述した状態信号に基づいて、発電機20又は大電流負荷が動作を停止したか否かを判定する方法が挙げられる。
【0122】
制御部48は、電源電圧が変化したと判定した場合(S39:YES)、ステップS3を実行し、第1電圧値及び第2電圧値を再び更新する。制御部48は、電源電圧が変化していないと判定した場合(S39:NO)、制御部48は、抵抗電圧テーブルにおいて、第1電圧値に最も近い電源電圧値に対応するn個の抵抗電圧値の中で、第2電圧値に最も近い抵抗電圧値を特定する(ステップS40)。次に、制御部48は、抵抗電圧テーブルにおいて、溶断されたヒューズの数を参照する(ステップS41)。ステップS41において制御部48が参照するヒューズの数は、ステップS40で特定した抵抗電圧値に対応するヒューズの数である。
【0123】
次に、制御部48は、ステップS41において参照したヒューズの数に基づいて、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かを判定する(ステップS42)。ステップS42では、制御部48は、ステップS41において参照したヒューズの数がゼロとは異なる場合、溶断されたヒューズがあることを検知する。制御部48は、ステップS41において参照したヒューズの数がゼロである場合、溶断されたヒューズはないと判定する。
なお、ステップS42の実行は、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かの検知に相当する。
【0124】
実施形態1の説明で述べたように、溶断されたヒューズの数が多い程、抵抗電圧の時定数は低く、抵抗電圧の低下速度は速い。従って、
図11に示す抵抗電圧テーブルにおいて、電源電圧値を固定した場合、抵抗電圧値は、溶断されたヒューズの数が多い程、低い。このため、ステップS41において参照したヒューズの数がゼロとは異なることは、第2電圧値が、溶断されたヒューズの数がゼロである場合における抵抗電圧値よりも低いことを意味する。
【0125】
制御部48は、全てのヒューズが溶断されていると判定した場合(S38:YES)、又は、溶断されたヒューズあると判定した場合(S42:YES)、ステップS19を実行する。溶断されたヒューズがあると制御部48が判定した場合に実行されるステップS19では、制御部48は、例えば、報知部46に、ステップS41で参照したヒューズの数を示す第1報知信号を装置に出力させる。全てのヒューズが溶断されていると制御部48が判定した場合に実行されるステップS19では、制御部48は、例えば、報知部46に全てのヒューズの溶断を示す第2報知信号を装置に出力する。
【0126】
制御部48は、溶断されたヒューズがないと判定した場合(S42:NO)、又は、ステップS19を実行した後、溶断検知処理を終了する。制御部48は、溶断検知処理を終了した後、再び、溶断検知処理のステップS1を実行し、IG信号が入力されるまで待機する。
【0127】
実施形態3における溶断検知装置11は、実施形態1における溶断検知装置11が奏する効果を同様に奏する。
【0128】
(実施形態4)
実施形態1において、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnが放電するための放電回路では、n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnが用いられている。しかしながら、放電回路の構成は、n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnを用いた構成に限定されない。
以下では、実施形態4について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0129】
<電源システム1の構成>
図14は、実施形態4における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。実施形態4では、溶断検知装置11は、実施形態1と同様に、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの下流側の一端に各別にされている。溶断検知装置11は、更に、直流電源10の一端に接続されている。
【0130】
<溶断検知装置11の構成>
実施形態4における溶断検知装置11は、実施形態1における溶断検知装置11が有する構成部の中で、n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnを除く他の構成部を有する。n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnを除く他の構成部の接続は、放電スイッチ32の一端を除いて、実施形態1と同様である。実施形態4における溶断検知装置11は、n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnの代わりにダイオード38を有する。
【0131】
ダイオード38のアノードは直流電源10の一端に接続されている。直流電源10のカソードは放電スイッチ32の一端に接続されている。
【0132】
第1切替え回路35及び第2切替え回路36は実施形態1と同様に作用する。従って、回路スイッチ30がオフである状態で第2切替え回路36は放電スイッチ32をオンに切替える。回路スイッチ30及び放電スイッチ32それぞれがオフ及びオンである場合において、キャパシタCiに電力が蓄えられるとき、電流は、キャパシタCiの一端から、ヒューズFi、ダイオード38、放電スイッチ32、放電抵抗33及びキャパシタCiの他端の順に流れ、キャパシタCiは放電する。
【0133】
従って、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnに電力が蓄えられている状態で放電スイッチ32がオンに切替わった場合、ダイオード38のカソードから電流が出力される。ダイオード38のカソードから出力された電流は放電スイッチ32及び放電抵抗33を介して流れる。
【0134】
<効果及びなお書き>
実施形態4における溶断検知装置11は、実施形態1における溶断検知装置11が奏する効果を同様に奏する。
なお、実施形態2,3それぞれにおける溶断検知装置11の放電回路の構成も、n個のダイオードD1,D2,・・・,Dnを用いた構成に限定されない。実施形態2,3それぞれにおける溶断検知装置11は、実施形態4における溶断検知装置11と同様に構成されてもよい。
【0135】
<変形例>
実施形態1~4における溶断検知処理において、ステップS2が実行されるタイミング、即ち、溶断されたヒューズがあるか否かが検知されるタイミングは、IG信号が入力部44に入力されたタイミングに限定されない。例えば、入力部44に、検知を指示する検知指示信号が入力されたタイミングでステップS2が実行されてもよい。検知指示信号は、例えば、車両のディーラーが操作する装置から出力される。
実施形態1~4において、溶断検知装置11は、直流電源10の電源電圧を検出する電源検出回路を更に有してもよい。この場合、電源検出回路が検出した電圧値を電源電圧値として用いる。
【0136】
実施形態1~4における放電回路は、放電スイッチ32が放電抵抗33に直列に接続された直列回路が、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnそれぞれの両端間に接続される回路であってもよい。この場合、n個の放電スイッチ32がオンに切替わった場合、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnは放電する。
【0137】
実施形態1~4において、n個のキャパシタC1,C2,・・・,Cnそれぞれの静電容量は、他の静電容量の少なくとも1つと異なっていてもよい。この場合であっても、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fn中の1つが溶断したとき、抵抗電圧の時定数が低下するので、n個のヒューズF1,F2,・・・,Fnの中に溶断されたヒューズがあるか否かを検知することができる。
【0138】
実施形態1~4において、回路スイッチ30の位置は、回路抵抗31の上流側の位置に限定されず、回路抵抗31の下流側の位置であってもよい。同様に、放電スイッチ32の位置は、放電抵抗33の上流側の位置に限定されず、放電抵抗33の下流側の位置であってもよい。
【0139】
実施形態1~4において、直流電源10の構成は、発電機20及びバッテリ21の両方を有する構成に限定されず、発電機20が含まれない構成であってもよい。
実施形態1~4において、電圧検出回路34の構成は、分圧抵抗Rd1,Rd2を用いた構成に限定されない。電圧検出回路34は、例えば、回路抵抗31の両端間の電圧値、即ち、抵抗電圧値に比例する電流を出力する電流出力部と、電流出力部が出力した電流が流れる電流抵抗とを有してもよい。この場合、電流抵抗の両端間の電圧値が検出情報としてマイコン37に出力される。
【0140】
開示された実施形態1~4はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0141】
1 電源システム
10 直流電源
11 溶断検知装置
20 発電機
21 バッテリ
30 回路スイッチ
31 回路抵抗
32 放電スイッチ
33 放電抵抗
34 電圧検出回路
35 第1切替え回路
36 第2切替え回路
37 マイコン
38 ダイオード
41 第1出力部
42 第2出力部
43 A/D変換部
44 入力部
45 タイマ
46 報知部
47 記憶部
48 制御部(処理部)
49 内部バス
A 記憶媒体
C1,C2,・・・,Cn キャパシタ
D1,D2,・・・,Dn ダイオード
F1,F1,・・・,Fn ヒューズ
M 時定数推定モデル(学習済みモデル)
P コンピュータプログラム
Q1,Q2,・・・,Qn 給電スイッチ
Rd1,Rd2 分圧抵抗
U1,U2,・・・,Un 負荷