(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】汚泥焼却装置及び汚泥焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 7/00 20060101AFI20240312BHJP
F23G 7/04 20060101ALI20240312BHJP
F23G 7/12 20060101ALI20240312BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F23G7/00 102B
F23G7/00 104Z
F23G7/04 601J
F23G7/04 602A
F23G7/12 Z ZAB
F23G5/50 E
F23G5/50 G
F23G5/50 J
F23G5/50 M
F23G5/50 N
(21)【出願番号】P 2020212105
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】松井 威喜
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 誠二
(72)【発明者】
【氏名】北出 伊吹
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-182834(JP,A)
【文献】特開2000-161636(JP,A)
【文献】特開昭59-004808(JP,A)
【文献】特開2006-064251(JP,A)
【文献】特開平10-185154(JP,A)
【文献】特開平09-060828(JP,A)
【文献】特開2002-130626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置であって、
前記炉本体内の流動層温度を測定する流動層温度計と、
前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
前記流動層温度計の測定値及び前記酸素濃度計の測定値に基づき助燃材の供給量を制御する制御装置とを有し、
前記助燃材供給部は、化石燃料助燃材の供給を受ける化石燃料供給部と廃プラスチック助燃材の供給を受ける廃プラスチック供給部とを有し、
前記制御装置は、前記流動層温度計で測定される流動層温度が
700℃~780℃の範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が
4.0%~7.0%の範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも一方の供給量を制御する、
汚泥焼却装置。
【請求項2】
炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置であって、
前記炉本体内の流動層温度を測定する流動層温度計と、
前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を測定する塩化水素濃度計と、
前記流動層温度計の測定値及び前記塩化水素濃度計の測定値に基づき助燃材の供給量を制御する制御装置とを有し、
前記助燃材供給部は、化石燃料助燃材の供給を受ける化石燃料供給部と廃プラスチック助燃材の供給を受ける廃プラスチック供給部とを有し、
前記制御装置は、前記流動層温度計で測定される流動層温度が
700℃~780℃の範囲内に、かつ前記塩化水素濃度計で測定される排ガスの塩化水素濃度が
0ppm~200ppmの範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、
汚泥焼却装置。
【請求項3】
炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置であって、
前記炉本体内の流動層温度を測定する流動層温度計と、
前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を測定する塩化水素濃度計と、
前記流動層温度計の測定値と前記酸素濃度計の測定値及び前記塩化水素濃度計の測定値に基づき助燃材の供給量を制御する制御装置とを有し、
前記助燃材供給部は、化石燃料助燃材の供給を受ける化石燃料供給部と廃プラスチック助燃材の供給を受ける廃プラスチック供給部とを有し、
前記制御装置は、前記流動層温度計で測定される流動層温度が
700℃~780℃の範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が
4.0%~7.0%の範囲内に、さらに、前記塩化水素濃度計で測定される塩化水素濃度が
0ppm~200ppmの範囲内になるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、
汚泥焼却装置。
【請求項4】
前記排気部から排気された排ガスを除塵する除塵装置と前記排気部との間に前記塩化水素濃度計が設けられている
請求項2又は請求項3に記載の汚泥焼却装置。
【請求項5】
炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法であって、
前記炉本体内の流動層温度を流動層温度計で測定し、
前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を酸素濃度計で測定し、
前記助燃材供給部の化石燃料供給部から化石燃料助燃材を、前記助燃材供給部の廃プラスチック供給部から廃プラスチック助燃材を前記炉本体内にそれぞれ供給し、
制御装置により、前記流動層温度計で測定される流動層温度が
700℃~780℃の範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が
4.0%~7.0%の範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも一方の供給量を制御する、
汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法。
【請求項6】
炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法であって、
前記炉本体内の流動層温度を流動層温度計で測定し、
前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を塩化水素濃度計で測定し、
前記助燃材供給部の化石燃料供給部から化石燃料助燃材を、前記助燃材供給部の廃プラスチック供給部から廃プラスチック助燃材を前記炉本体内にそれぞれ供給し、
制御装置により、前記流動層温度計で測定される流動層温度が
700℃~780℃の範囲内に、かつ前記塩化水素濃度計で測定される排ガスの塩化水素濃度が
0ppm~200ppmの範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、
汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法。
【請求項7】
炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法であって、
前記炉本体内の流動層の温度を流動層温度計で測定し、
前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を酸素濃度計で測定し、
前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を塩化水素濃度計で測定し、
前記助燃材供給部の化石燃料供給部から化石燃料助燃材を、前記助燃材供給部の廃プラスチック供給部から廃プラスチック助燃材を炉本体内にそれぞれ供給し、
制御装置により、前記流動層温度計で測定される流動層温度が
700℃~780℃の範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が
4.0%~7.0%の範囲内に、さらに前記塩化水素濃度計で測定される塩化水素濃度が
0ppm~200ppmの範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、
汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法。
【請求項8】
前記排気部から排気された排ガスを除塵する除塵装置と前記排気部との間に前記塩化水素濃度計が設けられている
請求項6又は請求項7に記載の汚泥焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥焼却装置及び汚泥焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚泥等の被焼却物を効率よく、確実かつ短時間に完全燃焼させる焼却炉として流動層式焼却炉が多用されている。この流動層式焼却炉で焼却処理される脱水汚泥は、含水率が高いため流動層の砂層温度が低下して自燃しない場合が多く、流動層の砂層温度を燃焼に適した温度に維持するために、灯油や都市ガス、A重油といった化石燃料を助燃材として使用しつつ燃焼させている。すなわち、焼却炉の運転にかかるコストが高くなってしまうという課題がある。そこで、特許文献1では、化石燃料の使用量を減らすための対策として廃プラスチックを汚泥と混焼させて焼却処理し、さらに、廃プラスチックの供給量を制御して炉内温度を制御することでコスト高という課題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、炉内温度(砂層温度)を一定に保つために必要な廃プラスチックの供給量を制御する際に、炉内の酸素濃度を測定し用いることが開示されていない。この場合、廃プラスチックの供給量が過剰となって酸素不足による不完全燃焼が生じてしまい、炉出口においてCOガスが発生する等、燃焼性が悪化するという課題があった。また、炉内へ投入される廃プラスチックには塩素が不均一に含まれているため、使用する廃プラスチックに塩素分を多く含んでいるときには、焼却の際に発生する塩化水素濃度が高くなり、炉出口以降の排ガス処理設備の腐食が進行するという課題を有していた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、炉内温度を所定温度範囲に保ちつつ、炉出口における酸素濃度と塩化水素濃度を適正範囲に維持するとともに、炉の安定運転と廃プラスチック燃料使用量の最大化を両立することが可能な汚泥焼却装置及び汚泥焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、前述の課題は、次の汚泥焼却装置及び汚泥焼却方法により解決される。
<汚泥焼却装置>
汚泥焼却装置は、次の(1)、(2)、(3)のいずれの構成としても得られる。
【0007】
(1)炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置であって、前記炉本体内の流動層温度を測定する流動層温度計と、前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計と、前記流動層温度計の測定値及び前記酸素濃度計の測定値に基づき助燃材の供給量を制御する制御装置とを有し、前記助燃材供給部は、化石燃料助燃材の供給を受ける化石燃料供給部と廃プラスチック助燃材の供給を受ける廃プラスチック供給部とを有し、前記制御装置は、前記流動層温度計で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも一方の供給量を制御する、汚泥焼却装置。
【0008】
(2)炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置であって、前記炉本体内の流動層温度を測定する流動層温度計と、前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を測定する塩化水素濃度計と、前記流動層温度計の測定値及び前記塩化水素濃度計の測定値に基づき助燃材の供給量を制御する制御装置とを有し、前記助燃材供給部は、化石燃料助燃材の供給を受ける化石燃料供給部と廃プラスチック助燃材の供給を受ける廃プラスチック供給部とを有し、前記制御装置は、前記流動層温度計で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ前記塩化水素濃度計で測定される排ガスの塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、汚泥焼却装置。
【0009】
(3)炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置であって、前記炉本体内の流動層温度を測定する流動層温度計と、前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計と、前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を測定する塩化水素濃度計と、前記流動層温度計の測定値と前記酸素濃度計の測定値及び前記塩化水素濃度計の測定値に基づき助燃材の供給量を制御する制御装置とを有し、前記助燃材供給部は、化石燃料助燃材の供給を受ける化石燃料供給部と廃プラスチック助燃材の供給を受ける廃プラスチック供給部とを有し、前記制御装置は、前記流動層温度計で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内に、さらに、前記塩化水素濃度計で測定される塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内になるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、汚泥焼却装置。
【0010】
(1)、(2)、(3)において、所定塩化水素濃度範囲は、上限値が200ppm(以下、湿ガスベースの実濃度での表記とする)であることとしてもよい。
<汚泥焼却方法>
汚泥焼却方法は、次の(4)、(5)、(6)のいずれの構成としても得られる。
【0011】
(4)炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法であって、前記炉本体内の流動層温度を流動層温度計で測定し、前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を酸素濃度計で測定し、前記助燃材供給部の化石燃料供給部から化石燃料助燃材を、前記助燃材供給部の廃プラスチック供給部から廃プラスチック助燃材を前記炉本体内にそれぞれ供給し、制御装置により、前記流動層温度計で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも一方の供給量を制御する、汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法。
【0012】
(5)炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法であって、前記炉本体内の流動層温度を流動層温度計で測定し、前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を塩化水素濃度計で測定し、前記助燃材供給部の化石燃料供給部から化石燃料助燃材を、前記助燃材供給部の廃プラスチック供給部から廃プラスチック助燃材を前記炉本体内にそれぞれ供給し、制御装置により、前記流動層温度計で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ前記塩化水素濃度計で測定される排ガスの塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法。
【0013】
(6)炉本体に、汚泥の供給を受ける汚泥供給部と、排ガスを排気する排気部と、助燃材の供給を受ける助燃材供給部とが設けられ、前記炉本体内で砂層により流動層を形成し助燃材を用いて汚泥を焼却する汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法であって、前記炉本体内の流動層の温度を流動層温度計で測定し、前記排気部から排気される排ガスの酸素濃度を酸素濃度計で測定し、前記排気部から排気される排ガスの塩化水素濃度を塩化水素濃度計で測定し、前記助燃材供給部の化石燃料供給部から化石燃料助燃材を、前記助燃材供給部の廃プラスチック供給部から廃プラスチック助燃材を炉本体内にそれぞれ供給し、制御装置により、前記流動層温度計で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ前記酸素濃度計で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内に、さらに前記塩化水素濃度計で測定される塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内となるように、前記化石燃料供給部から供給される化石燃料助燃材と前記廃プラスチック供給部から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する、汚泥焼却装置を用いる汚泥焼却方法。
【0014】
(4)、(5)、(6)において、所定塩化水素濃度範囲は、上限値が200ppmであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炉内温度を所定温度範囲に保ちつつ、炉の排気部における酸素濃度と塩化水素濃度を適正範囲に維持するとともに、炉の安定運転と廃プラスチック燃料使用量の最大化を両立することが可能な汚泥焼却装置及び汚泥焼却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る汚泥焼却装置及び排ガス処理設備を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における汚泥焼却装置I及び排ガス処理設備の構成を示す。
【0019】
汚泥焼却装置Iの下流側には、汚泥焼却装置Iの流動層式焼却炉(以下、「焼却炉」)1から排気される排ガスについて熱回収する熱交換器11、排ガスを除塵する除塵装置12、除塵後の排ガスを洗煙する洗煙塔13が順次配設されている。
図1に示されているように、熱交換器11は焼却炉1の排気部1Aに煙道Aで接続されており、除塵装置12は熱交換器11に煙道Bで接続されており、洗煙塔13は除塵装置12に煙道Cで接続されている。また、洗煙塔13からは煙道Dが延びており、洗煙塔13は下流側に位置する煙突(図示せず)に接続されている。
【0020】
汚泥焼却装置Iは、炉本体1-0内において砂層により形成された流動層で汚泥を焼却する焼却炉1と、焼却炉1を制御する制御装置2と、焼却炉1の炉頂の排気部1Aから排気される排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計3と、排気部1Aから排気される排ガスの塩化水素濃度を測定する塩化水素濃度計4と、焼却炉1の炉本体1-0内の流動層温度(炉内温度)を測定する流動層温度計5とを有している。
【0021】
焼却炉1の炉本体1-0の側壁には、外部から汚泥を受けて炉本体1-0内へ供給する汚泥供給部1Bと、外部から助燃材を受けて炉本体1-0内へ供給する助燃材供給部1Cが設けられている。助燃材供給部1Cは、化石燃料助燃材を供給する化石燃料供給部1C-1と、廃プラスチック助燃材を供給する廃プラスチック供給部1C-2とを有している。
図1に見られるように、汚泥供給部1Bは、炉本体1-0の上部に設けられている。化石燃料供給部1C-1は、炉本体1-0の上下方向での中間部において、炉本体1-0内の砂層(流動層)の表面(上面)より若干下方に位置している。廃プラスチック供給部1C-2は、炉本体1-0の上下方向での中間部において、炉本体1-0内の砂層の表面より若干上方に位置している。助燃材供給部1Cには、助燃材の供給量を調整する弁等の調整器1Jが設けられている。調整器1Jは、化石燃料供給部1C-1に接続された化石燃料供給調整器1J-1と、廃プラスチック供給部1C-2に接続された廃プラスチック供給量調整器1J-2とを有している。
【0022】
焼却炉1の炉本体1-0内には、炉本体1-0の底壁1Dの直上位置に板状の透気部材1Eが設けられていて、透気部材1E上に収められた砂によって砂層が形成されている。砂層を形成する砂は、例えば、珪砂である。この透気部材1Eの下方に位置する下方空間1Fへ外部から燃焼用の空気が空気送入部1Gを経て送入されており、送入された空気は透気部材1Eの透気孔を透気して砂層へ流入している。透気部材1E上の砂層は、透気部材1Eを透気した空気により流動して流動層1Hを形成する。
【0023】
酸素濃度計3及び塩化水素濃度計4は、排気部1Aから延出する煙道Aに接続されており、排気部1Aから排気されて煙道Aを流通する排ガスの酸素濃度及び塩化水素濃度をそれぞれ測定する。流動層温度計5は、焼却炉1の炉本体1-0に接続されており、焼却炉1の炉内温度(流動層温度)を測定する。
【0024】
制御装置2には、酸素濃度計3、塩化水素濃度計4及び流動層温度計5が接続されている。制御装置2は、酸素濃度計3で測定された排ガスの酸素濃度、塩化水素濃度計4で測定された塩化水素濃度、流動層温度計5で測定された焼却炉1の流動層温度のそれぞれの測定値を入力信号として受ける。制御装置2は、これらの入力信号に基づき、助燃材供給部1Cにおける助燃材の供給量を制御するように、調整器1Jに対して指令信号(出力信号)を発する。すなわち、化石燃料助燃材の供給量を制御するための指令信号を化石燃料供給調整器1J-1に発し、廃プラスチック助燃材の供給量を制御するための指令信号を廃プラスチック供給量調整器1J-2に発する。
【0025】
制御装置2による制御には、次の(i)~(iii)の選択肢があり、助燃材の種類等の条件に応じて最適な選択がなされる。
【0026】
(i)制御装置2は、流動層温度計5及び酸素濃度計3のそれぞれから入力信号として受けた流動層温度の測定値及び酸素濃度の測定値に基づいて、流動層温度計5で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ酸素濃度計3で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内となるように、化石燃料供給部1C-1から供給される化石燃料助燃材と廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも一方の供給量を制御する。
【0027】
(ii)制御装置2は、流動層温度計5及び塩化水素濃度計4のそれぞれから入力信号として受けた流動層温度の測定値及び塩化水素濃度の測定値に基づいて、流動層温度計5で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ塩化水素濃度計4で測定される排ガスの塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内となるように、化石燃料供給部1C-1から供給される化石燃料助燃材と廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する。
【0028】
(iii)制御装置2は、流動層温度計5、酸素濃度計3及び塩化水素濃度計4のそれぞれから入力信号として受けた流動層温度の測定値、酸素濃度の測定値及び塩化水素濃度の測定値に基づいて、流動層温度計5で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ酸素濃度計3で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内に、さらに、塩化水素濃度計4で測定される塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内になるように、化石燃料供給部1C-1から供給される化石燃料助燃材と廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する。
【0029】
上述の(i)~(iii)の選択肢において、制御装置2は、化石燃料供給調整器1J-1と廃プラスチック供給量調整器1J-2のうち、制御する助燃材に対応する調整器を調整して助燃材の供給量を制御する。
【0030】
本実施形態では、上述の(i)~(iii)の選択肢における流動層温度の「所定温度範囲」は、例えば、700~780℃に設定されている。砂層温度が700℃よりも低いと砂層内での汚泥の燃焼が不十分となり、また、フリーボード部の温度も低くなるため、炉出口においてCO等の未燃ガスの発生が増加する。一方、砂層温度が780℃よりも高い場合、燃焼温度としては十分であるが、砂層温度維持のためにより多くの助燃材を使用することとなりコストがかかる。
【0031】
本実施形態では、上述の(i)及び(iii)の選択肢における排ガスの酸素濃度の「所定酸素濃度範囲」は、例えば、4.0~7.0%に設定されている。下限値が4.0%に設定されているのは、排ガスの酸素濃度が4.0%よりも小さくなっている場合、焼却炉1内での酸素量が不足していることで、燃焼が不安定となりCO濃度が上昇している可能性が高いからである。また、上限値が7.0%に設定されているのは、排ガスの酸素濃度が7.0%よりも大きくなっている場合、焼却炉1内への空気供給量が過剰となっており、その分だけ、空気の供給に必要なブロワーの消費電力や空気の余熱に必要な熱量が増加してしまうからである。
【0032】
本実施形態では、上述の(ii)及び(iii)の選択肢における排ガスの塩化水素濃度の「所定塩化水素濃度範囲」は、例えば、0~200ppmに設定されている。上限値が200ppmに設定されているのは、排ガスの塩化水素濃度が200ppmよりも大きくなっている場合、汚泥焼却装置Iに接続されている排ガス処理設備、特に熱交換器11が腐食するおそれがあるからである。
【0033】
次に、このような構成の本実施形態の汚泥焼却装置Iによる汚泥焼却要領を説明する。
【0034】
焼却炉1の炉本体1-0内には、透気部材1E上に流動層1Hを形成するための砂が収められている。空気送入部1Gを経て外部から下方空間1Fへ送入される燃焼用の空気が透気部材1Eを透気して上昇することにより透気部材1E上で砂が流動して流動層1Hが形成される。
【0035】
化石燃料供給部1C-1からは化石燃料助燃材が、また、廃プラスチック供給部1C-2からは廃プラスチック助燃材が、それぞれ炉本体1-0内へ供給されて燃焼しているので、流動層1Hは所定の高温状態となっている。
【0036】
この流動層1Hへ向け、汚泥供給部1Bから汚泥が落下供給される。汚泥は高温の流動層1H内を砂とともに流動している間に燃焼する。汚泥の燃焼により生じる排ガスは、排気部1Aから煙道Aを通り、熱交換器11で熱回収された後、煙道Bを通り、除塵装置12で除塵され、さらに、煙道Cを通り、洗煙塔13で洗煙されてから、煙道Dを通り、無害化された状態で煙突から大気へ放出される。
【0037】
この流動層1Hで汚泥が燃焼する際、流動層温度を所定温度に保つために必要な量の廃プラスチック助燃材を供給しようとしても、廃プラスチック助燃材には発熱量の異なるプラスチックが混在しているため、廃プラスチック助燃材の供給量が必要量以上となって一時的に過剰となる場合がある。このような場合、焼却炉1内で酸素不足による不完全燃焼に起因して排ガスに一酸化炭素(CO)が生じ、燃焼性が低下することがある。また、廃プラスチック助燃材をなすプラスチックが塩素分を多く含んでいることもある。その場合には、排ガスの塩化水素濃度が高くなり、汚泥焼却装置Iに接続されている排ガス処理設備、すなわち
図1の例では、特に熱交換器11の腐食が進行してしまうおそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態の汚泥焼却装置Iでは、流動層温度計5で焼却炉1内の流動層1Hの温度(流動層温度)を測定するとともに、酸素濃度計3及び塩化水素濃度計4で煙道Aにおける排ガスの酸素濃度及び塩化水素濃度を測定し、これらの測定値に基づいて、流動層温度、酸素濃度、塩化水素濃度を所定範囲内に収めるように、化石燃料助燃材の供給量、廃プラスチック助燃材の供給量を制御装置2により制御している。
【0039】
制御装置2では、既述の3つの選択肢(i)、(ii)、(iii)のいずれかを適宜選択して、化石燃料助燃材、廃プラスチック助燃材の供給量を次のごとく制御する。
【0040】
(i)流動層温度計5で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ酸素濃度計3で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内となるように、化石燃料供給部1C-1から供給される化石燃料助燃材と廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも一方の供給量を制御する。
【0041】
(ii)流動層温度計5で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ塩化水素濃度計4で測定される排ガスの塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内となるように、化石燃料供給部1C-1から供給される化石燃料助燃材と廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する。
【0042】
(iii)流動層温度計5で測定される流動層温度が所定温度範囲内に、かつ酸素濃度計3で測定される排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内に、さらに、塩化水素濃度計4で測定される塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内になるように、化石燃料供給部1C-1から供給される化石燃料助燃材と廃プラスチック供給部1C-2から供給される廃プラスチック助燃材のうちの少なくとも廃プラスチック助燃材の供給量を制御する。
【0043】
本実施形態によれば、流動層温度が所定温度範囲に収められつつ、排ガスの酸素濃度が所定酸素濃度範囲内に収められることで、焼却炉1内における酸素量に過不足がなくなり、汚泥が安定して燃焼する。また、排ガスの塩化水素濃度が所定塩化水素濃度範囲内に収められることで、排ガス処理設備の腐食が防止される。本実施形態では、酸素濃度及び塩化水素濃度をそれぞれの適正範囲にある状態を維持しながら、廃プラスチック助燃材の供給量をなるべく増加させ、化石燃料助燃材の供給量をなるべく減少させることが、助燃材のコストの抑制という観点から好ましい。このとき、廃プラスチック助燃材の供給量を最大化しつつ化石燃料助燃材の供給量を最小化することによりコストを最大限に抑制できる。
【符号の説明】
【0044】
1-0 炉本体
1A 排気部
1B 汚泥供給部
1C 助燃材供給部
1C-1 化石燃料供給部
1C-2 廃プラスチック供給部
2 制御装置
3 酸素濃度計
4 塩化水素濃度計
5 流動層温度計