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特許7452387X線検査装置、X線検査装置の管理用サーバおよびX線検査装置の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】X線検査装置、X線検査装置の管理用サーバおよびX線検査装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240312BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240312BHJP
   G16Y 40/40 20200101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N23/046
G16Y20/20
G16Y40/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020192075
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080781
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 太
(72)【発明者】
【氏名】松花 文太
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-074934(JP,A)
【文献】特開2006-006917(JP,A)
【文献】特開2011-022163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の出入口と該出入口を開閉する扉を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容された、被検査物が載置されるステージ、X線を出射するX線源、前記X線源から出射し前記ステージに載置された被検査物を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記ステージの移動機構を含む駆動系と、
通信ネットワークに接続可能な通信部と、
前記駆動系の動作状況を示すデータ、および、前記扉の開閉回数を示すデータの少なくとも一つを含む消耗判定用データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した消耗判定用データを、前記通信部を介して前記通信ネットワークに出力するデータ送信部と、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査装置において、
前記駆動系の動作状況を示すデータは、前記ステージの移動状況を示すデータであるX線検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線検査装置において、
前記ステージの移動状況を示すデータには、前記ステージの移動時間、移動速度、移動距離、および移動速度に応じた重み付けの少なくとも一つに関する情報が含まれる、X線検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線検査装置を管理する管理用サーバであって、
通信ネットワークに接続可能なサーバ用通信部と、
前記X線検査装置から前記通信ネットワークを通じて送られてくる消耗判定用データを、前記サーバ用通信部を介して受信するデータ受信部と、
を備えるX線検査装置の管理用サーバ。
【請求項5】
請求項4に記載のX線検査装置の管理用サーバにおいて、
前記データ受信部が受信した消耗判定用データに基づいて、前記X線検査装置の駆動系の交換、および、前記扉の構成部品の交換の少なくとも一つを促すメッセージを出力する出力部をさらに備えるX線検査装置の管理用サーバ。
【請求項6】
通信ネットワークに接続された管理用サーバを用いて、請求項1から3のいずれかに記載のX線検査装置の状況を管理する管理方法であって、
前記管理用サーバが前記通信ネットワークを通じて前記X線検査装置に消耗判定用データの送信を要求するステップと、
前記通信ネットワークを通じて前記X線検査装置から前記管理用サーバに送られてくる消耗判定用データを受信するステップと、
を有する、X線検査装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置、X線検査装置の管理用サーバおよびX線検査装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検査装置は、被検査物を載置するステージと、被検査物にX線を照射するX線源と、X線源から照射され前記被検査物と透過したX線を検出するX線検出器と、をケーシング内に収納した構成を有する。
【0003】
例えば、X線検査装置の一種としての産業用のX線CT装置は、各種製品の内部構造の観察および3次元形状の測定を非破壊で行うためのものであり、互いに対向配置させたX線源とX線検出器と、それらの間に配置された回転ステージを有する。回転ステージの上に工業製品等の被検査物を載置し、該被検査物にX線を照射しつつ回転ステージをその載置面に垂直な回転軸を中心に回転させてX線検出器からのX線投影データを収集する。そして、収集されたX線投影データを用いて被検査物の断層画像を再構成することにより、その被検査物の内部構造を3次元的に観察することができる(特許文献1参照)。また、被検査物を回転させることなく、透視により被検査物の内部構造を観察するX線透視装置も使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-351879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなX線検査装置においては、その使用状況に応じて装置の設計を行うことが有効である。また、使用状況に応じたタイミングにおいて装置設計を行ったり部品の交換やメンテナンスを実行したりする必要がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、X線検査装置の各部の使用状況を正確に把握することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係るX線検査装置の一態様は、
被検査物の出入口と該出入口を開閉する扉を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容された、被検査物が載置されるステージ、X線を出射するX線源、および、前記X線源から出射し前記ステージに載置された被検査物を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記ステージの移動機構を含む駆動系と、
通信ネットワークに接続可能な通信部と、
前記駆動系の動作状況を示すデータ、および、前記扉の開閉回数を示すデータの少なくとも一つを含む消耗判定用データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した消耗判定用データを、前記通信部を介して前記通信ネットワークに出力するデータ送信部と
を備えるものである。
【0008】
また、本発明に係るX線検査装置の管理用サーバの一態様は、
X線検査装置を管理する管理用サーバであって、
通信ネットワークに接続可能なサーバ用通信部と、
前記X線検査装置から前記通信ネットワークを通じて送られてくる消耗判定用データを、前記サーバ用通信部を介して受信するデータ受信部と、
を備えるものである。
【0009】
また、本発明に係るX線検査装置の管理方法の一態様は、
通信ネットワークに接続された管理用サーバを用いてX線検査装置の状を管理する方法であって、
前記管理用サーバが前記通信ネットワークを通じて前記X線検査装置に前記消耗判定用データの送信を要求するステップと、
前記通信ネットワークを通じて前記X線検査装置から前記管理用サーバに送られてくる消耗判定用データを受信するステップと、
を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、通信ネットワークを介してX線検査装置と接続された管理用サーバは、該X線検査装置から送られてくる消耗判定用データに基づいて、X線検査装置の駆動系の動作状況、もしくは、ケーシングに設けられた扉の開閉回数を把握することができる。したがって、X線検査装置の使用状況に応じた適切なタイミングで部品を交換したりメンテナンスを実行したりすることができる。また、消耗判定用データから得られる情報をX線検査装置の設計に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るX線検査装置の一実施形態であるX線CT装置の斜視図。
図2】X線CT装置のケーシング付近の前面図。
図3】ケーシングの内部構成を制御系等とともに示す概要図。
図4】制御・処理部の機能的構成を示すブロック図。
図5】移動機構コントローラの機能的構成を示すブロック図。
図6】管理用サーバの機能的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的にX線検査装置では、各部品の保守点検の時期、交換時期が予め定められている。
例えば、被検査物であるワークをケーシングに対して搬入・搬出するための出入口を開閉する扉の場合、その開閉回数に基づき、扉の保守点検、扉の構成部品の交換の時期が決められる。また、扉の開閉頻度(例えば一日当たりの開閉回数)に応じて扉の耐久性、扉の構造が設計される。通常、1台のX線検査装置において一日に検査が行われるワークの個数を、一日当たりの扉の開閉回数であると仮定し、ワークの個数に一定期間におけるX線検査装置の稼働日数を乗算することにより、その期間の扉の開閉回数を推定している。
【0013】
しかしながら、ケーシングに搬入されたワークの姿勢を変更するため等、ワークの搬出入とは関係なく扉を開閉する場合があり、扉の開閉回数は必ずしもワークの数と対応しない。このため、扉を設計するときは、安全性を確保するために十分な耐久性を有する材質、形状等の部品が選択される。また、保守・点検も必要以上に頻繁に行われる場合が多い。しかし、実際の扉の開閉回数を知ることができないことから、安全性を考慮した余裕のある動作回数が推定されているというのが実情である。
【0014】
また、例えばステージをX-Y-Z-θ方向に移動させる移動機構を備えたX線検査装置においては、いずれの方向へも同じようにステージを移動させる等、標準的に動作させるものと仮定して移動機構の保守・点検時期、部品の交換時期等が設定されている。しかし顧客によっては、移動機構のうち一部の方向のみに頻繁にステージを移動させたり、通常よりも高速でステージを移動させたり、或いは狭い範囲で繰り返しステージを往復移動させるハンチングと呼称される動作を行わせたりする等の場合がある。このような非標準的な動作は、移動機構の各部品の寿命に影響を及ぼすが、従来のX線検査装置において、移動機構の動作状況に関する情報が蓄積されることはなかった。
【0015】
本発明に係るX線検査装置は、上述した問題に対応すべく成されたものである。
以下、本発明に係るX線検査装置の一実施形態であるX線CT装置について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0016】
図1はX線CT装置の斜視図である。このX線CT装置は、非破壊検査装置とも呼称されるものであり、X線を利用したCT撮影(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)を実行する。このX線CT装置は、装置本体100と、その上半部に設けられたケーシング10と、装置本体100の右下部に設けられた制御装置30と、装置本体100の右側面の上部に取り付けられた操作パネル45とを備えている。操作パネル45は、例えばタッチパッドが組み込まれた液晶ディスプレイから成り、表示画面を兼用する。
【0017】
ケーシング10はX線を透過させない部材(X線非透過部材)から形成されている。図1及び図2に示すように、ケーシング10は、その内部に被検査物であるワークを搬入・搬出するための出入口が前面に設けられており、該出入口を開放し、閉鎖する、扉41、42を有している。扉41、42は連動して移動するように連結されている。扉41にはハンドル43が取り付けられている。扉42には、X線を遮断可能な鉛ガラスが装着された窓部44が形成されている。窓部44を通してケーシング10の内部を観察することができる。ケーシング10の出入口近傍、例えば出入口の右縁部には、扉41、42を勢いよく閉めたときの衝撃を吸収するショックアブソーバ46、及び扉41、42の開閉動作を検出するためのマイクロスイッチ13が取り付けられている。なお、この実施形態では扉41、42の開閉動作を検出する手段としてマイクロスイッチを採用したが、これに代えてリードスイッチ、フォトセンサ等の近接センサを使用しても良い。マイクロスイッチ13については後で詳しく述べる。
【0018】
図3に示すように、ケーシング10の内部には、X線源11、X線検出器12、移動機構20が配設されている。X線源11は、X線を例えば円錐状に出射するX線管を有している。X線検出器12はX線源11と対向して配置されており、該X線源11から出射され、ステージに載置された被検査物を透過したX線を検出する。移動機構20は、ケーシング10内の底部に配置された定盤26上に設置されており、X線源11とX線検出器12の間に位置する回転ステージ21を回転させ、上下動させる。回転ステージ21にはワークが載置される。
【0019】
定盤26の上面は平坦面から成り、該上面が水平面となるように装置本体100は設置される。以下の説明では、定盤26の上面に平行で且つ互いに垂直な2方向をX方向及びY方向と呼び、X方向及びY方向に垂直な方向(つまり鉛直方向)をZ方向と呼ぶこととする。
【0020】
移動機構20は、定盤26上に配設された一対のガイドレール25と、ガイドレール25に沿って移動する基台24と、基台24の上に配置された、X方向に移動するXステージ23及びY方向に移動するYステージ22、並びに基台24、Xステージ23、Yステージ22、回転ステージ21をそれぞれ移動させるモータ51~55(図5参照)を有する。
【0021】
モータ(基台用モータ)51は基台24に設けられ、該基台24をガイドレール25に沿って移動させる。モータ52はXステージ23に設けられ、該Xステージ23をX方向に移動させる。モータ53はYステージ22に設けられ、該Yステージ22をY方向に移動させる。モータ54はYステージ22に設けられ、回転ステージ21をZ方向の回転軸211を中心に符号212で示す方向に回転させる。モータ55は基台24に設けられ、Xステージ23、Yステージ22及び回転ステージ21を一体的に、基台24に対してZ方向(鉛直方向)に移動させる。
【0022】
回転ステージ21が、X方向、Y方向及びZ方向に移動し、回転軸211を中心に回転することにより、回転ステージ21の上に載置されたワークに対する、X線源11から出射されたX線の照射位置が移動する。また、ガイドレール25に沿って基台24が移動することにより、X線源11と回転ステージ21との距離が変化し、この結果、X線検出器12で検出されるワークの投影像の拡大率が変更される。
【0023】
次に、図3図5を参照して制御装置30について説明する。制御装置30は、制御・処理部34と、通信ネットワークであるインターネット110とを介した通信を行うための通信部35とを備えている。制御・処理部34はX線CT装置全体の動作を制御するためのものであり、X線検出器12、マイクロスイッチ13の検出信号が入力される。また、制御・処理部34には、操作パネル45の操作信号が入力される。制御・処理部34は、記憶部37の他に、制御ブロックとしてのX線制御部31、ステージ制御部32、画像処理部33、表示制御部38、データ受信部39、判定用データ作成部40、判定用データ送信部36を備えている。
【0024】
X線制御部31は、ワークの材質やX線透過特性に応じて、X線源11におけるX線管に供給する管電圧や管電流を制御する。
【0025】
ステージ制御部32は、移動機構20に含まれるモータ51~55に接続されたドライバ61~65(図5参照)を有しており、これらドライバ61~65を介してモータ51~55を制御する。本実施形態では、操作パネル45が操作されることにより、モータ51~55の回転速度(つまり、基台24の移動速度、Xステージ23及びYステージ22の移動速度、回転ステージ21の回転速度、Xステージ23、Yステージ22及び回転ステージ21のZ方向の移動速度)が選択可能に構成されており、ステージ制御部32は、操作パネル45からの操作信号に基づいてモータ51~55を制御する。
【0026】
画像処理部33は、X線検出器12の検出信号に基づいてX線画像データを作成する。また、画像処理部33は、得られたX線画像データに対して適宜の画像処理を実行することにより、例えば回転ステージ21上のワークをX-Y平面に沿った面でスライスした断層画像を構築することができる。
表示制御部38は、操作パネル45に含まれる液晶ディスプレイの表示を制御する。
【0027】
データ受信部39は、制御・処理部34に入力されたマイクロスイッチ13の検出信号を受信する。また、データ受信部39は、ドライバ61~65がモータ51~55を駆動している時間データ(駆動時間データ)をステージ制御部32から受信する。
【0028】
判定用データ作成部40は、データ受信部39が受信したマイクロスイッチ13の検出信号、モータ51~55の駆動時間データ、操作パネル45の操作信号から、扉41、42の開閉回数を示すデータ(開閉回数データ)、移動機構20の動作状況を示すデータ(動作状況データ)を作成する。以下、これらのデータをまとめて判定用データということもある。本実施形態では、データ受信部39及び判定用データ作成部40からデータ取得部が構成される。また、判定用データが本発明の消耗判定用データに相当する。
【0029】
判定用データ送信部36(本発明のデータ送信部に相当)は、判定用データ作成部40が作成した判定用データを通信部35を通じてインターネット110に出力する。
【0030】
なお、制御・処理部34の実体は一般的なパーソナルコンピュータであり、予めインストールされたソフトウェアをプロセッサで実行することにより、上記の各機能ブロックが具現化される。
【0031】
図6は、管理用サーバ111の機能的構成を示すブロック図である。
管理用サーバ111は、インターネット110に接続可能なサーバ用通信部112と、X線検査装置の判定用データ送信部36からインターネット110に出力される判定用データを前記サーバ用通信部112を介して受信するデータ受信部113と、判定用データに基づいた適宜のタイミングでX線検査装置の移動機構20の部品、及び扉41、42の交換を促すメッセージを出力する出力部114とを備える。
【0032】
次に、管理用サーバ111を用いたX線CT装置の管理方法について説明する。
上記構成のX線CT装置において、ワークに対するCT撮影を行うためにケーシング10内にワークを搬入する場合、あるいは、CT撮影が終了したワークをケーシング10から搬出する場合、ユーザはハンドル43を把持して、閉鎖状態にある扉41、42を左方に移動させて出入口を開放する。この結果、扉41の右端面がマイクロスイッチ13から離間し、マイクロスイッチ13の接点がオフする。
【0033】
そして、回転ステージ21上にワークを載置した後、或いは回転ステージ21上からワークを取り出した後、扉41、42を右方に移動させて出入口を閉鎖する。この結果、扉41の右端面がマイクロスイッチ13に当接してマイクロスイッチ13の接点がオンする。マイクロスイッチ13の検出信号(オン信号及びオフ信号)は制御・処理部34に入力され、それをデータ受信部39が受信する。判定用データ作成部40は、データ受信部39がマイクロスイッチ13の検出信号を受信する毎に扉41、42の開閉回数をカウントし、前回までの開閉回数に「1」加算した開閉回数データを作成する。
【0034】
なお、本実施形態では、判定用データ作成部40は、マイクロスイッチ13からオフ信号が入力されてから次にオン信号が入力されるまでの時間が所定の長さよりも短いときは、開閉回数をカウントしない。これにより、ユーザが誤ってハンドル43に触れたことにより、あるいは何らかの外力により扉41、42が僅かに左方に移動してしまった場合等、扉41、42の意図せぬ開閉動作が開閉回数としてカウントされることを回避できる。
【0035】
また、回転ステージ21に載置されたワークに対するX線CT撮影を実行する際は、ステージ制御部32は、制御・処理部34に入力された操作パネル45の操作信号に従い、ドライバ61~65を制御する。これにより、操作パネル45で設定された回転速度、移動速度でモータ51~55が回転し、その結果、基台24、Xステージ23、Yステージ22および回転ステージ21が移動する。
【0036】
このとき、データ受信部39は、ステージ制御部32からモータ51~55の駆動時間データと、操作パネル45の操作信号を受信する。判定用データ作成部40は、データ受信部39が受信したモータの駆動時間データと操作信号とから移動機構20の動作状況を示すデータを作成する。具体的には、例えばXステージ23の移動速度として、V1(遅い)、V2(ふつう)、V3(速い)という3段階の速度が設定されており、移動速度がV1のときの動作時間をT1、移動速度がV2のときの動作時間をT2、移動速度がV3のときの動作時間をT3とした場合、Xステージ23にとっては一般的に高速で移動したときの方が摩耗度は大きい。そこで、速度V1、V2、V3のときの摩耗度の重み付けとして、A1、A2、A3なる値を定義し、以下のような動作状況のデータを生成する。
L0=(A1×V1×T1)+(A2×V2×T2)+(A3×V3×T3)
・・・(1)
【0037】
例えば、V1=1cm/秒、V2=5cm/秒、V3=10cm/秒、T1=10秒、 T2=2秒、T3=1秒と仮定すると、式(1)において、A1、A2、A3なる重み付けを採用しなかった場合、動作状況のデータL0は、下記のL1~L3の和の値(=30)となる。
L1=V1×T1=1×10=10
L2=V2×T2=5×2 =10
L3=V3×T3=10×1=10
【0038】
しかし、A1=1、A2=3、A3=10の重み付け行った場合、L1~L3の値は以下に示す通り、上述した重み付けを行わなかったときと異なる値となる。
L1=A1×V1×T1=1×1×10=10
L2=A2×V2×T2=3×5×2=30
L3=A3×V3×T3=10×10×1=100
このため、L1~L3の和の値であるL0の値として異なる結果を得ることが出来る。 ここでは、Xステージ23について説明したが、Yステージ22、回転ステージ21、ガイドレール25などについても同様の重み付けを行うことが出来る。
【0039】
以上のようにして判定用データ作成部40で作成された扉41、42の開閉回数データ、移動機構20の動作状況データ(判定用データ)は、判定用データ送信部36から通信部35を介してインターネット110に出力される。判定用データがインターネット110に出力されると、管理用サーバ111のデータ受信部113は、これをサーバ用通信部112を介して受信する。データ受信部113が判定用データを受信すると、出力部114は、その判定用データに基づき移動機構20の構成部品、扉41、42の構成部品(例えばマイクロスイッチ13、衝撃吸収用のショックアブソーバ46)の交換を促すメッセージ信号を作成し、出力する。例えば、判定用データが扉41、42の開閉回数データの場合は、開閉回数が所定値を上回ったことに基づき扉41、42の構成部品(例えばマイクロスイッチ13、衝撃吸収用のショックアブソーバ101)の交換を促すメッセージ信号を作成する。また、判定用データが移動機構20の動作状況データの場合は、ステージ負荷量L0が所定値を上回ったことに基づき移動機構20の部品の交換を促すメッセージ信号を作成する。
【0040】
メッセージ信号は、音声信号でもよく、図示しない表示部に表示するための文字や記号等を表す画像信号でもよい。また、管理用サーバ111の出力部114は、サーバ用通信部112、インターネット110を介してX線CT装置の制御・処理部34にメッセージ信号を出力するようにしても良い。この場合、管理用サーバ111からのメッセージ信号が入力された制御・処理部34は、交換を促すメッセージを操作パネル45に表示する。
【0041】
なお、出力部114は、移動機構20の部品等を交換するタイミングでメッセージ信号を出力するだけでなく、交換する時期よりも所定の時間だけ前のタイミングでもメッセージ信号を出力しても良い。交換する時期よりも所定の時間だけ前のタイミングでメッセージ信号を出力することにより、交換する時期の到来に備えて交換部品を調達しておくことができる。
【0042】
また、上述した実施形態においては、移動機構20の動作状況を示すデータを判定用データの一つとしたが、移動機構20以外の駆動系、例えば、X線検査装置の動作開始時に検査に先立って実行されるエージング作業において使用されるエージングカバー63やシャッター62(いずれも図5に二点鎖線で示す)の移動機構の動作状況を示すデータを判定用データに加えることができる。
【0043】
さらに、X線検査装置から管理用サーバ111への判定用データの送信は、該データが作成されるごとに実行されてもよく、一定時間ごと、一定回数ごと、あるいは、一定の条件ごとに実行されてもよい。例えば開閉回数データの場合は、扉41、42の開閉動作が行われるごとに送信されると良い。また、移動機構20の動作状況データの場合は、ワークのCT撮影が行われるごとに送信されると良い。
【0044】
また、上記実施形態ではタッチパネル式の操作パネル45を採用したが、マウス操作式の操作パネルとしても良い。
【0045】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
(第1項)本発明に係るX線検査装置の一態様は、
被検査物の出入口と該出入口を開閉する扉を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容された、被検査物が載置されるステージ、X線を出射するX線源、前記X線源から出射し前記ステージに載置された被検査物を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記ステージの移動機構を含む駆動系と、
通信ネットワークに接続可能な通信部と、
前記駆動系の動作状況を示すデータ、および、前記扉の開閉回数を示すデータの少なくとも一つを含む消耗判定用データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した消耗判定用データを、前記通信部を介して前記通信ネットワークに出力するデータ送信部と、
を備えるものである。
【0047】
(第4項)また、本発明に係るX線検査装置の管理用サーバは、上述したX線検査装置を管理するものであって、
通信ネットワークに接続可能なサーバ用通信部と、
前記X線検査装置から前記通信ネットワークを通じて送られてくる消耗判定用データを、前記サーバ用通信部を介して受信するデータ受信部と、
を備えるものである。
【0048】
(第6項)本発明に係る管理方法は、通信ネットワークに接続された管理用サーバを用いて、X線検査装置の状況を管理する管理方法であって、
前記管理用サーバが前記通信ネットワークを通じて前記X線検査装置に消耗判定用データの送信を要求するステップと、
前記通信ネットワークを通じて前記X線検査装置から前記管理用サーバに送られてくる消耗判定用データを受信するステップと、
を有するものである。
【0049】
本発明によれば、X線検査装置のデータ取得部で取得された消耗判定用データを、通信ネットワークを介して前記X線検査装置と接続された管理用サーバで管理することができる。消耗判定用データには、X線検査装置の駆動系の動作状況を示すデータ、扉の開閉回数を示すデータの少なくとも一つが含まれるため、前記消耗判定用データから、X線検査装置の駆動系、又は、扉の使用状況を正確に把握することができる。
【0050】
(第2項)
第2項のX線検査装置は、第1項に記載のX線検査装置であって、
前記駆動系の動作状況を示すデータは、前記ステージの移動状況を示すデータであるものとすることができる。
【0051】
第2項のX線検査装置によれば、X線検査装置のステージの使用状況を把握することができる。
【0052】
(第3項)
第3項のX線検査装置は、第2項のX線検査装置であって、
前記ステージの移動状況を示すデータは、前記ステージの移動時間、移動速度、移動距離、および移動速度に応じた重み付けの少なくとも一つを示すデータであるものとすることができる。
【0053】
第3項のX線検査装置によれば、ステージの使用状況をより正確に把握することができる。
【0054】
(第5項)
第5項のX線検査装置の管理用サーバは、第4項のX線検査装置の管理用サーバにおいて、
前記データ受信部が受信した消耗判定用データに基づいて、前記X線検査装置の駆動系の交換、および、前記扉の構成部品の交換の少なくとも一つを促すメッセージを出力する出力部をさらに備えるものである。
【0055】
第5項のX線検査装置の管理用サーバによれば、X線検査装置の駆動系の交換、および、前記扉の構成部品の交換が必要であることを容易に認識することが可能となる。
【0056】
なお、上述した記載はこの発明の実施形態の説明のためのものであり、この発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
100…装置本体
10…ケーシング
11…X線源
12…X線検出器
13…マイクロスイッチ
20…移動機構
21…回転ステージ
22…Yステージ
23…Xステージ
24…基台
30…制御装置
31…X線制御部
32…ステージ制御部
33…画像処理部
34…制御・処理部
35…通信部
36…判定用データ送信部
37…記憶部
38…表示制御部
39…データ受信部
40…判定用データ作成部
41、42…扉
45…操作パネル
46…ショックアブソーバ
110…インターネット
111…管理用サーバ
112…サーバ用通信部
113…データ受信部
114…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6