(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び貨幣取扱装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/00 20190101AFI20240312BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20240312BHJP
【FI】
G07D11/00
G07D11/10
(21)【出願番号】P 2020160180
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】若林 学
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204111(JP,A)
【文献】特開2018-109814(JP,A)
【文献】特開2008-084265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00 - 3/16,
9/00 - 13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された硬貨を1枚毎に送出する送出部と、
前記送出部から送出された前記硬貨を鑑別する鑑別部と、
前記硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、
前記鑑別部と前記第1及び第2の集積庫との間に設けられ、前記第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、前記第1の集積庫の方向又は前記第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、
前記一時保留庫に一時保留された硬貨を前記第1又は第2の集積庫に集積させるときに、前記一時保留庫と当接させる当接部と
を備え、
前記一時保留庫は、前記硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、
前記壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、前記一時保留庫が前記当接部と当接すると、前記壁部が弾性変形することにより前記保留空間を変化させる
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記壁部は、
前記保留空間の四方を囲むように形成され、前記一時保留庫が前記当接部と当接すると、対向する少なくともの一対の前記壁部同士の間隔が変化するように弾性変形する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記壁部は、
前記一時保留庫が前記当接部と当接すると、対向する二対の前記壁部同士の間隔が変化するように弾性変形する
ことを特徴とする請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記一時保留庫は、
複数の前記壁部のうち前記一時保留庫が移動する移動方向に沿う側に位置する前記壁部における、前記保留空間に対する外側面から前記移動方向側へ突出し、前記当接部に当接する突起部
をさらに備え、
前記突起部が前記当接部と当接することにより、前記壁部が弾性変形する
ことを特徴とする請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記突起部における、前記移動方向に直交する移動直交方向の幅は、複数の前記壁部のうち前記移動直交方向に沿う側における前記壁部同士の間隔よりも狭い
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記突起部は、
前記壁部における、前記移動方向に直交する移動直交方向に関し、ほぼ中央部に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記一時保留庫を保持すると共に、前記第1の集積庫の方向及び前記第2の集積庫の方向に前記一時保留庫を移動させる枠状部
をさらに備え、
前記一時保留庫は、
前記突起部が前記枠状部に形成された孔部に嵌まり込むことにより、前記枠状部に保持される
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
投入された硬貨を1枚毎に送出する送出部と、
前記送出部から送出された前記硬貨を鑑別する鑑別部と、
前記硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、
前記鑑別部と前記第1及び第2の集積庫との間に設けられ、前記第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、前記第1の集積庫方向又は前記第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、
前記一時保留庫に一時保留された硬貨を前記第1又は第2の集積庫に集積させるときに、磁力により前記一時保留庫と吸着又は反発する変形作用部と
を備え、
前記一時保留庫は、前記硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、
前記壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、前記一時保留庫が前記変形作用部と吸着又は反発すると、前記壁部が弾性変形することにより前記保留空間を変化させる
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項9】
前記一時保留庫は、
対向する二対の前記壁部同士の間隔を変化させる
ことを特徴とする請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記一時保留庫は、
複数の前記壁部のうち前記一時保留庫が移動する移動方向に直交する移動直交方向に沿う側に位置する前記壁部に、前記変形作用部と吸着又は反発する被変形作用部が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
硬貨の処理に関する操作を受け付ける操作部と、
投入された前記硬貨を1枚毎に送出する送出部と、
前記送出部から送出された前記硬貨を鑑別する鑑別部と、
前記硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、
前記鑑別部と前記第1及び第2の集積庫との間に設けられ、前記第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、前記第1の集積庫の方向又は前記第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、
前記一時保留庫に一時保留された硬貨を前記第1又は第2の集積庫に集積させるときに、前記一時保留庫と当接させる当接部と
を備え、
前記一時保留庫は、前記硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、
前記壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、前記一時保留庫が前記当接部と当接すると、前記壁部が弾性変形することにより前記保留空間を変化させる
ことを特徴とする貨幣取扱装置。
【請求項12】
硬貨の処理に関する操作を受け付ける操作部と、
投入された前記硬貨を1枚毎に送出する送出部と、
前記送出部から送出された前記硬貨を鑑別する鑑別部と、
前記硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、
前記鑑別部と前記第1及び第2の集積庫との間に設けられ、前記第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、前記第1の集積庫方向又は前記第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、
前記一時保留庫に一時保留された硬貨を前記第1又は第2の集積庫に集積させるときに、磁力により前記一時保留庫と吸着又は反発する変形作用部と
を備え、
前記一時保留庫は、前記硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、
前記壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、前記一時保留庫が前記変形作用部と吸着又は反発すると、前記壁部が弾性変形することにより前記保留空間を変化させる
ことを特徴とする貨幣取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び貨幣取扱装置に関し、例えば硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的大規模の小売店(例えばスーパーマーケット等)では、顧客が精算処理を行う複数の精算所にそれぞれレジスターが設置される他、バックヤードと呼ばれる従業員のみが出入りする場所に、紙幣及び硬貨を取り扱う貨幣取扱装置が設置される場合がある。
【0003】
この貨幣取扱装置としては、例えば紙幣を処理する紙幣処理装置と、硬貨を処理する硬貨処理装置と、従業員等(以下、使用者と呼ぶ)の操作指示を受け付けて全体を統括管理する統括管理装置とを有するものがある。このうち硬貨処理装置は、統括管理装置の制御に基づき、例えば各レジスターから回収された売上金を入金して収納する入金処理や、各レジスターの釣銭として用意すべき硬貨の出金処理、或いは収納している硬貨の計数処理等を行うことができる。
【0004】
この硬貨処理装置としては、例えば使用者から硬貨が投入される入金部、投入された硬貨の金種や真偽等を鑑別する鑑別部(認識部とも呼ぶ)、硬貨を一時的に保留する一時保留部、金種毎に硬貨を収納する収納部、使用者に返却する硬貨を収納する返却箱、出金する硬貨を収納する硬貨出金箱等を有するものがある。
【0005】
このうち一時保留部は、硬貨を金種別に一時保留部のガイド板上に集積して一時保留し、硬貨を収納するときは、一時保留部をガイド板上から収納部上に移動させ、集積した硬貨を収納部に落下させて収納する一方、硬貨を返却するときは、一時保留部をガイド板上から返却箱上に移動させ、集積した硬貨を返却箱に落下させて収納するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような一時保留部においては、ガイド板上に集積される複数の硬貨が一時保留部の内壁面に自重で押し付けられ、これが支えとなってその上の硬貨が落下しなくなる現象であるブリッジが生じてしまう場合がある。ブリッジが生じた状態の場合、一時保留部を移動先の集積庫である収納部又は返却箱の上部へ移動させて硬貨を落下させるときに、一時保留部が移動先の集積庫の上部へ移動しても、硬貨が移動先の集積庫へ落下しないことがある。そのような場合、一時保留部に集積した硬貨の一部又は全部が収納又は返却できなくなってしまい、硬貨の処理時に違算が生ずる場合があるという問題がある。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、一時保留部に集積した硬貨を全て移動先の集積庫に落下させ得る硬貨処理装置及び貨幣取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、投入された硬貨を1枚毎に送出する送出部と、送出部から送出された硬貨を鑑別する鑑別部と、硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、鑑別部と第1及び第2の集積庫との間に設けられ、第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、第1の集積庫の方向又は第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、一時保留庫に一時保留された硬貨を第1又は第2の集積庫に集積させるときに、一時保留庫と当接させる当接部とを設け、一時保留庫は、硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、一時保留庫が当接部と当接すると、壁部が弾性変形することにより保留空間を変化させるようにした。
【0010】
また本発明の貨幣取扱装置においては、硬貨の処理に関する操作を受け付ける操作部と、投入された硬貨を1枚毎に送出する送出部と、送出部から送出された硬貨を鑑別する鑑別部と、硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、鑑別部と第1及び第2の集積庫との間に設けられ、第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、第1の集積庫の方向又は第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、一時保留庫に一時保留された硬貨を第1又は第2の集積庫に集積させるときに、一時保留庫と当接させる当接部とを設け、一時保留庫は、硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、一時保留庫が当接部と当接すると、壁部が弾性変形することにより保留空間を変化させるようにした。
【0011】
本発明は、一時保留庫に一時保留された硬貨を第1の集積庫又は第2の集積庫へ集積させるときにブリッジが形成されたとしても、一時保留庫を当接部に当接させて一時保留庫を弾性変形させることにより、ブリッジを解消できる。
【0012】
さらに本発明の硬貨処理装置においては、投入された硬貨を1枚毎に送出する送出部と、送出部から送出された硬貨を鑑別する鑑別部と、硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、鑑別部と第1及び第2の集積庫との間に設けられ、第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、第1の集積庫方向又は第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、一時保留庫に一時保留された硬貨を第1又は第2の集積庫に集積させるときに、磁力により一時保留庫と吸着又は反発する変形作用部とを設け、一時保留庫は、硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、一時保留庫が変形作用部と吸着又は反発すると、壁部が弾性変形することにより保留空間を変化させるようにした。
【0013】
さらに本発明の貨幣取扱装置においては、硬貨の処理に関する操作を受け付ける操作部と、投入された硬貨を1枚毎に送出する送出部と、送出部から送出された硬貨を鑑別する鑑別部と、硬貨を集積する第1及び第2の集積庫と、鑑別部と第1及び第2の集積庫との間に設けられ、第1又は第2の集積庫へ集積する硬貨を一時保留すると共に、第1の集積庫方向又は第2の集積庫の方向に移動可能に構成された一時保留庫と、一時保留庫に一時保留された硬貨を第1又は第2の集積庫に集積させるときに、磁力により一時保留庫と吸着又は反発する変形作用部とを設け、一時保留庫は、硬貨を一時保留する保留空間を形成する壁部を有し、壁部は、弾性変形可能な部材によって構成され、一時保留庫が変形作用部と吸着又は反発すると、壁部が弾性変形することにより保留空間を変化させるようにした。
【0014】
本発明は、一時保留庫に一時保留された硬貨を第1の集積庫又は第2の集積庫へ集積させるときにブリッジが形成されたとしても、一時保留庫を変形作用部と吸着又は反発させて一時保留庫を弾性変形させることにより、ブリッジを解消できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一時保留部に集積した硬貨を全て移動先の集積庫に落下させ得る硬貨処理装置及び貨幣取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】現金処理装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】硬貨処理装置の内部構成を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
【
図3】第1の実施の形態による保留状態におけるブリッジ解除部の構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図4】第1の実施の形態によるブリッジ解除部の構成を示し、
図3(A)におけるC-C矢視断面図である。
【
図6】第1の実施の形態による金種別一時保留庫の構成を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図7】第1の実施の形態による収納状態におけるブリッジ解除部の構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図8】第1の実施の形態において金種別一時保留庫が変形する様子を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は(B)におけるA-A矢視断面図、(D)は(B)におけるB-B矢視断面図である。
【
図9】第2の実施の形態による保留状態におけるブリッジ解除部の構成を示す平面図である。
【
図10】第2の実施の形態によるブリッジ解除部の構成を示し、
図9におけるC-C矢視断面図である。
【
図11】第2の実施の形態による金種別一時保留庫の構成を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図12】第2の実施の形態による収納状態におけるブリッジ解除部の構成を示す平面図である。
【
図13】第2の実施の形態において金種別一時保留庫が変形する様子を示し、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA-A矢視断面図、(C)は(A)におけるB-B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金処理装置の全体構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による現金処理装置1は、全体として概ね直方体状に形成されており、大きく分けて統括管理装置2、硬貨処理装置3及び紙幣処理装置4により構成されている。この現金処理装置1は、例えば金融機関の店舗における職員等が職務を行う区画や大型の商店における事務所内等、一般の顧客が立ち入らないような場所に設置されており、金融機関の職員や商店の従業員等(以下これを使用者と呼ぶ)に使用されることが想定されている。
【0019】
以下では、現金処理装置1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0020】
現金処理装置1は、左側に直方体状の硬貨処理装置3が設けられ、その右側に該硬貨処理装置3と上下方向及び前後方向の長さが同等でなる直方体状の紙幣処理装置4が設けられ、さらに該紙幣処理装置4の上側に統括管理装置2が設けられている。統括管理装置2は、統括制御部11を有している。この統括制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有している。この統括制御部11は、CPUによってROMや記憶部等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、硬貨及び紙幣に関する種々の処理を制御する。
【0021】
レシート印刷部6は、例えば一般的なサーマルプリンタと類似した構成となっており、感熱紙がロール状に回巻されたロール紙を保持するホルダや、このロール紙から引き出された感熱紙を搬送する搬送機構、及び熱によりこの感熱紙に文字や図形等を印刷するサーマルヘッド等を有している。
【0022】
表示操作パネル7は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示機能を有する表示パネルの表面にタッチセンサが組み合わされた、いわゆるタッチパネルとして構成されている。この表示操作パネル7は、統括制御部11の制御に基づき種々の表示画面を表示する他、使用者のタッチ操作を受け付けて該統括制御部11に通知する。テンキー8は、複数の物理キーの組合せとして構成されており、数字の「0」~「9」や所定の記号を入力するためのキー等が設けられている。このテンキー8は、使用者による押下操作を受け付けて統括制御部11に通知する。
【0023】
硬貨処理装置3は、硬貨制御部21を有している。この硬貨制御部21は、統括制御部11と同様、図示しないCPU、ROM及びRAM等を有しており、硬貨処理装置3内を制御する。
図2に示す硬貨処理部24は、硬貨を直接取り扱う部分であり、硬貨制御部21の制御に基づき、硬貨の入金処理や出金処理、或いは硬貨計数処理のような種々の処理を行う。
【0024】
紙幣処理装置4は、紙幣を直接取り扱う紙幣処理部や、内部を制御する紙幣制御部(何れも図示せず)等を有しており、紙幣の入金処理や出金処理、或いは計数処理のような種々の処理を行う。
【0025】
因みに現金処理装置1は、日本国内で使用されることが想定されており、日本国において発行されている紙幣及び硬貨を取扱対象とするようになっている。例えば硬貨処理装置3は、日本国で発行されている6種類の金種(500円、100円、50円、10円、5円及び1円)の硬貨を正当な硬貨として取り扱い得る。
【0026】
[1-2.硬貨処理装置の構成]
次に、硬貨処理装置3の構成について説明する。硬貨処理装置3は、
図2(A)に模式的な内部正面図を示すと共に
図2(B)に模式的な内部右側面図を示すように、周囲を覆う筐体30の内部に、硬貨処理部24を構成する複数の部品等が設けられている。因みに
図2(A)及び(B)では、作図の都合上、硬貨CNの移動範囲を規制しながら案内する搬送ガイド等の部材を一部省略すると共に、該硬貨CNの進行経路を矢印により模式的に表している。
【0027】
硬貨処理部24は、大きく分けて、上側の上硬貨処理部24Uと下側の下硬貨処理部24Lとにより構成されている。上硬貨処理部24Uは、主に入金された硬貨CNに関する処理を行う部分であり、硬貨入金部33、硬貨鑑別部34、選別搬送部35、入金リジェクト部41、一時保留部60、硬貨返却庫76及びホッパ部77を有している。また下硬貨処理部24Lは、主に出金する硬貨CNに関する処理を行う部分であり、硬貨出金箱82及び回収庫84等を有している。
【0028】
因みに硬貨処理部24内には、硬貨CNが搬送される経路の近傍や各収納庫の近傍等に、該硬貨CNの詰まりやあふれ等を検知して硬貨制御部21に通知するセンサ(図示せず)が適宜設けられている。
【0029】
[1-2-1.上硬貨処理部の構成]
まず、上硬貨処理部24Uの各部分についてそれぞれ説明する。硬貨入金部33は、筐体30内の上部前寄りに設けられており、使用者により投入される硬貨CNを受ける部分である。硬貨入金部33は、上側に配置され硬貨CNが投入される投入口33Aと、その下側に配置され該硬貨CNを繰り出す硬貨繰出部33Bとを有している。投入口33Aは、上側が広く下側が狭いすり鉢状に構成されており、硬貨CNを一括して投入しやすいように、広く開口している。投入口33Aに投入された硬貨CNは、硬貨繰出部33Bに落下する。
【0030】
硬貨繰出部33Bは、硬貨入金部33の下方に位置しており、その内部に回転円盤(図示せず)が設けられている。硬貨繰出部33Bは、回転円盤が回転する際の遠心力により硬貨CNを外周側へ移動させ、一枚ずつに分離して繰り出し、該硬貨CNを硬貨鑑別部34へ順次引き渡す。
【0031】
硬貨鑑別部34は、例えば画像センサや磁気センサ等、硬貨CNの特徴を認識する種々のセンサ(図示せず)を有している。この硬貨鑑別部34は、硬貨繰出部33Bから繰り出された硬貨CNの特徴を認識し、この特徴に基づいて該硬貨CNの真偽、金種及び正損等の鑑別を行い、得られた鑑別結果を硬貨制御部21へ通知すると共に、該硬貨CNを選別搬送部35に引き渡す。このとき硬貨制御部21は、該硬貨CNの搬送先を決定する。
【0032】
選別搬送部35は、硬貨CNを搬送すべき搬送路が概ね水平に形成されると共に、この搬送路に沿ってリジェクト孔36及び6個の受入孔37が設けられている。リジェクト孔36は、例えば入金取引において、硬貨鑑別部34による硬貨鑑別結果に基づいて真正でないと鑑別された硬貨CN、或いは取扱対象でない他国の硬貨CNや遊戯施設のメダル等の異物(以下これらをリジェクト硬貨とも呼ぶ)を選別する部分である。各受入孔37は、真正であると鑑別された硬貨CN(以下これを正貨とも呼ぶ)を金種別に選別する部分であり、500円、100円、50円、10円、5円及び1円といった6種類の金種がそれぞれ割り当てられている。
【0033】
リジェクト孔36には、硬貨制御部21の制御に基づいて開閉する選別ゲート(図示せず)が設けられている。この選別ゲートは、リジェクト孔36を閉塞している場合、硬貨CNを選別搬送部35に沿って進行させる一方、該リジェクト孔36を開放している場合、硬貨CNを落下させて排出する。各受入孔37は、リジェクト孔36と同様の選別ゲート(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0034】
かかる構成により選別搬送部35は、硬貨鑑別部34から受け取った硬貨CNを搬送路に沿って搬送しながら、硬貨制御部21の制御に基づき、硬貨CNを選別する。具体的に選別搬送部35は、硬貨CNのうち、真正で無いと鑑別されたリジェクト硬貨をリジェクト孔36から排出させる一方、真正であると鑑別された正貨をその金種に応じた受入孔37から排出させる。
【0035】
リジェクト孔36の下側には、硬貨CNを左下且つ前方向へ進行させるリジェクトシュート38が設けられ、さらに該リジェクトシュート38の左下側に入金リジェクト部41が設けられている。入金リジェクト部41は、リジェクト硬貨収納部42と扉43とを有している。リジェクト硬貨収納部42は、中空の直方体状に構成されており、後側上部においてリジェクトシュート38と連通され、且つ前側面に取出口が形成されている。扉43は、リジェクト硬貨収納部42の取出口を開放又は閉塞する。
【0036】
各受入孔37の下方には、硬貨CNを左下方向且つ前方へ案内しながら進行させるシュート39がそれぞれ設けられ、さらに各シュート39の左下側に一時保留部60が設けられている。
【0037】
一時保留部60は、選別搬送部35の下側に位置しており、枠状部62、底板部67及び6個の金種別一時保留庫68の組み合わせにより構成されている。枠状部62は、上側及び下側が開放された中空の直方体状に形成されており、その内部に6個の金種別一時保留庫68を保持している。それぞれの金種別一時保留庫68の内部には、硬貨CNを集積させる保留空間75(
図3(A))が形成されている。これにより一時保留部60は、枠状部62の内部が金種別一時保留庫68によって前後方向に沿って6個の保留空間75に仕切られている。各保留空間75は、受入孔37と同様、それぞれ金種が割り当てられている。
【0038】
枠状部62は、一時保留部移動モータ49(
図3)から駆動力が伝達されることにより左右方向へ移動可能であり、具体的には
図3に示す中央の保留位置P1、左側の返却位置P2及び右側の収納位置P3にそれぞれ移動することができる。底板部67は、枠状部62が中央の保留位置P1にあるときに、該枠状部62の下側に当接若しくは極めて近接する位置に配置されている。このため一時保留部60は、枠状部62が保留位置P1にあるときに、各保留空間75の下側を底板部67により閉塞し、シュート39から落下してくる硬貨CNを該保留空間75内に収納させることができる。以下では、枠状部62が保留位置P1にある状態を保留状態とも呼ぶ。また以下では、枠状部62が移動する左右方向を移動方向とも呼び、該移動方向に直交する方向である前後方向を移動直交方向とも呼ぶ。また以下では、保留位置P1から返却位置P2へ向かう方向である左方向を返却状態移動方向Drとも呼び、保留位置P1から収納位置P3へ向かう方向である右方向を収納状態移動方向Dsとも呼ぶ。
【0039】
左側の返却位置P2にあるときの枠状部62の下側には、底板部67が配置されておらず、硬貨返却庫76が配置されている。このため一時保留部60は、枠状部62を保留位置P1に静止させて各保留空間75に硬貨CNが収納された状態で、該枠状部62を返却位置P2へ移動させた場合、各保留空間75に収容されていた硬貨CNを硬貨返却庫76へ落下させることができる。以下では、枠状部62が返却位置P2にある状態を返却状態とも呼ぶ。
【0040】
硬貨返却庫76は、一時保留部60よりも下側であって、且つ入金リジェクト部41の下側に設けられている。この硬貨返却庫76は、上面が開放された中空の直方体状でなり、一時保留部60から落下されてきたリジェクト硬貨等を収納する。また硬貨返却庫76は、手前側へ向かう方向(以下これを引出方向とも呼ぶ)へ引き出されることで該筐体30の外部へ移動し、又は後方へ押し込まれて該筐体30の内部に収納される。
【0041】
また右側の収納位置P3にあるときの枠状部62の下側には、底板部67が配置されておらず、ホッパ部77の一部が位置している。このため一時保留部60は、枠状部62を保留位置P1に静止させて各保留空間75に硬貨CNが収納された状態で、該枠状部62を収納位置P3へ移動させた場合、各保留空間75に収容されていた硬貨CNをホッパ部77へ落下させることができる。以下では、枠状部62が収納位置P3にある状態を収納状態とも呼ぶ。
【0042】
ホッパ部77は、一時保留部60の下側に位置しており、6個の金種別ホッパ78及び6個のホッパ繰出部79を、それぞれ前後方向に沿って整列するように配置している。各金種別ホッパ78及び各ホッパ繰出部79は、各受入孔37及び各保留空間75と同様、それぞれ金種が割り当てられている。
【0043】
金種別ホッパ78は、正面から見た形状が所定の多角形となり、且つ右方向から見た形状が長方形となるような中空の立体形状であり、上面が開放された開口を有している。このため各金種別ホッパ78は、一時保留部60の各保留空間75から落下してくる金種別の硬貨CNを、金種別に分別された状態を維持したまま、それぞれ開口から内部に収納する。ホッパ繰出部79は、金種別ホッパ78の底部を形成しており、硬貨制御部21(
図2)の制御に基づき、該金種別ホッパ78内に収納されている硬貨CNを1枚ずつに分離して下方へ繰り出す。
【0044】
ホッパ繰出部79の右側には、金種別ホッパ78からの出金先を切り替える出金切替部80が設けられている。出金切替部80は、板状の出金ブレード(図示せず)と、該出金ブレードを駆動するアクチュエータ(図示せず)と、ホッパ部77と硬貨出金箱82との間に形成された出金孔部(図示せず)とにより構成されている。この出金切替部80は、出金ブレードを回動させ出金孔部を開閉させることにより、硬貨CNの出金先を硬貨出金箱82又は回収庫84の何れかに切り替える。
【0045】
[1-2-2.下硬貨処理部の構成]
次に、下硬貨処理部24Lの各部分についてそれぞれ説明する。ホッパ部77の右下側には、硬貨出金箱82が配置されている。この硬貨出金箱82は、全体として前後方向に長い中空の直方体状に構成されており、上側が開放されると共に内部が前後方向に関して概ね6等分されるように仕切られることにより、6個の収納空間83が前後方向に沿って整列するように配置されている。各収納空間83は、それぞれ金種が割り当てられている。また硬貨出金箱82は、引出方向へ引き出されることで該筐体30の外部へ移動し、又は後方へ押し込まれて該筐体30の内部に収納される。
【0046】
このため各収納空間83は、各金種別ホッパ78から落下してくる金種別の硬貨CNを、金種別に分別された状態を維持したまま、それぞれ収納する。因みに各収納空間83は、最大で例えば100枚の硬貨CNをそれぞれ収納し得る。
【0047】
一方、ホッパ部77の下側には、回収庫84が配置されている。この回収庫84は、全体として前後方向に十分に長く、且つ上面が開放された中空の直方体状に構成されており、その内部に単一の回収空間85が形成されている。このため回収庫84は、各金種別ホッパ78から落下してくる金種別の硬貨CNを、全て混在させた状態で回収空間85内に収納する。また回収庫84は、引出方向へ引き出されることで該筐体30の外部へ移動し、又は後方へ押し込まれて該筐体30の内部に収納される。因みに回収庫84は、左右方向の長さが硬貨出金箱82よりも十分に長いため、各収納空間83よりも格段に多くの硬貨CNを収納する。
【0048】
[1-3.ブリッジ解除部の構成]
選別搬送部35の下側には、上述した一時保留部60を含むブリッジ解除部46が設けられている。
図3に示すように、ブリッジ解除部46は、一時保留部駆動部48と一時保留部60とにより構成されている。なお
図3(B)においてはブリッジ解除部フレーム47のブリッジ解除部フレーム前側板47Fは図示せず省略している。
【0049】
[1-3-1.一時保留部駆動部の構成]
一時保留部駆動部48は、一時保留部60の前方、後方、左方及び右方の周囲4面をそれぞれブリッジ解除部フレーム前側板47F、ブリッジ解除部フレーム後側板47B、ブリッジ解除部フレーム左側板47L及びブリッジ解除部フレーム右側板47Rにより囲う板金であるブリッジ解除部フレーム47を中心に構成されており、該ブリッジ解除部フレーム47に各種部材が取り付けられている。
【0050】
ブリッジ解除部フレーム後側板47Bにおける右端の後方には、一時保留部移動モータ49が固定されている。またブリッジ解除部フレーム後側板47Bにおける右端及び左端には、回転軸を前後方向に向けたギア52a及び52bが、回転軸を中心として回転可能に支持されている。このギア52aの周囲とギア52bの周囲とには、無端ベルトであるベルト50Bが張架されている。ベルト50Bは、下面部分が、一時保留部60の枠状部62における枠状部後側壁部64Bに固定されている。一方、ブリッジ解除部フレーム前側板47Fにおける右端及び左端には、回転軸を前後方向に向けたギア52c及び52dが、回転軸を中心として回転可能に支持されている。このギア52cの周囲とギア52dの周囲とには、無端ベルトであるベルト50Fが張架されている。ベルト50Fは、下面部分が、一時保留部60の枠状部62における枠状部前側壁部64Fに固定されている。
【0051】
一方、一時保留部移動モータ49の出力軸には、ギア52a及びシャフト53が固定されている。シャフト53は、前後方向に延びており、一時保留部移動モータ49の駆動力をギア52cへ伝達させる。
【0052】
かかる構成において、ブリッジ解除部46は、硬貨制御部21(
図2)の制御に基づき、一時保留部移動モータ49を所定の回転方向へ回転させることにより、ギア52aに駆動力を供給してベルト50Bを所定の回転方向へ走行させる。またブリッジ解除部46は、シャフト53を介し一時保留部移動モータ49の駆動力をギア52cへ伝達させることによりギア52cを回転させ、これに伴いベルト50Fをベルト50Bと同じ回転方向へ走行させる。このとき、ギア52aとギア52cとはシャフト53により同期して回転するため、ベルト50Bとベルト50Fとは同期して走行する。これによりブリッジ解除部46は、ベルト50B及び50Fに固定された枠状部62を左右方向へ移動させることができる。
【0053】
例えばブリッジ解除部46は、ベルト50B及び50Fを正面視で時計回りに回転させると、該ベルト50B及び50Fの下面部分を左側へ向かって移動させることにより、枠状部62を左側へ移動させる。一方、ブリッジ解除部46は、ベルト50B及び50Fを正面視で反時計回りに回転させると、下面部分を右側へ向かって移動させることにより、枠状部62を右側へ移動させる。
【0054】
一方、ブリッジ解除部フレーム左側板47Lの右側面において一時保留部60と左右方向に対向する箇所には、停止板54Lが固定されている。また、ブリッジ解除部フレーム右側板47Rの左側面において一時保留部60と左右方向に対向する箇所には、停止板54Rが固定されている。以下では、停止板54L及び54Rをまとめて停止板54とも呼ぶ。
【0055】
停止板54は、金属板が正面図で四角形のように折り曲げられた板金部材であり、一時保留部60における後端に位置する金種別一時保留庫68aから前端に位置する金種別一時保留庫68fまでの前後方向の範囲に亘って形成されている。また停止板54Lにおける右側面と、停止板54Rにおける左側面とは、鉛直方向及び前後方向に沿っており一時保留部60と左右方向に対向している。停止板54は、この停止板54Lにおける右側面及び停止板54Rにおける左側面に、一時保留部60の金種別一時保留庫68における突起部72を当接させる(詳細は後述する)。因みに停止板54Rの内側には、シャフト53が貫通している。
【0056】
またブリッジ解除部46は、枠状部62の有無を検出し検出結果を硬貨制御部21に通知する図示しない枠状部検知センサを有している。硬貨制御部21は、この枠状部検知センサから取得した検出結果に基づき、枠状部62の位置を検知する。すなわち硬貨制御部21は、枠状部62を移動させる際は、一時保留部移動モータ49を回転させて枠状部62を保留位置P1から移動させ返却位置P2又は収納位置P3まで到達したことを枠状部検知センサからの検出結果に基づき検知すると、一時保留部移動モータ49を停止させて枠状部62の移動を停止させる。
【0057】
[1-3-2.一時保留部の構成]
図3、
図4及び
図5に示すように、一時保留部60は、枠状部62、底板部67及び金種別一時保留庫68(68a、68b、68c、68d、68e及び68f)により構成されている。
【0058】
[1-3-2-1.枠状部の構成]
枠状部62は、上側及び下側が開放された前後方向に長い中空の直方体状に形成されており、6個の金種別一時保留庫68(68a、68b、68c、68d、68e及び68f)を収容する保留庫収納空間74が内部に形成されている。以下では、金種別一時保留庫68a、68b、68c、68d、68e及び68fをまとめて、金種別一時保留庫68とも呼ぶ。具体的に枠状部62は、6個の金種別一時保留庫68の前方、後方、左方及び右方の周囲4面をそれぞれ枠状部前側壁部64F、枠状部後側壁部64B、枠状部左側壁部64L及び枠状部右側壁部64Rにより囲っている。以下では、枠状部前側壁部64F及び枠状部後側壁部64Bをまとめて枠状部移動方向直交側壁部64FBとも呼び、枠状部左側壁部64L及び枠状部右側壁部64Rをまとめて枠状部移動方向側壁部64LRとも呼ぶ。
【0059】
図4に示すように、枠状部右側壁部64Rには、前後方向に沿って等間隔に6個の突起保持孔部65が形成されている。突起保持孔部65は、枠状部右側壁部64Rにおける、金種別一時保留庫68の突起部72Rと左右方向に対向する位置において、枠状部右側壁部64Rの右側面から左側面までを貫通している。また突起保持孔部65は、突起部72Rを右方向から見たときの形状とほぼ同様の形状であるが、僅かに大きく開口している。以上は枠状部右側壁部64Rにおける突起保持孔部65について説明したが、枠状部左側壁部64Lにおける突起保持孔部65においても同様である。枠状部62は、金種別一時保留庫68の左右の突起部72L及び72Rを突起保持孔部65の内部に入り込ませることにより、金種別一時保留庫68を左右から枠状部左側壁部64L及び枠状部右側壁部64Rで挟み込み、金種別一時保留庫68を保留庫収納空間74に収容させた状態で落下しないように保持する。また上述したように、枠状部前側壁部64F及び枠状部後側壁部64Bには、それぞれベルト50F及び50Bが固定されている。
【0060】
[1-3-2-2.底板部の構成]
底板部67は、平面視で枠状部62よりも大きい形状であり、上下方向に薄く上面が平坦な板状に構成されている。この底板部67は、枠状部62が中央の保留位置P1にあるときに、該枠状部62の下側に当接若しくは極めて近接する位置に配置されている。
【0061】
[1-3-2-3.金種別一時保留庫の構成]
金種別一時保留庫68a、68b、68c、68d、68e及び68fは、互いにほぼ同一形状であり、枠状部62の保留庫収納空間74において、前後方向に沿って並ぶように収容されている。金種別一時保留庫68は、例えばポリプロピレンのような比較的弾性変形しやすい樹脂材料により形成されている。
【0062】
図6に示すように、この金種別一時保留庫68は、箱部69及び突起部72(72L及び72R)により構成されている。
【0063】
箱部69は、平面視で四角形であり、上側及び下側が開放された中空の直方体状に形成されており、硬貨CNを集積させる保留空間75が内部に形成されている。具体的に箱部69は、保留空間75の前方、後方、左方及び右方の周囲4面を、それぞれ比較的厚さが薄く撓みやすい薄板状の前側壁部70F、後側壁部70B、左側壁部70L及び右側壁部70Rにより囲っている。以下では、前側壁部70F及び後側壁部70Bをまとめて移動方向直交側壁部70FBとも呼び、左側壁部70L及び右側壁部70Rをまとめて移動方向側壁部70LRとも呼び、移動方向直交側壁部70FB及び移動方向側壁部70LR
をまとめて壁部70とも呼ぶ。
【0064】
突起部72Lは、左側壁部70Lにおける、保留空間75に対する外側面である左側面から、左方向へ向かって突出している。同様に突起部72Rは、右側壁部70Rにおける、保留空間75に対する外側面である右側面から、右方向へ向かって突出している。以下では、突起部72L及び72Rをまとめて突起部72とも呼ぶ。このように突起部72は、移動方向側壁部70LRにおける外側面から、左右方向の外側へ向かって突出している。
【0065】
突起部72は、箱部69と一体成型された中実の四角柱形状であり、移動方向側壁部70LRにおいて、前後方向(移動直交方向)における中央部に形成されている。また突起部72は、前後方向(移動直交方向)の幅が、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔の4分の1程度となっており、前後方向の幅が狭く、上下方向に延びる直方体状となっている。このように突起部72の前後方向の幅は、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの前後方向の間隔よりも狭くなっている。このため一時保留部60は、突起部72が停止板54と当接した際に、突起部72を介し停止板54から右側壁部70R又は左側壁部70Lに加わる応力が、前後方向に分散しないようにでき、右側壁部70R又は左側壁部70Lを大きく撓ませることができる。また、突起部72における左右方向の高さは、枠状部62における枠状部移動方向側壁部64LRの左右方向の厚さよりも長くなっている。このため突起部72は、枠状部移動方向側壁部64LRの突起保持孔部65に入り込んだ際に、枠状部移動方向側壁部64LRにおける、保留庫収納空間74に対する外側面側まで、先端側が突出する。
【0066】
[1-4.硬貨処理装置の動作]
かかる構成において、硬貨処理装置3が入金処理時に硬貨入金部33に投入された硬貨CNを認識し、正当な硬貨CNを金種毎に区別して各金種別ホッパ78に収納する場合について説明する。金種別一時保留庫68に硬貨CNが集積されると、硬貨制御部21は、一時保留部移動モータ49を所定の回転方向へ回転させることにより、枠状部62を、
図3に示した保留位置P1から、収納状態移動方向Ds(右方向)へ移動させ、
図7に示す収納位置P3まで移動させると、一時保留部移動モータ49を停止させる。
【0067】
このとき金種別一時保留庫68は、突起部72Rが停止板54Rに当接してから移動が停止する。このため金種別一時保留庫68は、
図8(A)及び
図8(B)の左側の図から右側の図に示すように、停止板54Rから突起部72Rへ、右側から左方向へ向かって外力Fが加わる。この金種別一時保留庫68は、弾性変形可能な材質であるため、外力Fが突起部72Rに加わると、右側壁部70Rが、前後方向の中央部が左方向へ移動するように弓なりに湾曲するよう撓んで変形する。また右側壁部70Rが左方向へ押されるため、これに伴い、前側壁部70F及び後側壁部70Bが、左右方向の中央部がそれぞれ前方向及び後方向へ移動するように弓なりに湾曲するよう撓んで変形する。すなわち、金種別一時保留庫68は、突起部72Rが停止板54Rに当接すると、保留空間75を囲う前側壁部70F、後側壁部70B及び左側壁部70Lを撓ませるよう変形させることにより、保留空間75の形状を変化させる。
【0068】
このため、
図8(C)に示すように、前後方向に対向する壁部70同士である前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔が広がると共に、
図8(D)に示すように、左右方向に対向する壁部70同士である左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間隔が狭まる。このため、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔が広がることにより、
図8(C)の左側の図に示すように前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間でブリッジした硬貨CNは、
図8(C)の右側の図に示すように前側壁部70F及び後側壁部70Bと周側面が接触しなくなり、バランスが崩れて落下する。一方、左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間隔が狭まることにより、
図8(D)の左側の図に示すように左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間でブリッジした硬貨CNは、
図8(D)の右側の図に示すように左右方向に並んでブリッジしている硬貨CN同士が接触している周側面が上方向又は下方向へ移動し、バランスが崩れて落下する。
【0069】
以上は、枠状部62が保留位置P1から収納位置P3へ向かって右側(収納状態移動方向Ds)へ移動して金種別一時保留庫68における突起部72Rが停止板54Rに当接し、右側壁部70Rが左側へ向かって撓むと共に前側壁部70F及び後側壁部70Bそれぞれが前側及び後側へ向かって撓むことにより、ブリッジを崩す場合について説明した。これと同様に、枠状部62が保留位置P1から返却位置P2へ向かって左側(返却状態移動方向Dr)へ移動して金種別一時保留庫68における突起部72Lが停止板54Lに当接した場合、左側壁部70Lが右側へ向かって撓むと共に前側壁部70F及び後側壁部70Bそれぞれが前側及び後側へ向かって撓むことにより、硬貨処理装置3は、ブリッジを崩すことができる。
【0070】
このため硬貨処理装置3は、金種別一時保留庫68の保留空間75においてブリッジが形成されていたとしても、弾性部材により形成された金種別一時保留庫68の底面開口が全開となった後に、突起部72が停止板54と当接することにより金種別一時保留庫68を弾性変形させてブリッジを解消できる。これにより硬貨処理装置3は、金種別一時保留庫68に一時保留されていた硬貨CNを、円滑に金種別ホッパ78内に落下させて集積できる。硬貨返却庫76へ落下させるときも同様である。
【0071】
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金処理装置1の硬貨処理装置3は、金種別一時保留庫68を弾性変形可能な部材によって構成し、枠状部62(すなわち金種別一時保留庫68)を保留位置P1から返却位置P2又は収納位置P3へ移動させる際に、金種別一時保留庫68の突起部72を停止板54に当接させるようにした。
【0072】
このため硬貨処理装置3は、金種別一時保留庫68の突起部72が停止板54に当接していない状態と比較して、弾性変形により、左側壁部70L又は右側壁部70Rと、前側壁部70F及び後側壁部70Bとを撓ませるように変形させ、金種別一時保留庫68において対向する壁部70同士である、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔と、左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間隔とを変化させることができる。これにより硬貨処理装置3は保留空間75の形状を変化させることができ、集積されている硬貨CNのバランスを崩し、ブリッジを解消させることができる。
【0073】
また硬貨処理装置3は、一時保留部60に一時貯留した硬貨CNを硬貨返却庫76又はホッパ部77に落下させる際に、従来から行っていた動作である、枠状部62を保留位置P1から返却位置P2又は収納位置P3へ移動させるという動作を行う際に、金種別一時保留庫68の突起部72を停止板54に当接させるようにした。
【0074】
このため硬貨処理装置3は、従来から行っていた動作である、枠状部62を保留位置P1から返却位置P2又は収納位置P3へ移動させるという動作は変更せずに、一時保留部60のみを本実施の形態の構造に変更(すなわち交換)することにより、ブリッジを解消できる。
【0075】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金処理装置1の硬貨処理装置3は、投入された硬貨CNを1枚毎に送出する硬貨入金部33と、硬貨入金部33から送出された硬貨CNを鑑別する硬貨鑑別部34と、硬貨CNを集積する硬貨返却庫76及びホッパ部77と、硬貨鑑別部34と硬貨返却庫76及びホッパ部77との間に設けられ、硬貨返却庫76及びホッパ部77へ集積する硬貨CNを一時保留すると共に、硬貨返却庫76の方向又はホッパ部77の方向に移動可能に構成された金種別一時保留庫68と、金種別一時保留庫68に一時保留された硬貨CNを硬貨返却庫76又はホッパ部77に集積させるときに、金種別一時保留庫68と当接させる停止板54とを設け、金種別一時保留庫68は、硬貨CNを一時保留する保留空間75を形成する壁部70を有し、壁部70は、弾性変形可能な部材によって構成され、金種別一時保留庫68が停止板54と当接すると、壁部70が弾性変形することにより保留空間75を変化させるようにした。
【0076】
これにより硬貨処理装置3は、金種別一時保留庫68に一時保留された硬貨CNを硬貨返却庫76又はホッパ部77へ集積させるときにブリッジが形成されていたとしても、金種別一時保留庫68の突起部72を停止板54に当接させて金種別一時保留庫68を弾性変形させることにより、ブリッジを解消できる。かくして硬貨処理装置3は、金種別一時保留庫68に一時保留された硬貨CNを円滑に硬貨返却庫76又はホッパ部77内に落下させて集積させることができ、硬貨処理における違算の発生を防止することができる。
【0077】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.現金処理装置及び硬貨処理装置の構成]
第2の実施の形態による現金処理装置101(
図1)は、第1の実施の形態による現金処理装置1と比較して、硬貨処理装置3に代わる硬貨処理装置103を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置103(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置3と比較して、ブリッジ解除部46に代わるブリッジ解除部146を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0078】
[2-2.ブリッジ解除部の構成]
図3(A)と対応する部材に同一符号を付した
図9に示すように、ブリッジ解除部146は、第1の実施の形態によるブリッジ解除部46と比較して、一時保留部駆動部48に代わる一時保留部駆動部148と、一時保留部60に代わる一時保留部160とを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0079】
[2-2-1.一時保留部駆動部の構成]
一時保留部駆動部148は、一時保留部駆動部48と比較して、停止板54が省略されていると共に、吸着板90(90aL、90aR、90bL、90bR、90cL、90cR、90dL、90dR、90eL、90eR、90fL及び90fR)が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0080】
吸着板90aL、90bL、90cL、90dL、90eL及び90fLは、ブリッジ解除部フレーム左側板47Lの右側面において、それぞれ金種別一時保留庫168a、168b、168c、168d、168e及び168fにおける磁石92と上下方向の位置を合わせて、磁石92よりも僅かに前方の位置と左右方向に対向する箇所から、一時保留部160に向かって右方向へ突出している。
【0081】
また吸着板90aR、90bR、90cR、90dR、90eR及び90fRは、ブリッジ解除部フレーム右側板47Rの左側面において、それぞれ金種別一時保留庫168a、168b、168c、168d、168e及び168fにおける磁石92と上下方向の位置を合わせて、磁石92よりも僅かに前方の位置と左右方向に対向する箇所から、一時保留部160に向かって左方向へ突出している。
【0082】
このため、吸着板90aL、90bL、90cL、90dL、90eL及び90fLと、吸着板90aR、90bR、90cR、90dR、90eR及び90fRとは、それぞれ左右方向に対向している。以下では、吸着板90aL、90aR、90bL、90bR、90cL、90cR、90dL、90dR、90eL、90eR、90fL及び90fRをまとめて、吸着板90とも呼ぶ。
【0083】
吸着板90は、例えば金属板のような、磁石92の磁力により磁石92が吸着する材質(すなわち、磁石92との間で引力を発生させる材質)である。この吸着板90は、前後方向に薄く左右方向に延在する板状に構成されている。
【0084】
[2-2-2.一時保留部の構成]
一時保留部160は、一時保留部60と比較して、枠状部62に代わる枠状部162と、金種別一時保留庫68(68a、68b、68c、68d、68e及び68f)に代わる金種別一時保留庫168(168a、168b、168c、168d、168e及び168f)とを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0085】
[2-2-2-1.枠状部の構成]
図4と対応する部材に同一符号を付した
図10に示すように、枠状部162は、枠状部62と比較して、枠状部右側壁部64R及び枠状部左側壁部64Lに6個の吸着板貫通孔部91が形成されている。突起保持孔部65は、第1の実施の形態と同様に構成されている。枠状部162は、金種別一時保留庫168の左右の突起部72L及び72Rを突起保持孔部65の内部に入り込ませることにより、金種別一時保留庫168を左右から枠状部左側壁部64L及び枠状部右側壁部64Rで挟み込み、金種別一時保留庫168を保留庫収納空間74に収容させた状態で落下しないように保持する。また、吸着板貫通孔部91は、枠状部移動方向側壁部64LRにおける、吸着板90と左右方向に対向する位置において、枠状部移動方向側壁部64LRの右側面から左側面までを貫通している。また吸着板貫通孔部91は、吸着板90の横断面の形状とほぼ同様の形状であるが、僅かに大きく開口している。この吸着板貫通孔部91は、枠状部162が保留位置P1から返却位置P2又は収納位置P3へ移動する際に、吸着板90を保留庫収納空間74に入り込ませ、磁石92の前方まで到達させる。
【0086】
[2-2-2-2.金種別一時保留庫の構成]
図6と対応する部材に同一符号を付した
図11に示すように、金種別一時保留庫168は、金種別一時保留庫68と比較して、磁石92が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。突起部72(72L及び72R)は、第1の実施の形態と同様に構成されており、枠状部162の突起保持孔部65の内部に入り込んでいる。また、磁石92は、磁性体であり、前後方向に薄く前面及び後面が平坦な板状に構成されており、金種別一時保留庫168の前側壁部70Fにおける左右方向のほぼ中央部に固定されている。
【0087】
[2-3.硬貨処理装置の動作]
かかる構成において、第1の実施の形態と同様に、硬貨処理装置103が入金処理時に硬貨入金部33に投入された硬貨CNを認識し、正当な硬貨CNを金種毎に区別して各金種別ホッパ78に収納する場合について説明する。金種別一時保留庫168に硬貨CNが集積されると、硬貨制御部21は、一時保留部移動モータ49を所定の回転方向へ回転させることにより、枠状部162を、
図9に示した保留位置P1から、収納状態移動方向Ds(右方向)へ移動させ、
図12に示す収納位置P3まで移動させると、一時保留部移動モータ49を停止させる。
【0088】
このとき吸着板90は、吸着板貫通孔部91を介し保留庫収納空間74に入り込み、磁石92の前方まで到達する。このため金種別一時保留庫168は、
図8(B)と対応する部材に同一符号を付した
図13(A)に示すように、磁石92が取り付けられた前側壁部70Fに対し、吸着板90が位置する前方へ向かって引力が加わる。この金種別一時保留庫168は、弾性変形可能な材質であるため、前側壁部70Fが吸着板90に向かって引っ張られると前側壁部70Fにおける左右方向の中央部が前方向へ移動するように弓なりに湾曲するよう撓んで変形する。また前側壁部70Fが前方向へ引っ張られるため、これに伴い、左側壁部70L及び右側壁部70Rが、前後方向の中央部がそれぞれ右方向及び左方向へ移動するように弓なりに湾曲するよう撓んで変形する。すなわち、金種別一時保留庫168は、吸着板90が前側壁部70Fの前方に位置すると、保留空間75を囲う前側壁部70F、左側壁部70L及び右側壁部70Rを撓ませるよう変形させることにより、保留空間75の大きさを変化させる。
【0089】
このため、
図8(C)と対応する部材に同一符号を付した
図13(B)に示すように、前後方向に対向する壁部70同士である前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔が広がると共に、
図8(D)と対応する部材に同一符号を付した
図13(C)に示すように、左右方向に対向する壁部70同士である左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間隔が狭まる。このため、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔が広がることにより、
図13(B)の左側の図に示すように前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間でブリッジした硬貨CNは、
図13(B)の右側の図に示すように前側壁部70F及び後側壁部70Bと周側面が接触しなくなり、バランスが崩れて落下する。一方、左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間隔が狭まることにより、
図13(C)の左側の図に示すように左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間でブリッジした硬貨CNは、
図13(C)の右側の図に示すように左右方向に並んでブリッジしている硬貨CN同士が接触している周側面が上方向又は下方向へ移動し、バランスが崩れて落下する。
【0090】
以上は、枠状部162が保留位置P1から収納位置P3へ向かって右側(収納状態移動方向Ds)へ移動して金種別一時保留庫168における前側壁部70Fが吸着板90に向かって引っ張られ吸着され前側壁部70Fが前側へ向かって撓むと共に左側壁部70L及び右側壁部70Rそれぞれが右側及び左側へ向かって撓むことにより、ブリッジを崩す場合について説明した。これと同様に、枠状部162が保留位置P1から返却位置P2へ向かって左側(返却状態移動方向Dr)へ移動して前側壁部70Fが吸着板90に向かって引っ張られた場合、前側壁部70Fが前側へ向かって撓むと共に左側壁部70L及び右側壁部70Rそれぞれが右側及び左側へ向かって撓むことにより、硬貨処理装置103は、ブリッジを崩すことができる。
【0091】
このため硬貨処理装置103は、金種別一時保留庫168の保留空間75においてブリッジが形成されていたとしても、弾性部材により形成された金種別一時保留庫168の底面開口が全開となった後に、前側壁部70Fが吸着板90に向かって引っ張られることにより金種別一時保留庫168を弾性変形させてブリッジを解消できる。これにより硬貨処理装置103は、金種別一時保留庫168に一時保留されていた硬貨CNを、円滑に金種別ホッパ78内に落下させて集積できる。硬貨返却庫76へ落下させるときも同様である。
【0092】
[2-4.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による現金処理装置101の硬貨処理装置103は、金種別一時保留庫168を弾性変形可能な部材によって構成し、枠状部162(すなわち金種別一時保留庫168)を保留位置P1から返却位置P2又は収納位置P3へ移動させる際に、金種別一時保留庫168の磁石92と吸着板90とを吸着させるようにした。
【0093】
このため硬貨処理装置103は、金種別一時保留庫168の磁石92が固定された前側壁部70Fが吸着板90に引っ張られていない状態と比較して、弾性変形により、前側壁部70Fと、左側壁部70L及び右側壁部70Rとを撓ませるように変形させ、金種別一時保留庫168において対向する壁部70同士である、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔と、左側壁部70Lと右側壁部70Rとの間隔とを変化させることができる。これにより硬貨処理装置103は保留空間75の形状を変化させることができ、硬貨CNのバランスを崩し、ブリッジを解消させることができる。
【0094】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金処理装置101の硬貨処理装置103は、投入された硬貨CNを1枚毎に送出する硬貨入金部33と、硬貨入金部33から送出された硬貨CNを鑑別する硬貨鑑別部34と、硬貨鑑別部34で鑑別された硬貨CNを集積する硬貨返却庫76及びホッパ部77と、硬貨鑑別部34と硬貨返却庫76及びホッパ部77との間に設けられ、硬貨返却庫76及びホッパ部77へ集積する硬貨CNを一時保留すると共に、硬貨返却庫76方向又はホッパ部77方向に移動可能に構成された金種別一時保留庫168と、金種別一時保留庫168に一時保留された硬貨CNを硬貨返却庫76又はホッパ部77に集積させるときに、磁力により金種別一時保留庫168の前側壁部70Fにおける被変形作用部としての磁石92と吸着する吸着板90とを設け、金種別一時保留庫168は、硬貨CNを一時保留する保留空間75を形成する壁部70を有し、壁部70は、弾性変形可能な部材によって構成され、金種別一時保留庫168が吸着板90によって引っ張られると、壁部70が弾性変形することにより保留空間75を変化させるようにした。
【0095】
これにより硬貨処理装置103は、金種別一時保留庫168に一時保留された硬貨CNを硬貨返却庫76又はホッパ部77へ集積させるときにブリッジが形成されたとしても、金種別一時保留庫168の磁石92が固定された前側壁部70Fと吸着板90とを吸着させて金種別一時保留庫168を弾性変形させることにより、ブリッジを解消できる。かくして硬貨処理装置103は、金種別一時保留庫168に一時保留された硬貨CNを円滑に硬貨返却庫76又はホッパ部77内に落下させて集積させることができ、硬貨処理における違算の発生を防止することができる。
【0096】
その他の点においても、第2の実施の形態によるブリッジ解除部146は、第1の実施の形態によるブリッジ解除部46と同様の作用効果を奏し得る。
【0097】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、移動方向側壁部70LRにおいて、前後方向(移動直交方向)における中央部に突起部72を配置する場合について述べた。本発明はこれに限らず、移動方向側壁部70LRにおいて、前後方向における中央部よりも前側寄り又は後側寄りに突起部72を配置しても良い。第2の実施の形態についても同様である。要は、第1の実施の形態の場合、突起部72が停止板54に当接した際に、弾性変形により移動方向側壁部70LRを保留空間75側(内側)へ凹むように撓ませられれば良い。但し、移動方向側壁部70LRにおける前後方向に関し中央部よりも前側寄り又は後側寄りよりも、中央部に突起部72を配置した方が、移動方向側壁部70LRにおける前後端部を支点として中央部を大きく撓ませることができるため、停止板54に突起部72が当接した際に、移動方向側壁部70LRを撓ませやすくすることができる。
【0098】
また上述した第1の実施の形態においては、突起部72における前後方向(移動直交方向)の幅を、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔の4分の1程度とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、突起部72の幅を、前側壁部70Fと後側壁部70Bとの間隔に対し他の種々の割合としても良い。第2の実施の形態についても同様である。第1の実施の形態の場合、移動方向側壁部70LRの幅に対し突起部72の幅が大きくなると、停止板54に突起部72が当接した際に、移動方向側壁部70LRにおける前後端部を支点として中央部を大きく撓ませにくくなる傾向がある。このため、突起部72の幅は、移動方向側壁部70LRの幅に対し2分の1以下程度であることが好ましい。
【0099】
さらに上述した第1の実施の形態においては、突起部72を箱部69と一体成型することにより突起部72を形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、突起部72を箱部69とは別に成型し、箱部69に対し突起部72を取り付けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0100】
さらに上述した第1の実施の形態においては、金種別一時保留庫68をポリプロピレンにより形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、合成ゴム等のゴム部材等、他の種々の弾性変形しやすい素材により、金種別一時保留庫68を形成しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0101】
さらに上述した第1の実施の形態においては、箱部69を平面視で四角形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、箱部69を平面視で他の種々の形状としても良い。第2の実施の形態についても同様である。要は、第1の実施の形態の場合、停止板54に突起部72が当接した際に、何れかの壁部70が変形できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0102】
さらに上述した第1の実施の形態においては、移動方向側壁部70LRの外側面から左右方向の外側へ向かって突起部72を突出させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、金種別一時保留庫68において突起部72を省略して箱部69のみとし、停止板54に、金種別一時保留庫68の移動方向側壁部70LRに向かって左右方向の内側へ突出する突起部を形成しても良い。
【0103】
さらに上述した第1の実施の形態においては、一時保留部60における後端に位置する金種別一時保留庫68aから前端に位置する金種別一時保留庫68fまでの前後方向の範囲に亘って板金が正面図で四角形のように屈曲されることにより停止板54を形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、それぞれの金種別一時保留庫68の突起部72と当接する位置に、前後方向に亘って6つのブロック形状の当接部を離散的に配置させても良い。
【0104】
さらに上述した第2の実施の形態においては、金種別一時保留庫168に磁石92を、ブリッジ解除部フレーム47に吸着板90を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、磁石92と吸着板90との配置を逆にし、金種別一時保留庫168に吸着板90を、ブリッジ解除部フレーム47に磁石92を設けても良い。
【0105】
さらに上述した第2の実施の形態においては、金種別一時保留庫168の前側壁部70Fに磁石92を設け、磁石92と吸着板90とを吸着させて前側壁部70Fを前方へ膨らむように変形させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、金種別一時保留庫168の後側壁部70Bに磁石92を設け、該磁石92と対応する位置に設けられた吸着板90と磁石92とを吸着させて後側壁部70Bを後方へ膨らむように変形させても良い。又は、金種別一時保留庫168の前側壁部70F及び後側壁部70Bに磁石92を設け、該磁石92それぞれと対応する位置に設けられた吸着板90と磁石92とそれぞれを吸着させて前側壁部70Fを前方へ、後側壁部70Bを後方へ膨らむように変形させても良い。さらに、吸着板90に代えて、磁石92と反発する反発板を設け、該反発板と磁石92とを反発させて、前側壁部70F又は後側壁部70B、若しくは前側壁部70F及び後側壁部70Bを、保留空間75側へ凹むように変形させても良い。その場合、反発板が磁石92から離間した際に、壁部70が本来の形状へ戻ることができれば良い。またさらに、磁力に限らず他の種々の方法により、金種別一時保留庫168の壁部70を変形させても良い。さらに、磁石92を壁部70に取り付けるのではなく、磁力によって吸着又は反発する素材により壁部70を形成しても良い。
【0106】
さらに上述した第2の実施の形態においては、金種別一時保留庫168の前側壁部70Fに磁石92を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、枠状部移動方向側壁部64LRの内壁面と金種別一時保留庫168の移動方向側壁部70LRの外壁面との間に隙間が存在する場合、金種別一時保留庫168の突起部72に磁石92を設けると共に、ブリッジ解除部フレーム47において該磁石92と左右方向に対向する位置に吸着板90を設け、吸着板90と磁石92とを吸着させて移動方向側壁部70LRを変形させても良い。
【0107】
さらに上述した第1の実施の形態においては、入金処理時において用いられる一時保留部60に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、ホッパ部77と硬貨出金箱82及び回収庫84との間に、一時保留部60とほぼ同様の構成の下一時保留部を設ける場合、該下一時保留部にも本発明を適用しても良い。下一時保留部が設けられている場合、硬貨処理装置3は、硬貨CNを出金するときは、下一時保留部を硬貨出金箱82上に移動させ、ホッパ部77から落下し下一時保留部に集積した硬貨CNを硬貨出金箱82に落下させて収納する一方、硬貨CNを回収するときは、下一時保留部を回収庫84上に移動させ、ホッパ部77から落下し下一時保留部に集積した硬貨CNを回収庫84に落下させて収納する。第2の実施の形態についても同様である。
【0108】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨処理装置3が日本国において発行されている6金種の硬貨CNを取り扱う場合、金種別ホッパ78等をそれぞれ6個設け、一時保留部60に6個の保留空間75を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨処理装置3が設置される国や地域において発行されている硬貨CNの金種の数に応じて、5以下や7以上の金種の硬貨CNを取り扱うようにし、一時保留部60に5個以下や7個以上の保留空間75を設けるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0109】
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金処理装置1(
図1及び
図2)が硬貨処理装置3及び紙幣処理装置4を有する場合に、該硬貨処理装置3に本発明を適用する場合について述べた。これに限らず、例えば硬貨処理装置3を独立させると共に表示操作パネル7、テンキー8及びレシート印刷部6等を組み込んだ上で、該硬貨処理装置3に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0110】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0111】
さらに上述した第1の実施の形態においては、操作部としての表示操作パネル7及びテンキー8と、送出部としての硬貨入金部33と、鑑別部としての硬貨鑑別部34と、第1及び第2の集積庫としての硬貨返却庫76及びホッパ部77と、一時保留庫としての金種別一時保留庫68と、当接部としての停止板54とによって、貨幣取扱装置としての現金処理装置1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる操作部と、送出部と、鑑別部と、第1及び第2の集積庫と、一時保留庫と、当接部とによって、貨幣取扱装置を構成しても良い。
【0112】
さらに上述した第2の実施の形態においては、操作部としての表示操作パネル7及びテンキー8と、送出部としての硬貨入金部33と、鑑別部としての硬貨鑑別部34と、第1及び第2の集積庫としての硬貨返却庫76及びホッパ部77と、一時保留庫としての金種別一時保留庫168と、変形作用部としての吸着板90とによって、貨幣取扱装置としての現金処理装置101を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる操作部と、送出部と、鑑別部と、第1及び第2の集積庫と、一時保留庫と、変形作用部とによって、貨幣取扱装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、例えば硬貨の出金処理を行う硬貨処理装置で利用できる。
【符号の説明】
【0114】
1、101……現金処理装置、2……統括管理装置、3、103……硬貨処理装置、4……紙幣処理装置、6……レシート印刷部、7……表示操作パネル、8……テンキー、11……統括制御部、21……硬貨制御部、24……硬貨処理部、24U……上硬貨処理部、24L……下硬貨処理部、30……筐体、33……硬貨入金部、34……硬貨鑑別部、35……選別搬送部、36……リジェクト孔、37……受入孔、38……リジェクトシュート、41……入金リジェクト部、42……リジェクト硬貨収納部、43……扉、46、146……ブリッジ解除部、47……ブリッジ解除部フレーム、47L……ブリッジ解除部フレーム左側板、47R……ブリッジ解除部フレーム右側板、47F……ブリッジ解除部フレーム前側板、47B……ブリッジ解除部フレーム後側板、48、148……一時保留部駆動部、49……一時保留部移動モータ、50F、50B……ベルト、52a、52b、52c、52d……ギア、53……シャフト、54……停止板、60、160……一時保留部、62、162……枠状部、64LR……枠状部移動方向側壁部、64L……枠状部左側壁部、64R……枠状部右側壁部、64FB……枠状部移動方向直交側壁部、64F……枠状部前側壁部、64B……枠状部後側壁部、65……突起保持孔部、67……底板部、68、168……金種別一時保留庫、69……箱部、70……壁部、70LR……移動方向側壁部、70L……左側壁部、70R……右側壁部、70FB……移動方向直交側壁部、70F……前側壁部、70B……後側壁部、72……突起部、74……保留庫収納空間、75……保留空間、76……硬貨返却庫、77……ホッパ部、78……金種別ホッパ、79……ホッパ繰出部、80……出金切替部、82……硬貨出金箱、83……収納空間、84……回収庫、85……回収空間、90……吸着板、91……吸着板貫通孔部、92……磁石、Dr……返却状態移動方向、Ds……収納状態移動方向、P1……保留位置、P2……返却位置、P3……収納位置。