(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/06 20060101AFI20240312BHJP
G03G 5/04 20060101ALI20240312BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G03G5/06 316A
G03G5/04
G03G5/06 312
G03G5/06 313
G03G5/06 372
G03G5/06 373
G03G21/00 312
(21)【出願番号】P 2020162010
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕子
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 一也
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-271962(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072972(WO,A1)
【文献】特開2019-002951(JP,A)
【文献】特許第4041741(JP,B2)
【文献】特開2016-142856(JP,A)
【文献】特開2006-163129(JP,A)
【文献】特開2018-036374(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061542(WO,A1)
【文献】特開2020-118707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
G03G 21/00
G03G 21/04
G03G 21/10-21/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を正極性に帯電する帯電装置と、
前記像担持体の前記表面と当接して、前記像担持体の前記表面に付着しているトナーを回収するクリーニング部材と、
前記クリーニング部材に印加する電圧を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、印刷モードにおいて負極性の第1電圧を前記クリーニング部材に印加させ、
前記像担持体は、導電性基体と、感光層とを備える電子写真感光体であり、
前記感光層は、単層であり、且つ電荷発生剤と電子輸送剤とバインダー樹脂と正孔輸送剤とを含有し、
前記電子輸送剤は、一般式(1)で表される化合物を含む、画像形成装置。
【化1】
(前記一般式(1)中、
R
1及びR
2は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される1個以上5個以下の置換基で置換されていてもよいアリール基、水素原子、アルキル基、複素環基、アルコキシ基、アラルキル基、又はアリル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、
ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群から選択される1個以上5個以下の置換基で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、
炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は
5員以上14員以下の複素環基を表す、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物は、化学式(ETM1)、(ETM2)、(ETM6)、(ETM7)、(ETM8)、(ETM19)、(ETM22)、(ETM23)、(ETM24)、(ETM28)、又は(ETM29)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【化2】
【化3】
【請求項4】
前記正孔輸送剤は、一般式(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、又は(27)で表される化合物を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【化4】
【化5】
(前記一般式(21)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、及びR
16は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
17及びR
18は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、b5及びb6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、d及びeは、各々独立に、0又は1を表し、
前記一般式(22)中、R
20は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、R
21、R
22、及びR
23は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、f1、f2、及びf3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、f4は、0又は1を表し、
前記一般式(23)中、R
31、R
32、R
33、R
34、及びR
35は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、g1、g2、g3、g4、及びg5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
前記一般式(24)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、及びR
46は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、h1、h2、h4、及びh5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、h3及びh6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、
前記一般式(25)中、R
71、R
72、R
73、及びR
74は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表し、j1、j2、j3、及びj4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
前記一般式(26)中、R
81、R
82、及びR
83は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、R
84及びR
85は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、k1、k2、及びk3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、k4及びk5は、各々独立に、1又は2を表し、
前記一般式(27)中、R
61、R
62、及びR
63は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表し、R
64、R
65、及びR
66は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記正孔輸送剤は、化学式(HTM1)、(HTM2)、(HTM3)、(HTM4)、(HTM5)、(HTM6)、(HTM7)、(HTM8)、(HTM9)、又は(HTM10)で表される化合物を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項6】
前記電荷発生剤は、チタニルフタロシアニンのY型結晶を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御装置は、クリーニングモードにおいて正極性の第2電圧を前記クリーニング部材に印加させる、請求項1~6の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写装置とを更に備える、請求項1~7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体の前記表面を除電する除電装置を更に備える、請求項1~8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。特許文献1に記載の画像形成装置が備える電子写真感光体は、少なくともその表面層である感光層に、バインダー樹脂であるビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討により、特許文献1に記載の画像形成装置は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性の点で不十分であることが判明した。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、像担持体の正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、像担持体を良好に正帯電可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を正極性に帯電する帯電装置と、前記像担持体の前記表面と当接して、前記像担持体の前記表面に付着しているトナーを回収するクリーニング部材と、前記クリーニング部材に印加する電圧を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、印刷モードにおいて負極性の第1電圧を前記クリーニング部材に印加させる。前記像担持体は、導電性基体と、感光層とを備える電子写真感光体である。前記感光層は、単層であり、且つ電荷発生剤と電子輸送剤とバインダー樹脂と正孔輸送剤とを含有する。前記電子輸送剤は、一般式(1)で表される化合物を含む。
【0007】
【0008】
前記一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される1個以上5個以下の置換基で置換されていてもよいアリール基、水素原子、アルキル基、複素環基、アルコキシ基、アラルキル基、又はアリル基を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置によれば、像担持体の正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、像担持体を良好に正帯電できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す像担持体及びクリーニング部材と、制御装置とを示す図である。
【
図3】印刷モード及びクリーニングモードにおけるクリーニング部材の制御を示すタイムチャート図である。
【
図4】
図1に示す画像形成装置の制御を示すフローチャート図である。
【
図5】
図1に示す像担持体である電子写真感光体の一例を示す部分断面図である。
【
図6】
図1に示す像担持体である電子写真感光体の一例を示す部分断面図である。
【
図7】
図1に示す像担持体である電子写真感光体の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。一般式の説明における「各々独立に」は、同一又は異なってもよいことを意味する。明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
まず、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0013】
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基及び3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例、炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例、及び炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0014】
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、及び3-エチルブトキシ基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチルオキシ基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0015】
炭素原子数6以上14以下のアリール基、及び炭素原子数6以上10以下のアリール基は、各々、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0016】
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、及び炭素原子数7以上13以下のアラルキル基は、各々、特記なき限り、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基で置換された炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数7以上13以下のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6以上10以下のアリール基で置換された炭素原子数1以上3以下のアルキル基である。
【0017】
5員以上14員以下の複素環基、及び5員又は6員の複素環基は、各々、特記なき限り、非置換である。5員以上14員以下の複素環基は、例えば、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環の複素環が2個縮合した複素環基;このような単環の複素環と、5員又は6員の単環の炭化水素環とが縮合した複素環基;このような単環の複素環が3個縮合した複素環基;このような単環の複素環2個と、5員又は6員の単環の炭化水素環1個とが縮合した複素環基;又はこのような単環の複素環1個と、5員又は6員の単環の炭化水素環2個とが縮合した複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H-インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H-キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3-ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、及びフェナントロリニル基が挙げられる。5員又は6員の複素環基は、5員以上14員以下の複素環基の例として述べた基のうち、該当する環員数を有する基である。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【0018】
[画像形成装置]
以下、
図1を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置の一例である、画像形成装置110について説明する。
図1は、画像形成装置110の断面図である。
【0019】
図1に示す画像形成装置110は、制御装置10(
図2参照)と、給送部20と、搬送部30と、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kと、転写部60と、ベルトクリーニング部70と、定着部80と、排紙部90とを備える。なお、ベルトクリーニング部70については、下記<印刷モード及びクリーニングモード>の説明において詳述する。
【0020】
制御装置10は、画像形成装置110の各部(より具体的には、給送部20、搬送部30、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40K、転写部60、ベルトクリーニング部70、定着部80、及び排紙部90)の動作を制御する。制御装置10は、本体筐体内の適宜な位置に配置されている。制御装置10は、例えば、図示しないCentral Processing Unit(CPU)、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、及び入出力インターフェイスを備える。制御装置10は、各種センサーの検出結果、及び予め設定されたプログラムに基づいて各演算処理を行うことで制御を実行する。
【0021】
給送部20は、カセット22を備える。カセット22は、複数枚の記録媒体Pを収容する。給送部20は、カセット22から搬送部30へ、記録媒体Pを給送する。記録媒体Pは、例えば、紙、布、又は合成樹脂製のシートである。
【0022】
搬送部30は、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kに記録媒体Pを搬送する。
【0023】
画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kは、各々、対応する像担持体100Y、100M、100C、及び100Kと、帯電装置42Y、42M、42C、及び42Kと、露光装置44Y、44M、44C、及び44Kと、現像装置46Y、46M、46C、及び46Kと、クリーニング装置48Y、48M、48C、及び48Kと、除電装置50Y、50M、50C、及び50Kとを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成装置110の各部材に付された「Y」、「M」、「C」、及び「K」の添え字を省略して説明する。例えば、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40Y、40M、40C、及び40Kの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0024】
転写部60は、4つの転写装置62Y、62M、62C、及び62Kと、駆動ローラー64と、無端状の転写ベルト66と、従動ローラー67と、テンションローラー68とを備える。転写装置62Y、62M、62C、及び62Kは、各々、転写ベルト66の内周側に配置され、転写ベルト66を介して像担持体100Y、100M、100C、及び100Kに対向する。転写ベルト66は、駆動ローラー64と、従動ローラー67と、テンションローラー68とに掛け渡される。転写ベルト66は、駆動ローラー64が回転することにより、矢付方向(
図1における時計回り方向)に回転する。
【0025】
画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体100が設けられる。像担持体100は、矢符方向(
図1における反時計回り方向)に回転可能に設けられる。像担持体100の周囲には、像担持体100の回転方向の上流側から記載された順に、帯電装置42と、露光装置44と、現像装置46と、転写装置62と、クリーニング装置48と、除電装置50とが設けられる。
【0026】
像担持体100は、電子写真感光体1(
図5参照、以下「感光体」と記載することがある)である。感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても良好に正帯電可能である。従って、像担持体100としてこのような感光体1を備えることで、画像形成装置110は、記録媒体Pに良好な画像を形成することができる。なお、感光体1については、下記<感光体>において詳細に説明する。
【0027】
帯電装置42は、像担持体100の表面(例えば、周面)を、正極性に帯電させる。帯電装置42は、例えば、スコロトロン帯電器である。
【0028】
露光装置44は、帯電された像担持体100の表面を露光する。これにより、像担持体100の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置110に入力された画像データに基づいて形成される。
【0029】
現像装置46は、像担持体100の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。トナーは、正帯電性トナーである。現像装置46は、像担持体100の表面と接触している。即ち、画像形成装置110は、接触現像方式を採用している。現像装置46は、例えば、現像ローラーである。
【0030】
現像剤が一成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体100に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。現像剤が二成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体100に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含有されるトナーとキャリアとのうち、トナーを供給する。供給されたトナーにより形成されたトナー像を、像担持体100が担持する。
【0031】
転写ベルト66は、像担持体100と転写装置62との間に記録媒体Pを搬送する。転写装置62は、現像装置46によって現像されたトナー像を、像担持体100の表面から、被転写体である記録媒体Pへ転写する。転写される際に、像担持体100の表面と記録媒体Pとは接触している。即ち、画像形成装置110は、直接転写方式を採用している。転写装置62は、例えば、転写ローラーである。
【0032】
画像形成ユニット40Y及び転写装置62Y、画像形成ユニット40M及び転写装置62M、画像形成ユニット40C及び転写装置62C、並びに画像形成ユニット40K及び転写装置62Kの各々によって、転写ベルト66上の記録媒体Pに、複数色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色)のトナー像が順に重ねられ、未定着トナー像が形成される。
【0033】
クリーニング装置48Y、48M、48C、及び48Kは、各々、対応するハウジング481Y、481M、481C、及び481K、並びにクリーニング部材482Y、482M、482C、及び482Kを備える。クリーニング部材482は、ハウジング481内に配置される。クリーニング部材482は、像担持体100の表面に当接している。クリーニング部材482は、像担持体100の表面を研磨して、像担持体100の表面に付着しているトナーをハウジング481内に回収する。このようにして、クリーニング装置48は、像担持体100の表面に付着しているトナーを回収する。クリーニング部材482は、例えば、クリーニングローラーである。
【0034】
除電装置50は、像担持体100の表面を除電する。
【0035】
未定着トナー像が形成された記録媒体Pは、定着部80に搬送される。定着部80は、加圧部材82と加熱部材84とを含む。加圧部材82及び加熱部材84により、記録媒体Pが加圧及び加熱されて、未定着のトナー像が記録媒体Pに定着される。
【0036】
排紙部90から、トナー像が定着した記録媒体Pが排出される。
【0037】
<印刷モード及びクリーニングモード>
次に、
図1に加えて、
図2及び
図3を更に参照して、印刷モード及びクリーニングモードにおいて実行される画像形成装置110の動作について説明する。
図2は、
図1に示す像担持体100及びクリーニング部材482と、制御装置10とを示す図である。
図3は、印刷モード及びクリーニングモードにおけるクリーニング部材482の制御を示すタイムチャート図である。
図3中の横軸は時間を示し、縦軸はクリーニング部材482に印加される電圧を示す。
図3中の縦軸が示す「+」は正極性の電圧が印加されていることを示し、「0」は電圧が印加されていないことを示し、「-」は負極性の電圧が印加されていることを示す。
【0038】
図1を参照しながら既に述べたように、画像形成装置110は、制御装置10、及びベルトクリーニング部70を備える。また、
図2に示すように、画像形成装置110は、電圧印加装置200Y、200M、200C、及び200Kと、接離機構300Y、300M、300C、及び300Kとを更に備える。なお、既に述べたように、区別する必要がない場合には、画像形成装置110の各部材に付された「Y」、「M」、「C」、及び「K」の添え字を省略して説明する。
【0039】
制御装置10は、電圧印加装置200を制御することで、クリーニング部材482に印加する電圧を制御する。
【0040】
ベルトクリーニング部70は、クリーニングモードにおいて、像担持体100から転写ベルト66に移動したトナーを回収する。ベルトクリーニング部70は、ベルトクリーニングローラー72と、トナー回収容器74と、バックアップローラー76とを備える。ベルトクリーニング部70は、転写ベルト66の下方に設けられる。ベルトクリーニングローラー72は、転写ベルト66の表面(例えば、外周面)と当接している。バックアップローラー76は、ベルトクリーニングローラー72との間で転写ベルト66を挟持するように配置される。ベルトクリーニングローラー72は、転写ベルト66の表面(当接面である外周面)を研磨して、転写ベルト66の表面に付着しているトナーを、トナー回収容器74内に回収する。
【0041】
電圧印加装置200Y、200M、200C、及び200Kは、各々、クリーニング部材482Y、482M、482C、及び482Kに接続されている。電圧印加装置200は、クリーニング部材482に電圧を印加する。
【0042】
接離機構300Y、300M、300C、及び300Kは、各々、像担持体100Y、100M、100C、及び100Kに対して、対応する現像装置46Y、46M、46C、及び46Kを接触、又は離間させる。
【0043】
(印刷モード)
以下、印刷モードのときの制御装置10による制御と、画像形成装置110の動作とについて説明する。外部装置(不図示、例えばパーソナルコンピューター)から、画像データを含む印刷ジョブが入力されると、制御装置10は、印刷モードを実行する。印刷モードは、記録媒体Pに画像が印刷されるモードである。
【0044】
具体的には、
図3に示すように、印刷モードの印刷が開始される時刻t11において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、負極性の第1電圧(トナーの帯電極性と逆極性の電圧)を、クリーニング部材482に印加させる。また、時刻t11において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を開始させる。像担持体100上に転写後に残存したトナー(正帯電したトナー)が、負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482によって静電気的に回収される。
【0045】
詳しくは、印刷モードにおいて、制御装置10は、正極性の電圧を帯電装置42に印加させる。そして、帯電装置42が、像担持体100の表面を、正極性に帯電する。このため、正帯電したトナーは、正極性に帯電した像担持体100の表面から、負極性の電圧が印加されたクリーニング部材482へ、静電気的に移動して回収される。
【0046】
負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482によってトナーの回収を続けながら、制御装置10は、回転駆動する像担持体100に対して、帯電装置42による帯電、露光装置44による露光、現像装置46による現像、転写装置62による転写、及び除電装置50による除電を実施させる。そして、像担持体100と転写装置62との間に搬送された記録媒体Pに未定着トナー像が転写された後、制御装置10は、定着部80による未定着トナー像の定着を実施させて、記録媒体Pに定着トナー像である画像が形成される。
【0047】
印刷ジョブに含まれる全ての画像データの画像形成が完了した時点、即ち印刷モードが終了する時刻t12において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、クリーニング部材482への負極性の第1電圧の印加を停止させる。また、時刻t12において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を停止させる。これにより、印刷モードが終了する。
【0048】
像担持体100である感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、良好に正帯電される。このため、印刷モードにおいて、帯電装置42によって像担持体100の表面が正極性に帯電されること、及び負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482との当接により像担持体100の電位が負極性に低下することが繰り返された場合であっても、帯電工程において像担持体100である感光体1は所望の正極性の電位まで好適に帯電される。その結果、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、像担持体100として感光体1を備える画像形成装置110は良好な画像を形成できる。
【0049】
(クリーニングモード)
以下、クリーニングモードのときの制御装置10による制御と、画像形成装置110の動作とについて説明する。上記印刷モードが終了すると、制御装置10は、クリーニングモードを実行する。クリーニングモードは、印刷モードの終了後にクリーニング部材482に付着したトナーが回収されるモードである。
【0050】
具体的には、クリーニングモードの第1所定時間T1(時刻t12~t13)において、制御装置10は、接離機構300を制御して、離間方向D1に現像装置46を像担持体100から離間させる。離間方向D1は、像担持体100から現像装置46が離間する方向である。
【0051】
現像装置46の離間後、クリーニングモードの時刻t13において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、正極性の第2電圧(トナーの帯電極性と同極性の電圧)を、クリーニング部材482に印加させる。また、時刻t13において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を開始させる。これにより、クリーニング部材482に付着しているトナー(正帯電したトナー)が、正極性の第2電圧が印加されたクリーニング部材482から、像担持体100に静電気的に移動する。像担持体100に移動したトナーは、像担持体100の回転に伴い、転写ベルト66に移動する。転写ベルト66に移動したトナーは、転写ベルト66の回転に伴い、ベルトクリーニング部70で回収される。
【0052】
クリーニングモードの第2所定時間T2(時刻t13~t14)において、正極性の第2電圧がクリーニング部材482に印加される。その後、時刻t14において、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、クリーニング部材482への正極性の第2電圧の印加を停止させる。
【0053】
なお、クリーニングモードの第2所定時間T2(時刻t13~t14)において、制御装置10は、帯電装置42に電圧を印加させなくてもよいし、正極性の電圧を帯電装置42に印加させてもよい。正極性の電圧を帯電装置42に印加する場合には、帯電装置42に印加される正極性の電圧は、クリーニング部材482に印加される正極性の第2電圧よりも、低いことが好ましい。正帯電したトナーをクリーニング部材482から帯電装置42に静電気的に好適に移動させるためである。
【0054】
クリーニングモードの第3所定時間T3(時刻t14~t15)において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を続ける。また、第3所定時間T3において、制御装置10は、接離機構300を制御して、接近方向D2に現像装置46を移動させる。接近方向D2は、現像装置46が像担持体100に接近する方向である。そして、時刻t15において、制御装置10は、像担持体100に対して現像装置46を接触させる。また、時刻t15において、制御装置10は、像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動を停止させる。なお、時刻t15は、正極性の第2電圧の印加を停止する直前にクリーニング部材482から像担持体100に移動したトナーが、像担持体100から転写ベルト66に移動し、転写ベルト66からベルトクリーニング部70に回収されるまでの時間が経過した時点とすることができる。像担持体100、クリーニング部材482、及び転写ベルト66の回転駆動の停止により、クリーニングモードが終了する。
【0055】
像担持体100である感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、良好に正帯電される。このような像担持体100は、表面電位の変動の影響を受け難い。このため、正極性の第2電圧が印加されたクリーニング部材482との接触により像担持体100の電位が正極性に上昇した場合であっても、クリーニングモードの終了後、再び印刷モードを実行する際に、像担持体100を所望の正極性の電位まで好適に帯電することができる。
【0056】
以上、印刷モード及びクリーニングモードのときの制御装置10による制御と、画像形成装置110の動作とについて説明した。以下、
図4を参照しながら、上記印刷モード及びクリーニングモードのときの制御装置10による制御について、更に詳細に説明する。
図4は、
図1に示す画像形成装置110の制御を示すフローチャート図である。
【0057】
制御装置10は、
図4に示すフローチャートの処理を繰り返し実行する。具体的に、制御装置10は、印刷ジョブが入力されたか否かを判定する(S101)。印刷ジョブが入力されなかった場合(S101においてNo)、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。印刷ジョブが入力された場合(S101においてYes)、印刷モードを実行する。印刷モードにおいて、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、負極性の第1電圧をクリーニング部材482に印加させる(S102)。このとき、既に述べたように、像担持体100上に残留している正帯電したトナーが、負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482によって回収される。
【0058】
印刷モードの終了後、クリーニングモードが実行される。クリーニングモードにおいて、制御装置10は、現像装置46を像担持体100から離間させる(S103)。次いで、制御装置10は、電圧印加装置200を制御して、正極性の第2電圧をクリーニング部材482に印加させる(S104)。このとき、既に述べたように、クリーニング部材482に付着している正帯電したトナーが、像担持体100に移動する。次いで、像担持体100に移動したトナーは、転写ベルト66を介して、ベルトクリーニング部70で回収される。次いで、制御装置10は、現像装置46の位置を戻して、現像装置46を像担持体100に接触させる(S105)。そして、制御装置10は、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0059】
<感光体>
次に、像担持体100である感光体1について、説明する。まず、
図5~
図7を参照して、感光体1の構造について説明する。
図5~
図7は、各々、感光体1の部分断面図を示す。
【0060】
図5に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層である。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
【0061】
図6に示すように、感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、4中間層(下引き層)を更に備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。
図5に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、
図6に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
【0062】
図7に示すように、感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、保護層5を更に備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。
図5及び
図6に示すように、感光層3が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。或いは、
図7に示すように、保護層5が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。
【0063】
感光層3の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、
図5~
図7を参照して、感光体1の構造について説明した。
【0064】
以下、感光体1について更に詳細に説明する。感光層3は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、正孔輸送剤とを含有する。感光層3は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。以下、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、正孔輸送剤、及び添加剤について説明する。
【0065】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。
【0066】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM-1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM-2)で表される。
【0067】
【0068】
【0069】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0070】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置110(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体1を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0071】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
【0072】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0073】
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0074】
(電子輸送剤)
電子輸送剤は、一般式(1)で表される化合物(以下、電子輸送剤(1)と記載することがある)を含む。
【0075】
【0076】
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される1個以上5個以下の置換基で置換されていてもよいアリール基;水素原子;アルキル基;複素環基;アルコキシ基;アラルキル基;又はアリル基を表す。
【0077】
感光層3が電子輸送剤(1)を含有することで、感光体1の正帯電及び負帯電が繰り返された場合であっても、感光体1を良好に正帯電させることができる。本実施形態の画像形成装置110は、印刷モードにおいて、帯電装置42が感光体1の表面を正極性に帯電し、負極性の第1電圧がクリーニング部材482に印加される構成を有する。このような画像形成装置110に感光体1が備えられた場合、印刷モードにおいて、帯電装置42によって感光体1の表面が正極性に帯電されること、及び負極性の第1電圧が印加されたクリーニング部材482との当接により感光体1の電位が負極性に低下することが繰り返される。このため、感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返すこととなる。既に述べたように、感光体1は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、良好に正帯電される。このため、感光体1は、本実施形態の画像形成装置110に備えられた場合であっても、画像形成の帯電工程において所望の正極性の電位に、好適に帯電できる。
【0078】
一般式(1)中のR1及びR2が表すアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。ナフチル基としては、1-ナフチル基、又は2-ナフチル基が好ましい。
【0079】
R1及びR2が表すアリール基は、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される1個以上5個以下の置換基で置換されていてもよい。置換基であるハロゲン原子としては、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。置換基であるアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が更に好ましい。ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基からなる群であることがより好ましく、塩素原子、臭素原子、メチル基、及びメトキシ基からなる群であることが特に好ましい。R1及びR2が表すアリール基が有する置換基の数は、1個又2個であることが好ましい。
【0080】
R1及びR2が表すアルキル基は、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、n-プロピル基、又はtert-ブチル基がより好ましい。
【0081】
R1及びR2が表す複素環基は、例えば、5員以上14員以下の複素環基である。5員以上14員以下の複素環基としては、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含む5員以上14員以下の複素環基が好ましく、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含む5員以上6員以下の複素環基がより好ましく、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含む5員以上6員以下の単環の複素環基が更に好ましい。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、硫黄原子又は酸素原子であることが更に好ましい。5員以上14員以下の複素環基としては、チオフェニル基、又はフラニル基が一層好ましく、2-チオフェニル基、又は2-フラニル基が特に好ましい。
【0082】
R1及びR2が表すアルコキシ基は、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0083】
R1及びR2が表すアラルキル基は、例えば、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、炭素原子数7以上13以下のアラルキル基が好ましく、ベンジル基、フェニルエチル基、又はナフチルメチル基がより好ましい。
【0084】
R1及びR2が表すアリル基は、化学式「CH2=CH-CH2-」で表される。
【0085】
正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上させるために、一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群から選択される1個以上5個以下の置換基で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基;又は5員以上14員以下の複素環基を表すことが好ましい。同じ理由から、一般式(1)中、R1は、炭素原子数6以上14以下のアリール基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基;又は5員以上14員以下の複素環基を表し、R2は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基からなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましい。
【0086】
正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上させるために、一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、1個又は2個のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。同じ理由から、一般式(1)中、R1は、炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R2は、1個又は2個のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましい。
【0087】
正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上させるために、電子輸送剤(1)の好適な例としては、化学式(ETM1)~(ETM31)で表される化合物(以下、それぞれを、電子輸送剤(ETM1)~(ETM31)と記載することがある)が挙げられる。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上させるために、電子輸送剤(1)のより好適な例としては、電子輸送剤(ETM1)、(ETM2)、(ETM6)、(ETM7)、(ETM8)、(ETM19)、(ETM22)、(ETM23)、(ETM24)、(ETM28)、及び(ETM29)が挙げられる。
【0093】
電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上60質量部以下であることが更に好ましい。
【0094】
感光層3は、電子輸送剤として、電子輸送剤(1)のみを含有してもよい。また、感光層3は、電子輸送剤として、電子輸送剤(1)に加えて、これ以外の電子輸送剤を更に含有してもよい。電子輸送剤(1)以外の電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0095】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0096】
これらの樹脂のうち、加工性、機械的特性、光学的特性、及び耐摩耗性のバランスに優れた感光層3が得られることから、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、例えば、化学式(R1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(R1)と記載することがある)、及び(R2)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(R2)と記載することがある)が挙げられる。
【0097】
【0098】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることが更に好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体1の耐摩耗性が向上する。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、バインダー樹脂が感光層形成用の溶剤に容易に溶解する。
【0099】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0100】
正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上させるために、正孔輸送剤は、一般式(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、又は(27)で表される化合物を含むことが好ましい。以下、一般式(21)~(27)で表される化合物を、各々、正孔輸送剤(21)~(27)と記載することがある。
【0101】
【0102】
【0103】
一般式(21)中、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R17及びR18は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b5及びb6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。d及びeは、各々独立に、0又は1を表す。
【0104】
一般式(21)中、b1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR11は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR12は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR13は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR14は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b5が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR15は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR16は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0105】
一般式(21)中、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが更に好ましい。R17及びR18は、水素原子を表すことが好ましい。b1及びb2は、0を表すことが好ましい。b3及びb4は、2を表すことが好ましい。b5及びb6は、0を表すことが好ましい。d及びeは、0を表すことが好ましい。
【0106】
一般式(22)中、R20は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。f1、f2、及びf3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。f4は、0又は1を表す。
【0107】
一般式(22)中、f1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR21は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR22は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR23は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0108】
一般式(22)中、R20は、フェニル基を表すことが好ましい。R21、R22、及びR23は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。f1及びf2は、1を表すことが好ましい。f3は、0を表すことが好ましい。既に述べたように、f4は、0又は1を表す。
【0109】
一般式(23)中、R31、R32、R33、R34、及びR35は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。g1、g2、g3、g4、及びg5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0110】
一般式(23)中、g1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR31は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。g2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR32は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。g3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR33は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。g4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR34は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。g5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR35は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0111】
一般式(23)中、R31、R32、R33、R34、及びR35は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。g1、g2、g3、g4、及びg5は、1を表すことが好ましい。
【0112】
一般式(24)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。h1、h2、h4、及びh5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。h3及びh6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0113】
一般式(24)中、h1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR41は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。h2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR42は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。h4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR44は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。h5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR45は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。h3が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR43は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。h6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR46は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0114】
一般式(24)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが更に好ましい。h1、h2、h4、及びh5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。h3及びh6は、0を表すことが好ましい。
【0115】
一般式(25)中、R71、R72、R73、及びR74は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。j1、j2、j3、及びj4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0116】
一般式(25)中、j1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR71は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。j2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR72は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。j3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR73は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。j4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR74は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0117】
一般式(25)中、R71、R72、R73、及びR74は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。j1、j2、j3、及びj4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0118】
一般式(26)中、R81、R82、及びR83は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R84及びR85は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。k1、k2、及びk3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。k4及びk5は、各々独立に、1又は2を表す。
【0119】
一般式(26)中、k1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR81は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。k2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR82は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。k3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR83は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0120】
一般式(26)中、R81、R82、及びR83は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことがより好ましく、エトキシ基を表すことが更に好ましい。R84及びR85は、水素原子を表すことが好ましい。k1及びk2は、0を表すことが好ましい。k3は、1を表すことが好ましい。k4及びk5は、1を表すことが好ましい。
【0121】
一般式(27)中、R61、R62、及びR63は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。R64、R65、及びR66は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。
【0122】
一般式(27)中、R61、R62、及びR63は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。R64、R65、及びR66は、水素原子を表すことが好ましい。
【0123】
正孔輸送剤のより好適な例としては、化学式(HTM1)~(HTM10)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送剤(HTM1)~(HTM10)と記載することがある)が挙げられる。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、10質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
【0128】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、紫外線吸収剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。
【0129】
(材料の組み合わせ)
正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上させるためには、正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせが、表1に示す組み合わせNo.C1~C25の各々であることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせが表1に示す組み合わせNo.C1~C25の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂の組み合わせが、表2に示す組み合わせNo.D1~D26の各々であることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂の組み合わせが表2に示す組み合わせNo.D1~D26の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
【0130】
【0131】
【0132】
なお、上記表1及び表2中の各用語の意味は次のとおりである。「No.」は組み合わせNo.を示す。「HTM」は正孔輸送剤を示す。「ETM」は電子輸送剤を示す。「樹脂」はバインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂を示す。
【0133】
(導電性基体)
導電性基体2は、感光体1の導電性基体2として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。一例において、導電性基体2は、導電性を有する材料で全体が構成される。別の例において、導電性基体2は、導電性を有する材料で構成される被覆層を備える。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0134】
導電性基体2の形状は、画像形成装置110の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体2の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体2の厚さは、導電性基体2の形状に応じて適宜選択される。
【0135】
(中間層)
中間層4(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層4に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層4が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体1を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
【0136】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。
【0137】
中間層用樹脂の例は、上記ベース樹脂の例と同じである。中間層4及び感光層3を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層3に含有されるベース樹脂及びバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層4は、添加剤を含有してもよい。中間層4に含有される添加剤の例は、感光層3に含有される添加剤の例と同じである。
【0138】
(感光体の製造方法)
感光体1の製造方法の一例を説明する。感光体1の製造方法は、感光層形成工程を含む。感光層形成工程では、感光層3を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液を導電性基体2上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して感光層3を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、電子輸送剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含有する。感光層用塗布液は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。感光層用塗布液は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0139】
感光層用塗布液に含有される溶剤は、特に限定されないが、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0140】
感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0141】
感光層用塗布液を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0142】
感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上120分以下である。
【0143】
なお、感光体1の製造方法は、必要に応じて中間層4を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層4を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0144】
<変形例>
なお、既に述べた画像形成装置110は、以下に示す変形例のように変更可能である。多色の画像を印刷する多色印刷モードにおいて、既に述べた印刷モード及びクリーニングモードが実行される。
【0145】
一方、上記多色印刷モードと異なり、モノクロの画像を印刷するモノクロ印刷モードは、次のように実行可能である。モノクロ印刷モード(
図3中の時刻t11~t12)において、制御装置10は、電圧印加装置200K(ブラック用電圧印加装置)を制御して、負極性の第1電圧を、クリーニング部材482K(ブラック用クリーニング部材)に印加させる。モノクロ印刷モード(
図3中の時刻t11~t12)において、制御装置10は、電圧印加装置200Y、200M、及び200C(イエロー用、マゼンタ用、及びシアン用電圧印加装置)を制御して、正極性の第3電圧を、クリーニング部材482Y、482M、及び482C(イエロー用、マゼンタ用、及びシアン用クリーニング部材)に印加させる。モノクロ印刷モード時に使用されない像担持体100Y、100M、及び100C(イエロー用、マゼンタ用、及びシアン用像担持体)には、負帯電した記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が付着することがある。そこで、クリーニング部材482Y、482M、及び482Cに第3電圧(正極性電圧)を印加させることにより、負帯電した記録媒体Pの微小成分が、クリーニング部材482Y、482M、及び482Cに静電気的に回収される。
【0146】
また、モノクロ印刷モード後のクリーニングモードの第2所定時間T2(
図3中の時刻t13~t14)においては、制御装置10は、電圧印加装置200Kを制御して、正極性の第2電圧を、クリーニング部材482Kに印加させる。これにより、クリーニング部材482Kに付着している正帯電したトナーが、像担持体100K(ブラック用像担持体)上に移動する。モノクロ印刷モード後のクリーニングモードの第2所定時間T2(
図3中の時刻t13~t14)において、制御装置10は、電圧印加装置200Y、200M、及び200Cを制御して、負極性の第4電圧を、クリーニング部材482Y、482M、及び482Cに印加させる。これにより、クリーニング部材482Y、482M、及び482C上に付着している負帯電した記録媒体Pの微小成分が、像担持体100Y、100M、及び100C上に移動する。次いで、像担持体100K上に移動したトナー、及び像担持体100Y、100M、及び100C上に移動した記録媒体Pの微小成分が、転写ベルト66を介して、ベルトクリーニング部70で回収される。以上、変形例について説明した。
【0147】
以上、画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上記画像形成装置110に限定されず、例えば、以下の点を更に変更可能である。上記画像形成装置110はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上記画像形成装置110はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。帯電装置42としてスコロトロン帯電器を例に挙げて説明したが、帯電装置はスコロトロン帯電器以外の帯電装置(例えば、帯電ローラー、帯電ブラシ、又はコロトロン帯電器)であってもよい。上記画像形成装置110は接触現像方式を採用していたが、画像形成装置は非接触現像方式を採用してもよい。上記画像形成装置110は直接転写方式を採用していたが、画像形成装置は中間転写方式を採用してもよい。
【実施例】
【0148】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0149】
まず、感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を準備した。
【0150】
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニンを準備した。
【0151】
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた電子輸送剤(ETM1)、(ETM2)、(ETM6)、(ETM7)、(ETM8)、(ETM19)、(ETM22)、(ETM23)、(ETM24)、(ETM28)、及び(ETM29)を準備した。また、比較例で使用する電子輸送剤として、下記化学式(ETM32-C)~(ETM37-C)で表される化合物(以下、それぞれを電子輸送剤(ETM32-C)~(ETM37-C)と記載することがある)を準備した。
【0152】
【0153】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた正孔輸送剤(HTM1)~(HTM10)を準備した。
【0154】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリカーボネート樹脂(R1)及び(R2)を準備した。ポリカーボネート樹脂(R1)及び(R2)の粘度平均分子量は、何れも、35000であった。
【0155】
<感光体の製造>
上記電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を用いて、感光体(A-1)~(A-21)及び(B-1)~(B-6)を製造した。
【0156】
(感光体(A-1)の製造)
電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン3質量部、正孔輸送剤(HTM1)70質量部、バインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂(R1)100質量部、電子輸送剤(ETM1)35質量部、及び溶剤であるテトラヒドロフラン800質量部を、ボールミルを用いて50時間混合し、感光層用塗布液を得た。ディップコート法により、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体)上に、感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。このようにして、導電性基体上に感光層(膜厚30μm)を形成し、感光体(A-1)を得た。感光体(A-1)において、導電性基体上に直接、単層の感光層が備えられていた。
【0157】
(感光体(A-2)~(A-21)及び(B-1)~(B-6)の製造)
表3に示す正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を使用したこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(A-2)~(A-21)及び(B-1)~(B-6)の各々を製造した。
【0158】
<正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性の評価>
温度25℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、正帯電及び負帯電を繰り返した場合の感光体の正帯電性を評価した。この評価には、ドラム感度試験機(ジェンテック社製)を用いた。ドラム感度試験機に、感光体をセットした。ドラム感度試験機には、感光体の回転方向の上流側から、第1帯電装置、プローブ、第2帯電装置、及び除電装置が備えられていた。第1帯電装置は、感光体の表面を正極性に帯電させる。第1帯電装置は、スコロトロン帯電器であり、グリッド電圧を+700Vに設定した。プローブは、現像位置に備えられ、感光体の表面電位を測定する。第2帯電装置は、クリーニング位置に備えられ、感光体の表面を負極性に帯電させる。第2帯電装置は、コロトロン帯電器であり、印加電圧を-5kVに設定した。除電器は、感光体の表面を除電する。
【0159】
正帯電用の第1帯電装置をオンにし、除電装置をオンにし、負帯電用の第2帯電装置をオフにした状態で、回転速度200mm/秒で感光体を10周回転させた。このようにして、感光体の正帯電及び除電を繰り返した。10周回転させる間、プローブを用いて感光体の表面電位を継続して測定した。この10周分の感光体の表面電位の平均値を、正帯電及び負帯電を繰り返す前の感光体の帯電電位V1(単位:+V)とした。
【0160】
次いで、正帯電用の第1帯電装置、除電装置、及び負帯電用の第2帯電装置の全てをオンにした状態で、回転速度200mm/秒で感光体を200周回転させた。このようにして、感光体の正帯電、除電、及び負帯電を繰り返した。プローブを用いて、191周目から200周目までの10周分の感光体の表面電位を継続して測定した。この10周分の感光体の表面電位の平均値を、正帯電及び負帯電を繰り返した後の感光体の帯電電位V2(単位:+V)とした。
【0161】
そして、式「帯電電位低下量=V1-V2」から、正帯電及び負帯電の繰り返し前後における、感光体の帯電電位低下量(単位:V)を算出した。帯電電位低下量から、下記基準に基づき、正帯電及び負帯電を繰り返した場合に感光体を良好に正帯電できるか否かを評価した。測定した帯電電位低下量、並びに正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性の評価結果を、表3に示す。
【0162】
(正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性の評価基準)
評価A:帯電電位低下量が、90V未満である。
評価B:帯電電位低下量が、90V以上120V未満である。
評価C(不良):帯電電位低下量が、120V以上である。
【0163】
<感度特性の評価>
温度10℃且つ相対湿度15%RHの環境下で、ドラム感度試験機(ジェンテック社製)を用いて、感光体の感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機を用いて、感光体の表面を+750Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.4μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から70ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の露光後電位(単位:+V)とした。露光後電位から、下記基準に基づき、感光体の感度特性を評価した。測定した露光後電位、及び感度特性の評価結果を、表3に示す。
【0164】
(感度特性の評価基準)
評価A:露光後電位が、+150V未満である。
評価B:露光後電位が、+150V以上180V未満である。
評価C(不良):露光後電位が、+180V以上である。
【0165】
表3中の各用語の意味は次のとおりである。「HTM」は正孔輸送剤を示す。「ETM」は電子輸送剤を示す。「樹脂」は、バインダー樹脂を示す。「感度」欄の「値」は、露光後電位(単位:+V)を示す。「感度」欄の「評価」は、感度特性の評価結果を示す。「V1-V2」欄の「値」は正帯電及び負帯電の繰り返し前後における感光体の帯電電位低下量(単位:V)を示す。「V1-V2」欄の「評価」は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性の評価結果を示す。
【0166】
【0167】
表3に示すように、感光体(B-1)~(B-6)の感光層は、電子輸送剤(1)を含有していなかった。このため、表3に示すように、感光体(B-1)~(B-6)の正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性は、C評価であり、不良であった。
【0168】
一方、表3に示すように、感光体(A-1)~(A-21)の感光層は、電子輸送剤(1)(より具体的には、電子輸送剤(ETM1)、(ETM2)、(ETM6)、(ETM7)、(ETM8)、(ETM19)、(ETM22)、(ETM23)、(ETM24)、(ETM28)、又は(ETM29))を含有していた。このため、表3に示すように、感光体(A-1)~(A-21)の正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性は、A又はB評価であり、良好であった。また、感光体(A-1)~(A-21)の感度特性は、A又はB評価であり、その感度特性が損なわれることなく、正帯電及び負帯電を繰り返した場合の正帯電性を向上できていた。
【0169】
以上のことから、感光体(A-1)~(A-21)を包含する感光体は、正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても良好に正帯電可能であることが示された。従って、このような感光体を像担持体として備える本発明の画像形成装置は、像担持体の正帯電及び負帯電を繰り返した場合であっても、像担持体を良好に正帯電できると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0171】
1 :感光体(電子写真感光体)
2 :導電性基体
3 :感光層
10 :制御装置
42Y、42M、42C、42K :帯電装置
44Y、44M、44C、44K :露光装置
46Y、46M、46C、46K :現像装置
50Y、50M、50C、50K :除電装置
62Y、62M、62C、62K :転写装置
100Y、100M、100C。100K:像担持体
110 :画像形成装置
482Y、482M、482C、482K:クリーニング部材