(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20240312BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240312BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240312BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20240312BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20240312BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240312BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240312BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/547
B60W20/15
B60K6/38
B60L15/20 K
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2020162597
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳輝
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-292313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0244262(US,A1)
【文献】特開2011-037409(JP,A)
【文献】特開2007-153253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0367009(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0014717(KR,A)
【文献】特開2019-025985(JP,A)
【文献】特開2013-018375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバが手動で任意の変速段に選択が可能な手動変速機と、
前記手動変速機を介して駆動輪を駆動させるエンジンと、
前記エンジンと前記手動変速機との間の動力伝達を解放または接続するクラッチと、
前記手動変速機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた電動機と、
前記電動機のみを駆動源として走行を行なうEVモードと、前記エンジンと前記電動機とを駆動源として走行を行なうHEVモードと、を切り替える制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記制御部は、前記EVモード時に、前記HEVモード時のドライバのアクセル操作、クラッチ操作、変速操作に応じた駆動力に相当する駆動力を前記電動機により発生させ、
前記EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度が前記クラッチの係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合と小さい場合とで、前記電動機により出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なうハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記EVモード中に、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、前記電動機のトルクを増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、前記電動機のトルクを減少させる請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記EVモード中に前記ハイブリッド車両が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、前記クラッチが半クラッチ状態時に前記電動機により駆動力振動を発生させる請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記EVモード中に前記ハイブリッド車両が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも小さい場合に、前記クラッチが半クラッチ状態時に前記電動機により駆動力振動を発生させた後、前記電動機により発生させる駆動力をゼロとする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記手動変速機の変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度が前記理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間減少させる請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記理想的なアクセル開度は、変速操作時においては、前記HEVモードのクラッチ接続過程において、エンジン回転速度と前記手動変速機のインプット回転速度とがほぼ同期する理想的なアクセル操作時のアクセル開度であり、発進操作時においては、前記HEVモードのクラッチ接続過程において、エンジン回転速度をほぼ一定の回転速度に維持する理想的なアクセル操作時のアクセル開度である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
ドライバが手動で任意の変速段に選択が可能な手動変速機と、
前記手動変速機を介して駆動輪を駆動させるエンジンと、
前記エンジンと前記手動変速機との間の動力伝達を解放または接続するクラッチと、
前記手動変速機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた電動機と、
前記電動機のみを駆動源として走行を行なうEVモードと、前記エンジンと前記電動機とを駆動源として走行を行なうHEVモードと、を切り替える制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記制御部は、前記EVモード時に、前記HEVモード時のドライバのアクセル操作、クラッチ操作、変速操作に応じた駆動力に相当する駆動力を前記電動機により発生させ、
前記EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合と遅い場合とで、前記電動機から出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なうハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記EVモード中に前記ハイブリッド車両が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、前記クラッチの半クラッチ状態時に前記電動機により駆動力振動を発生させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間増加させる請求項7に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記EVモード中に前記ハイブリッド車両が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合に、前記クラッチの半クラッチ状態時に前記電動機により駆動力振動を発生させた後、前記電動機により発生させる駆動力をゼロとする請求項8に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記EVモード中の前記手動変速機の低速段から高速段への変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間減少させる請求項7に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記EVモード中の前記手動変速機の高速段から低速段への変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間減少させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが前記理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、前記クラッチの接続状態時に前記電動機により発生させる駆動力を一定時間増加させる請求項7に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項12】
前記理想的なクラッチ係合タイミングは、変速操作時においては、前記HEVモードのクラッチ接続過程において、エンジン回転速度と前記手動変速機のインプット回転速度とがほぼ同期する理想的なクラッチ操作時のクラッチ係合タイミングであり、発進操作時においては、前記HEVモードのクラッチ接続過程において、エンジン回転速度をほぼ一定の回転速度に維持する理想的なクラッチ操作時のクラッチ係合タイミングである請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、アクセル操作量と、前記電動機の回転速度と、前記手動変速機の変速段と、クラッチペダルの操作量とに基づいて仮想エンジン回転速度を算出し、前記クラッチの接続状態時に増加あるいは減少させる駆動力は、前記仮想エンジン回転速度と前記エンジンの慣性モーメントを用いて算出した仮想エンジンイナーシャトルクに基づく駆動力として算出する請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手動変速機を備えるハイブリッド車両において、EVモード時に、クラッチペダルの操作が不適切であると判定された場合、電動機によって駆動力振動を与えることで、運転者に不適切な操作であることを認識させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不適切な操作時に駆動力振動を与えるだけでは、運転者のクラッチ操作及びアクセル操作が、踏む側または踏まない側のどちらに操作すれば適切な操作になるのか判別ができない。
【0005】
そこで、本発明は、アクセル操作またはクラッチ操作をどのように修正すれば適切な操作になるのかをドライバに判別させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、ドライバが手動で任意の変速段に選択が可能な手動変速機と、前記手動変速機を介して駆動輪を駆動させるエンジンと、前記エンジンと前記手動変速機との間の動力伝達を解放または接続するクラッチと、前記手動変速機と前記駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた電動機と、前記電動機のみを駆動源として走行を行なうEVモードと、前記エンジンと前記電動機とを駆動源として走行を行なうHEVモードと、を切り替える制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記制御部は、前記EVモード時に、前記HEVモード時のドライバのアクセル操作、クラッチ操作、変速操作に応じた駆動力に相当する駆動力を前記電動機により発生させ、前記EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度が前記クラッチの係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合と小さい場合とで、前記電動機により出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なうものである。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、アクセル操作またはクラッチ操作をどのように修正すれば適切な操作になるのかをドライバに判別させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のMGトルク指令値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置の仮想エンジン回転速度算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のドライバ要求トルク算出マップの例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のEVモードで加速時に1速から2速へ変速操作を行なう場合の、クラッチ操作を変えたタイムチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のEVモードで減速時に3速から2速へ変速操作を行なう場合の、クラッチ操作を変えたタイムチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のEVモードで減速時に3速から2速へ変速操作を行なう場合の、アクセル操作を変えたタイムチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のEVモードで停車状態から発進する場合の、クラッチ操作を変えたタイムチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のEVモードで停車状態から発進する場合の、クラッチ係合タイミングは変えずに、アクセル操作量を変えたタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ドライバが手動で任意の変速段に選択が可能な手動変速機と、手動変速機を介して駆動輪を駆動させるエンジンと、エンジンと手動変速機との間の動力伝達を解放または接続するクラッチと、手動変速機と駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた電動機と、電動機のみを駆動源として走行を行なうEVモードと、エンジンと電動機とを駆動源として走行を行なうHEVモードと、を切り替える制御部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、制御部は、EVモード時に、HEVモード時のドライバのアクセル操作、クラッチ操作、変速操作に応じた駆動力に相当する駆動力を電動機により発生させ、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチの係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合と小さい場合とで、電動機により出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なうよう構成されている。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、アクセル操作またはクラッチ操作をどのように修正すれば適切な操作になるのかをドライバに判別させることができる。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、エンジン2と、電動機としてのモータジェネレータ3と、手動変速機としてのマニュアルトランスミッション4と、ディファレンシャル5と、駆動輪6と、制御部としてのECU(Electric Control Unit)10と、を含んで構成されている。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0014】
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20が連結されている。ISG20は、ベルト21などを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフトから入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0015】
モータジェネレータ3は、インバータ30を介してバッテリ31から供給される電力によって駆動する電動機としての機能と、ディファレンシャル5から入力される逆駆動力によって発電を行う発電機としての機能とを有する。
【0016】
インバータ30は、ECU10の制御により、バッテリ31から供給された直流電力を三相の交流電力に変換してモータジェネレータ3に供給したり、モータジェネレータ3によって生成された三相の交流電力を直流電力に変換してバッテリ31を充電したりする。バッテリ31は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池によって構成されている。
【0017】
マニュアルトランスミッション4は、エンジン2から出力された回転を複数の変速段のいずれかに応じた変速比で変速して出力する手動変速機によって構成されている。マニュアルトランスミッション4の出力軸は、ディファレンシャル5を介して左右の駆動輪6に接続されている。モータジェネレータ3の出力軸は、マニュアルトランスミッション4の出力軸に接続されている。
【0018】
マニュアルトランスミッション4で成立可能な変速段としては、例えば低速段である1速段から高速段である5速段までの走行用の変速段と、後進段とがある。走行用の変速段の段数は、ハイブリッド車両1の諸元により異なり、上述の1速段から5速段に限られるものではない。
【0019】
マニュアルトランスミッション4における変速段は、運転者により操作されるシフトレバー40の操作位置に応じて切り替えられるようになっている。シフトレバー40の操作位置は、シフトポジションセンサ41により検出される。シフトポジションセンサ41は、ECU10に接続されており、検出結果をECU10に送信するようになっている。
【0020】
マニュアルトランスミッション4には、ニュートラルスイッチ42が設けられている。ニュートラルスイッチ42は、ECU10に接続されている。ニュートラルスイッチ42は、マニュアルトランスミッション4においていずれの変速段も成立していない状態、つまりニュートラル状態であることを検出するもので、マニュアルトランスミッション4がニュートラル状態にあるときにONされるスイッチである。
【0021】
エンジン2とマニュアルトランスミッション4との間の動力伝達経路には、クラッチ7が設けられている。クラッチ7としては、例えば摩擦クラッチを用いることができる。エンジン2とマニュアルトランスミッション4とは、クラッチ7を介して接続されている。
【0022】
クラッチ7は、クラッチアクチュエータ70によって作動され、エンジン2とモータジェネレータ3との間で動力を伝達する係合状態と、動力を伝達しない解放状態と、回転差のある状態でトルクが伝達される半クラッチ状態と、のいずれかに切り替えられるようになっている。クラッチアクチュエータ70は、ECU10に接続され、ECU10によって制御されるようになっている。
【0023】
ECU10は、運転者により操作されるクラッチペダル71の踏み込み量に応じてクラッチアクチュエータ70を制御し、マニュアルクラッチと同等の動作となるように制御する。
【0024】
クラッチペダル71の踏み込み量は、クラッチペダルセンサ72によって検出される。クラッチペダルセンサ72は、ECU10に接続されており、クラッチペダル71の踏み込み量に応じた信号をECU10に送信するようになっている。
【0025】
ハイブリッド車両1は、運転者により操作されるアクセルペダル90を備えている。アクセルペダル90の踏み込み量は、アクセル開度センサ91によって検出される。アクセル開度センサ91は、ECU10に接続されており、アクセルペダル90の踏み込み量をアクセル開度として検出し、当該アクセル開度に応じた信号をECU10に送信するようになっている。
【0026】
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0027】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU10として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例におけるECU10として機能する。
【0028】
ECU10には、上述したセンサ類のほか、車速センサ11が接続されている。車速センサ11は、ハイブリッド車両1の車速を検出し、検出結果をECU10に送信するようになっている。
【0029】
ECU10は、ハイブリッド車両1の制御モードを切り替えるようになっている。本実施例における制御モードとしては、EVモードとHEVモードとが設定されている。
【0030】
EVモードは、クラッチ7を解放状態とし、モータジェネレータ3の動力によりハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。HEVモードは、クラッチ7を係合状態とし、エンジン2、又はエンジン2及びモータジェネレータ3の動力によりハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。
【0031】
ECU10は、例えば、アクセル開度とエンジン回転速度に基づいてEVモードとHEVモードとを切り替える。
【0032】
ECU10は、EVモード時に、HEVモード時に同様のアクセル操作、クラッチ操作、変速操作を行なった場合のエンジン回転速度を想定して仮想エンジン回転速度を算出する。
【0033】
なお、EVモードにおいては、クラッチ7は常に開放状態に制御しているが、説明が煩雑になるため、特に断りのない限りEVモードにおけるクラッチ7の状態(係合状態、クラッチトルク等)はクラッチペダル71の操作量に応じた仮想的なクラッチ7の状態として取り扱う。
【0034】
ECU10は、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合と小さい場合とで、モータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なう。
【0035】
クラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度とは、HEVモードのクラッチ接続過程において、エンジン回転速度とマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度とがほぼ同期する理想的なアクセル操作時のアクセル開度である。
【0036】
クラッチ接続過程とは、クラッチ7の係合が開始してから、クラッチ7が完全に係合されるまでの期間をいい、クラッチ7の摩擦材同士がスリップした状態で係合して動力を伝達する半クラッチ状態も含んでいる。
【0037】
ECU10は、例えば、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、モータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、モータジェネレータ3から出力させるトルクを減少させる。
【0038】
ECU10は、例えば、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させる。
【0039】
ECU10は、例えば、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させた後、モータジェネレータ3により発生させる駆動力をゼロとする。
【0040】
ECU10は、例えば、EVモード中の変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間減少させる。
【0041】
ECU10は、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合と遅い場合とで、モータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なう。
【0042】
アクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングとは、HEVモードのクラッチ接続過程において、エンジン回転速度とマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度とがほぼ同期する理想的なクラッチ操作時のクラッチ係合タイミングである。
【0043】
ECU10は、例えば、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させる。
【0044】
ECU10は、例えば、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合に、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させた後、モータジェネレータ3により発生させる駆動力をゼロとする。
【0045】
ECU10は、例えば、EVモード中のマニュアルトランスミッション4の低速段から高速段への変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間減少させる。
【0046】
ECU10は、例えば、EVモード中のマニュアルトランスミッション4の高速段から低速段への変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間減少させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させる。
【0047】
ECU10は、例えば、モータジェネレータ3の回転速度とマニュアルトランスミッション4の変速段とクラッチペダル71の操作量とに基づいて仮想エンジン回転速度を算出し、クラッチ7の接続状態時に増加あるいは減少させる駆動力は、仮想エンジン回転速度とエンジン2の慣性モーメントを用いて算出した仮想エンジンイナーシャトルクに基づく駆動力として算出する。
【0048】
以上のように構成された本実施例に係る制御装置によるEVモードでのモータジェネレータ3へのトルク指令値であるMGトルク指令値の算出処理について、
図2を参照して説明する。なお、以下に説明するMGトルク指令値算出処理は、制御モードがEVモードに移行すると開始され、予め設定された時間間隔で実行され、制御モードがHEVモードに移行すると終了される。
【0049】
ステップS001において、ECU10は、車速、シフト位置、アクセル開度、クラッチペダルの踏み込み量などのハイブリッド車両1の各種センサ情報を取得する。ステップS001の処理を実行した後、ECU10は、ステップS002の処理を実行する。
【0050】
ステップS002において、ECU10は、後述する方法により仮想エンジン回転速度を計算する。ステップS002の処理を実行した後、ECU10は、ステップS003の処理を実行する。
【0051】
ステップS003において、ECU10は、アクセル開度と仮想エンジン回転速度に基づき、
図4に示すマップを補間演算してドライバ要求トルク(Tdr)を算出する。図中「ASP」はアクセル開度を示している。ステップS003の処理を実行した後、ECU10は、ステップS004の処理を実行する。
【0052】
図4に示すドライバ要求トルクマップは、アイドル回転以下の所定の回転速度域(自立運転ができない領域)ではアクセル開度に関わらず負の値となるように設定し、EVモードにおいて仮想エンジン回転速度が低下した場合にエンストを模擬するようにしている。
【0053】
また、エンジン2の過回転防止のため燃料カット等によりエンジントルクを低減させる高回転速度領域でも、アクセル開度に関わらず負の値となるように設定し、EVモードにおいて仮想エンジン回転速度が過回転となった場合に、燃料カット等によりエンジントルクを低減させている状態を模擬するようにしている。
【0054】
ステップS004において、ECU10は、仮想エンジンイナーシャトルクを算出する。ステップS004の処理を実行した後、ECU10は、ステップS005の処理を実行する。
【0055】
仮想エンジン回転速度の変化率とエンジン2の慣性モーメントから、以下の式(1)により仮想エンジンイナーシャトルクを算出する。
TIe(n)=((Ne(n-1)-Ne(n))/tp)×Ie・・・(1)
ここで、
TIe(n):仮想エンジンイナーシャトルク[Nm]
Ne(n):仮想エンジン回転速度[rad/s]
Ne(n-1):仮想エンジン回転速度(前回値)[rad/s]
Ie:エンジンイナーシャ[kg・m2]
tp:演算周期[s]
【0056】
ステップS005において、ECU10は、エンジン2が低回転となった場合に発生する駆動力振動に相当する変動トルクである仮想エンジン変動トルクを算出する。ステップS005の処理を実行した後、ECU10は、ステップS006の処理を実行する。
【0057】
仮想エンジン変動トルクの具体例としては、仮想エンジン回転速度における燃焼周期の正弦波トルクで、振幅は低回転で大きく、高回転では小さくする。仮想エンジン回転速度が自立運転可能な領域では、アクセル操作量が大きいほどトルクの振幅が大きくなるように算出してもよい。
【0058】
ステップS006において、ECU10は、ステップS003において算出されたドライバ要求トルクに、ステップS004において算出された仮想エンジンイナーシャトルクと、ステップS005において算出された仮想エンジン変動トルクとを加算して、エンジン2からマニュアルトランスミッション4の入力軸に出力される仮想インプットシャフトトルクを算出する。ステップS006の処理を実行した後、ECU10は、ステップS007の処理を実行する。
【0059】
ステップS007において、ECU10は、ステップS006において算出された仮想インプットシャフトトルクに、シフトポジションセンサ41の検出したシフト位置の変速段に応じたギア比(ニュートラルの場合はギア比をゼロとみなす)を乗算した値をMGトルク指令値として算出する。ステップS007の処理を実行した後、ECU10は、MGトルク指令値算出処理を終了する。
【0060】
このようなMGトルク指令値算出処理のステップS002における仮想エンジン回転速度算出処理について
図3を参照して説明する。
【0061】
ステップS101において、ECU10は、シフト位置がニュートラルであるか否かを判定する。シフト位置がニュートラルであると判定した場合には、ECU10は、ステップS102の処理を実行する。
【0062】
シフト位置がニュートラルでないと判定した場合には、ECU10は、ステップS103の処理を実行する。
【0063】
ステップS102において、ECU10は、ドライバ要求トルクとエンジン慣性モーメントに基づき仮想エンジン回転速度を算出する。ステップS102の処理を実行した後、ECU10は、仮想エンジン回転速度算出処理を終了する。
【0064】
シフト位置がニュートラルの場合、HEVモードであればエンジントルクとエンジン慣性モーメントによりエンジン回転速度の変化率が決まる。そこで、EVモードの場合には、ドライバ要求トルクとエンジン慣性モーメントから以下の式(2)により仮想エンジン回転速度を算出する。
Ne(n)=Ne(n-1)+(Te/Ie)×tp・・・(2)
【0065】
ここで、
Ne(n):仮想エンジン回転速度[rad/s]
Ne(n-1):仮想エンジン回転速度(前回値)[rad/s]
Ie:エンジンイナーシャ[kg・m2]
Te:ドライバ要求トルク[Nm]
tp:演算周期[s]
【0066】
ステップS103において、ECU10は、クラッチ7が係合状態であるか否かを判定する。クラッチ7が係合状態であると判定した場合には、ECU10は、ステップS104の処理を実行する。
【0067】
クラッチ7が係合状態でないと判定した場合には、ECU10は、ステップS105の処理を実行する。
【0068】
ここでは、以下の条件1及び条件2が両方成立した場合に、クラッチ7が係合状態であると判定する。条件1だけでは、クラッチ7が係合状態への移行中(クラッチ7の差回転がゼロへ向けて減少している状態)の場合があるため、条件2(クラッチ7の差回転がほぼゼロ)も成立した場合にクラッチ7が係合していると判定する。
条件1・・・|Te|<Tc
条件2・・・Ni-α<Ne(n-1)<Ni+α
【0069】
ここで、
Ne(n-1):仮想エンジン回転速度(前回値)[rad/s]
Te:ドライバ要求トルク[Nm]
Tc:クラッチ伝達トルク上限[Nm]
Ni:インプット回転速度[rad/s]
α:クラッチ係合判定回転差閾値[rad/s]
【0070】
なお、インプット回転速度(Ni)は、モータジェネレータ3の回転速度であるMG回転速度と選択された変速段のギア比から算出する。
【0071】
ステップS104において、ECU10は、MG回転速度とシフト位置に基づき仮想エンジン回転速度を算出する。ステップS104の処理を実行した後、ECU10は、仮想エンジン回転速度算出処理を終了する。
【0072】
クラッチ7が係合状態である場合、HEVモードであれば、エンジン回転速度はマニュアルトランスミッション4のインプットシャフト回転速度に等しい。そこで、EVモードでは、MG回転速度と、シフト位置から選択された変速段のギア比から、以下の式(3)により仮想エンジン回転速度を算出する。
Ne(n)=Nmg×ギア比・・・(3)
【0073】
ここで、
Ne(n):仮想エンジン回転速度[rad/s]
Nmg:MG回転速度[rad/s]
ギア比:インプットシャフトとモータジェネレータ3との間のギア比
【0074】
ステップS105において、ECU10は、ドライバ要求トルクとクラッチトルクとエンジン慣性モーメントに基づき仮想エンジン回転速度を算出する。ステップS105の処理を実行した後、ECU10は、仮想エンジン回転速度算出処理を終了する。
【0075】
クラッチ7が係合状態でない場合には、クラッチ7が滑った状態でトルクを伝達する状態と、クラッチ7が完全に解放されている状態とがあるが、クラッチ解放状態はクラッチ伝達トルクがゼロの状態であるため、同じ計算方法で取り扱うことができる。
【0076】
HEVモードであれば、エンジン回転速度はエンジントルクとエンジン慣性モーメントとクラッチ伝達トルク上限によりエンジン回転速度の変化率が決まる。そこで、EVモードでは、ドライバ要求トルクと、エンジン慣性モーメントと、クラッチ伝達トルク上限とから以下の式(4)により仮想エンジン回転速度を算出する。
Ne(n)=Ne(n-1)+((Te-Tc)/Ie)×tp・・・(4)
ただし、Tcは、
Ne(n-1)>インプット回転速度の場合は正の値
Ne(n-1)<インプット回転速度の場合は負の値
とする。
【0077】
ここで、
Ne(n):仮想エンジン回転速度[rad/s]
Ne(n-1):仮想エンジン回転速度(前回値)[rad/s]
Te:ドライバ要求トルク[Nm]
Ie:エンジンイナーシャ[kg・m2]
Tc:クラッチ伝達トルク上限[Nm]
tp:演算周期[s]
【0078】
このようなMGトルク指令値算出処理による動作について
図5から
図9を参照して説明する。
【0079】
図5は、EVモードで加速時に1速から2速へ変速操作を行なう場合の、クラッチ操作を変えたタイムチャートである。
【0080】
時刻t0から時刻t1までは、マニュアルトランスミッション4の変速段1速でアクセルペダル90を踏み込んだ状態で走行中である。
【0081】
時刻t1において、2速への変速を開始するため、アクセルペダル90を戻し始めるとともに、クラッチペダル71を踏み始める。
【0082】
時刻t2から時刻t3の間は半クラッチ状態となり、時刻t3以降はクラッチ7が解放された状態となる。通常、クラッチ7を切る(クラッチペダル71を踏み込む)操作は短時間で行なわれるため、時刻t2と時刻t3は、ほぼ同時とみなしてもかまわない。
【0083】
時刻t3において、クラッチ7は解放状態となり、アクセルペダル90は解放された状態(アクセル操作量がゼロ)となっているため、仮想エンジン回転速度は低下し始める。
【0084】
そして、時刻t4から時刻t5の間に、ドライバのシフト操作により、変速段が1速からニュートラル(図中「N」で示す)を経由して2速へと変更される。
【0085】
その後、クラッチペダル71が徐々に戻され始め、時刻t6においてクラッチ7が係合し始め、時刻t7においてクラッチ7が係合状態(クラッチ7の伝達トルク上限>クランク軸におけるドライバ要求トルク、かつクラッチ滑り=0)となる。
【0086】
理想的なクラッチ操作の場合、HEVモードではエンジン回転速度がマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度とほぼ同期する時点でクラッチ7を係合させる。したがって、エンジン回転速度の急変は発生せず、ショックは発生しない、
【0087】
EVモードでは、仮想エンジン回転速度とアクセル操作量に基づくクランク軸におけるドライバ要求トルクとギア比に応じたMGトルクをモータジェネレータ3に発生させる。ここで、仮想エンジン回転速度の急変は発生しないため、エンジンイナーシャトルクはほぼゼロとなる。
【0088】
時刻t6aから時刻t7aの間にクラッチ7を係合させる、クラッチ7の係合が理想のクラッチ操作の場合より早い(同期回転となる前にクラッチ7の係合を開始する)場合、HEVモードではエンジン回転速度がインプット回転速度より高い状態でクラッチ7の係合を開始するため、クラッチ7の係合に伴いエンジン回転速度が引き下げられる。したがって、時刻t6aから時刻t7aの間、エンジン2のイナーシャトルクにより突き上げショックが発生する。
【0089】
EVモードでは、エンジン2のイナーシャトルクに相当するトルクをMGトルクに加算し、突き上げショックを模擬する。したがって、クラッチの係合タイミングが早かったことをドライバに認識させることができる。
【0090】
時刻t6bから時刻t7bの間にクラッチ7を係合させる、クラッチ7の係合が理想のクラッチ操作の場合より遅い場合、HEVモードではエンジン回転速度がインプット回転速度より低い状態でクラッチ7の係合を開始するため、クラッチ7の係合に伴いエンジン回転速度が引き上げられる。したがって、時刻t6bから時刻t7bの間、エンジン2のイナーシャトルクにより、引き込みショックが発生する。
【0091】
EVモードでは、エンジン2のイナーシャトルクに相当するトルク(負の値)をMGトルクに加算し、引き込みショックを模擬する。したがって、クラッチ7の係合タイミングが遅かったことをドライバに認識させることができる。
【0092】
図6は、EVモードで減速時に3速から2速へ変速操作を行なう場合の、クラッチ操作を変えたタイムチャートである。
【0093】
時刻t10から時刻t11までは、マニュアルトランスミッション4の変速段3速でアクセルペダル90を離した状態で走行中である。
【0094】
時刻t11において、2速への変速を開始するため、クラッチペダル71を踏み始める。
【0095】
時刻t12から時刻t13の間は半クラッチ状態となり、時刻t13以降はクラッチ7が解放された状態となる。通常、クラッチ7を切る(クラッチペダル71を踏み込む)操作は短時間で行なわれるため、時刻t12と時刻t13は、ほぼ同時とみなしてもかまわない。
【0096】
時刻t13において、クラッチ7は解放状態となり、アクセルペダル90を離したままでは仮想エンジン回転速度が低下してしまうため、仮想エンジン回転速度がマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度に同期するようにアクセルペダル90が適切に操作される。
【0097】
そして、時刻t14から時刻t15の間に、ドライバのシフト操作により、変速段が3速からニュートラル(図中「N」で示す)を経由して2速へと変更される。
【0098】
その後、クラッチペダル71が徐々に戻され始め、時刻t16においてクラッチ7が係合し始めると同時にアクセルペダル90を離し、時刻t17においてクラッチ7が係合状態(クラッチ7の伝達トルク上限>クランク軸におけるドライバ要求トルク、かつクラッチ滑り=0)となる。
【0099】
理想的なクラッチ操作の場合、HEVモードではエンジン回転速度がマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度とほぼ同期する時点でクラッチ7を係合させる。したがって、エンジン回転速度の急変は発生せず、ショックは発生しない、
【0100】
EVモードでは、仮想エンジン回転速度とアクセル操作量に基づくクランク軸におけるドライバ要求トルクとギア比に応じたMGトルクをモータジェネレータ3に発生させる。ここで、仮想エンジン回転速度の急変は発生しないため、エンジンイナーシャトルクはほぼゼロとなる。
【0101】
時刻t16aから時刻t17aの間にクラッチ7を係合させる、クラッチ7の係合が理想のクラッチ操作の場合より早い(同期回転となる前にクラッチ7の係合を開始する)場合、HEVモードではエンジン回転速度がインプット回転速度より低い状態でクラッチ7の係合を開始するため、クラッチ7の係合に伴いエンジン回転速度が引き上げられる。したがって、時刻t16aから時刻t17aの間、エンジン2のイナーシャトルクにより引き込みショックが発生する。
【0102】
EVモードでは、エンジン2のイナーシャトルクに相当するトルク(負の値)をMGトルクに加算し、引き込みショックを模擬する。したがって、クラッチの係合タイミングが早かったことをドライバに認識させることができる。
【0103】
時刻t16bから時刻t17bの間にクラッチ7を係合させる、クラッチ7の係合が理想のクラッチ操作の場合より遅い場合、HEVモードではエンジン回転速度がインプット回転速度より高い状態でクラッチ7の係合を開始するため、クラッチ7の係合に伴いエンジン回転速度が引き下げられる。したがって、時刻t16bから時刻t17bの間、エンジン2のイナーシャトルクにより、突き上げショックが発生する。
【0104】
EVモードでは、エンジン2のイナーシャトルクに相当するトルクをMGトルクに加算し、突き上げショックを模擬する。したがって、クラッチ7の係合タイミングが遅かったことをドライバに認識させることができる。
【0105】
図7は、EVモードで減速時に3速から2速へ変速操作を行なう場合の、アクセル操作を変えたタイムチャートである。
【0106】
時刻t20から時刻t21までは、マニュアルトランスミッション4の変速段3速でアクセルペダル90を離した状態で走行中。
【0107】
時刻t21において、2速への変速を開始するため、クラッチペダル71を踏み始める。
【0108】
時刻t22から時刻t23の間は半クラッチ状態となり、時刻t23以降はクラッチ7が解放された状態となる。通常、クラッチ7を切る(クラッチペダル71を踏み込む)操作は短時間で行なわれるため、時刻t22と時刻t23は、ほぼ同時とみなしてもかまわない。
【0109】
時刻t23において、クラッチ7は解放状態となり、アクセルペダル90を離したままでは仮想エンジン回転速度が低下してしまうため、仮想エンジン回転速度がマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度に同期するようにアクセルペダル90が適切に操作される。
【0110】
そして、時刻t24から時刻t25の間に、ドライバのシフト操作により、変速段が3速からニュートラル(図中「N」で示す)を経由して2速へと変更される。
【0111】
その後、クラッチペダル71が徐々に戻され始め、時刻t26においてクラッチ7が係合し始めると同時にアクセルペダル90を離し、時刻t27においてクラッチ7が係合状態(クラッチ7の伝達トルク上限>クランク軸におけるドライバ要求トルク、かつクラッチ滑り=0)となる。
【0112】
理想的なアクセル操作の場合、HEVモードではエンジン回転速度がマニュアルトランスミッション4のインプット回転速度とほぼ同期する時点でクラッチ7を係合させる。したがって、エンジン回転速度の急変は発生せず、ショックは発生しない、
【0113】
EVモードでは、仮想エンジン回転速度とアクセル操作量に基づくクランク軸におけるドライバ要求トルクとギア比に応じたMGトルクをモータジェネレータ3に発生させる。ここで、仮想エンジン回転速度の急変は発生しないため、エンジンイナーシャトルクはほぼゼロとなる。
【0114】
アクセル操作量が理想より大きい場合、HEVモードでは、エンジン回転速度がインプット回転速度より高い状態でクラッチ7の係合を開始するため、クラッチ7の係合に伴いエンジン回転速度が引き下げられる。したがって、時刻t26から時刻t27の間、エンジン2のイナーシャトルクにより、突き上げショックが発生する。
【0115】
EVモードでは、仮想エンジン回転速度の低下により生じるエンジン2のイナーシャトルクに相当するトルク(正の値)をMGトルクに加算し、突き上げショックを模擬する。したがって、アクセル操作量が理想より大きかったことをドライバに認識させることができる。
【0116】
アクセル操作量が理想より小さい場合、HEVモードではエンジン回転速度がインプット回転速度より低い状態でクラッチ7の係合を開始するため、クラッチ7の係合に伴いエンジン回転速度が引き上げられる。したがって、時刻t26から時刻t27の間、エンジン2のイナーシャトルクにより、引き込みショックが発生する。
【0117】
EVモードでは、仮想エンジン回転速度の上昇により生じるエンジン2のイナーシャトルクに相当するトルク(負の値)をMGトルクに加算し、引き込みショックを模擬する。したがって、アクセル操作量が理想より小さかったことをドライバに認識させることができる。
【0118】
図8は、EVモードで停車状態から発進する場合の、クラッチ操作を変えたタイムチャートである。なお、EVモードにおいてもHEVモードでの発進と同様のクラッチ操作及びアクセル操作が必要となるようにしている。
【0119】
時刻t30では、車速がゼロでアクセルペダル90を離し、マニュアルトランスミッション4の変速段1速でクラッチペダル71を踏み込んだ状態である。
【0120】
そして、発進のためにクラッチペダル71を徐々に戻す操作を開始し、半クラッチでクラッチ7がトルク伝達を開始した際の仮想エンジン回転速度の落ち込みに備えるため、時刻t31においてアクセルペダル90を踏み込む。
【0121】
時刻t32から時刻t33の間は半クラッチ状態となり、クラッチ7によりトルクが伝達され、ハイブリッド車両1が動き始めている状態となる。
時刻t33において、クラッチ7は係合状態となり、発進操作は完了となる。
【0122】
アクセル操作に対応した理想的なクラッチ操作の場合、HEVモードにおいては、エンジン回転速度が適度に上昇した時点でクラッチ7の係合を開始し、半クラッチの状態でその回転速度を維持し、係合に至る。このような場合、ショックを生じさせることなく、ハイブリッド車両1を発進させることができる。
【0123】
一方、EVモードの場合、適切な操作を行なえば半クラッチ状態での仮想エンジン回転速度がほぼ一定で推移し、エンジン2のイナーシャトルクはほぼゼロと算出される。よって、この場合には、アクセル操作量に基づくエンジン2のクランク軸におけるドライバ要求トルクとマニュアルトランスミッション4のギア比に応じたMGトルクを発生させる。
【0124】
クラッチ操作のタイミングが、アクセル操作に対応した理想的なクラッチ操作より速い場合、例えば、時刻t32aから時刻t33aのようにアクセルペダル90の踏み込みを開始する前にクラッチ7が係合を開始する場合、HEVモードにおいてはエンジン回転速度が低下する。このとき、エンジンイナーシャにより正のトルクが発生する。そして、自立運転ができない回転速度までエンジン回転速度が低下すると、エンジントルクは負の値となり、さらにエンジン回転速度が低下してエンストに至る。
【0125】
EVモードの場合、モータジェネレータ3によりそれらのトルクを模擬させ、時刻t32aにおいてクラッチ7が係合を開始した直後は、仮想エンジン回転速度の低下により生じるエンジンイナーシャによる正のトルクをモータジェネレータ3により出力させる。そして、仮想エンジン回転速度が自立運転できない回転速度まで低下した後は、負のトルクをモータジェネレータ3により出力させる。さらにその後は、エンスト状態を模擬するため、MGトルクをゼロとする。したがって、クラッチ係合タイミングが理想より早いため、エンストを模擬した状態に至ったことをドライバに認識させることができる。
【0126】
クラッチ操作のタイミングが、時刻t32bから時刻t33bのように、アクセル操作に対応した理想的なクラッチ操作より遅い場合、HEVモードにおいてはクラッチ解放状態でのアクセルペダル90の踏み込みが継続することにより、エンジン回転速度が大きく上昇する。そして、クラッチ7が係合を開始するとエンジン回転速度が低下する。このとき、エンジンイナーシャにより正のトルクが発生する。
【0127】
EVモードの場合、モータジェネレータ3によりそれらのトルクを模擬させ、時刻t32bから時刻t33bの間、仮想エンジン回転速度の低下により生じるエンジンイナーシャトルク(正の値)を加算したトルクをモータジェネレータ3により出力させ、突き上げショックを模擬する。したがって、クラッチ係合タイミングが理想より遅かったことをドライバに認識させることができる。
【0128】
図9は、EVモードで停車状態から発進する場合の、クラッチ係合タイミングは変えずに、アクセル操作量を変えたタイムチャートである。なお、EVモードにおいてもHEVモードでの発進と同様のクラッチ操作及びアクセル操作が必要となるようにしている。
【0129】
時刻t40では、車速がゼロでアクセルペダル90を離し、マニュアルトランスミッション4の変速段1速でクラッチペダル71を踏み込んだ状態である。
【0130】
そして、発進のためにクラッチペダル71を徐々に戻す操作を開始し、半クラッチでクラッチ7がトルク伝達を開始した際の仮想エンジン回転速度の落ち込みに備えるため、時刻t41においてアクセルペダル90を踏み込む。
【0131】
時刻t42から時刻t43の間は半クラッチ状態となり、クラッチ7によりトルクが伝達され、ハイブリッド車両1が動き始めている状態となる。
時刻t43において、クラッチ7は係合状態となり、発進操作は完了となる。
【0132】
クラッチ操作に対応した理想的なアクセル操作の場合、HEVモードにおいては、エンジン回転速度が適度に上昇した時点でクラッチ7の係合を開始し、半クラッチの状態でその回転速度を維持し、係合に至る。このような場合、ショックを生じさせることなく、ハイブリッド車両1を発進させることができる。
【0133】
なお、クラッチ操作量が係合側になるほどクラッチ7の伝達トルクが増加するので、エンジン回転速度を維持するために、アクセル操作量を徐々に増加させている。
【0134】
一方、EVモードの場合、適切な操作を行なえば半クラッチ状態での仮想エンジン回転速度がほぼ一定で推移し、エンジン2のイナーシャトルクはほぼゼロと算出される。よって、この場合には、アクセル操作量に基づくエンジン2のクランク軸におけるドライバ要求トルクとマニュアルトランスミッション4のギア比に応じたMGトルクを発生させる。
【0135】
アクセル操作量がクラッチ操作に対応した理想的なアクセル操作より小さい場合、例えば、時刻t42から時刻t43aの間、HEVモードにおいてはクラッチ係合によりエンジン回転速度が低下する。このとき、エンジントルクにエンジンイナーシャによる正のトルクが加算されたトルクが発生する。そして、自立運転ができない回転速度までエンジン回転速度が低下すると、エンジントルクは負の値となり、さらにエンジン回転速度が低下してエンストに至る。
【0136】
EVモードの場合、モータジェネレータ3によりそれらのトルクを模擬させ、時刻t42においてクラッチ7が係合を開始した直後は、仮想エンジン回転速度の低下により生じるエンジンイナーシャによる正のトルクを加算したトルクをモータジェネレータ3により出力させる。そして、仮想エンジン回転速度が自立運転できない回転速度まで低下した後は、負のトルクをモータジェネレータ3により出力させる。さらにその後は、エンスト状態を模擬するため、MGトルクをゼロとする。したがって、アクセル操作量が理想より小さいため、エンストを模擬した状態に至ったことをドライバに認識させることができる。
【0137】
アクセル操作量がクラッチ操作に対応した理想的なアクセル操作より大きい場合、例えば、時刻t42から時刻t43bの間、HEVモードにおいてはクラッチ7の伝達トルクよりエンジントルクの方が大きいため、時刻t42から時刻t43に示すように、エンジン回転速度が大きく上昇する。そして、クラッチ7の伝達トルクがエンジントルクより大きくなると、時刻t43から時刻t43bに示すように、エンジン回転速度が低下しクラッチ係合に至る。このとき、エンジンイナーシャにより正のトルクが発生し突き上げショックとなる。
【0138】
EVモードの場合、モータジェネレータ3によりそれらのトルクを模擬させ、時刻t43から時刻t43bの間、仮想エンジン回転速度の低下により生じるエンジンイナーシャトルク(正の値)を加算したトルクをモータジェネレータ3により出力させ、突き上げショックを模擬する。したがって、アクセル操作量が理想より大きかったことをドライバに認識させることができる。
【0139】
このように、本実施例では、ECU10は、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合と小さい場合とで、モータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なう。
【0140】
ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度に対して大きい場合と小さい場合とで異なる制御を行なうことで、ドライバに理想的なアクセル開度に対して実際のアクセル開度がどちらに乖離しているかを認識させることができるため、どのように修正を行なえば理想的な操作を行なえるのか判別させることができる。
【0141】
また、ECU10は、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、モータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、モータジェネレータ3から出力させるトルクを減少させる。
【0142】
ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度よりも大きい場合にモータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させ、小さい場合に減少させることで、HEVモード時と同様の車両挙動を模擬することができ、ドライバに、どのように修正を行なえば理想的なアクセル操作になるかをより認識させやすくなる。
【0143】
また、ECU10は、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させる。
【0144】
ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度よりも大きい場合、駆動力を一定時間増加させ、エンジン2の回転速度が引き下げられることにより生じる突き上げショックを発生させることで、ドライバにアクセルペダル90の踏み過ぎを認識させることができる。また、ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度よりも小さい場合、半クラッチ時にモータジェネレータ3から駆動力振動を発生させることで、早期にアクセル操作の不足を認識させることができる。
【0145】
また、ECU10は、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合に、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させた後、モータジェネレータ3により発生させる駆動力をゼロとする。
【0146】
ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度よりも小さい場合、半クラッチ時にモータジェネレータ3から駆動力振動を発生させることで、早期にアクセル操作の不足を認識させることができ、さらにクラッチ接続時の駆動力をゼロとしてエンストを模擬しているため、ドライバにアクセル操作の不足を確実に認識させることができる。
【0147】
また、ECU10は、EVモード中の変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも大きい場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるアクセル開度がクラッチ7の係合状態に対して理想的なアクセル開度よりも小さい場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間減少させる。
【0148】
ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度よりも大きい場合、駆動力を一定時間増加させ、エンジン2の回転速度が引き下げられることにより生じる突き上げショックを模擬して発生させることで、ドライバにアクセルペダル90の踏み過ぎを認識させることができる。また、ドライバの操作によるアクセル開度が理想的なアクセル開度よりも小さい場合、駆動力を一定時間減少させ、エンジン2の回転速度が引き上げられることにより生じる引き込みショックを模擬して発生させることで、ドライバにアクセル操作の不足を認識させることができる。
【0149】
また、ECU10は、EVモード中のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングに対して早い場合と遅い場合とで、モータジェネレータ3から出力させるトルクを増加させる制御と減少させる制御とのどちらか異なる制御を行なう。
【0150】
ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングに対して早い場合と遅い場合とで異なる制御を行なうことで、ドライバに理想的なクラッチ係合タイミングに対して実際のクラッチ係合タイミングがどちらに乖離しているかを認識させることができるため、どのように修正を行なえば理想的な操作を行なえるかを判別させることができる。
【0151】
また、ECU10は、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させる。
【0152】
ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させることで、早期にクラッチ7の係合タイミングが早いことを認識させることができる。また、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合、駆動力を一定時間増加させることで、ドライバにクラッチ7の係合タイミングが遅いことを認識させることができる。
【0153】
また、ECU10は、EVモード中のハイブリッド車両1が停車状態から発進する際のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させた後、モータジェネレータ3により発生させる駆動力をゼロとする。
【0154】
ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合、半クラッチ状態時にモータジェネレータ3により駆動力振動を発生させることで、早期にクラッチ7の係合タイミングが早いことを認識させることができ、さらにクラッチ接続時の駆動力をゼロとしてエンストを模擬しているため、ドライバにクラッチ係合タイミングが早いことを確実に認識させることができる。
【0155】
また、ECU10は、EVモード中のマニュアルトランスミッション4の低速段から高速段への変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間減少させる。
【0156】
ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合、駆動力を一定時間増加させることで、ドライバにクラッチ係合タイミングが早いことを認識させることができる。ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合、駆動力を一定時間減少させることで、ドライバにクラッチ係合タイミングが遅いことを認識させることができる。
【0157】
また、ECU10は、EVモード中のマニュアルトランスミッション4の高速段から低速段への変速時のクラッチ接続過程において、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間減少させ、ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングがアクセル開度に対して理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合には、クラッチ7の接続状態時にモータジェネレータ3により発生させる駆動力を一定時間増加させる。
【0158】
ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも早い場合、駆動力を一定時間減少させることで、ドライバにクラッチ係合タイミングが早いことを認識させることができる。ドライバの操作によるクラッチ係合タイミングが理想的なクラッチ係合タイミングよりも遅い場合、駆動力を一定時間増加させることで、ドライバにクラッチ係合タイミングが遅いことを認識させることができる。
【0159】
また、ECU10は、アクセル操作量に応じたドライバ要求トルクと、モータジェネレータ3の回転速度と、マニュアルトランスミッション4の変速段と、クラッチペダル71の操作量とに基づいて仮想エンジン回転速度を算出し、クラッチ7の接続状態時に増加あるいは減少させる駆動力は、仮想エンジン回転速度とエンジン2の慣性モーメントを用いて算出した仮想エンジンイナーシャトルクに基づく駆動力として算出する。
【0160】
実際のエンジン2による運転時のイナーシャトルクを模擬してモータジェネレータ3により発生させる駆動力を算出することで、ドライバにドライバビリティの悪化や車両挙動の違和感を感じさせることなく、適切な操作を認識させることができる。
【0161】
本実施例では、各種センサ情報に基づきECU10が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0162】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0163】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
3 モータジェネレータ(電動機)
4 マニュアルトランスミッション(手動変速機)
6 駆動輪
7 クラッチ
10 ECU(制御部)
11 車速センサ
41 シフトポジションセンサ
42 ニュートラルスイッチ
72 クラッチペダルセンサ
91 アクセル開度センサ