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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電動移動体
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20240101AFI20240312BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240312BHJP
   B64D 33/08 20060101ALI20240312BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20240312BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240312BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240312BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/08
B64D33/08
B64D45/00 Z
H02P5/46 C
B60L3/00 J
B60L15/20 K
B60L15/20 S
B60L50/60
B60L58/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020164036
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056172
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】川津 信介
(72)【発明者】
【氏名】中井 康裕
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6233671(JP,B2)
【文献】特表2017-527059(JP,A)
【文献】米国特許第10322824(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/24
B64C 27/08
B64D 33/08
B64D 45/00
H02P 5/46
B60L 3/00
B60L 15/20
B60L 50/60
B60L 58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出力軸(31,32、131~133)と、
各出力軸を駆動する複数のモータ(71~75、171~179)と、
複数のバッテリ(21,22,23、121~123、321,322)と、を備え、
前記複数のモータと前記複数のバッテリとは、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各バッテリから給電するように接続されている、電動移動体(10、110、210、310、710、810、910、1010)であって、
各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが前記モータの少なくとも1つへ給電しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する第1制御部(81)と、
前記複数のモータの異常を判定する異常判定部(84)と、
前記異常判定部により異常であると判定された前記モータである異常モータが前記駆動状態である場合に、前記異常モータを前記停止状態に切り替え、且つ前記異常モータが駆動する前記出力軸を駆動する前記モータのうち前記停止状態の前記モータの1つである切替モータを、前記駆動状態に切り替える切替制御を実行する切替部(85)と、
前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが前記モータの少なくとも1つへ給電しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる第2制御を実行する第2制御部(82)と、
を備える電動移動体。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している前記モータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当て、
前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している前記モータの数が互いに等しくなるように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる、請求項1に記載の電動移動体。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて、前記駆動モータの異常を判定する、請求項1又は2に記載の電動移動体。
【請求項4】
各出力軸を駆動する複数のモータを駆動状態に割り当てる第3制御を実行する第3制御部(83)を備え、
前記第3制御部により前記第3制御が実行され、且つ前記所定状態量に基づいて前記駆動モータのいずれかが異常であると判定した場合に、前記第1制御部により前記第1制御を実行させ、
前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記所定状態量に基づいて、異常である前記駆動モータを特定する、請求項3に記載の電動移動体。
【請求項5】
各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチ(71c~74c、71d~74d)を備え、
前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータから、前記停止モータに対応する前記出力軸へトルクが伝達されない状態に前記クラッチにより切り替えて前記停止モータを駆動状態に変更し、前記停止モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて前記停止モータの異常を判定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項6】
前記クラッチは、各モータから各出力軸へトルクを伝達することを許可し、各出力軸から各モータへトルクを伝達することを禁止するワンウェイクラッチ(71d~74d)であり、
前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に前記停止モータを変更し、前記停止モータの前記所定状態量に基づいて前記停止モータの異常を判定する、請求項5に記載の電動移動体。
【請求項7】
各モータと各バッテリとを電気的に切断する電気切断機構(91、92、93)を備え、
前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータと、前記停止モータに対応する前記バッテリとを前記電気切断機構により電気的に切断させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項8】
前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、共通の前記出力軸を駆動する複数のモータのうち、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータを、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで駆動させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項9】
共通の前記出力軸を駆動する複数のモータにおいて、停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータが異常であると判定されておらず、且つ前記停止モータの有する磁石(71a)の温度が所定温度よりも低い場合に、駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで前記停止モータを駆動させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項10】
複数の冷却装置(11、12、311、312)を備え、
前記複数のモータと前記複数の冷却装置とは、前記複数のモータと前記複数のバッテリとの接続に対応して、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各冷却装置から冷媒を供給するように接続されており、
前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当て、
前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる、請求項1~9のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項11】
複数の出力軸(31,32、131~133)と、
各出力軸を駆動する複数のモータ(71~74、171~179)と、
複数の冷却装置(11、12、311、312)と、
前記複数のモータと前記複数の冷却装置とは、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各冷却装置から冷媒を供給するように接続されている、電動移動体(210、310、410)であって、
各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する第1制御部(81)と、
前記複数のモータの異常を判定する異常判定部(84)と、
前記異常判定部により異常であると判定された前記モータである異常モータが前記駆動状態である場合に、前記異常モータを前記停止状態に切り替え、且つ前記異常モータが駆動する前記出力軸を駆動する前記モータのうち前記停止状態の前記モータの1つである切替モータを、前記駆動状態に切り替える切替制御を実行する切替部(85)と、
前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる第2制御を実行する第2制御部(82)と、
を備える電動移動体。
【請求項12】
前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している前記駆動状態の前記モータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当て、
前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している前記駆動状態の前記モータの数が互いに等しくなるように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる、請求項10又は11に記載の電動移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つのプロペラを駆動する複数のモータと、各モータに電力を供給する各電源装置とを備える電動化航空機がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の電動化航空機では、異常が発生したモータ(以下、「異常モータ」という)を電気的、機械的に切り離すことにより、電動化航空機の安全性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6233671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電動化航空機(電動移動体)において、異常モータを電気的、機械的に切り離した場合、異常モータに電力を供給していた電源装置(バッテリ)の給電量のみが減少する。このため、電源装置毎の給電量が偏ることとなる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、複数のモータ及び複数のバッテリを備える電動移動体において、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
複数の出力軸(31,32、131~133)と、
各出力軸を駆動する複数のモータ(71~75、171~179)と、
複数のバッテリ(21,22,23、121~123、321,322)と、を備え、
前記複数のモータと前記複数のバッテリとは、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各バッテリから給電するように接続されている、電動移動体(10、110、210、310、710、810、910、1010)であって、
各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが前記モータの少なくとも1つへ給電しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する第1制御部(81)と、
前記複数のモータの異常を判定する異常判定部(84)と、
前記異常判定部により異常であると判定された前記モータである異常モータが前記駆動状態である場合に、前記異常モータを前記停止状態に切り替え、且つ前記異常モータが駆動する前記出力軸を駆動する前記モータのうち前記停止状態の前記モータの1つである切替モータを、前記駆動状態に切り替える切替制御を実行する切替部(85)と、
前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが前記モータの少なくとも1つへ給電しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる第2制御を実行する第2制御部(82)と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、電動移動体は、複数の出力軸と、各出力軸を駆動する複数のモータと、複数のバッテリと、を備えている。このため、各出力軸を駆動する複数のモータのいずれかに異常が発生した場合であっても、異常が発生したモータが駆動する出力軸を駆動する他のモータにより出力軸を駆動することができる。
【0008】
前記複数のモータと前記複数のバッテリとは、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各バッテリから給電するように接続されている。このため、1つのモータ組へ給電するバッテリに異常が発生した場合であっても、他のモータ組へ他のバッテリから給電することで、複数の出力軸をモータにより駆動することができる。そして、第1制御部は、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが前記モータの少なくとも1つへ給電しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する。このため、各出力軸を少なくとも1つのモータにより駆動しつつ、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0009】
異常判定部は、前記複数のモータの異常を判定する。切替部は、前記異常判定部により異常であると判定された前記モータである異常モータが前記駆動状態である場合に、前記異常モータを前記停止状態に切り替える。このため、異常モータが駆動状態である場合に、異常モータを停止状態に切り替えることができ、電動移動体の移動が不安定になることを抑制することができる。さらに、切替部は、前記異常モータが駆動する前記出力軸を駆動する前記モータのうち前記停止状態の前記モータの1つである切替モータを、前記駆動状態に切り替える切替制御を実行する。このため、異常モータを駆動状態から停止状態に切り替えた場合であっても、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータの数が減少することを抑制することができる。
【0010】
ここで、異常モータを停止状態に切り替え且つ切替モータを駆動状態に切り替えると、異常モータを含むモータ組へ給電するバッテリ及び切替モータを含むモータ組へ給電するバッテリが、給電しているモータの数が変化する。このため、各バッテリが給電しているモータの数の相違が大きくなり、バッテリ毎の給電量が偏るおそれがある。この点、第2制御部は、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが前記モータの少なくとも1つへ給電しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる第2制御を実行する。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0011】
第2の手段では、前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している前記モータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当て、前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している前記モータの数が互いに等しくなるように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる。
【0012】
上記構成によれば、前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している前記モータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる。このため、各出力軸を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0013】
前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している前記モータの数が互いに等しくなるように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0014】
第3の手段では、前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて、前記駆動モータの異常を判定する。例えば、異常判定部は、駆動モータの回転速度(駆動モータの駆動状態に相関する所定状態量)が閾値範囲を超えて上昇又は下降した場合に、駆動モータが異常であると判定することができる。こうした構成によれば、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御が実行されている場合に、駆動モータの異常を判定することができ、判定頻度を高くすることができる。
【0015】
第4の手段では、各出力軸を駆動する複数のモータを駆動状態に割り当てる第3制御を実行する第3制御部(83)を備え、前記第3制御部により前記第3制御が実行され、且つ前記所定状態量に基づいて前記駆動モータのいずれかが異常であると判定した場合に、前記第1制御部により前記第1制御を実行させ、前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記所定状態量に基づいて、異常である前記駆動モータを特定する。
【0016】
上記構成によれば、第3制御部は、各出力軸を駆動する複数のモータを駆動状態に割り当てる第3制御を実行する。このため、第3制御を実行することにより、電動移動体の出力性能を確保することができる。なお、第3制御部が第3制御において、各出力軸を駆動する全てのモータを駆動状態に割り当てる場合は、電動移動体の最大出力性能を確保することができる。
【0017】
ここで、第3制御が実行されている場合に、前記所定状態量に基づいて前記駆動モータのいずれかが異常であると判定されたとしても、複数の駆動モータの所定状態量が同一である場合は、異常である駆動モータを特定することができない。例えば、複数のモータが出力軸に直結されている場合は、複数のモータの回転速度(所定状態量)が同一になる。
【0018】
この点、電動移動体は、第3制御部により前記第3制御が実行され、且つ前記所定状態量に基づいて前記駆動モータのいずれかが異常であると判定した場合に、前記第1制御部により前記第1制御を実行させる。そして、異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記所定状態量に基づいて、異常である前記駆動モータを特定する。すなわち、第1制御により各出力軸を駆動する複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てることにより、駆動モータが異常であるか否かを所定状態量に基づいて判定することができ、異常である駆動モータを特定することができる。
【0019】
第5の手段では、各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチ(71c~74c、71d~74d)を備え、前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータから、前記停止モータに対応する前記出力軸へトルクが伝達されない状態に前記クラッチにより切り替えて前記停止モータを駆動状態に変更し、前記停止モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて前記停止モータの異常を判定する。
【0020】
上記構成によれば、電動移動体は、各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチを備える。このため、停止状態に割り当てられたモータから出力軸へトルクが伝達されない状態にクラッチにより切り替えることで、停止状態のモータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。
【0021】
そして、前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータから、前記停止モータに対応する前記出力軸へトルクが伝達されない状態に前記クラッチにより切り替えて前記停止モータを駆動状態に変更し、前記停止モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて前記停止モータの異常を判定する。このため、停止モータから出力軸へトルクが伝達されない状態にクラッチにより切り替えることで、出力軸の出力を変化させずに任意のタイミングで停止モータの異常を判定することができる。したがって、駆動モータだけでなく停止モータも含めて、モータの異常を迅速に判定することができる。
【0022】
第6の手段では、前記クラッチは、各モータから各出力軸へトルクを伝達することを許可し、各出力軸から各モータへトルクを伝達することを禁止するワンウェイクラッチ(71d~74d)であり、前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に前記停止モータを変更し、前記停止モータの前記所定状態量に基づいて前記停止モータの異常を判定する。
【0023】
上記構成によれば、前記クラッチは、各モータから各出力軸へトルクを伝達することを許可し、各出力軸から各モータへトルクを伝達することを禁止するワンウェイクラッチである。このため、ワンウェイクラッチは、各モータが駆動状態である場合に、各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態に切り替える。また、ワンウェイクラッチは、各モータが停止状態や逆の回転方向の駆動状態である場合に、各出力軸から各モータへトルクが伝達されない状態、すなわち各モータから各出力軸へ負トルクが伝達されない状態に切り替える。したがって、クラッチの制御を行わなくても、停止状態に割り当てられたモータから出力軸へトルクが伝達されない状態にワンウェイクラッチにより切り替えることができ、停止状態のモータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。
【0024】
そして、前記異常判定部は、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に前記停止モータを変更し、前記停止モータの前記所定状態量に基づいて前記停止モータの異常を判定する。このため、駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に停止モータを変更した場合に、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されない状態にワンウェイクラッチにより切り替えることができ、出力軸の出力を変化させずに任意のタイミングで停止モータの異常を判定することができる。
【0025】
第7の手段では、各モータと各バッテリとを電気的に切断する電気切断機構(91、92、93)を備え、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータと、前記停止モータに対応する前記バッテリとを前記電気切断機構により電気的に切断させる。
【0026】
上記構成によれば、電動移動体は、各モータと各バッテリとを電気的に切断する電気切断機構を備えている。このため、停止状態に割り当てられたモータ(停止モータ)とバッテリとを電気切断機構により電気的に切断することで、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。したがって、電動移動体が各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチを備えていない場合であっても、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。また、電動移動体がクラッチを備えている場合は、クラッチと電気切断機構とにより、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを、二重に抑制することができる。
【0027】
そして、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータと、前記停止モータに対応する前記バッテリとを前記電気切断機構により電気的に切断させる。このため、第1制御が実行されている場合に、停止モータとバッテリとを電気切断機構により電気的に切断することで、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。
【0028】
第8の手段では、前記第1制御部により前記第1制御が実行されている場合に、共通の前記出力軸を駆動する複数のモータのうち、前記停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータを、前記駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで駆動させる。
【0029】
上記構成によれば、第1制御が実行されている場合に、停止モータを駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで駆動させることにより、停止モータから出力軸へ制動トルクが伝達されることを抑制することができる。したがって、電動移動体が、各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチを備えていない場合であっても、停止モータから出力軸へ制動トルクが伝達されることを抑制することができる。
【0030】
モータの有する磁石の温度が所定温度(例えば-20℃)よりも低い場合は、モータの出力が基準出力よりも低くなるおそれがある。
【0031】
この点、第9の手段では、共通の前記出力軸を駆動する複数のモータにおいて、停止状態に割り当てられた前記モータである停止モータが異常であると判定されておらず、且つ前記停止モータの有する磁石の温度が所定温度よりも低い場合に、駆動状態に割り当てられた前記モータである駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで前記停止モータを駆動させる。したがって、停止モータを停止状態で維持する場合と比較して停止モータの磁石の温度を上昇させることができ、停止モータを駆動する時に停止モータの出力が基準出力よりも低くなることを抑制することができる。
【0032】
第10の手段では、複数の冷却装置(11、12、311、312)を備え、前記複数のモータと前記複数の冷却装置とは、前記複数のモータと前記複数のバッテリとの接続に対応して、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各冷却装置から冷媒を供給するように接続されており、前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当て、前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる。
【0033】
第11の手段は、複数の出力軸(31,32、131~133)と、
各出力軸を駆動する複数のモータ(71~74、171~179)と、
複数の冷却装置(11、12、311、312)と、
前記複数のモータと前記複数の冷却装置とは、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各冷却装置から冷媒を供給するように接続されている、電動移動体(210、310、410)であって、
各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する第1制御部(81)と、
前記複数のモータの異常を判定する異常判定部(84)と、
前記異常判定部により異常であると判定された前記モータである異常モータが前記駆動状態である場合に、前記異常モータを前記停止状態に切り替え、且つ前記異常モータが駆動する前記出力軸を駆動する前記モータのうち前記停止状態の前記モータの1つである切替モータを、前記駆動状態に切り替える切替制御を実行する切替部(85)と、
前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる第2制御を実行する第2制御部(82)と、
を備える。
【0034】
上記構成によれば、電動移動体は、複数の出力軸と、各出力軸を駆動する複数のモータと、複数の冷却装置と、を備えている。このため、各出力軸を駆動する複数のモータのいずれかに異常が発生した場合であっても、異常が発生したモータが駆動する出力軸を駆動する他のモータにより出力軸を駆動することができる。
【0035】
前記複数のモータと前記複数の冷却装置とは、別個の前記出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される各モータ組へ各冷却装置から冷媒を供給するように接続されている。このため、1つのモータ組へ冷媒を供給する冷却装置に異常が発生した場合であっても、他のモータ組へ他の冷却装置から冷媒を供給して冷媒が供給されているモータを駆動することで、モータ組を冷却しつつ複数の出力軸をモータにより駆動することができる。そして、第1制御部は、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する。このため、各出力軸を少なくとも1つのモータにより駆動しつつ、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0036】
異常判定部は、前記複数のモータの異常を判定する。切替部は、前記異常判定部により異常であると判定された前記モータである異常モータが前記駆動状態である場合に、前記異常モータを前記停止状態に切り替える。このため、異常モータが駆動状態である場合に、異常モータを停止状態に切り替えることができ、電動移動体の移動が不安定になることを抑制することができる。さらに、切替部は、前記異常モータが駆動する前記出力軸を駆動する前記モータのうち前記停止状態の前記モータの1つである切替モータを、前記駆動状態に切り替える切替制御を実行する。このため、異常モータを駆動状態から停止状態に切り替えた場合であっても、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータの数が減少することを抑制することができる。
【0037】
ここで、異常モータを停止状態に切り替え且つ切替モータを駆動状態に切り替えると、異常モータを含むモータ組へ冷媒を供給する冷却装置及び切替モータを含むモータ組へ冷媒を供給する冷却装置が、冷却している駆動状態のモータの数が変化する。このため、各冷却装置が冷却している駆動状態のモータの数の相違が大きくなり、冷却装置毎の冷却負荷が偏るおそれがある。この点、第2制御部は、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を前記モータの少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置が前記駆動状態の前記モータの少なくとも1つを冷却しているように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる第2制御を実行する。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0038】
第12の手段では、前記第1制御部は、前記第1制御において、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している前記駆動状態の前記モータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当て、前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している前記駆動状態の前記モータの数が互いに等しくなるように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる。
【0039】
上記構成によれば、前記第1制御部は、前記第1制御部において、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している駆動状態の前記モータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する前記複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てる。このため、各出力軸を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0040】
前記第2制御部は、前記第2制御において、前記切替部により前記切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動している前記モータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している前記駆動状態の前記モータの数が互いに等しくなるように、前記異常モータを含む前記モータ組を構成するモータ、及び前記切替モータを含む前記モータ組を構成するモータを、前記駆動状態と前記停止状態とに割り当てる。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1実施形態の電動航空機の模式図。
図2】第1実施形態の電動航空機のブロック図。
図3】モータとバッテリとを電気的に切断する機構を示す電気回路図。
図4】第1制御時の異常判定の処理手順を示すフローチャート。
図5】第1制御時の異常判定の態様を示すタイムチャート。
図6】第3制御時の異常判定の処理手順を示すフローチャート。
図7】第3制御時の異常判定の態様を示すタイムチャート。
図8】第2実施形態の電動航空機の模式図。
図9】第3実施形態の電動航空機の模式図。
図10】第3実施形態の電動航空機の変更例を示す模式図。
図11】第3実施形態の電動航空機における他の変更例を示す模式図。
図12】電動航空機の変更例を示す模式図。
図13】電動航空機の他の変更例を示す模式図。
図14】電動航空機の他の変更例を示す模式図。
図15】電動航空機の他の変更例を示す模式図。
図16】電動航空機の他の変更例を示す模式図。
図17】電動航空機の他の変更例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下、複数のモータ及び複数のバッテリを備える電動航空機に具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
図1に示すように、電動航空機10は、バッテリ21,22、推進ユニット51,52、出力軸31,32、プロペラ41,42等を備えている。なお、電動航空機10は、これらの構成からなる組を複数備えているが、ここでは同図に示す1組について説明する。
【0044】
バッテリ21,22は、充放電可能な二次電池であり、定格電圧及び定格容量が互いに等しい。
【0045】
推進ユニット51,52は、バッテリ21,22の双方から電力供給を受けて、推進用の駆動力を出力する。
【0046】
推進ユニット51は、インバータ(INV)ユニット61,62、モータ71,72を備えている。INVユニット61,62は、それぞれバッテリ21,22から供給された直流電力を交流電力に変換して、それぞれモータ71,72へ供給する。INVユニット61には、バッテリ21が接続され、バッテリ22は接続されていない。INVユニット62には、バッテリ22が接続され、バッテリ21は接続されていない。すなわち、推進ユニット51の各INVユニット61,62には、それぞれ別個のバッテリ21,22が接続されている。なお、INVユニットと、INVユニットが電力を供給するモータとを併せて「系統」という。例えば、INVユニット61とモータ71とにより系統が構成されている。
【0047】
モータ71,72は、例えば3相交流モータ(交流モータ)であり、それぞれINVユニット61,62から供給される交流電力により自身の回転軸を回転させる。モータ71,72の回転軸は、出力軸31に直結(連結)されている。このため、モータ71の回転速度とモータ72の回転速度と出力軸31の回転速度とは等しくなる。出力軸31は、プロペラ41に直結(連結)されている。なお、モータ71,72の回転軸は、減速機(変速機)を介して出力軸31に連結されていてもよい。
【0048】
推進ユニット52は、推進ユニット51と同様の構成を備えている。すなわち、推進ユニット52は、推進ユニット51のINVユニット61,62、モータ71,72に対応して、INVユニット63,64、モータ73,74を備えている。INVユニット63,64は、それぞれバッテリ21,22から供給された直流電力を交流電力に変換して、それぞれモータ71,72へ供給する。INVユニット63には、バッテリ21が接続され、バッテリ22は接続されていない。INVユニット64には、バッテリ22が接続され、バッテリ21は接続されていない。すなわち、推進ユニット52の各INVユニット63,64には、それぞれ別個のバッテリ21,22が接続されている。
【0049】
モータ73,74の回転軸は、出力軸32に直結(連結)されている。このため、モータ73の回転速度とモータ74の回転速度と出力軸32の回転速度とは等しくなる。出力軸32は、プロペラ42に直結(連結)されている。
【0050】
モータ71,73は、別個の出力軸31,32をそれぞれ駆動する第1モータ組を構成している。モータ72,74は、別個の出力軸31,32をそれぞれ駆動する第2モータ組を構成している。すなわち、モータ71~74(複数のモータ)とバッテリ21,22(複数のバッテリ)とは、出力軸31,32(別個の出力軸)をそれぞれ駆動するモータで構成される第1モータ組,第2モータ組(各モータ組)へバッテリ21,22(各バッテリ)から給電するように接続されている。
【0051】
図2は、電動航空機10のブロック図である。
【0052】
INVユニット61は、INV制御部61a、INV回路61b、速度監視部61c等を備えている。INV回路61bは、周知の3相フルブリッジ回路である(図3参照)。INV制御部61aは、統括ECU80からの指令に基づいて、INV回路61bの各スイッチング素子を制御する。
【0053】
モータ71は、磁界を発生する磁石71a、自身の回転軸の回転速度を検出する回転センサ71b等を備えている。磁石71aの温度が例えば-20℃(所定温度)よりも低くなると、磁石71aが発生する磁界が基準磁界よりも弱くなる。その結果、モータ71の出力が基準出力よりも低くなる。回転センサ71bは、モータ71の回転軸の回転速度(以下、「モータ71の回転速度」という)を検出し、検出した回転速度を速度監視部61cへ出力する。
【0054】
速度監視部61cは、回転センサ71bから入力されたモータ71の回転速度が、所定の閾値範囲から外れたか否かを監視する。所定の閾値範囲は、モータ71の回転速度を指令する速度指令を含んで上限値から下限値までの範囲である。速度監視部61cは、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲から外れた状態が所定時間Teを超えて継続した場合に、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)を検出し、速度異常を検出したことを統括ECU80へ送信する。なお、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)は、モータ71が異常である場合と、INVユニット61が異常である場合とを含む。また、速度監視部61cは、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲に収まった状態が所定時間Teを超えて継続した場合に、モータ71の回転速度が正常であること(速度正常)を検出し、速度正常を検出したことを統括ECU80へ送信する。
【0055】
INVユニット62は、INVユニット61と同様の構成を備えている。モータ72は、モータ71と同様の構成を備えている。そして、推進ユニット52は、推進ユニット51と同様の構成を備えている。
【0056】
統括ECU80は、第1制御部81、第2制御部82、第3制御部83、異常判定部84、切替部85、単駆動制御部86等を備えている。
【0057】
第1制御部81は、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各バッテリ21,22が給電しているモータの数が互いに等しくなるように、各出力軸31,32を駆動するモータ71~74(複数のモータ)をアクティブとスタンバイとに割り当てる第1制御を実行する。第1制御として、例えば第1パターンと第2パターンとを定期的に切り替える。第1パターンは、モータ71,74をアクティブ(駆動状態)とし、モータ72,73をスタンバイ(停止状態)とするパターンである。第2パターンは、モータ72,73をアクティブとし、モータ71,74をスタンバイとするパターンである。これにより、INVユニット61~64の消耗度合の差、及びモータ71~74の消耗度合の差を小さくすることができる。すなわち、第1制御部81は、第1制御において、各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリ21,22がモータ71~74の少なくとも1つへ給電しているように、各出力軸31,32を駆動するモータ71~74をアクティブとスタンバイとに割り当てる。
【0058】
第1パターンでは、第1制御部81は、アクティブとするモータ71,74に対応するINV制御部61a,64aへ駆動許可指令及び速度指令を送信する。INV制御部61a,64aは、モータ71,74の回転速度を速度指令とすべく、INV回路61b,64bの各スイッチング素子を制御する。第1制御部81は、スタンバイとするモータ72,73に対応するINV制御部62a,63aへ停止指令(速度指令=0といえる)を送信する。INV制御部61a,64aは、モータ72,73を停止状態(回転速度=0)とすべく、INV回路62b,63bの各スイッチング素子を制御する。第2パターンも同様である。
【0059】
統括ECU80は、第1制御を実行している場合に、図3に示すように、スタンバイに割り当てられたモータであるスタンバイモータ(停止モータ)と、スタンバイモータに対応するバッテリとを、第1スイッチ部91(電気切断機構)により電気的に切断させる。第1スイッチ部91は、スイッチ91a,91b、ヒューズ91c等を備えている。スイッチ91a,91bは、バッテリ21とINV回路61bとを切断及び接続する。スタンバイモータと、スタンバイモータへ電力を供給するINVユニットとを併せて「スタンバイ系統」という。
【0060】
なお、統括ECU80は、第1制御を実行している場合に、スタンバイモータと、スタンバイモータに対応するバッテリとを、第2スイッチ部92(電気切断機構)により電気的に切断させてもよい。第2スイッチ部92は、スイッチ92a~92c等を備えている。スイッチ92a~92cは、INV回路61bとモータ71とを切断及び接続する。また、統括ECU80は、第1制御を実行している場合に、モータ71の3相配線を第3スイッチ部93により短絡させてもよい。すなわち、スタンバイモータと、スタンバイモータに対応するバッテリとを、第3スイッチ部93(電気切断機構)により実質的に電気的に切断させてもよい。第3スイッチ部93は、INV回路61bの下アームスイッチにより構成されている。
【0061】
異常判定部84は、第1制御部81により第1制御が実行されている場合に、アクティブに割り当てられたモータであるアクティブモータ(駆動モータ)の回転速度(駆動状態に相関する所定状態量)に基づいて、アクティブモータの異常を判定する。具体的には、異常判定部84は、速度監視部61cからの速度異常の検出結果に基づいて、アクティブモータの異常を判定する。例えば、速度監視部61cからモータ71の速度異常を受信した場合に、モータ71が異常であると判定する。なお、速度監視部61cからの速度異常の検出結果に基づいてモータ71の異常を判定しているため、アクティブモータが異常であると判定した場合は、モータ71が異常である場合と、INVユニット61が異常である場合とを含む。アクティブモータと、アクティブモータへ電力を供給するINVユニットとを併せて「アクティブ系統」という。
【0062】
切替部85は、異常判定部84により異常であると判定されたモータである異常モータがアクティブである場合に、異常モータをスタンバイに切り替え、且つ異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータのうちスタンバイのモータの1つである切替モータを、アクティブに切り替える切替制御を実行する。切替部85は、切替モータに対応するINV制御部へ駆動許可指令及び速度指令を送信し、異常モータに対応するINV制御部へ停止指令を送信する。
【0063】
第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電しているモータの数が互いに等しくなるように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる第2制御を実行する。すなわち、第2制御部82は、第2制御において、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリ21,22がモータ71~74の少なくとも1つへ給電しているように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる。なお、第3制御部83及び単駆動制御部86については後述する。
【0064】
図4は、第1制御時の異常判定の処理手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、統括ECU80により実行される。
【0065】
まず、いずれかのINVユニットの速度監視部から、モータの回転速度が異常であること(速度異常)を検出したことを受信しているか否か判定する(S10)。この判定において、いずれのINVユニットの速度監視部からも、速度異常を検出したことを受信していないと判定した場合(S10:NO)、S10の処理を再度実行する。
【0066】
一方、いずれかのINVユニットの速度監視部から速度異常を検出したことを受信していると判定した場合(S10:YES)、速度異常が検出された系統である異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統(異常系統と同じ推進ユニットに含まれるスタンバイ系統)が正常であるか否か判定する(S11)。例えば、スタンバイ系統が最後にアクティブ系統に切り替えられていた時に、スタンバイ系統の速度監視部が速度異常を検出していなければスタンバイ系統が正常であると判定し、速度異常を検出していればスタンバイ系統が正常でないと判定する。なお、その他の方法により、スタンバイ系統が正常であるか否か判定してもよい。
【0067】
S11の判定において、異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統が正常であると判定した場合(S11:YES)、アクティブ/スタンバイパターンを切り替える(S12)。例えば、いずれかのINVユニットの速度監視部から速度異常を検出したことを受信していると判定した時に、上記第1パターンが実行されていれば、第1パターンを中止して第2パターンを実行する。すなわち、異常系統がアクティブである場合に、異常系統をスタンバイに切り替え、且つ異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統を、アクティブに切り替える。そして、各出力軸を駆動している系統の数が互いに等しく(各出力軸を系統の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリが給電している系統の数が互いに等しくなる(各バッテリが系統の少なくとも1つへ給電している)ように、異常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)、及び正常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)を、アクティブとスタンバイとに割り当てる。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0068】
一方、S11の判定において、異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統が正常でないと判定した場合(S11:NO)、異常系統を含む推進ユニットを停止する(S13)。なお、電動航空機10は、異常系統を含む推進ユニットを停止しても、他の推進ユニットにより機体の姿勢を維持することができる。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0069】
なお、S10の処理が異常判定部84としての処理に相当し、S12の処理が切替部85及び第2制御部82としての処理に相当する。
【0070】
図5は、第1制御時の異常判定の態様を示すタイムチャートである。ここでは、第1パターンが実行されている時に、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)が検出された場合を例にして説明する。なお、同図では、モータ71のみの速度指令、回転速度、速度偏差、及び速度異常を示しているが、モータ72~74についても速度指令、回転速度、速度偏差、及び速度異常が取得されている。
【0071】
時刻t11において、INVユニット61及びモータ71で構成される系統に異常が生じ、モータ71の速度指令に対してモータ71の回転速度が上昇し始める。これに伴って、モータ71の回転速度からモータ71の速度指令を引いた値であるモータ71の速度偏差が上昇し始める。
【0072】
時刻t12において、モータ71の速度偏差が閾値N1を超える、すなわちモータ71の回転速度が所定の閾値範囲から外れる。
【0073】
時刻t13において、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲から外れた状態の継続時間が所定時間Teを超える。このため、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)が検出される。そして、モータ71,74がアクティブであり且つモータ72,73がスタンバイである第1パターンから、モータ72,73がアクティブであり且つモータ71,74がスタンバイである第2パターンへ切り替えられる。
【0074】
時刻t14において、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲に収まった状態の継続時間が所定時間Teを超える。このため、モータ71の回転速度が正常であること(速度正常)が検出される。
【0075】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0076】
・電動航空機10は、出力軸31,32と、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74と、バッテリ21,22と、を備えている。このため、各出力軸31,32を駆動するモータ71~74のいずれかに異常が発生した場合であっても、異常が発生したモータが駆動する出力軸を駆動する他のモータにより出力軸を駆動することができる。
【0077】
・モータ71~74とバッテリ21,22とは、別個の出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される第1モータ組、第2モータ組へ各バッテリ21,22から給電するように接続されている。このため、1つのモータ組へ給電するバッテリに異常が発生した場合であっても、他のモータ組へ他のバッテリから給電することで、出力軸31,32をモータにより駆動することができる。そして、第1制御部81は、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく(各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリ21,22が給電しているモータの数が互いに等しくなる(各バッテリ21,22がモータ71~74の少なくとも1つへ給電している)ように、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74を駆動状態(アクティブ)と停止状態(スタンバイ)とに割り当てる第1制御を実行する。このため、各出力軸31,32を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ(各出力軸31,32を少なくとも1つのモータにより駆動しつつ)、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0078】
・異常判定部84は、モータ71~74の異常を判定する。切替部85は、異常判定部84により異常であると判定されたモータである異常モータが駆動状態である場合に、異常モータを停止状態に切り替える。このため、異常モータが駆動状態である場合に、異常モータを停止状態に切り替えることができ、電動航空機10の移動が不安定になることを抑制することができる。さらに、切替部85は、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータのうち停止状態のモータの1つである切替モータを、駆動状態に切り替える切替制御を実行する。このため、異常モータを駆動状態から停止状態に切り替えた場合であっても、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータの数が減少することを抑制することができる。
【0079】
・異常モータを停止状態に切り替え且つ切替モータを駆動状態に切り替えると、異常モータを含むモータ組へ給電するバッテリ及び切替モータを含むモータ組へ給電するバッテリが、給電しているモータの数が変化する。このため、各バッテリ21,22が給電しているモータの数に差が生じ(各バッテリ21,22が給電しているモータの数の相違が大きくなり)、バッテリ毎の給電量が偏るおそれがある。この点、第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく(各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリ21,22が給電しているモータの数が互いに等しくなる(各バッテリ21,22がモータ71~74の少なくとも1つへ給電している)ように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、駆動状態と停止状態とに割り当てる第2制御を実行する。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0080】
・異常判定部84は、第1制御部81により第1制御が実行されている場合に、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータ(アクティブモータ)の駆動状態に相関する所定状態量(回転速度)に基づいて、駆動モータの異常を判定する。こうした構成によれば、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74を駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御が実行されている場合に、駆動モータの異常を判定することができ、判定頻度を高くすることができる。
【0081】
・電動航空機10は、各モータ71~74と各バッテリ21,22とを電気的に切断する電気切断機構(第1スイッチ部91、第2スイッチ部92、第3スイッチ部93)を備えている。このため、停止状態に割り当てられたモータ(停止モータ)とバッテリとを電気切断機構により電気的に切断することで、停止モータ(スタンバイモータ)から出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。したがって、電動航空機10が各モータ71~74から各出力軸31,32へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチを備えていない場合であっても、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。
【0082】
・第1制御部81により第1制御が実行されている場合に、停止状態に割り当てられたモータである停止モータと、停止モータに対応するバッテリとを電気切断機構により電気的に切断させる。このため、第1制御が実行されている場合に、停止モータとバッテリとを電気切断機構により電気的に切断することで、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。
【0083】
なお、第1実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0084】
図4のS11,S13の処理を省略することもできる。この場合であっても、アクティブ系統及びスタンバイ系統に同時に異常が発生することは希である。このため、スタンバイ系統をアクティブに切り替えて出力軸を駆動することができ、電動航空機10の移動が不安定になることを抑制することができる。さらに、各出力軸31,32を駆動するモータ71~74のいずれかに異常が発生した場合であっても、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータの数が減少することを抑制することができるとともに、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0085】
・第3制御部83(複駆動制御部)は、各出力軸31,32を駆動する複数のモータ71,72、複数のモータ73,74を駆動状態(アクティブ)に割り当てる第3制御(複駆動制御)を実行する。
【0086】
ここで、第3制御が実行されている場合に、回転速度(所定状態量)に基づいて駆動モータのいずれかが異常であると判定されたとしても、複数の駆動モータの回転速度が同一である場合は、異常である駆動モータを特定することができない。上記実施形態では、モータ71,72(73,74)が出力軸31(32)に直結されているため、モータ71,72(73,74)の回転速度が同一になる。
【0087】
そこで、統括ECU80は、第3制御時に図6に示す異常判定を実行する。
【0088】
S20の処理は、図4のS10の処理と同一である。
【0089】
いずれかのINVユニットの速度監視部から速度異常を検出したことを受信していると判定した場合(S20:YES)、第3制御から第1制御へ切り替える(S21)。
【0090】
続いて、異常系統を特定できたか否か判定する(S22)。具体的には、第1制御へ切り替えた後に一方の推進ユニットで速度異常が検出された場合は、第1制御において速度異常が検出された推進ユニットである異常推進ユニットでアクティブとされた系統が異常系統であると特定し、異常系統を特定できたと判定する。第1制御へ切り替えた後に異常推進ユニットで速度異常が検出されなかった場合は、異常系統を特定できなかったと特定する。この判定において、異常系統を特定できなかったと判定した場合(S22:NO)、アクティブ/スタンバイパターンを切り替える(S23)。S23の処理は、図4のS12の処理と同一である。
【0091】
続いて、異常系統を特定できたか否か判定する(S24)。具体的には、アクティブ/スタンバイパターンを切り替えた後に異常推進ユニットで速度異常が検出された場合は、異常推進ユニットでアクティブとされた系統が異常系統であると特定し、異常系統を特定できたと判定する。アクティブ/スタンバイパターンを切り替えた後に異常推進ユニットで速度異常が検出されなかった場合は、異常系統を特定できなかったと特定する。この判定において、異常系統を特定できたと判定した場合(S24:YES)、S25の処理へ進む。また、S22の判定において、異常系統を特定できたと判定した場合(S22:YES)も、S25の処理へ進む。
【0092】
S25において、正常系統があるか否か判定する。具体的には、S22の判定において異常系統を特定できなかったと判定した場合(S22:NO)、異常推進ユニットに正常系統があると判定する。また、S22の判定において異常系統を特定できたと判定した場合(S22:YES)、以下のように正常系統があるか否か判定する。すなわち、第1制御へ切り替えた時のスタンバイ系統が最後にアクティブ系統に切り替えられていた時に、スタンバイ系統の速度監視部が速度異常を検出していなければスタンバイ系統が正常である(正常系統がある)と判定し、速度異常を検出していればスタンバイ系統が正常でない(正常系統がない)と判定する。なお、S22の判定において異常系統を特定できたと判定した場合(S22:YES)、異常推進ユニットに正常系統がないと判定することもできる。
【0093】
S25の判定において、異常推進ユニットに正常系統があると判定した場合(S25:YES)、異常推進ユニットで異常系統を停止し、正常系統を駆動する(S26)。すなわち、異常系統がアクティブである場合に、異常系統をスタンバイに切り替え、且つ異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統を、アクティブに切り替える(切替制御)。そして、各出力軸を駆動している系統の数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電している系統の数が互いに等しくなるように、異常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)、及び正常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)を、アクティブとスタンバイとに割り当てる(第2制御)。すなわち、第2制御において、各出力軸を系統の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリが系統の少なくとも1つへ給電しているように、異常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)、及び正常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)を、アクティブとスタンバイとに割り当てる。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0094】
また、S24の判定において、異常系統を特定できなかったと判定した場合(S24:NO)、及びS25の判定において、異常推進ユニットに正常系統がないと判定した場合(S25:NO)、異常推進ユニットを停止する(S27)。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0095】
なお、S20,S22,S24の処理が異常判定部84としての処理に相当し、S23,S26の処理が切替部85としての処理に相当し、S26の処理が第2制御部82としての処理に相当する。
【0096】
図7は、第3制御時の異常判定の態様を示すタイムチャートである。ここでは、推進ユニット51においてモータ71の回転速度が異常であること(速度異常)が検出された場合を例にして説明する。なお、同図では、モータ71のみの速度指令、回転速度、速度偏差、及び速度異常を示しているが、モータ72~74についても速度指令、回転速度、速度偏差、及び速度異常が取得されている。
【0097】
時刻t21において、INVユニット61及びモータ71で構成される系統に異常が生じ、モータ71の速度指令に対してモータ71の回転速度が上昇し始める。これに伴って、モータ71の速度偏差が上昇し始める。
【0098】
時刻t22において、モータ71の速度偏差が閾値N1を超える、すなわちモータ71の回転速度が所定の閾値範囲から外れる。
【0099】
時刻t23において、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲から外れた状態の継続時間が所定時間Teを超える。このため、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)が検出される。そして、推進ユニット51において、第3制御から第1制御へ切り替えられる。ここでは、第1制御において、モータ71,74がアクティブであり且つモータ72,73がスタンバイである第1パターンが実行されている。
【0100】
時刻t24において、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲から外れた状態の継続時間が所定時間Teを超える。このため、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)が検出され、モータ71を含む系統が異常系統であると特定される。ここでは、正常系統ありと判定されたとする。そして、異常推進ユニットでモータ71を含む異常系統がスタンバイとされ、モータ72を含む正常系統がアクティブとされる。さらに、各出力軸を駆動している系統の数が互いに等しく(各出力軸を系統の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリが給電している系統の数が互いに等しくなる(各バッテリが系統の少なくとも1つへ給電している)ように、モータ73がアクティブとされ、モータ74がスタンバイとされる。
【0101】
時刻t25において、モータ71の回転速度が所定の閾値範囲に収まった状態の継続時間が所定時間Teを超える。このため、モータ71の回転速度が正常であること(速度正常)が検出される。なお、モータ71の速度正常が検出されても、実際にはモータ71を含む系統が異常であるおそれがある。
【0102】
上記構成によれば、電動航空機10は、第3制御部83(複駆動制御部)により第3制御(複駆動制御)が実行され、且つ所定状態量(回転速度)に基づいて駆動モータ(アクティブモータ)のいずれかが異常であると判定した場合に、第1制御部81により第1制御を実行させる。そして、異常判定部84は、第1制御部81により第1制御が実行されている場合に、所定状態量に基づいて、異常である駆動モータを特定する。すなわち、第1制御により出力軸31を駆動するモータ71,72を駆動状態(アクティブ)と停止状態(スタンバイ)とに割り当てることにより、駆動モータが異常であるか否かを所定状態量に基づいて判定することができ、異常である駆動モータを特定することができる。
【0103】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各推進ユニットは、それぞれ3つの系統を備えており、3つのバッテリから給電される。
【0104】
図8に示すように、電動航空機110は、バッテリ121~123、推進ユニット151~153、出力軸131~133、プロペラ141~143等を備えている。なお、電動航空機110は、これらの構成からなる組を複数備えている(例えばプロペラ144~146を図示)が、ここでは同図に示す1組について説明する。
【0105】
バッテリ121~123は、充放電可能な二次電池であり、定格電圧及び定格容量が互いに等しい。
【0106】
推進ユニット151~153は、バッテリ121~123の全てから電力供給を受けて、推進用の駆動力を出力する。
【0107】
推進ユニット151は、インバータ(INV)ユニット161~163、モータ171~173を備えている。INVユニット161~163は、それぞれバッテリ121~123から供給された直流電力を交流電力に変換して、それぞれモータ171~173へ供給する。INVユニット161には、バッテリ121が接続され、バッテリ122,123は接続されていない。INVユニット162には、バッテリ122が接続され、バッテリ121,123は接続されていない。INVユニット163には、バッテリ123が接続され、バッテリ121,122は接続されていない。すなわち、推進ユニット151の各INVユニット161~163には、それぞれ別個のバッテリ121~123が接続されている。
【0108】
モータ171~173は、例えば3相交流モータ(交流モータ)であり、それぞれINVユニット161~163から供給される交流電力により自身の回転軸を回転させる。モータ171~173の回転軸は、出力軸131に直結(連結)されている。このため、モータ171の回転速度とモータ172の回転速度とモータ173の回転速度と出力軸131の回転速度とは等しくなる。出力軸131は、プロペラ141に直結(連結)されている。なお、モータ171~173の回転軸は、減速機(変速機)を介して出力軸131に連結されていてもよい。
【0109】
推進ユニット152は、推進ユニット151と同様の構成を備えている。すなわち、推進ユニット152は、推進ユニット151のINVユニット161~163、モータ171~173に対応して、INVユニット164~166、モータ174~175を備えている。INVユニット164には、バッテリ121が接続され、バッテリ122,123は接続されていない。INVユニット165には、バッテリ122が接続され、バッテリ121,123は接続されていない。INVユニット166には、バッテリ123が接続され、バッテリ121,122は接続されていない。
【0110】
モータ174~175の回転軸は、出力軸132に直結(連結)されている。このため、モータ174の回転速度とモータ175の回転速度とモータ176回転速度と出力軸132の回転速度とは等しくなる。出力軸132は、プロペラ142に直結(連結)されている。推進ユニット153も同様である。
【0111】
モータ171,174,177は、別個の出力軸131,132,133をそれぞれ駆動する第1モータ組を構成している。モータ172,175,178は、別個の出力軸131,132,133をそれぞれ駆動する第2モータ組を構成している。モータ173,176,179は、別個の出力軸131,132,133をそれぞれ駆動する第3モータ組を構成している。すなわち、モータ171~179(複数のモータ)とバッテリ121~123(複数のバッテリ)とは、出力軸131~133(別個の出力軸)をそれぞれ駆動するモータで構成される第1モータ組,第2モータ組,第3モータ組(各モータ組)へバッテリ121~123(各バッテリ)から給電するように接続されている。
【0112】
第1制御部81は、各出力軸131~133を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各バッテリ121~123が給電しているモータの数が互いに等しくなるように、各出力軸131~133を駆動するモータ171~179(複数のモータ)を駆動状態と停止状態とに割り当てる第1制御を実行する。第1制御として、例えば第1パターン,第2パターン,第3パターンを定期的に切り替える。第1パターンは、モータ171,172,174,176,178,179をアクティブ(駆動状態)とし、モータ173,175,177をスタンバイ(停止状態)とするパターンである。第2パターンは、モータ171,173,175,176,177,178をアクティブとし、モータ172,174,179をスタンバイとするパターンである。第3パターンは、モータ172,173,174,175,177,179をアクティブとし、モータ171,176,178をスタンバイとするパターンである。これにより、INVユニット161~169の消耗度合の差、及びモータ171~179の消耗度合の差を小さくすることができる。すなわち、第1制御部81は、第1制御において、各出力軸131~133をモータ171~179の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリ121~123がモータ171~179の少なくとも1つへ給電しているように、各出力軸131~133を駆動するモータ171~179を駆動状態と停止状態とに割り当てる。なお、各バッテリ121~123の放電電流や、電圧の予測値等に基づいて、上記とは異なるパターンを実行することもできる。
【0113】
各パターンにおいて、各INVユニット161~169の各INV制御部(図示略)が実行する処理は、第1実施形態と同様である。また、統括ECU80は、第1制御を実行している場合に、スタンバイに割り当てられたモータであるスタンバイモータ(停止モータ)と、スタンバイモータに対応するバッテリとを、第1実施形態と同様に電気切断機構により電気的に切断させる。
【0114】
異常判定部84は、第1実施形態と同様に、第1制御部81により第1制御が実行されている場合に、アクティブに割り当てられたモータであるアクティブモータ(駆動モータ)の回転速度(駆動状態に相関する所定状態量)に基づいて、アクティブモータの異常を判定する。本実施形態の第1制御では、各推進ユニットにアクティブモータが2つあるため、各推進ユニットの2つのアクティブモータのいずれかに異常が発生した場合に、2つのアクティブモータが共に異常であると判定される(この時点で異常モータは特定されない)。
【0115】
そこで、単駆動制御部86(図2参照)は、第1制御部81(複駆動制御部)により第1制御(複駆動制御)が実行され、且つ複数のモータのいずれかが異常であると判定された場合に、複数のモータの1つのみを駆動状態に割り当てて他のモータを停止状態に割り当てる単駆動制御を実行する。統括ECU80は、単駆動制御を実行している場合に、スタンバイに割り当てられたモータであるスタンバイモータ(停止モータ)と、スタンバイモータに対応するバッテリとを、第1実施形態と同様に電気切断機構により電気的に切断させる。
【0116】
切替部85は、異常判定部84により異常であると判定されたモータである異常モータがアクティブである場合に、異常モータをスタンバイに切り替え、且つ異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータのうちスタンバイのモータの1つである切替モータを、アクティブに切り替える切替制御を実行する。切替部85は、切替モータに対応するINV制御部へ駆動許可指令及び速度指令を送信し、異常モータに対応するINV制御部へ停止指令を送信する。
【0117】
第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電しているモータの数が互いに等しくなるように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる第2制御を実行する。すなわち、第2制御部82は、第2制御において、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸をモータ171~179の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリがモータ171~179の少なくとも1つへ給電しているように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる。
【0118】
そして、統括ECU80は、単駆動制御部86により単駆動制御が実行された後に、図4のフローチャートに準じた処理手順により異常判定を実行する。
【0119】
ここで、異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統が正常であると判定した場合(S11:YES)、アクティブ/スタンバイパターンを切り替える(S12)。具体的には、異常系統をスタンバイとするパターンに切り替える。例えば、モータ171が異常モータであると特定された場合に、モータ171をスタンバイとする第3パターンに切り替える。すなわち、異常系統がアクティブである場合に、異常系統をスタンバイに切り替え、且つ異常系統が駆動する出力軸を駆動するスタンバイ系統を、アクティブに切り替える。そして、各出力軸を駆動している系統の数が互いに等しく(各出力軸を系統の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリが給電している系統の数が互いに等しくなる(各バッテリが系統の少なくとも1つへ給電している)ように、異常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)、及び正常系統のモータを含むモータ組を構成するモータ(系統)を、アクティブとスタンバイとに割り当てる。その後、この一連の処理を終了する(END)。
【0120】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0121】
・電動航空機110は、出力軸131~133と、各出力軸131~133を駆動するモータ171~173、モータ174~176、モータ177~179と、バッテリ121~123と、を備えている。このため、各出力軸131~133を駆動するモータ171~179のいずれかに異常が発生した場合であっても、異常が発生したモータが駆動する出力軸を駆動する他のモータにより出力軸を駆動することができる。
【0122】
・モータ171~179とバッテリ121~123とは、別個の出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される第1モータ組、第2モータ組、第3モータ組へ各バッテリ121~123から給電するように接続されている。このため、1つのモータ組へ給電するバッテリに異常が発生した場合であっても、他のモータ組へ他のバッテリから給電することで、出力軸131~133をモータにより駆動することができる。そして、第1制御部81は、各出力軸131~133を駆動しているモータの数が互いに等しく(各出力軸131~133をモータ171~179の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリ121~123が給電しているモータの数が互いに等しくなる(各バッテリ121~123がモータ171~179の少なくとも1つへ給電している)ように、各出力軸131~133を駆動するモータ171~173、モータ174~176、モータ177~179を駆動状態(アクティブ)と停止状態(スタンバイ)とに割り当てる第1制御を実行する。このため、各出力軸131~133を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ(各出力軸131~133を少なくとも1つのモータにより駆動しつつ)、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0123】
・異常判定部84は、モータ171~179の異常を判定する。切替部85は、異常判定部84により異常であると判定されたモータである異常モータが駆動状態である場合に、異常モータを停止状態に切り替える。このため、異常モータが駆動状態である場合に、異常モータを停止状態に切り替えることができ、電動航空機110の移動が不安定になることを抑制することができる。さらに、切替部85は、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータのうち停止状態のモータの1つである切替モータを、駆動状態に切り替える切替制御を実行する。このため、異常モータを駆動状態から停止状態に切り替えた場合であっても、異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータの数が減少することを抑制することができる。
【0124】
・第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸131~133を駆動しているモータの数が互いに等しく(各出力軸131~133をモータ171~179の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各バッテリ121~123が給電しているモータの数が互いに等しくなる(各バッテリ121~123がモータ171~179の少なくとも1つへ給電している)ように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、駆動状態と停止状態とに割り当てる第2制御を実行する。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0125】
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0126】
・統括ECU80は、第1制御部81(複駆動制御部)により第1制御(複駆動制御)が実行され、且つ複数のモータのいずれかが異常であると判定された場合に、2つのモータを駆動状態に割り当てて1つのモータを停止状態に割り当てる組み合わせを順に変更することにより、異常系統を特定することもできる。例えば、モータ171~173のうち、2つのモータをアクティブとして1つのモータをスタンバイとした場合に、以下のように正常及び異常と判定されたとする。すなわち、モータ171,172が異常、モータ172,173が正常、モータ171,173が異常と判定されたとする。この場合、モータ171(モータ171を含む系統)が異常であると特定することができる。
【0127】
・単駆動制御において、駆動状態に割り当てたモータが正常であり、停止状態に割り当てたモータに異常であるモータが含まれる場合は、異常判定部84は異常であるモータを明確に特定することができない。
【0128】
そこで、単駆動制御部86は、単駆動制御において、異常判定部84により異常である駆動モータを特定することができなかった場合に、複数のモータ171~173のうち前回以前の単駆動制御において駆動状態に割り当てたモータと別の1つのみを駆動状態に割り当て、他のモータを停止状態に割り当てて単駆動制御を再実行する。こうした構成によれば、前回以前の単駆動制御において駆動状態に割り当てたモータが正常であったとしても、前回以前の単駆動制御において駆動状態に割り当てたモータと別の1つのみを駆動状態に割り当てて、単駆動制御、及び異常判定部84による異常であるモータの特定を再実行することができる。したがって、異常であるモータをさらに特定し易くすることができる。
【0129】
そして、電動航空機110は、異常判定部84により異常である駆動モータが特定され、且つ複数のモータに正常であるモータが含まれている場合に、異常であると特定された駆動モータを停止状態に切り替え、且つ正常であるモータの少なくとも1つを駆動状態に切り替えてもよい。こうした構成によれば、異常であると特定された駆動モータを停止状態に切り替えた上で、正常であるモータにより出力軸の駆動を継続することができる。
【0130】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。本実施形態では、2つのモータ組にそれぞれ対応して2つの冷却装置を備えている。
【0131】
図9に示すように、電動航空機210において、推進ユニット51,52は、冷却装置11,12の双方から冷媒供給を受ける。冷却装置11,12は、推進ユニット51,52に水等の冷媒を循環させて熱交換を行うことにより、INVユニット61~64、モータ71~74等を冷却する。同図では、冷媒の供給経路を破線で示している。
【0132】
INVユニット61,62は、それぞれ冷却装置11,12から冷媒が供給される。INVユニット61は、冷却装置11から冷媒が供給され、冷却装置12から冷媒が供給されない。INVユニット62は、冷却装置12から冷媒が供給され、冷却装置11から冷媒が供給されない。すなわち、推進ユニット51の各INVユニット61,62には、それぞれ別個の冷却装置11,12から冷媒が供給される。
【0133】
INVユニット63,64は、それぞれ冷却装置11,12から冷媒が供給される。INVユニット63は、冷却装置11から冷媒が供給され、冷却装置12から冷媒が供給されない。INVユニット64は、冷却装置12から冷媒が供給され、冷却装置11から冷媒が供給されない。すなわち、推進ユニット52の各INVユニット63,64には、それぞれ別個の冷却装置11,12から冷媒が供給される。
【0134】
モータ71~74(複数のモータ)と冷却装置11,12(複数の冷却装置)とは、モータ71~74とバッテリ21,22(複数のバッテリ)との接続に対応して、出力軸31,32(別個の出力軸)をそれぞれ駆動するモータで構成される第1モータ組、第2モータ組(各モータ組)へ冷却装置11,12(各冷却装置)から冷媒を供給するように接続されている。
【0135】
第1制御部81は、第1制御において、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74(複数のモータ)をアクティブとスタンバイとに割り当てる。第1制御として、第1実施形態と同様に、第1パターンと第2パターンとを定期的に切り替える。第1パターンは、モータ71,74をアクティブ(駆動状態)とし、モータ72,73をスタンバイ(停止状態)とするパターンである。第2パターンは、モータ72,73をアクティブとし、モータ71,74をスタンバイとするパターンである。すなわち、第1制御部81は、第1制御において、各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置11,12が駆動状態のモータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74をアクティブとスタンバイとに割り当てる。
【0136】
第2制御部82は、第2制御において、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる。すなわち、第2制御部82は、第2制御において、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置11,12が駆動状態のモータの少なくとも1つを冷却しているように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる。
【0137】
そして、本実施形態においても、統括ECU80は、図4に示す第1制御時の異常判定と、図6に示す第3制御時の異常判定とを実行する。
【0138】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0139】
・モータ71~74と冷却装置11,12とは、別個の出力軸をそれぞれ駆動するモータで構成される第1モータ組、第2モータ組へ各冷却装置11,12から冷媒を供給するように接続されている。このため、1つのモータ組へ冷媒を供給する冷却装置に異常が発生した場合であっても、他のモータ組へ他の冷却装置から冷媒を供給して冷媒が供給されているモータを駆動することで、モータ組を冷却しつつ出力軸31,32をモータにより駆動することができる。そして、第1制御部81は、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく(各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各冷却装置11,12が冷却している駆動状態(アクティブ)のモータの数が互いに等しくなる(各冷却装置11,12が駆動状態のモータの少なくとも1つを冷却している)ように、各出力軸を駆動するモータ71,72、モータ73,74を駆動状態と停止状態(スタンバイ)とに割り当てる第1制御を実行する。このため、各出力軸31,32を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ(各出力軸31,32を少なくとも1つのモータにより駆動しつつ)、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0140】
・異常モータを停止状態に切り替え且つ切替モータを駆動状態に切り替えると、異常モータを含むモータ組へ冷媒を供給する冷却装置及び切替モータを含むモータ組へ冷媒を供給する冷却装置が、冷却している駆動状態のモータの数が変化する。このため、各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数に差が生じ、冷却装置毎の冷却負荷が偏るおそれがある。この点、第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく(各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており)、且つ各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなる(各冷却装置11,12が駆動状態のモータの少なくとも1つを冷却している)ように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、駆動状態と停止状態とに割り当てる第2制御を実行する。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0141】
なお、第3実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0142】
図10に示すように、電動航空機310において、複数のバッテリと複数の系統との接続を変更し、その変更に合わせて複数の冷却装置と複数の系統との接続を変更することもできる。同図では、INVユニット61には、バッテリ321が接続され、バッテリ322は接続されていない。INVユニット62には、バッテリ322が接続され、バッテリ321は接続されていない。すなわち、推進ユニット51の各INVユニット61,62には、それぞれ別個のバッテリ321,322が接続されている。これに対応して、INVユニット61には、冷却装置311が接続され、冷却装置312は接続されていない。INVユニット62には、冷却装置312が接続され、冷却装置311は接続されていない。すなわち、推進ユニット51の各INVユニット61,62には、それぞれ別個の冷却装置311,312が接続されている。
【0143】
INVユニット63には、バッテリ322が接続され、バッテリ321は接続されていない。INVユニット64には、バッテリ321が接続され、バッテリ322は接続されていない。すなわち、推進ユニット52の各INVユニット63,64には、それぞれ別個のバッテリ322,321が接続されている。これに対応して、INVユニット63には、冷却装置312が接続され、冷却装置311は接続されていない。INVユニット64には、冷却装置311が接続され、冷却装置312は接続されていない。すなわち、推進ユニット52の各INVユニット63,64には、それぞれ別個の冷却装置312,311が接続されている。上記構成によっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0144】
図11に示すように、複数のバッテリと複数の系統との接続とは無関係に(独立して)、複数の冷却装置と複数の系統との接続を変更することもできる。同図では、INVユニット61~64には、バッテリ421が接続されている。すなわち、各INVユニット61~64には、同一のバッテリ421が接続されている。
【0145】
INVユニット61には、冷却装置11が接続され、冷却装置12は接続されていない。INVユニット62には、冷却装置12が接続され、冷却装置11は接続されていない。すなわち、推進ユニット51の各INVユニット61,62には、それぞれ別個の冷却装置311,312が接続されている。
【0146】
INVユニット63には、冷却装置11が接続され、冷却装置12は接続されていない。INVユニット64には、冷却装置12が接続され、冷却装置11は接続されていない。すなわち、推進ユニット52の各INVユニット63,64には、それぞれ別個の冷却装置311,312が接続されている。
【0147】
第1制御部81は、各出力軸31,32を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74(複数のモータ)をアクティブとスタンバイとに割り当てる第1制御を実行する。第1制御として、第1実施形態と同様に、第1パターンと第2パターンとを定期的に切り替える。第1パターンは、モータ71,74をアクティブ(駆動状態)とし、モータ72,73をスタンバイ(停止状態)とするパターンである。第2パターンは、モータ72,73をアクティブとし、モータ71,74をスタンバイとするパターンである。すなわち、第1制御部81は、第1制御において、各出力軸31,32をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置11,12が駆動状態のモータの少なくとも1つを冷却しているように、各出力軸31,32を駆動するモータ71,72、モータ73,74をアクティブとスタンバイとに割り当てる。
【0148】
第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる第2制御を実行する。すなわち、第2制御部82は、第2制御において、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸をモータ71~74の少なくとも1つが駆動しており、且つ各冷却装置11,12が駆動状態のモータの少なくとも1つを冷却しているように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、アクティブとスタンバイとに割り当てる。
【0149】
そして、統括ECU80は、「各バッテリ21,22が給電しているモータの数が互いに等しくなるように」に代えて、「各冷却装置11,12が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように」して、図4に示す第1制御時の異常判定と、図6に示す第3制御時の異常判定とを実行する。上記構成によっても、モータに異常が発生した場合であっても、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる、といった効果を奏することはできる。
【0150】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、推進ユニット毎にバッテリが設けられている。
【0151】
図12に示すように、電動航空機510は、バッテリ521,522、推進ユニット551、出力軸531、プロペラ541等を備えている。なお、電動航空機510は、これらの構成からなる組を複数備えているが、ここでは同図に示す1組について説明する。
【0152】
バッテリ521,522は、充放電可能な二次電池であり、定格電圧及び定格容量が互いに等しい。
【0153】
推進ユニット551は、バッテリ521,522の双方から電力供給を受けて、推進用の駆動力を出力する。
【0154】
推進ユニット551は、推進ユニット51と同様の構成を備えている。INVユニット561には、バッテリ521が接続され、バッテリ522は接続されていない。INVユニット562には、バッテリ522が接続され、バッテリ521は接続されていない。すなわち、推進ユニット551の各INVユニット561,562には、それぞれ別個のバッテリ521,522が接続されている。
【0155】
第3制御部83(複駆動制御部)は、出力軸531を駆動する複数(少なくとも2つの)のモータ571,572を駆動状態(アクティブ)に割り当てる第3制御(複駆動制御)を実行する。
【0156】
上述したように、第3制御が実行されている場合に、回転速度(所定状態量)に基づいて駆動モータのいずれかが異常であると判定されたとしても、複数の駆動モータの回転速度が同一である場合は、異常である駆動モータを特定することができない。
【0157】
そこで、単駆動制御部86は、第3制御部83(複駆動制御部)により第3制御(複駆動制御)が実行され、且つ複数のモータのいずれかが異常であると判定された場合に、複数のモータの1つのみを駆動状態に割り当てて他のモータを停止状態に割り当てる単駆動制御を実行する。
【0158】
切替部85は、異常判定部84により異常であると判定されたモータである異常モータがアクティブである場合に、異常モータをスタンバイに切り替え、且つ異常モータが駆動する出力軸を駆動するモータのうちスタンバイのモータの1つである切替モータを、アクティブに切り替える切替制御を実行する。切替部85は、切替モータに対応するINV制御部へ駆動許可指令及び速度指令を送信し、異常モータに対応するINV制御部へ停止指令を送信する。
【0159】
異常判定部84は、単駆動制御部86により単駆動制御が実行されている場合に、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて、異常である駆動モータを特定する。
【0160】
本実施形態は、以下の利点を有する。ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0161】
・複駆動制御部(第3制御部83)は、複数のモータ571,572の少なくとも2つを駆動状態に割り当てる複駆動制御を実行する。このため、複駆動制御を実行することにより、モータの1つのみを駆動状態に割り当てる場合よりも電動移動体の出力性能を向上させることができる。特に、複駆動制御部は、複駆動制御において、出力軸531を駆動する全てのモータ571,572を駆動状態に割り当てる。このため、複駆動制御を実行することにより、電動航空機510の最大出力性能を確保することができる。
【0162】
・単駆動制御部86は、複駆動制御部により複駆動制御が実行され、且つ複数のモータ571,572のいずれかが異常であると判定された場合に、複数のモータ571,572の1つのみを駆動状態に割り当てて他のモータを停止状態に割り当てる単駆動制御を実行する。そして、異常判定部84は、単駆動制御部86により単駆動制御が実行されている場合に、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータの駆動状態に相関する所定状態量に基づいて、異常であるモータを特定する。このため、複数のモータ571,572の駆動状態が所定状態量に影響する状態から、1つのモータの駆動状態のみが所定状態量に影響する状態に変更することができる。したがって、出力軸531を駆動する複数のモータ571,572を備える電動航空機510において、複数のモータ571,572が駆動状態であっても異常であるモータを特定し易くすることができる。
【0163】
なお、第4実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第4実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0164】
図13に示すように、電動航空機810は、図12のバッテリ521,522に代えて、バッテリ621を備えていてもよい。推進ユニット651は、バッテリ621から電力供給を受けて、推進用の駆動力を出力する。推進ユニット651は、推進ユニット51と同様の構成を備えている。INVユニット661,662には、バッテリ621が接続されている。こうした構成によっても、第4実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0165】
(他の実施形態)
なお、第1~第4実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1~第4実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0166】
・単駆動制御部86は、単駆動制御において、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電しているモータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てている。こうした構成によれば、各出力軸を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0167】
そして、第2制御部82(再割当制御部)は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各バッテリが給電しているモータの数が互いに等しくなるように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、駆動状態と停止状態とに割り当てる第2制御(再割当制御)を実行する。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0168】
また、単駆動制御部86は、単駆動制御において、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように、各出力軸を駆動する複数のモータを駆動状態と停止状態とに割り当てている。こうした構成によれば、各出力軸を駆動しているモータの数を互いに等しくしつつ、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0169】
そして、第2制御部82(再割当制御部)は、第2制御(再割当制御)において、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸を駆動しているモータの数が互いに等しく、且つ各冷却装置が冷却している駆動状態のモータの数が互いに等しくなるように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、駆動状態と停止状態とに割り当てる。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、冷却装置毎の冷却負荷が偏ることを抑制することができる。
【0170】
図14に示すように、電動航空機710は、各モータ71,72、各モータ73,74から各出力軸31,32へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替える各クラッチ71c,72c、各クラッチ73c,74cを備えていてもよい。クラッチ71c~74cは、各モータ71~74と各出力軸31,32とを、接続及び切断する周知のクラッチである。
【0171】
そして、異常判定部84は、第1制御部81(単駆動制御部86)により第1制御(単駆動制御)が実行されている場合に、停止状態に割り当てられたモータである停止モータから、停止モータに対応する出力軸へトルクが伝達されない状態にクラッチにより切り替えて停止モータを駆動状態に変更し、停止モータの駆動状態に相関する所定状態量(例えば回転速度)に基づいて停止モータの異常を判定する。
【0172】
上記構成によれば、停止状態に割り当てられたモータから出力軸へトルクが伝達されない状態にクラッチ71c~74cにより切り替えることで、停止状態のモータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。そして、停止モータから出力軸へトルクが伝達されない状態にクラッチ71c~74cにより切り替えることで、出力軸の出力を変化させずに任意のタイミングで停止モータの異常を判定することができる。したがって、駆動モータだけでなく停止モータも含めて、モータの異常を迅速に判定することができる。
【0173】
なお、停止モータを駆動状態に変更する際に、複数の停止モータを同時に駆動状態に変更してもよい。また、停止モータを駆動状態に変更する際に、停止モータを正転させてもよいし、逆転させてもよい。
【0174】
図15に示すように、電動航空機810は、クラッチとして、各モータ71,72、各モータ73,74から各出力軸31,32へトルクを伝達することを許可し、各出力軸31,32から各モータ71,72、各モータ73,74へトルクを伝達することを禁止する各ワンウェイクラッチ71d,72d、各ワンウェイクラッチ73d,74dを備えていてもよい。
【0175】
そして、異常判定部84は、第1制御部81(単駆動制御部86)により第1制御(単駆動制御)が実行されている場合に、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に停止モータを変更し、停止モータの所定状態量(例えば回転速度)に基づいて停止モータの異常を判定する。
【0176】
上記構成によれば、各ワンウェイクラッチ71d,72d、各ワンウェイクラッチ73d,74dは、各モータ71,72、各モータ73,74が駆動状態である場合に、各モータ71,72、各モータ73,74から各出力軸31,32へトルクが伝達される状態に切り替える。また、各ワンウェイクラッチ71d,72d、各ワンウェイクラッチ73d,74dは、各モータ71,72、各モータ73,74が停止状態や逆の回転方向の駆動状態である場合に、各出力軸31,32から各モータ71,72、各モータ73,74へトルクが伝達されない状態、すなわち各モータ71,72、各モータ73,74から各出力軸31,32へ負トルクが伝達されない状態に切り替える。したがって、クラッチの制御を行わなくても、停止状態に割り当てられたモータから出力軸へトルクが伝達されない状態にワンウェイクラッチ71d~74dにより切り替えることができ、停止状態のモータから出力軸へ制動トルク等が伝達されることを抑制することができる。
【0177】
そして、異常判定部84は、第1制御部81(単駆動制御部86)により第1制御(単駆動制御)が実行されている場合に、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に停止モータを変更し、停止モータの所定状態量に基づいて停止モータの異常を判定する。このため、駆動モータの回転方向と逆の回転方向の駆動状態に停止モータを変更した場合に、停止モータから出力軸へ制動トルク等が伝達されない状態にワンウェイクラッチにより切り替えることができ、出力軸の出力を変化させずに任意のタイミングで停止モータの異常を判定することができる。なお、停止モータを逆回転方向の駆動状態に変更する際に、複数の停止モータを同時に逆回転方向の駆動状態に変更してもよい。
【0178】
また、図3に示す電気切断機構(91~93)と、図14のクラッチ71c~74c又は図15のワンウェイクラッチ71d~74dとを、電動航空機が備えていてもよい。こうした構成によれば、クラッチ71c~74c又はワンウェイクラッチ71d~74dと、電気切断機構とにより、停止モータから出力軸31,32へ制動トルクが伝達されることを二重に抑制することができる。
【0179】
なお、停止モータを逆回転方向の駆動状態に変更して停止モータの異常を判定する時期として、電動航空機が惰性飛行をしている時や、電動航空機が離陸前でプロペラが停止している時を採用することもできる。すなわち、速度指令=0であっても、停止モータの異常を判定することができる。
【0180】
図16に示すように、電動航空機910は、INVユニット61~64に電力供給するバッテリ923を備えていてもよい。すなわち、1つの系統へ複数のバッテリから電力供給することもできる。こうした構成によれば、バッテリ21,22のいずれかに異常が発生したとしても、異常が発生したバッテリから電力供給されていたINVユニットにバッテリ923から電力供給することができる。したがって、バッテリ21,22のいずれかに異常が発生した場合であっても、電動航空機910の最大出力性能を確保することができる。
【0181】
・第1制御部81(単駆動制御部86)により第1制御(単駆動制御)が実行されている場合に、共通の出力軸を駆動する複数のモータのうち、停止状態に割り当てられたモータである停止モータを、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで駆動させてもよい。こうした構成によれば、第1制御(単駆動制御)が実行されている場合に、停止モータを駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルク(0以上)で駆動させることにより、停止モータから出力軸へ制動トルクが伝達されることを抑制することができる。したがって、電動移動体が、各モータから各出力軸へトルクが伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えるクラッチを備えていない場合であっても、停止モータから出力軸へ制動トルクが伝達されることを抑制することができる。
【0182】
・各モータ(例えばモータ71)の有する磁石(例えば磁石71a)の温度が所定温度(例えば-20℃)よりも低い場合は、各モータの出力が基準出力よりも低くなるおそれがある。そこで、共通の出力軸を駆動する複数のモータにおいて、停止状態に割り当てられたモータである停止モータが異常であると判定されておらず、且つ停止モータの有する磁石の温度が所定温度よりも低い場合に、駆動状態に割り当てられたモータである駆動モータの出力トルクよりも小さい一定トルクで停止モータを駆動させてもよい。こうした構成によれば、停止モータを停止状態で維持する場合と比較して停止モータの磁石の温度を上昇させることができ、停止モータを駆動する時に停止モータの出力が基準出力よりも低くなることを抑制することができる。
【0183】
・INVユニット及びモータを含む系統の数は、1つの出力軸に対して4以上であってもよい。また、出力軸の数も任意である。
【0184】
・駆動モータの駆動状態に相関する所定状態量として、駆動モータが駆動する出力軸の回転速度、駆動モータが出力するモータトルク、駆動モータが駆動する出力軸が出力する出力軸トルク等を採用することもできる。この場合は、速度監視部61cに代えて所定状態量監視部は、所定状態量が所定の閾値範囲から外れたか否かを監視すればよい。また、複数のモータが出力軸に直結されている場合は、駆動モータの回転速度と停止モータの回転速度が同一であるため、停止モータの回転速度を所定状態量として採用することができる。
【0185】
図17に示すように、電動航空機1010は、図1の電動航空機10に加えてINVユニット65及びモータ75を備え、バッテリ21に代えてバッテリ23を備えていてもよい。すなわち、出力軸31を駆動するモータの数と、出力軸32を駆動するモータの数とが異なっていてもよい。INVユニット65には、バッテリ23が接続され、バッテリ22は接続されていない。バッテリ23は、充放電可能な二次電池である。バッテリ23の定格電圧とバッテリ22の定格電圧とは等しく、バッテリ23の定格容量はバッテリ22の定格容量よりも大きい。
【0186】
第1制御部81は、各出力軸31,32をモータ71~75の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリ23,22がモータ71~75の少なくとも1つへ給電しているように、各出力軸31,32を駆動するモータ71~75をアクティブとスタンバイとに割り当てる第1制御を実行する。第1制御として、例えば第1パターンと第2パターンとを定期的に切り替える。第1パターンは、モータ71,75,74をアクティブ(駆動状態)とし、モータ72,73をスタンバイ(停止状態)とするパターンである。第2パターンは、モータ72,73をアクティブとし、モータ71,75,74をスタンバイとするパターンである。
【0187】
そして、第2制御部82は、切替部85により切替制御が実行された場合に、各出力軸31,32をモータ71~75の少なくとも1つが駆動しており、且つ各バッテリ21,22がモータ71~75の少なくとも1つへ給電しているように、異常モータを含むモータ組を構成するモータ、及び切替モータを含むモータ組を構成するモータを、駆動状態と停止状態とに割り当てる第2制御を実行する。例えば、モータ71の回転速度が異常であること(速度異常)が検出された場合に、モータ71,75,74がアクティブであり且つモータ72,73がスタンバイである第1パターンから、モータ72,73がアクティブであり且つモータ71,75,74がスタンバイである第2パターンへ切り替える。したがって、モータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の給電量が偏ることを抑制することができる。
【0188】
・第1制御部81~第3制御部83、異常判定部84、切替部85、及び単駆動制御部86を、統括ECU80に代えてINV制御部(INVユニット)が備えていてもよい。
【0189】
・各モータとして、交流モータに限らず、直流モータを採用することもできる。この場合、INVユニットに代えて、直流モータに流れる電流を制御する電流制御ユニット等を採用することができる。
【0190】
・各モータを、駆動及び発電が可能なモータジェネレータ(電動発電機)に変更することもできる。そして、各モータの駆動を各モータの発電に置き換えて、第1~第4実施形態の各制御を実行することもできる。こうした構成によれば、モータジェネレータに異常が発生した場合であっても、バッテリ毎の受電量(充電量)が偏ることを抑制することができる。
【0191】
・電動航空機に限らず、電動車両(電動移動体)や、電動船舶(電動移動体)に上記の各実施形態を適用することもできる。この場合、電動車両は上記プロペラに代えて駆動輪を備え、電動船舶は上記プロペラに代えてスクリューを備えていればよい。
【符号の説明】
【0192】
10…電動航空機、21…バッテリ、22…バッテリ、23…バッテリ、31…出力軸、32…出力軸、71…モータ、72…モータ、73…モータ、74…モータ、75…モータ、81…第1制御部、82…第2制御部、83…第3制御部、84…異常判定部、85…切替部、86…単駆動制御部、110…電動航空機、121…バッテリ、122…バッテリ、123…バッテリ、131…出力軸、132…出力軸、133…出力軸、171…モータ、172…モータ、173…モータ、174…モータ、175…モータ、176…モータ、177…モータ、178…モータ、179…モータ、210…電動航空機、310…電動航空機、321…バッテリ、322…バッテリ、410…電動航空機、510…電動航空機、531…出力軸、571…モータ、572…モータ、610…電動航空機、631…出力軸、671…モータ、672…モータ、710…電動航空機、810…電動航空機、910…電動航空機、1010…電動航空機。
図1
図2
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図17