(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】燃料配管の保護構造
(51)【国際特許分類】
F02M 63/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F02M63/00 C
(21)【出願番号】P 2020181370
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 良輔
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015210(JP,A)
【文献】特開2013-155666(JP,A)
【文献】特開2020-118067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0175688(US,A1)
【文献】特開2019-120123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167603(US,A1)
【文献】特許第7388558(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第1632675(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00-35/16
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部のダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジン本体と、
前記エンジン本体の後部に取り付けられた吸気マニホールドと、
前記吸気マニホールドの後部の上部に取り付けられた燃料供給部品と、
前記燃料供給部品に連結され、前記燃料供給部品に燃料を導入する燃料配管と、を有する燃料配管の保護構造であって、
前記吸気マニホールドの後部に、車両後方に突出する突出部が一体で形成され、
前記燃料配管は、前記突出部の側方に配置されていることを特徴とする燃料配管の保護構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記燃料配管の後端よりも車両後方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の燃料配管の保護構造。
【請求項3】
前記燃料配管が前記突出部の突出方向の側方の面に固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料配管の保護構造。
【請求項4】
前記突出部は、車両上下方向に延びる複数の縦リブと、車両幅方向に延びる複数の横リブと、が格子状に連結された格子状リブからなり、
前記燃料配管は、最も車両上方に位置する前記横リブの上側側方に沿って車両幅方向に延びるように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の燃料配管の保護構造。
【請求項5】
前記燃料配管は、車両幅方向に延びる第1管部と、前記第1管部から車両上方に延びる第2管部と、を有し、
前記格子状リブは、前記第1管部の車両下方に配置される第1格子状リブと、前記第1管部の側方に配置される第2格子状リブと、を有し、
前記第1格子状リブと前記第2格子状リブとが連結されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料配管の保護構造。
【請求項6】
前記吸気マニホールドは、補機を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記燃料配管よりも車両上方に突出し、
前記エンジン本体を側方から見たとき、前記突出部の後端と前記支持部の後端とを結んだ仮想線よりも車両前方に前記燃料配管が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の燃料配管の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料配管の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料配管の保護構造として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のものは、燃料供給系部品を覆うように吸気マニホールドの外側にプロテクタカバーを備えている。このプロテクタカバーは、樹脂製のカバー本体を有しており、カバー本体裏面には、カバー本体表面側に開口する中空部を内部に備えた突起部が吸気マニホールド側に向けて一体に突設されている。また、中空部にはカバー本体表面側から挿入された金属製補強部材が一体に収容され、突起部先端は上記吸気マニホールドに対して当接又は接近するように位置付けられている。
【0003】
また、吸気マニホールドには、ネジ孔を有するボス部が複数個一体に突設され、プロテクタカバーは吸気マニホールドの外側にインジェクタ及び燃料パイプを覆うように配置された状態で、ボルトを各ボス部のネジ孔に螺合させることで吸気マニホールドに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料配管の保護構造にあっては、プロテクタカバーを新たに設けたことにより部品点数が増加し、これにより重量増加やコスト上昇を引き起こすおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、部品の追加による重量増加やコスト上昇を抑制でき、燃料配管を保護できる燃料配管の保護構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の前部のダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジン本体と、前記エンジン本体の後部に取り付けられた吸気マニホールドと、前記吸気マニホールドの後部の上部に取り付けられた燃料供給部品と、前記燃料供給部品に連結され、前記燃料供給部品に燃料を導入する燃料配管と、を有する燃料配管の保護構造であって、前記吸気マニホールドの後部に、車両後方に突出する突出部が一体で形成され、前記燃料配管は、前記突出部の側方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、部品の追加による重量増加やコスト上昇を抑制でき、燃料配管を保護できる燃料配管の保護構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る燃料配管の保護構造を有するエンジンの背面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る燃料配管の保護構造を有するエンジンの平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る燃料配管の保護構造を有するエンジンの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る燃料配管の保護構造は、車両の前部のダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジン本体と、エンジン本体の後部に取り付けられた吸気マニホールドと、吸気マニホールドの後部の上部に取り付けられた燃料供給部品と、燃料供給部品に連結され、燃料供給部品に燃料を導入する燃料配管と、を有する燃料配管の保護構造であって、吸気マニホールドの後部に、車両後方に突出する突出部が一体で形成され、燃料配管は、突出部の側方に配置されていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る燃料配管の保護構造は、部品の追加による重量増加やコスト上昇を抑制でき、燃料配管を保護できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る燃料配管の保護構造について、図面を用いて説明する。
図1から
図3は、本発明の一実施例に係る燃料配管の保護構造を示す図である。
図1から
図3において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のエンジンの上下前後左右方向である。
【0012】
まず、構成を説明する。
図2において、車両10は、ダッシュパネル11と、このダッシュパネル11の前方に配置されたエンジン1とをその前部に備えている。ダッシュパネル11は、車両上下方向に延びており、エンジン1が配置されるエンジンルームと、ダッシュパネル11の後方の車室とを仕切っている。
【0013】
図3において、エンジン1は、エンジン本体1Aと、このエンジン本体1Aに取り付けられた補機30とを備えている。本実施例では、補機30は、空気を濾過するエアクリーナからなる。
【0014】
図1において、エンジン本体1Aは、シリンダブロック3と、シリンダブロック3の上部に連結されたシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上部に設けられたヘッドカバー4と、シリンダブロック3の下部に連結されたオイルパン5とを備えている。
【0015】
エンジン本体1Aは、シリンダヘッド2およびシリンダブロック3の右端部に装着されたチェーンカバー7を備えており、このチェーンカバー7は、図示しないタイミングチェーンを覆っている。
【0016】
シリンダブロック3には、図示しないピストンを上下動自在に収容する図示しない複数(4つ)の気筒が形成されている。シリンダブロック3には、ピストンの上下運動を回転運動に変換する図示しないクランク軸が収容されており、このクランク軸は左右方向に延びている。
【0017】
複数の気筒は、クランク軸の延伸する左右方向(以下、気筒列方向ともいう)に並んで配置されている。したがって、エンジン1は、車両10のエンジンルームにいわゆる横置きの姿勢で搭載される。
【0018】
シリンダヘッド2の底部には、図示しない複数の燃焼室が設けられている。燃焼室は各気筒の上部に設けられている。本実施例では、シリンダヘッド2には、4つの燃焼室が左右方向に一列に並んで設けられている。
【0019】
シリンダヘッド2の後部には、図示しない吸気ポートが気筒ごとに設けられている。シリンダヘッド2における車両前方側の面には、図示しない排気ポートが設けられている。エンジン1は、吸気ポートから取入れた空気と燃料とからなる混合気を図示しない点火プラグによって点火して燃焼させ、燃焼後の排気ガスを排気ポートから排出する。
【0020】
図1、
図2、
図3において、エンジン1は吸気マニホールド20を備えている。吸気マニホールド20は、エンジン本体1Aのシリンダヘッド2の後部に取り付けられており、補機30(
図3参照)で濾過された空気をシリンダヘッド2の各吸気ポートに分配している。
【0021】
吸気マニホールド20は、導入された空気を一時的に貯留するサージタンク20Aと、このサージタンク20Aから分岐する4つの多岐部20Bとを有している。多岐部20Bは、サージタンク20Aを周回するように、サージタンク20Aの前部から順次、下方、後方、上方、前方に延び、シリンダヘッド2に接続されている。
【0022】
エンジン1は、燃料供給部品22を備えている。燃料供給部品22は、吸気マニホールド20の後部の上部に取り付けられており、気筒列方向に延びている。本実施例では、燃料供給部品22は、吸気ポートに燃料を噴射するインジェクタに燃料を供給するデリバリーパイプからなる。
【0023】
エンジン1は燃料配管21を備えており、燃料配管21は、燃料供給部品22の気筒列方向の中央部に連結されている。燃料配管21は、図示しない燃料ポンプから圧送される燃料を燃料供給部品22に導入している。
【0024】
図1、
図2において、吸気マニホールド20の後部には、車両後方に突出する格子状リブ25が一体で形成されている。
図3において、格子状リブ25は、燃料配管21の後端21Dよりも車両後方に突出している。格子状リブ25は本発明における突出部を構成している。
【0025】
燃料配管21は、格子状リブ25の側方に配置されている。ここで、格子状リブ25の側方とは、格子状リブ25の突出方向である後方に直交する方向である。本実施例では、燃料配管21は、格子状リブ25の上方に配置されている。
【0026】
燃料配管21は、格子状リブ25の側方の面に固定されている。本実施例では、燃料配管21は、格子状リブ25の上面に固定用クランプ21Cによって固定されている。
【0027】
図1において、格子状リブ25は、車両上下方向に延びる複数の縦リブ23A、24Aと、車両幅方向に延びる複数の横リブ23B、24Bとを有している。縦リブ23Aは横リブ23Bと格子状に連結されている。縦リブ24Aは横リブ24Bと格子状に連結されている。燃料配管21は、最も車両上方に位置する横リブ23Bの上側の側方に沿って車両幅方向に延びるように配置されている。
【0028】
図1、
図2において、燃料配管21は、車両幅方向に延びる第1管部21Aと、第1管部21Aの右端部から車両上方に延びる第2管部21Bと、を有している。第2管部21Bは、その上端部が燃料供給部品22の気筒列方向の中央部に連結されている。格子状リブ25は、第1管部21Aの車両下方に配置される第1格子状リブ23と、第1管部21Aの右側の側方に配置される第2格子状リブ24と、を有している。第1格子状リブ23と第2格子状リブ24とは連結されている。第1格子状リブ23は、縦リブ23Aおよび横リブ23Bから構成されている。第2格子状リブ24は、縦リブ24Aおよび横リブ24Bから構成されている。
【0029】
詳しくは、
図1に示すようにエンジン1を背面から見た状態で、格子状リブ25は、車両幅方向に延びる第1格子状リブ23と、この第1格子状リブ23の右端部から車両上方に延びる第2格子状リブ24とをL字状に連結した形状を有している。このため、格子状リブ25は、第1格子状リブ23の上側の側方であって第2格子状リブ24の左側の側方に空間Sを形成している。そして、この空間Sに燃料配管21の第1管部21Aおよび第2管部21Bが収容されている。したがって、格子状リブ25は、第1格子状リブ23によって第1管部21Aを下方から覆い、第2格子状リブ24によって第2管部21Bを右方から覆っている。
【0030】
図1において、吸気マニホールド20は、補機30を支持する支持部26、27を有しており、支持部26、27は、燃料配管21よりも車両上方に突出している。
【0031】
図3に示すように、エンジン本体1Aを側方から見たとき、燃料配管21は、格子状リブ25の後端25Aと支持部26の後端26Aとを結んだ仮想線Lよりも車両前方に配置されている。
【0032】
以上説明したように、本実施例では、吸気マニホールド20の後部に、車両後方に突出する格子状リブ25が一体で形成され、燃料配管21は、格子状リブ25の側方に配置されている。
【0033】
これにより、車両10の前方衝突時に、エンジン1がその車両後方のダッシュパネル11側に押し込まれて吸気マニホールド20の後部の格子状リブ25がダッシュパネル11に接触した場合、格子状リブ25の側方(上方)には、燃料配管21がダッシュパネル11および吸気マニホールド20に干渉しない空間Sが確保される。このため、燃料配管21が吸気マニホールド20とダッシュパネル11との間に挟まれて損傷することを防止できる。
【0034】
また、格子状リブ25が吸気マニホールド20に一体で形成されているため、格子状リブ25を吸気マニホールド20と別体で作成する必要がなくなり、部品点数の増加を防止できる。
【0035】
この結果、部品の追加による重量増加やコスト上昇を抑制でき、燃料配管21を保護できる。
【0036】
また、本実施例では、格子状リブ25は、燃料配管21の後端21Dよりも車両後方に突出している。
【0037】
これにより、車両10の前方衝突時に、燃料配管21が配置される空間Sが維持されるので、確実に燃料配管21を保護できる。
【0038】
また、本実施例では、燃料配管21が格子状リブ25の側方の面に固定されている。
【0039】
これにより、燃料配管21を格子状リブ25に固定することにより、燃料配管21の位置を空間S内に固定できるので、確実に燃料配管21を保護できる。
【0040】
また、本実施例では、格子状リブ25は、車両上下方向に延びる複数の縦リブ23A、24Aと、車両幅方向に延びる複数の横リブ23B、24Bと、が格子状に連結された構造を有している。また、燃料配管21は、最も車両上方に位置する横リブ23Bの上側側方に沿って車両幅方向に延びるように配置されている。
【0041】
このように、格子状リブ25を、縦リブ23A、24Aと横リブ23B、24Bとが格子状に連結された構造とすることにより、格子状リブ25の車両前後方向への圧縮荷重に対する強度を向上させることができる。このため、ダッシュパネル11との接触により格子状リブ25が潰れるように変形することを抑制でき、燃料配管21が配置される空間Sが縮小することを抑制できるので、確実に燃料配管21を保護できる。
【0042】
また、格子状リブ25が一体で形成されていることにより吸気マニホールド20の剛性が向上するため、吸気マニホールド20の振動とこれに伴う騒音を抑制できる。
【0043】
また、本実施例では、燃料配管21は、車両幅方向に延びる第1管部21Aと、第1管部21Aから車両上方に延びる第2管部21Bと、を有している。また、格子状リブ25は、第1管部21Aの車両下方に配置される第1格子状リブ23と、第1管部21Aの側方に配置される第2格子状リブ24と、を有し、第1格子状リブ23と第2格子状リブ24とが連結されている。
【0044】
これにより、第1管部21Aの車両下方に第1格子状リブ23が配置されるだけでなく、第2管部21Bの右側の側方に第2格子状リブ24が配置されるので、第1格子状リブ23と第2格子状リブ24とをL字状に連結された格子状リブ25により、空間Sを形成することができる。そして、空間Sに配置された燃料配管21を格子状リブ25によって下方および右方から覆うことができる。このため、確実に燃料配管21を保護できる。
【0045】
また、第1格子状リブ23および第2格子状リブ24からなる格子状リブ25が形成されていることにより吸気マニホールド20の剛性が向上するため、吸気マニホールド20の振動とこれに伴う騒音を抑制できる。
【0046】
また、本実施例では、吸気マニホールド20は、補機30を支持する支持部26を有しており、この支持部26は、燃料配管21よりも車両上方に突出している。また、エンジン本体1Aを側方から見たとき、格子状リブ25の後端25Aと支持部26の後端26Aとを結んだ仮想線Lよりも車両前方に燃料配管21が配置されている。
【0047】
これにより、車両10の前方衝突時に、吸気マニホールド20よりも先に格子状リブ25および支持部26がダッシュパネル11に接触するため、仮想線Lよりも前方の燃料配管21が配置される空間Sを確実に維持することができ、確実に燃料配管21を保護できる。
【0048】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0049】
1A...エンジン本体、10...車両、11...ダッシュパネル、20...吸気マニホールド、21...燃料配管、21A...第1管部、21B...第2管部、21D...燃料配管の後端、22...燃料供給部品、23...第1格子状リブ、23A...縦リブ、23B...横リブ、24...第2格子状リブ、24A...縦リブ、24B...横リブ、25...格子状リブ、25A...格子状リブの後端、26...支持部、26A...支持部の後端、30...補機、L...仮想線