(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】通信機
(51)【国際特許分類】
H01R 12/51 20110101AFI20240312BHJP
H01Q 1/20 20060101ALI20240312BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01R12/51
H01Q1/20
H01Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2020183902
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小出 士朗
(72)【発明者】
【氏名】地高 弘樹
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-150475(JP,U)
【文献】国際公開第2018/150866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00,12/50-91
H01R 24/00-24/86
H01Q 1/20
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ(21,21a,21b,21c,21d)と、
前記アンテナへの給電用のアンテナ給電用接続構造体(35)とを含む通信機であって、
前記アンテナ給電用接続構造体は、
前記アンテナへの給電に用いられる給電線(33)が設けられる回路基板(3)と、
前記回路基板に設けられる貫通孔(301)の内部に少なくとも一部が配置される、導電性を有する金属部材(32)とを備え、
前記アンテナの給電部としての突形状の導電体(41)は、前記回路基板以外の前記通信機に組み付けられる筐体(2
)に設けられ、
前記金属部材は、前記給電線に接続され、
前記貫通孔は、前記導電体を挿入できる広さの開口面を有し、
前記金属部材は、前記貫通孔の内部に配置される部位として、前記貫通孔の軸方向と直交する方向に対向して配置される少なくとも一対の腕部(322,322a)を有し、
前記腕部は、可撓性を有し、互いに対向する側と逆側に撓むものであり、
前記貫通孔に挿入される前記導電体を、互いに対向する前記腕部で挟持する通信機。
【請求項2】
請求項1において、
前記腕部は、互いに対向する前記腕部同士の間隔が、前記貫通孔のうちの、前記導電体を挿入する側の挿入口(3011)から、この間隔が最短となる部位(3012)にかけて、徐々に狭まっていくように設けられている
通信機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記腕部は、互いに対向する側に一部が凸状に突き出す凸部(3221)を有している
通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、アンテナが筐体内に収容された通信機が知られている。また、通信機として、同じ回路基板上にアンテナとアンテナで受信した信号を処理するための通信モジュールとを配置したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同じ回路基板上にアンテナと通信モジュールとが配置される場合、アンテナ及び通信モジュール以外の電子部品を配置できるスペースが狭くなってしまう。この問題を解決するために、アンテナを、通信モジュールが配置される基板以外の、通信機に組み付けられる部材に設けることが考えられる。この場合、通信モジュールから配線される給電線と、アンテナ側の給電部とを、位置合わせして接触させる必要が生じる。しかしながら、通信モジュールが配置される基板及びアンテナが設けられる部材を通信機に組み付けながらこの位置合わせを容易に行うためには、電気的な接触を確保しつつ位置ずれを吸収可能となっている必要があると考えられる。
【0005】
このような要求に応えるために、給電線とアンテナ側の給電部との接続部品として、導電性及び可撓性を有する金属材で形成される、
図6に記載のような形状のクリップ端子200を基板上に設けることが考えられる。このクリップ端子200は、
図6のX方向に対向して配置される腕部201a,201bの間に挿入された挟持対象を、各腕部201a,201bに設けられる凸部で挟むことで保持可能となっている。このクリップ端子200は、可撓性を有することで、X方向の位置ずれを吸収可能となっている。また、このクリップ端子200は、X方向に対向して配置される腕部201a,201bの間に挟持対象を挟むので、挟持対象がY方向に移動可能となっている。つまり、Y方向の位置ずれを吸収可能となっている。
【0006】
しかしながら、上述のクリップ端子200には、以下のような問題がある。クリップ端子200では、位置ずれを吸収可能となるものの、通信機が振動する場合に、挟持対象との接触箇所が摩耗しやすい。よって、摩耗による金属カスが基板上に付着し、ショート不良を生じさせるおそれがある。他にも、クリップ端子200では、Y方向の移動を止める部材がないので、Y方向のずれが大きくなり過ぎて挟持対象の保持が不十分になるおそれがある。また、クリップ端子200では、Y方向のずれを小さくするために部品を追加すると大型化し、アンテナインピーダンスのずれが大きくなってしまうおそれがある。
【0007】
この開示のひとつの目的は、アンテナ側の給電部と給電線との接続を、位置合わせを容易にしながらも保持を行い易くしつつ、アンテナインピーダンスのずれの抑制、且つ、ショート不良の抑制を可能にする通信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の通信機は、アンテナ(21,21a,21b,21c,21d)と、アンテナへの給電用のアンテナ給電用接続構造体(35)とを含む通信機であって、アンテナ給電用接続構造体は、アンテナへの給電に用いられる給電線(33)が設けられる回路基板(3)と、回路基板に設けられる貫通孔(301)の内部に少なくとも一部が配置される、導電性を有する金属部材(32)とを備え、アンテナの給電部としての突形状の導電体(41)は、回路基板以外の通信機に組み付けられる筐体(2)に設けられ、金属部材は、給電線に接続され、貫通孔は、導電体を挿入できる広さの開口面を有し、金属部材は、貫通孔の内部に配置される部位として、貫通孔の軸方向と直交する方向に対向して配置される少なくとも一対の腕部(322,322a)を有し、腕部は、可撓性を有し、互いに対向する側と逆側に撓むものであり、貫通孔に挿入される導電体を、互いに対向する腕部で挟持する。
【0011】
これらによれば、回路基板に設けられる貫通孔の内部に配置される腕部で、アンテナの給電部としての突形状の導電体を挟持することになる。この腕部を有する金属部材は、給電線と接続されるので、アンテナ側の給電部と給電線との接続を行うことが可能になる。振動によって腕部と導電体とが摩耗して金属カスが発生した場合でも、腕部が貫通孔の内部に配置されるため、この金属カスは貫通孔の内部で発生する。よって、金属カスが回路基板上には付着しにくくなり、ショート不良が生じにくくる。また、上述の導電体を、互いに対向する腕部で挟持するので、腕部で挟まれない方向の位置ずれを吸収することが可能になる。腕部で挟まれる方向については、腕部が可撓性を有し、互いに対向する側と逆側に撓むので、この方向についても位置ずれを吸収することが可能になる。さらに、上述の導電体は貫通孔に挿入された状態で腕部に挟持されるので、位置ずれの範囲は貫通孔の内部に留まる。よって、位置ずれを吸収することを可能にしながらも、導電体の保持を行いやすくなる。他にも、貫通孔の内部にこのような腕部を設けることで、位置ずれを吸収することを可能にしながらも、導電体の保持を行いやすくなるので、給電線とアンテナ側の給電部との接続部品を大型化せずに済む。よって、アンテナインピーダンスのずれが大きくなることを抑えることも可能になる。その結果、アンテナ側の給電部と給電線との接続を、位置合わせを容易にしながらも保持を行い易くしつつ、アンテナインピーダンスのずれの抑制、且つ、ショート不良の抑制を可能にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】通信機1の概略的な構成の一例を示す模式図である。
【
図2】第1導電体41の形状の一例を説明するための図である。
【
図3】アンテナ給電用接続構造体35の上面図である。
【
図4】実施形態1における
図2のII-II線断面図の一例である。
【
図5】実施形態2における
図2のII-II線断面図の他の一例である。
【
図6】クリップ端子200の参考例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0014】
(実施形態1)
<通信機1の概略構成>
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、通信機1は、筐体2、第1基板3、及び第2基板4を備える。この通信機1が通信機に相当する。
図1では、説明の便宜上、実際は接触している部材間の距離を離すなどして、通信機1を模式的に示している。
図1の点線の矢印で示している部材間は、実際は接触している。本実施形態では、通信機1が車両で用いられる場合を例に挙げて説明する。通信機1は、例えば車両のダッシュボードの内部若しくは下部で用いる。
【0015】
<筐体2の概略構成>
筐体2は、第1基板3及び第2基板4を併せて蓋う。筐体2としては、例えば樹脂を用いればよい。
図1の例では、筐体2は、底のない箱型の形状である。この場合、第1基板3を箱の底にして、筐体2によって第1基板3及び第2基板4を蓋う構成とすればよい。
図1の例での筐体2、第1基板3、及び第2基板4の配置は、箱の底にあたる方向を下方とした場合、上方から、上蓋としての筐体2、第2基板4、底としての第1基板3の順に配置される。以降では、この上方が車両の天井方向,下方が車両の床方向であるものとする。
【0016】
筐体2には、アンテナ21が設けられる。つまり、通信機1は、アンテナ21も備える。
図1の例では、アンテナ21は、筐体2のうちの車両の天井方向に位置する面(以下、筐体上面)2Uに設けられている。より詳しくは、アンテナ21は、筐体上面2Uのうちの筐体2の内側の面に設けられる構成とすればよい。アンテナ21は、筐体2と一体構成される構成とすればよい。例えば、アンテナ21はインサート成形によって筐体2と一体構成される。
図1の例では、アンテナ21として、アンテナ21a、アンテナ21b、アンテナ21c、及びアンテナ21dを備える。つまり、
図1の例の通信機1は、複数のアンテナを集中管理する統合通信機である。これらのアンテナ21の例としては、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ,電話アンテナ,Wi-Fi(登録商標)アンテナ等が挙げられる。アンテナ21には、異なる周波数の電波を送受信する複数の電話アンテナを含んでもよい。
【0017】
<第1基板3の概略構成>
第1基板3は、回路基板である。第1基板3は、例えば略長方形をなす平面形状とする。第1基板3には、絶縁性を有する基材の面に所定の配線パターンが形成されている。第1基板3は、筐体2にビスなどの固定部材で固定される。第1基板3は、通信機1において、第2基板4よりも下方に配置される。第1基板3の面から筐体上面2Uまでの高さは、例えば20mm程度とすればよい。
【0018】
第1基板3には、
図1に示すように、通信モジュール31及び給電ポート32が設けられる。つまり、通信機1は、通信モジュール31及び給電ポート32も備える。通信モジュール31は、第1基板3の面のうちの上方の面(以下、表面)に設けられる。
【0019】
通信モジュール31は、アンテナ21で受信した信号を処理する。通信モジュール31は、複数の電子部品により構成されるモジュールとする。通信モジュール31には、通電すると発熱する発熱素子も含む。
【0020】
給電ポート32は、第1基板3に設けられるスルーホールの内部に少なくとも一部が配置される、導電性を有する金属部材である。スルーホールは貫通孔と言い換えることができる。給電ポート32は、通信モジュール31から配線される。給電ポート32は、第1基板3の表面に設けられたパターン線33によって通信モジュール31と接続されている。パターン線33とは、銅箔などにより形成され、電気信号が流れる信号線である。このパターン線33が給電線に相当する。給電ポート32は、パターン線33と電気的に接続される。この給電ポート32は第1基板3の面のうちの下方の面(以下、裏面)に設けられるものであってもよいし、表面に設けられるものであってもよい。給電ポート32と第1基板3とからなる、アンテナ21への給電用の接続構造体を、以下ではアンテナ給電用接続構造体35と呼ぶ。アンテナ給電用接続構造体35の詳細について後述する。
【0021】
給電ポート32としては、
図1に示すように、複数のアンテナ21a~21dに対応して、給電ポート32a~32d及びパターン線33a~33dが設けられる。給電ポート32aはパターン線33aによって通信モジュール31に接続される。給電ポート32bはパターン線33bによって通信モジュール31に接続される。給電ポート32cはパターン線33cによって通信モジュール31に接続される。給電ポート32dはパターン線33dによって通信モジュール31に接続される。給電ポート32は、通信モジュール31からの配線が容易になるように、通信モジュール31の近傍に設けることが好ましい。
【0022】
<第2基板4の概略構成>
第2基板4も、回路基板である。第2基板4も、例えば略長方形をなす平面形状とする。第2基板4には、絶縁性を有する基材の面に所定の配線パターンが形成されている。第2基板4も、筐体2にビスなどの固定部材で固定される。第2基板4は、通信機1において、第1基板3よりも上方に配置される。つまり、第2基板4は、第1基板3の面のうちの通信モジュール31が配置される表面側に、第1基板3と離間して設けられる。第2基板4の面から筐体上面2Uまでの高さは、例えば5mm程度とすればよい。
【0023】
第1基板3と第2基板4とは、
図1に示すように、お互いの面が並行するように配置される。なお、第1基板3と第2基板4とは、後述する第1導電体41と給電ポート32とが接触できる位置関係であれば、一方の面が他方の面に対して傾いて配置されても構わない。第2基板4は、アンテナ21と第1基板3との間に、第1基板3側から見てアンテナ21を遮るように配置されることが好ましい。
【0024】
第2基板4には、
図1に示すように、第1導電体41、第2導電体42、及びパターン線43が設けられる。つまり、通信機1は、第1導電体41、第2導電体42、及びパターン線43も備える。第2導電体42及びパターン線43は、第2基板4の面のうちの上方の面(以下、表面)に設けられる。第2基板4の表面が非対向面に相当する。第1導電体41については後述する。第2基板4の面のうちの下方の面(以下、裏面)には、GNDが設けられる。第2基板4の裏面が対向面に相当する。このGNDは、箔を含む平板上の金属導体であることが好ましい。また、このGNDは第2基板4の裏面全体に設けられていることが好ましい。第2基板4が、第1基板3側から見てアンテナ21を遮るように配置され、裏面にGNDとして機能する平板上の金属導体が設けられることで、アンテナ21に対しての、第1基板3に設けられる電子部品からのノイズの影響をシールドすることが可能になる。
【0025】
第1導電体41は、パターン線43に接続される導電体である。第1導電体41は、通信機1の組み付け時に、給電ポート32が設けられる第1基板3のスルーホールと対向するように配置されている。なお、通信機1の組み付け時に、給電ポート32が設けられる第1基板3のスルーホールが第1導電体41と対向するように配置されていると言い換えることもできる。
【0026】
本実施形態の例では、第1導電体41は、パターン線43に接続される第2基板4の表面側から裏面側に、第2基板4を貫通して突き出るように設けられている。そして、第1導電体41のうちのこの裏面側に突き出る突形状の部分が、第1基板3のスルーホールに挿入されることで、このスルーホール内部に配置される給電ポート32の部位と接触するように配置されている。通信機1の組み付けには、第1基板3のスルーホールに第2基板4の第1導電体41が挿入されることが必要となっている。
【0027】
第1導電体41としては、導体で構成されるピンを用いることができる。ピンの形状としては、第1基板3のスルーホールに挿入することができる突形状であればよい。一例として、ピンの形状は、円柱状であってもよいし、円筒状であってもよいし、板状であってもよい。また、ピンの形状は、後述の腕部322に挟持された際に抜けにくくなるように、
図2に示すように先端の幅が広くなった形状であってもよい。
図2は、第1導電体41の形状の一例を説明するための図である。
図2の矢印の方向が、第1基板3のスルーホールに第1導電体41を挿入する際の先端方向にあたる。
【0028】
第1導電体41としては、
図1に示すように、複数のアンテナ21a~21dに対応して、第1導電体41a~41dが設けられる。第1導電体41aは、給電ポート32aに対応する。第1導電体41bは、給電ポート32bに対応する。第1導電体41cは、給電ポート32cに対応する。第1導電体41dは、給電ポート32dに対応する。
【0029】
第2導電体42も、パターン線43に接続される導電体である。第2導電体42は、パターン線43のうちの第1導電体41と接する端点とは別の端点と接する。第2導電体42は、通信機1において、アンテナ21と接触するように配置されている。第2導電体42は、筐体2に第2基板4が組付けられた状態において、筐体2に設けられたアンテナ21と接触するように配置されている。なお、アンテナ21が、第2導電体42と接触するように配置されていると言い換えることもできる。第2導電体42としては、導体で構成されるガスケット,ばね接点等を用いることができる。一例として、第2導電体42はばね接点であるものとする。
【0030】
第2導電体42としては、
図1に示すように、複数のアンテナ21a~21dに対応して、第2導電体42a~42dが設けられる。第2導電体42aは、アンテナ21aに接触する。第2導電体42bは、アンテナ21bに接触する。第2導電体42cは、アンテナ21cに接触する。第2導電体42dは、アンテナ21dに接触する。
【0031】
パターン線43は、アンテナ21への給電に用いられる。本実施形態の例では、パターン線43は、第2導電体42を介した間接的なアンテナ21への給電に用いられる。パターン線とは、銅箔などにより形成され、電気信号が流れる信号線である。パターン線43は、RF線と言い換えることができる。
【0032】
パターン線43としては、
図1に示すように、複数のアンテナ21a~21dに対応して、パターン線43a~43dが設けられる。パターン線43aは、一方の端点で第1導電体41aに接触し、他方の端点で第2導電体42aに接触する。パターン線43bは、一方の端点で第1導電体41bに接触し、他方の端点で第2導電体42bに接触する。パターン線43cは、一方の端点で第1導電体41cに接触し、他方の端点で第2導電体42cに接触する。パターン線43dは、一方の端点で第1導電体41dに接触し、他方の端点で第2導電体42dに接触する。
【0033】
通信機1は、筐体2に第1基板3及び第2基板4が組付けられた状態においては、以下のように電気的に接続されることになる。アンテナ21aは、第2導電体42a、パターン線43a、第1導電体41a、及び給電ポート32aを介して、通信モジュール31と電気的に接続されることになる。アンテナ21bは、第2導電体42b、パターン線43b、第1導電体41b、及び給電ポート32bを介して、通信モジュール31と電気的に接続されることになる。アンテナ21cは、第2導電体42c、パターン線43c、第1導電体41c、及び給電ポート32cを介して、通信モジュール31と電気的に接続されることになる。アンテナ21dは、第2導電体42d、パターン線43a、第1導電体41d、及び給電ポート32dを介して、通信モジュール31と電気的に接続されることになる。
【0034】
第2導電体42、パターン線43、及び第1導電体41は、第1導電体41で給電ポート32と電気的に接続されることになるので、アンテナ21の一部として機能する。よって、第1導電体41は、アンテナ21の給電部にあたる。
【0035】
<アンテナ給電用接続構造体35の概略構成>
続いて、
図3及び
図4を用いて、アンテナ給電用接続構造体35の概略的な構成について説明する。
図3及び
図4は模式図であって、第1基板3のうちの1つの給電ポート32の周辺を切り出した図である。
図3は、アンテナ給電用接続構造体35の上面図である。
図4は、実施形態1における
図2のII-II線断面図である。
【0036】
図3に示すように、アンテナ給電用接続構造体35は、第1基板3及び給電ポート32から構成される。より詳しくは、第1基板3のうちのスルーホール301の部位と給電ポート32とから構成される。本実施形態では、スルーホール301が円柱状の貫通孔である場合を例に挙げて説明を行うが、スルーホール301は四角柱等の他の形状の貫通孔であってもよい。スルーホール301は、開口面の広さが、第1導電体41を挿入できる広さに設けられている。ここで言うところの第1導電体41を挿入できるとは、第1導電体41を、スルーホール301の開口面の縁との間に所定のマージンを残して挿入できることを指す。所定のマージンは、位置ずれを許容する範囲として所望される範囲に応じて定まる値であって、任意に設定可能な値である。
【0037】
給電ポート32は、一部が
図3に示すように、スルーホール301の周囲に設けられ、パターン線33と接続される。給電ポート32のうちの、スルーホール301の周囲に配置される部位を周辺部321と呼ぶ。一方、給電ポート32のうちの、
図4に示すようにスルーホール301の内部に配置される部位を、腕部322と呼ぶ。
【0038】
腕部322としては、スルーホール301の軸方向と直交する方向に、対向して配置される少なくとも一対の腕部322を有するものとする。ここで言うところの対向とは、対になった腕部322の間に第1導電体41を挟み込むことのできる位置関係を示す。腕部322は、複数対であってもよい。また、腕部322は、2本の腕部322で1対となっている構成に限らない。例えば1本の腕部322と2本の腕部322とで1対となっている構成であってもよい。
【0039】
腕部322は、1本の腕部322同士が対向して配置される1対の腕部322であることが好ましい。これは、腕部322の数が多くなるほど、給電ポート32を構成する金属部材が大型化し、アンテナインピーダンスのずれが大きくなりやすくなるためである。以下では、腕部322は、1本の腕部322同士が対向して配置される1対の腕部322であるものとして説明を行う。
【0040】
腕部322は、対になる腕部322同士が、互いの正面に位置する構成に限らないが、互いの正面に位置することが好ましい。これは、対になる腕部322同士が、互いの正面に位置する場合は、互いの正面に位置しない場合に比べて、給電ポート32を構成する金属部材を小型化しやすくなるためである。以下では、腕部322は、対になる腕部322同士が、互いの正面に位置するものとして説明を行う。
【0041】
腕部322は、給電ポート32の一部であるので、金属部材の一部である。よって、腕部322は、導電性を有する。また、腕部322は、可撓性を有する。腕部322は、互いに対向する側と逆側に撓むものとする。つまり、スルーホール301の軸側から内壁側に撓むものとする。給電ポート32は、スルーホール301に挿入される第1導電体41を、互いに対向するこの腕部322で挟持する。第1導電体41を挟持するために、互いに対向する腕部322間の間隔は、スルーホール301に挿入される第1導電体41の、腕部322が対向する方向の幅以下となるように配置されている。なお、互いに対向する腕部322間の間隔は、0であってもよいし、0よりも大きい値であってもよい。
【0042】
腕部322は、
図4に示すように、互いに対向する腕部322同士の間隔が、スルーホール301のうちの、第1導電体41を挿入する側の挿入口3011から、この間隔が最短となる部位3012にかけて、徐々に狭まっていくように設けられていることが好ましい。言い換えると、お互いに対向する腕部322がスルーホール301の軸側に傾斜するように配置されていることが好ましい。これによれば、腕部322の傾斜で導かれることにより、スルーホール301に挿入される第1導電体41を、この第1導電体41を挟持する部位までスムーズに挿入することが可能になる。
【0043】
また、腕部322は、
図4に示すように、互いに対向する側に一部が凸状に突き出す凸部3221を有していることが好ましい。これによれば、凸部3221がスルーホール301の軸側に突き出している分だけ、腕部322が可撓性を有している場合でも、スルーホール301の内壁側への移動が制限される。よって、第1導電体41の位置ずれを吸収しながらも、第1導電体41の移動性を制限して保持を行いやすくなる。
【0044】
なお、
図5に示すように、互いに対向する側に一部が凸状に突き出す凸部3221を有さない構成であってもよい。この構成を採用する場合であっても、腕部322aは、
図5に示すように、互いに対向する腕部322a同士の間隔が、スルーホール301のうちの、第1導電体41を挿入する側の挿入口3011から、この間隔が最短となる部位3012にかけて、徐々に狭まっていくように設けられていることが好ましい。
【0045】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、第1基板3に設けられるスルーホール301の内部に配置される腕部322,322aで、アンテナ21の給電部としての突形状の第1導電体41を挟持することになる。この腕部322,322aを有する金属部材である給電ポート32は、給電線であるパターン線33と接続されるので、アンテナ21側の給電部と給電線との接続を行うことが可能になる。振動によって腕部322,322aと第1導電体41とが摩耗して金属カスが発生した場合でも、腕部322,322aがスルーホール301の内部に配置されるため、この金属カスはスルーホール301の内部で発生する。よって、金属カスが第1基板3上には付着しにくくなり、第1基板3の表面の配線でのショート不良が生じにくくる。また、第1導電体41を、互いに対向する腕部322,322aで挟持するので、腕部322,322aで挟まれない方向の位置ずれを吸収することが可能になる。腕部322,322aで挟まれる方向については、腕部322,322aが可撓性を有し、互いに対向する側と逆側に撓むので、この方向についても位置ずれを吸収することが可能になる。さらに、第1導電体41はスルーホール301に挿入された状態で腕部322に挟持されるので、位置ずれの範囲はスルーホール301の内部に留まる。よって、位置ずれを吸収することを可能にしながらも、第1導電体41の保持を行いやすくなる。他にも、スルーホール301の内部にこのような腕部322,322aを設けることで、位置ずれを吸収することを可能にしながらも、第1導電体41の保持を行いやすくなるので、給電線とアンテナ21側の給電部との接続部品を大型化せずに済む。よって、アンテナインピーダンスのずれが大きくなることを抑えることも可能になる。その結果、アンテナ21側の給電部と給電線との接続を、位置合わせを容易にしながらも保持を行い易くしつつ、アンテナインピーダンスのずれの抑制、且つ、ショート不良の抑制を可能にすることが可能になる。
【0046】
また、アンテナ21の数が増加するほど、アンテナ21側の給電部と給電線との接続箇所との位置合わせを同時に行わければならない箇所が増え、通信機1の組み付けが困難になる。これに対して、実施形態1の構成によれば、アンテナ21側の給電部と給電線との接続箇所との位置ずれを吸収することで、アンテナ21が複数であっても、通信機1の組み付けを容易にすることができる。
【0047】
さらに、実施形態1の構成によれば、アンテナ21への給電に用いられるパターン線43が、通信モジュール31が設けられる第1基板3とは別の第2基板4に設けられるので、通信モジュール31を配置する回路基板上での電子部品を配置できるスペースをより広くすることが可能になる。また、このパターン線43は、通信モジュール31が設けられる第1基板3とは別の第2基板4に設けられるので、通信モジュール31を配置する回路基板上の電子部品からのノイズの影響を受けにくくなる。よって、アンテナ21で受信した信号が、この電子部品からのノイズの影響を受けにくくなる。さらに、第1基板3に設けられる、通信モジュール31から配線される給電ポート32と、第2基板4に設けられる、パターン線43に接続される第1導電体41との接触によってアンテナ21に給電がなされるので、通信モジュール31から給電ポート32までの配線を短くしても給電を行うことができる。よって、通信モジュール31を配置する回路基板上の電子部品を避けて配線しなければならない煩わしさを低減することが可能になる。その結果、通信モジュール31とアンテナ21とを繋ぐ配線を容易にするとともに、通信モジュール31を配置する回路基板上での電子部品を配置できるスペースをより広くし、且つ、アンテナ21で受信した信号にこの電子部品からのノイズが影響を与えにくくすることが可能になる。上述した効果は、通信機1に設けられるアンテナ21の数が多くなるほど顕著となる。
【0048】
他にも、実施形態1の構成によれば、通信モジュール31等の第1基板3に設けられる電子部品で発生する熱が、例えば第1導電体41を通して第2基板4のGNDに移動しやすくなるので、放熱しやすくなる。
【0049】
(実施形態2)
前述の実施形態では、筐体2の筐体上面2Uにアンテナ21が設けられる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、第2基板4にアンテナ21が設けられる構成としてもよい。この場合、アンテナ21が第2導電体42と一体に設けられる構成としてもよいし、第2導電体42を設けずにアンテナ21とパターン線43とが直接接続される構成としてもよい。
【0050】
他にも、筐体2の面のうち、側面にあたる面にアンテナ21が設けられる構成としてもよい。この場合、第2導電体42を設けずにアンテナ21がパターン線43と直接接続される構成としてもよい。また、第2基板4を備えず、アンテナ21と第1導電体41とが一体となっており、筐体2の側面に設けられたアンテナ21から伸びた第1導電体41が、第1基板3のスルーホール301に挿入される構成としてもよい。
【0051】
(実施形態3)
前述の実施形態では、給電ポート32が設けられるスルーホール301と通信モジュール31とが同じ第1基板3に設けられる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、給電ポート32が設けられるスルーホール301と通信モジュール31とが別の回路基板にそれぞれ設けられる構成としてもよい。
【0052】
(実施形態4)
前述の実施形態では、通信機1にアンテナ21が複数設けられる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、通信機1にアンテナ21が1つ設けられる構成としてもよい。
【0053】
(実施形態5)
前述の実施形態では、第2基板4の面のうちの、第1基板3の通信モジュール31と対向しない表面に、パターン線43が設けられる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、第2基板4の面のうちの、第1基板3の通信モジュール31と対向する裏面に、第1導電体41及びパターン線43が設けられる構成としてもよい。この場合、例えば第2導電体42は、第2基板4の表面から裏面に貫通して設けられることでパターン線43と接続される構成とすればよい。
【0054】
(実施形態6)
前述の実施形態では、第2基板4にGNDとして機能する平板状の金属導体が設けられる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、第2基板4に設けられるGNDが平板状以外の形状の金属導体であってもよい。また、第2基板4にGNDが設けられない構成としてもよい。
【0055】
(実施形態7)
前述の実施形態では、通信機1の上方が車両の天井方向を向いて用いられる例を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、通信機1の上方が車両の床方向を向いて用いられる構成であってもよいし、他の方向を向いて用いられる構成であってもよい。
【0056】
(実施形態8)
前述の実施形態では、通信機1を車両で用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、通信機1を車両以外の移動体で用いる構成としてもよい。また、通信機1を移動体以外で用いる構成としてもよい。
【0057】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 通信機、2 筐体、2U 筐体上面、3 第1基板(回路基板)、4 第2基板、21,21a,21b,21c,21d アンテナ、31 通信モジュール、32,32a,32b,32c,32d 給電ポート(金属部材)、33,33a,33b,33c,33d パターン線(給電線)、1,41a,41b,41c,41d 第1導電体(導電体)、42,42a,42b,42c,42d 第2導電体、43,43a,43b,43c,43d パターン線、301 スルーホール(貫通孔)、322,322a 腕部、3011 挿入口、3012 間隔が最短となる部位、3221 凸部