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  • 特許-チャックユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】チャックユニット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240312BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20240312BHJP
   B65G 47/90 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B25J15/08 A
B25J15/00 F
B65G47/90
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020180115
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071258
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 旭弘
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-279404(JP,A)
【文献】特開平07-242204(JP,A)
【文献】特開2005-059918(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02740439(FR,A1)
【文献】特開2006-269793(JP,A)
【文献】特開2000-344205(JP,A)
【文献】特開2005-283172(JP,A)
【文献】米国特許第05425565(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00-15/08
B65B 5/06-61/00
B65G 47/90-61/00
B65H 31/00-31/30
G01M 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け台(T)上の平面に置かれた複数の直方体状の磁化される前の磁石であるワーク(W)が並列されてなる一群のワーク(G)に対し、列方向の一方及び他方の端面である被チャック端面(S1、S2)を両側から押さえ付けるように把持し、前記一群のワークを移送可能なチャックユニット(10)であって、
前記一群のワークの上方において前記一群のワークの上面に平行に且つ昇降可能に設けられるメインプレート(20)と、
前記メインプレートに支持された一対のチャック爪アーム(33、34)の先端に取り付けられ、前記一群のワークの各前記被チャック端面に当接可能な一対のチャック爪(31、32)と、
少なくとも一方の前記チャック爪を前記ワークの列方向に沿って駆動するアクチュエータ(40)と、
前記一群のワークと前記メインプレートとの間において移動可能に設置され、前記メインプレートの下降に伴って前記一群のワークに向かって移動したとき、前記一群のワークの上面に当接可能なワーク押さえ(50)と、
前記ワーク押さえの下限位置を規制するストッパ(71、72)が設けられており、前記メインプレートに対する前記ワーク押さえの移動を案内するガイドシャフト(61、62)と、
を備え
少なくとも一方の前記チャック爪は前記一群のワークの前記被チャック端面の方向に倣うようにフローティングするチャックユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のワークを独立して保持可能な複数のクランプマシンを備え、間隔を空けて並べられたワークを一度に移送可能な装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、クランプマシンがパレットに載置された全てのワークを一括して保持し、コンテナに移動して載置する移送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-321349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、複数のクランプマシンがそれぞれ独立にワークを保持するものである。これとは別に、並列された複数の直方体状ワークの列方向の両端を把持し、一群のワークを一括して移送する装置がある。一列のワーク数が多く、ワーク同士の接触面積に対する列の長さの比率が比較的大きくなると、チャック時の姿勢が不安定になりやすい。さらに、各ワークの個体ばらつきが重なって重心位置が一方に偏ると、チャックミスが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、並列された複数の直方体状ワークの列方向の両端を把持する装置において、チャックの安定性を確保するチャックユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受け台(T)上の平面に置かれた複数の直方体状の磁化される前の磁石であるワーク(W)が並列されてなる一群のワーク(G)に対し、列方向の一方及び他方の端面である被チャック端面(S1、S2)を両側から押さえ付けるように把持し、一群のワークを移送可能なチャックユニット(10)である。このチャックユニットは、メインプレート(20)、一対のチャック爪(31、32)、アクチュエータ(40)、ワーク押さえ(50)およびガイドシャフト(61、62)を備える。
【0008】
メインプレートは一群のワークの上方において一群のワークの上面に平行に且つ昇降可能に設けられる。一対のチャック爪はメインプレートに支持された一対のチャック爪アーム(33、34)の先端に取り付けられ、一群のワークの各被チャック端に当接可能である。アクチュエータは少なくとも一方のチャック爪をワークの列方向に沿って駆動する。ワーク押さえは一群のワークとメインプレートとの間において移動可能に設置され、メインプレートの下降に伴って一群のワークに向かって移動したとき、一群のワークの上面に当接可能である。ガイドシャフトにはワーク押さえの下限位置を規制するストッパ(71、72)が設けられており、ガイドシャフトはメインプレートに対するワーク押さえの移動を案内する。少なくとも一方のチャック爪は一群のワークの被チャック端面の方向に倣うようにフローティングする。
【0009】
これにより本発明では、一群のワークの上面を揃えて整列させるため、ワーク同士の接触面積に対する列の長さの比率が大きい場合や、ワークの個体ばらつきにより重心が一方に偏った場合でも、チャックの安定性を確保することができる。
【0010】
好ましくは、本発明の少なくとも一方のチャック爪は一群のワークの被チャック端面の方向に倣うようにフローティングする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるチャックユニットの移送対象である「一群のワーク」を示す斜視図。
図2】第1実施形態によるメインプレートが(a)上昇した状態を示す正面図、(b)下降した状態を示す正面図。
図3】ワーク押さえを用いずに「一群のワーク」を移送する場合に各ワークの重心ずれが生じて一部のワークが回転した状態を示す(a)正面図、(b)IIIb方向からみた側面図。
図4】(a)第2実施形態によるチャック爪のフローティング動作を示す正面図、(b)第2実施形態によるチャック爪の斜視図。
図5】その他の実施形態によるメインプレートが(a)上昇した状態を示す正面図、(b)下降した状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複数の実施形態によるチャックユニットを図面に基づいて説明する。このチャックユニットは、複数の直方体状のワークが並列されてなる一群のワークを把持して移送する装置である。
【0013】
(第1実施形態)
図1図3を参照する。図1に示すように、複数の直方体状のワークWが並列してひと固まりとなった一群のワークGが受け台T上の平面に置かれている。例えば受け台Tは部品トレーである。直方体状のワークWは、例えば磁化される前の磁石であり、図1の正面視において幅5mm、高さ14mm、奥行き7mm程度の磁石が約30個、並列されている。つまり磁石同士の接触面積に対する列の長さが比較的長い。なおこの段階では磁化前であるため、磁石同士の間に磁気吸引力は働いていない。後工程で磁化された磁石はブラシレスモータのロータ磁極として用いられる。Cwは一群のワークGの重心線である。
【0014】
並列された一群のワークGの列方向の一方の端面を被チャック端面S1と表し、他方の端面を被チャック端面S2と表す。図2に示すように、チャックユニット10は、一群のワークGの被チャック端面S1及び被チャック端面S2を一対のチャック爪31、32で両側から押し付けるように把持し、例えばトレーからスティックマガジンに移し替える。
【0015】
図2(a)、(b)に示すように、第1実施形態のチャックユニット10は、メインプレート20、一対のチャック爪31、32、「アクチュエータ」としてのシリンダ40、ワーク押さえ50、ガイドシャフト61、62、及び、「弾性部材」としてのコイルばね80を備えている。基本的にチャックユニット10は、図2(a)、(b)の上を天側、下を地側とし、メインプレート20及びワーク押さえ50が略水平となるように設置される。なお、厳密な水平に限らず、実用上許容される程度に傾斜して設置されてもよい。Ccは一対のチャック爪31、32の重心線である。
【0016】
メインプレート20は一群のワークGの上方に設けられ、図示しない昇降装置によって昇降する。図2(a)にメインプレート20が上昇した状態を示し、図2(b)にメインプレート20が下降した状態を示す。Ddはメインプレート20が下降する方向である。一対のチャック爪31、32は、メインプレート20に支持されたチャック爪アーム33、34の先端にL字状をなすように取り付けられる。図2(b)に示す位置で、一方のチャック爪31は一群のワークGの一方の被チャック端面S1に対向し、他方のチャック爪32は一群のワークGの他方の被チャック端面S2に対向する。
【0017】
シリンダ40は、直接又はリンク42を介して、チャック爪アーム34をワークの列方向、すなわちシリンダの進行方向Dsに沿って駆動可能である。シリンダ40の設置位置やリンク42の構成は装置のレイアウトに応じて適宜設計可能である。図中、リンク42を破線で示し、具体的な構成の図示を省略する。また、本実施形態では反対側のチャック爪アーム33はメインプレート20に固定されている。
【0018】
ワーク押さえ50は一群のワークGとメインプレート20との間に移動可能に設置されている。ガイドシャフト61、62は、メインプレート20に形成された摺動孔に嵌合しており、上下方向に摺動可能である。ガイドシャフト61、62の下端はワーク押さえ50に固定されている。図2(a)の位置で、ワーク押さえ50はワーク押さえ50の重力とコイルばね80の引っ張り力とが釣り合った位置に保持されている。この位置を「初期位置」という。
【0019】
メインプレート20が下降する途中、ワーク押さえ50の下面は一群のワークGの上面に当接する。メインプレート20がさらに下降すると、図2(b)に示すように、ワーク押さえ50はメインプレート20に近づくようにDd方向に移動する。このとき、ガイドシャフト61、62はメインプレート20に対するワーク押さえ50の移動を案内する。また、ワーク押さえ50とメインプレート20との距離は初期位置よりも小さくなり、コイルばね80は圧縮される。Duはコイルばね80がワーク押さえ50から受ける力の方向である。
【0020】
こうして、一群のワークGがワーク押さえ50に押さえられた状態で、図2(b)に示すように、シリンダ40はチャック爪アーム34をワークの列方向すなわちシリンダの進行方向Dsに沿って駆動する。その結果、チャック爪アーム34の先端に取り付けられたチャック爪32が一群のワークの被チャック端面S2に当接する。
【0021】
一方、メインプレート20が下降したとき、固定側チャック爪31と被チャック端面S1との間に隙間が残る場合がある。このとき、可動側チャック爪32がシリンダ40に駆動されることで一群のワークGを固定側チャック爪31に向かってスライドさせる。その結果、固定側チャック爪31と被チャック端面S1とが当接する。そして、固定側チャック爪31及び可動側チャック爪32が、一群のワークGの被チャック端面S1、S2を両側から押さえ付けて把持する。そのため、チャックユニット10は一群のワークGを移送可能になる。
【0022】
一群のワークGを移送完了後、メインプレート20が上昇して図2(a)の位置に戻ったとき、コイルばね80は、付勢力によってワーク押さえ50の位置を初期位置に戻す。これにより、1回の移送作業終了後、次の回の移送作業に移る際にメインプレート20とワーク押さえ50の距離がスムーズに初期位置に戻されるため、毎回同じ精度で一群のワークGの上面を押さえることができる。この構成は、ワーク表面への傷つき防止などの理由により、自重では落下しにくい軽量材料でワーク押さえ50を形成した場合などに有効である。
【0023】
図3(a)、(b)を参照し、ワーク押さえ50を用いない場合に生ずる問題について説明する。図3(a)に示すように、片方のチャック爪31を一群のワークGの一方の被チャック端面S1に単に接触させたとき、各ワークW同士の重心が一直線上にない場合がある。その場合、図3(b)に示したように各ワークWに回転モーメントRwが生じて回転してしまい、その結果、各ワークWの重心位置の個体ばらつきが蓄積して一群のワークGの姿勢が不安定になり、チャックミスにつながることが多かった。
【0024】
これに対し、本実施形態では上記の回転現象を防ぐため、ワーク押さえ50が一群のワークGの上面に当接し、整列させてからチャックする。さらに、一群のワークGを持ち上げるときも上面を押さえ続ける。整列させた時の一群のワークG上面をSu、下面をSdとして図3(a)に示す。なおワーク押さえ50は上面を押さえるのみであり、各ワークWが下側に押され過ぎてはみ出すことはない。これにより、チャック爪31、32が一群のワークGの被チャック端面S1及びS2に当接してこれらを押さえ込んだとき、一群のワークGはきれいに整列しているため、安定に挟持しながら移送することが可能である。
【0025】
(第2実施形態)
図4を参照する。図2に示した構成は第1実施形態と共通である一方、チャック爪がフローティング機能を有するところが異なっている。図4(a)に示したように、本実施形態のフローティングチャック爪38はスプリングピン36を介してチャック爪アーム34の先端に連結される着脱式チャック爪であって、スプリングピン36を回転軸として上下にフローティングする。Rcはスプリングピン36の回転方向である。図4(b)にフローティングチャック爪38の外観を示す。
【0026】
複数の直方体状のワークWが並列された一群のワークWをチャックするときの別の課題として、両側の被チャック端面S1、S2の平行度に着目する。このとき、各ワークWの個々の寸法が公差範囲に収まっている場合であっても、一群のワークG全体としてみたとき、ばらつきが累積されるため、一方の被チャック端面S1と他方の被チャック端面S2の平行度が許容範囲を超える場合が生じ得る。そのため、チャック爪の端面を平行に固定した場合、チャック時の面当たり精度を機械的に保証することが難しいという問題があった。
【0027】
これに対し、本実施形態では、少なくとも一方のチャック爪33をフローティングチャック爪38とする。フローティングチャック爪38は対応する被チャック端面S2と当接する端面の向きが被チャック端面S2の方向に倣うように回転可能である。図4の例のフローティングチャック爪38は、ワークWにおける寸法が相対的に大きい上下方向にフローティングし、一群のワークGの被チャック端面S2に倣うようにする。これにより、被チャック端面S2に対して常に平行な面でチャックすることが可能となる。
【0028】
(その他の実施形態)
一群のワークGを移送終了後、ワーク押さえ50の位置を初期位置に戻す弾性部材は、コイルばね80に限らず、ゴム等が用いられてもよい。また、図5(a)、(b)に示すように、ワーク押さえ50の自重による力がガイドシャフト61、62の摺動部の摩擦抵抗よりも大きい構成では、弾性部材を設けなくてもよい。この場合ワーク押さえ50の下限位置を規制するため、ガイドシャフト61、62にストッパ71、72が設けられてもよい。
【0029】
チャック爪を駆動するアクチュエータはシリンダに限らず、モータ、減速ギヤ、ラックアンドピニオン等を組み合わせて構成されてもよい。
【0030】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 ・・・チャックユニット、
20 ・・・メインプレート、
31、32・・・チャック爪、
33、34・・・チャック爪アーム、
40 ・・・シリンダ(アクチュエータ)、
50 ・・・ワーク押さえ、
61、62・・・ガイドシャフト。
図1
図2
図3
図4
図5