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特許7452377走行車線判定装置及び走行車線判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】走行車線判定装置及び走行車線判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01C21/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020176771
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067908
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章弘
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195237(JP,A)
【文献】特開2011-215054(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045231(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時に時系列で得られる、車両の位置姿勢と、車両周辺画像との組み合わせである走行データを収集する走行データ収集部と、
車線判定対象領域を設定する領域設定部と、
前記収集した走行データのうち、前記車線判定対象領域内を通過する前記走行データの各々について、前記車両周辺画像から路面画像を生成すると共に前記車両周辺画像あるいは路面画像から物標を検出し、前記路面画像及び前記物標の検出結果を含む走行画像データを生成する走行画像データ生成部と、
前記走行画像データのペアの各々について、前記物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、前記相対位置補正量に基づいて、前記ペアについて、走行車線の関係として、同一車線、隣接車線、及び対向車線の何れであるかを判定する走行車線関係判定部と、
前記走行車線関係判定部による判定結果に基づいて、走行方位毎に、同一の走行車線について前記走行画像データからなるグループを生成すると共に、前記走行方位毎に、前記グループ間の車線関係として、一方の前記グループに属する前記走行画像データの走行車線が、他方の前記グループに属する前記走行画像データの走行車線に対して、同一車線及び隣接車線の何れであるかを判定するグループ判定部と、
を含む走行車線判定装置。
【請求項2】
前記走行車線関係判定部による前記ペアの各々についての判定結果の整合性を考慮して、前記ペアの各々についての判定結果を修正する整合性判定結果修正部を更に含み、
前記グループ判定部は、前記整合性判定結果修正部による修正後の前記判定結果に基づいて、前記グループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定する請求項1記載の走行車線判定装置。
【請求項3】
前記ペアの各々について、前記走行データが収集されたときの車両走行軌跡と前記物標との位置関係により、前記ペアについての判定結果を修正する位置関係判定結果修正部を更に含み、
前記グループ判定部は、前記位置関係判定結果修正部による修正後の前記判定結果に基づいて、前記グループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定する請求項1記載の走行車線判定装置。
【請求項4】
前記ペアの各々について、前記走行データが収集されたときの走行軌跡と前記物標との位置関係により、前記ペアについての判定結果を修正する位置関係判定結果修正部と、
前記ペアの各々についての前記位置関係判定結果修正部による修正後の判定結果の整合性を考慮して、前記ペアの各々についての判定結果を修正する整合性判定結果修正部とを更に含み、
前記グループ判定部は、前記整合性判定結果修正部による修正後の前記判定結果に基づいて、前記グループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定する請求項1記載の走行車線判定装置。
【請求項5】
コンピュータを、
車両走行時に時系列で得られる、車両の位置姿勢と、車両周辺画像との組み合わせである走行データを収集する走行データ収集部、
車線判定対象領域を設定する領域設定部、
前記収集した走行データのうち、前記車線判定対象領域内を通過する前記走行データの各々について、前記車両周辺画像から路面画像を生成すると共に前記車両周辺画像あるいは路面画像から物標を検出し、前記路面画像及び前記物標の検出結果を含む走行画像データを生成する走行画像データ生成部、
前記走行画像データのペアの各々について、前記物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、前記相対位置補正量に基づいて、前記ペアについて、走行車線の関係として、同一車線、隣接車線、及び対向車線の何れであるかを判定する走行車線関係判定部、及び
前記走行車線関係判定部による判定結果に基づいて、走行方位毎に、同一の走行車線について前記走行画像データからなるグループを生成すると共に、前記走行方位毎に、前記グループ間の車線関係として、一方の前記グループに属する前記走行画像データの走行車線が、他方の前記グループに属する前記走行画像データの走行車線に対して、同一車線及び隣接車線の何れであるかを判定するグループ判定部、
として機能させるための走行車線判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車線判定装置及び走行車線判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
区画線等により構造化された道路を車両等の移動体が走行する際に、当該移動体が走行中の車線を同定することは、ナビゲーションシステム等において有用な情報となる。
【0003】
また、測位衛星などを用いて取得した自車位置、走行軌跡、自車両周辺の観測結果(白線等の物標検出結果)を用いて、既に存在する地図上における自車の位置を推定するマップマッチング技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、自車の走行中の位置周辺に置いて他の車両等が取得した画像と、自車が撮像した画像とを照合し、自車の走行車線を推定する技術が知られている(特許文献2)。この技術では、照合に用いる画像は、走路全体を俯瞰し車線構成を判別できる画像である必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-68665号公報
【文献】特開2018-189436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載のマップマッチング技術では、既に走路地図が存在する必要があり、新規に地図を生成するような用途には使用できない。
【0007】
また、上記の特許文献2に記載の技術では、地図情報を必要としないが、車線構成を判別できるような照合用の画像を用いる必要があり、地図情報に準ずる情報を必要とする。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、収集した各走行の走行データから、各走行の走行車線を精度よく判定することができる走行車線判定装置及び走行車線判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の走行車線判定装置は、車両走行時に時系列で得られる、車両の位置姿勢と、車両周辺画像との組み合わせである走行データを収集する走行データ収集部と、車線判定対象領域内の前記走行データの各々について、前記車両周辺画像から路面画像を生成すると共に前記車両周辺画像あるいは路面画像から物標を検出し、前記路面画像及び前記物標の検出結果を含む走行画像データを生成する走行画像データ生成部と、前記走行画像データのペアの各々について、前記物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、前記相対位置補正量に基づいて、前記ペアについて、走行車線の関係を判定する走行車線関係判定部と、前記走行車線関係判定部による判定結果に基づいて、同一の走行車線について前記走行画像データからなるグループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定するグループ判定部と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明に係る走行車線判定プログラムは、コンピュータを、車両走行時に時系列で得られる、車両の位置姿勢と、車両周辺画像との組み合わせである走行データを収集する走行データ収集部、車線判定対象領域内の前記走行データの各々について、前記車両周辺画像から路面画像を生成すると共に前記車両周辺画像あるいは路面画像から物標を検出し、前記路面画像及び前記物標の検出結果を含む走行画像データを生成する走行画像データ生成部、前記走行画像データのペアの各々について、前記物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、前記相対位置補正量に基づいて、前記ペアについて、走行車線の関係を判定する走行車線関係判定部、及び前記走行車線関係判定部による判定結果に基づいて、同一の走行車線について前記走行画像データからなるグループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定するグループ判定部として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明によれば、走行データ収集部は、車両走行時に時系列で得られる、車両の位置姿勢と、車両周辺画像との組み合わせである走行データを収集する。走行画像データ生成部は、車線判定対象領域内の前記走行データの各々について、前記車両周辺画像から路面画像を生成すると共に前記車両周辺画像あるいは路面画像から物標を検出し、前記路面画像及び前記物標の検出結果を含む走行画像データを生成する。走行車線関係判定部は、前記走行画像データのペアの各々について、前記物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、前記相対位置補正量に基づいて、前記ペアについて、走行車線の関係を判定する。そして、グループ判定部は、前記走行車線関係判定部による判定結果に基づいて、同一の走行車線について前記走行画像データからなるグループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定する。
【0012】
このように、走行画像データのペアの各々について、前記物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、前記相対位置補正量に基づいて、前記ペアについて、走行車線の関係を判定し、判定結果に基づいて、同一の走行車線について前記走行画像データからなるグループを生成すると共に、前記グループ間の車線関係を判定することにより、収集した各走行の走行データから、各走行の走行車線を精度よく判定することができる。
【0013】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD-ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の走行車線判定装置及び走行車線判定プログラムによれば、収集した各走行の走行データから、各走行の走行車線を精度よく判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る走行車線判定装置を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車載器を示すブロック図である。
図3】対象領域を説明するための図である。
図4】路面画像を生成する方法を説明するための図である。
図5】路面画像から物標を検出した結果の例を示す図である。
図6】走行画像データ対を生成する方法を説明するための図である。
図7】走行画像データ対の例を示す図である。
図8】走行画像データ対の物標の対応付けの例を示す図である。
図9】走行画像データ対での位置合わせを行った結果の例を示す図である。
図10】同一車線を判定される走行画像データ対の例を示す図である。
図11】隣接車線を判定される走行画像データ対の例を示す図である。
図12】走行画像データの全組み合わせについての判定結果の例を示す図である。
図13】同一車線を判定される走行画像データ対の例を示す図である。
図14】隣接車線を判定される走行画像データ対の例を示す図である。
図15】車線変更と判定される走行画像データ対の例を示す図である。
図16】車線グループテーブルの例を示す図である。
図17】車線構成テーブルの例を示す図である。
図18】(A)誤判定を含む判定結果の例を示すイメージ図、及び(B)車線構成結果の例を示す図である。
図19】本発明の実施の形態に係る走行車線判定装置のコンピュータにおける走行車線判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。 以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
<システム構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る走行車線判定装置10は、後述する車載器によって生成された走行データを受信するための通信部12と、受信した走行データに基づいて、各走行の走行車線を判定し、出力部16へ出力するコンピュータ14と、を備えている。
【0017】
通信部12は、各車両の車載器で生成された走行データを受信する。走行データは、図2に示す車載器50によって生成される。
【0018】
車載器50は、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部52と、ジャイロセンサ53と、自車両の前方を撮像する撮像装置54と、GPS受信部52によって受信されたGPS衛星からの受信信号、ジャイロセンサ53の出力、及び撮像装置54によって撮像された前方画像に基づいて、測位結果の時系列及び撮像画像の時系列を含む走行データを生成するコンピュータ60と、走行データを走行車線判定装置10へ送信する通信部70とを備えている。
【0019】
GPS受信部52は、複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した全てのGPS衛星からの受信信号から、GPS衛星の情報として、GPS衛星の衛星番号、GPS衛星の軌道情報(エフェメリス)、GPS衛星が電波を送信した時刻、受信信号の強度、周波数などを取得し、コンピュータ60に出力する。
【0020】
撮像装置54は、前方画像を繰り返し撮像し、コンピュータ60へ出力する。例えば、自車両が走行中の車線周辺が撮像範囲となる。
【0021】
コンピュータ60を機能ブロックで表すと、図2に示すように、GPS受信部52から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPS衛星の情報及びジャイロセンサ53の出力から、各時刻における自車両の位置、方位、車速などの時系列値を取得する測位情報取得部62と、撮像装置54によって各時刻において撮像された前方画像を取得し、取得した前方画像を、鳥瞰図となるように平面に投影した平面画像を生成する画像取得部64と、各時刻における自車両の位置、方位、車速などの時系列値、及び各時刻の平面画像を含む走行データを生成する走行データ生成部66とを備えている。
【0022】
上記図1に示す、コンピュータ14は、CPU、後述する走行車線判定処理ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びHDD等の記憶装置で構成されている。
【0023】
コンピュータ14を以下で説明する走行車線判定処理ルーチンに従って機能ブロックで表すと、図1に示すように、走行データ収集部20と、走行データ記憶部22と、領域設定部24と、物標検出部26と、走行データ対生成部28と、相対位置補正部30と、相対車線判定部32と、位置関係判定結果修正部34と、整合性判定結果修正部36と、グループ判定部38と、車線構成同定部40とを備えている。なお、物標検出部26は、走行画像データ生成部の一例であり、相対車線判定部32は、走行車線関係判定部の一例であり、グループ判定部38及び車線構成同定部40は、グループ判定部の一例である。
【0024】
走行データ収集部20は、各車両の車載器50から受信した走行データを収集し、走行データ記憶部22に格納する。
【0025】
走行データ記憶部22は、収集した複数の走行データを記憶している。
【0026】
領域設定部24は、走行車線を判定する小領域である対象領域を設定する。例えば、100m四方のグリッド状の小領域を対象領域として設定する(図3参照)。
【0027】
物標検出部26は、集約した全走行データの内、設定した対象領域内を通過する走行データに対し、路面画像を生成すると同時に、物標(区画線等)を検出する。具体的には、走行データが収集されたときの車両走行軌跡が、対象領域を通過する走行データを、走行データ記憶部22から取得し、取得した各走行データについて、走行データの各時刻の平面画像を、車両走行軌跡に沿って貼り合わせることにより、路面画像を生成する(図4参照)。なお、車両走行軌跡は、走行データの各時刻の車両位置及び方位から求めてもよいし、各時刻の平面画像に対して予め定められた撮像位置をつなぐことにより求めてもよい。
【0028】
物標検出部26は、車両周辺画像あるいは生成した路面画像から、物標(例えば、区画線や標識、看板、信号)を検出し(図5参照)、生成した路面画像と物標群を含む走行画像データにユニークな走行IDを付与する。対象領域を複数回通過する場合には、それぞれ個別の走行IDが付与される。
【0029】
走行データ対生成部28は、設定した対象領域について生成した、ユニークな走行IDを持つ走行画像データの1対1の走行画像データ対を生成する(図6参照)。
【0030】
相対位置補正部30は、走行画像データ対の各々について、物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、相対位置補正量を用いて、当該走行画像データ対の各走行画像データの路面画像を重ね合わせる。具体的には、相対位置補正部30は、走行画像データ対を構成する走行画像データA、Bに対して、走行画像データAの物標群と走行画像データBの物標群を対応付けする。例えば、図7に示すように、走行画像データA、Bから、区画線の端点を求め、図8に示すように、走行画像データA、B間で、区画線の端点の対応付けを行う。そして、対応付いた物標群の位置ずれが最小となるような座標変換情報を相対位置補正量として算出する。位置ずれとしては、例えば区画線の端点の距離の二乗和平均を指標とすることができる。算出した相対位置補正量を用いて、例えば走行画像データAと走行画像データBとの位置合わせを行う(図9参照)。
【0031】
相対車線判定部32は、走行画像データ対の各々について、位置合わせを行った結果に基づいて、走行車線の相対関係を判定する。
【0032】
具体的には、位置合わせを行った走行画像データ対に対して、走行方位、路面画像の重なり率や走行軌跡の距離などを基準に、走行車線の相対関係の判定を行う。走行車線の相対関係として、同一車線、隣接車線、及び対向車線の何れであるかを判定する。例えば、図10に示すように、走行方位が同一であって、重なり率が閾値以上である場合には、同一車線と判定する。また、図11に示すように、走行方位が同一であって、重なり率が0より大きく閾値未満である場合には、隣接車線と判定する。また、走行方位が反対であって、重なり率が0より大きく閾値未満である場合には、対向車線と判定する。それ以外の場合には、何れにも該当しないと判定する。
【0033】
そして、走行画像データ対の各々についての走行車線の相対関係の判定結果を、相対関係判定表に格納する(図12)。図12の例では、各行が1つの走行画像データに対する判定結果で、「同一車線」、「隣接車線」、「対向車線」等の値を持つ。隣接車線の場合は、判定対象が自車線に対して左車線の場合と右車線の区別がある。相対車線判定ができない場合は、空欄となる。すわなち、同一車線と判定された走行画像データ対については値「0」を格納し、対向車線と判定された走行画像データ対については値「-」を格納する。また、隣接車線と判定された走行画像データ対については、一方の走行画像データに対して他方の走行画像データが右側の隣接車線であれば、値「1」を格納し、一方の走行画像データに対して他方の走行画像データが左側の隣接車線であれば、値「2」を格納する。
【0034】
位置関係判定結果修正部34は、走行画像データ対の各々について、当該走行画像データ対の位置合わせを行った各走行画像データの走行軌跡と物標との位置関係により、当該走行画像データ対についての判定結果を修正する。
【0035】
具体的には、図13図15に示すように、位置合わせを行った走行画像データ対の各車両走行軌跡と物標として検出した区画線との位置関係により相対車線判定を行う。図13図14では、各時刻の各車両走行軌跡の進行方向に直交する方向に区画線を探索し、ある区画線に対して同じ側に走行軌跡Aと走行軌跡Bが存在すれば同一車線と判定し、別の側にあれば隣接車線と判定するように修正する例を示している。図15では、対象領域内で同一車線判定結果、隣接車線の判定結果が混在すれば、車線変更ありと判定する例を示している。なお、判定結果を修正するのではなく、当該判定結果を無効にしてもよい。
【0036】
整合性判定結果修正部36は、走行画像データ対の各々についての判定結果の整合性を考慮して、走行車線の相対関係の判定結果を修正する。
【0037】
相対車線判定部32、位置関係判定結果修正部34による判定結果には誤判定が含まれる場合がある。例えば、隣接車線と判定されている走行画像データA、Bに対して、走行画像データCがいずれも同一車線と判定されているなどがある。このような相対車線の判定結果の整合性を考慮することにより、誤判定を排除する。
【0038】
具体的な手順としては次の手順1~手順3が考えられる。
【0039】
(手順1)図16に示す車線グループテーブルを初期化し、登録なしとする。車線グループテーブルでは、グループごとに、同一車線と判定された走行画像データのIDを「同一車線判定ID」に登録し、当該同一車線と判定された走行画像データに対して右側の隣接車線と判定された走行画像データのIDを「右隣接車線判定ID」に登録し、当該同一車線と判定された走行画像データに対して左側の隣接車線と判定された走行画像データのIDを「左隣接車線判定ID」に登録する。また、車線グループテーブルは、走行方位毎に用意されている。
【0040】
(手順2)各走行画像データに対して、同一車線と判定された走行画像データ数を算出し、降順に走行画像データを選択し、後述する手順3を繰り返す。ここで、選択した走行画像データのIDを「I」とする。
【0041】
(手順3)車線グループテーブルから、ID「I」が、「同一車線判定ID」に登録されたグループを探索する。
【0042】
(手順3a)探索結果のグループが存在しなければ、新規の車線グループを生成し、ID「I」を、「同一車線判定ID」に登録し、ID「I」の走行画像データに対して右側の「隣接車線」と判定された走行画像データのIDを、新規の車線グループの「右隣接車線判定ID」に登録し、ID「I」の走行画像データに対して左側の「隣接車線」と判定された走行画像データのIDを、新規の車線グループの「左隣接車線判定ID」に登録する。
【0043】
(手順3b)探索結果のグループが1つだけ存在し、ID「I」の走行画像データに対して右側の「隣接車線」と判定された走行画像データのIDを、当該グループの「右隣接車線判定ID」に登録し、ID「I」の走行画像データに対して左側の「隣接車線」と判定された走行画像データのIDを、当該グループの「左隣接車線判定ID」に登録する。
【0044】
(手順3c)上記以外ならば、車線グループテーブルへの登録は行わない。すなわち、探索結果のグループが2つ以上存在する場合には、誤判定の可能性があるため、車線グループテーブルへの登録は行わない。
【0045】
グループ判定部38は、整合性判定結果修正部36による修正後の判定結果に基づいて、同一の走行車線についての走行画像データからなる車線グループを生成する。
【0046】
具体的には、同一の走行車線と判定されている走行画像データを車線グループとしてグルーピングする。
【0047】
車線構成同定部40は、車線グループ間の相対車線関係を判定する。車線グループ間で隣接車線判定されている車線グループ対を探索し、車線グループ間の相対車線判定を行い、複数の車線グループ間の相対車線判定結果を用いて車線構成を判定する。
【0048】
具体的には、図17に示すように、走行方位毎に、車線グループ間で、一方の車線グループの同一車線判定IDと、他方の車線グループの右隣接車線判定ID又は左隣接車線判定IDとを照合し、車線グループ間の相対車線関係を判定する。
【0049】
図17の例では、車線グループ間で、一方の車線グループの同一車線判定IDと、他方の車線グループの右隣接車線判定ID又は左隣接車線判定IDとを照合した結果に基づいて、複数の車線が並んだレーングループにおいて車線を並べた順に、レーンIDを付与するとともに、当該車線と同一の走行車線と判定された走行画像データの走行IDを車線構成テーブルに登録する例を示している。
【0050】
車線構成同定部40は、車線構成の判定結果を、出力部16により出力する。図18(A)に示すように、走行画像データ対に対する相対車線の判定結果に、誤判定が含まれている場合であっても、図18(B)に示すように、誤判定を取り除いた上で、車線グループ間の相対車線関係の判定結果を、車線構成として出力することができる。
【0051】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0052】
まず、各車両の車載器50において、測位結果の時系列及び撮像画像の時系列を含む走行データを生成する。各車両の車載器50によって生成された多数の走行データが、走行車線判定装置10に送信されると、多数の走行データが、走行データ記憶部22に記憶される。
【0053】
また、走行車線判定装置10は、走行データ記憶部22に記憶された多数の走行データに基づいて、図19に示す走行車線判定処理ルーチンを実行する。走行車線を判定する小領域である対象領域毎に、走行車線判定処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0054】
ステップS100では、領域設定部24は、対象領域を設定する。
【0055】
ステップS102では、物標検出部26は、走行データ記憶部22に記憶された全走行データの内、設定した対象領域内を通過する走行データを取得する。
【0056】
ステップS104では、物標検出部26は、上記ステップS102で取得した走行データの各々に対し、路面画像を生成すると同時に、物標を検出し、生成した路面画像と物標群を含む走行画像データを生成し、走行IDを付与する
【0057】
ステップS106では、走行データ対生成部28は、設定した対象領域について生成した、走行画像データの1対1の走行画像データ対を生成する。
【0058】
ステップS108では、相対位置補正部30は、走行画像データ対の各々について、物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、相対位置補正量を用いて、当該走行画像データ対の各走行画像データの路面画像を重ね合わせる。
【0059】
ステップS110では、相対車線判定部32は、走行画像データ対の各々について、位置合わせを行った結果に基づいて、走行車線の相対関係を判定する。
【0060】
ステップS112では、位置関係判定結果修正部34は、走行画像データ対の各々について、当該走行画像データ対の位置合わせを行った各走行画像データの走行軌跡と物標との位置関係により、当該走行画像データ対についての判定結果を修正する。
【0061】
ステップS114では、整合性判定結果修正部36は、走行画像データ対の各々についての判定結果の整合性を考慮して、走行車線の相対関係の判定結果を修正する。
【0062】
ステップS116では、グループ判定部38は、整合性判定結果修正部36による修正後の判定結果に基づいて、同一の走行車線についての走行画像データからなる車線グループを各々生成する。
【0063】
ステップS118では、車線構成同定部40は、車線グループ間の相対車線関係を判定する。車線構成同定部40は、車線構成の判定結果を、出力部16により出力する。
【0064】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る走行車線判定装置によれば、走行画像データ対の各々について、物標同士を対応付けて相対位置補正量を算出し、相対位置補正量に基づいて、当該走行画像データ対について、走行車線の相対関係を判定し、判定結果に基づいて、同一の走行車線について走行画像データからなるグループを生成すると共に、グループ間の車線関係を判定することにより、収集した各走行の走行データから、各走行の走行車線を精度よく判定することができる。
【0065】
また、収集した走行画像データのうちの1対1の走行画像データ対の位置合わせに基づく走行車線の相対関係の整合性を考慮することにより、誤りの少ない走行車線判定及び車線構成判定ができる。また、自車線周辺のみで走路全体を俯瞰できず、かつ、絶対位置に誤差を持つ走行データ群であっても、各走行の走行車線及び車線構成を判定することができる。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0067】
例えば、位置関係判定結果修正部34を省略して、整合性判定結果修正部36による修正のみとしてもよいし、整合性判定結果修正部36を省略して、位置関係判定結果修正部34による修正のみとしてもよい。また、位置関係判定結果修正部34及び整合性判定結果修正部36を省略して、判定結果の修正を行わずに、車線グループを生成し、車線構成を判定してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 走行車線判定装置
12 通信部
14 コンピュータ
16 出力部
20 走行データ収集部
22 走行データ記憶部
24 領域設定部
26 物標検出部
28 走行データ対生成部
30 相対位置補正部
32 相対車線判定部
34 位置関係判定結果修正部
36 整合性判定結果修正部
38 グループ判定部
40 車線構成同定部
50 車載器
52 GPS受信部
53 ジャイロセンサ
54 撮像装置
60 コンピュータ
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