(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/52 20060101AFI20240312BHJP
B66C 23/26 20060101ALI20240312BHJP
B66C 23/60 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B66C13/52 B
B66C23/26 C
B66C23/60 E
(21)【出願番号】P 2020203551
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】松井 大朗
(72)【発明者】
【氏名】小矢畑 章
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506202(JP,A)
【文献】特開2001-048470(JP,A)
【文献】特開2000-281277(JP,A)
【文献】中国実用新案第202542723(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102408066(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
B66C 23/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンであって、
左右方向に間隔をおいて並ぶ第1のブーム取付部及び第2のブーム取付部を有するフレームとキャブと前記フレームと前記キャブとを連結する連結部とを含む機体と、
前記機体に対して起伏可能となるように前記第1のブーム取付部及び前記第2のブーム取付部に取り付けられる基端部を有するブームと、を備え、
前記連結部は、前記フレームに対する前記キャブの相対位置が作業位置と輸送位置との間で切り換わることが可能となるように前記キャブを支持するとともに前記フレームに対してスイング可能に前記フレームに支持され、前記作業位置は、クレーン作業が行われるときの前記キャブの位置であり、前記クレーン作業が行われるときに前記キャブが前記ブームに接触することが回避されるように前記第1のブーム取付部に対して前記左右方向の外側にずれた位置であり、前記輸送位置は、前記第1のブーム取付部及び前記第2のブーム取付部から前記ブームが取り外された状態の前記フレームの少なくとも一部、前記キャブ及び前記連結部を含む前記機体の一部分が輸送されるときの前記キャブの位置であり、前記第1のブーム取付部よりも前方の位置であり、
前記フレームは、前記第1のブーム取付部よりも下方でかつ後方に設けられる下アーム取付部と、前記第1のブーム取付部よりも上方でかつ後方に設けられる上アーム取付部と、をさらに有し、
前記連結部は、前記第1のブーム取付部よりも後方に位置するスイング軸を中心として前記第1のブーム取付部よりも下方においてスイング可能となるように前記下アーム取付部に取り付けられた下スイングアームと、前記スイング軸を中心として前記第1のブーム取付部よりも上方においてスイング可能となるように前記上アーム取付部に取り付けられた上スイングアームであって、前記キャブが前記作業位置に配置されているときに前記上スイングアームが前記ブームに接触することが回避されるような位置に配置される上スイングアームと、を含むクレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンであって、
前記連結部は、前記下スイングアームを前記キャブに接続する下接続部と、前記上スイングアームを前記キャブに接続する上接続部と、を有するクレーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクレーンであって、
前記連結部は、前記下スイングアームと前記上スイングアームとを接続する接続部材をさらに含み、
前記接続部材は、前記キャブが前記作業位置と前記輸送位置との間で変位するときに前記第1のブーム取付部に接触することが回避されるような位置に配置されている、クレーン。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のクレーンであって、
前記下スイングアームは、前記下アーム取付部から延びて前記キャブの下部に接続され、
前記上スイングアームは、前記キャブの高さ方向の中央よりも上方において前記上アーム取付部から延びている、クレーン。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のクレーンであって、
前記フレームは、前後方向に延びる底板を有し、
前記フレームは、前記底板における前側でかつ前記左右方向の外側の部分である下壁部と、前記下壁部に沿って前記前後方向に延びるとともに前記下壁部から上方に起立する側壁部と、を有する支持構造体を含み、
前記第1のブーム取付部は、前記側壁部の前部に形成され、
前記下アーム取付部は、前記側壁部の前部よりも後方において前記下壁部に設けられ、
前記上アーム取付部は、前記側壁部の前部よりも後方において前記支持構造体の上部に設けられている、クレーン。
【請求項6】
請求項5に記載のクレーンであって、
前記側壁部は、外側壁部であり、
前記支持構造体は、
前記底板の前記下壁部から上方に起立する内側壁部であって前記外側壁部に対して前記左右方向の内側に位置する内側壁部と、
前記外側壁部の上部と前記内側壁部の上部とによって支持された上壁部と、をさらに含み、
前記上アーム取付部は、前記上壁部に設けられている、クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機体のフレームに対するキャブの相対位置を切り換えることが可能なクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、機体と、当該機体に対して起伏可能となるように取り付けられるブームと、を備える。クレーンがクローラクレーンである場合、前記機体は、自走可能な下部走行体と、上部旋回体と、を含む。クレーンが固定式クレーンである場合、前記機体は、自走不可能な土台と、上部旋回体と、を含む。上部旋回体は、下部走行体又は土台に旋回可能に支持されるフレーム(旋回フレーム)と、当該旋回フレームに支持されるキャブと、を含む。
【0003】
クローラクレーン、固定式クレーンなどのクレーンは、公道を自走することができないので、トレーラーによって輸送される。クレーンが輸送されるときには、当該クレーンの一部を構成する輸送対象の部品の幅が輸送の規制値の範囲内に収まるように、クレーンはいくつかの部分に分解される。
【0004】
一方、クレーンによるクレーン作業が行われるときには、キャブ内の運転席に着座するオペレータの視界が良好となるように、上部旋回体の前部において、キャブは、旋回フレームに対して側方(例えば右方)にずれた位置である作業位置に配置される。比較的大型のクレーンでは、キャブが作業位置に配置されているときの旋回フレームとキャブとを含む部品の幅が前記規制値を超える場合がある。このようなクレーンは、旋回フレームに対するキャブの位置を前記作業位置から輸送のための位置である輸送位置に切り換えるためのスイング機能を備えている(例えば特許文献1)。具体的には、キャブは、スイングアーム(特許文献1では、「キャブ側部材」)によって旋回フレームに支持され、当該スイングアームが旋回フレームに対してスイングすることにより前記作業位置と前記輸送位置との間で変位する。当該スイング機能によってキャブが前記輸送位置に配置されると、旋回フレームとキャブとを含む部品の幅が前記規制値の範囲内に収まるので、当該部品をトレーラーで輸送することが可能になる。
【0005】
ブームは上部旋回体に対して起伏動作を行うので、通常、当該ブームの基端部は、上部旋回体の前部において旋回フレームに対して上下に回動可能に取り付けられ、キャブは、上述したように上部旋回体の前部において旋回フレームに対して側方にずれた位置に配置される。従って、ブームの基端部が旋回フレームに取り付けられるブーム取付部(ブームフット)と、前記スイングアームとは、上部旋回体の前部において近接した位置に配置される。例えば特許文献1のクレーンでは、スイングアームは、ブームの起伏動作の邪魔にならないように、ブーム取付部の下方に配置される(特許文献1の
図1及び
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スイングアームは、キャブを支持することができる強度を備える必要があるため、当該スイングアームの高さ方向の寸法は必然的に大きくなる。これに伴い、当該スイングアームの上方に配置されるブーム取付部の高さ位置も高くなり、当該ブーム取付部に取り付けられるブームの基端部の高さ位置も高くなる。旋回フレームに対するブーム取付部及びブームの基端部の高さ位置が高くなるほど、当該ブーム取付部に対してブームから作用する力(作用力)が増加するので、この作用力に耐え得るようにブーム取付部の強度を確保する必要がある。このことは、ブーム取付部の寸法の増加の原因となり、輸送時の寸法規制の観点から好ましくない。また、ブーム取付部などの部材の寸法の増加は、部材の重量の増加につながる。部材の重量の増加は、輸送用のトレーラーの大型化に伴うコストアップの原因となり、また、輸送重量の制限を超える原因ともなり得る。
【0008】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、キャブを支持するための強度を確保しかつブーム取付部の高さ位置が高くなることを抑制しながら、上部旋回体のフレームに対するキャブの相対位置を作業位置と輸送位置との間で切り換えることができるクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提供されるのは、クレーンであって、左右方向に間隔をおいて並ぶ第1のブーム取付部及び第2のブーム取付部を有するフレームとキャブと前記フレームと前記キャブとを連結する連結部とを含む機体と、前記機体に対して起伏可能となるように前記第1のブーム取付部及び前記第2のブーム取付部に取り付けられる基端部を有するブームと、を備え、前記連結部は、前記フレームに対する前記キャブの相対位置が作業位置と輸送位置との間で切り換わることが可能となるように前記キャブを支持するとともに前記フレームに対してスイング可能に前記フレームに支持され、前記作業位置は、クレーン作業が行われるときの前記キャブの位置であり、前記クレーン作業が行われるときに前記キャブが前記ブームに接触することが回避されるように前記第1のブーム取付部に対して前記左右方向の外側にずれた位置であり、前記輸送位置は、前記第1のブーム取付部及び前記第2のブーム取付部から前記ブームが取り外された状態の前記フレームの少なくとも一部、前記キャブ及び前記連結部を含む前記機体の一部分が輸送されるときの前記キャブの位置であり、前記第1のブーム取付部よりも前方の位置であり、前記フレームは、前記第1のブーム取付部よりも下方でかつ後方に設けられる下アーム取付部と、前記第1のブーム取付部よりも上方でかつ後方に設けられる上アーム取付部と、をさらに有し、前記連結部は、前記第1のブーム取付部よりも後方に位置するスイング軸を中心として前記第1のブーム取付部よりも下方においてスイング可能となるように前記下アーム取付部に取り付けられた下スイングアームと、前記スイング軸を中心として前記第1のブーム取付部よりも上方においてスイング可能となるように前記上アーム取付部に取り付けられた上スイングアームであって、前記キャブが前記作業位置に配置されているときに前記上スイングアームが前記ブームに接触することが回避されるような位置に配置される上スイングアームと、を含む。
【0010】
このクレーンでは、キャブを支持する連結部の下スイングアームと上スイングアームがキャブからの荷重を分担して受けることができるので、キャブを支持するための強度を連結部全体として容易に確保することができる。しかも、キャブを支持するための強度を確保する上で、少なくとも下スイングアームの高さ方向の寸法を従来に比べて小さくすることができる。下スイングアームの高さ方向の寸法が小さくなることは、下スイングアームの上方に配置される第1のブーム取付部の高さ位置及び当該第1のブーム取付部に取り付けられるブームの基端部の高さ位置を従来に比べて低くすることを可能にする。このことは、第1のブーム取付部及び第2のブーム取付部に対してブームから作用する力(作用力)を従来に比べて減少させることを可能にし、これらのブーム取付部の寸法の増加及び重量の増加を抑制することを可能にする。しかも、第1のブーム取付部よりも上方においてスイング可能に上アーム取付部に取り付けられた上スイングアームは、前記キャブが前記作業位置に配置されているときに当該上スイングアームがブームに接触することが回避されるような位置に配置されるので、クレーン作業が行われるときに、上スイングアームがブームの起伏動作の邪魔にならない。従って、このクレーンでは、キャブを支持するための強度を確保しかつブーム取付部の高さ位置が高くなることを抑制しながら、上部旋回体のフレームに対するキャブの相対位置を作業位置と輸送位置との間で切り換えることができ、しかも、上スイングアームは、クレーン作業が行われるときにブームの起伏動作の邪魔にならない。
【0011】
また、このクレーンでは、下スイングアームがスイング可能に取り付けられた下アーム取付部は、第1のブーム取付部よりも下方でかつ後方に設けられ、上スイングアームがスイング可能に取り付けられた上アーム取付部は、第1のブーム取付部よりも上方でかつ後方に設けられている。このことは、第1のブーム取付部と第2のブーム取付部との左右方向の間隔が小さくなることを抑制し、また、フレームの少なくとも一部、キャブ及び連結部を含む機体の一部分が輸送されるときの当該機体の一部分の前後方向の長さが大きくなることを抑制することを可能にする。具体的には次の通りである。
【0012】
仮に、スイングアームをスイング可能に取り付けるアーム取付部が、例えば、平面視で第1のブーム取付部に対して左右方向に隣合うような位置に設けられている場合、第1のブーム取付部がアーム取付部に干渉しないように第1のブーム取付部をアーム取付部よりも左右方向の内側に配置する必要がある。この場合、第1のブーム取付部と第2のブーム取付部との左右方向の間隔が小さくなる。このことは、クレーンの吊り能力の低下の原因となる。また、仮に、スイングアームをスイング可能に取り付けるアーム取付部が、例えば、平面視で第1のブーム取付部の前方に設けられている場合、輸送位置に配置されたキャブとフレームとの間にはアーム取付部が介在するスペースを確保する必要がある。この場合、輸送位置に配置されたキャブとフレームとの前後方向の距離が大きくなる。このことは、これらの部分を含む機体の一部分が輸送されるときの当該機体の一部分の前後方向の長さが大きくなる原因となる。
【0013】
一方、本開示に係るクレーンでは、下アーム取付部は、第1のブーム取付部よりも下方でかつ後方に設けられ、上アーム取付部は、第1のブーム取付部よりも上方でかつ後方に設けられている。このクレーンでは、第1のブーム取付部が左右方向において下アーム取付部及び上アーム取付部と干渉しにくいため、第1のブーム取付部を左右方向の内側に配置する必要がない。従って、第1のブーム取付部と第2のブーム取付部との左右方向の間隔が小さくなることを抑制できる。これにより、クレーンの吊り能力の低下を抑制することができる。また、このクレーンでは、輸送位置に配置されたキャブとフレームとの間に下アーム取付部及び上アーム取付部を介在させるためのスペースを確保する必要がない。従って、輸送位置に配置されたキャブとフレームとの前後方向の距離が大きくなることを抑制できる。これにより、フレームの少なくとも一部、キャブ及び連結部を含む機体の一部分が輸送されるときの当該機体の一部分の前後方向の長さが大きくなることを抑制できる。
【0014】
前記クレーンにおいて、前記連結部は、前記下スイングアームを前記キャブに接続する下接続部と、前記上スイングアームを前記キャブに接続する上接続部と、を有することが好ましい。
【0015】
この態様では、下スイングアーム及び上スイングアームの双方が下接続部及び上接続部においてキャブにそれぞれ接続されているので、これらの一方の接続部のみにおいて連結部がキャブに接続されている場合に比べて、各接続部にかかる負荷が低減される。
【0016】
前記クレーンにおいて、前記連結部は、前記下スイングアームと前記上スイングアームとを接続する接続部材をさらに含み、前記接続部材は、前記キャブが前記作業位置と前記輸送位置との間で変位するときに前記第1のブーム取付部に接触することが回避されるような位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
この態様では、作業位置と輸送位置との間のキャブの変位の邪魔になることを回避しながら接続部材よって前記連結部の剛性を高めることができる。
【0018】
前記クレーンにおいて、前記下スイングアームは、前記下アーム取付部から延びて前記キャブの下部に接続され、前記上スイングアームは、前記キャブの高さ方向の中央よりも上方において前記上アーム取付部から延びていることが好ましい。
【0019】
この態様では、下スイングアームと上スイングアームとの上下の間隔を比較的大きくすることができるので、例えば、ブームフットピン及びその駆動装置のように下スイングアームと上スイングアームの周辺に配置される部材と、下スイングアーム及び上スイングアームとの干渉が生じにくくなる。
【0020】
前記クレーンにおいて、前記フレームは、前後方向に延びる底板を有し、前記フレームは、前記底板における前側でかつ前記左右方向の外側の部分である下壁部と、前記下壁部に沿って前記前後方向に延びるとともに前記下壁部から上方に起立する側壁部と、を有する支持構造体を含み、前記第1のブーム取付部は、前記側壁部の前部に形成され、前記下アーム取付部は、前記側壁部の前部よりも後方において前記下壁部に設けられ、前記上アーム取付部は、前記側壁部の前部よりも後方において前記支持構造体の上部に設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成では、第1のブーム取付部を支持構造体の側壁部の前部に形成し、下アーム取付部を側壁部の前部よりも後方において下壁部に設け、上アーム取付部を側壁部の前部よりも後方において支持構造体の上部に設けることで、第1のブーム取付部、下アーム取付部及び上アーム取付部の上下及び前後の上述した位置関係を実現しながら、第1のブーム取付部、下アーム取付部及び上アーム取付部を支持構造体に集約して設けることができる。
【0022】
前記クレーンにおいて、前記側壁部は、外側壁部であり、前記支持構造体は、前記底板の前記下壁部から上方に起立する内側壁部であって前記外側壁部に対して前記左右方向の内側に位置する内側壁部と、前記外側壁部の上部と前記内側壁部の上部とに支持された上壁部と、をさらに含み、前記上アーム取付部は、前記上壁部に設けられていることが好ましい。
【0023】
この構成では、上アーム取付部は、外側壁部と内側壁部とによって支持された上壁部に設けられているので、支持構造体は、上アーム取付部及びこれに取り付けられる上スイングアームをより安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、キャブを支持するための強度を確保しかつブーム取付部の高さ位置が高くなることを抑制しながら、上部旋回体のフレームに対するキャブの相対位置を作業位置と輸送位置との間で切り換えることができるクレーンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係るクレーンを示す側面図である。
【
図2】前記クレーンの上部旋回体の一部を拡大して示す側面図である。
【
図3】前記上部旋回体の旋回フレーム、キャブ及びこれらを連結する連結部を示す平面図である。
【
図4】前記上部旋回体の旋回フレーム、キャブ及びこれらを連結する連結部を示す斜視図である。
【
図5】前記上部旋回体の旋回フレーム、キャブ及びこれらを連結する連結部を示す斜視図である。
【
図6】前記旋回フレームの下アーム取付部及び上アーム取付部を示す概略の側面図である。
【
図7】前記実施形態の変形例1に係るクレーンにおける旋回フレームの下アーム取付部及び上アーム取付部とスイング駆動機構とを示す概略の側面図である。
【
図8】前記実施形態の変形例2に係るクレーンにおける旋回フレーム、連結部及びキャブを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係るクレーンについて図面を参照して説明する。
【0027】
[クレーンの全体構造]
図1は、実施形態に係るクレーン100の側面図である。
図1に示すように、クレーン100は、下部走行体10と、下部走行体10の上に旋回可能に支持される上部旋回体20と、ブーム30と、ジブ35と、リアストラット36と、フロントストラット37と、マスト38と、を備える。下部走行体10及び上部旋回体20は、機体の一例である。
【0028】
上部旋回体20は、旋回フレーム40と、キャブ50と、連結部80と、カウンタウエイト130と、を含む。旋回フレーム40は、上部旋回体20の下部において上部旋回体20の長手方向(前後方向)に沿って延びる底板48(後述の
図3参照)を有するフレームである。旋回フレーム40は、下部走行体10に旋回可能に取り付けられている。旋回フレーム40は、ブーム30の基端部が取り付けられる一対の右側ブーム取付部43R,43R及び一対の左側ブーム取付部43L,43Lを有する。一対の右側ブーム取付部43R,43Rのそれぞれは、第1のブーム取付部の一例であり、一対の左側ブーム取付部43L,43Lのそれぞれは、第2のブーム取付部の一例である。これらのブーム取付部43R,43Lの詳細については後述する。
【0029】
キャブ50は、上部旋回体20の右前部に設けられている。キャブ50は、オペレータが着座する運転席、オペレータによる操作を受ける操作レバーを含む操作装置、などを収容する。連結部80は、旋回フレーム40とキャブ50とを連結する。カウンタウエイト130は、クレーン100のバランスを調整するために上部旋回体20の後部に設けられている。各図において示される前後方向及び左右方向は、キャブ50が後述する作業位置P1に配置されているときのキャブ50の向きを基準とするものである。
【0030】
ブーム30は、上部旋回体20に対して起伏可能となるように上部旋回体20に支持されている。ブーム30は、長手方向の一端部である基端部と、その反対側に位置する他端部である先端部と、を有する。ブーム30の基端部は、ブーム取付部43R,43Lに回動可能でかつ着脱可能に取り付けられる。これにより、ブーム30は、基端部を支点として上部旋回体20に対して起伏方向に回動する。
【0031】
ブーム30は、複数のブーム部材を含む。複数のブーム部材は、例えば、第1ブーム部材31、第2ブーム部材32、第3ブーム部材33及び第4ブーム部材34を含む。第1ブーム部材31は、ブーム取付部43R,43Lに取り付けられる基端部を含む部材であり、第4ブーム部材34は、先端部を含む部材である。第2,第3ブーム部材32,33は、第1ブーム部材31と第4ブーム部材34の間に位置する中間ブーム部材である。第1~第4ブーム部材31~34は、この順に連結されることによりブーム30を構成する。
【0032】
ジブ35は、ブーム30の先端部、すなわち第4ブーム部材34の先端部に回動可能に連結される。マスト38はブーム30を回動させるための部材であり、リアストラット36及びフロントストラット37はジブ35を回動させるための部材である。
【0033】
マスト38は、ブーム30の起伏方向と同方向に回動可能となるように上部旋回体20に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。当該先端部は、左右一対のブーム用ガイライン109を介してブーム30の先端に連結される。
【0034】
リアストラット36及びフロントストラット37はブーム30の先端に回動可能に軸支される。リアストラット36は、左右一対のバックストップ110及びガイリンク111により、ブーム30の先端からブーム起立側(
図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。フロントストラット37は、ジブ35と連動して(一体的に)回動するように、左右一対のジブ用ガイライン112を介してジブ35に連結される。
【0035】
上部旋回体20は、複数のウィンチを有する。複数のウィンチは、ブーム起伏用ウィンチ113と、ジブ起伏用ウィンチ114と、主巻用ウィンチ115と、補巻用ウィンチ116と、を含む。
【0036】
ブーム起伏用ウィンチ113は、ブーム起伏用ロープ117の巻き取り及び繰り出しを行うことによりマスト38を回動させ、これにより前記ブーム30を起伏させる。ブーム起伏用ロープ117は、マスト38の回動端部及び上部旋回体20の後端部にそれぞれ設けられたシーブブロック118,119に掛け渡されている。
【0037】
ジブ起伏用ウィンチ114は、リアストラット36とフロントストラット37との間に巻き回されたジブ起伏用ロープ122の巻き取り及び繰り出しを行うことにより前記フロントストラット37を回動させ、これにより前記ジブ35を起伏させる。前記ジブ起伏用ロープ122は、前記リアストラット36の長手方向中間部に設けられたガイドシーブ123に掛けられ、かつ、前記リアストラット36の回動端部及び前記フロントストラット37の回動端部にそれぞれ設けられたシーブブロック124,125間に掛け渡されている。
【0038】
主巻用ウィンチ115は、ジブ35の先端から主巻ロープ120を介して吊り下げられる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行い、補巻用ウィンチ116は、ジブ35の先端から補巻ロープ121を介して吊り下げられる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。
【0039】
[フレームとキャブの連結構造]
次に、本実施形態に係るクレーン100における旋回フレーム40とキャブ50の連結構造について説明する。
図2は、クレーン100の上部旋回体20の一部を拡大して示す側面図である。
図3は、上部旋回体20の旋回フレーム40、キャブ50及びこれらを連結する連結部80を示す平面図であり、
図4及び
図5は、その斜視図である。
図4は、旋回フレーム40、キャブ50及び連結部80を右斜め上から見た図であり、
図5は、旋回フレーム40、キャブ50及び連結部80を右斜め下から見た図である。
図3では、クレーン作業が行われるときに平面視でブーム30が配置されるブーム配置領域を一点鎖線で示しており、輸送位置P2に配置されるキャブ50を二点鎖線で示している。
【0040】
連結部80は、旋回フレーム40に対するキャブ50の相対位置が作業位置P1と輸送位置P2との間で切り換わることが可能となるように、キャブ50を支持するとともに旋回フレーム40に対してスイング可能に旋回フレーム40に支持されている。連結部80は、上下方向のスイング軸A1を中心としてスイングする。
【0041】
作業位置P1は、クレーン作業時のキャブ50の位置である。作業位置P1は、クレーン作業が行われるときにキャブ50がブーム30に接触することが回避されるように右側ブーム取付部43R,43Rに対して左右方向の外側(本実施形態では右側)にずれた位置である。すなわち、作業位置P1は、クレーン作業時に平面視でブーム30が配置されるブーム配置領域Rにキャブ50が重なることが回避されるようにブーム配置領域Rに対して左右方向(ブーム30の幅方向)にずれた位置であり、かつ、ブーム配置領域Rに対して左右方向(前記幅方向)に隣り合う位置である。ブーム30の幅方向は左右方向である。
【0042】
輸送位置P2は、ブーム取付部43R,43Lからブーム30が取り外された状態の旋回フレーム40のうち少なくとも前側の部分、キャブ50及び連結部80を含む前記機体の一部分を輸送するときのキャブ50の位置である。輸送位置P2は、ブーム取付部43R,43Lよりも前方の位置である。輸送位置P2は、平面視でブーム配置領域Rに対応する領域にキャブ50の少なくとも一部が重なるような位置である。
【0043】
図3及び
図4に旋回フレーム40は、前記底板48に沿って前後方向にそれぞれ延びるとともに底板48から上方にそれぞれ起立する右板49R,左板49Lを有する。右板49R及び左板49Lは、左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。右板49Rは、底板48における左右方向の中央よりも右に配置された構造部材であり、左板48Lは、底板48の前記中央よりも左に配置された構造部材である。
【0044】
図3に示すように、旋回フレーム40は、右側支持構造体91と、左側支持構造体92と、を有する。右側支持構造体91及び左側支持構造体92は、ブーム30を起伏可能に支持する。右側支持構造体91は、連結部80をスイング可能に支持する。右側支持構造体91は、支持構造体の一例である。
【0045】
図3~
図5に示すように、右側支持構造体91は、下壁部47、外側壁部45、内側壁部44、上壁部46及び後壁部53を含む。
【0046】
下壁部47は、前記底板48の一部を構成する。下壁部47は、底板48の前側でかつ右側の部分である。本実施形態では、下壁部47は、底板48における右斜め前の角の周辺部分である。下壁部47は、底板48における前後方向に延びる右縁の一部を含む部分である。
【0047】
外側壁部45は、下壁部47に沿って前後方向に延びるとともに下壁部47から上方に起立する部材である。
図3及び
図4に示すように、外側壁部45の前部は、下壁部47よりも前方に突出するように設けられている。
【0048】
内側壁部44は、下壁部47に沿って前後方向に延びるとともに下壁部47から上方に起立する部材である。内側壁部44は、外側壁部45に対して左右方向の内側(本実施形態では、左側)に位置する部材であり、外側壁部45に対して左右方向に間隔をおいて設けられている。
図3に示すように、内側壁部44の前部は、下壁部47よりも前方に突出するように設けられている。
【0049】
上壁部46は、外側壁部45の上部と内側壁部44とによって支持された部材である。すなわち、上壁部46は、外側壁部45の上部と内側壁部44の上部とを接続する部材である。後壁部53は、外側壁部45の後部と内側壁部44の後部とを接続する部材である。
【0050】
図3に示すように、左側支持構造体92は、右側支持構造体91と同様の構造を有する。左側支持構造体92は、下壁部47、外側壁部45、内側壁部44、上壁部46及び後壁部53を含む。左側支持構造体92の下壁部47は、前記底板48の一部を構成し、底板48の前側でかつ左側の部分である。本実施形態では、左側支持構造体92の下壁部47は、底板48における左斜め前の角の周辺部分である。左側支持構造体92の下壁部47は、底板48における前後方向に延びる左縁の一部を含む部分である。左側支持構造体92の外側壁部45、内側壁部44、上壁部46及び後壁部53では、左右の配置が右側支持構造体91と反対であること以外の特徴は右側支持構造体91と同様である。
【0051】
図2~
図5に示すように、連結部80は、下スイングアーム51と、上スイングアーム52と、少なくとも一つの接続アームと、を含む。接続アームは、接続部材の一例である。
【0052】
旋回フレーム40は、下スイングアーム51が取り付けられる下アーム取付部41と、上スイングアーム52が取り付けられる上アーム取付部42と、をさらに有する。下アーム取付部41は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも下方でかつ後方に設けられ、上アーム取付部42は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも上方でかつ後方に設けられる。下アーム取付部41と上アーム取付部42は、平面視において上下方向に重なる位置に配置されている。
【0053】
具体的に、連結部80の下スイングアーム51は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも後方に位置するスイング軸A1を中心として一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも下方においてスイング可能となるように下アーム取付部41に取り付けられている。連結部80の上スイングアーム52は、前記スイング軸A1を中心として一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも上方においてスイング可能となるように上アーム取付部42に取り付けられている。下スイングアーム51及び上スイングアーム52は、上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。下スイングアーム51及び上スイングアーム52は、キャブ50が作業位置P1に配置されているときに、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも後方に配置される。これにより、下スイングアーム51及び上スイングアーム52は、ブーム30に接触することが回避される。
【0054】
一対の右側ブーム取付部43R,43Rは、右側支持構造体91における外側壁部45の前部及び内側壁部44の前部にそれぞれ設けられている。一対の左側ブーム取付部43L,43Lは、左側支持構造体92における外側壁部45の前部及び内側壁部44の前部にそれぞれ設けられている。これらの右側ブーム取付部43R,43Rと左側ブーム取付部43L,43Lは、同じ高さ位置に設けられ、左右方向に間隔をおいて左右方向に並ぶように配置されている。
【0055】
具体的に、一方の右側ブーム取付部43Rは、右側支持構造体91における外側壁部45の前部に形成された挿入孔Hを含む。当該挿入孔Hは、外側壁部45の前部を左右方向に貫通する貫通孔である。他方の右側ブーム取付部43Rは、右側支持構造体91における内側壁部44の前部に形成された挿入孔Hを含む。当該挿入孔Hは、内側壁部44の前部を左右方向に貫通する貫通孔である。
【0056】
同様に、一方の左側ブーム取付部43Lは、左側支持構造体92における外側壁部45の前部に形成された挿入孔Hを含む。当該挿入孔Hは、外側壁部45の前部を左右方向に貫通する貫通孔である。他方の左側ブーム取付部43Lは、左側支持構造体92における内側壁部44の前端部に形成された挿入孔Hを含む。当該挿入孔Hは、内側壁部44の前部を左右方向に貫通する貫通孔である。ブーム30の基端部には、一対の右側ブーム取付部43R,43Rの挿入孔H,H及び一対の左側ブーム取付部43L,43Lの挿入孔H,Hに対応する位置に図略の挿入孔が形成されており、これらの挿入孔に取付部材(例えばブームフットピン)が挿入されることにより、ブーム30が旋回フレーム40に起伏可能に取り付けられる。
【0057】
図3に示す本実施形態では、外側壁部45の前部に設けられた右側ブーム取付部43R(具体的には、当該右側ブーム取付部43Rの挿入孔H)を、スイング軸A1よりも前側でかつスイング軸A1よりも左右方向の外側である右側に位置させることができる。このことは、右側ブーム取付部43R,43Rと左側ブーム取付部43L,43Lとの左右方向の間隔が小さくなることを抑制できる。これにより、クレーン100の吊り能力の低下を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、右側支持構造体91の外側壁部45の前部及び内側壁部44の前部に右側ブーム取付部43R,43Rを形成し、外側壁部45の前部及び内側壁部44の前部よりも後方において下壁部47に下アーム取付部41を設け、外側壁部45の前部及び内側壁部44の前部よりも後方において支持構造体の上部(本実施形態では上壁部46)に上アーム取付部42を設けている。これにより、スイング軸A1を、外側壁部45の前部及び内側壁部44の前部よりも後方において、外側壁部45の外側面(右側面)と内側壁部44の内側面(左側面)との間に位置させることができる。言い換えると、スイング軸A1を、右側ブーム取付部43R,43Rのほぼ真後ろに位置させることができる。
【0059】
下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、長手方向の一端部と他端部とを有する。下スイングアーム51の一端部は、旋回フレーム40の下アーム取付部41にスイング軸A1の回りに回動可能に取り付けられる部分であり、上スイングアーム52の一端部は、旋回フレーム40の上アーム取付部42にスイング軸A1の回りに回動可能に取り付けられる部分である。具体例を挙げると次の通りである。
【0060】
図6は、旋回フレーム40の下アーム取付部41及び上アーム取付部42を示す概略の側面図である。
図6に示すように、下アーム取付部41は、右側支持構造体91の下壁部47に設けられた支持部材410を有する。支持部材410は、下スイングアーム51がスイング軸A1を中心としてスイング可能なように下スイングアーム51の一端部を支持する。同様に、上アーム取付部42は、右側支持構造体91の上壁部46に設けられた支持部材420を有する。当該支持部材420は、上スイングアーム52がスイング軸A1を中心としてスイング可能なように上スイングアーム52の一端部を支持する。
【0061】
具体的に、支持部材410は、下壁部47の下面に接続されたブラケット411と、ブラケット411に支持され、上下方向に延びるピン412と、を含む。下スイングアーム51の一端部は、ピン412が挿通される貫通孔を有する。ピン412は、この貫通孔に挿通された状態でブラケット411に支持されている。これにより、下スイングアーム51は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも下方においてスイング軸A1を中心としてスイング可能に下アーム取付部41に取り付けられる。
【0062】
同様に、支持部材420は、上壁部46の上面に接続されたブラケット421と、ブラケット421に支持され、上下方向に延びるピン422と、を含む。上スイングアーム52の一端部は、ピン422が挿通される貫通孔を有する。ピン422は、この貫通孔に挿通された状態でブラケット421に支持されている。これにより、上スイングアーム52は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも上方において、下スイングアーム51と同じスイング軸A1を中心としてスイング可能に上アーム取付部42に取り付けられる。
【0063】
図3~
図5に示す本実施形態では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、一方向に延びる細長い部材である。下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、パイプのように中空の部材であってもよく、中実の部材であってもよい。本実施形態では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、一方向に延びる円柱形状の部材であるが、円柱形状以外の形状を有する部材であってもよく、また、必ずしも一方向に直線的に延びる部材でなくてもよい。
【0064】
下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、一端部から他端部まで水平方向に延びる姿勢で配置されている。ただし、下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれが延びる方向は、必ずしも水平方向でなくてもよく、水平方向に対して傾斜する方向であってもよい。下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれが延びる方向は、必ずしも一方向でなくてもよく、途中で変化していてもよい。
【0065】
下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、キャブ50が作業位置P1に配置されるときには、前記一端部から左右方向(
図3に示す具体例では、右方向)に延びる姿勢で配置され、キャブ50が輸送位置P2に配置されるときには、前記一端部から前後方向(
図3に示す具体例では、前方向)に延びる姿勢で配置される。本実施形態では、キャブ50が輸送位置P2に配置されているときには、下スイングアーム51及び上スイングアーム52は、右側ブーム取付部43R,43Rの真下及び真上にそれぞれ配置される。
【0066】
本実施形態では、前記少なくとも一つの接続アームは、第1の接続アーム61と、第2の接続アーム62と、を含む。第1の接続アーム61及び第2の接続アーム62のそれぞれは、上下方向に延びる細長い部材である。第1の接続アーム61及び第2の接続アーム62のそれぞれは、パイプのように中空の部材であってもよく、中実の部材であってもよい。本実施形態では、第1の接続アーム61及び第2の接続アーム62のそれぞれは、上下方向に延びる円柱形状の部材であるが、円柱形状以外の形状を有する部材であってもよく、また、必ずしも一方向に直線的に延びる部材でなくてもよい。
【0067】
第1の接続アーム61は、下スイングアーム51の他端部と、上スイングアーム52の他端部とを接続する。第2の接続アーム62は、下スイングアーム51における一端部と他端部との間の中間部分と、上スイングアーム52における一端部と他端部との間の中間部分とを接続する。
【0068】
第1の接続アーム61及び第2の接続アーム62のそれぞれは、キャブ50が作業位置P1に配置されるとき、キャブ50が輸送位置P2に配置されるとき、及びキャブ50が作業位置P1と輸送位置P2との間で変位するときの何れにおいても、右側ブーム取付部43R,43Rを含む右側支持構造体91に接触することが回避されるような位置に設けられている。下スイングアーム51と、上スイングアーム52と、第2の接続アーム62と、右側支持構造体91のうち下アーム取付部41と上アーム取付部42との間の部分と、により囲まれる空間は、キャブ50が作業位置P1と輸送位置P2との間の何れの位置に配置されるときにも、連結部80が右側ブーム取付部43R,43Rを含む右側支持構造体91に接触することが回避されるような大きさに設定されている。
【0069】
本実施形態では、下スイングアーム51、上スイングアーム52、第1の接続アーム61及び第2の接続アーム62を含む連結部80は、キャブ50の後方に配置されており、キャブ50は、当該キャブ50の後部が連結部80の少なくとも一部に接続されることにより、当該連結部80に支持されている。具体的に、本実施形態では、前記連結部80は、下スイングアーム51をキャブ50に接続する下接続部81と、上スイングアーム52をキャブ50に接続する上接続部82と、を有する。下接続部81は、キャブ50の下部に接続され、上接続部82は、キャブ50の高さ方向の中央よりも上方においてキャブ50に接続されている。
【0070】
図6に示す実施形態では、作業者は、手動でキャブ50を作業位置P1と輸送位置P2との間で変位させることができる。ただし、クレーン100は、このような形態に限られない。クレーン100は、連結部80の下スイングアーム51及び上スイングアーム52をスイング軸A1の回りに旋回フレーム40に対してスイングさせるためのスイング駆動機構をさらに備えていてもよい。具体例を挙げると次の通りである。
【0071】
図7は、実施形態の変形例1に係るクレーンにおける旋回フレーム40の下アーム取付部41及び上アーム取付部42とスイング駆動機構430とを示す概略の側面図である。
図7に示す変形例1に係るクレーンでは、スイング駆動機構430は、下スイングアーム51及び上スイングアーム52をスイング軸A1の回りに旋回フレーム40に対してスイングさせることが可能な油圧モータ、電気モータなどのモータ431と、モータ431の回転力を下スイングアーム51及び上スイングアーム52に伝達するための伝達部材と、を含む。伝達部材の具体的な構成は、特に限定されるものではないが、
図7に示す具体例では、伝達部材は、ギヤ432,432と、駆動軸433,434と、を含む。
【0072】
この変形例1においても、下スイングアーム51が取り付けられる下アーム取付部41は、右側支持構造体91の下壁部47に設けられ、上スイングアーム52が取り付けられる上アーム取付部42は、右側支持構造体91の上壁部46に設けられている。下アーム取付部41は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも下方でかつ後方に設けられ、上アーム取付部42は、一対の右側ブーム取付部43R,43Rよりも上方でかつ後方に設けられる。下アーム取付部41は、例えば、下スイングアーム51の一端部と前記伝達部材(例えば駆動軸433)とを接続するシャフト423を含んでいてもよい。また、下アーム取付部41は、シャフト423を支持する図略のベアリングを含んでいてもよい。上アーム取付部42は、例えば、上スイングアーム52の一端部と前記伝達部材(例えば駆動軸434)とを接続するシャフト424を含んでいてもよい。また、上アーム取付部42は、シャフト424を支持する図略のベアリングを含んでいてもよい。
【0073】
また、前記スイング駆動機構は、例えば、下スイングアーム51及び上スイングアーム52をスイング軸A1の回りに旋回フレーム40に対してスイングさせることが可能なシリンダ(例えば油圧シリンダ)を含んでいてもよい。この場合、当該シリンダの一端部は、下スイングアーム51及び上スイングアーム52の少なくとも一方に回動可能に接続され、シリンダの他端部は、旋回フレーム40に接続される。シリンダは、伸縮可能であり、シリンダが所定の位置まで伸長すると、キャブ50は、作業位置P1に配置され、シリンダが所定の位置まで収縮すると、キャブ50は、輸送位置P2に配置される。
【0074】
本実施形態では、クレーン100は、キャブ50の側方(本実施形態では、キャブ50の右方)に設けられた作業者用の作業台70と柵71をさらに備える。これらの作業台70と柵71は、キャブ50の側部(右側部)に固定されており、キャブ50が作業位置P1と輸送位置P2との間で変位するのに伴って変位する。なお、これらの作業台70と柵71とは省略可能である。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係るクレーン100では、キャブ50を支持する下スイングアーム51と上スイングアーム52がキャブ50からの荷重を分担して受けることができるので、キャブ50を支持するための強度を連結部80全体として容易に確保することができる。しかも、キャブ50を支持するための強度を確保する上で、少なくとも下スイングアーム51の高さ方向の寸法を従来に比べて小さくすることができる。下スイングアーム51の高さ方向の寸法が小さくなることは、下スイングアーム51の上方に配置されるブーム取付部43R,43Lの高さ位置及び当該ブーム取付部43R,43Lに取り付けられるブーム30の基端部の高さ位置を従来に比べて低くすることを可能にする。このことは、ブーム取付部43R,43Lに対してブーム30から作用する力(作用力)を従来に比べて減少させることを可能にし、ブーム取付部43R,43Lの寸法の増加及び重量の増加を抑制することを可能にする。しかも、右側ブーム取付部43R,43Rよりも上方においてスイング可能に上アーム取付部42に取り付けられた上スイングアーム52は、キャブ50が作業位置P1に配置されているときにブーム配置領域Rに対して左右方向(前記幅方向)にずれた位置に配置されるので、クレーン作業が行われるときに、上スイングアーム52がブーム30の起伏動作の邪魔にならない。従って、このクレーン100では、キャブ50を支持するための強度を確保しかつブーム取付部43R,43Lの高さ位置が高くなることを抑制しながら、旋回フレーム40に対するキャブ50の相対位置を作業位置P1と輸送位置P2との間で切り換えることができ、しかも、上スイングアーム52は、クレーン作業が行われるときにブーム30の起伏動作の邪魔にならない。
【0076】
本実施形態では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52の双方が下接続部81及び上接続部82においてキャブ50にそれぞれ接続されているので、これらの一方の接続部のみにおいて連結部80がキャブ50に接続されている場合に比べて、各接続部にかかる負荷が低減される。
【0077】
本実施形態では、下スイングアーム51は、下アーム取付部41から延びてキャブ50の下部に接続され、上スイングアーム52は、キャブ50の高さ方向の中央よりも上方において上アーム取付部42から延びている。従って、下スイングアーム51と上スイングアーム52との上下の間隔を比較的大きくすることができるので、例えば、ブームフットピン及びその駆動装置のように下スイングアーム51と上スイングアーム52の周辺に配置される部材と、下スイングアーム51及び上スイングアーム52との干渉が生じにくくなる。
【0078】
本実施形態では、連結部80は、下スイングアーム51から上スイングアーム52まで延びて下スイングアーム51と上スイングアーム52とを接続する接続アーム61,62をさらに含み、接続アーム61,62は、キャブ50が作業位置P1と輸送位置P2との間で変位するときに右側ブーム取付部43R,43Rに接触することが回避されるような位置に配置されている。従って、作業位置P1と輸送位置P2との間のキャブ50の変位の邪魔になることを回避しながら接続アーム61,62によって連結部80の剛性を高めることができる。
【0079】
本実施形態では、旋回フレーム40は、下壁部47と、外側壁部45と、を有する右側支持構造体91を含み、右側ブーム取付部43R,43Rは、外側壁部45の前部に形成され、下アーム取付部41は、外側壁部45の前部よりも後方において下壁部47に設けられ、上アーム取付部42は、外側壁部45の前部よりも後方において右側支持構造体91の上部に設けられている。従って、右側ブーム取付部43R,43R、下アーム取付部41及び上アーム取付部42の上下及び前後の上述した位置関係を実現しながら、右側ブーム取付部43R,43R、下アーム取付部41及び上アーム取付部42を右側支持構造体91に集約して設けることができる。
【0080】
本実施形態では、右側支持構造体91は、内側壁部44と、外側壁部45の上部と内側壁部44の上部とに支持された上壁部46と、をさらに含み、上アーム取付部42は、上壁部46に設けられている。従って、右側支持構造体91は、上アーム取付部42及びこれに取り付けられる上スイングアーム52をより安定して支持することができる。
【0081】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような態様を包含する。
【0082】
(A)フレームとキャブとの相対位置について
前記実施形態では、キャブ50は、作業位置P1に配置されているときに、フレーム40に対して右方にずれた位置に配置されるが、フレーム40に対して左方にずれた位置に配置されてもよい。
【0083】
(B)連結部がキャブを支持する部位について
前記実施形態では、連結部80の下接続部81及び上接続部82は、下スイングアーム51及び上スイングアーム52をキャブ50の後部に接続するが、下スイングアーム51及び上スイングアーム52をキャブ50の前後方向の中間部に接続するように構成されていてもよい。また、下接続部81及び上接続部82の一方は省略されてもよい。
【0084】
(C)接続部材について
前記実施形態では、連結部80は、接続部材として接続アーム61,62を備えるが、これらの少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0085】
前記実施形態では、連結部80は、第1の接続アーム61と第2の接続アーム62とを含むが、このような形態に限られず、例えば以下のような変形例が採用されてもよい。連結部は、3つ以上の接続アームを有していてもよい。接続アームは、必ずしも鉛直方向に延びていなくてもよく、鉛直方向に対して傾斜する斜め方向に延びていてもよい。また、接続アームは、第1の方向(例えば鉛直方向)に延びる部分と、第1の方向とは異なる方向(例えば斜め方向)に延びる部分とを含むものであってもよい。
【0086】
前記実施形態では、複数の接続アーム61,62のそれぞれは、キャブ50の背面に沿って上下に延びるように配置されているが、このような形態に限られない。接続アームなどの接続部材は、キャブが作業位置に配置された状態で背面視したときに、キャブとスイング軸A1との間の領域に設けられていてもよい。
【0087】
連結部の接続部材は、第1の接続アーム61及び第2の接続アーム62のような棒状の部材でなくてもよい。接続部材は、例えば、下スイングアームと上スイングアームとを上下に接続する板状の部材であってもよい。この場合においても、板状の接続部材は、キャブが作業位置と輸送位置との間で変位するときに第1のブーム取付部に接触することが回避されるような位置に配置される。
【0088】
(D)クレーンの種類について
前記実施形態では、クレーンは下部走行体を備える移動式クレーンであるが、これに限られず、地面などに設置された土台に対してブームが起伏可能に支持されるような固定式クレーンであってもよい。この場合、前記土台は機体を構成する。
【0089】
また、前記実施形態では、クレーンは、ブーム30とジブ35を備えるが、ブーム30を備える一方でジブ35を備えていないようなクレーンであってもよい。
【0090】
(E)ブーム取付部について
前記実施形態では、フレームは、一対の右側ブーム取付部43R,43Rと、一対の左側ブーム取付部43L,43Lと、を有するが、少なくとも一つの右側ブーム取付部43Rと、少なくとも一つの左側ブーム取付部43Lと、を有していればよい。
【0091】
前記実施形態では、
図3に示すように、右側支持構造体91の内側壁部44は、右板49Rとは別の部材であるが、右板49Rの一部、すなわち右板49Rの前部を構成するものであってもよい。同様に、左側支持構造体92の内側壁部44は、左板49Lとは別の部材であるが、左板49Lの一部、すなわち左板49Lの前部を構成するものであってもよい。
【0092】
(F)下スイングアーム及び上スイングアームについて
前記実施形態では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、パイプ形状を有するが、下スイングアーム51及び上スイングアーム52の少なくとも一方は、パイプ形状でなくてもよく、例えば、板形状などの他の形状であってもよい。
【0093】
前記実施形態では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52は、下アーム取付部41及び上アーム取付部42からキャブ50の背面における左右方向の外側の端(
図4では右端)までそれぞれ延びているが、このような形態に限られない。例えば、下スイングアーム51及び上スイングアーム52の少なくとも一方は、右端まで到達せずに、キャブの左端と右端との間の中間部位まで延びるように構成されていてもよい。また、下スイングアーム51及び上スイングアーム52の一方は、キャブ50の背面まで到達せずに、下スイングアーム51及び上スイングアーム52の他方に接続されていてもよい。
【0094】
前記実施形態では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52のそれぞれは、キャブ50の背面に接続されているが、このような形態に限られない。
図8は、前記実施形態の変形例2に係るクレーン100における旋回フレーム40、連結部80及びキャブ50を示す平面図である。
図8に示す変形例2では、下スイングアーム51及び上スイングアーム52は、下アーム取付部41及び上アーム取付部42からキャブ50に向かってそれぞれ延び、キャブ50の左側面にそれぞれ接続されている。下スイングアーム51は、例えばキャブ50の下部を構成するキャブデッキ(ベース部分)の左側面に接続されていてもよく、上スイングアーム52は、例えばキャブ50の左側面のうち前記キャブデッキよりも上方の部位に接続されていてもよい。
【0095】
下スイングアーム51及び上スイングアーム52の少なくとも一方と接続アームとの間には、リブなどの補強部材が設けられていてもよい。下スイングアーム51及び上スイングアーム52の少なくとも一方とキャブ50との間には、リブなどの補強部材が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 下部走行体
20 上部旋回体
30 ブーム
40 旋回フレーム(フレームの一例)
41 下アーム取付部
42 上アーム取付部
43R 右側ブーム取付部(第1のブーム取付部の一例)
43L 左側ブーム取付部(第2のブーム取付部の一例)
44 内側壁部(側壁部の一例)
45 外側壁部(側壁部の一例)
46 上壁部
47 下壁部
48 底板
50 キャブ
51 下スイングアーム
52 上スイングアーム
53 後壁部
61,62 接続アーム(接続部材の一例)
80 連結部
81 下接続部
82 上接続部
91 右側支持構造体(支持構造体の一例)
100 クレーン
A1 スイング軸
P1 作業位置
P2 輸送位置
R ブーム配置領域