(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
(21)【出願番号】P 2020162113
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】堀井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】豊島 光希
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊樹
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112392(JP,A)
【文献】特開2019-125968(JP,A)
【文献】特開2006-254360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に配置された板状の圧電振動子と、
前記ケース内において、外部から受け付けた前記圧電振動子を発振させる信号を前記圧電振動子に入力する配線部と
を備え、
前記配線部が、前記ケース内において前記圧電振動子に重ねられた第1配線部材と、前記ケース内において前記第1配線部材と前記圧電振動子の厚さ方向において対面する第2配線部材と、前記圧電振動子の厚さ方向に沿う方向に延在して前記第1配線部材と前記第2配線部材とを接続する長尺配線部材とを含み、
前記圧電振動子の厚さ方向から見て、前記圧電振動子に隣接する位置である第1の位置において、前記第1配線部材と前記長尺配線部材とが接続されている、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記第1配線部材が、前記第2配線部材と対面する第1面と、該第1面とは逆の第2面とを有し、
前記第1配線部材は、前記第1面において前記長尺配線部材と接続され、前記第2面において前記圧電振動子と接続されている、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記第1配線部材と前記長尺配線部材とが接続された接続面積が、前記第1配線部材と前記圧電振動子とが接続された接続面積より小さい、請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記長尺配線部材の一方端は前記第1配線部材に当接されており、前記長尺配線部材の他方端は前記第2配線部材を貫通している、請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記長尺配線部材は前記他方端に瘤部を有し、該瘤部において前記第2配線部材に係止されている、請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記配線部が前記長尺配線部材を一対含み、該一対の長尺配線部材の間に前記第2配線部材が架け渡されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記配線部が、前記第1配線部材に接続され、前記圧電振動子を発振させる信号を前記第1配線部材に入力する外部配線をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内に圧電振動子が配置された超音波トランスデューサが知られている。たとえば、下記特許文献1には、両主面に電極が形成された板状の圧電振動子と、圧電振動子の各電極に信号を入力する配線とを備えた超音波トランスデューサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5439093号公報 特許第4182156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波トランスデューサにおいては、超音波成分の残響のさらなる低減が求められている。しかしながら、上述した従来の超音波トランスデューサでは、超音波成分の残響が十分に低減されていなかった。
【0005】
本発明の一態様は、超音波成分の残響の低減が図られた超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る超音波トランスデューサは、ケースと、ケース内に配置された板状の圧電振動子と、ケース内において、外部から受け付けた圧電振動子を発振させる信号を圧電振動子に入力する配線部とを備え、配線部が、ケース内において圧電振動子に重ねられた第1配線部材と、ケース内において第1配線部材と圧電振動子の厚さ方向において対面する第2配線部材と、圧電振動子の厚さ方向に沿う方向に延在して第1配線部材と第2配線部材とを接続する長尺配線部材とを含み、圧電振動子の厚さ方向から見て、圧電振動子に隣接する位置である第1の位置において、第1配線部材と長尺配線部材とが接続されている。
【0007】
上記超音波トランスデューサにおいては、圧電振動子に隣接する第1の位置において第1配線部材と接続された長尺配線部材により、配線部における配線経路の延長が図られている。そのため、上記超音波トランスデューサは、配線部において超音波成分の残響が減衰されやすくなっている。
【0008】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、第1配線部材が、第2配線部材と対面する第1面と、該第1面とは逆の第2面とを有し、第1配線部材は、第1面において長尺配線部材と接続され、第2面において圧電振動子と接続されている。
【0009】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、第1配線部材と長尺配線部材とが接続された接続面積が、第1配線部材と圧電振動子とが接続された接続面積より小さい。
【0010】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、長尺配線部材の一方端は第1配線部材に当接されており、長尺配線部材の他方端は第2配線部材を貫通している。
【0011】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、長尺配線部材は他方端に瘤部を有し、該瘤部において第2配線部材に係止されている。
【0012】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、配線部が長尺配線部材を一対含み、該一対の長尺配線部材の間に第2配線部材が架け渡されている。
【0013】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、配線部が、第1配線部材に接続され、圧電振動子を発振させる信号を第1配線部材に入力する外部配線をさらに含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、超音波成分の残響の低減が図られた超音波トランスデューサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る超音波トランスデューサの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の超音波トランスデューサの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、ケース及び圧電振動子の平面図である。
【
図6】
図6は、フレキシブル基板を示す平面図である。
【
図7】
図7は、フレキシブル基板と第1のピンとの接続の様子を示す要部拡大断面図である。
【
図9】
図9は、中継基板と第1のピンとの接続の様子を示す要部拡大断面図である。
【
図10】
図10は、異なる態様の中継基板を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1~3を参照して、本実施形態に係る超音波トランスデューサ1の構成を説明する。
【0018】
超音波トランスデューサ1は、超音波を送受信できる構成を有し、具体的には、収容空間Sを画成するケース10を備え、ケース10の収容空間S内に収容された圧電振動子20、配線部30、吸音材80、および、防振材90を備えた構成を有する。
【0019】
ケース10は、一端に開口を有する有底筒状の部材であり、収容空間Sを画成する底壁11と側壁13とを有する。側壁13は底壁11と交差する方向に延在しており、側壁13は底壁11に対して直交する方向に延在していてもよい。本実施形態において、底壁11と側壁13とは、一体形成されており、同一材料で構成されている。ケース10は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。ケース10は、Al以外の金属からなっていてもよい。ケース10は、たとえば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は銅合金からなっていてもよい。アルミニウム合金は、たとえば、ジュラルミンを含む。銅合金は、たとえば真鍮を含む。
【0020】
ケース10の底壁11は、収容空間S側を向いた底面12を有する。底面12は、底面12と交差する方向から見て、長径と短径とを有する円形状を呈している。本実施形態では、底面12は、長円形状を呈している。底面12では、長径に沿う方向と短径に沿う方向とが互いに交差している。長径に沿う方向と短径に沿う方向とは、たとえば、直交している。底壁11の厚さは、たとえば、0.7mm以上1.5mm以下である。本実施形態では、底壁11の厚さは、0.9mmである。
【0021】
以下では、底面12の長径に沿う方向をX方向、底面12の短径に沿う方向をY方向、底面12に直交する方向をZ方向とする。
【0022】
底面12は、直線状を呈する一対の縁12aと、円弧状を呈する一対の縁12bとで規定されている。一対の縁12aは、X方向に延在していると共に、Y方向で離間している。一対の縁12aは、互いに略平行である。縁12bは、各縁12aの端同士を接続している。長径と短径とを有する円形状は、楕円形状であってもよい。底面12と交差する方向は、たとえば、底面12と直交する方向であってもよい。底面12と交差する方向は、底壁11と交差する方向と一致してもよい。
【0023】
側壁13は、内側面14を有している。底面12及び内側面14は、ケース10の内面を構成している。内側面14には、複数の段差部15が形成されている。本実施形態では、3つの段差部15が形成されている。一つの段差部15は、一方の縁12aに沿って延在している。残りの二つの段差部15は、他方の縁12aに沿って互いに離間して設けられている。段差部15は、ケース10に対する防振材90の位置決めに用いられる。
【0024】
圧電振動子20は、
図4、5に示されるように、圧電素体21と、圧電素体21に対して電圧を印加するための一対の電極23,25とを有する。圧電振動子20は、ケース10の底部に配置されており、より具体的には底壁11上に配置されている。圧電振動子20は、たとえば、接着により底壁11上に固定されている。
【0025】
圧電素体21は、直方体形状を呈し、平面視で正方形状を有する。本明細書での「直方体形状」は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。圧電素体21は、互いに対向する正方形状の一対の主面21a,21bと、互いに対向する一対の側面21c、21dとを有する。側面21c、21dは、一対の主面21a,21bを連結するように、一対の主面21a,21bが対向する方向(Z方向)に延在している。主面21bは、底面12と対向している。圧電振動子20は、主面21bと底面12とが対向するように、底壁11上に配置されている。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と交差する方向である。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と直交する方向であってもよい。
【0026】
圧電素体21は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料は、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)を含む。圧電素体21は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体により構成される。圧電素体21の厚さは、たとえば、150~500μmである。本実施形態では、圧電素体21の厚さは、200μmである。
【0027】
圧電振動子20は、
図3~6に示されるように、圧電素体21の側面21c、21dがY方向に沿うように、底壁11(底面12)上に配置されている。圧電振動子20は、たとえば、底面12での、X方向及びY方向での略中央に配置されている。
【0028】
一方の電極23は、主面21bの略全域を覆うとともに、側面21cおよび側面21c側の主面21aの一部を連続的に覆っている。主面21bを覆う部分の電極23は、底壁11(底面12)に接合されている。他方の電極25は、主面21aの略全域を覆っている。電極25は、主面21aを覆う部分の電極23とは離間しており、電極23との絶縁が図られている。このように、圧電素体21は、一対の電極23、25でZ方向において挟まれる領域を有し、この領域が圧電的に活性な領域を構成する。
【0029】
各電極23,25は、圧電素体21の各面21a~21cと直接的に接している。各電極23,25の厚さは、1.5μm以下である。各電極23,25は、たとえば、クロム(Cr)層、ニッケル銅合金(Ni-Cu)層、及び金(Au)層からなる積層体を含む。各電極23,25は、銀(Ag)、チタン(Ti)、白金(Pt)、銀パラジウム合金(Ag-Pd)、又はニッケルクロム合金(Ni-Cr)を含んでいてもよい。各電極23,25は、たとえば、スパッタリング法により圧電素体21の表面に形成される。
【0030】
配線部30は、フレキシブル基板40、一対の第1のピン50、中継基板60、および、一対の第2のピン70を含む。
【0031】
フレキシブル基板40(第1配線部材)は、収容空間S内において、圧電振動子20上に重ねられるようにして配置されている。フレキシブル基板40は、板状またはシート状を呈しており、平面視で底面12と略同形状を有する。より詳しくは、フレキシブル基板40は、平面視で底面12よりも一回り小さくなるように設計されており、ケース10の内側面14から離間して配置されている。フレキシブル基板40は、後述する中継基板60と対面する上面(第1面)と、ケース10の底面12と対面する下面(第2面)とを有する。フレキシブル基板40は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。すなわち、フレキシブル基板40は、複数の配線を備えている。フレキシブル基板40は、複数の配線により、1対の第1のピン50と圧電振動子20とをそれぞれ電気的に接続する。本実施形態では、フレキシブル基板40は、ポリイミド樹脂等の樹脂からなる樹脂シート内に一対の配線41、42が設けられた構成を有する。
【0032】
図3、6に示すように、フレキシブル基板40は、ベース部43と一対の接触部44,45とを有する。
【0033】
ベース部43は、フレキシブル基板40の中央に位置する平板部分であり、Z方向において互いに対向する一対の主面43a,43bを有する。フレキシブル基板40は、ベース部43の主面43bが圧電素体21と対向するように、収容空間Sに配置されている。
【0034】
ベース部43の中央領域には矩形状の開口43cが設けられており、開口43cから圧電振動子20が一部露出している。開口43cは、フレキシブル基板40が圧電振動子20の振動を抑制しないために設けられ得る。フレキシブル基板40は、Y方向に沿って延在する開口43cの縁43dにおいて圧電振動子20の電極23、25と重なっている。
【0035】
接触部44,45は、ベース部43から連続して延びており、X方向においてベース部43を挟む位置に設けられている。各接触部44,45は、Y方向に延びる長尺平板状を呈し、ベース部43の厚さよりも主面43b側に厚くなるように設計されている。一方の接触部44は、圧電素体21の側面21c側に位置し、他方の接触部45は、圧電素体21の側面21d側に位置している。各接触部44,45と底壁11との間には圧電振動子20は介在しておらず、各接触部44、45は底面12と直接接している。
【0036】
一対の配線41、42は、圧電振動子20と重なるベース部43の開口43cの縁43dから各接触部44、45まで配設されている。一対の配線41、42は、第1の端部41a、42aと、第2の端部41b、42bとを有する。一方の配線41の第1の端部41aは、圧電振動子20の電極23と重なるベース部43の開口43cの縁43dの全幅に亘って設けられており、その縁43dの下面(主面43b)において樹脂シートから露出して、圧電振動子20の電極23と電気的に接続されている。一方の配線31の第2の端部41bは、接触部44に位置しており、接触部44の上面において樹脂シートから露出して、後述する第1のピン50と電気的に接続されている。他方の配線42の第1の端部42aは、圧電振動子20の電極25と重なるベース部43の開口43cの縁43dの全幅に亘って設けられており、その縁43dの下面(主面43b)において樹脂シートから露出して、圧電振動子20の電極25と電気的に接続されている。他方の配線42の第2の端部42bは、接触部45に位置しており、接触部45の上面において樹脂シートから露出して、後述する第1のピン50と電気的に接続されている。
【0037】
フレキシブル基板40には、さらに一対のダンパー部47、49が、圧電振動子20に隣接して設けられている。各ダンパー部47、49は、フレキシブル基板40のベース部43の主面43b上に設けられており、フレキシブル基板40と底壁11との間に介在している。各ダンパー部47、49は、圧電振動子20と接触部44、45との間の主面43bに、圧電振動子20と接触部44、45との間を横断するように(より具体的には、Y方向に沿ってフレキシブル基板40の全幅に亘って)、それぞれ設けられている。一方のダンパー部47は、圧電振動子20と接触部44との間に設けられ、他方のダンパー部49は、圧電振動子20と接触部45との間に設けられている。換言すると、Z方向から見て、フレキシブル基板40の接触部44、45は、ダンパー部47、49より外側に位置している。各ダンパー部47、49は、絶縁材料で構成されており、たとえば絶縁性樹脂で構成されている。本実施形態では、各ダンパー部47、49は熱圧着樹脂フィルム(一例として、ニトリルゴム系樹脂フィルム)で構成されており、この場合、各ダンパー部47、49は表層部分が加熱溶融された状態で圧着形成される。本実施形態では、各ダンパー部47、49は、フレキシブル基板40の主面43bおよび底壁11の底面12の両方に接着されており、それによりフレキシブル基板40を底壁11に固定している。
【0038】
一対の第1のピン50(長尺配線部材)は、略四角柱状を有し、Z方向に沿って延在している。
図7に示すように、一対の第1のピン50は、下側端部50aにおいて、フレキシブル基板40に当接している。具体的には、一対の第1のピン50は、フレキシブル基板40の配線41、42のそれぞれの第2の端部41b、42bに接続されるように、位置合わせされている。換言すると、一対の第1のピン50は、第2の端部41b、42bの位置P(第1の位置)において、配線41、42と接続されている。一対の第1のピン50とフレキシブル基板40の配線41、42とが接続される位置Pは、Z方向から見て圧電振動子20と重なる位置ではなく、圧電振動子20に隣接する位置である。一対の第1のピン50のうち、一方の第1のピン50Aが、配線41の第2の端部41bに接続されるように位置合わせされており、他方の第1のピン50Bが、配線42の第2の端部42bに接続されるように位置合わせされている。第1のピン50A、50Bと第2の端部41b、42bとははんだまたは導電性接着剤により接続される。フレキシブル基板40と第1のピン50A、50Bとが接続された接続面積S1は、フレキシブル基板40と圧電振動子20とが接続された接続面積S2より小さくなるように設計されている。
【0039】
第1のピン50は、導電部材であり、たとえば金属からなる。第1のピン50は、たとえば、真鍮からなる。第1のピン50の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は二層構造である。
【0040】
一対の第1のピン50それぞれのフレキシブル基板40側の部分は、
図2、3に示すように、一対のスリーブ52によってそれぞれ保持されている。一対のスリーブ52のうち、一方のスリーブ52Aが第1のピン50Aを保持し、他方のスリーブ52Bが第1のピン50Bを保持している。各スリーブ52A、52Bは、両端にフランジを有する円筒部材である。本実施形態では、スリーブ52A、52Bは、互いに同形状を呈している。各スリーブ52A、52Bは、樹脂からなる。各スリーブ52A、52Bは、たとえば、リン脱酸銅(PDC)、又は黄銅などの金属からなる。スリーブ52A、52Bが金属からなる場合、第1のピン50A、50Bだけではなくスリーブ52A、52Bもフレキシブル基板40の導体層と接合させることができるので、接続信頼性が増す。各スリーブ52A、52Bは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂からなってもよい。
【0041】
各スリーブ52A、52Bの一端側のフランジは、フレキシブル基板40と接合されている。各スリーブ52A、52Bは、軸方向(Z方向)から見て、接触部44、45と重なる位置に配置されている。各スリーブ52A、52Bの軸方向の長さは、第1のピン50の軸方向の長さよりも短い。
【0042】
吸音材80は、圧電振動子20上に配置されている。吸音材80は、一対の第1のピン50の間に配置されている。吸音材80は、収容空間Sに配置されている。吸音材80は、たとえば、直方体形状を呈している。吸音材80は、
図4にも示されるように、圧電振動子20の厚さ方向(Z方向)から見て、圧電振動子20の全体と重なっている。すなわち、圧電振動子20は、Z方向から見て、吸音材80の外縁の内側に位置している。これにより、超音波成分の残響が更に低減される。圧電振動子20は、Z方向から見て、吸音材80のX方向及びY方向の略中央に位置している。吸音材80は、たとえば、熱可塑性樹脂を主体とする発泡体(気泡構造体)からなる。熱可塑性樹脂は、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を含む。
【0043】
中継基板60(第2配線部材)は、一対の第1のピン50の間に架け渡されている。中継基板60は、吸音材80を挟んで圧電振動子20と平行に配置されている。中継基板60は、収容空間S内に配置されている。
図8に示すように、中継基板60は、X方向に延びる略I字状の板状部材であり、たとえばガラスエポキシ基板からなる。中継基板60は、複数の導体層を有し、本実施形態では略I字状の一対の導体層62A、62Bを有する。
【0044】
中継基板60は、Z方向において互いに対向している一対の主面60a,60bを有し、主面60bが吸音材80と対向している。中継基板60の両端部における各主面60a,60bは、外側に膨らむように湾曲し、円弧状を呈している。
【0045】
図9に示すように、中継基板60の両端部には、第1のピン50A、50Bが貫挿される貫通孔64A、64Bがそれぞれ設けられている。貫通孔64A、64Bは、円形断面を有する。本実施形態では、Z方向から見て、貫通孔64A、64Bの曲率中心と各主面60a,60bの湾曲の曲率中心とは一致しており、両端部において貫通孔64A、64Bと各主面60a,60bとは同心円の位置関係を有する。また、中継基板60の貫通孔64A、64Bの間には、第2のピン70A、70Bが挿入される貫通孔66A、66Bがそれぞれ設けられている。
【0046】
一対の導体層62A、62Bはそれぞれ、貫通孔64A、64Bと貫通孔66A、66Bとの間をつなぐように設けられて、第1のピン50A、50Bと第2のピン70A、70Bとを導通している。一対の導体層62A、62Bのうち、一方の導体層62Aは第1のピン50Aと第2のピン70Aとを接続しており、他方の導体層62Bは第1のピン50Bと第2のピン70Bとを接続している。
【0047】
本実施形態では、各導体層62A、62Bは、貫通孔64A、64B内に入り込んで貫通孔64A、64Bの内側面を覆っている。第1のピン50A、50Bは、貫通孔64A、64Bを貫く上側端部50bに瘤部54が設けられた形状(いわゆる、プレスフィット端子形状)を有する。瘤部54は、瘤部54以外の部分に比べて断面外形寸法が大きくなっている部分である。瘤部54の断面外形寸法は、貫通孔64A、64Bの断面寸法と同じまた貫通孔64A、64Bの断面寸法より大きく、瘤部54以外の部分の断面外形寸法は、貫通孔64A、64Bの断面寸法より小さくなるように設計されている。本実施形態では、瘤部54が設けられた部分の第1のピン50A、50Bには、第1のピン50A、50Bを貫通する中空部56が設けられている。第1のピン50A、50Bは、中継基板60の貫通孔64A、64Bに挿通されたときに、断面外形寸法が大きくなっている瘤部54において中継基板60に係止され、位置固定される。貫通孔64A、64Bの内側面は、導体層62A、62Bで覆われているため、貫通孔64A、64B内において導体層62A、62Bと第1のピン50A、50Bとが導通する。
【0048】
第2のピン70A、70B(外部配線)は、本実施形態では、貫通孔66A、66Bに一部入り込んでいる。第2のピン70A、70Bが貫通孔66A、66Bに入り込むことで、中継基板60に対する第2のピン70A、70Bの相対位置合わせがおこなわれ得る。なお、第2のピン70A、70Bは、貫通孔66A、66Bを貫通する態様であってもよい。第2のピン70A、70Bは、導体層62A、62Bにはんだまたは導電性接着剤により電気的に接続されてもよい。
【0049】
第2のピン70A、70Bは、X方向において互いに離間した状態で主面60aに配置されている。第2のピン70A、70Bは、主面60aからZ方向に延在し、防振材90を貫通している。一対の第2のピン70は、X方向において一対の第1のピン50A、50Bの間に配置されている。本実施形態では、第2のピン70A、70Bは、互いに同形状を呈している。第2のピン70は、たとえば、金属からなる。第2のピン70は、たとえば、真鍮からなる。第2のピン70の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は、二層構造である。
【0050】
防振材90は、ケース10の内面(内側面14)と接して配置され、ケース10の振動を抑制する。防振材90は、吸音材80の周囲に配置されている。防振材90は、蓋体91と、枠体93と、を有している。蓋体91は、圧電振動子20、フレキシブル基板40、第1のピン50、スリーブ52、吸音材80、及び中継基板60がケース10内に収容されている状態で、ケース10の開口を封止している。蓋体91は、収容空間Sを封止している。蓋体91からは、第2のピン70のそれぞれの先端が突出している。
【0051】
枠体93は、蓋体91と交差する方向に延在している。蓋体91と交差する方向は、たとえば、蓋体91と直交する方向であってもよい。蓋体91と枠体93とは、一体形成されている。防振材90は、軸方向の一端が塞がれ、他端が開口している筒状の部材である。防振材90は、ケース10の内部に嵌め込まれている。防振材90は、ケース10の内部に圧入されている。枠体93は、蓋体91からZ方向に沿ってケース10の内側に延在している。枠体93は、底面12から離間している。枠体93は、ケース10の内側面14と接している。
【0052】
枠体93は、吸音材80の周りを取り囲んでいる。吸音材80は、圧電振動子20の厚さ方向(Z方向)において、防振材90(枠体93)よりも圧電振動子20側に突出している。枠体93と圧電振動子20との間のZ方向における距離は、吸音材80と圧電振動子20との間のZ方向における距離よりも長い。
【0053】
枠体93は、一対の側部95と、一対の側部97とを有している。一対の側部95は、吸音材80を挟んでX方向において互いに対向している。一対の側部97は、吸音材80を挟んでY方向において互いに対向している。各側部95は、吸音材80の各側面80cと互いに対向している。各側部95は、吸音材80から離間している。
【0054】
一対の側部97は、吸音材80を挟み込んで保持している。一対の側部97の間には、吸音材80がはめ込まれている。一対の側部97は、吸音材80を圧縮している。吸音材80は、圧縮に対する反発力によって一対の側部97を押圧している。各側部97は、吸音材80の各側面80dと接している。
【0055】
防振材90は、蓋体91から内側面14側に張り出す複数の張出部99を更に有している。張出部99は、蓋体91において、ケース10の段差部15に対応する位置に設けられている。張出部99は、対応する段差部15に配置される。防振材90は、張出部99が段差部15に係止されることで、ケース10に対して位置決めされている。
【0056】
防振材90は、弾性体であり、弾性により残響を抑制する。防振材90は、樹脂からなる。防振材90は、非発泡体であり、吸音材80の密度よりも高い密度を有している。防振材90は、たとえば、シリコーンゴムからなる。防振材90は、たとえば、RTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコーンゴムからなる。
【0057】
上述した超音波トランスデューサ1は、出力波を発信し、検査対象物から跳ね返ってきた出力波を受信する。超音波センサが検査対象物に近接し、超音波トランスデューサ1から検査対象物までの距離がわずかである場合、出力波の発信時に生じる残響成分の電圧と、検査対象物から跳ね返ってきた出力波の受信電圧とが干渉する。これにより、超音波トランスデューサ1では、受信電圧を検出することが困難になる場合がある。
【0058】
上述した超音波トランスデューサ1は、ケース10と、ケース10内に配置された圧電振動子20と、ケース10内において、外部から受け付けた圧電振動子20を発振させる信号を圧電振動子20に入力する配線部30とを備えている。配線部30は、フレキシブル基板40と、中継基板60と、第1のピン50とを含んでいる。そして、Z方向から見て、圧電振動子20に隣接する位置Pにおいて、フレキシブル基板40と第1のピン50とが接続されている。
【0059】
そのため、超音波トランスデューサ1では、第1のピン50により、配線部30が迂回するようにして、圧電振動子20の電極23、25を外部配線までつないでいる。したがって、圧電振動子20の電極23、25が直接的に外部配線につながる構成に比べて、配線部30における配線経路の延長が図られている。それにより、超音波トランスデューサ1では、配線部30において超音波成分の残響が減衰されやすくなっており、残響の低減を実現することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0061】
たとえば、中継基板60は、I字状に限らず、
図10に示すようにU字状であってもよい。この場合、一対の導体層62A、62BはL字状であってもよい。この場合、第1のピン50と第2のピン70とを一直線状に配置する必要がなく、第1のピン50と第2のピン70とをY軸方向にズラして配置することができるため、設計自由度の向上が図られる。
【0062】
たとえば、超音波トランスデューサ1は、超音波の送信のみをおこなってもよい。また、圧電振動子20は、圧電素体21内に配置される一つ又は複数の内部電極を有していてもよい。この場合、圧電素体21は複数の圧電体層を有していてもよく、内部電極と圧電体層とが交互に配置されていてもよい。
【0063】
さらに、圧電素体21は、Z方向から見て、正方形状ではなく、長方形状や円形状であってもよい。また、フレキシブル基板40の開口43cは、四角形状に限らず、U字状であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…超音波トランスデューサ、10…ケース、20…圧電振動子、30…配線部、40…フレキシブル基板、50、50A、50B…第1のピン、54…瘤部、60…中継基板、70、70A、70B…第2のピン。