(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】距離演算装置、距離演算方法、および距離演算プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 3/808 20060101AFI20240312BHJP
G01S 3/86 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01S3/808
G01S3/86
(21)【出願番号】P 2020164271
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 啓之
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-177087(JP,A)
【文献】特開平04-043981(JP,A)
【文献】特開2014-038028(JP,A)
【文献】特開2000-147084(JP,A)
【文献】特開2021-135132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/143815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受波器アレイが受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、目標の音源との間の距離を演算する距離演算装置であって、
前記音波に基づく信号に指向性を付与する整相処理部と、
前記整相処理部によって前記指向性を付与された前記信号から、前記音源が存在する方位として推定される水平方位からの前記音波に基づく前記信号を抽出する水平抽出部と、
前記水平抽出部が抽出した、前記水平方位からの音波に基づく信号を用いて、前記音源から発せられて前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する俯仰演算部と、
前記俯仰演算部が演算した前記信号の総和を演算する総和演算部と、
前記総和に基づく前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成部と、
を備え、
前記俯仰演算部は、
前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく前記信号を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出するノーマルモード分解部と、
前記複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の前記成分を示す情報を抽出する成分抽出部と、
前記成分抽出部によって抽出された前記情報が示す前記2以上の成分の各々に対応する前記音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角を算出する仰俯角算出部と、
前記水平抽出部が抽出した前記信号、および、前記仰俯角を用いて、前記音源から発せられて、前記仰俯角の俯仰方位から前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する補間部と、
を有する、距離演算装置。
【請求項2】
前記成分抽出部は、
前記複数の成分の各々に対応する音波の振幅を用いて、前記複数の成分の各々に対応する音波の、相互の前記干渉の強さを演算する、請求項1に記載の距離演算装置。
【請求項3】
前記成分抽出部は、
前記複数の成分の各々に対応する音波のうち、相互の前記干渉が強い順に、予め定められた2以上の個数の前記音波に対応する前記2以上の成分を示す情報を抽出する、請求項1または請求項2に記載の距離演算装置。
【請求項4】
前記成分抽出部は、
前記複数の成分の各々に対応する音波のうち、相互の前記干渉の強さが、予め定められた閾値以上の、2以上の前記音波に対応する前記2以上の成分を示す情報を抽出する、請求項1または請求項2に記載の距離演算装置。
【請求項5】
前記成分抽出部は、
前記干渉の強さに応じて、前記複数の成分の各々を示す情報を並び替える、請求項3または請求項4に記載の距離演算装置。
【請求項6】
前記仰俯角算出部は、
前記成分抽出部が抽出した前記情報が示す前記成分に対応する前記音波の、水平波数を用いて、前記仰俯角を算出する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の距離演算装置。
【請求項7】
前記補間部は、前記水平抽出部が抽出した前記信号、および、前記仰俯角を用いて、補間処理を行うことによって、前記仰俯角の前記俯仰方位からの到来した、前記音源からの前記音波に基づく前記信号を演算する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の距離演算装置。
【請求項8】
前記ノーマルモード分解部は、
前記受波器アレイに到達するまでに前記音波が伝搬してきた環境の状態を示す環境情報を用いて、前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく信号を、前記複数の成分の和として算出する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の距離演算装置。
【請求項9】
受波器アレイが受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、目標の音源との間の距離を演算する距離演算装置が実行する距離演算方法であって、
前記音波に基づく信号に指向性を付与する整相ステップと、
前記整相ステップにおいて前記指向性を付与された前記信号から、前記音源が存在する方位として推定される水平方位からの前記音波に基づく前記信号を抽出する水平抽出ステップと、
前記水平抽出ステップにおいて抽出された、前記水平方位からの音波に基づく信号を用いて、前記音源から発せられて前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する俯仰演算ステップと、
前記俯仰演算ステップにおいて演算された前記信号の総和を演算する総和演算ステップと、
前記総和に基づく前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成ステップと、
を含み、
前記俯仰演算ステップは、
前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく前記信号を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出するノーマルモード分解ステップと、
前記複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の前記成分を示す情報を抽出する成分抽出ステップと、
前記成分抽出ステップにおいて抽出された前記情報が示す前記2以上の成分の各々に対応する前記音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角を算出する仰俯角算出ステップと、
前記水平抽出ステップにおいて抽出された前記信号、および、前記仰俯角を用いて、前記音源から発せられて、前記仰俯角の俯仰方位から前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する補間ステップと、
を含む、距離演算方法。
【請求項10】
受波器アレイが受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、目標の音源との間の距離を演算する機能を、コンピュータに実現させるための距離演算プログラムであって、
前記音波に基づく信号に指向性を付与する整相機能と、
前記整相機能によって前記指向性を付与された前記信号から、前記音源が存在する方位として推定される水平方位からの前記音波に基づく前記信号を抽出する水平抽出機能と、
前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく前記信号を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出するノーマルモード分解機能と、
前記複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の前記成分を示す情報を抽出する成分抽出機能と、
前記成分抽出機能によって抽出された前記情報が示す前記2以上の成分の各々に対応する前記音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角を算出する仰俯角算出機能と、
前記水平抽出機能によって抽出された前記信号、および、前記仰俯角を用いて、前記音源から発せられて、前記仰俯角の俯仰方位から前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する補間機能と、
前記補間機能によって演算された前記信号の総和を演算する総和演算機能と、
前記総和に基づく前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成機能と、
をコンピュータに実現させるための距離演算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した音波に基づく信号から、音源との間の距離を演算する距離演算装置、距離演算方法、および距離演算プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中を伝搬する音波を受信することによって、受波器と音源との間の距離を測定する技術がある(例えば、非特許文献1参照)。水中において音源から発せられた音波は、直接波、海底反射波、および、海面反射波等として、複数の経路を通って伝搬し、受波器により受信される。
【0003】
複数の伝搬経路の各々を通って受波器に受信される音波同士には、位相差がある。このため、複数の伝搬経路の各々からの音波は、相互に干渉し合う。受波器は、複数の音波が互いを強めたり弱めたりすることによって生成された音波を受信する。音源と受波器との間の相対距離が時間的に変化する場合には、干渉状態は周期的に発生する。すなわち、受波器が受信する音波の強弱は周期的なものとなる。そして、音波が広帯域信号である場合には、当該音波の強さを時間-周波数平面におけるスペクトログラムとして表示すると、複数の伝搬経路を通ってきた複数の音波の相互干渉による干渉縞が現れる。この干渉縞によって示される情報が、受波器と音源との間の距離の演算において用いられている。
【0004】
上述の測距技術においては、単一の受波器が用いられてもよいが、受波器アレイが用いられて整相処理が行われてもよい。整相処理により、受波器を基準にした方位であって、音源が存在する方位以外の方位からのノイズを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ケビン・エル・コックレル(Kevin L. Cockrell)、ヘンリック・シュミット(Henrik Schmidt)共著、「ウェーブガイド不変量を用いたロバスト(頑強)なパッシブ測距(Robust passive range estimation using the waveguide invariant)」、米国音響学会誌(Journal of the Acoustical Society of America)、米国、米国音響学会(Acoustical Society of America)、2010年5月、第127巻、第5号、p.2780―2789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したスペクトログラムにおける干渉縞は、直接波、海面反射波、および海底反射波等として複数の伝搬経路を経由してきた、音源からの音波の相互干渉に起因するものである。このような干渉縞を用いての距離の演算において、整相処理が行われると、以下のような問題が生じ得る。目標の音源からの音波であっても、メインローブ以外の方位からの音波に基づく信号は、整相処理によって弱められる。当該信号の振幅は、音波の強さと対応付けられるが、当該信号が弱まることにより、当該信号を用いて生成されるスペクトログラムにおける、音波の干渉状態を示す干渉縞も、微弱な干渉状態を示すものとなる可能性がある。従って、ノイズの低減のための整相処理を行っても、距離の演算に用いられるスペクトログラムの信号対雑音比が低下する虞がある。
【0007】
当該問題の解決のために、整相処理によって得られた信号を加算してスペクトログラムを生成することによって、音波の干渉状態を再現することが考えられる。なお、この場合において加算の対象となる信号は、目標からの音波に基づく信号である。しかし、音源からの音波がどの方位から受波器に到来するかは未知の場合が多く、目標からの音波に基づく信号のみを抽出して、スペクトログラムの生成に用いるのは困難である。このため、目標以外の音源からのノイズによる影響を低減しながら、信号対雑音比の高いスペクトログラムを生成することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、目標の音源との距離の演算に用いられるスペクトログラムにおける、ノイズの低減と、信号対雑音比の向上とを図り、距離の演算の精度を向上させる、距離演算装置、距離演算方法、および距離演算プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る距離演算装置は、受波器アレイが受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、目標の音源との間の距離を演算する距離演算装置であって、前記音波に基づく信号に指向性を付与する整相処理部と、前記整相処理部によって前記指向性を付与された前記信号から、前記音源が存在する方位として推定される水平方位からの前記音波に基づく前記信号を抽出する水平抽出部と、前記水平抽出部が抽出した、前記水平方位からの音波に基づく信号を用いて、前記音源から発せられて前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する俯仰演算部と、前記俯仰演算部が演算した前記信号の総和を演算する総和演算部と、前記総和に基づく前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成部と、を備え、前記俯仰演算部は、前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく前記信号を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出するノーマルモード分解部と、前記複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の前記成分を示す情報を抽出する成分抽出部と、前記成分抽出部によって抽出された前記情報が示す前記2以上の成分の各々に対応する前記音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角を算出する仰俯角算出部と、前記水平抽出部が抽出した前記信号、および、前記仰俯角を用いて、前記音源から発せられて、前記仰俯角の俯仰方位から前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する補間部と、を有する。
【0010】
本発明に係る距離演算方法は、受波器アレイが受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、目標の音源との間の距離を演算する距離演算装置が実行する距離演算方法であって、前記音波に基づく信号に指向性を付与する整相ステップと、前記整相ステップにおいて前記指向性を付与された前記信号から、前記音源が存在する方位として推定される水平方位からの前記音波に基づく前記信号を抽出する水平抽出ステップと、前記水平抽出ステップにおいて抽出された、前記水平方位からの音波に基づく信号を用いて、前記音源から発せられて前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する俯仰演算ステップと、前記俯仰演算ステップにおいて演算された前記信号の総和を演算する総和演算ステップと、前記総和に基づく前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成ステップと、を含み、前記俯仰演算ステップは、前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく前記信号を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出するノーマルモード分解ステップと、前記複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の前記成分を示す情報を抽出する成分抽出ステップと、前記成分抽出ステップにおいて抽出された前記情報が示す前記2以上の成分の各々に対応する前記音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角を算出する仰俯角算出ステップと、前記水平抽出ステップにおいて抽出された前記信号、および、前記仰俯角を用いて、前記音源から発せられて、前記仰俯角の俯仰方位から前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する補間ステップと、を含む。
【0011】
本発明に係る距離演算プログラムは、受波器アレイが受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、目標の音源との間の距離を演算する機能を、コンピュータに実現させるための距離演算プログラムであって、前記音波に基づく信号に指向性を付与する整相機能と、前記整相機能によって前記指向性を付与された前記信号から、前記音源が存在する方位として推定される水平方位からの前記音波に基づく前記信号を抽出する水平抽出機能と、前記受波器アレイが受信した前記音波に基づく前記信号を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出するノーマルモード分解機能と、前記複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の前記成分を示す情報を抽出する成分抽出機能と、前記成分抽出機能によって抽出された前記情報が示す前記2以上の成分の各々に対応する前記音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角を算出する仰俯角算出機能と、前記水平抽出機能によって抽出された前記信号、および、前記仰俯角を用いて、前記音源から発せられて、前記仰俯角の俯仰方位から前記受波器アレイに到来した前記音波に基づく前記信号を演算する補間機能と、前記補間機能によって演算された前記信号の総和を演算する総和演算機能と、前記総和に基づく前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成機能と、をコンピュータに実現させるためのものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る距離演算装置、距離演算方法、および距離演算プログラムによれば、水平抽出部により、水平方向においてノイズが低減された、目標の音源からの音波に基づく信号が得られる。俯仰演算部における成分抽出部は、ノーマルモード分解部によって得られた複数の成分の各々に対応する音波の、相互の干渉の強さに基づいて、2以上の成分を示す情報を抽出する。これにより、成分抽出部は、目標の音源からの音波に対応する成分を示す情報を抽出できる。そして、仰俯角算出部は、当該情報を用いることにより、当該音源からの音波が到来する仰俯角を算出し、俯仰演算部は、水平抽出部が抽出した信号と、当該仰俯角とを用いることにより、ノイズを低減した、当該音源からの音波に基づく信号を演算できる。また、総和演算部が、俯仰演算部による当該信号の総和を演算することにより、当該信号が強められる。従って、目標の音源との距離の演算に用いられるスペクトログラムにおける、ノイズの低減と、信号対雑音比の向上とが図られる。よって、目標との間の距離の演算の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る距離演算装置に含まれる構成要素と、当該距離演算装置による処理の流れとを例示する図である。
【
図2】音源から発信されて、受波器アレイによって受信される音波の伝搬経路を例示する模式図である。
【
図3】方位および整相方位番号について説明するための図である。
【
図4】スペクトログラム生成部が生成したスペクトログラムの一例を示す図である
【
図5】鉛直方向に沿う開口を有する受波器アレイを例示する図である。
【
図6】受波器アレイが受信する音波に対する、俯仰方向における指向性の付与によって生じる、当該音波の強弱について説明するための模式図である。
【
図7】実施の形態における俯仰演算部に含まれる構成要素と、当該俯仰演算部による処理の流れとを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態.
以下、実施の形態に係る距離演算装置1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態に係る距離演算装置1に含まれる構成要素と、当該距離演算装置1による処理の流れとを例示する図である。距離演算装置1は、整相処理部10、水平抽出部11、俯仰演算部12、総和演算部13、フーリエ変換部14、スペクトログラム生成部15、傾き算出部16、時間距離変換部17、および距離算出部18を備える。なお、
図1において破線によって示されるブロックにおいて示される情報は、距離演算装置1に含まれる上記各部において生成された情報、または、上記各部において用いられる情報である。ここで、当該ブロックにおいて示される情報のうち、各部の下側に示される情報は、当該各部において生成された情報である。そして、各部の上側に示される情報と、各部に向かう破線矢印の起点に示される情報は、当該各部において用いられる情報である。
【0015】
距離演算装置1は、有線または無線によって、受波器アレイ3と接続されている。受波器アレイ3は、アレイ構造の複数の受波器30を有する。各受波器30は、水中を伝搬してきた音波を受信する。そして、各受波器30は、受信した音波の強さを定量的に示す信号を距離演算装置1に出力する。なお、音波の強さとしては、音圧、音響エネルギー、または音響インテンシティ等が挙げられる。
【0016】
距離演算装置1は、当該信号を用いて、目標の音源との間の距離を演算するものである。なお、実施の形態1においては、距離演算装置1は、受波器アレイ3を外部に設けるものとするが、受波器アレイ3を含むものでもよい。
【0017】
次に、受波器アレイ3が受信する音波について
図2を参照しながら説明する。
図2は、音源から発信されて、受波器アレイによって受信される音波の伝搬経路を例示する模式図である。目標となる音源4から発信された音波は、例えば、伝搬経路40~42のそれぞれを通って受波器アレイ3に到達する。伝搬経路40は、音源4から直接的に受波器アレイ3へ伝わる音波である直接波の進行経路の一例である。伝搬経路41は、音源4からの音波が海面において反射することにより生じる音波である海面反射波が、受波器アレイ3に到達するまでに通過する経路の一例である。伝搬経路42は、音源4からの音波が海底において反射することにより生じる音波である海底反射波が、受波器アレイ3に到達するまでに通過する経路の一例である。なお、伝搬経路40~42のそれぞれにおける矢印は、音波の進行方向を示す。
【0018】
図2に示すように、直接波の伝搬経路40と、海面反射波の伝搬経路41と、海底反射波の伝搬経路42は、互いに異なる経路である。このため、受波器アレイ3に到達する、これらの音波には位相差が生じ得る。当該位相差により、これらの音波は相互に干渉し合う。受波器アレイ3は、これらの音波が相互に干渉し合うことによって生成された音波を受信する。なお、以下では、干渉によって生成された当該音波を、干渉波と記載する場合もある。
【0019】
図1の参照に戻る。各受波器30は、受信した音波の音圧を定量的に示す電圧値または電力値等の時系列データX
t’を生成する。なお、各受波器30が生成するX
t’は、音波の音響エネルギーまたは音響インテンシティ等を定量的に示す電圧値または電力値等の時系列データであってもよい。当該X
t’は、上述した、音波の強さを定量的に示す信号に相当する。X
t’は、詳細には、n×k個のサンプリングデータx
ti(j)を含み、以下の数1式により表される。
【0020】
【0021】
iおよびjは、時間に関するインデックスであり、iは1からnまでの自然数であり、jは1からkまでの自然数である。サンプリングデータxti(j)は、iおよびjに対応する時間において受波器30が受信した音波の音圧、音響エネルギー、または音響インテンシティ等を示す電圧値または電力値等である。以下では、サンプリングデータxti(j)を出力値xti(j)と記載する場合もある。xti(j)およびXt’は、それぞれ音波に基づく信号の例である。
【0022】
各受波器30は、Xt’をn行k列の行列表現に変形し、数2式で示される時系列データXtを生成する。時系列データXtのi番目の要素であるxtiは、jが1からkまでの各出力値xti(j)を成分とし、数3式で表される。なお、Xtおよびxtiは、それぞれ音波に基づく信号の例である。
【0023】
【0024】
【0025】
受波器アレイ3は、各受波器30が生成した信号Xtを整相処理部10に出力する。整相処理部10は、受波器アレイ3から取得した信号Xtに対して、水平方向および俯仰方向に指向性を付与する整相処理を実行し、数4式で示されるXb(p、q)を生成する。なお、俯仰方向とは、仰俯角が変化する方向を指す。
【0026】
【0027】
Xb(p、q)のi番目の要素であるxbi(p、q)は、jが1からkまでの各xbi(j)(p、q)を成分とし、数5式で表される。なお、Xb(p、q)およびxbi(p、q)は、それぞれ音波に基づく信号の例である。
【0028】
【0029】
pは、整相処理において、俯仰方向における方位に割り当てられたインデックスであり、qは、整相処理において、水平方向における方位に割り当てられたインデックスである。以下では、俯仰方向における方位を俯仰方位と記載し、水平方向における方位を水平方位と記載する場合もある。また、以下では、p、qを整相方位番号と記載する場合もある。以下、方位および整相方位番号について、
図3を参照して詳細に説明する。
図3は、方位および整相方位番号について説明するための図である。pは、受波器アレイ3を中心に、俯仰方向における各角度範囲Δφに対応する方位に割り当てられた整相方位番号である。なお、pは、1からPまでの自然数であるとする。ここで、互いに異なる整相方位番号pが割り当てられた、複数の俯仰方位の各々に対応する角度範囲Δφの大きさは、互いに等しくとも異なっていてもよい。
図3においては、整相方位番号pとして、paが割り当てられた方位と、pbが割り当てられた方位とが例示されている。なお、paとpbは、1以上P以下の自然数である。
【0030】
一方、qは、受波器アレイ3を中心に、水平方向における各角度範囲Δθに対応する方位に割り当てられた整相方位番号である。なお、qは、1からQまでの自然数であるとする。ここで、互いに異なる整相方位番号qが割り当てられた、複数の水平方位の各々に対応する角度範囲Δθの大きさは、互いに等しくとも異なっていてもよい。
図3においては、整相方位番号qとして、qaが割り当てられた方位と、qbが割り当てられた方位とが例示されている。なお、qaとqbは、1以上Q以下の自然数である。
【0031】
図1の参照に戻る。整相処理部10は、1からQまでの各整相方位番号qが割り当てられた方位における、1からPまでの各整相方位番号pが割り当てられた方位から、受波器アレイ3に到来した音波に基づく信号X
b(p、q)を、上述のX
tから生成する。そして、整相処理部10は、生成した信号X
b(p、q)を、水平抽出部11に出力する。
【0032】
水平抽出部11および俯仰演算部12は、ノイズを低減するためのものである。水平抽出部11および俯仰演算部12の詳細については後述する。水平抽出部11は、音源4からの音波の、水平方向における到来方位として推定される水平方位を抽出する。そして、水平抽出部11は、抽出した水平方位から到来した音波に基づく信号Xb(p)を、P×Q個の信号Xb(p、q)の中から抽出する。水平抽出部11は、当該信号Xb(p)を俯仰演算部12に出力する。信号Xb(p)の詳細については後述する。
【0033】
俯仰演算部12は、音源4からの音波が到来する俯仰方位について演算する。そして、俯仰演算部12は、演算によって得られた俯仰方位からの音波に基づく信号XbI(m)を、水平抽出部11が抽出したXb(p)を用いて演算する。当該信号XbI(m)の詳細については後述する。
【0034】
総和演算部13は、後述するスペクトログラム生成部15が生成するスペクトログラムにおける信号対雑音比を高くするためのものである。総和演算部32の詳細については後述するが、総和演算部13は、俯仰演算部12が演算した信号XbI(m)から、数6式で示される信号Xbsumを生成する。なお、Xbsumのi番目の要素であるxbsumiは、jが1からkまでの各xbsumi(j)を成分とし、数7式で表される。Xbsumおよびxbsumiは、それぞれ音波に基づく信号の例である。
【0035】
【0036】
【0037】
フーリエ変換部14は、Xbsumをフーリエ変換し、数8式で示される周波数領域のデータXωを生成する。なお、Xωのi番目の要素であるxωiは、jが1からkまでの各々のxωi(j)を成分とし、数9式で表される。Xωおよびxωiは、それぞれ音波に基づく信号の例である。
【0038】
【0039】
【0040】
スペクトログラム生成部15は、フーリエ変換部14が生成したXωを二乗し、スペクトラム|Xω|2を得る。スペクトログラム生成部15は、|Xω|2を、時間-周波数平面において示すスペクトログラム、または当該スペクトログラムに対応する情報を生成する。なお、|Xω|2は、例えば、音圧、音響エネルギー、または音響インテンシティ等の音波の強さに対応し、スペクトログラムは、時間領域および周波数領域における音波の強さを示す情報である。
【0041】
図4は、スペクトログラム生成部が生成したスペクトログラムの一例を示す図である。音源4と受波器アレイ3との間の距離が時間的に変化する場合には、受波器アレイ3が受信する音波は、干渉によって、周期的に、強まったり、弱まったりする。そして、音波が広帯域信号である場合には、
図4に示すように、スペクトログラムには、音波の干渉による干渉縞が現れる。なお、干渉縞は、時間-周波数平面を示す2次元の画面上に|X
ω|
2を示す際に、当該|X
ω|
2の大きさの変化に応じて、色彩、濃淡の度合い、または画素数等を変化させることによって現れる。ただし、干渉縞は、2次元平面上に現れる縞模様以外にも、次のものを含んでもよい。例えば、時間軸と周波数軸をそれぞれx軸、y軸とし、|X
ω|
2を、z軸であって高さ方向で示した場合には、干渉縞は、交互に現れる山と谷によって表されるものでもよい。
【0042】
図1の参照に戻る。傾き算出部16は、スペクトログラム生成部15によるスペクトログラムの干渉縞の傾きdt/dωを算出する。ここで、tは時間であり、ωは周波数である。なお、傾き算出部16による傾きdt/dωの算出には既存の算出方法が用いられる。
【0043】
時間距離変換部17は、傾き算出部16が算出した傾きdt/dωを用いて、dr/dωを演算する。なお、rは、音源4と受波器アレイ3との間の距離である。時間距離変換部17は、例えば以下のように、dt/dωからdr/dωを演算する。受波器アレイ3と音源4との間の相対速度vが一定である場合には、dr=vdtが成り立つ。時間距離変換部17は、相対速度vを取得可能である場合において、当該相対速度vが一定である場合には、当該相対速度vを用いて、dt/dωからdr/dωを演算することができる。
【0044】
距離算出部18は、時間距離変換部17による出力結果dr/dω、音波の平均周波数ω’、およびウェーブガイド不変量βを用いて、数10式から、音源4と受波器アレイ3との間の距離rを算出する。なお、音波の平均周波数ω’は、スペクトログラムなどから得ることができる。ウェーブガイド不変量βは、rとω’とdr/dωの3変数を関係付ける量であって、実施の形態では、予め得られている量とする。
【0045】
【0046】
上述のようにして、距離演算装置1は、受波器アレイ3が受信した音波に基づく信号から、受波器アレイ3と音源4との間の距離を演算することができる。ここで、従来、音波を用いての測距においては、例えば水平方向におけるノイズを低減し、俯仰方向において音波に指向性を付与するなどの目的のために、鉛直方向に沿う開口を有する受波器アレイ3が用いられることが多い。
図5は、鉛直方向に沿う開口を有する受波器アレイを例示する図である。
図5には、鉛直アレイ、平面アレイ、および円筒アレイが示されている。これらのアレイの各々において複数の受波器30は、鉛直方向に並ぶように配置されている。そして、これらのアレイの各々は、鉛直方向に沿う開口を有する。このように、鉛直方向に沿う開口を有する受波器アレイ3を用いることによって、受波器アレイ3が受信する音波に対する、俯仰方向における指向性の付与が可能になる。しかし、このような俯仰方向における指向性の付与により、次のような問題が生じ得る。以下、当該問題について、
図6を参照して説明する。
【0047】
図6は、受波器アレイが受信する音波に対する、俯仰方向における指向性の付与によって生じる、当該音波の強弱について説明するための模式図である。俯仰方向における指向性の付与によって、受波器アレイ3が受信する音波の強さは、俯仰方向における角度範囲毎に異なるものとなり得る。
図6では、当該指向性の付与によって、角度範囲α
0における方位からの音波に基づく信号がメインローブに含まれる。すなわち、当該角度範囲α
0における方位からの音波に基づく信号が、他の方位から到来した音波に基づく信号に比べて、強い音波を示すものとなる。
【0048】
一方、当該指向性の付与により、角度範囲α1の外からの音波は、受波器アレイ3によって受信されないか、あるいは、受波器アレイ3による受信が制限され得る。また、当該指向性の付与により、角度範囲α1における方位であっても、角度範囲α0から外れた方位からの音波に基づく信号は、メインローブから外れ、微弱な音波を示すものになり得る。
【0049】
ここで、上述したように、受波器アレイ3が受信する音波は、直接波、海面反射波、および海底反射波等の干渉波である。
図6においては、伝搬経路40Aを通過する直接波と、伝搬経路41Aを通過する海面反射波と、伝搬経路42Aを通過する海底反射波は、角度範囲α
0の方位から受波器アレイ3に到来する。このため、これらの干渉波に基づく信号はメインローブに含まれる。しかし、伝搬経路41Bを通過する海面反射波と、伝搬経路42Bを通過する海底反射波は、角度範囲α
1の方位からではあるが、角度範囲α
0から外れた方位から受波器アレイ3に到来する。そのため、これらの音波に基づく信号は、メインローブには含まれず、微弱な音波を示すものとなり得る。また、伝搬経路41Cを通過する海面反射波と、伝搬経路42Cを通過する海底反射波は、角度範囲α
1から外れた方位から受波器アレイ3に到来する。このため、これらの音波は、受波器アレイ3に受信されない可能性がある。なお、伝搬経路41B、41C、42B、42Cを通過する音波は、実際には音源4から受波器アレイ3に到達するまでに海面もしくは海底において複数回反射することが想定される。しかし、
図6を参照しての理解を容易にするため、
図6では、かかる多重反射を示す記載を省略し、音波が最後に受波器アレイ3に到達する際に通過する伝搬経路41B、41C、42B、42Cのみを記載している。
【0050】
以上のことから、従来の距離演算装置においては、伝搬経路によって、音源4からの音波が、信号化されなかったり、微弱な信号として扱われたりする場合があった。従って、音波に基づく信号が示す、干渉波の強さが微弱なものとなり、結果として、スペクトログラムにおける干渉縞が微弱な干渉状態を示すものとなり、スペクトログラムにおける信号対雑音比が低くなる可能性があった。一方、音源4との間の距離が大きくなると、音波の強さを示す上記出力値xti(j)などが小さくなるため、信号対雑音比が低くなるが、整相処理の実行によって更に当該信号対雑音比が低まる虞がある。
【0051】
実施の形態1に係る水平抽出部11と俯仰演算部12と総和演算部13は、ノイズを低減しながら、上記信号対雑音比を向上させるためのものである。水平抽出部11は、整相処理部10が生成したXb(p、q)に対して次のような処理を行う。水平抽出部11は、水平方向における整相方位番号qの中から、特定の整相方位番号q’を抽出する。なお、当該整相方位番号q’は、例えば、音波の強さが最大となる水平方位に割り当てられているものでもよいし、追尾している水平方位に割り当てられているものでもよい。音波の強さが最大となる水平方位、および、追尾している水平方位は、それぞれ音源4が存在すると推定される水平方位の例である。
【0052】
水平抽出部11は、Xb(p、q)から、整相方位番号q’におけるXb(p)を抽出する。Xb(p)は、整相方位番号q’の水平方位における、整相方位番号pが1からPまでの各俯仰方位からの、音波に基づく信号の例である。
【0053】
俯仰演算部12は、水平抽出部11が抽出したXb(p)を用いて、整相方位番号q’の水平方位における、音源4からの音波が到来する俯仰方位からの音波に基づく信号XbI(m)を演算する。音源4からの音波は、上述のように、直接波、海面反射波、または海底反射波として、複数の伝搬経路を通って、受波器アレイ3に到達する。そのため、音源4からの音波が到来する俯仰方位としては、複数の俯仰方位が考えられる。俯仰演算部12は、音源4から発せられた音波が到来する、Psel個の俯仰方位の各々の仰俯角を演算する。なお、Pselは、1以上であってP以下の自然数である。そして、俯仰演算部12は、各仰俯角の俯仰方位から到来した音波に基づく信号XbI(m)を、上記Xb(p)を用いて演算する。
【0054】
総和演算部13は、Psel個のXbI(m)の総和を演算する。当該総和は、上記数6式が示す信号Xbsumに相当する。フーリエ変換部14は、当該Xbsumをフーリエ変換し、上記数8式が示す信号Xωを生成する。そして、スペクトログラム生成部15は、当該Xωからスペクトラム|Xω|2を生成し、当該スペクトラム|Xω|2を時間領域と周波数領域とで表すスペクトログラムを生成する。当該スペクトログラムは、音源4から発せられた音波として推定される音波に基づく信号XbI(m)の、総和から得られている。このため、スペクトログラムにおいて、信号Xb(p、q)のうちのノイズとして推定される部分による影響が低減する。また、総和演算部13が、上記整相処理によって微弱化された、音源4からの音波に基づく信号の総和を演算し、スペクトログラム生成部15が、当該総和に基づいてスペクトログラムを生成するため、スペクトログラムが示す干渉波の強さが高められる。結果として、スペクトログラムにおける干渉縞が鮮明になり、スペクトログラムにおける信号対雑音比が向上する。従って、距離演算装置1は、距離rの演算の精度を向上させることができる。
【0055】
ここで、音源4から発せられた音波が到来する俯仰方向における方位は、音波が伝搬する水中の環境などによって変化し得るものであり、未知の場合が多い。そのため、総和演算部13は、水平抽出部11が抽出したP個のXb(p)の総和を演算してもよく、距離演算装置1は、当該総和を用いてスペクトログラムを生成してもよい。しかし、この場合には、総和演算部13によってノイズによる信号も加算されてしまうことになり、スペクトログラムにおいてノイズによる影響が生じ得る。これにより、距離rの演算精度が低減する虞がある。このため、実施の形態のように、俯仰演算部12が、音源4から発せられた音波が到来する仰俯角を演算し、総和演算部13が、俯仰演算部12が演算した仰俯角の俯仰方位からの音波に基づく信号XbI(m)を加算することが望ましい。以下、実施の形態における俯仰演算部12について、更に詳述する。
【0056】
図7は、実施の形態における俯仰演算部に含まれる構成要素と、当該俯仰演算部による処理の流れとを例示する図である。俯仰演算部12は、ノーマルモード分解部19、成分抽出部20、仰俯角算出部21、および補間部22を有する。なお、
図7において破線によって示されるブロックにおいて示される情報は、俯仰演算部12に含まれる上記各部において生成された情報、または、上記各部において用いられる情報である。ここで、当該ブロックにおいて示される情報のうち、各部の下側に示される情報は、当該各部において生成された情報である。そして、各部の上側に示される情報と、各部に向かう破線矢印の起点に示される情報は、当該各部において用いられる情報である。
【0057】
ノーマルモード分解部19は、ノーマルモード法に基づいて、音場p(r、ω)を、環境情報を用いて、数11式で示す多項式として算出する。ここで、音場p(r、ω)は、受波器アレイ3が受信した音波の音圧である。当該音圧は、受波器アレイ3による信号Xtに対応するものでもよいし、整相処理部10による信号Xb(p、q)に対応するものでもよいし、水平抽出部11による信号Xb(p)に対応するものでもよい。音場p(r、ω)は、音圧以外にも、音響エネルギーまたは音響インテンシティ等であってもよい。数11式に示す音場p(r、ω)は、音波に基づく信号の例である。数11式におけるrは、受波器アレイ3と音源4との間の距離である。同様に、数11式におけるωは、音波の周波数である。距離rおよび周波数ωの各値は、任意である。環境情報は、音波が伝搬する水中の環境の状態を示す情報であって、音速の深度特性を示す音速プロファイル、または、音源4の深度等の、音場を決定するために必要な情報である。
【0058】
【0059】
数11式に示されるように、ノーマルモード分解部19は、音場p(r、ω)を、インデックスmが互いに異なる、複数の直交成分(以下、成分と記す)の和として算出する。なお、インデックスmの当該成分は、Am・exp(ikrmr)である。各成分は、上記音場p(r、ω)の成分であることから、当該音場p(r、ω)が示す音波に含まれる、要素としての音波による音場に相当する。以下では、音場p(r、ω)の成分に対応する音波と記載する場合には、当該音場p(r、ω)が示す音波に含まれる、要素としての音波であって、当該成分と等しい音場の音波を指すものとする。同様に、音波に対応する成分と記載する場合には、当該音波は、当該成分を含む音場p(r、ω)が示す音波における要素としての音波であって、当該成分と等しい音場の音波を指すものとする。数11式におけるAmは、インデックスmの成分の音波の振幅に対応し、数12式によって表される。
【0060】
【0061】
数12式における、zは受波器アレイ3の深度であり、zsは音源4の深度である。ψmは、振動を示すモード関数である。なお、ψmが示す振動の振動数は、インデックスm毎に異なる。モード関数ψmは、深度に依存する。krmは、インデックスmの成分に対応する音波の水平波数である。
【0062】
ノーマルモード分解部19は、p(r、m)の算出において、音速プロファイル、受波器アレイ3の深度z、音源4の深度zs、音波の周波数ω、水深、海水密度、海水振幅減衰量、および海底特性等のうちの少なくとも1つの環境情報を既存のプログラムに入力する。なお、海底特性とは、海底における泥などの物質を伝搬する音の速度、当該物質の密度、または当該物質における海水振幅減衰量等を指す。また、既存のプログラムとしては、例えば、Ocean Acoustics Libraryが配布する公開プログラムであるKrakenが挙げられる。ノーマルモード分解部19は、当該既存のプログラムに環境情報を入力し、数値シミュレーションを実行することによって、音場p(r、ω)における水平波数krmおよびモード関数ψm等を計算する。
【0063】
実施の形態に係る距離演算プログラムは、上記既存のプログラムを含むものであってもよいし、呼び出すものであってもよい。ノーマルモード分解部19は、上記数値シミュレーションにおいて、例えば、音波の周波数ωとして当該音波の平均周波数ω’を設定してもよいし、音源4の深度zsとして想定値を設定してもよい。なお、音波の平均周波数ω’は、例えば、数2式または数4式に示される信号を時間領域から周波数領域にフーリエ変換した結果から得られたものでもよいし、他の既存の手法から得られたものでもよい。
【0064】
成分抽出部20は、ノーマルモード分解部19が計算した水平波数krmおよびモード関数ψmを用いて、干渉波の干渉状態を定式化する。なお、成分抽出部20は、数11式における、インデックスmが互いに異なる2つの成分の積を演算することによって、干渉状態を定式化する。数13式は、成分抽出部20によって得られる、音波の干渉状態を示す式である。数13式におけるインデックスmおよびインデックスlは、互いに異なる自然数であって、それぞれ1からMまでの自然数である。数13式におけるΔkmlは、数14式によって示される。
【0065】
【0066】
【0067】
数13式におけるAmAlの項は、インデックスmの成分Am・exp(ikrmr)に対応する音波と、インデックスlの成分Al・exp(ikrlr)に対応する音波の、相互の干渉の強さを示す項である。すなわち、AmAlの値が大きいほど、これら2つの成分の各々に対応する音波は、互いに強く干渉し合う。なお、数13式におけるcos(Δkmlr)の項は、インデックスmの成分Am・exp(ikrmr)に対応する音波と、インデックスlの成分Al・exp(ikrlr)に対応する音波の、相互の干渉の度合いの変化を表す。
【0068】
ここで、1つの音源4から発せられ、複数の伝搬経路の各々を通って受波器アレイ3に到達した音波は、互いに強く干渉すると考えられる。例えば、当該音波同士の干渉は、当該音波とノイズとの干渉よりも強いと考えられる。また、当該音波同士の干渉は、多くの場合、ノイズ同士の干渉よりも強いと考えられる。
【0069】
成分抽出部20は、AmAlの値が大きい順に、インデックスmとインデックスlの組み合わせをソートする。そして、成分抽出部20は、AmAlの値が大きいインデックスmおよびインデックスlを抽出する。実施の形態における成分抽出部20は、数15式においてsort(AmAl)によって示されるsort関数を用いて、AmAlの値が大きい順番に、インデックスmおよびインデックスlの組み合わせを得る。なお、当該sort関数は、引数であるAmAlを、値が大きい順番に並び替える関数であって、並び替えられたAmAlの値と、当該AmAlのインデックスmおよびインデックスlとを返す関数である。
【0070】
【0071】
数15式の左辺における、インデックスIdx1およびインデックスIdx2の組み合わせは、ソートされた、インデックスmおよびインデックスlの組み合わせに相当する。なお、インデックスIdx1がインデックスmに相当し、インデックスIdx2がインデックスlに相当する。以下では、数15式におけるIdx1とIdx2の組み合わせを、単に組み合わせと記載する場合もある。
【0072】
成分抽出部20は、ソートによって得られた複数の組み合わせの中から、インデックスIdx1、Idx2の重複を排除して、AmAlの値が大きい、Psel個のインデックスを抽出する。当該インデックスは、成分を示す情報の例である。成分抽出部20は、インデックスに代えて、AmAlの値が大きいPsel個の成分を抽出してもよい。この場合には、当該情報は、当該成分となる。
【0073】
Pselは、上述したようにP以下の自然数であると同時に、M以下の自然数であるとする。当該Pselは、予め定められた数であってもよい。あるいは、当該Pselは、AmAlの値が予め定められた閾値よりも大きい、インデックスの数であってもよい。
【0074】
実施の形態における成分抽出部20は、数16式においてselect(Idx1、Idx2)によって示されるselect関数を用いて、AmAlの値が大きい、Psel個のインデックスを、重複を排除して抽出する。
【0075】
【0076】
select(Idx1、Idx2)の括弧内のIdx1およびIdx2は、それぞれ、select関数の引数であって、数15式の左辺に示す組み合わせを構成するものである。当該select関数は、Idx1とIdx2の、複数の組み合わせから、重複を排除して、AmAlの値が大きいPsel個のインデックスを返す関数である。数16式のeigIdxは、select関数によって得られたPsel個のインデックスの集合に相当する。eigIdxは、数11式における成分のうち、より強い干渉を引き起こす成分のインデックスの集まりである。当該成分は、複数の伝搬経路を通過して受波器アレイ3に到達した、音源4からの音波の成分として推定できる。
【0077】
仰俯角算出部21は、eigIdxに含まれるインデックスmの水平波数krmを用いて、音源4からの音波の各成分の到来方位の仰俯角を算出する。ここで、eigIdxに含まれる各インデックスmの成分であって、音源4からの音波の成分の到来方位の仰俯角φpre(m)は、数17式から算出できる。
【0078】
【0079】
数17式におけるkは、音響波数であって、以下の数18式から算出できる。
【0080】
【0081】
数18式におけるωは、数11式におけるωに対応するものであって、音波の角周波数である。
【0082】
仰俯角算出部21は、eigIdxに含まれるインデックスmの水平波数krm、および、数18式に示される角周波数を、数17式に代入し、音源4からの音波の成分の到来方位の仰俯角φpre(m)を算出する。
【0083】
ここで、仰俯角算出部21によって算出された仰俯角φpre(m)に対応する俯仰方位は、上記整相処理における、上記P個の整相方位番号に対応する俯仰方位と一致するとは限らない。補間部22は、上記水平抽出部11が抽出したXb(p)を用いて補間処理を行い、仰俯角φpre(m)に対応する俯仰方位からの音波に基づく信号XbI(m)を演算する。補間部22は、数19式においてinterp(Xb(p)、φpre(m))によって示されるinterp関数を用いて信号XbI(m)を得る。なお、数19式において補間部22は、interp関数に、信号Xb(p)および仰俯角φpre(m)を代入している。
【0084】
【0085】
interp関数は、代入された信号Xb(p)を用いて、代入された仰俯角φpre(m)に対応する俯仰方位からの音波に基づく信号XbI(m)を返す。当該interp関数としては、例えば、ベッセル関数またはSinc関数等が用いられてもよい。
【0086】
総和演算部13は、数20式に示すように、eigIdxに含まれるPsel個の全インデックスmの各々の信号XbI(m)の総和を演算し、数6式に示すXbsumを得る。
【0087】
【0088】
俯仰演算部12が、水平抽出部11によって抽出された信号Xb(p)から、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)を演算することによって、俯仰方向において伝搬するノイズの影響を低減することができる。具体的には、成分抽出部20は、信号P(r、ω)の成分のうち、より強く干渉し合う2以上の成分のインデックスを抽出する。これにより、音源4からの音波の成分のインデックスが抽出される。仰俯角算出部21は、抽出されたインデックスの成分に対応する音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角φpre(m)を算出する。これにより、音源4からの音波の成分の到来方位の俯仰角が得られる。補間部22は、上記Xb(p)を用いて補間処理を行い、仰俯角φpre(m)に対応する俯仰方位からの音波に基づく信号XbI(m)を演算する。これにより、水平方向だけではなく、俯仰方向においてもノイズを低減させた、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)が得られる。
【0089】
総和演算部13が、俯仰演算部12によって得られた信号XbI(m)を加算することによって、スペクトログラムの生成において用いられる、音波の強さに対応する|Xω|2の増大が図られ、信号対雑音比が向上する。
【0090】
次に距離演算装置1のハードウェア構成について説明する。距離演算装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリと、通信インターフェースとを用いて構成可能である。整相処理部10による機能は、プロセッサが、通信インターフェース回路を介して受波器アレイ3と通信し、メモリに記憶されている距離演算プログラムを読み出して実行することにより実現できる。水平抽出部11、俯仰演算部12、総和演算部13、フーリエ変換部14、スペクトログラム生成部15、傾き算出部16、時間距離変換部17、および距離算出部18の各機能は、プロセッサが、メモリに記憶されている距離演算プログラムを読み出して実行することにより実現することができる。距離演算装置1は、その全部または一部を専用のハードウェアとしてもよい。
【0091】
以下、実施の形態に係る距離演算装置1による効果について詳述する。実施の形態に係る距離演算装置1は、受波器アレイ3が受信した音波の強さを、時間領域および周波数領域において示すスペクトログラムを用いて、音源4との間の距離rを演算するものである。距離演算装置1は、整相処理部10、水平抽出部11、俯仰演算部12、総和演算部13、および、スペクトログラム生成部15を備える。整相処理部10は、受波器アレイ3が受信した音波に基づく信号に指向性を付与する。水平抽出部11は、整相処理部10によって指向性を付与された信号Xb(p、q)から、音源4が存在する方位として推定される水平方位からの音波に基づく信号Xb(p)を抽出する。俯仰演算部12は、水平抽出部11が抽出した信号Xb(p)を用いて、音源4から発せられて受波器アレイ3に到来した音波に基づく信号XbI(m)を演算する。総和演算部13は、俯仰演算部12が演算した信号XbI(m)の総和Xbsumを演算する。スペクトログラム生成部15は、当該総和Xbsumに基づくスペクトログラムを生成する。俯仰演算部12は、ノーマルモード分解部19、成分抽出部20、仰俯角算出部21、および補間部22を有する。ノーマルモード分解部19は、受波器アレイ3が受信した音波に基づく信号p(r、ω)を、ノーマルモード法に基づいて、複数の成分の和として算出する。当該信号p(r、ω)は、信号Xtに対応するものでもよいし、信号Xb(p、q)に対応するものでもよいし、信号Xb(p)に対応するものでもよい。成分抽出部20は、当該複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいて、2以上の成分のインデックスを抽出する。仰俯角算出部21は、成分抽出部20によって抽出されたインデックスの、上記2以上の成分の各々に対応する音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角φpre(m)を算出する。補間部22は、水平抽出部11が抽出した信号Xb(p)、および、当該仰俯角φpre(m)を用いて、音源4から発せられて、仰俯角φpre(m)における俯仰方位から受波器アレイ3に到来した音波に基づく信号を演算する。
【0092】
上記構成によれば、水平抽出部11および俯仰演算部12によって、目標以外からの音波に基づくノイズが低減され、総和演算部13によって、信号対雑音比が向上する。詳細には、水平抽出部11が、整相処理によって指向性を付与された信号Xb(p、q)から、目標の音源4が存在すると推定される水平方位からの音波に基づく信号Xb(p)を抽出するため、水平方向においてノイズが低減される。そして、俯仰演算部12における成分抽出部20が、ノーマルモード分解部19によって得られた複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さに基づいてインデックスを抽出するため、目標以外からのノイズによる成分が排除され得る。仰俯角算出部21が、抽出されたインデックスの成分に対応する音波の、俯仰方向における到来方位の仰俯角φpre(m)を算出することにより、目標からの音波が到来する仰俯角φpre(m)が得られる。そして、補間部22が当該仰俯角φpre(m)と上記信号Xb(p)とを用いることによって、ノイズを低減した、音源4から発せられた信号XbI(m)が得られる。また、総和演算部13が、当該信号XbI(m)の総和Xbsumを演算し、スペクトログラム生成部15が、当該総和Xbsumに基づくスペクトログラムを生成するため、スペクトログラムにおいて、ノイズの低減と信号対雑音比の向上とが図られる。結果として、目標との間の距離rの演算の精度が向上する。
【0093】
実施の形態における成分抽出部20は、複数の成分の各々に対応する音波の振幅Amを用いて、当該複数の成分の各々に対応する音波の、相互の干渉の強さを演算する。成分抽出部20は、当該振幅Amを用いることにより、各成分に対応する音波同士の干渉の強さを正確に演算可能になる。そして、成分抽出部20は、演算した当該干渉の強さを用いることで、目標からの音波に対応する成分のインデックスを抽出できる。結果として、距離演算装置1は、ノイズを低減し、距離rの演算に必要な信号XbI(m)を反映したスペクトログラムを生成することができる。よって、距離演算装置1は、距離rの演算精度を向上できる。
【0094】
実施の形態における成分抽出部20は、複数の成分の各々に対応する音波のうち、相互の干渉が強い順に、予め定められた2以上の個数の音波に対応する2以上の成分のインデックスを抽出する。音源4から発せられて、複数の伝搬経路を通過して受波器アレイ3に到来する音波による相互の干渉は、ノイズ同士による干渉、あるいは、ノイズと当該音波との干渉に比べ、強いと考えられる。成分抽出部20が、相互の干渉が強い音波に対応する成分のインデックスを抽出することにより、俯仰演算部12は、ノイズを低減した、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)を演算できる。従って、距離演算装置1は、距離rの演算に必要な信号XbI(m)を反映し、ノイズを低減したスペクトログラムを生成することができる。よって、距離演算装置1は、距離rの演算精度を向上できる。
【0095】
実施の形態における成分抽出部20は、複数の成分の各々に対応する音波のうち、相互の干渉の強さが、予め定められた閾値以上の、2以上の音波に対応する2以上の成分のインデックスを抽出する。成分抽出部20が、相互の干渉の強さが閾値以上の音波に対応する成分のインデックスを抽出することにより、俯仰演算部12は、ノイズを低減した、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)を演算できる。従って、距離演算装置1は、距離rの演算に必要な信号XbI(m)を反映し、ノイズを低減したスペクトログラムを生成することができる。よって、距離演算装置1は、距離rの演算精度を向上できる。
【0096】
実施の形態における成分抽出部20は、相互の干渉の強さに応じて、複数の成分の各々のインデックスを並び替える。これにより、成分抽出部20は、相互の干渉が強い音波に対応する成分のインデックスを容易に抽出可能になる。
【0097】
実施の形態における仰俯角算出部21は、成分抽出部20が抽出したインデックスの成分に対応する音波の水平波数krmを用い、仰俯角φpre(m)を算出する。これにより、距離演算装置1は、目標からの音波が到来する俯仰方位を正確に得ることができる。従って、距離演算装置1は、俯仰方向においてノイズの低減したスペクトログラムを生成することができ、距離rの演算精度を向上できる。
【0098】
実施の形態における補間部22は、水平抽出部11が抽出した信号Xb(p)、および、仰俯角φpre(m)を用いて、補間処理を行うことによって、仰俯角φpre(m)の俯仰方位からの到来した、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)を演算する。これにより、俯仰演算部12は、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)を演算することができる。
【0099】
実施の形態におけるノーマルモード分解部19は、受波器アレイ3に到達するまでに音波が伝搬してきた環境の状態を示す環境情報を用いて、受波器アレイ3が受信した音波に基づく信号p(r、ω)を、複数の成分の和として算出する。ノーマルモード分解部19が、環境情報を用いて、当該信号p(r、ω)を複数の成分の和として算出することにより、各成分は正確に算出される。そして、成分抽出部20は、複数の成分の各々に対応する音波の相互の干渉の強さを正確に演算できるようになり、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)に含まれる成分のインデックスを正確に抽出できる。これにより、仰俯角算出部21は、音源4からの音波が到来する仰俯角φpre(m)を正確に算出できる。従って、俯仰演算部12は、ノイズを低減した、音源4からの音波に基づく信号XbI(m)を演算できる。よって、スペクトログラムにおいて、ノイズの低減と、信号対雑音比の向上とが図られ、距離演算装置1は、距離rの演算精度を向上できる。
【0100】
上記実施の形態に係る距離演算装置1は、整相処理部10が、インデックスiおよびjによって示される時間領域において整相処理を実行するものであったが、整相処理部10は、時間領域に代えて周波数領域で整相処理を実行するものでもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 距離演算装置、3 受波器アレイ、4 音源、10 整相処理部、11 水平抽出部、12 俯仰演算部、13 総和演算部、14 フーリエ変換部、15 スペクトログラム生成部、16 傾き算出部、17 時間距離変換部、18 距離算出部、19 ノーマルモード分解部、20 成分抽出部、21 仰俯角算出部、22 補間部、30 受波器、40、40A、40B、40C、41、41A、41B、41C、42、42A、42B、42C 伝搬経路。