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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/28 20060101AFI20240312BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20240312BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20240312BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20240312BHJP
【FI】
F16D55/28 B
F16D65/12 R
F16D65/12 U
F16D65/16
F16D121:22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020195084
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083650
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】乙部 遼
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-161433(JP,U)
【文献】特開2012-167742(JP,A)
【文献】実開昭48-103784(JP,U)
【文献】特開2017-085729(JP,A)
【文献】特開平09-144784(JP,A)
【文献】米国特許第04667781(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/12
F16D 55/28
F16D 65/16
F16D 121/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両に搭載された電磁ブレーキ装置において、
前記産業車両の駆動輪を回転させる回転軸を制動するブレーキ本体部と、
前記ブレーキ本体部に対して前記回転軸の軸方向に並んで配置されたステータと、
前記ステータに設けられた電磁コイルと、
前記ブレーキ本体部を加熱するための熱を発生させる発熱部とを備え、
前記ブレーキ本体部は、前記回転軸と一体化されたブレーキディスクと、前記ブレーキディスクに対して前記ステータの反対側に配置された円環状のプレートと、前記ブレーキディスクと前記ステータとの間に配置され、前記プレートと協働して前記ブレーキディスクを挟む円環状のアーマチュアとを有し、
前記プレートは、前記回転軸の軸方向に2つ並んで配置されており、
前記発熱部は、前記2つのプレートの間に前記回転軸の外周面を取り囲むように環状に配置されている電磁ブレーキ装置。
【請求項2】
産業車両に搭載された電磁ブレーキ装置において、
前記産業車両の駆動輪を回転させる回転軸を制動するブレーキ本体部と、
前記ブレーキ本体部に対して前記回転軸の軸方向に並んで配置されたステータと、
前記ステータに設けられた電磁コイルと、
前記ブレーキ本体部を加熱するための熱を発生させる発熱部とを備え、
前記ブレーキ本体部は、前記回転軸と一体化されたブレーキディスクと、前記ブレーキディスクに対して前記ステータの反対側に配置された円環状のプレートと、前記ブレーキディスクと前記ステータとの間に配置され、前記プレートと協働して前記ブレーキディスクを挟む円環状のアーマチュアとを有し、
前記発熱部は、前記回転軸の外周面を取り囲むように環状に配置され、発熱体がシートに貼り付けられた構造を有する円筒状の発熱体シートであり、
前記発熱体シートは、前記ブレーキ本体部の外周面に巻き付けられている電磁ブレーキ装置。
【請求項3】
前記発熱体シートは、前記ブレーキ本体部の外周面及び前記ステータの外周面にわたって巻き付けられている請求項記載の電磁ブレーキ装置。
【請求項4】
前記発熱体は、前記シートにおける前記ブレーキ本体部に対応する領域に貼り付けられている請求項記載の電磁ブレーキ装置。
【請求項5】
前記発熱体シートは、前記ブレーキ本体部の外周面に着脱可能に巻き付けられている請求項の何れか一項記載の電磁ブレーキ装置。
【請求項6】
前記シートの一端部には、前記シートの両端部同士を係止するための係止部が設けられ、
前記シートの他端部には、前記係止部と係合する係止受け部が設けられている請求項記載の電磁ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフォークリフト等の産業車両に搭載された無励磁作動型の電磁ブレーキ装置では、ステータに設けられた電磁コイルが通電されていない状態で、バネに押し付けられたアーマチュアがプレートと協働してブレーキディスクを挟み込むことで、回転軸に対する制動力が発生する。電磁コイルの通電時には、電磁コイルが励磁されるため、アーマチュアがバネの付勢力に抗して電磁コイルに引き付けられ、ブレーキディスクが開放されることで、回転軸の制動が解除される。
【0003】
このような電磁ブレーキ装置において、低温環境下では、アーマチュア、ブレーキディスク及びプレートを有するブレーキ本体部に水滴が付着し、アーマチュアとブレーキディスクとの間に水滴が入り込むことがある。この場合、アーマチュアとブレーキディスクとの間の水滴が凍結すると、電磁コイルが励磁されても、アーマチュアが電磁コイルに引き付けられず、ブレーキディスクが開放されない虞がある。
【0004】
例えば特許文献1には、電動モータを回転駆動させると、ボールねじ機構のねじ軸が回転してナット部材がブレーキ作動方向に移動し、ナット部材に接続された左右のボーデンワイヤーに発生する張力が増大することで、ブレーキ作動力伝達系に付着した氷を砕いて凍結を解除することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-317839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術においては、アーマチュアとブレーキディスクとの間に存在する氷を砕くための氷粉砕装置が必要となる。しかし、レイアウトの制約等から氷粉砕装置を配置するスペースが無い場合には、ブレーキ本体部が凍結しても、その凍結を解除することができない。従って、ブレーキディスクを開放して、回転軸の制動を解除することができない。
【0007】
本発明の目的は、狭小スペースでも、ブレーキ本体部の凍結を解除することができる電磁ブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、産業車両に搭載された電磁ブレーキ装置において、産業車両の駆動輪を回転させる回転軸を制動するブレーキ本体部と、ブレーキ本体部に対して回転軸の軸方向に並んで配置されたステータと、ステータに設けられた電磁コイルと、ブレーキ本体部を加熱するための熱を発生させる発熱部とを備え、ブレーキ本体部は、回転軸と一体化されたブレーキディスクと、ブレーキディスクに対してステータの反対側に配置された円環状のプレートと、ブレーキディスクとステータとの間に配置され、プレートと協働してブレーキディスクを挟む円環状のアーマチュアとを有し、発熱部は、回転軸の外周面を取り囲むように環状に配置されている。
【0009】
このような電磁ブレーキ装置においては、アーマチュアがブレーキディスク側に移動すると、アーマチュア及びプレートによりブレーキディスクが挟まれることで、回転軸に制動力が発生する。アーマチュアがステータ側に移動すると、アーマチュアがブレーキディスクから離間することで、回転軸の制動が解除される。ただし、低温環境下においてブレーキ本体部が凍結すると、アーマチュアがブレーキディスクから離間しにくくなる。そこで、発熱部によって熱を発生させることにより、発熱部からブレーキ本体部に熱が伝わり、ブレーキディスク及びアーマチュアが加熱される。従って、ブレーキディスク及びアーマチュアに付着した氷が溶けるため、アーマチュアがブレーキディスクから離間する。このように回転軸の外周面を取り囲むように環状に配置された発熱部を備えることにより、大規模な氷粉砕装置が不要となる。これにより、狭小スペースでも、ブレーキ本体部の凍結が解除される。
【0010】
プレートは、回転軸の軸方向に2つ並んで配置されており、発熱部は、2つのプレートの間に配置されていてもよい。このような構成では、発熱部の構造が簡単になると共に、電磁ブレーキ装置の径方向の寸法を増大させなくて済む。
【0011】
発熱部は、発熱体がシートに貼り付けられた構造を有する円筒状の発熱体シートであり、発熱体シートは、ブレーキ本体部の外周面に巻き付けられていてもよい。このような構成では、発熱体シートをブレーキ本体部の外周面に巻き付ける構造であるため、プレート等の追加が不要となる。従って、電磁ブレーキ装置の軸方向の寸法を増大させなくて済む。
【0012】
発熱体シートは、ブレーキ本体部の外周面及びステータの外周面にわたって巻き付けられていてもよい。このような構成では、アーマチュアの軸方向の移動に伴って、発熱体シートが軸方向にずれ動くことが防止される。従って、発熱体シートの耐久性が向上する。
【0013】
発熱体は、シートにおけるブレーキ本体部に対応する領域に貼り付けられていてもよい。このような構成では、電磁ブレーキ装置における加熱したい領域のみに発熱体が効率的に配置されることになる。従って、発熱体の使用量が抑制されると共に、加熱が不要な領域での発熱による無駄なエネルギー消費が抑えられる。
【0014】
発熱体シートは、ブレーキ本体部の外周面に着脱可能に巻き付けられていてもよい。このような構成では、発熱体シートをブレーキ本体部から取り外すことで、ブレーキディスクの摩耗具合等を確認することが可能となる。
【0015】
シートの一端部には、シートの両端部同士を係止するための係止部が設けられ、シートの他端部には、係止部と係合する係止受け部が設けられていてもよい。このような構成では、発熱体シートをブレーキ本体部の外周面に巻き付けた状態で、係止部及び係止受け部を係合させることで、発熱体シートがブレーキ本体部に固定される。また、係止部及び係止受け部の係合を解除することで、発熱体シートがブレーキ本体部から外れる。従って、ブレーキ本体部に対する発熱体シートの着脱を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、狭小スペースでも、アーマチュア及びブレーキディスクの凍結を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る電磁ブレーキ装置を備えた駆動装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電磁ブレーキ装置を走行モータと共に示す分解斜視図である。
図3図2に示された電磁ブレーキ装置の断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る電磁ブレーキ装置を走行モータと共に示す分解斜視図である。
図5図4に示された電磁ブレーキ装置の断面図である。
図6図4に示された発熱体シートがブレーキ本体部の外周面に巻き付けられていない展開状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電磁ブレーキ装置を備えた駆動装置を示す概略構成図である。図1において、駆動装置1は、電動式のフォークリフト等の産業車両2に搭載されている。
【0020】
駆動装置1は、左右の駆動輪3をそれぞれ回転駆動させる2つの走行モータ4と、走行モータ4と駆動輪3との間に配置された2つの減速機5と、2つの走行モータ4の間に配置された2つの電磁ブレーキ装置6とを具備している。
【0021】
走行モータ4は、図2に示されるように、駆動輪3を回転させる回転軸7を有するモータ本体8と、このモータ本体8の軸方向の両端部をそれぞれ覆うモータケース9A,9Bとを備えている。回転軸7は、モータ本体8の軸方向の両側に突出している。回転軸7は、減速機5を介して駆動輪3と連結されている。モータケース9Aは、減速機5側に配置されている。モータケース9Bは、電磁ブレーキ装置6側に配置されている。
【0022】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁ブレーキ装置を走行モータと共に示す分解斜視図である。図3は、図2に示された電磁ブレーキ装置の断面図である。図2及び図3において、本実施形態の電磁ブレーキ装置6は、例えば産業車両2のパーキングブレーキとして使用される。電磁ブレーキ装置6は、非通電時に回転軸7を制動し、通電時に回転軸7の制動を解除する無励磁作動型の電磁ブレーキである。
【0023】
電磁ブレーキ装置6は、回転軸7を制動するブレーキ本体部20と、このブレーキ本体部に対して回転軸7の軸方向に並んで配置されたステータ11と、ブレーキ本体部20とステータ11との間に配置された複数のコイルバネ15と、ステータ11に設けられた電磁コイル16と、ブレーキ本体部20を加熱するための熱を発生させる発熱体17(発熱部)とを備えている。
【0024】
ブレーキ本体部20は、ブレーキディスク10と、プレート12,13と、アーマチュア14とを有している。ブレーキディスク10は、回転軸7と固定部18を介して一体化されている。ブレーキディスク10は、回転軸7と一緒に回転する。
【0025】
プレート12,13は、ブレーキディスク10に対してステータ11の反対側に配置されている。プレート12,13は、回転軸7の軸方向に間隔を隔てて並んで配置されている。プレート12は、プレート13よりもブレーキディスク10側に配置されている。プレート12,13の形状は、有孔円板状である。つまり、プレート12,13は、円環状を呈している。プレート12,13は、複数のネジ(図示せず)によりステータ11に固定されている。プレート12,13の径は、ブレーキディスク10の径よりも大きい。
【0026】
アーマチュア14は、ブレーキディスク10とステータ11との間に配置されている。アーマチュア14の形状は、有孔円板状である。つまり、アーマチュア14は、円環状を呈している。アーマチュア14は、回転軸7の軸方向に移動可能である。アーマチュア14は、プレート12と協働して回転軸7の軸方向にブレーキディスク10を挟む。アーマチュア14の径は、ブレーキディスク10の径よりも大きい。
【0027】
ステータ11は、走行モータ4のモータケース9Aに取り付けられている。ステータ11は、アーマチュア14を挟んでブレーキディスク10と対向して配置されている。ステータ11には、回転軸7を貫通させる貫通孔11bが設けられている。ステータ11の径は、プレート12,13及びアーマチュア14の径と同等である。
【0028】
コイルバネ15は、ステータ11とアーマチュア14との間に配置されている。具体的には、コイルバネ15の一端は、ステータ11に設けられたバネ収容穴19の底部19aに接触している。コイルバネ15の他端は、アーマチュア14に接触している。コイルバネ15は、アーマチュア14をブレーキディスク10に対して押し付ける方向に付勢する付勢部材である。
【0029】
電磁コイル16は、ステータ11の内部に円環状に配置されている。電磁コイル16は、電源(図示せず)と接続されている。
【0030】
電磁コイル16に電流が流れていない状態では、コイルバネ15の付勢力によりアーマチュア14がブレーキディスク10側に押されるため、アーマチュア14がプレート12と共にブレーキディスク10を挟み込み、回転軸7に制動力が発生する。
【0031】
電磁コイル16に電流が流れると、電磁コイル16が励磁されるため、アーマチュア14がコイルバネ15の付勢力に抗して電磁コイル16に引き付けられる。従って、アーマチュア14がステータ11側に移動してブレーキディスク10から離間するため、回転軸7の制動が解除される。
【0032】
発熱体17は、2つのプレート12,13間に配置されている。つまり、発熱体17は、プレート12,13に回転軸7の軸方向に挟まれるように配置されている。発熱体17は、回転軸7の外周面7aを取り囲むように円環状に連続的に配置されている。発熱体17は、電熱線で構成されている。発熱体17は、電源(図示せず)と接続されている。
【0033】
回転軸7に制動力が発生している状態で、発熱体17に電流が流れると、発熱体17が発熱する。発熱体17で発生した熱は、プレート12、ブレーキディスク10及びアーマチュア14へと伝熱される。このとき、発熱体17が円環状に連続的に配置されているため、ブレーキ本体部20の周方向に均等に熱が発生する。
【0034】
以上のような電磁ブレーキ装置6において、電磁コイル16が通電されていない状態では、コイルバネ15の付勢力によりアーマチュア14がブレーキディスク10側に押される。このため、アーマチュア14及びプレート12によりブレーキディスク10が挟み込まれることで、回転軸7が制動されている。
【0035】
産業車両2を走行させるときは、電源(図示せず)により電磁コイル16を通電する。電磁コイル16が通電されると、電磁コイル16が励磁されるため、アーマチュア14が電磁コイル16に引き付けられる。このため、アーマチュア14がコイルバネ15の付勢力に抗してステータ11側に移動し、アーマチュア14がブレーキディスク10から離間することで、回転軸7の制動が解除される。
【0036】
ところで、冷凍庫等の低温環境下では、アーマチュア14、ブレーキディスク10及びプレート12,13に水滴が付着し、アーマチュア14とブレーキディスク10との間に水滴が入り込むことがある。アーマチュア14とブレーキディスク10との間の水滴が凍結すると、電磁コイル16が励磁されても、アーマチュア14が電磁コイル16に引き付けられない。
【0037】
そこで、そのような状況下では、電磁コイル16を通電すると共に、発熱体17を通電する。発熱体17が通電されると、発熱体17から熱が発生し、発熱体17からブレーキ本体部20に熱が伝わり、ブレーキディスク10及びアーマチュア14が加熱される。このため、ブレーキディスク10及びアーマチュア14に付着した氷が溶ける。従って、アーマチュア14が電磁コイル16に引き付けられるため、アーマチュア14がブレーキディスク10から離間する。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、回転軸7の外周面7aを取り囲むように円環状に配置された発熱体17を備えることにより、大規模な氷粉砕装置が不要となる。これにより、狭小スペースでも、ブレーキ本体部20の凍結が解除される。その結果、低コスト化を図りつつ、低温環境下でも回転軸7の制動を解除することができる。
【0039】
また、本実施形態では、発熱体17はプレート12,13間に配置されているので、発熱体17の構造が簡単になると共に、電磁ブレーキ装置6の径方向の寸法を増大させなくて済む。
【0040】
なお、発熱体17は、回転軸7の外周面7aを取り囲むように角環状に配置されていてもよい。また、ステータ11、プレート12,13及びアーマチュア14の径は、異なっていてもよい。また、ブレーキディスク10の径は、ステータ11の径と同等でもよい。
【0041】
図4は、本発明の第2実施形態に係る電磁ブレーキ装置を走行モータと共に示す分解斜視図である。図5は、図4に示された電磁ブレーキ装置の断面図である。図4及び図5において、本実施形態の電磁ブレーキ装置6は、上記の第1実施形態と同様に、無励磁作動型の電磁ブレーキである。
【0042】
電磁ブレーキ装置6は、ブレーキ本体部25と、上記のステータ11、コイルバネ15及び電磁コイル16と、円筒状の発熱体シート30(発熱部)とを備えている。
【0043】
ブレーキ本体部25は、上記のブレーキディスク10、プレート12及びアーマチュア14を有している。ブレーキ本体部25は、上記のプレート13を有していない。プレート12及びアーマチュア14の径は、ステータ11の径と同等である。ブレーキディスク10の径は、ステータ11の径よりも小さい。
【0044】
発熱体シート30は、ブレーキ本体部25の外周面25aに着脱可能に巻き付けられている。具体的には、発熱体シート30は、プレート12の外周面12a、アーマチュア14の外周面14a及びステータ11の外周面11aにわたって着脱可能に巻き付けられている。つまり、発熱体シート30は、回転軸7の外周面7aを取り囲むように円環状に配置されている。
【0045】
発熱体シート30は、図6に示されるように、電熱線である発熱体31が略矩形状のシート32に貼り付けられた構造を有している。なお、図6は、発熱体シート30がブレーキ本体部25の外周面25aに巻き付けられていない展開状態を示す平面図である。シート32の材料は、例えば耐熱性を有するゴムや、アルミニウム等といった柔軟性を有する金属等である。
【0046】
発熱体31は、例えばシート32の一方の主面に、シート32の長手方向の両端部の近傍において複数回折り返すように波状に貼り付けられている。なお、シート32の長手方向は、発熱体シート30がブレーキ本体部25の外周面25aに巻き付けられていない展開状態での延在方向であり、発熱体シート30がブレーキ本体部25の外周面25aに巻き付けられた状態での周方向に相当する。
【0047】
発熱体31は、シート32におけるブレーキ本体部25に対応する内側領域32aに貼り付けられている。発熱体31は、シート32におけるステータ11に対応する外側領域32bには貼り付けられていない、発熱体31は、電源(図示せず)と接続されている。
【0048】
シート32の長手方向の一端部には、シート32の長手方向の両端部同士を係止するための2つの係止ピン33(係止部)が設けられている。シート32の長手方向の他端部には、係止ピン33と係合する2つのピン穴34(係止受け部)が設けられている。
【0049】
発熱体31が外周側に露出するように発熱体シート30がプレート12の外周面12a、アーマチュア14の外周面14a及びステータ11の外周面11aにわたって巻き付けられた状態で、係止ピン33をピン穴34に嵌め込むことで、発熱体シート30の両端部同士が係止される。これにより、発熱体シート30は、ブレーキ本体部25及びステータ11に固定された状態となる。
【0050】
このような本実施形態においては、回転軸7の外周面7aを取り囲むように円環状に配置された発熱体シート30を備えることにより、大規模な氷粉砕装置が不要となる。これにより、狭小スペースでも、ブレーキ本体部25の凍結が解除される。
【0051】
また、本実施形態では、発熱体シート30をブレーキ本体部25の外周面25aに巻き付ける構造であるため、上記のようなプレート13等の追加が不要となる。従って、電磁ブレーキ装置6の軸方向の寸法を増大させなくて済む。
【0052】
また、本実施形態では、発熱体シート30は、ブレーキ本体部25の外周面25a及びステータ11の外周面11aにわたって巻き付けられている。このため、アーマチュア14の移動に伴って、発熱体シート30が軸方向にずれ動くことが防止される。従って、発熱体シート30の耐久性が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、発熱体31は、シート32におけるブレーキ本体部25に対応する内側領域32aに貼り付けられている。このため、電磁ブレーキ装置6における加熱したい領域のみに発熱体31が効率的に配置されることになる。従って、発熱体31の使用量が抑制されると共に、加熱が不要な領域での発熱による無駄なエネルギー消費が抑えられる。
【0054】
また、本実施形態では、発熱体シート30は、ブレーキ本体部25の外周面25aに着脱可能に巻き付けられている。このため、発熱体シート30をブレーキ本体部25から取り外すことで、ブレーキディスク10の摩耗具合等を確認することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、発熱体シート30をブレーキ本体部25の外周面25aに巻き付けた状態で、係止ピン33及びピン穴34を係合させることで、発熱体シート30がブレーキ本体部25に固定される。また、係止ピン33及びピン穴34の係合を解除することで、発熱体シート30がブレーキ本体部25から外れる。従って、ブレーキ本体部25に対する発熱体シート30の着脱を容易に行うことができる。
【0056】
なお、発熱体シート30において、発熱体31は、シート32の全面に貼り付けられていてもよい。また、発熱体31は、シート32の両主面に貼り付けられていてもよい。
【0057】
また、発熱体シート30は、ブレーキ本体部25の外周面25aのみに巻き付けられていてもよい。また、ブレーキディスク10の径がアーマチュア14の径と同等でもよい。この場合には、発熱体シート30は、ブレーキディスク10の外周面10aにも巻き付けられることとなる。
【0058】
また、発熱体シート30のシート32には、係止ピン33に代えて、引っ掛け用のフック等が設けられていてもよい。また、発熱体シート30は、ブレーキ本体部25の外周面25aに巻き付けられた状態で、ネジ止めや接着剤等によりアーマチュア14を除くブレーキ本体部25に固定されていてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、発熱体17または発熱体シート30は、回転軸7の外周面7aを取り囲むように連続的に環状に配置されているが、特にそのような形態には限られない。発熱体17または発熱体シート30は、回転軸7の外周面7aを取り囲むように間欠的に環状に配置されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態の電磁ブレーキ装置6は、非通電時に回転軸7を制動し、通電時に回転軸7の制動を解除する無励磁作動型の電磁ブレーキであるが、本発明は、通電時に回転軸7を制動し、非通電時に回転軸7の制動を解除する励磁作動型の電磁ブレーキにも適用可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、駆動装置1は、2つの走行モータ4に対応して2つの電磁ブレーキ装置6を具備しているが、本発明は、使用する走行モータ4の数が1つであれば、電磁ブレーキ装置6の数が1つである駆動装置にも適用可能である。
【0062】
また、上記実施形態の電磁ブレーキ装置6は、電動式のフォークリフト等の産業車両2に搭載されているが、本発明は、エンジン式の産業車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
2…産業車両、3…駆動輪、6…電磁ブレーキ装置、7…回転軸、7a…外周面、10…ブレーキディスク、11…ステータ、11a…外周面、12…プレート、13…プレート、14…アーマチュア、15…コイルバネ(付勢部材)、16…電磁コイル、17…発熱体(発熱部)、20…ブレーキ本体部、25…ブレーキ本体部、25a…外周面、30…発熱体シート(発熱部)、31…発熱体、32…シート、32a…内側領域、33…係止ピン(係止部)、34…ピン穴(係止受け部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6